(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031891
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】立体印刷物、及び立体印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 3/06 20060101AFI20240229BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240229BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B41M3/06 C
B41J2/01 123
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134794
(22)【出願日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2022133688
(32)【優先日】2022-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514323408
【氏名又は名称】朝野 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100157325
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 太一
(72)【発明者】
【氏名】朝野 俊一
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
【Fターム(参考)】
2C056EE17
2C056EE18
2C056HA44
2H113AA04
2H113AA06
2H113BA27
2H113BB07
2H113BB09
2H113BB22
2H113BC09
2H113CA05
2H113CA11
2H113CA46
2H113FA10
2H113FA24
2H113FA43
2H113FA48
(57)【要約】
【課題】複数のインクの層を重ねた隆起形状を含む立体印刷物において、視覚的な立体感の確保と微細な立体表現に可能とする。
【解決手段】基板100と、基板の一方の主面の上方に配され、1色または複数色を以って配されたカラー立体要素層21c~2ncと、光反射性の白色インクを以って配されたホワイト立体要素層21w~2nwを少なくとも1層ずつ含む立体要素層21~nが複数積層されてなり、主面上の位置に応じて厚みが異なる積層立体層200と、積層立体層の上方に、1色または複数色を以って配され、絵柄を表す着色層300とを備え、積層立体層は、着色層の表す絵柄に対応する絵柄領域11に相当する部分が基板の主面から上方に隆起しており、立体要素層21~2nは、ホワイト立体要素層21w~2nwが、平面視において所定の領域RAが不規則パターンによって構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の一方の主面の上方に配され、1色または複数色を以って配されたカラー立体要素層と、光反射性の白色インクを以って配されたホワイト立体要素層を少なくとも1層ずつ含む立体要素層が複数積層されてなり、前記主面上の位置に応じて厚みが異なる積層立体層と、
前記積層立体層の上方に、1色または複数色を以って配され、絵柄を表す着色層とを備え、
前記積層立体層は、前記着色層の表す絵柄に対応する絵柄領域に相当する部分が前記基板の主面から上方に隆起しており、
前記立体要素層は、前記ホワイト立体要素層が、平面視において所定の領域が不規則パターンによって構成されている
立体印刷物。
【請求項2】
前記ホワイト立体要素層の厚みが、前記主面上の位置に応じて異なり、前記所定の領域は前記ホワイト立体要素層の厚みが所定範囲の厚みである連続する領域である
請求項1に記載の立体印刷物。
【請求項3】
前記所定の領域は、当該領域の外との前記ホワイト立体要素層の厚みの差が所定値以上である
請求項2に記載の立体印刷物。
【請求項4】
前記立体要素層は、さらに、前記カラー立体要素層が、平面視において前記所定の領域が不規則パターンによって構成されている
請求項1に記載の立体印刷物。
【請求項5】
前記カラー―立体要素層の厚みが、前記主面上の位置に応じて異なり、前記所定の領域は前記カラー立体要素層の厚みが所定範囲の厚みである連続する領域である
請求項4に記載の立体印刷物。
【請求項6】
前記所定の領域は、当該領域の外との前記カラー立体要素層の厚みの差が所定値以上である
請求項5に記載の立体印刷物。
【請求項7】
前記積層立体層の上面に、前記積層立体層を被覆するホワイト被覆層を備えた、
請求項1に記載の立体印刷物。
【請求項8】
前記着色層の上面に、透過する光の光量を調整する機能を有し、前記着色層を被覆するクリア層を備え、前記クリア層は、平面視において不規則パターンによって構成されている
請求項1に記載の立体印刷物。
【請求項9】
カラー画像データに基づき、立体印刷用画像データと着色印刷用画像データとを生成する工程と、
基板を準備し、前記基板の一方の主面の上方に、1色または複数色を以って配されたカラー立体要素層と、光反射性の白色インクを以って配されたホワイト立体要素層を少なくとも1層ずつ含む立体要素層が複数積層されてなり、前記立体印刷用画像データの高さ階調に応じて層厚が前記主面上の位置により異なる積層立体層を形成する工程と、
前記積層立体層を形成する工程の後に、形成された前記積層立体層の上方に、前記着色印刷用画像データに基づき、1色または複数色を以って配された着色層を形成する工程とを含み、
前記積層立体層を形成する工程では、
前記着色層の表す絵柄に対応する絵柄領域に相当する部分が前記基板の主面から上方に隆起しており、
前記立体要素層における前記ホワイト立体要素層を、平面視において所定の領域が不規則パターンによって形成する
立体印刷物の製造方法。
【請求項10】
前記立体印刷用画像データの高さ階調に対応して、前記主面上の位置に応じて選択的に厚みを異ならせて前記カラー立体要素層及び前記ホワイト立体要素層を形成するサブ工程を複数回行う
請求項9に記載の立体印刷物の製造方法。
【請求項11】
前記立体印刷用画像データを生成する工程は、
前記カラー画像データをモノクロ画像データに変換する工程と、
前記モノクロ画像データに基づき前記カラー画像データの示す絵柄領域の絵柄輪郭を抽出する工程と、
前記絵柄領域における前記カラー画像データ又は前記モノクロ画像データの階調に基づき、前記立体印刷用画像データの高さ階調を算出する工程を含む
請求項9に記載の立体印刷物の製造方法。
【請求項12】
前記立体印刷用画像データを生成する工程は、
前記モノクロ画像データ又は前記カラー画像データに基づき前記所定の領域を抽出する工程と、
前記所定の領域に対する前記立体印刷用画像データを不規則パターンに置き換える工程を含む
請求項11に記載の立体印刷物の製造方法。
【請求項13】
前記所定の領域を抽出する工程では、
前記立体印刷用画像データの高さ階調が、所定範囲である平面方向に連続する領域を抽出する
請求項12に記載の立体印刷物の製造方法。
【請求項14】
前記所定の領域は、当該領域の外との前記立体印刷用画像データの高さ階調の差が所定値以上である
請求項13に記載の立体印刷物の製造方法。
【請求項15】
さらに、前記積層立体層を形成する工程の後に、前記積層立体層の上面を被覆するようにホワイト被覆層を形成する工程を有する
請求項9~14の何れか1項に記載の立体印刷物の製造方法。
【請求項16】
さらに、前記着色層を形成する工程の後に、前記着色層の上面に透過する光の光量を調整する機能を有し、平面視において不規則パターンによって構成されるクリア層を形成する工程を有する
請求項9~14の何れか1項に記載の立体印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立体印刷物、及び立体印刷物の製造方法に関し、特に、立体印刷における画像品質の向上に係る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絵画や工芸品等の美術工芸品の展示や、室内装飾や建築デザインといった用途に、印刷された画像を立体的に知覚できるようにした立体印刷物の利用が提案され、種々の印刷方法が提案されており、例えば、特許文献1、2には、複数の有色領域及び複数の光反射領域を積層して形成することにより、隆起した形状(積層インク領域)を媒体上に形成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-45912号公報
【特許文献2】特開2021-45913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1、2に記載の印刷方法は、複数のインクの層を重ねて媒体上に隆起形状(積層インク領域)を形成する際に、積層されるインクの層数を増加させて隆起形状の高さ寸法を高めて視覚的な立体感を増したときに、隆起部分の縁部の形状が鈍って隆起部分がブロードな台形形状となる傾向があり、立体画像としてのシャープネスや明瞭性が低下するという課題があった。
【0005】
本開示は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、複数のインクの層を重ねた隆起形状を含む立体印刷物において、隆起を高めて視覚的な立体感を増したときに立体画像のシャープネスや明瞭性が低下することを抑制する。これにより、視覚的な立体感の確保と微細な立体表現が可能な立体印刷物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る立体印刷物は、基板と、前記基板の一方の主面の上方に配され、1色または複数色を以って配されたカラー立体要素層と、光反射性の白色インクを以って配されたホワイト立体要素層を少なくとも1層ずつ含む立体要素層が複数積層されてなり、前記主面上の位置に応じて厚みが異なる積層立体層と、前記積層立体層の上方に、1色または複数色を以って配され、絵柄を表す着色層とを備え、前記積層立体層は、前記着色層の表す絵柄に対応する絵柄領域に相当する部分が前記基板の主面から上方に隆起しており、前記立体要素層は、前記ホワイト立体要素層が、平面視において所定の領域が不規則パターンによって構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る立体印刷物、及びその製造方法によれば、複数のインクの層を重ねた隆起形状を含む立体印刷物において、視覚的な立体感の確保と微細な立体表現が可能な立体印刷物、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る立体印刷物10の外観を示す模式斜視図である。
【
図2】立体印刷物10の表示面10aの模式平面図である。
【
図3】立体印刷物10の断面構成を示す模式断面図である。
【
図4】
図3に示す断面構成における各層の構成を示す図である。
【
図5】
図4に示す各層の構成により実現される絵柄領域11における立体印刷物10の態様の一例を示す模式断面図である。
【
図6】不規則パターン形成領域において下地層に形成されたホワイト立体要素層2iwの態様を示す模式断面図である。
【
図7】立体印刷物10の製造方法の概要を示す工程図である。
【
図8】
図7のステップS1における印刷用画像データ生成工程の概要を示す工程図である。
【
図9】
図8のステップS12における立体印刷用画像データ生成工程の概要を示す工程図である。
【
図10】
図9のステップS124における拡大輪郭エリア内の立体印刷用画像データ生成工程の概要を示す工程図である。
【
図11】
図9のステップS125における不規則立体印刷用画像データ生成工程の概要を示す工程図である。
【
図12】
図7のステップS2における立体印刷工程の概要を示す工程図である。
【
図13】(a)~(d)は、立体印刷工程おける製造方法の概要を示す模式図である。
【
図14】
図7のステップS3における着色印刷工程の概要を示す工程図である。
【
図15】(a)~(d)は、着色印刷工程おける製造方法の概要を示す模式図である。
【
図16】(a)は、高さ階調の入力階調を異ならせてカラー立体要素層を5層積層して形成したカラー立体要素層を、(b)(c)は、同様に、ホワイト立体要素層、クリア要素層をそれぞれ5層積層して形成した印刷層を平面視した写真である。
【
図17】(a)(b)(c)は、カラー立体要素層、ホワイト立体要素層、及びクリア要素層をそれぞれ10層積層して形成した印刷層を平面視した写真である。
【
図18】入力階調の濃度を異ならせて形成したカラー立体要素層、ホワイト立体要素層、及び積層クリア層の印刷層全体の厚みを測定した実験結果、及び、カラー立体要素層とホワイト立体要素層を交互に重ねた構成の立体要素層を積層してなる積層立体層の全体の厚みを測定した実験結果である。
【
図19】(a)(b)は、積層立体層の不規則パターンを描画した図である。
【
図20】(a)(b)は、
図19(a)(b)の拡大図である。
【
図21】高さ階調の濃度が0%~60%の条件において、(a)はノイズレベル40%、(b)はノイズレベル80%のノイズを付加したときの積層立体層の不規則パターンを描画した図である。
【
図22】高さ階調の濃度が70%の条件において、(a)はノイズレベル40%、(b)はノイズレベル80%のノイズを付加したときの積層立体層の不規則パターンを描画した図である。
【
図23】高さ階調の濃度が100%の条件において、(a)はノイズレベル40%、(b)はノイズレベル80%のノイズを付加したときの積層立体層の不規則パターンを描画した図である。
【
図24】(a)(b)は、高さ階調の濃度が60%の条件において、ノイズレベル400%のノイズを付加したときの積層立体層の不規則パターン形成領域の表面を正面上方から撮影した顕微鏡写真である。
【
図25】(a)(b)は、積層立体層の不規則パターン形成領域の表面を斜め上方から撮影した顕微鏡写真である。
【
図26】(a)は、不規則パターンを形成しない積層立体層の表面の顕微鏡写真であり、(b)はノイズレベル40%、(c)はノイズレベル100%のノイズを付加したときの積層立体層の不規則パターン形成領域の表面を正面上方から撮影した顕微鏡写真である。
【
図27】(a)は、不規則パターンを形成しない積層立体層の表面の顕微鏡写真であり、(b)はノイズレベル40%、(c)はノイズレベル100%のノイズを付加したときの積層立体層の不規則パターン形成領域の表面を斜め上方から撮影した顕微鏡写真である。
【
図28】(a)(b)は、不規則パターンを形成しないクリア層の表面の顕微鏡写真であり、(c)は、クリア層の不規則パターン形成領域の表面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪本発明を実施するための形態の概要≫
本開示の実施の形態に係る立体印刷物は、基板と、前記基板の一方の主面の上方に配され、1色または複数色を以って配されたカラー立体要素層と、光反射性の白色インクを以って配されたホワイト立体要素層を少なくとも1層ずつ含む立体要素層が複数積層されてなり、前記主面上の位置に応じて厚みが異なる積層立体層と、前記積層立体層の上方に、1色または複数色を以って配され、絵柄を表す着色層とを備え、前記積層立体層は、前記着色層の表す絵柄に対応する絵柄領域に相当する部分が前記基板の主面から上方に隆起しており、前記立体要素層は、前記ホワイト立体要素層が、平面視において所定の領域が不規則パターンによって構成されていることを特徴とする。
【0010】
係る構成により、複数のインクの層を重ねた隆起形状を含む立体印刷物において、隆起を高めて視覚的な立体感を増したときに立体画像のシャープネスや明瞭性が低下することを抑制することができ、視覚的な立体感の確保と微細な立体表現が可能になる。
【0011】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記ホワイト立体要素層の厚みが、前記主面上の位置に応じて異なり、前記所定の領域は前記ホワイト立体要素層の厚みが所定範囲の厚みである連続する領域である構成としてもよい。
【0012】
係る構成により、立体画像の盛り上がった面部分に対し、立体画像としてのシャープネスや明瞭性を向上することができる。
【0013】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記所定の領域は、当該領域の外との前記ホワイト立体要素層の厚みの差が所定値以上である構成としてもよい。
【0014】
係る構成により、立体画像の盛り上がった面部分に対し、立体画像としてのシャープネスや明瞭性を向上することができる。
【0015】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記立体要素層は、さらに、前記カラー立体要素層が、平面視において前記所定の領域が不規則パターンによって構成されている構成としてもよい。
【0016】
係る構成により、より効果的に視覚的な立体感の確保と微細な立体表現が可能になる。
【0017】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記カラー立体要素層の厚みが、前記主面上の位置に応じて異なり、前記所定の領域は前記カラー立体要素層の厚みが所定範囲の厚みである連続する領域である構成としてもよい。
【0018】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記所定の領域は、当該領域の外との前記カラー立体要素層の厚みの差が所定値以上である構成としてもよい。
【0019】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記積層立体層の上面に、前記積層立体層を被覆するホワイト被覆層を備えた構成としてもよい。
【0020】
係る構成により、積層立体層による微細な立体表現を長期間維持し、微細な立体表現が経時的に劣化することを抑制できる。
【0021】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記着色層の上面に、透過する光の光量を調整する機能を有し、前記着色層を被覆するクリア層を備え、前記クリア層は、平面視において不規則パターンによって構成されている構成としてもよい。
【0022】
係る構成によれば、絵柄に応じて看者にとってより効果的に立体感を知覚させることができる。
【0023】
また、本開示の実施の形態に係る立体印刷物は、カラー画像データに基づき、立体印刷用画像データと着色印刷用画像データとを生成する工程と、基板を準備し、前記基板の一方の主面の上方に、1色または複数色を以って配されたカラー立体要素層と、光反射性の白色インクを以って配されたホワイト立体要素層を少なくとも1層ずつ含む立体要素層が複数積層されてなり、前記立体印刷用画像データの高さ階調に応じて層厚が前記主面上の位置により異なる積層立体層を形成する工程と、前記積層立体層を形成する工程の後に、形成された前記積層立体層の上方に、前記着色印刷用画像データに基づき、1色または複数色を以って配された着色層を形成する工程とを含み、前記積層立体層を形成する工程では、前記着色層の表す絵柄に対応する絵柄領域に相当する部分が前記基板の主面から上方に隆起しており、前記立体要素層における前記ホワイト立体要素層を、平面視において所定の領域が不規則パターンによって形成する構成としてもよい。
【0024】
係る構成により、複数のインクの層を重ねた隆起形状を含む立体印刷物において、隆起を高めて視覚的な立体感を増したときに立体画像のシャープネスや明瞭性が低下することを抑制することができ、視覚的な立体感の確保と微細な立体表現が可能な立体印刷物の形成方法を実現できる。
【0025】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記立体印刷用画像データの高さ階調に対応して、前記主面上の位置に応じて選択的に厚みを異ならせて前記カラー立体要素層及び前記ホワイト立体要素層を形成するサブ工程を複数回行う構成としてもよい。
【0026】
係る構成によれば、被写体の画像を示す絵柄領域において、より一層微細な立体表現が可能になる立体印刷物の製造が可能になる立体印刷物の製造方法を具体的に実現できる。
【0027】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記立体印刷用画像データを生成する工程は、前記カラー画像データをモノクロ画像データに変換する工程と、前記モノクロ画像データに基づき前記カラー画像データの示す絵柄領域の絵柄輪郭を抽出する工程と、前記絵柄領域における前記カラー画像データ又は前記モノクロ画像データの階調に基づき、前記立体印刷用画像データの高さ階調を算出する工程を含む構成としてもよい。
【0028】
係る構成によれば、被写体の画像を示す絵柄領域において、より一層微細な立体表現が可能になる立体印刷物の製造が可能になる立体印刷用画像データを生成できる。
【0029】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記立体印刷用画像データを生成する工程は、前記モノクロ画像データ又は前記カラー画像データに基づき前記所定の領域を抽出する工程と、前記所定の領域に対する前記立体印刷用画像データを不規則パターンに置き換える工程を含む構成としてもよい。
【0030】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記所定の領域を抽出する工程では、前記立体印刷用画像データの高さ階調が、所定範囲である平面方向に連続する領域を抽出する構成としてもよい。
【0031】
係る構成により、立体画像の盛り上がった面部分に対し、立体画像としてのシャープネスや明瞭性を向上することができる。
【0032】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、前記所定の領域は、当該領域の外との前記立体印刷用画像データの高さ階調の差が所定値以上である構成としてもよい。
【0033】
係る構成により、立体画像の盛り上がった面部分に対し、立体画像としてのシャープネスや明瞭性を向上することができる。
【0034】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、さらに、前記積層立体層を形成する工程の後に、前記積層立体層の上面を被覆するようにホワイト被覆層を形成する工程を有する構成としてもよい。
【0035】
係る構成により、積層立体層による微細な立体表現を長期間維持し、微細な立体表現が経時的に劣化することを抑制できる。
【0036】
また、別の態様では、上記何れかに記載の態様において、さらに、前記着色層を形成する工程の後に、前記着色層の上面に透過する光の光量を調整する機能を有し、平面視において不規則パターンによって構成されるクリア層を形成する工程を有する構成としてもよい。
【0037】
係る構成によれば、絵柄に応じて看者にとってより効果的に立体感を知覚させることができる立体印刷物の製造が可能になる。
【0038】
≪実施の形態≫
実施の形態に係る立体印刷物10の構成について図面を用いて説明する。ここで、本明細書では、各図におけるX方向、Y方向、Z方向を、それぞれ、幅方向、奥行方向、高さ方向とする場合があり、高さ方向の正方向を「上」方向、負方向を「下」方向とする場合がある。また、各図面における部材の縮尺は必ずしも実際のものと同じであるとは限らない。また、本明細書において、数値範囲を示す際に用いる符号「~」は、その両端の数値を含む。また、本実施形態で記載している、材料、数値等は好ましいものを例示しているだけであり、それに限定されることはない。また、本開示の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。また、他の実施形態との構成の一部同士の組み合わせは、矛盾が生じない範囲で可能である。
【0039】
<立体印刷物10の全体構成について>
立体印刷物10の概略構成について、
図1~5を用い説明する。
図1は、実施の形態に係る立体印刷物10の外観を示す模式斜視図、
図2は、立体印刷物10の表示面10aの模式平面図、
図3は、立体印刷物10の断面構成を示す模式断面図、
図4は、
図3に示す断面構成における各層の構成を示す図、
図5は、
図4に示す各層の構成により実現される絵柄領域11における立体印刷物10の態様の一例を示す模式断面図である。
【0040】
立体印刷物10は、
図1に示すように、その表示面(オモテ面)10aに疑似的なエンボス処理が施されており、表示面10aと背向する裏面10bは平坦である。エンボス処理は、基板100の主面100aに立体的に印刷がされることによるインクエンボス処理とからなる。
【0041】
次に、立体印刷物10を平面視したときの構成について説明する。
【0042】
立体印刷物10の表示面10aは、
図2に示すように、被写体を表す絵柄領域11、絵柄領域11を取り囲む背景領域13を含んで構成される。絵柄輪郭11aは、絵柄領域11の外縁を示す線であって、明確につながった輪状の一本の輪郭線に限らず、断裂した部分を含む複数の輪郭線であってもよい。
【0043】
表示面10aの絵柄領域11は、インクエンボス処理によって基板100の主面100aの表面から上方に隆起しており、主面上の位置に応じて高さが異なる態様をなし、高さが相対的に高い隆起部分201と高さが相対的に低い谷部分202とが形成されている。
【0044】
表示面10aにおける絵柄領域11と背景領域13との間には、
図2に示すように、インクエンボス処理によって、背景領域13との境界12aから絵柄領域11の絵柄輪郭11aに向けて厚みが連続的に増加している境界領域12が形成されていてもよい。
【0045】
背景領域13は、高さ階調の値がゼロ又は低階調である印刷用画像データに基づいて背低に形成されている。印刷用画像データについては後述する。
【0046】
また、表示面10aには、所定の領域に、平面視において不規則パターンからなるランダムドットが配された立体印刷層が形成される。この領域を不規則パターン形成領域RAとする。本実施の形態では、不規則パターン形成領域RAは、平面視において絵柄領域11の内方に形成されているものとする。
【0047】
しかしながら、不規則パターン形成領域RAが形成される範囲は上記に限定されるものではなく、背景領域13の内方に形成されていてもよい。
【0048】
<断面構成>
次に、立体印刷物10の断面構成について説明する。
【0049】
立体印刷物10は、基台となる基板100、積層立体層200、ホワイト被覆層2zw、着色層300を備える。さらに、積層クリア層400を備えていてもよい。
【0050】
(基板100)
基板100は、基材101から構成されている。さらに、基材101の上面にインク受容層が形成されていてもよい。
【0051】
(積層立体層200)
立体印刷物10は、基板100の主面100a上には、1色または複数色を以って主面100aに沿った方向に配されたカラー立体要素層21c~2nc(nは層数を表す自然数、以後「2ic」(iは自然数を表すインデックス))と記す場合がある。)、透過する光の光量を調整する機能を有する材料からなるホワイト立体要素層21w~2nw(nは自然数、以後「2iw」と記す場合がある。)とを、少なくとも1層ずつ含む立体要素層21~2n(nは自然数、以後「2i」と記す場合がある。)が複数積層されてなり、主面上の位置に応じて厚みが異なる積層立体層200を備えた構成を採る。
【0052】
また、積層立体層200は、所定の領域が不規則パターンによって構成されている。本明細書では、上述のとおり、この領域を不規則パターン形成領域RAとしている。
【0053】
本例では、立体要素層21~2nの層数nは、例えば、5以上50以下としてもよく、より好ましくは、10以上30以下としてもよい。また、立体要素層21~2nを構成する、カラー立体要素層21c~2nc、ホワイト立体要素層21w~2nwそれぞれの層数nは、例えば、5以上50以下としてもよく、より好ましくは、10以上30以下としてもよい。
【0054】
カラー立体要素層2ic及びホワイト立体要素層2iwは、立体化のためのインクエンボス処理を行うために形成される層である。具体的には、カラー立体要素層2ic及びホワイト立体要素層2iwは、絵柄を印刷するための元画であるカラー画像データから形成される立体印刷用画像データに基づいて画像形成され、
図5に示すように、立体印刷用画像データの画素Pxに対応する主面100a上の位置に応じて、それぞれの層の厚みが異なるように構成されている。
【0055】
これにより、カラー立体要素層21c~2nc及びホワイト立体要素層21w~2nwを含む立体要素層21~2nが複数層、積層されてなる積層立体層200は、層全体の厚みが主面上の位置に応じて異なるように形成される。その結果、積層立体層200は、立体印刷用画像データの画素Pxに対応する主面上の位置に応じて高さが異なる態様をなし、高さが相対的に高い隆起部分201と高さが相対的に低い谷部分202とを含む立体化層として機能する。
【0056】
カラー立体要素層2ic、ホワイト立体要素層2iwは同一の立体印刷用画像データに基づいて画像形成されてもよい。あるいは、カラー立体要素層2icとホワイト立体要素層2iwとで、用いる立体印刷用画像データを異ならせてもよい。また、カラー立体要素層21c~2nc、ホワイト立体要素層21w~2nwを構成するそれぞれの層によって、用いる立体印刷用画像データを異ならせてもよい。
【0057】
カラー立体要素層2ic、ホワイト立体要素層2iwの一方又は両方には、所定の領域が不規則パターンによって構成されている。
【0058】
ホワイト立体要素層2iwが、不規則パターンによって構成されている不規則パターン形成領域RAは、それぞれのホワイト立体要素層2iwの厚みが、所定範囲内である平面方向に連続する領域としてもよい。さらに、当該領域の外とのホワイト立体要素層2iwの厚みの差が所定値以上である領域を抽出してもよい。
【0059】
カラー立体要素層2icについても、不規則パターン形成領域RAは、それぞれのカラー立体要素層2icの厚みが、所定範囲内である平面方向に連続する領域としてもよい。
【0060】
これにより、立体画像の盛り上がった面部分に対し、立体画像としてのシャープネスや明瞭性を向上することができる。
【0061】
さらに、当該領域の外とのカラー立体要素層2icの厚みの差が所定値以上である領域を抽出してもよい。
【0062】
これにより、立体画像の絵柄の輪郭や線状部分に対し、立体画像としてのシャープネスや明瞭性を向上することができる。
【0063】
カラー立体要素層2ic、ホワイト立体要素層2iwとで、不規則パターン形成領域RAの範囲を異ならせてもよく、カラー立体要素層2ic、ホワイト立体要素層2iwの何れか一方においてのみ不規則パターン形成領域RAを設けてもよい。
【0064】
また、カラー立体要素層21c~2nc、ホワイト立体要素層21w~2nwを構成するそれぞれの層によって、不規則パターン形成領域RAを設ける領域を異ならせてもよい。
【0065】
図6は、本実施の形態に係る立体印刷物10において、不規則パターン形成領域において下地層に形成されたホワイト立体要素層2iwの態様を示す模式断面図である。
【0066】
本実施の形態に係る立体印刷物10では、不規則パターン形成領域RAはホワイト立体要素層2iwにのみ設けられ、すべてのホワイト立体要素層21w~2nwにおいて不規則パターン形成領域RAの範囲は等価であり、ホワイト立体要素層21w~2nwの層厚が所定範囲内の連続する領域(高さ階調が所定範囲内である領域)を不規則パターン形成領域RAとしている。ここで、所定範囲とは、最大層厚を100%としたとき、30%以上70%以下としてもよい。その理由は、高さ階調の値が70%以上ではホワイト立体要素層2iwを形成するためのインクの吐出量が多い為に、全体に乾燥斑が生じて不規則な凹凸が現れ、ノイズによって画像の際や線のシャープネスが低下するためである。所定範囲は、不規則パターン形成領域RAがカラー立体要素層2icに設けられる場合も同じである。あるいは、上記態様に加え、又は上記態様とは別に、立体印刷物10では、領域の外とのホワイト立体要素層2iwの厚みの差が所定値以上である領域を不規則パターン形成領域RAとして抽出してもよい。この場合、所定値とは、最大層厚を100%としたとき、5%以上20%以下の値としてもよい。不規則パターン形成領域RAが、カラー立体要素層2icに設けられる場合も同様である。
【0067】
ここで、立体印刷用画像データに適用される不規則パターンデータとして、例えば、ノイズが付加される画素が不規則に選択されるインパルスノイズ、あるいは、全ての画素に対して正規乱数によってノイズが付加されるガウシアンノイズなどを用いることができる。
【0068】
立体印刷用画像データに不規則パターンデータを適用することにより、積層立体層200の高さ階調におけるトーンジャンプを抑制するとともに、積層立体層200の高さ階調におけるモアレ抑制が可能となる。
【0069】
また、デジタル画像である立体印刷用画像データによる印刷では粒子感が無くのっぺりとした印刷になる傾向があるところ、立体印刷用画像データに不規則パターンデータを適用することにより、積層立体層200における粒状感の形成することによりのっぺりとした印象を低減できる。
【0070】
また、立体印刷用画像データに対し、絵柄に基づき主面100a上の位置に応じて部分的又は適用する画素単位を変えて不規則パターンデータを適用することにより、絵柄領域11において画像の遠近感を強調することができる。
【0071】
また、
図6に示すように、立体印刷物10では、不規則パターン形成領域RAでは、下地層の上面において、ホワイト立体要素層2iwは画素毎に2値データとして印刷形成される態様としている。
【0072】
(ホワイト被覆層2zw)
積層立体層200の上方には、積層立体層200を被覆し、透過する光の光量を調整する機能を有するホワイト被覆層2zwを備える。ホワイト被覆層2zwは、積層立体層200の表面の凹凸を被覆するように形成されている。ホワイト被覆層2zwは積層立体層200の上面に100%の密度で全面に形成されていてもよい。また、ホワイト被覆層2zwは、ホワイト立体要素層21w~2nwと同じ材料から構成されていてもよい。
【0073】
(着色層300)
ホワイト被覆層2zwの上方には、1色または複数色を以って主面100aに沿った方向に形成され、立体印刷物10の絵柄を表す着色層300を備える。着色層300は、画像データに応じて画素毎に選択的に配置される層301、302、303から構成されている。それぞれの層301、302、303は、カラー画像データに基づく着色印刷用画像データの階調に応じて層の厚みを画素毎に異ならせて画像形成されている。
【0074】
(積層クリア層400)
着色層300の上方には、樹脂材料からなり透光性のインクが主面100aの一部に微細な凹凸をなすように分散配置されてなり、立体印刷物10の立体的な視覚効果を高める1以上のクリア要素層が積層されている。この場合、クリア要素層はカラー画像データに基づき生成された立体印刷用画像データに、さらに、乱数等に基づく不規則なデータパターンが重畳された立体印刷用画像データによって画像形成される。
【0075】
あるいは、クリア要素層は、樹脂材料からなり透光性のインクが主面100aの全面に配置されてなる構成であってもよい。この場合、クリア要素層はカラー画像データに基づき生成された立体印刷用画像データによって画像形成される。
【0076】
本例は、
図3、4、5に示すように、2層からなるクリア要素層401、402(以後、まとめて「40i」と記す場合がある)を備え、2層のクリア要素層401、402によって、積層クリア層400が構成されている。
【0077】
積層クリア層400を設けることにより、絵柄に応じて看者にとってより効果的に立体感を知覚させることができる。
【0078】
<各層の材質、及び厚み>
立体印刷物10を構成する各層の材質及び厚みについて説明する。
【0079】
(基板100)
基板100の構成部材である基材101は、積層立体層200、着色層300、積層クリア層400の支持部材であり平板状である。基材の材料としては、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド材料、アルミナ等のいずれかで形成することができる。透光性を有する材料を用いることにより、透過型として利用することが可能となる。
【0080】
また、可撓性を有するプラスチック材料として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。樹脂の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール等が挙げられる。また、これらの材料のうち1種または2種以上を組み合わせた多層構造であってもよい。
【0081】
(カラー立体要素層21c~2nc、着色層300)
カラー立体要素層21c~2nc、着色層300(例えば、301、302、303)は、C(青;シアン)、M(赤;マゼンダ)、Y(黄;イエロー)、K(黒:キープレート)の4色のインクをフルカラー印刷して形成されている。層を形成するためのインクは、UV硬化型のものが用いられ、インクジェット装置を用い塗布されている。
【0082】
カラー立体要素層21c~2ncの1層の厚みは、例えば、0.004~0.04mmの範囲としてもよい。
【0083】
また、着色層300は画像データに基づき選択的に存在し、着色層300が存在する部分ではその厚みは、例えば、0.004~0.04mmの範囲としてもよい。
【0084】
(ホワイト立体要素層21w~2nw、ホワイト被覆層2zw)
ホワイト立体要素層21w~2nw、ホワイト被覆層2zwは、下地となる層の表面に対し、白色顔料の粒子が網点状に分散して形成されている。すなわち、ホワイト立体要素層21w~2nw、ホワイト被覆層2zwにおいて、白色顔料の粒子は凝集せず、分散された状態で存在しており、白色顔料の粒子と樹脂成分を含み、当該樹脂成分により積層立体層200の表面に白色顔料の粒子が、網点状に分散して接合された状態で層が形成されている。樹脂成分としては、例えば、エポキシ系樹脂材料、ウレタン系樹脂材料、ポリエステル系樹脂材料などを用いることができる。
【0085】
ホワイト立体要素層21w~2nwの1層の厚みは、例えば、0.004~0.05mmの範囲としてもよい。
【0086】
ホワイト被覆層2zwの厚みは、例えば、0.004~0.05mmの範囲としてもよい。なお、ホワイト被覆層2zwの層厚については、透過光量との関係に基づき適宜定めることができる。
【0087】
(積層クリア層400)
積層クリア層400を構成するクリア要素層401、402は、光透過性の樹脂材料から構成される。樹脂成分としては、例えば、エポキシ系樹脂材料、ウレタン系樹脂材料、ポリエステル系樹脂材料などを用いることができる。クリア要素層401、402を形成するためのインクは、UV硬化型のものが用いられ、インクジェット装置を用い塗布されている。
【0088】
積層クリア層400の総厚みは、例えば、0.008~0.1mmの範囲としてもよい。そして、積層クリア層400を構成するクリア要素層401~402の1層の厚みは、例えば、0.004~0.05mmとしてもよい。なお、クリア要素層401~402が選択的に配される場合、クリア要素層401、402の少なくとも一方が存在しない部分が生じることがある。
【0089】
<立体印刷物10の製造方法>
立体印刷物10の製造方法について、図面を用い説明する。
図7は、立体印刷物10の製造方法の概要を示す工程図である。
【0090】
(印刷用画像データ生成工程)
立体印刷物10の製造工程では、先ず、印刷用画像データ生成(ステップS1)を行う。
【0091】
図8は、印刷用画像データ生成工程の概要を示す工程図である。印刷用画像データ生成工程では、先ず、元画となるカラー画像データを取得する(ステップS11)。カラー画像データには、立体印刷物10の表示面100aの画素数に対応するR、G、Bデータを用いてもよい。
【0092】
[立体印刷用画像データ生成工程]
次に、ステップS11で取得したカラー画像データに基づき、立体印刷用画像データを生成する(ステップS12)。
図9は、
図8のステップS12における立体印刷用画像データ生成工程の概要を示す工程図である。
【0093】
立体印刷用画像データ生成工程では、
図9に示すように、先ず、カラー画像データを取得し(ステップS121)、モノクロ画像(グレースケール)に変換する処理を行う(ステップS122)。次に、モノクロ画像データに基づきカラー画像データの示すカラー画像における絵柄領域11の絵柄輪郭11aを抽出する(ステップS123)。モノクロ画像データを用いてカラー画像の示す絵柄領域11の絵柄輪郭11aを抽出することにより、カラー画像の示す色調に依存せずカラー画像のRGB濃度に基づいてカラー画像の示す絵柄領域11を適切に抽出することができる。
【0094】
次に、カラー画像データ又はモノクロ画像データの階調に基づき絵柄輪郭11a内の立体印刷用画像データの高さ階調を算出し、絵柄輪郭11a内の立体印刷用画像データを生成する(ステップS124)。
【0095】
図10は、
図9のステップS124における絵柄輪郭11a内の立体印刷用画像データ生成工程の概要を示す工程図である。
【0096】
絵柄輪郭11a内の立体印刷用画像データの生成工程では、先ず、カラー画像データの画像の細かさを表す調子サイズに基づいて、処理に用いる画像の種類の選択を行う。すなわち、ステップS1241では、対象となるカラー画像データの調子サイズに基づいて、カラー画像データ、モノクロポジ画像データ、又はモノクロネガ画像データの何れかを選択する。例えば、調子サイズが大きい順に、カラー画像データ、モノクロポジ画像データ、モノクロネガ画像を選択してもよい。
【0097】
次に、第m番目の版(mはインデックスを表す自然数)のトーンカーブ処理を行い、第m番目の版に対応する立体印刷用画像データの成分を生成する(ステップS1242)。
【0098】
本例では、モノクロ画像データの階調入力を、少なくとも中間調の濃度出力が異なるm個の異なるトーンカーブに基づいて変換することにより、高さ階調の出力値を算出して、複数の異なる分版データを算出する例を示す。
【0099】
次に、mが最大値か否かを判定し(ステップS1243)、最大値でない場合には、mをインクリメントして(ステップS1244)、ステップS1242に戻り、最大値である場合には、第1~m番目の版に対応する高さ階調の分版データの成分を合成して立体印刷用画像データを生成し出力する(ステップS1245)。
【0100】
第1~m番目の版に対応する立体印刷用画像データの成分の合成では、生成された複数の高さ階調の分版データを、絵柄領域11における主面100a上の位置に応じて、複数の分版データのうち最大の高さ階調を示すデータを選択することにより合成する。すなわち、複数のトーンカーブに基づいて算出された複数の高さ階調の分版データのうち、絵柄領域11における、主面100a上の位置ごとに最大の高さ階調データが選択されるように、高さ階調の分版データが合成される。
【0101】
なお、立体印刷用画像データの成分の合成方法は、上記に限定されないことは言うまでもない。
【0102】
次に、
図9に戻り、カラー画像データ又はモノクロ画像データの階調に基づき不規則パターン形成領域RA内の立体印刷用画像データを生成する(ステップS125)。
【0103】
図11は、
図9のステップS125における不規則パターン形成領域RA内の立体印刷用画像データ生成工程の概要を示す工程図である。
【0104】
不規則パターン形成領域RA内の立体印刷用画像データの生成工程では、先ず、処理に用いる画像の種類の選択を行う。すなわち、ステップS1251では、対象となるカラー画像データの調子サイズに基づいて、カラー画像データ、モノクロポジ画像データの何れかを選択し、モノクロ画像データ又はカラー画像データに基づき不規則パターン形成領域RAを抽出する。
【0105】
不規則パターン形成領域RAの抽出は、ステップS124で生成された立体印刷用画像データの高さ階調が、所定範囲内である平面方向に連続する領域を抽出してもよい。
【0106】
さらに、当該領域の外との立体印刷用画像データの高さ階調の差が所定値以上である領域を抽出してもよい。
【0107】
次に、不規則パターン形成領域RAに対する立体印刷用画像データを取得し(ステップS1252)、領域内の立体印刷用画像データを不規則パターンデータに変換する不規則処理を行い(ステップS1253)、領域内の立体印刷用画像データを出力する(ステップS1254)。ステップS1252では、不規則パターンデータとして、例えば、ノイズが付加される画素が不規則に選択されるインパルスノイズ、あるいは全ての画素に対して正規乱数によってノイズが付加されるガウシアンノイズなどを用いることができる。あるいは、平面視において規則的に配された立体印刷用画像データのパターンに、乱数等に基づく不規則なデータパターンを重畳して不規則パターンデータを生成してもよい。
【0108】
また、ステップS1252において、隣接画素間における、ぼかし処理を施してもよい。ここで、ぼかし処理としては、着目画素に対し、例えば、±0.5画素に対する高さ階調データの平均化処理を用いてもよい。
【0109】
なお、不規則パターン形成領域RA内の立体印刷用画像データの形成方法は、上記に限定されないことは言うまでもない。
【0110】
次に、
図9に戻り、平面視において絵柄輪郭11aの外方に位置する背景領域13の平坦化処理を行う(ステップS126)。平坦化処理では、階調の値がゼロ又は低階調である印刷用画像データを生成する。
【0111】
次に、絵柄領域11、背景領域13の立体印刷用画像データを合成して絵柄領域11、背景領域13に対する一連の立体印刷用画像データを生成し出力する(ステップS127)。
【0112】
次に、不規則パターン形成領域RAの立体印刷用画像データを、ステップS125にて生成した不規則パターンデータに置き換え(ステップS128)、生成された不規則パターン形成領域RAを含む立体印刷用画像データを出力する(ステップS129)。
【0113】
[着色印刷用画像データ生成工程]
次に、
図8におけるステップS13に戻り、取得したカラー画像データに基づき、着色印刷用画像データを生成する。画像データのRGBデータをCMYKデータに色変換して着色層印刷データを生成し、メモリ等、記憶装置に格納する。
【0114】
(立体印刷工程)
次に、
図7におけるステップS2に戻り、立体印刷工程を行う。
図12は、
図7のステップS2における立体印刷工程の概要を示す工程図である。
図13(a)~(d)は、立体印刷工程おける製造方法の概要を示す模式図である。
【0115】
立体印刷工程では、先ず、基板100を準備する(ステップS21、
図13(a))。
【0116】
次に、メモリから画像データのうち高さ階調データを順次読み出し、基板100の主面100aにカラー立体要素層21cを形成するためのCMYKの樹脂材料からなるインクをそれぞれ塗布したのち、紫外線照射により乾燥させてカラー立体要素層21cを形成する(ステップS22、S23)。
【0117】
同様に、メモリから、不規則パターン形成領域RAを含む高さ階調データを順次読み出し、カラー立体要素層21cの上面にホワイト立体要素層21wを形成するための、白色顔料の粒子(例えば、酸化チタン)を含む樹脂材料からなるインクをそれぞれ塗布したのち、紫外線照射により乾燥させてカラー立体要素層21cの上面にホワイト立体要素層21wを積層形成して立体要素層21を形成する(ステップS24、S25、
図13(b))。
【0118】
これより、不規則パターン形成領域RAに、平面視において不規則パターンからなるランダムドットが配されたホワイト立体要素層21wが形成される(
図13(b))。
【0119】
カラー立体要素層21c及びホワイト立体要素層21wは、絵柄を印刷するための元画であるカラー画像データから形成される立体印刷用画像データに基づいて画像形成され、
図13(b)に示すように、立体印刷用画像データの画素Pxに対応する主面100a上の位置に応じて、それぞれの層の厚みが異なるように構成されている。これにより、高さ階調データに基づいて、内含するカラー立体要素層21c及びホワイト立体要素層21wの形成位置及び層厚が異なる態様の立体要素層21が、立体印刷用画像データの画素Pxに対応する主面上の位置に形成される。
【0120】
次に、nが最大値か否かを判定し(ステップS26)、最大値でない場合には、nをインクリメントして(ステップS27)、ステップS22に戻り、nが最大値になるまで、高さ階調データに基づいて、形成位置及び層厚が異なるカラー立体要素層21c~2nc及びホワイト立体要素層21w~2nwを少なくとも1層ずつ含む立体要素層21~2nが、立体印刷用画像データの画素Pxに対応する主面上の位置に繰り返し形成される。そして、nが最大値である場合には、ステップS28に進む。
【0121】
このとき、立体要素層21~2nが複数層、積層されてなる積層立体層200は、層全体の厚みH
102が主面上の位置に応じて異なるように形成される(
図13(c))。
【0122】
その結果、積層立体層200は、立体印刷用画像データに基づいて立体印刷用画像データの画素Pxに対応する主面上の位置に応じて厚みが異なる態様をなし、厚みが大きく上面の高さが相対的に高い隆起部分201と、厚みが薄く上面の高さが相対的に低い谷部分202とを含む立体化層を形づくる。
【0123】
また、不規則パターン形成領域RAが不規則パターンによって構成されてなるホワイト立体要素層21w~2nw(不規則パターンホワイト立体要素層21w(R)~2nw(R)又は、21iw(R)(i=1~n)と記す場合がある)を含む積層立体層200が形成される(
図13(c))。
【0124】
図13(c)に示すように、絵柄領域11は、立体印刷用画像データの高さ階調に基づいて形成された積層立体層200によって、基板100の主面100aの表面から上方に隆起した断面形状となる。これに対し、背景領域13は、高さ階調の値がゼロ又は低階調である印刷用画像データに基づいて、基板100の主面100aの表面からの高さが低いフラットな形状となる。また、絵柄領域11と背景領域13の境界に位置する境界領域12において、積層立体層200は厚みが連続的に増加し上面の高さが連続的に高くなる傾斜形状となる。
【0125】
このように、カラー立体要素層21c~2nc、ホワイト立体要素層21w~2nwそれぞれが、境界領域12において、滑らかに高さが変化する傾斜形状をしており、各層の上角部分に丸みをもたせることができる。さらに、カラー立体要素層21c~2nc、ホワイト立体要素層21w~2nwを少なくとも1層ずつ含む立体要素層21~2nがZ軸方向下側から順に積層されていることによって、積層立体層200は全体として高さが滑らかに変化する傾斜形状をなす態様となる。
【0126】
次に、積層立体層200の上面を被覆するように、ホワイト被覆層2zwを形成するための、白色顔料の粒子(例えば、酸化チタン)を含む樹脂材料からなるインクを、例えば、インクジェット装置を用いて塗布したのち、紫外線照射により乾燥させてホワイト被覆層2zwを形成する(ステップS28、S29、
図13(d))。
【0127】
このとき、ホワイト被覆層2zwは基板100の主面100a全体を覆うように形成してもよい。樹脂材料からなるホワイト被覆層2zwによって基板100の主面100a全体を被覆することにより、上方から基板100への水分の侵入を抑制して積層立体層200の膨張や変形を抑制でき、積層立体層200による微細な立体表現を長期間維持し、微細な立体表現が経時的に劣化することを抑制できる。本例では、最上層に位置するホワイト被覆層2zwが基板100の主面100a全体を覆う構成を採る。
【0128】
(着色印刷工程)
次に、
図5におけるステップS3に戻り、着色印刷工程を行う。
図14は、
図7のステップS3における着色印刷工程の概要を示す工程図である。
図15(a)~(d)は、着色印刷工程おける製造方法の概要を示す模式図である。
【0129】
着色印刷工程では、先ず、主面100a上に立体印刷されて隆起部分201、谷部分202が形成された基板を準備する(ステップS31、
図15(a))。
【0130】
メモリから画像データのうち着色印刷用画像データを順次読み出し、積層形成されたホワイト被覆層2zwの上面を被覆するように、着色層300を形成するためにCMYKの樹脂材料からなるインクを塗布したのち、紫外線照射により乾燥させて、着色印刷用画像データに応じて層301、302、303を画素毎に選択的に配置するとともに、着色印刷用画像データの階調に応じて画素毎に厚みを異ならせてそれぞれの層301、302、303を形成して、着色層300を形成する(ステップS32、S33、
図15(b))。着色層300の形成は、例えば、インクジェット装置を用いて各色の顔料を含むUV(紫外線)硬化型インクを塗布し、UV照射を行って硬化させることによりなされる。
【0131】
次に、着色層300の上面にクリア要素層401を形成するための透光性樹脂材料からなるインクを塗布したのち、紫外線照射により乾燥させてクリア要素層401を形成する(ステップS34、S35、
図15(c))。
【0132】
さらに、着色層300の上面にクリア要素層402を形成するための透光性樹脂材料からなるインクを塗布したのち、紫外線照射により乾燥させてクリア要素層402を形成して、積層クリア層400を形成する(ステップS36、S37、
図15(d))。
【0133】
クリア要素層401、402はカラー画像データに基づき生成された立体印刷用画像データに、乱数等に基づく不規則なデータパターンを重畳した立体印刷用画像データによって画像形成してもよい。積層クリア層400を、不規則なデータパターンを重畳した立体印刷用画像データによって微細な凹凸が分散配置されてなるクリア要素層401、402を含んだ構成とすることにより、絵柄に応じて看者により効果的に立体感を知覚させることができる。
【0134】
また、このとき、何れかのクリア要素層401、402は基板100の主面100a全体を覆うように形成してもよい。この場合、クリア要素層は主面100a全体に一様な画像データに基づき形成してもよいが、カラー画像データに基づき生成された立体印刷用画像データによって画像形成してもよい。樹脂材料からなるクリア要素層によって基板100の主面100a全体を被覆した場合には、上方から基板100への水分の侵入を抑制して積層立体層200の膨張や変形を抑制でき、積層立体層200による微細な立体表現を長期間維持し、微細な立体表現が経時的に劣化することを抑制できる。
【0135】
本例では、下層に位置するクリア要素層401が基板100の主面100a全体を覆う構成を採る。
【0136】
以上の工程により、立体印刷物10が完成する。
【0137】
<評価試験>
実施の形態に係る立体印刷物10を試作し、立体印刷物としての画質等について評価を行った。
【0138】
先ず、高さ階調の入力階調を異ならせたときの要素層の濃度変化について評価を行った。
図16(a)は、高さ階調の入力階調を異ならせてカラー立体要素層2icを5層積層して形成した印刷層を、(b)(c)は、同様に、ホワイト立体要素層2iw、クリア要素層40iをそれぞれ5層積層して形成した印刷層を平面視した状態で撮像した写真である。また、
図17(a)(b)(c)は、同様の条件にて、カラー立体要素層2ic、ホワイト立体要素層2iw、及びクリア要素層40iをそれぞれ10層積層して形成した印刷層を平面視した状態で撮像した写真である。
【0139】
これらの図から、カラー立体要素層2ic、ホワイト立体要素層2iw、及びクリア要素層40iの印刷層は、入力階調の濃度の増加に伴って、それぞれの濃度が段階的に変化していることが見て取れる。
【0140】
具体的には、要素層の種類を比較すると、カラー立体要素層2icの方がホワイト立体要素層2iw及びクリア要素層40iの印刷層よりも、入力階調の濃度において約30%に相当するレベルで濃度が高い。また、要素層の層数を比較すると、10層積層した印刷層が5層積層した印刷層よりも濃度は高いが、その差は入力階調の濃度において約10%未満である。
【0141】
次に、これらの印刷層を用いて層の厚みを測定した。
図18は、入力階調の濃度を異ならせて形成したカラー立体要素層2ic、ホワイト立体要素層2iw、及びクリア要素層40iの印刷層全体の厚みを測定した実験結果、及び、カラー立体要素層21cとホワイト立体要素層21wを交互に重ねた構成の立体要素層2iを積層してなる、積層立体層200の全体の厚みを測定した実験結果である。
【0142】
No.1~3は、
図16(a)(b)(c)に示した、5層からなるカラー立体要素層21c~25c、ホワイト立体要素層21w~25w、及びクリア要素層401~410それぞれの印刷層全体の厚みであり、No4~6は、
図17(a)(b)(c)に示した、10層からなるカラー立体要素層21c~210c、ホワイト立体要素層21w~210w、及びクリア要素層401~410それぞれの印刷層全体の厚みである。
【0143】
また、No.7~13は、カラー立体要素層21cとホワイト立体要素層21wを交互に重ねた構成の立体要素層2iを、立体要素層2iを1層として、10層、20層、30層、35層、40層、45層又は50層、積層してなる積層立体層200全体の厚みを測定した結果である。厚みの測定は、基板に立体印刷物を形成し、レーザーマイクロスコープ KEYENCE VK-X100 (倍率200倍)により立体印刷物の上面と基板面との距離を測定することにより行った。
【0144】
図18に示すように、カラー立体要素層2ic、ホワイト立体要素層2iw、及びクリア要素層40iの印刷層は、入力階調の濃度の増加に伴って、それぞれの印刷層の厚みが増加し、入力階調の濃度10~100%に対し、厚みは約3.4倍(No.1)~約15.4倍(No.5)に増加する。また、層数の増加に伴って印刷層の厚みは増加し、No.7~13によれば、立体要素層2iを最大50層まで積層した場合(No.13)には、積層立体層200として、濃度100%において3.615mmの厚みが得られる。
【0145】
次に、
図18に示すカラー立体要素層2ic、ホワイト立体要素層2iw、及びクリア要素層40iの印刷層全体の厚みに基づいて、各要素層の単層の厚みを算出した。
図18の右欄は、入力階調の濃度を異ならせたときの各要素層の単層の平均厚みを測定した結果である。
【0146】
図18の右欄に示すように、No.1~6によれば、カラー立体要素層2ic、ホワイト立体要素層2iw、及びクリア要素層40iの単層の平均厚みは、入力階調の濃度10~100%に対し、それぞれ、0.004~0.032mm、0.003~0.043mm、及び0.005~0.045mmとなった。また、No.7~13によれば、立体要素層2iを構成するカラー立体要素層2ic、ホワイト立体要素層2iw各層の平均厚みは、両層の平均で、入力階調の濃度10~100%に対し、0.003~0.036mmとなった。
【0147】
次に、不規則パターンの態様を異ならせたときの画質変化について評価を行った。
図19は、積層立体層200の不規則パターンを描画した図(1つの写真枠を横40mm×縦40mmとしたとき拡大倍率は約1倍)であり、(a)は、不規則パターンホワイト立体要素層21w(R)に施す不規則パターンの不規則パターンとしてのノイズテクスチャのレベルを示す相対的指標(以後、「ノイズレベル」と記す場合がある)を50~400%に変調し、さらに、0.5画素のぼかし処理を施した条件、(b)は、不規則パターンホワイト立体要素層21w(R)に施す不規則パターンの不規則パターンとしてのノイズレベルを50~400%に設定した条件における写真である。
図20(a)(b)は、
図19(a)(b)それぞれを、拡大した顕微鏡写真(同じく拡大倍率は約30倍)である。
【0148】
これにより、ノイズレベルの増加に伴い不規則パターンの粒度が増加すること、0.5画素のぼかし処理により不規則パターンのエッジが緩和されることが見て取れる。すなわち、不規則パターンはシャープにするとテクスチャーが際立つが、ぼかすと不規則パターンの凹部が埋まり平滑に見えることが見て取れる。
【0149】
図21は、高さ階調の濃度が0%~60%の条件において、(a)はノイズレベル40%、(b)はノイズレベル80%のノイズを付加したときの積層立体層の不規則パターンを描画した図(1つの写真枠を横40mm×縦85mmとしたとき拡大倍率は約3.24倍)であり、左欄は元データ、中央は元データに処理を行った場合(1回目処理)、右欄は元データに同様の処理を行った場合(2回目処理)の図である。図中のスケールは0.5mm間隔を表す。
【0150】
図21(a)(b)において、濃度が0%~60%まで不規則パターンが付加されていることが見て取れる。また、1回目処理と2回目処理とで同一位置における模様は異なるが、粒度は概ね同等の不規則パターンが付加されていることが見て取れる。
【0151】
図22(a)(b)、
図23(a)(b)は、高さ階調の濃度が70%、100%の条件における不規則パターンを描画した同様の図(同じく拡大倍率は約3.24倍)である。
【0152】
これより、濃度70%、100%においてもそれぞれのノイズレベルに相当する不規則パターンが付加され、1回目処理と2回目処理とで同一位置における模様は異なるが粒度は概ね同等の不規則パターンが付加されていることが見て取れる。
【0153】
図24(a)は、高さ階調の濃度が60%の条件において、不規則パターンホワイト立体要素層21w(R)にノイズレベル400%の不規則パターンを付加したときの、積層立体層200の不規則パターン形成領域RAの表面を正面上方から撮影した顕微鏡写真(1つの写真枠を横80mm×縦60mmとしたとき拡大倍率は約9倍)であり、(b)は、(a)と同じ条件において、0.5画素のぼかし処理を施した条件での写真(同じく拡大倍率は約9倍)である。不規則パターン要素層の積層数は10層であり、10層に同じ不規則パターンが適用される。また、図中のスケールは0.5mm間隔を表す。また、
図25(a)(b)は、同様の条件において積層立体層200の表面を斜め上方から撮影した顕微鏡写真(同じく拡大倍率は約5倍)である。
【0154】
図24(a)(b)、
図25(a)(b)により、積層立体層の不規則パターン形成領域における不規則な模様が見て取れ、
図24(b)、
図25(b)では、ぼかし処理より不規則な模様が細く不明瞭な部分と、不規則な模様が太く明瞭に部分とが、混在した状態になり、
図24(a)、
図25(a)と比べて不規則な模様の太さの均一性が減少し、粒度が増した印象を与えることが見て取れる。
【0155】
図26(a)は、不規則パターンを形成しない積層立体層の表面の顕微鏡写真(同じく拡大倍率は約9倍)であり、(b)はノイズレベル40%、(c)はノイズレベル100%のノイズを付加したときの積層立体層の不規則パターン形成領域の表面を正面上方から撮影した顕微鏡写真(同じく拡大倍率は約9倍)である。不規則パターン要素層の積層数は10層であり、図中のスケールは0.5mm間隔を表す。また、
図27(a)(b)(c)は、同様の条件において積層立体層200の表面を斜め上方から撮影した顕微鏡写真(同じく拡大倍率は約6倍)である。
【0156】
図26(a)、27(a)では、不規則パターンを形成しない積層立体層200の外縁の稜線部に相当するエッジ部は壁面が傾斜して斜面を形成し堤型の断面形状となり、エッジ部の断面は曲線状となる。また、堤状のエッジ部が縦横に交わるコーナ部の形状は平面視において丸みを帯びた形状となる。
【0157】
印刷に用いる油性インクは粘度が高いため、平面方向の紫外線照射乾燥ではインク層の表面は乾燥するが、中心部は乾燥しにくく乾燥に要する時間が長く、表面と内部で乾燥時間の差が生じる。そのため、積層立体層200の印刷後の乾燥工程において樹脂が表面張力によってレベリングされて、外縁のエッジ部は鈍り、外縁の壁面は傾斜し堤状となり、コーナ部が丸みを帯びたものになる。
【0158】
立体印刷物では、上述のとおり、絵柄領域11は、インクエンボス処理によって基板100の主面100aの表面から上方に隆起しており、主面上の位置に応じて高さが異なる態様をなし、高さが相対的に高い隆起部分201と高さが相対的に低い谷部分202とが形成され立体印刷データに基づく高さ階調による凹凸を備えた立体印刷層を構成している。
【0159】
立体印刷データに不規則パターンが適用されない積層立体層の場合、エッジ部内方の積層立体層の凹凸は、外縁のエッジ部やコーナ部と同様に、隆起部分201の外縁のエッジは鈍り、平面視において隆起部分201のコーナ部の形状は丸みを帯びたものとなり、全体として、隆起部分201と谷部分202との境界に滲みが出てぼけて高さ階調による凹凸が不明瞭な立体印刷物になる。
【0160】
これに対し、
図26(b)、
図27(b)では、ノイズレベル40%のノイズを付加した不規則パターン要素層を設けたことにより、不規則パターンを形成しない(a)と比較して、積層立体層200の外縁のエッジ部は、壁面の傾斜が小さくなりより切り立った断面形状となる。また、コーナ部の形状が明瞭な直角形状となる。
【0161】
さらに、
図26(c)、
図27(c)に示すように、ノイズレベル100%のノイズを付加した不規則パターン要素層を設け実施例では、不規則パターンを形成しない(a)の例と比較して、積層立体層200の外縁のエッジ部は、壁面の傾斜はより直角に近付き、ほぼ直角に切り立った断面形状となる。コーナ部の形状もさらに明瞭な角が尖った直角形状となることが見て取れる。
【0162】
このように、本実施例によれば、積層立体層に不規則パターンを適用することにより、画像にムラをつけて積層立体層200の印刷後の乾燥工程において紫外線照射効果を増やして乾燥時間を短縮することにより、乾燥中に樹脂がレベリングされて外縁のエッジ部は鈍り、外縁の壁面は傾斜し堤状となり、コーナ部が丸みを帯びる現象が抑制される。
【0163】
また、積層立体層200のエッジ部内方においても同様の傾向が見て取れる。
図26(a)(b)(c)、あるいは、
図27(a)(b)(c)をそれぞれ比較すると、エッジ部内方において、
図26(a)及び
図27(a)では、積層立体層における高さ階調の凹凸が小さく全体としてのっぺりとした印象であるのに対し、
図26(b)、
図26(c)では、
図26(a)<
図26(b)<
図26(c)の順に、また、
図27(b)、
図27(c)では、
図27(a)<
図27(b)<
図27(c)の順に、積層立体層における凹凸の高低差が増加し、積層立体層の凹凸がより明瞭になることが見て取れる。
【0164】
このように、不規則パターンを適用した立体印刷データに基づく積層立体層では、平面視において不規則パターンからなるランダムドットが配された立体印刷層により、絵柄領域11に相当する積層立体層200の高さ階調による凹凸においても、外縁のエッジ部やコーナ部と同様に、隆起部分201の外縁のエッジは明瞭となり、平面視において隆起部分201のコーナ部はシャープな形状となり、全体として、隆起部分201と谷部分202との境界にインクの滲みが軽減され、滲みやぼけが少なく高さ階調による凹凸が明瞭な立体印刷物が形成される。
【0165】
図26(a)(b)(c)及び
図27(a)(b)(c)の条件(以後、条件(a)、条件(b)、条件(c)とする)にて、立体画像を印刷し、視覚的な立体感として、立体画像のシャープネスや明瞭性について画質評価を行った。
【0166】
その結果、視覚的な立体感では、条件(b)=条件(c)>条件(a)という結果が得られ、立体画像のシャープネスや明瞭性では、条件(a)=条件(c)>条件(b)という結果が得られ、条件(c)が、視覚的な立体感、立体画像のシャープネスや明瞭性の両方において優れていることが確認された。
【0167】
以上の結果から、立体印刷物10の構成では、積層立体層に不規則パターン形成領域に不規則パターンを設けたことにより、隆起を高めて視覚的な立体感を増したときに立体画像のシャープネスや明瞭性が低下することを抑制することができることが確認された。これにより、立体印刷物10によれば、視覚的な立体感の確保と微細な立体表現が可能になることがわかる。
【0168】
<まとめ>
以上、説明したように、実施の形態に係る立体印刷物10は、基板100と、基板の一方の主面の上方に配され、1色または複数色を以って配されたカラー立体要素層21c~2ncと、光反射性の白色インクを以って配されたホワイト立体要素層21w~2nwを少なくとも1層ずつ含む立体要素層21~2nが複数積層されてなり、主面上の位置に応じて厚みが異なる積層立体層200と、積層立体層200の上方に、1色または複数色を以って配され、絵柄を表す着色層300とを備え、積層立体層は、着色層の表す絵柄に対応する絵柄領域11に相当する部分が基板の主面から上方に隆起しており、立体要素層21~2nは、ホワイト立体要素層21w~2nwが、平面視において所定の領域(不規則パターン形成領域RA)が不規則パターンによって構成されている構成を採る。
【0169】
従来の印刷方法では、複数のインクの層を重ねて媒体上に隆起形状(積層インク領域)を形成する際に、積層されるインクの層数を増加させて隆起形状の高さ寸法を高めて視覚的な立体感を増したときに、隆起部分の縁部の形状が鈍って隆起部分がブロードな台形形状となる傾向があり、立体画像としてのシャープネスや明瞭性が低下するという課題があった。
【0170】
これに対し、実施の形態に係る立体印刷物10によれば、上記した構成により、複数のインクの層を重ねた隆起形状を含む立体印刷物において、隆起を高めて視覚的な立体感を増したときに立体画像のシャープネスや明瞭性が低下することを抑制することができる。
【0171】
これにより、視覚的な立体感の確保と微細な立体表現が可能になる。
【0172】
また、ホワイト立体要素層21w~2nw又はカラー立体要素層21c~2ncの厚みが、主面上の位置に応じて異なり、不規則パターン形成領域RAは、ホワイト立体要素層21w~2nw又はカラー立体要素層21c~2ncの厚みが所定範囲の厚みである連続する領域である構成としてもよい。
【0173】
これにより、立体画像の盛り上がった面部分に対し、立体画像としてのシャープネスや明瞭性を向上することができる。
【0174】
また、不規則パターン形成領域RAは、当該領域の外とのホワイト立体要素層21w~2nw又はカラー立体要素層21c~2ncの厚みの差が所定値以上である構成としてもよい。
【0175】
これにより、立体画像の絵柄の輪郭や線状部分に対し、立体画像としてのシャープネスや明瞭性を向上することができる。
【0176】
また、積層立体層200の上方には、積層立体層200を被覆し、透過する光の光量を調整する機能を有するホワイト被覆層2zwを備えた構成としてもよい。樹脂材料からなるホワイト被覆層2zwによって基板100の主面100a全体を被覆することにより、上方から積層立体層200への水分の侵入を抑制して積層立体層200の膨張や変形を抑制できる。これにより、積層立体層200による微細な立体表現を長期間維持し、微細な立体表現が経時的に劣化することを抑制できる。
【0177】
また、着色層の上面に、透過する光の光量を調整する機能を有し、着色層300を被覆し、不規則なデータパターンが重畳された立体印刷用画像データによって微細な凹凸が分散配置されてなるクリア要素層401、402を含んだクリア要素層401、402を備えた構成としてもよい。絵柄に応じて看者にとってより効果的に立体感を知覚させることができる。
【0178】
≪変形例≫
実施の形態に係る立体印刷物、及びその製造方法を説明したが、本開示は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。例えば、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。以下では、そのような形態の一例として、変形例を説明する。
【0179】
(1)上記した実施の形態に係る立体印刷物10では、カラー立体要素層21c~2nc及びホワイト立体要素層21w~2nwの厚みは、立体印刷用画像データの高さ階調に基づいて前記主面上の位置に応じて異なる構成とした。
【0180】
しかしながら、カラー立体要素層21c~2nc及びホワイト立体要素層21w~2nwの層数は、立体印刷用画像データの高さ階調に基づいて前記主面上の位置に応じて異なる構成としてもよい。
【0181】
係る構成によれば、カラー立体要素層21c~2nc、ホワイト立体要素層21w~2nwが、Z軸方向下側から順にピラミッド状に積層することによって、積層立体層200は全体として高さが段階的に変化する階段形状を形成することができる。そのため、被写体の画像を示す絵柄領域11において、より簡易な構成により効果的な立体表現が可能になり、看者に十分な立体感を知覚できる立体印刷物を、多数、量産する場合に、安価に印刷物を提供することができる。
【0182】
(2)上記した実施の形態に係る立体印刷物10では、カラー立体要素層21c~2nc及びホワイト立体要素層21w~2nwが、平面視において所定の領域が不規則パターンによって構成されている構成とした。しかしながら、立体印刷物10において、透過する光の光量を調整する機能を有し着色層300を被覆する積層クリア層400を構成するクリア要素層401、402の少なくとも1層が、平面視において不規則パターンによって構成されている構成としてもよい。
【0183】
図28(a)(b)は、不規則パターンを形成しない積層クリア層400の表面の顕微鏡写真(1つの写真枠を横80mm×縦60mmとしたとき拡大倍率は約116倍)であり、(a)は積層クリア層400を構成するクリア要素層の総数を5層とした場合の、(b)は10層とした場合の写真である。
図28(c)は、積層クリア層400の不規則パターン形成領域の表面の顕微鏡写真であり、立体要素層の総数を10層とした場合の同様の写真である。
【0184】
図28(a)では、積層立体層200の外縁の稜線部に相当するエッジ部は直線状であってコーナ部の形状が比較的明瞭な直角形状であるが、(b)では、積層クリア層400の外縁のエッジ部は曲線状となるコーナ部の形状は丸みを帯びた形状となる。積層立体層200の場合と同様に、積層クリア層400においても、総数を10層に増加したことにより、積層クリア層400の印刷後の乾燥工程において樹脂が表面張力によってレベリングされてコーナ部が丸みを帯びると考えられ、この場合、滲みが出てぼけた不明瞭な立体印刷物になることが見て取れる。
【0185】
これに対し、
図28(c)では、立体要素層の総数を5層に増加した(b)の写真と比較して、積層クリア層400の外縁のエッジ部は直線状であってコーナ部の形状が明瞭な直角形状となることが見て取れる。このように、積層立体層200と同様に、積層クリア層400においても、不規則パターンを使用して積層することにより層厚にムラを持たせて紫外線照射効果を増やしてインクの滲みを軽減することができる。これにより、着色層300を被覆する積層クリア層400を備えた立体印刷物において、隆起を高めて視覚的な立体感を増したときに立体画像のシャープネスや明瞭性が低下することを抑制することができ、視覚的な立体感の確保と微細な立体表現が可能になる。
【0186】
(3)あるいは、立体印刷物10を、着色層300を被覆し、透過する光の光量を調整する機能を有し積層クリア層400を構成するクリア要素層401、402の少なくとも1層が平面視において不規則パターンによって構成されているが、カラー立体要素層21c~2nc及びホワイト立体要素層21w~2nwには平面視において所定の領域が不規則パターンによらずに構成されている態様に変形してもよい。
【0187】
すなわち、基板の一方の主面の上方に配され、1色または複数色を以って配されたカラー立体要素層と、光反射性の白色インクを以って配されたホワイト立体要素層を少なくとも1層ずつ含む立体要素層が複数積層されてなり、主面上の位置に応じて厚みが異なる積層立体層と、積層立体層の上方に、1色または複数色を以って配され、絵柄を表す着色層とを備え、着色層の上面に、透過する光の光量を調整する機能を有し、着色層を被覆するクリア層を備え、クリア層は、平面視において不規則パターンによって構成されている構成としてもよい。
【0188】
この場合も、上記変形例(2)と同様に、積層クリア層400を備えた立体印刷物において、視覚的な立体感を増したときに立体画像のシャープネスや明瞭性が低下することを抑制でき、視覚的な立体感の確保と微細な立体表現が可能になる。
【0189】
(4)上記した実施の形態に係る立体印刷物10では、積層立体層200は、カラー立体要素層21c~2ncと、ホワイト立体要素層21w~2nwを少なくとも1層ずつ含む立体要素層21~2nが複数積層されてなる構成とした。しかしながら、立体印刷物は、立体要素層21~2nのホワイト立体要素層21w~2nwが、平面視において所定の不規則パターン形成領域RAが不規則パターンによって構成されていればよく、立体要素層21~2nにカラー立体要素層21c~2ncを含まない構成としてもよい。
【0190】
この場合、立体印刷物の変形例の一態様は、例えば、積層立体層200を構成する複数の立体要素層21~2nが、光反射性の白色インクを以って配されたホワイト立体要素層21w~2nwのみから構成される態様としてもよい。
【0191】
かかる態様により、ホワイト立体要素層21w~2nwのみからなる複数の立体要素層21~2nを用いて、積層立体層200の厚みを主面上の位置に応じてが異ならせことにより、隆起を高めて視覚的な立体感を増したときに立体画像のシャープネスや明瞭性の低下を抑制して、視覚的な立体感の確保と微細な立体表現が可能となる。
【0192】
≪補足≫
以上で説明した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていないものについては、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0193】
また、上記の方法が実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記方法の一部が、他の方法と同時(並列)に実行されてもよい。
【0194】
また、発明の理解の容易のため、上記各実施の形態で挙げた各図の構成要素の縮尺は実際のものと異なる場合がある。また本発明は上記各実施の形態の記載によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0195】
また、各実施の形態及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本開示の一態様に係る立体印刷物は、室内装飾や広告媒体、さらには造営材(壁や天井など)の一部として、高い画像品質を得ることができる立体印刷物を実現するのに有用であり、例えば、絵画、展示用装飾物、ポスター、広告、ディスプレイ、インテリア、室内装飾用部材等に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0197】
10 立体印刷物
10a 主面
11 絵柄領域
11a 絵柄輪郭
13 背景領域
100 基板
200 積層立体層
201 隆起部分
202 谷部分 21、22、23、2i、2n 立体要素層
21w、22iw、23w、2iw、2nw ホワイト立体要素層
21w(R)、22w(R)、23w(R)、2iw(R)、2nw(R) 不規則パターンホワイト立体要素層
21c、22c、23c、2ic、2nc カラー立体要素層
2zw ホワイト被覆層
300、310 着色層
400、410 積層クリア層
401、402、411、412 クリア要素層
RA 不規則パターン形成領域