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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031866
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01N27/12 B
G01N27/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132025
(22)【出願日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2022134176
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】新井 皓也
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雅大
(72)【発明者】
【氏名】大矢 剛嗣
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA05
2G046AA07
2G046AA09
2G046AA12
2G046BA01
2G046EA02
2G046EA04
2G046FA01
2G046FB05
2G046FB07
2G046FC07
2G046FE02
2G046FE06
2G046FE09
2G046FE11
2G046FE12
2G046FE25
2G046FE31
2G046FE37
2G046FE38
2G046FE43
2G046FE44
(57)【要約】
【課題】構造が簡単であって、作製コストが低く取り扱いが容易であり、特定のガスの検知が可能なガスセンサを提供する。
【解決手段】絶縁多孔質体にカーボンナノチューブを含有させた導電体含有多孔質体20と、導電体含有多孔質体20の延在方向に間隔をあけて配設された第1電極部11および第2電極部12と、第1電極部11と第2電極部12との間の電気抵抗値を測定する抵抗測定部15と、を備えており、導電体含有多孔質体20がガスを検知するガス検知部とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁多孔質体に導電体を含有させた導電体含有多孔質体と、前記導電体含有多孔質体の延在方向に間隔をあけて配設された第1電極部および第2電極部と、前記第1電極部と前記第2電極部との間の電気抵抗値を測定する抵抗測定部と、を備えており、
前記導電体含有多孔質体がガスを検知するガス検知部とされていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記導電体は、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記導電体は、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記導電体は、有機熱電材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記導電体が、化合物半導体またはシリコン半導体による、ナノチューブまたはナノワイヤであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記絶縁多孔質体が、紙、糸、不織布、布、リードスティックのいずれか一種とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記ガス検知部で検知されるガスが水素ガスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記ガス検知部で検知されるガスが酸素ガスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記ガス検知部で検知されるガスが二酸化炭素ガスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記ガス検知部で検知されるガスが水蒸気ガスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特定のガスを検知するガスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水素、酸素、二酸化炭素等の各種ガスを検知するためにガスセンサが用いられている。
例えば、特許文献1には、金属酸化物を用いた水素ガスセンサが提案されている。また、特許文献2には、固体電解質からなる酸素イオン伝導体を用いた酸素ガスセンサおよび二酸化炭素ガスセンサが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載された水素ガスセンサにおいては、基板上に水素検知層が形成され、この水素検知層に一対の電極が配設された構造とされている。そして、水素検知層が、水素ガスをプロトンと電子とに解離させる触媒と、触媒による水素ガスの解離によって発生した電子によって電気抵抗が低下する金属酸化物とを含んでおり、一対の電極間の電気抵抗の変化により、水素ガスを検知する構成とされている。
【0004】
特許文献2に記載された酸素ガスセンサおよび二酸化炭素ガスセンサにおいては、絶縁性の基板(例えばアルミナ製基板)の表面に固体電解質からなる酸素イオン伝導体が配設され、この酸素イオン伝導体に接するように貴金属製の酸素検出電極と、金属炭酸塩に覆われた二酸化炭素検出電極と、被検ガスから遮断された参照電極とを備えた構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-004572号公報
【特許文献2】特開平11-287785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1,2に記載された各種ガスセンサにおいては、ガスを検知する金属酸化物や固体電解質を基板の表面に配設していることから、形状の自由度が低く、かつ、構造が複雑である。このため、作製が困難であるとともに、取り扱いが容易ではないといった課題があった。
特に、特許文献1の水素ガスセンサにおいては、水素ガスをプロトンと電子とに解離させる触媒(例えばTi)を配設する必要があり、作製コストが増大するといった問題があった。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、構造が簡単であって、作製コストが低く取り扱いが容易であり、特定のガスの検知が可能なガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明の態様1のガスセンサは、絶縁多孔質体に導電体を含有させた導電体含有多孔質体と、前記導電体含有多孔質体の延在方向に間隔をあけて配設された第1電極部および第2電極部と、前記第1電極部と前記第2電極部との間の電気抵抗値を測定する抵抗測定部と、を備えており、前記導電体含有多孔質体がガスを検知するガス検知部とされていることを特徴としている。
【0009】
本発明の態様1のガスセンサによれば、絶縁多孔質体に導電体を含有させた導電体含有多孔質体を有しており、この導電体含有多孔質体がガスを検知するガス検知部とされている。
ここで、絶縁多孔質体に導電体を含有させた導電体含有多孔質体においては、特定のガスと接触した際に電気抵抗値が変化することになる。よって、ガス検知部である導電体含有多孔質体に特定のガスが曝されると、導電体含有多孔質体の電気抵抗が変化することになるため、前記抵抗測定部によって、前記第1電極部と前記第2電極部との間の電気抵抗値を測定することにより、ガスの検知を行うことができる。
そして、絶縁多孔質体に導電体を含有させた導電体含有多孔質体を用いているので、カーボンナノチューブ等を配設する基板が不要となって構造が簡単であり、取り扱いが容易である。また、構造が簡単であるとともに触媒等が不要であることから、作製コストを大幅に削減することができる。
【0010】
本発明の態様2のガスセンサは、態様1のガスセンサにおいて、前記導電体は、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料であることを特徴としている。
本発明の態様2のガスセンサによれば、絶縁多孔質体に含有させる導電体がゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料とされているので、導電体含有多孔質体は、特定のガスと接触した際に電気抵抗値が大きく変化することになり、前記抵抗測定部によって、前記第1電極部と前記第2電極部との間の電気抵抗値を測定することにより、ガスの検知を精度良く行うことができる。
【0011】
本発明の態様3のガスセンサは、態様1または態様2のガスセンサにおいて、前記導電体は、カーボンナノチューブであることを特徴としている。
本発明の態様3のガスセンサによれば、絶縁多孔質体に含有させる導電体がカーボンナノチューブとされているので、導電体含有多孔質体は、特定のガスと接触した際に電気抵抗値が大きく変化することになり、前記抵抗測定部によって、前記第1電極部と前記第2電極部との間の電気抵抗値を測定することにより、ガスの検知を精度良く行うことができる。
【0012】
本発明の態様4のガスセンサは、態様1または態様2のガスセンサにおいて、前記導電体は、有機熱電材料であることを特徴としている。
本発明の態様4のガスセンサによれば、絶縁多孔質体に含有させる導電体が有機熱電材料とされているので、導電体含有多孔質体は、特定のガスと接触した際に電気抵抗値が大きく変化することになり、前記抵抗測定部によって、前記第1電極部と前記第2電極部との間の電気抵抗値を測定することにより、ガスの検知を精度良く行うことができる。
【0013】
本発明の態様5のガスセンサは、態様1または態様2のガスセンサにおいて、前記導電体が、化合物半導体またはシリコン半導体による、ナノチューブまたはナノワイヤであることを特徴としている。
本発明の態様5のガスセンサによれば、絶縁多孔質体に含有させる導電体が化合物半導体またはシリコン半導体による、ナノチューブまたはナノワイヤとされているので、導電体含有多孔質体は、特定のガスと接触した際に電気抵抗値が大きく変化することになり、前記抵抗測定部によって、前記第1電極部と前記第2電極部との間の電気抵抗値を測定することにより、ガスの検知を精度良く行うことができる。
【0014】
本発明の態様6のガスセンサは、態様1から態様5のいずれかひとつのガスセンサにおいて、前記絶縁多孔質体が、紙、糸、不織布、布、リードスティックのいずれか一種とされていることを特徴としている。
本発明の態様6のガスセンサによれば、前記絶縁多孔質体が、紙、糸、不織布、布、リードスティック(吸液芯)のいずれか一種とされているので、これら紙、糸、不織布、布、リードスティック(吸液芯)に導電体を含有させることで容易に導電体含有多孔質体を作製することができる。なお、本発明における紙は、抄紙により成形されるもの全般を含み、本発明における布は、紡織により成形されるもの全般を含む。
また、前記導電体含有多孔質体と測定対象のガスを確実に接触させることができ、ガスを精度良く検知することができる。
さらに、使用後には、前記導電体含有多孔質体を焼却して廃棄することができ、環境負荷を低減することができる。
【0015】
本発明の態様7は、態様1から態様6のいずれかひとつのガスセンサにおいて、前記ガス検知部で検知されるガスが水素ガスであることを特徴としている。
本発明の態様7のガスセンサによれば、前記ガス検知部で検知されるガスが水素ガスとされているので、前記抵抗測定部によって前記第1電極部と前記第2電極部との間の電気抵抗値を測定することにより、水素ガスの検知を行うことができる。
【0016】
本発明の態様8は、態様1から態様6のいずれかひとつのガスセンサにおいて、前記ガス検知部で検知されるガスが酸素ガスであることを特徴としている。
本発明の態様8のガスセンサによれば、前記ガス検知部で検知されるガスが酸素ガスとされているので、前記抵抗測定部によって前記第1電極部と前記第2電極部との間の電気抵抗値を測定することにより、酸素ガスの検知を行うことができる。
【0017】
本発明の態様9は、態様1から態様6のいずれかひとつのガスセンサにおいて、前記ガス検知部で検知されるガスが二酸化炭素ガスであることを特徴としている。
本発明の態様9のガスセンサによれば、前記ガス検知部で検知されるガスが二酸化炭素ガスとされているので、前記抵抗測定部によって前記第1電極部と前記第2電極部との間の電気抵抗値を測定することにより、二酸化炭素ガスの検知を行うことができる。
【0018】
本発明の態様10は、態様1から態様6のいずれかひとつのガスセンサにおいて、前記ガス検知部で検知されるガスが水蒸気ガスであることを特徴としている。
本発明の態様10のガスセンサによれば、前記ガス検知部で検知されるガスが水蒸気ガスとされているので、前記抵抗測定部によって前記第1電極部と前記第2電極部との間の電気抵抗値を測定することにより、水蒸気ガスの検知を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、構造が簡単であって、作製コストが低く取り扱いが容易であり、特定のガスの検知が可能なガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態であるガスセンサの概略説明図である。
図2】本発明の一実施形態であるガスセンサに用いられる導電体含有多孔質体の製造方法の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0022】
本発明の実施形態であるガスセンサ10は、図1に示すように、絶縁多孔質体に導電体を含有させた導電体含有多孔質体20と、この導電体含有多孔質体20の延在方向に間隔をあけて配設された第1電極部11および第2電極部12と、第1電極部11と第2電極部12との間の電気抵抗を測定する抵抗測定部15と、を備えている。本実施形態では、導電体含有多孔質体20の一端(図1において下端)に第1電極部11が配設され、導電体含有多孔質体20の他端(図1において上端)に第2電極部12が配設されている。
そして、本実施形態では、上述の導電体含有多孔質体20が特定のガスを検知するガス検知部とされている。
【0023】
ここで、ガス検知部で検知される特定のガスとしては、例えば、水素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。
本実施形態においては、検知対象のガスを水素ガスとしており、ガスセンサ10は、水素ガスを検知する水素ガスセンサとされている。
【0024】
導電体含有多孔質体20は、絶縁多孔質体に導電体を含有させたものとされている。
ここで、本実施形態においては、導電体は、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料であることが好ましい。この熱電材料は、半導体としての特性を有しており、p型半導体又はn型半導体としての特性を有している。なお、本実施形態においては、導電体含有多孔質体20は、p型半導体又はn型半導体のいずれであってもよい。
【0025】
ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料としては、(a)カーボンナノチューブ(CNT),(b)有機熱電材料、(c)化合物半導体またはシリコン半導体によるナノチューブやナノワイヤ、(d)貴金属化合物、(e)カーボン材料、(f)Bi,Co,Fe,Ni等の金属、などが挙げられる。
なお、導電体含有多孔質体20に含まれる熱電材料は、ゼーベック係数の絶対値が40μV/K以上であることが好ましい。また、(a)から(f)の熱電材料を複合化させて用いても良い。
【0026】
ここで、(a)カーボンナノチューブにおいては、絶縁多孔質体にカーボンナノチューブを含有させることで、導電体含有多孔質体20を構成することができる。
なお、カーボンナノチューブのゼーベック係数は5~170μV/K程度である。
【0027】
(b)有機熱電材料としては、PEDOT系(PEDOT:PSS、PEDOT:Tos等)、π共役ニッケル錯体系(poly(nickel-ethylenetetrathiolate)、N-DMBI系(N,N-dimethyl-2-phenyl-2,3-dihydro-1H-benzoimidazole)等が挙げられる。
なお、PEDOT:PSSのゼーベック係数は10~100μV/K程度である。また、PEDOT:Tosのゼーベック係数は40~210μV/K程度である。π共役ニッケル錯体系のゼーベック係数は-16~-140μV/K程度である。
有機熱電材料においては、絶縁多孔質体に有機熱電材料を含有させることで、導電体含有多孔質体20を構成することができる。
【0028】
(c)化合物半導体またはシリコン半導体によるナノチューブやナノワイヤにおいては、他の多孔質体に窒化ホウ素ナノチューブや、SiSiナノワイヤやBi2Te3Bi2Te3ナノワイヤなどの化合物半導体またはシリコン半導体からなるナノチューブまたはナノワイヤを1種類以上含有させることで、導電体含有多孔質体20を構成することができる。
【0029】
(d)貴金属化合物としては、銅化合物、銀化合物、金化合物、白金化合物等が挙げられる。具体的には、貴金属元素(Cu,Ag,Au,Pt)と、S,Se,Teの化合物であることが好ましい。
貴金属化合物においては、絶縁多孔質体に貴金属化合物を含有させることで、導電体含有多孔質体20を構成することができる。
【0030】
(e)カーボン材料としては、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
カーボン材料においては、絶縁多孔質体にカーボン材料を含有させることで、導電体含有多孔質体20を構成することができる。
【0031】
(f)Bi,Co,Fe,Ni等の金属においては、絶縁多孔質体にBi,Co,Fe,Ni等の金属を含有させることで、導電体含有多孔質体20を構成することができる。なお、めっき法によってBi,Co,Fe,Ni等の金属を絶縁多孔質体に含有させることが好ましい。
【0032】
本実施形態においては、導電体含有多孔質体20は、絶縁多孔質体にカーボンナノチューブ(CNT)が含浸されたものであり、半導体としての特性を有しており、p型半導体又はn型半導体としての特性を有している。なお、本実施形態においては、導電体含有多孔質体20は、p型半導体又はn型半導体のいずれであってもよい。
【0033】
絶縁多孔質体としては、紙、糸、不織布、布、リードスティック等の繊維質のものが好ましい。本実施形態においては、絶縁多孔質体は紙とされており、導電体含有多孔質体20は、CNT含有紙とされている。つまり、絶縁多孔質体として絶縁体である紙を用いた。
また、繊維としては天然繊維でもよく、人工繊維でもよい。複数の繊維を組み合わせた紙、糸、不織布、布、リードスティック等を用いてもよい。
ここで、導電体含有多孔質体20(CNT含有紙)の製造方法の一例について、図2を参照して説明する。
【0034】
図2(1)に示すように、純水にパルプ繊維を投入して十分に撹拌することにより、パルプ繊維が分散したパルプ懸濁液51を得る。
また、図2(2)に示すように、純水に単層カーボンナノチューブを投入して十分撹拌することにより、カーボンナノチューブ分散液52を得る。このとき、単層カーボンナノチューブは、紙原料であるパルプ繊維の重さに対して0.8質量%以上3.2質量%以下の割合とすることが好ましい。また、分散剤を添加する必要はない。また、カーボンナノチューブ分散液52を得る際には、超音波処理を30分間程度行うことが好ましい。
【0035】
次に、図2(3)に示すように、上述のパルプ懸濁液51とカーボンナノチューブ分散液52とを混合して攪拌することによって混合液53を得る。このとき、パルプ繊維にカーボンナノチューブが付着することになる。
そして、図2(4),(5)に示すように、上述の混合液53を紙漉きして乾燥させることにより、導電体含有多孔質体20(CNT含有紙)を得る。
【0036】
本実施形態であるガスセンサ10においては、ガス検知部を構成する導電体含有多孔質体20が水素ガスに曝されると、導電体含有多孔質体20と水素ガスとが接触することにより、導電体含有多孔質体20の電気抵抗値が上昇することになる。
そこで、抵抗測定部15によって、第1電極部11と第2電極部12との間の電気抵抗値を測定しておき、電気抵抗値が上昇した際に、水素ガスが存在すると判断する。
【0037】
以上のような構成とされた本実施形態であるガスセンサ10においては、絶縁多孔質体に導電体を含有させた導電体含有多孔質体20を用いており、この導電体含有多孔質体20がガスを検知するガス検知部とされていることから、ガス検知部である導電体含有多孔質体20が水素ガスに曝された際に、導電体含有多孔質体20の電気抵抗が変化することになる。
したがって、抵抗測定部15により第1電極部11と第2電極部12との間の電気抵抗値を測定することによって、水素ガスの検知を行うことができる。
【0038】
また、本実施形態であるガスセンサ10においては、ガス検知部を構成する導電体含有多孔質体20が導電体を絶縁多孔質体に含有させたものとされているので、カーボンナノチューブ等を配設する基板が不要となって構造が簡単となり、取り扱いが容易である。また、構造が簡単であるとともに触媒等が不要であることから、作製コストを大幅に削減することができる。
【0039】
また、本実施形態であるガスセンサ10において、導電体が、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料とされている場合には、導電体含有多孔質体20は、特定のガスと接触した際に電気抵抗値が大きく変化することになり、抵抗測定部15によって、第1電極部11と第2電極部12との間の電気抵抗値を測定することにより、ガスの検知を精度良く行うことができる。
【0040】
さらに、本実施形態であるガスセンサ10において、導電体が、カーボンナノチューブとされている場合には、導電体含有多孔質体20は、特定のガスと接触した際に電気抵抗値が大きく変化することになり、抵抗測定部15によって、第1電極部11と第2電極部12との間の電気抵抗値を測定することにより、ガスの検知を精度良く行うことができる。
【0041】
また、本実施形態であるガスセンサ10において、絶縁多孔質体が、紙、糸、不織布、布、リードスティックのいずれか一種である場合には、紙、糸、不織布、布、リードスティックに導電体を含有させることで容易に導電体含有多孔質体20を作製することができる。
さらに、ガス検知部を構成する導電体含有多孔質体20と測定対象のガスを確実に接触させることができ、ガスを精度良く検知することができる。
さらに、使用後には、導電体含有多孔質体20を焼却して廃棄することができ、環境負荷を低減することができる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態においては、検知するガスとして水素ガスを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、検知するガスを酸素ガスとしてもよいし、二酸化炭素ガスとしてもよい。
【0043】
また、本実施形態においては、絶縁多孔質体を紙とした導電体含有多孔質体(CNT含有紙)を用いるものとして説明したが、これに限定されることはなく、絶縁多孔質体を糸とした導電体含有多孔質体(例えば、CNT含有糸)であってもよいし、絶縁多孔質体を不織布とした導電体含有多孔質体(例えば、CNT含有不織布)であってもよいし、絶縁多孔質体を布とした導電体含有多孔質体(例えば、CNT含有布)であってもよく、絶縁多孔質体をリードスティックとした導電体含有多孔質体(例えば、CNT含有リードスティック)であってもよい。
なお、導電体含有多孔質体(CNT含有糸)は、以下に示す手法によって製造することができる。
【0044】
カーボンナノチューブの糸への含有方法については、基本的には手工染色等の手法と同様である。ベースとなる糸をカーボンナノチューブ分散液に浸し、この状態で分散液を沸騰しない程度に加熱(60℃前後)し、水分を飛ばすことで濃縮されたカーボンナノチューブが糸をコーティングするような手法を取ることもできる。このような含浸法によれば、より多くのカーボンナノチューブが糸に含浸される。
【0045】
なお、CNT含有糸を作製するのに必要なベースとなる糸(基材)には、一般的に使用されている綿糸,麻糸,羊毛,絹等の自然由来の糸もしくは化学合成由来のポリエステル,ナイロン等の合成繊維糸が用いられるが、これらの混合糸が用いられてもよい。
ここで、合成繊維のように染料が染みこまないタイプの糸については、その表面にカーボンナノチューブ分散液を塗布して、乾燥させることにより、CNT含有糸を作製してもよい。
【実施例0046】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
【0047】
本実施形態に示すガスセンサを、ガス導入口とガス放出口を有するとともに、容積6.5×10-3とされた密閉容器内に配置した。水蒸気ガスの検知の実施形態は、超音波式加湿器および80℃に加熱した水を用意し、加湿器からのミスト出口から1cmの距離および80℃に加熱した水の液面から1cmの距離にガスセンサの第1電極部に水蒸気ガスを接触させた。
ガス導入口から表1に示すガス(純度が95%以上の高純度ガス)を2.0×10-4/secで導入し、抵抗測定部によって第1電極部と第2電極部との間の電気抵抗値を測定した。そして、ガスの導入開始、または水蒸気ガスの接触時から10秒後における電気抵抗値とガス導入前の電気抵抗値からの電気抵抗の変化があったガスは、検知の可否を「可」とした。評価結果を表1に示す。
具体的には、水素ガスにおける電気抵抗変化率は、0.04%であった。つまり、水素ガス導入によって電気抵抗値が0.04%上昇した。また、窒素ガスにおける電気抵抗変化率は、0.00%であった。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、水素ガスを導入した場合には、水素ガスの導入に伴って電気抵抗値が上昇していることが確認される。よって、抵抗測定部において第1電極部と第2電極部との間の電気抵抗値することで水素ガスを検知することが可能となる。
なお、窒素ガスを導入した場合には、窒素ガスの導入に伴う電気抵抗値の変化は認められなかった。このため、窒素ガスの検知はできない。
【0050】
また、表1に示すように、酸素ガスを導入した場合には、酸素ガスの導入に伴って電気抵抗値が変化していることが確認される。よって、抵抗測定部において第1電極部と第2電極部との間の電気抵抗値することで酸素ガスを検知することが可能となる。
さらに、二酸化炭素ガスを導入した場合には、二酸化炭素ガスの導入に伴って電気抵抗値が変化していることが確認される。よって、抵抗測定部において第1電極部と第2電極部との間の電気抵抗値することで二酸化炭素ガスを検知することが可能となる。
一方で、水蒸気ガスを接触させた場合には、水蒸気ガスの接触に伴って電気抵抗値が変化していることが確認される。よって、抵抗測定部において第1電極部と第2電極部との間の電気抵抗値することで水蒸気ガスを検知することが可能となる。
【0051】
以上のことから、本発明によれば、構造が簡単であって、作製コストが低く取り扱いが容易であり、特定のガスの検知が可能なガスセンサを提供可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 ガスセンサ
11 第1電極部
12 第2電極部
15 抵抗測定部
20 導電体含有多孔質体
図1
図2