IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱マテリアル株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人横浜国立大学の特許一覧

<>
  • 特開-熱電発電モジュール 図1
  • 特開-熱電発電モジュール 図2
  • 特開-熱電発電モジュール 図3
  • 特開-熱電発電モジュール 図4
  • 特開-熱電発電モジュール 図5
  • 特開-熱電発電モジュール 図6
  • 特開-熱電発電モジュール 図7
  • 特開-熱電発電モジュール 図8
  • 特開-熱電発電モジュール 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031867
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】熱電発電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20240229BHJP
   H10N 10/13 20230101ALI20240229BHJP
   H10N 10/855 20230101ALI20240229BHJP
   H10N 10/856 20230101ALI20240229BHJP
   H10N 10/851 20230101ALI20240229BHJP
【FI】
H02N11/00 A
H10N10/13
H10N10/855
H10N10/856
H10N10/851
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132040
(22)【出願日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2022134171
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】新井 皓也
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雅大
(72)【発明者】
【氏名】大矢 剛嗣
(57)【要約】
【課題】構造が簡単で取り扱いが容易であって、簡易にかつ効率的に発電可能な熱電発電モジュールを提供する。
【解決手段】ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体20と、この熱電材料含有多孔質体20に接続された第1電極部11および第2電極部12と、を備え、熱電材料含有多孔質体20の一端側が液体3に浸漬される浸漬部21とされ、熱電材料含有多孔質体20の他端側が非浸漬部22とされており、浸漬部21において液体3が吸い上げられるとともに、吸い上げられた液体3が非浸漬部22において揮発し、液体3が揮発する際の気化熱により、熱電材料含有多孔質体20の一端側と他端側とで温度差を生じさせ、この温度差によって発電する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体と、この熱電材料含有多孔質体に接続された第1電極部および第2電極部と、を備え、
前記熱電材料含有多孔質体の一端側が液体に浸漬される浸漬部とされ、前記熱電材料含有多孔質体の他端側が非浸漬部とされており、
前記浸漬部において前記液体が吸い上げられるとともに、吸い上げられた前記液体が前記非浸漬部において揮発し、前記液体が揮発する際の気化熱により、前記熱電材料含有多孔質体の一端側と他端側とで温度差を生じさせ、この温度差によって発電することを特徴とする熱電発電モジュール。
【請求項2】
前記熱電材料が、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項3】
前記熱電材料が、有機熱電材料であることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項4】
前記熱電材料が、化合物半導体またはシリコン半導体による、ナノチューブまたはナノワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項5】
前記多孔質体が、紙、糸、不織布、布、リードスティックのいずれか一種であることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項6】
前記液体が、常温で揮発可能な揮発性液体であることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項7】
前記熱電材料含有多孔質体は、p型熱電材料を含むp型熱電材料含有多孔質体とn型熱電材料を含むn型熱電材料含有多孔質体とを有し、前記p型熱電材料含有多孔質体と前記n型熱電材料含有多孔質体とが直列接続されていることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項8】
前記熱電材料含有多孔質体は、p型熱電材料を含むp型熱電材料含有多孔質体またはn型熱電材料を含むn型熱電材料含有多孔質体のいずれか一方とされており、導電体を含む多孔質体からなる導電体含有多孔質体と前記熱電材料含有多孔質体とが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項9】
前記液体を保持する液体保持部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項10】
前記液体保持部には、複数の前記熱電材料含有多孔質体の一端が浸漬されており、隣接する前記熱電材料含有多孔質体の前記浸漬部同士の間に仕切部が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の熱電発電モジュール。
【請求項11】
浮具を備えていること特徴とする請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項12】
一方の斜壁部と他方の斜壁部が連なるコルゲート構造の多孔質体を有し、少なくとも前記一方の斜壁部が前記熱電材料含有多孔質体とされていることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゼーベック効果によって温度差を利用して発電を行う熱電発電モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述の熱電発電モジュールとして、熱エネルギーと電気エネルギーとを相互に変換可能な熱電変換素子を用いたものが提案されている。
ゼーベック効果は、熱電変換素子の両端に温度差を生じさせると起電力が発生する現象であり、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。近年では、この効果を利用した熱電発電の開発が盛んである。
【0003】
ここで、例えば特許文献1,2には、上述の熱電変換素子としてカーボンナノチューブを用いた熱電発電モジュールが提案されている。
特許文献1,2に開示された熱電発電モジュールにおいては、熱電変換素子の一端と他端とに温度差を生じさせることによって発電を行うことになる。よって、温度差を生じさせるために熱源を確保する必要があった。
【0004】
そこで、非特許文献1には、表面にカーボンナノチューブを配設した絶縁基板の一部に貫通孔を形成し、貫通孔が形成された箇所と貫通孔が形成されていない箇所に電極を配設した構造の熱電発電モジュールが提案されている。
この非特許文献1の熱電発電モジュールにおいては、水面に浮かべることで、貫通孔が形成された箇所で水が吸い上げられ、この水が気化する際の気化熱によって、カーボンナノチューブの貫通孔が形成された箇所と貫通孔が形成されていない箇所との間に温度差を生じさせ、この温度差によって発電する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6553191号公報
【特許文献2】特開2022-041264号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tomoyuki Chiba , Yuki Amma & Masayuki Takashiri ; “Heat source free water floating carbon nanotube thermoelectric generators” ; [online] ; 2021年 ; nature ; インターネット <URL: https://www.nature.com/articles/s41598-021-94242-0>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、非特許文献1に記載された熱電発電モジュールにおいては、カーボンナノチューブが配設された絶縁基板を水面に浮かべていることから、カーボンナノチューブが配設された絶縁基板が水温と同様の温度となり、カーボンナノチューブには気化熱によってのみ温度差が生じることになり、発電効率を向上させるためには、気化熱の量を大幅に増大させる必要があった。また、水面に浮かべられた絶縁基板の一部の表面からの水の気化熱しか利用できず、効率的に発電することができなかった。
さらに、特許文献1,2に記載の熱電発電モジュールや非特許文献1に記載された熱電発電モジュールにおいては、絶縁基板の表面にカーボンナノチューブを配設していることから、形状の自由度が低く、かつ、構造が複雑であり、取り扱いが困難であった。
【0008】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、構造が簡単で取り扱いが容易であって、簡易にかつ効率的に発電可能な熱電発電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の態様1の熱電発電モジュールは、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体と、この熱電材料含有多孔質体に接続された第1電極部および第2電極部と、を備え、前記熱電材料含有多孔質体の一端側が液体に浸漬される浸漬部とされ、前記熱電材料含有多孔質体の他端側が非浸漬部とされており、前記浸漬部において前記液体が吸い上げられるとともに、吸い上げられた前記液体が前記非浸漬部において揮発し、前記液体が揮発する際の気化熱により、熱電材料含有多孔質体の一端側と他端側とで温度差を生じさせ、この温度差によって発電することを特徴としている。
【0010】
本発明の態様1の熱電発電モジュールによれば、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体に第1電極部および第2電極部が接続され、前記熱電材料含有多孔質体の一端側が液体に浸漬される浸漬部とされており、この浸漬部で吸い上げられた前記液体が前記非浸漬部で蒸発する際の気化熱により、前記熱電材料含有多孔質体の一端側と他端側とで温度差を生じさせているので、この温度差によって発電を行うことができる。また、熱電材料含有多孔質体の一端が浸漬部とされ、他端が非浸漬部とされて液体の外部に配設されているので、外気と液体との間の温度差も利用することができる。
また、熱電材料等を配設する絶縁基板が不要となり、構造が簡単となり、取り扱いが容易である。
さらに、熱電材料含有多孔質体のうち液体に浸漬されていない箇所の全面から液体を気化させることができ、気化量を確保でき、気化熱による温度差により、効率的に発電することができる。
なお、前記多孔質体は、毛細管現象が生じる構造体であることが好ましい。また、前記多孔質体は濡れることで発熱を生じる吸湿発熱体であることが好ましい。これにより浸漬部分と浸漬されていない部分の温度差を大きくすることができ、効率的に発電することができる。
【0011】
本発明の態様2の熱電発電モジュールは、態様1の熱電発電モジュールにおいて、前記熱電材料が、カーボンナノチューブであることを特徴としている。
本発明の態様2の熱電発電モジュールによれば、前記熱電材料が、カーボンナノチューブとされているので、カーボンナノチューブ自体を多孔質構造とすることにより熱電材料含有多孔質体を構成することも可能であるし、絶縁性の多孔質体にカーボンナノチューブを含有させることで前記熱電材料含有多孔質体を構成することも可能である。
また、熱電材料含有多孔質体の一端に形成された浸漬部から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体の一端側と他端側で温度差を確保することができる。
さらに、使用後には、熱電材料含有多孔質体を焼却して廃棄することができ、環境負荷を低減することができる。
【0012】
本発明の態様3の熱電発電モジュールは、態様1の熱電発電モジュールにおいて、前記熱電材料が、有機熱電材料であることを特徴としている。
本発明の態様3の熱電発電モジュールによれば、前記熱電材料が、有機熱電材料とされているので、有機熱電材料自体を多孔質構造とすることにより熱電材料含有多孔質体を構成することも可能であるし、絶縁性の多孔質体に有機熱電材料を含有させることで前記熱電材料含有多孔質体を構成することも可能である。
また、熱電材料含有多孔質体の一端に形成された浸漬部から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体の一端側と他端側で温度差を確保することができる。
【0013】
本発明の態様4の熱電発電モジュールは、態様1の熱電発電モジュールにおいて、前記熱電材料が、化合物半導体またはシリコン半導体による、ナノチューブまたはナノワイヤであることを特徴としている。
本発明の態様4の熱電発電モジュールによれば、前記熱電材料が、化合物半導体またはシリコン半導体による、ナノチューブまたはナノワイヤとされているので、ナノチューブまたはナノワイヤ自体を多孔質構造とすることにより熱電材料含有多孔質体を構成することも可能であるし、絶縁性の多孔質体にナノチューブまたはナノワイヤを含有させることで前記熱電材料含有多孔質体を構成することも可能である。
また、熱電材料含有多孔質体の一端に形成された浸漬部から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体の一端側と他端側で温度差を確保することができる。
【0014】
本発明の態様5の熱電発電モジュールは、態様1から態様4のいずれか一つの熱電発電モジュールにおいて、前記多孔質体が、紙、糸、不織布、布、リードスティックのいずれか一種であることを特徴としている。
本発明の態様5の熱電発電モジュールによれば、前記多孔質体が、紙、糸、不織布、布、リードスティック(吸液芯)のいずれか一種とされているので、これら紙、糸、不織布、布、リードスティック(吸液芯)に熱電材料を含有させることで容易に熱電材料含有多孔質体を作製することができる。
また、熱電材料含有多孔質体の一端に形成された浸漬部から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体の一端側と他端側で温度差を確保することができる。
【0015】
本発明の態様6の熱電発電モジュールは、態様1から態様5のいずれか一つの熱電発電モジュールにおいて、前記液体が、常温で揮発可能な揮発性液体であることを特徴としている。
本発明の態様6の熱電発電モジュールによれば、前記液体が、常温で揮発可能な揮発性液体とされているので、常温で使用しても熱電材料含有多孔質体の他端側の非浸漬部において液体を気化させることができ、気化熱による温度差によって確実に発電を行うことが可能となる。
【0016】
本発明の態様7の熱電発電モジュールは、態様1から態様6のいずれか一つの熱電発電モジュールにおいて、前記熱電材料含有多孔質体は、p型熱電材料を含むp型熱電材料含有多孔質体とn型熱電材料を含むn型熱電材料含有多孔質体とを有し、前記p型熱電材料含有多孔質体と前記n型熱電材料含有多孔質体とが直列接続されていることを特徴としている。
本発明の態様7の熱電発電モジュールによれば、前記p型熱電材料含有多孔質体と前記n型熱電材料含有多孔質体とが直列接続されているので、発電効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0017】
本発明の態様8の熱電発電モジュールは、態様1から態様6のいずれか一つの熱電発電モジュールにおいて、前記熱電材料含有多孔質体は、p型熱電材料を含むp型熱電材料含有多孔質体またはn型熱電材料を含むn型熱電材料含有多孔質体のいずれか一方とされており、導電体を含む多孔質体からなる導電体含有多孔質体と前記熱電材料含有多孔質体とが接続されていることを特徴としている。
本発明の態様8の熱電発電モジュールによれば、導電体を含む多孔質体からなる導電体含有多孔質体と前記熱電材料含有多孔質体とが接続されているので、浸漬部から液体を確実に吸い上げることができ、この液体の気化熱によって熱電材料含有多孔質体の一端側と他端側で温度差を確保することができる。
【0018】
本発明の態様9の熱電発電モジュールは、態様1から態様8のいずれか一つの熱電発電モジュールにおいて、前記液体を保持する液体保持部を備えていることを特徴としている。
本発明の態様9の熱電発電モジュールによれば、前記液体を保持する液体保持部を備えているので、液体保持部に液体を保持しておき、この液体に前記熱電材料含有多孔質体の一端側に形成された浸漬部を浸漬することで、気化熱による温度差によって発電を行うことが可能となる。
【0019】
本発明の態様10の熱電発電モジュールは、態様9の熱電発電モジュールにおいて、前記液体保持部には、複数の前記熱電材料含有多孔質体の一端が浸漬されており、隣接する前記熱電材料含有多孔質体の前記浸漬部同士の間に仕切部が設けられていることを特徴としている。
本発明の態様10の熱電発電モジュールによれば、前記液体保持部には、複数の前記熱電材料含有多孔質体の一端が浸漬されており、隣接する前記熱電材料含有多孔質体の前記浸漬部同士の間に仕切部が設けられているので、隣接する前記熱電材料含有多孔質体同士が接触して短絡することや液体によって短絡することを抑制でき、発電効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0020】
本発明の態様11の熱電発電モジュールは、態様1から態様8のいずれか一つの熱電発電モジュールにおいて、浮具を備えていることを特徴としている。
本発明の態様11の熱電発電モジュールによれば、浮具を備えているので、この浮具を用いて、既存の液体貯留部(例えば、池、タンク等)の液面に熱電発電モジュールを浮かべ、前記熱電材料含有多孔質体の一端側に形成された浸漬部を液体に浸漬し、前記熱電材料含有多孔質体の他端側の非浸漬部が液体の外部に位置するように配置することで、気化熱による温度差によって発電を行うことが可能となる。
【0021】
本発明の態様12の熱電発電モジュールは、態様1から態様11のいずれか一つの熱電発電モジュールにおいて、一方の斜壁部と他方の斜壁部が連なるコルゲート構造の多孔質体を有し、少なくとも前記一方の斜壁部が前記熱電材料含有多孔質体とされていることを特徴としている。
本発明の態様12の熱電発電モジュールによれば、一方の斜壁部と他方の斜壁部が連なるコルゲート構造の多孔質体を有し、少なくとも前記一方の斜壁部が前記熱電材料含有多孔質体とされているので、構造が簡単であり、比較的容易に熱電発電モジュールを作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、構造が簡単で取り扱いが容易であって、簡易にかつ効率的に発電可能な熱電発電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第一の実施形態である熱電発電モジュールの概略説明図である。
図2】本発明の熱電発電モジュールに用いられる熱電材料含有多孔質体の製造方法の概略説明図である。
図3】本発明の第二の実施形態である熱電発電モジュールの概略説明図である。
図4】本発明の他の実施形態である熱電発電モジュールの概略説明図である。
図5】本発明の他の実施形態である熱電発電モジュールの概略説明図である。
図6】本発明の他の実施形態である熱電発電モジュールの概略説明図である。
図7】本発明の他の実施形態である熱電発電モジュールの概略説明図である。
図8】本発明の他の実施形態である熱電発電モジュールの概略説明図である。
図9】本発明の他の実施形態である熱電材料含有多孔質体の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0025】
(第一の実施形態)
まず、本発明の第一の実施形態である熱電発電モジュールについて説明する。
本実施形態に係る熱電発電モジュール10は、図1に示すように、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体20と、この熱電材料含有多孔質体20に接続された第1電極部11および第2電極部12と、を備えている。
また、本実施形態においては、図1に示すように、液体3を保持する液体保持部30を備えている。
【0026】
液体保持部30に保持される液体3は、常温(20℃)で揮発する揮発性液体であることが好ましい。揮発性液体としては、例えば、水、各種アルコール等が挙げられる。本実施形態では、液体3は水とされている。
【0027】
そして、熱電材料含有多孔質体20の一端側(図1において下端側)が液体3に浸漬される浸漬部21とされ、熱電材料含有多孔質体20の他端側(図1において上端側)が液体3に浸漬されない非浸漬部22とされている。
本実施形態では、図1に示すように、熱電材料含有多孔質体20の一端に第1電極部11が配設され、熱電材料含有多孔質体20の他端に第2電極部12が配設されている。すなわち、本実施形態では、第1電極部11は液体3の中に配設されている。
【0028】
熱電材料含有多孔質体20は、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体で構成されている。
ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料は、半導体としての特性を有しており、p型半導体又はn型半導体としての特性を有している。なお、本実施形態においては、熱電材料含有多孔質体20は、p型半導体又はn型半導体のいずれであってもよい。
ここで、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料としては、(a)カーボンナノチューブ(CNT),(b)有機熱電材料、(c)化合物半導体またはシリコン半導体によるナノチューブやナノワイヤ、(d)貴金属化合物、(e)カーボン材料、(f)Bi,Co,Fe,Ni等の金属、などが挙げられる。
なお、熱電材料含有多孔質体20に含まれる熱電材料は、ゼーベック係数の絶対値が40μV/K以上であることが好ましい。また、(a)から(f)の熱電材料を複合化させて用いても良い。
【0029】
ここで、(a)カーボンナノチューブにおいては、カーボンナノチューブ自体を多孔質構造(紙、糸、不織布、布、リードスティック等)とすることで熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。また、他の多孔質体にカーボンナノチューブを含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。
なお、カーボンナノチューブのゼーベック係数は5~170μV/K程度である。
【0030】
(b)有機熱電材料としては、PEDOT系(PEDOT:PSS、PEDOT:Tos等)、π共役ニッケル錯体系(poly(nickel-ethylenetetrathiolate)、N-DMBI系(N,N-dimethyl-2-phenyl-2,3-dihydro-1H-benzoimidazole)等が挙げられる。
なお、PEDOT:PSSのゼーベック係数は10~100μV/K程度である。また、PEDOT:Tosのゼーベック係数は40~210μV/K程度である。π共役ニッケル錯体系のゼーベック係数は-16~-140μV/K程度である。
有機熱電材料においては、有機熱電材料自体を多孔質構造(紙、糸、不織布、布、リードスティック等)とすることで熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。また、他の多孔質体に有機熱電材料を含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。
【0031】
(c)化合物半導体またはシリコン半導体によるナノチューブやナノワイヤにおいては、他の多孔質体に窒化ホウ素ナノチューブや、SiナノワイヤやBiTeナノワイヤなどの化合物半導体、または、シリコン半導体からなるナノチューブまたはナノワイヤを1種類以上含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。
【0032】
(d)貴金属化合物としては、銅化合物、銀化合物、金化合物、白金化合物等が挙げられる。具体的には、貴金属元素(Cu,Ag,Au,Pt)と、S,Se,Teの化合物であることが好ましい。
貴金属化合物においては、他の多孔質体に貴金属化合物を含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。
【0033】
(e)カーボン材料としては、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
カーボン材料においては、他の多孔質体にカーボン材料を含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。
【0034】
(f)Bi,Co,Fe,Ni等の金属においては、他の多孔質体にBi,Co,Fe,Ni等の金属を含有させることで、熱電材料含有多孔質体20を構成することができる。なお、めっき法によってBi,Co,Fe,Ni等の金属を他の多孔質体に含有させることが好ましい。
【0035】
本実施形態においては、熱電材料含有多孔質体20は、多孔質体にカーボンナノチューブ(CNT)が含浸されたものであり、半導体としての特性を有しており、p型半導体又はn型半導体としての特性を有している。なお、本実施形態においては、熱電材料含有多孔質体20は、p型半導体又はn型半導体のいずれであってもよい。
【0036】
多孔質体としては、紙、糸、不織布、布、リードスティック等の繊維質のものが好ましい。本実施形態においては、多孔質体は紙とされており、熱電材料含有多孔質体20は、CNT含有紙とされている。なお、繊維としては天然繊維でも人工繊維でもよく、複数の繊維を組み合わせた紙、糸、不織布、布、リードスティック等を用いても良い。
また、多孔質体としては、毛細管現象が生じる構造体であることが好ましく、紙、糸、不織布、布、リードスティック以外にも板、フィルム、網、中空糸等が使用可能である。なお、多孔質体は、絶縁性多孔質体であることが好ましい。多孔質体は吸湿発熱体であることが好ましく、濡れることで生じる材料表面の水和反応による発熱や、材料の膨潤に伴う歪の解放による発熱の効果を有するものであれば、非浸漬部22との温度差を大きくとることが可能となり、発電を効率的に行うことができる。
ここで、熱電材料含有多孔質体20(CNT含有紙)の製造方法の一例について、図2を参照して説明する。
【0037】
図2(1)に示すように、純水にパルプ繊維を投入して十分に撹拌することにより、パルプ繊維が分散したパルプ懸濁液51を得る。
また、図2(2)に示すように、純水に単層カーボンナノチューブを投入して十分撹拌することにより、カーボンナノチューブ分散液52を得る。このとき、単層カーボンナノチューブは、紙原料であるパルプ繊維の重さに対して0.8質量%以上8.0質量%以下の割合とすることが好ましい。また、分散剤を添加する必要はない。また、カーボンナノチューブ分散液52を得る際には、超音波処理を30分間程度行うことが好ましい。
【0038】
次に、図2(3)に示すように、上述のパルプ懸濁液51とカーボンナノチューブ分散液52とを混合して攪拌することによって混合液53を得る。このとき、パルプ繊維にカーボンナノチューブが付着することになる。
そして、図2(4),(5)に示すように、上述の混合液53を紙漉きして乾燥させることにより、熱電材料含有多孔質体20(CNT含有紙)を得る。
【0039】
本実施形態である熱電発電モジュール10においては、図1に示すように、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む熱電材料含有多孔質体20の一端側が液体3に浸漬される浸漬部21とされていることから、多孔質体の孔部を介して液体3が吸い上げられる。吸い上げられた液体3は、熱電材料含有多孔質体20の他端側へと移動し、液体3の外部に配設された非浸漬部22において揮発することになる。このときの気化熱によって非浸漬部22の温度が低下する。
これにより、熱電材料含有多孔質体20の一端側に配設された第1電極部11と熱電材料含有多孔質体20の他端側に配設された第2電極部12との間に温度差が生じる。すなわち、本実施形態においては、液面に対して交差する方向(液面から離間する方向)に温度差が生じる構成とされている。この温度差によって第1電極部11と第2電極部12との間に電位差が生じることになる。
【0040】
以上のような構成とされた本実施形態である熱電発電モジュール10においては、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体20の一端側に第1電極部11が接続され、熱電材料含有多孔質体20の他端に第2電極部12が接続されており、熱電材料含有多孔質体20の浸漬部21で吸い上げられた液体3が非浸漬部22で揮発する際の気化熱により、熱電材料含有多孔質体20の一端側と他端側とで温度差を生じさせているので、この温度差によって発電を行うことができる。
【0041】
また、本実施形態である熱電発電モジュール10においては、熱電材料含有多孔質体20の他端側が非浸漬部22とされて液体3の外部に配設されているので、外気と液体3との間の温度差も利用することができる。
さらに、熱電材料含有多孔質体20のうち液体3に浸漬されていない非浸漬部22の全面から液体3を揮発させることができ、気化量が多くなり、気化熱による温度差によって効率的に発電することができる。
特に、本実施形態においては、液面に対して交差する方向(液面から離間する方向)に温度差が生じる構成とされているので、効率的に液体3を気化させることができるとともに、外気と液体3との間の温度差をさらに利用することができ、効率的に発電することができる。また、液体3が親水性の場合は、熱電材料含有多孔体20に対して、界面活性剤の添加やプラズマ照射により表面を親水化することで効率よく液体3を吸い上げることが可能となり、気化熱による温度差を増加させることができ、効率的に発電することができる。液体3が疎水性の場合は、熱電材料含有多孔体20に対して、疎水処理を行うとよい。つまり、液体3の親水性、疎水性に合わせて、熱電材料含有多孔体20に対して親水性、疎水性の表面処理を行うと良い。
【0042】
また、本実施形態である熱電発電モジュール10においては、カーボンナノチューブを多孔質体に含浸させているので、カーボンナノチューブ等を配設する絶縁基板が不要となり、構造が簡単となり、取り扱いが容易である。
さらに、多孔質体を用いているので、浸漬部21において毛細管現象によって液体3を効率的に吸い上げることができるとともに、非浸漬部22において液体3を効率的に揮発することができる。
【0043】
また、本実施形態である熱電発電モジュール10において、多孔質体が、紙、糸、不織布、布、リードスティックのいずれか一種である場合には、紙、糸、不織布、布、リードスティックにカーボンナノチューブを含有させることで容易に熱電材料含有多孔質体20を作製することができる。また、熱電材料含有多孔質体20の浸漬部21から液体3を確実に吸い上げることができる。
さらに、使用後には、熱電材料含有多孔質体20を焼却して廃棄することができ、環境負荷を低減することができる。
【0044】
また、本実施形態である熱電発電モジュール10において、液体3が、常温で揮発可能な揮発性液体である場合には、常温で使用しても熱電材料含有多孔質体20の浸漬部21から吸い上げられた液体3を非浸漬部22で効率的に気化させることができ、気化熱による温度差によって発電を行うことが可能となる。
【0045】
さらに、本実施形態である熱電発電モジュール10において、液体3を保持する液体保持部30を備えている場合には、液体保持部30に保持されたに液体3に、熱電材料含有多孔質体20の浸漬部21を浸漬することができる。よって、熱電材料含有多孔質体20の浸漬部21から吸い上げられた液体3を非浸漬部22で気化させることができ、気化熱による温度差によって発電を行うことが可能となる。また、液体3を熱電発電モジュール10に供給する方法として、液体保持部30に任意の量の液体を注ぐ方法のほかに、河川などから常時液体を供給してもよく、あるいは熱電材料含有多孔質体20の浸漬部21蒸気を当てて凝縮により液体を発生させることで浸漬させ、非浸漬部22との温度差によって発電を行う方法でもよい。
【0046】
(第二の実施形態)
次に、本発明の第二の実施形態である熱電発電モジュール110について説明する。
本実施形態に係る熱電発電モジュール110は、図3に示すように、ゼーベック係数の絶対値が3μV/K以上の熱電材料を含む多孔質体からなる熱電材料含有多孔質体120として、複数のp型熱電材料含有多孔質体(第1p型熱電材料含有多孔質体120P1,第2p型熱電材料含有多孔質体120P2)と、複数のn型熱電材料含有多孔質体(第1n型熱電材料含有多孔質体120N1,第2n型熱電材料含有多孔質体120N2)とを有している。
【0047】
本実施形態においては、図3に示すように、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1の一端(図3においては下端)と第1n型熱電材料含有多孔質体120N1の一端(図3においては下端)が第1連結部115によって接続され、第1n型熱電材料含有多孔質体120N1の他端(図3においては上端)と第2p型熱電材料含有多孔質体120P2の他端(図3においては上端)が第2連結部116によって接続され、第2p型熱電材料含有多孔質体120P2の一端(図3においては下端)と第2n型熱電材料含有多孔質体120N2の一端(図3においては下端)が第3連結部117によって接続されている。
【0048】
また、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1の他端に第1電極部111が配設されており、第2n型熱電材料含有多孔質体120N2の他端に第2電極部112が配設されている。
すなわち、本実施形態では、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1,第1n型熱電材料含有多孔質体120N1,第2p型熱電材料含有多孔質体120P2,第2n型熱電材料含有多孔質体120N2が、直列接続されている。
【0049】
そして、本実施形態においては、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1,第1n型熱電材料含有多孔質体120N1,第2p型熱電材料含有多孔質体120P2,第2n型熱電材料含有多孔質体120N2の一端側が、液体3に浸漬される浸漬部121とされており、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1,第1n型熱電材料含有多孔質体120N1,第2p型熱電材料含有多孔質体120P2,第2n型熱電材料含有多孔質体120N2の他端側が、非浸漬部122とされている。
よって、本実施形態においては、第1連結部115および第3連結部117は液体3に浸漬されており、第2連結部116、第1電極部111、第2電極部112は、液体3の外部に配設されることになる。
【0050】
本実施形態である熱電発電モジュール110においては、図3に示すように、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1,第1n型熱電材料含有多孔質体120N1,第2p型熱電材料含有多孔質体120P2,第2n型熱電材料含有多孔質体120N2の一端側が液体3に浸漬される浸漬部121とされていることから、多孔質体の孔部を介して液体3が吸い上げられる。吸い上げられた液体3は、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1,第1n型熱電材料含有多孔質体120N1,第2p型熱電材料含有多孔質体120P2,第2n型熱電材料含有多孔質体120N2の他端側へと移動し、液体3の外部に配設された非浸漬部122において揮発することになる。このときの気化熱によって非浸漬部122の温度が低下する。
【0051】
これにより、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1,第1n型熱電材料含有多孔質体120N1,第2p型熱電材料含有多孔質体120P2,第2n型熱電材料含有多孔質体120N2の一端側と他端側とで温度差が生じ、この温度差によって発電することになる。
そして、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1,第1n型熱電材料含有多孔質体120N1,第2p型熱電材料含有多孔質体120P2,第2n型熱電材料含有多孔質体120N2が直列で接続されており、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1の他端に接続された第1電極部111と第2n型熱電材料含有多孔質体120N2の他端に接続された第2電極部112との間に電位差が生じることになる。
【0052】
以上のような構成とされた本実施形態である熱電発電モジュール110においては、第一の実施形態と同様に、液体3の気化熱によって、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1,第1n型熱電材料含有多孔質体120N1,第2p型熱電材料含有多孔質体120P2,第2n型熱電材料含有多孔質体120N2の一端側と他端側とで温度差が生じ、発電を行うことができる。
そして、本実施形態においては、第1p型熱電材料含有多孔質体120P1,第1n型熱電材料含有多孔質体120N1,第2p型熱電材料含有多孔質体120P2,第2n型熱電材料含有多孔質体120N2が直列接続されているので、発電効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、熱電発電モジュールとしての強度を確保するために、熱電材料含有多孔質体を支持体(台紙、基板等)に配置してもよい。
【0054】
また、本発明の第二の実施形態では、複数のp型熱電材料含有多孔質体およびn型熱電材料含有多孔質体を平面状に配置して直列接合したものとして説明したが、これに限定されることはなく、図4に示す熱電発電モジュール210のように、複数のp型熱電材料含有多孔質体(第1p型熱電材料含有多孔質体220P1,第2p型熱電材料含有多孔質体220P2)、および、複数のn型熱電材料含有多孔質体(第1n型熱電材料含有多孔質体220N1,第2n型熱電材料含有多孔質体220N2)を3次元に配置し、これらを直列接合してもよい。
【0055】
図4に示す熱電発電モジュール210においては、第1p型熱電材料含有多孔質体220P1の一端と第1n型熱電材料含有多孔質体220N1の一端が第1連結部215によって接続され、第1n型熱電材料含有多孔質体220N1の他端と第2p型熱電材料含有多孔質体220P2の他端が第2連結部216によって接続され、第2p型熱電材料含有多孔質体220P2の一端と第2n型熱電材料含有多孔質体220N2の一端が第3連結部217によって接続されている。
また、第1p型熱電材料含有多孔質体220P1の他端に第1電極部211が配設されており、第2n型熱電材料含有多孔質体220N2の他端に第2電極部212が配設されている。
【0056】
そして、第1p型熱電材料含有多孔質体220P1,第1n型熱電材料含有多孔質体220N1,第2p型熱電材料含有多孔質体220P2,第2n型熱電材料含有多孔質体220N2の一端側が、液体3に浸漬される浸漬部221とされており、第1p型熱電材料含有多孔質体220P1,第1n型熱電材料含有多孔質体220N1,第2p型熱電材料含有多孔質体220P2,第2n型熱電材料含有多孔質体220N2の他端側が、非浸漬部222とされている。
【0057】
また、本実施形態では、液体保持部30を有するものとして説明したが、これに限定されることはなく、図5に示す熱電発電モジュール310のように、浮具350を備えた熱電発電モジュール310とし、既存の貯液槽、池、湖等の液面に熱電発電モジュール310を配設可能な構成としてもよい。
なお、図5に示す熱電発電モジュール310は、本発明の第二の実施形態の熱電発電モジュール110において液体保持部30を除去し、浮具350を配設したものである。
なお、浮具350は紙で形成してもよく、CNT含有多孔質体を構成する多孔質体で浮具350を形成してもよい。
【0058】
また、第一の実施形態においては、図1に示すように、第1電極部11が液体3に浸漬しているが、熱電材料含有多孔質体20の一部が浸漬しており、液面から第1電極部11までの距離と、液面から第2電極部12とのまでの距離が異なっていれば、第1電極部11は液体3に浸漬していなくてもよい。
【0059】
例えば、図6に示す熱電発電モジュール410や、図7に示す熱電発電モジュール510のように、液面から第1電極部11までの距離と、液面から第2電極部12とのまでの距離が異なっていれば、第1電極部11と第2電極部12との間に温度差が生じるため、発電を行うことが可能となる。
【0060】
また、第一の実施形態においては、p型熱電材料含有多孔質体とn型熱電材料含有多孔質体とが、直列接続されていたが、p型熱電材料含有多孔質体とn型熱電材料含有多孔質体とのいずれかが、導電体であってもよい。その場合、導電体が導電性を有する熱電材料含有多孔質体であってもよい。
【0061】
さらに、第一の実施形態においては、液体3を保持する液体保持部30が設けられているが、図8に示す熱電発電モジュール610のように、複数の熱電材料含有多孔質体620(620P1,620N1,620P2,620N2,620P3,620N3)の浸漬部621を浸漬し、隣接する熱電材料含有多孔質体620,620の浸漬部621,621同士の間に仕切部31を形成してもよい。
【0062】
また、図9に示すように、熱電材料含有多孔質体720を、一方の斜壁部720Aと他方の斜壁部720Bが連なるコルゲート構造の多孔質体を有するものとし、少なくとも一方の斜壁部720Aが熱電材料含有多孔質体とされていても好ましい。なお、一方の斜壁部720Aをp型熱電材料含有多孔質体とし、他方の斜壁部720Bをp型熱電材料含有多孔質体としてもよい。あるいは、一方の斜壁部720Aを熱電材料含有多孔質体(p型熱電材料含有多孔質体またはp型熱電材料含有多孔質体)とし、他方の斜壁部720Bを、導電体を含有する導電体含有多孔質体としてもよい。
【0063】
さらに、第二の実施形態においては、第1連結部115、第3連結部117を用いて、熱電材料含有多孔質体120同士を連結する構造として説明したが、これに限定されることはなく、熱電材料含有多孔質体120同士を、導電性接合材(例えば、カーボンテープ等)を用いて接合してもよい。
【0064】
さらに、本実施形態では、多孔質体を紙とした熱電材料含有多孔質体(熱電材料含有紙)を用いるものとして説明したが、これに限定されることはなく、多孔質体を糸とした熱電材料含有多孔質体(熱電材料含有糸)であってもよいし、多孔質体を布とした熱電材料含有多孔質体(熱電材料含有布)であってもよいし、多孔質体をリードスティックとした熱電材料含有多孔質体(熱電材料含有リードスティック)であってもよい。
なお、熱電材料としてカーボンナノチューブを含侵させた熱電材料含有糸(CNT含有糸)は、以下に示す手法によって製造することができる。
【0065】
カーボンナノチューブの糸への含有方法については、基本的には手工染色等の手法と同様である。ベースとなる糸をカーボンナノチューブ分散液に浸し、この状態で分散液を沸騰しない程度に加熱(60℃前後)し、水分を飛ばすことで濃縮されたカーボンナノチューブが糸をコーティングするような手法を取ることもできる。このような含浸法によれば、より多くのカーボンナノチューブが糸に含浸される。
【0066】
なお、CNT含有糸を作製するのに必要なベースとなる糸(基材)には、一般的に使用されている綿糸,麻糸,羊毛,絹等の自然由来の糸もしくは化学合成由来のポリエステル,ナイロン等の合成繊維糸が用いられるが、これらの混合糸が用いられてもよい。
ここで、合成繊維のように染料が染みこまないタイプの糸については、その表面にカーボンナノチューブ分散液を塗布して、乾燥させることにより、CNT含有糸を作製してもよい。
【実施例0067】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
【0068】
第一の実施形態に示す熱電発電モジュールの浸漬部を水に浸漬し、第1電極部と第2電極部との間の開放電圧を測定した。ここで、貯留した水の温度および室内温度を表1に示すように調整した。なお、表1における温度差は、水温から室温を引いたものである。
【0069】
【表1】
【0070】
表1の本発明例1-4に示すように、水の気化熱による温度差によって、第1電極部と第2電極部との間で電位差が生じており、発電していることが確認された。
そして、水温を室温よりも高くすることにより、第1電極部と第2電極部との間の電位差がさらに大きくなり、効率的に発電することが確認された。
【0071】
以上のことから、本発明によれば、構造が簡単で取り扱いが容易であって、簡易にかつ効率的に発電可能な熱電発電モジュールを提供可能である。
【符号の説明】
【0072】
3 液体
10,110,210,310,410,510,610 熱電発電モジュール
11,111,211 第1電極部
12,112,212 第2電極部
20,120,220 熱電材料含有多孔質体
21,121,221 浸漬部
22,122,222 非浸漬部
30 液体保持部
350 浮具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9