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特開2024-31898光学ガラス、ガラスプリフォーム、光学素子と光学機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031898
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】光学ガラス、ガラスプリフォーム、光学素子と光学機器
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/068 20060101AFI20240229BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134877
(22)【出願日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】202211031632.5
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】512264046
【氏名又は名称】成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU GUANG MING GUANG DIAN GLASS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.359,Sec.3,Chenglong Avenue,Long quan yi District,Chengdu,Sichuan China
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】孫 偉
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB01
4G062DA03
4G062DA04
4G062DB01
4G062DB02
4G062DB03
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4G062EE02
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4G062FD01
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4G062FE01
4G062FF01
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4G062FH02
4G062FH03
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4G062FJ04
4G062FK05
4G062FK06
4G062FL01
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4G062KK05
4G062KK07
4G062KK08
4G062KK10
4G062MM02
4G062NN02
4G062NN30
4G062NN33
(57)【要約】
【課題】屈折率が1.96以上、アッベ数が34以下、密度が低い光学ガラスを提供すること。
【解決手段】本発明は光学ガラスを提供し、重量%で以下の成分を含む: SiO:1~15%、B:2~18%、La:35~65%、Y:5~25%、ZrO:2~15%、Nb:1~15%、TiO:5~20%、前記光学ガラスの屈折率nが1.96以上である。合理的な成分設計により、本発明で得られた光学ガラスは、所望の屈折率とアッベ数を有すると同時に、密度が比較的低く、光学機器の軽量化の使用を満たすことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス: SiO:1~15%、B:2~18%、La:35~65%、Y:5~25%、ZrO:2~15%、Nb:1~15%、TiO:5~20%、前記光学ガラスの屈折率nは1.96以上である。
【請求項2】
重量%で以下の成分をさらに含む、請求項1に記載の光学ガラス: Gd:0~10%、及び/又はTa:0~5%、及び/又はRO:0~10%、及び/又はRnO:0~8%、及び/又はWO:0~5%、及び/又はZnO:0~10%、及び/又はAl:0~8%、及び/又はYb:0~10%、及び/又はGeO:0~5%、及び/又は清澄剤:0~2%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種であり、清澄剤はSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種である。
【請求項3】
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス: SiO:1~15%、B:2~18%、La:35~65%、Y:5~25%、ZrO:2~15%、Nb:1~15%、TiO:5~20%、Gd:0~10%、Ta:0~5%、RO:0~10%、RnO:0~8%、WO:0~5%;ZnO:0~10%、Al:0~8%、Yb:0~10%、GeO:0~5%、清澄剤:0~2%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種であり、清澄剤はSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種であり、前記光学ガラスの屈折率nは1.96以上である。
【請求項4】
重量%で成分を含み、以下の10の状況の一種又は複数種を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス:
1) La+Y+Gdは45~75%;
2) SiO+Bは5~30%;
3) (La+TiO)/Nbは3.0~30.0;
4) Nb/Yは0.1~2.0;
5) Y/TiOは0.3~3.0;
6) (Nb+WO+Gd)/TiOは0.1~3.0;
7) (RO+ZnO)/Yが1.0以下であり;
8) (RO+Gd)/Yが1.0以下であり;
9) (WO+TiO)/Yは0.3~3.0;
10) (SiO+B)/Yが0.2~3.5、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種である。
【請求項5】
重量%で成分を含み、以下の10の状況の一種又は複数種を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス:
1) La+Y+Gdは50~75%;
2) SiO+Bは8~25%;
3) (La+TiO)/Nbは4.0~25.0;
4) Nb/Yは0.2~1.5;
5) Y/TiOは0.4~2.0;
6) (Nb+WO+Gd)/TiOは0.2~2.5;
7) (RO+ZnO)/Yが0.8以下であり;
8) (RO+Gd)/Yが0.8以下であり;
9) (WO+TiO)/Yは0.4~2.5;
10) (SiO+B)/Yが0.4~3.0、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種である。
【請求項6】
重量%で成分を含み、以下の10の状況の一種又は複数種を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス:
1) La+Y+Gdは55~70%;
2) SiO+Bは10~20%;
3) (La+TiO)/Nbは5.0~20.0;
4) Nb/Yは0.3~1.3;
5) Y/TiOは0.5~1.5;
6) (Nb+WO+Gd)/TiOは0.3~2.0;
7) (RO+ZnO)/Yが0.5以下であり;
8) (RO+Gd)/Yが0.6以下であり;
9) (WO+TiO)/Yは0.5~2.0;
10) (SiO+B)/Yが0.5~2.5、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種である。
【請求項7】
重量%で成分を含み、以下の8の状況の一種又は複数種を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス:
1) (La+TiO)/Nbは5.5~15.0;
2) Nb/Yは0.3~1.0;
3) Y/TiOは0.7~1.3;
4) (Nb+WO+Gd)/TiOは0.4~1.5;
5) (RO+ZnO)/Yが0.2以下であり;
6) (RO+Gd)/Yが0.3以下であり;
7) (WO+TiO)/Yは0.7~1.5;
8) (SiO+B)/Yが0.7~1.8、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種である。
【請求項8】
重量%で以下の成分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス: SiO:2~10%、及び/又はB:4~12%、及び/又はLa:40~60%、及び/又はY:6~20%、及び/又はZrO:3~12%、及び/又はNb:3~12%、及び/又はTa:0~3%、及び/又はGd:0~6%、及び/又はTiO:6~18%、及び/又はRO:0~5%、及び/又はRnO:0~3%、及び/又はWO:0~3%、及び/又はZnO:0~5%、及び/又はAl:0~4%、及び/又はYb:0~5%、及び/又はGeO:0~3%、及び/又は清澄剤:0~1%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種であり、清澄剤はSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種である。
【請求項9】
重量%で以下の成分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス: SiO:4~9%、及び/又はB:5~10%、及び/又はLa:42~55%、及び/又はY:8~15%、及び/又はZrO:4~10%、及び/又はNb:5~10%、及び/又はTa:0~1%、及び/又はGd:0~4%、及び/又はTiO:8~15%、及び/又はRO:0~2%、及び/又はRnO:0~2%、及び/又はWO:0~2%、及び/又はZnO:0~2%、及び/又はAl:0~2%、及び/又はYb:0~2%、及び/又はGeO:0~1%、及び/又は清澄剤:0~0.5%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種であり、清澄剤はSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種である。
【請求項10】
重量%でSiO、B、La、Y、ZrO、Nb、TiOの合計含有量が92%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項11】
重量%でSiO、B、La、Y、ZrO、Nb、TiOの合計含有量が96%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項12】
前記成分がTaを含まない、及び/又はWOを含まない、及び/又はYbを含まない、及び/又はROを含まない、及び/又はRnOを含まない、及び/又はZnOを含まない、及び/又はAlを含まない、及び/又はGeOを含まない、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項13】
前記光学ガラスの屈折率nが1.98以上、アッベ数vが23~34である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項14】
前記光学ガラスの屈折率nは1.99~2.02、アッベ数νは27~31である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項15】
前記光学ガラスの密度ρが5.20g/cm以下、及び/又は熱膨張係数α-30/70℃が85×10-7/K 以下、及び/又は耐水安定性Dが2類以上、及び/又は耐酸安定性Dが2類以上、及び/又は耐候性CRが2類以上、及び/又はヌープ硬度Hが670×10Pa以上、及び/又はヤング率Eが11500×10Pa~15500×10Pa、及び/又は気泡度がA級以上、及び/又は摩耗度Fが80~125である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項16】
前記光学ガラスの密度ρが5.00g/cm以下、及び/又は熱膨張係数α-30/70℃が75×10-7/K 以下、及び/又は耐水安定性Dが1類、及び/又は耐酸安定性Dが1類、及び/又は耐候性CRが1類、及び/又はヌープ硬度Hが690×10Pa以上、及び/又はヤング率Eが13000×10Pa~14000×10Pa、及び/又は気泡度がA00級、及び/又は摩耗度Fが90~105である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項17】
請求項1~3のいずれ一項に記載の光学ガラスで製造される、ガラスプリフォーム。
【請求項18】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラスを用いて製造される、光学素子。
【請求項19】
請求項1~3のいずれ一項に記載の光学ガラスを含む、光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学ガラスに関し、特に屈折率が1.96以上、アッベ数が34以下の光学ガラス、及びそれからなるガラスプリフォーム、光学素子及び光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学機器のデジタル化や画像、動画の高精細化が急速に発展している。特に画像や動画の高精細化は、デジタルカメラ、ビデオカメラ、プロジェクタなどの光学機器で際立っている。同時に、これらの光学機器に含まれる光学システムにおいて、レンズやプリズムなどの光学素子の数を減らすことにより、軽量化、小型化を図っている。
【0003】
同じ曲率半径下で、屈折率が高いガラスほど得られる結像視野が大きくなり、光学機器における光学素子の数を減らすのに有利であり、光学機器の小型化の発展に伴い、高屈折率のガラス需要が高まりつつある。光学機器の軽量化の目的を達成するためには、光学システムにおける光学素子の数を減らすほか、光学ガラスの密度を下げることも重要な手段である。CN101734855Aは屈折率が1.95を超え、2.20以下、分散係数が15~25である高屈折率光学ガラスを開示しており、その密度は高く、光学機器の軽量化をさらに実現するのに不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第1734855号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、屈折率が1.96以上、アッベ数が34以下、密度が低い光学ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が技術的課題を解決するために採用する技術方案は次のとおりである。
【0007】
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス: SiO:1~15%、B:2~18%、La:35~65%、Y:5~25%、ZrO:2~15%、Nb:1~15%、TiO:5~20%、前記光学ガラスの屈折率nが1.96以上である。
【0008】
さらに、重量%で以下の成分をさらに含む、前記光学ガラス: Gd:0~10%、及び/又はTa:0~5%、及び/又はRO:0~10%、及び/又はRnO:0~8%、及び/又はWO:0~5%、及び/又はZnO:0~10%、及び/又はAl:0~8%、及び/又はYb:0~10%、及び/又はGeO:0~5%、及び/又は清澄剤:0~2%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種であり、清澄剤はSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種である。
【0009】
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス: SiO:1~15%、B:2~18%、La:35~65%、Y:5~25%、ZrO:2~15%、Nb:1~15%、TiO:5~20%、Gd:0~10%、Ta:0~5%、RO:0~10%、RnO:0~8%、WO:0~5%、ZnO:0~10%、Al:0~8%、Yb:0~10%、GeO:0~5%、清澄剤:0~2%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種であり、清澄剤はSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種であり、前記光学ガラスの屈折率nが1.96以上である。
【0010】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: La+Y+Gdが45~75%、好ましくはLa+Y+Gdが50~75%、より好ましくはLa+Y+Gdが55~70%である。
【0011】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: SiO+Bが5~30%、好ましくはSiO+Bが8~25%、より好ましくはSiO+Bが10~20%である。
【0012】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: (La+TiO)/Nbが3.0~30.0、好ましくは(La+TiO)/Nbが4.0~25.0、より好ましくは(La+TiO)/Nbが5.0~20.0、さらに好ましくは(La+TiO)/Nbが5.5~15.0である。
【0013】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: Nb/Yが0.1~2.0、好ましくはNb/Yが0.2~1.5、より好ましくはNb/Yが0.3~1.3、さらに好ましくはNb/Yが0.3~1.0である。
【0014】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: Y/TiOが0.3~3.0、好ましくはY/TiOが0.4~2.0、より好ましくはY/TiOが0.5~1.5、さらに好ましくはY/TiOが0.7~1.3である。
【0015】
さらに、重量%で以下の成分を含む、光学ガラス: (Nb+WO+Gd)/TiOが0.1~3.0、好ましくは(Nb+WO+Gd)/TiOが0.2~2.5、より好ましくは(Nb+WO+Gd)/TiOが0.3~2.0、さらに好ましくは (Nb+WO+Gd)/TiOが0.4~1.5である。
【0016】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: (RO+ZnO)/Yが1.0以下、好ましくは(RO+ZnO)/Yが0.8以下、より好ましくは(RO+ZnO)/Yが0.5以下、さらに好ましくは(RO+ZnO)/Yが0.2以下、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種である。
【0017】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: (RO+Gd)/Yが1.0以下、好ましくは(RO+Gd)/Yが0.8以下、より好ましくは(RO+Gd)/Yが0.6以下、さらに好ましくは(RO+Gd)/Yが0.3以下、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種である。
【0018】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: (WO+TiO)/Yが0.3~3.0、好ましくは(WO+TiO)/Yが0.4~2.5、より好ましくは(WO+TiO)/Yが0.5~2.0、さらに好ましくは(WO+TiO)/Yが0.7~1.5である。
【0019】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: (SiO+B)/Yが0.2~3.5、好ましくは(SiO+B)/Yが0.4~3.0、より好ましくは(SiO+B)/Yが0.5~2.5、さらに好ましくは(SiO+B)/Yが0.7~1.8である。
【0020】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: SiO:2~10%、好ましくはSiO:4~9%、及び/又はB:4~12%、好ましくはB:5~10%、及び/又はLa:40~60%、好ましくはLa:42~55%、及び/又はY:6~20%、好ましくはY:8~18%、より好ましくはY:8~15%、及び/又はZrO:3~12%、好ましくはZrO:4~10%、及び/又はNb:3~12%、好ましくはNb:5~10%、及び/又はTa:0~3%、好ましくはTa:0~1%、及び/又はGd:0~6%、好ましくはGd:0~4%、及び/又はTiO:6~18%、好ましくはTiO:8~15%、及び/又はRO:0~5%、好ましくはRO:0~2%、及び/又はRnO:0~3%、好ましくはRnO:0~2%、及び/又はWO:0~3%、好ましくはWO:0~2%、及び/又はZnO:0~5%、好ましくはZnO:0~2%、及び/又はAl:0~4%、好ましくはAl:0~2%、及び/又はYb:0~5%、好ましくはYb:0~2%、及び/又はGeO:0~3%、好ましくはGeO:0~1%、及び/又は清澄剤:0~1%、好ましくは清澄剤:0~0.5%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種であり、清澄剤はSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種である。
【0021】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス: SiO、B、La、Y、ZrO、Nb、TiOの合計含有量が90%以上、好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Nb、TiOの合計含有量が92%以上、より好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Nb、TiOの合計含有量が94%以上、さらに好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Nb、TiOの合計含有量が96%以上である。
【0022】
さらに、前記成分がTaを含まない、及び/又はWOを含まない、及び/又はYbを含まない、及び/又はROを含まない、及び/又はRnOを含まない、及び/又はZnOを含まない、及び/又はAlを含まない、及び/又はGeOを含まない、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaO一種又は複数種であり、RnOはLiO、NaO、KO一種又は複数種である、前記光学ガラス。
【0023】
さらに、前記光学ガラスの屈折率nが1.97以上、好ましくは1.98以上、より好ましくは1.99以上、さらに好ましくは1.99~2.02、アッベ数vが23~34、好ましくは25~33、より好ましくは26~32、さらに好ましくは27~31である。
【0024】
さらに、前記光学ガラスの密度ρが5.20g/cm以下、好ましくは5.10g/cm以下、より好ましくは5.00g/cm以下、及び/又は熱膨張係数α-30/70℃が85×10-7/K以下、好ましくは80×10-7/K以下、より好ましくは75×10-7/K以下、及び/又は耐水安定性Dは2類以上、好ましくは1類、及び/又は耐酸安定性Dが2類以上、好ましくは1類、及び/又は耐候性CRが2類以上、好ましくは1類、及び/又はヌープ硬度Hが670×10Pa以上、好ましくは680×10Pa以上、より好ましくは690×10Pa以上、及び/又はヤング率Eが11500×10Pa~15500×10Pa、好ましくは12000×10Pa~15000×10Pa、より好ましくは12500×10Pa~14500×10Pa、さらに好ましくは13000×10Pa~14000×10Pa、及び/又は気泡度がA級以上、好ましくはA級以上、より好ましくはA00級、及び/又は摩耗度Fが80~125、好ましくは85~115、より好ましくは90~105である。
【0025】
上記の光学ガラスで製造される、ガラスプリフォーム。
【0026】
上記の光学ガラス、又は上記のガラスプリフォームで製造される、光学素子。
【0027】
上記の光学ガラス、及び/又は上記の光学素子を含む、光学機器。
【発明の効果】
【0028】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。合理的な成分設計により、本発明により得られた光学ガラスは、所望の屈折率とアッベ数を有すると同時に、密度が比較的低く、光学機器の軽量化を満たすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明にかかる光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で適宜変形して実施することが可能である。さらに、適宜省略はあるものの、記載を繰り返すことによって本発明の主旨が限定されるものではなく、以下では、本発明の光学ガラスを単にガラスと称することもある。
【0030】
[光学ガラス]
以下に、本発明の光学ガラスの成分の範囲について説明する。本説明書において、各成分の含有量および合計含有量は、特に指定のない限り、重量パーセント(wt%)で表すものとする。すなわち、各成分の含有量、合計含有量は、酸化組成物に換算するガラス物質の総重量に対する重量パーセントで表すことである。ここでいう「酸化物組成物に換算した」とは、本発明の光学ガラスの組成物の原料として用いた酸化物、錯塩、水酸化物等が溶融時に分解して酸化物に変換された場合の酸化物物質の総重量を100%とした場合のことである。
【0031】
具体的には、本明細書に記載されている数値範囲には、上限値および下限値が含まれ、「以上」および「以下」には端点値、ならびに範囲に含まれるすべての整数および分数が含まれ、範囲が限定されている場合に記載されている具体的な値に限定されるものではない。本明細書で「及び/又は」と呼ばれるものは包括的であり、例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、またはAとBの両方を意味する。
【0032】
<必須成分とオプション成分>
はガラスネットワーク形成成分であり、ガラスの溶融性と耐失透性を高め、ガラス転移温度と密度を低下させることができる、本発明は上記の効果を得るために2%以上のBを添加しており、好ましくは4%以上のBを含有し、より好ましくは5%以上のBを含有するが、その含有量が18%を超えると、ガラスの安定性が低下し、屈折率が低下し、本発明の高屈折率を実現することが困難となる。したがって、本発明においては、Bの含有量上限値は18%、好ましくは12%、より好ましくは10%である。
【0033】
SiOもネットワーク形成成分であり、ガラスの熱膨張係数を調整し、ガラスの耐失透性と化学安定性を高め、ガラスの熱安定性と高温粘度を改善することができるが、その含有量が15%を超えると、ガラスの溶融性能が悪化する傾向があり、転移温度が上昇する。したがって、本発明においては、SiOの含有量が1~15%、好ましくは2~10%、より好ましくは4~9%である。
【0034】
いくつかの実施形態において、SiOとBの合計含有量SiO+Bを5~30%以内に制御することにより、ガラスのガラス形成安定性を維持すると同時に、ガラスの摩耗度と耐候性を最適化し、ガラスの耐失透性の低下を防止することができる。したがって、好ましくはSiO+Bが5~30%、より好ましくはSiO+Bが8~25%、さらに好ましくはSiO+Bが10~20%である。
【0035】
Laはガラスの屈折率を高める有効な成分であり、ガラスの化学安定性と耐失透性に対する改善効果が顕著であるが、その含有量が35%未満である場合は、所望の光学定数を達成することが困難であり、その含有量が65%を超えると、ガラスの失透傾向が逆に増大し、熱安定性が悪くなる。したがって、Laの含有量が35~65%、好ましくは40~60%、より好ましくは42~55%である。
【0036】
はガラスの屈折率と耐失透性を高め、ガラスのヤング率を調整することができ、本発明は上記の効果を得るために5%以上のYを添加しており、その含有量が25%を超えると、ガラスの化学安定性と耐候性が悪くなる。したがって、本発明においては、Yの含有量が5~25%、好ましくは6~20%、より好ましくは8~18%,さらに好ましくは8~15%である。
【0037】
いくつかの実施形態において、SiOとBの合計含有量SiO+BとYの含有量との比(SiO+B)/Yを0.2~3.5以内に制御することにより、ガラスの気泡度を高め、ガラス熱膨張係数の増加を防止するのに有利である。したがって、好ましくは(SiO+B)/Yが0.2~3.5、より好ましくは(SiO+B)/Yが0.4~3.0である。さらに、(SiO+B)/Yを0.5~2.5以内に制御することにより、ガラスの硬度と耐候性をさらに高めることができる。したがって、さらに好ましくは(SiO+B)/Yが0.5~2.5、よりさらに好ましくは(SiO+B)/Yが0.7~1.8である。
【0038】
Gdはガラスの屈折率と化学安定性を高めることができるが、その含有量が10%を超えると、ガラスの耐失透性と摩耗度が悪くなる。したがって、Gdの含有量が0~10%、好ましくは0~6%、より好ましくは0~4%である。
【0039】
いくつかの実施形態において、La、YとGdの合計含有量La+Y+Gdを45~75%以内に制御することにより、ガラスは所望の屈折率及びアッベ数を得やすくなり、ガラスの耐失透性と耐候性を最適化することができる。したがって、好ましくはLa+Y+Gdが45~75%、より好ましくはLa+Y+Gdが50~75%、さらに好ましくはLa+Y+Gdが55~70%である。
【0040】
Ybもガラスに高屈折性、低分散性を付与する成分であり、その含有量が8%を超えると、ガラスの耐結晶性が低下する。したがって、Ybの含有量が0~10%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~2%、さらに好ましくはYbを含まないことである。
【0041】
ZrOは光学ガラスの粘度、硬度、屈折率と化学安定性を高めることができ、ガラスの熱膨張係数を下げることもできるが、ZrOの含有量が高すぎると、ガラスの耐失透性が低下し、溶融難度が増加し、溶融温度が上昇し、ガラス内部に介在物が発生し、光透過率が低下する。したがって、本発明においては、ZrOの含有量が2~15%、好ましくは3~12%、より好ましくは4~10%である。
【0042】
TiOは高屈折高分散成分であり、ガラスに添加することでガラスの屈折率と分散を顕著に向上させることができる、発明者らの研究によると、TiOを適量に添加することでガラスの安定性を増加させることができるが、TiOの含有量が高すぎると、ガラスの透過率が著しく低下し、ガラスの化学安定性も悪化する傾向がある。したがって、本発明においては、TiOの含有量が5~20%、好ましくは6~18%、より好ましくは8~15%である。
【0043】
いくつかの実施形態において、Yの含有量とTiOの含有量との比Y/TiOを0.3~3.0以内に制御することにより、ガラスの耐候性を高め、摩耗度を最適化することができる。したがって、好ましくはY/TiOが0.3~3.0、より好ましくはY/TiOが0.4~2.0である。さらに、Y/TiOを0.5~1.5以内に制御することにより、ガラスの化学安定性及び気泡度をさらに高めることができる。したがって、さらに好ましくはY/TiOが0.5~1.5、よりさらに好ましくはY/TiOが0.7~1.3である。
【0044】
Nbは高屈折高分散成分であり、ガラスの屈折率と耐失透性を高め、ガラスの熱膨張係数を低下することができ、本発明は上記の効果を得るために1%以上のNbを添加しており、好ましくはNbの含有量下限値が3%、より好ましくは下限値が5%である。Nbの含有量が15%を超えると、ガラスの熱安定性及び耐候性が低下し、光透過率が低下するので、本発明におけるNbの含有量上限値が15%、好ましくは12%、より好ましくは10%である。
【0045】
いくつかの実施形態において、LaとTiOの合計含有量La+TiOとNbの含有量との比(La+TiO)/Nbを3.0~30.0以内に制御することにより、ガラスの化学安定性を高め、ガラスの摩耗度を最適化することができる。したがって、好ましくは(La+TiO)/Nbが3.0~30.0、より好ましくは(La+TiO)/Nbが4.0~25.0である。さらに、(La+TiO)/Nbを5.0~20.0以内に制御することにより、ガラスの熱膨張係数をさらに低減し、ガラスの硬度を高めることができる。したがって、さらに好ましくは(La+TiO)/Nbが5.0~20.0、よりさらに好ましくは(La+TiO)/Nbが5.5~15.0である。
【0046】
いくつかの実施形態において、Nbの含有量とYの含有量との比Nb/Yを0.1~2.0以内に制御することにより、ガラスのヤング率を高めるとともに、ガラス硬度の低下を防止することができる。したがって、好ましくはNb/Yが0.1~2.0、より好ましくはNb/Yが0.2~1.5である。さらに、Nb/Yを0.3~1.3以内に制御することにより、ガラスの気泡度と摩耗度をさらに最適化することができる。したがって、さらに好ましくはNb/Yが0.3~1.3、よりさらに好ましくはNb/Yが0.3~1.0である。
【0047】
アルカリ土類金属酸化物RO(ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種)はガラスの光学定数を調整し、ガラスの化学安定性を最適化することができるが、その含有量が高いとガラスの耐失透性が低下する。したがって、ROの含有量が0~10%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~2%に限定される。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはROを含まないことである。
【0048】
いくつかの実施形態において、ROとGdの合計含有量RO+GdとYの含有量との比(RO+Gd)/Yを1.0以下に制御することにより、ガラスの密度を低下させ、ガラスの化学安定性を高め、ガラスのヤング率と気泡度を最適化するのに有利である。したがって、好ましくは(RO+Gd)/Yが1.0以下、より好ましくは(RO+Gd)/Yが0.8以下、さらに好ましくは(RO+Gd)/Yが0.6以下、よりさらに好ましくは(RO+Gd)/Yが0.3以下である。
【0049】
アルカリ性金属酸化物RnO(RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種)は、ガラスの転移温度を下げ、ガラスの光学定数と高温粘度を調整し、ガラスの溶融性を改善することができるが、その含有量が高いと、ガラスの耐失透性と化学安定性が低下する。したがって、本発明においては、RnOの含有量が0~8%、好ましくは0~3%、より好ましくは0~2%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはRnOを含まないことである。
【0050】
WOはガラスの屈折率と機械的強度を高めることができるが、WOの含有量が5%を超えると、ガラスの熱安定性が低下し、耐失透性が低下する。したがって、WOの含有量上限値は5%、好ましくは3%、より好ましくは2%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはWOを含まないことである。
【0051】
いくつかの実施形態において、Nb、WO、Gdの合計含有量Nb+WO+GdとTiOの含有量との比(Nb+WO+Gd)/TiOを0.1~3.0以内に制御することにより、ガラスの光透過率を向上させると同時に、密度の上昇を防止することができる。したがって、好ましくは(Nb+WO+Gd)/TiOが0.1~3.0、より好ましくは(Nb+WO+Gd)/TiOが0.2~2.5である。さらに、(Nb+WO+Gd)/TiOを0.3~2.0以内に制御することにより、ガラスの熱膨張係数をさらに下げ、ヤング率を高めることができる。したがって、さらに好ましくは(Nb+WO+Gd)/TiOが0.3~2.0、よりさらに好ましくは(Nb+WO+Gd)/TiOが0.4~1.5である。
【0052】
いくつかの実施形態において、WOとTiOの合計含有量WO+TiOとYの含有量との比(WO+TiO)/Yを0.3~3.0以内に制御することにより、ガラスの化学安定性の向上、摩耗度とヤング率の最適化に有利である。したがって、好ましくは(WO+TiO)/Yが0.3~3.0、より好ましくは(WO+TiO)/Yが0.4~2.5、さらに好ましくは(WO+TiO)/Yが0.5~2.0、よりさらに好ましくは(WO+TiO)/Yが0.7~1.5である。
【0053】
ZnOはガラスの屈折率と分散を調整し、ガラスの高温粘度と転移温度を下げることができる。ZnOの含有量が高すぎると、ガラス成形の難度が増加し、耐結晶性が悪くなる。したがって、ZnOの含有量が0~10%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~2%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはZnOを含まないことである。
【0054】
いくつかの実施形態において、ROとZnOの合計含有量RO+ZnOとYの含有量との比(RO+ZnO)/Yを1.0以下に制御することにより、ガラスの耐候性を高め、摩耗度を最適化し、ガラスの気泡度と熱膨張係数の低下を防止することができる。したがって、好ましくは(RO+ZnO)/Yが1.0以下、より好ましくは(RO+ZnO)/Yが0.8以下、さらに好ましくは(RO+ZnO)/Yが0.5以下、よりさらに好ましくは(RO+ZnO)/Yが0.2以下である。
【0055】
Taは屈折率を高め、ガラスの耐失透性を高めることができるが、その含有量が高すぎると、ガラスの熱安定性が低下し、密度が増大する。また、Taは他の成分に比べて非常に高価であり、実用性かつコストの観点から、使用量をできるだけ減らす必要がある。したがって、本発明におけるTaの含有量が0~5%、好ましくは0~3%、より好ましくは0~1%に限定される。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはTaを含まないことである。
【0056】
Alはガラスの化学安定性を改善することができるが、その含有量が8%を超えると、ガラスの溶融性と光透過率が悪くなる。したがって、本発明においては、Alの含有量が0~8%、好ましくは0~4%、より好ましくは0~2%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはAlを含まないことである。
【0057】
GeOは屈折率と耐失透性を高めることができるが、その含有量が高すぎると、ガラスの化学安定性が低下する。また、GeOは他の成分に比べて非常に高価であり、実用性かつコストの観点から使用量をできるだけ減らす必要がある。したがって、本発明におけるGeOの含有量が0~5%、好ましくは0~3%、より好ましくは0~1%に限定され、さらに好ましくはGeOを含まないことである。
【0058】
本発明では、清澄剤として0~2%のSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種を添加することにより、ガラスの清澄効果を高め、ガラスの気泡度を向上させることができ、好ましくは清澄剤の含有量が0~1%、より好ましくは清澄剤の含有量が0~0.5%である。本発明の光学ガラスの成分の種類及び含有量の設計が合理的であり、その気泡度が優れているため、いくつかの実施形態において、好ましくは清澄剤を含まないことである。Sbの含有量が2%を超えると、ガラスの清澄性が低下する傾向があり、さらにその強い酸化作用は溶融ガラスの白金又は白金合金容器の腐食及び成形金型の劣化を加速するので、本発明におけるSbの含有量は、好ましくは0~2%、より好ましくは0~1%、さらに好ましくは0~0.5%、よりさらに好ましくはSbを含まないことである。SnOとSnOは清澄剤としても使うことができるが、その含有量が2%を超えると、ガラスの着色傾向が増加し、又はガラスを加熱、軟化してプレス成形などで再成形するとSnが結晶核生成の起点となり、失透する傾向がある。したがって、本発明におけるSnOの含有量は、好ましくは0~2%、より好ましくは0~1%、さらに好ましくは0~0.5%、よりさらに好ましくはSnO的を含まないことである。SnOの含有量は、好ましくは0~2%、より好ましくは0~1%、さらに好ましくは0~0.5%、よりさらに好ましくはSnOを含まないことである。CeOの作用及び含有量はSnOと一致し、その含有量は好ましくは0~2%、より好ましくは0~1%、さらに好ましくは0~0.5%、よりさらに好ましくはCeOを含まないことである。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの低い熱膨張係数と密度、比較的高い光透過率と気泡度、および適切な摩耗度とヤング率を得るために、好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Nb、TiOの合計含有量が90%以上、より好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Nb、TiOの合計含有量が92%以上、さらに好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Nb、TiOの合計含有量が94%以上、よりさらに好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Nb、TiOの合計含有量が96%以上である。
【0060】
<含まれるべきでない成分>
本発明のガラスにおいては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の遷移金属の酸化物は、単独又は複合的に少量に含まれる場合でも、ガラスが着色され、可視光領域における特定の波長が吸収され、本発明の可視光透過効果を弱めるので、特に可視光領域の波長透過率を要求する光学ガラスは、実際には含まないことが好ましい。
【0061】
Th、Cd、Tl、Os、Be及びSeの酸化物は、近年、有害な化学物質として使用を制御する傾向にあり、ガラスの製造工程だけでなく、加工工程及び完成品の処置に至るまで、環境保護への取り組みが必要である。そのため、環境への影響を重視する場合は、不可避な混入以外は、それらを含まないことが好ましい。これにより、光学ガラスは実際に環境を汚染する物質を含まなくなる。したがって、本発明の光学ガラスは、特殊な環境措置を講じなくても、製造、加工及び廃棄が可能である。
【0062】
環境に配慮するため、本発明の光学ガラスは、As及びPbOを含まないことが好ましい。
【0063】
本明細書に記載されている「加えない」、「含まない」、「0%」という用語は、この成分を本発明のガラスの原料として意図的に添加しなかったことを意味する。しかし、ガラスを製造するための原料及び/又は設備として、意図的に添加されていない不純物や成分が、最終的なガラス中に少量または微量に存在することがあり、それらも本発明の特許の対象となる。
【0064】
以下では、本発明の光学ガラスの特性について説明する。
【0065】
<屈折率とアッべ数>
光学ガラスの屈折率(n)とアッべ数(ν)は、『GB/T 7962.1-2010』に規定された方法にしたがって試験されている。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの屈折率(n)の下限値が1.96、好ましくは下限値が1.97、より好ましくは下限値が1.98、さらに好ましくは下限値が1.99である。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの屈折率(n)の上限値が2.10、好ましくは上限値が2.05、より好ましくは上限値が2.02である。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのアッべ数(ν)の下限値が23、好ましくは下限値が25、より好ましくは下限値が26、さらに好ましくは下限値が27である。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのアッべ数(ν)の上限値が34、好ましくは上限値が33、より好ましくは上限値が32、さらに好ましくは上限値が31である。
【0070】
<密度>
光学ガラスの密度(ρ)は、『GB/T 7962.20-2010』に記載された方法にしたがって試験されている。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの密度(ρ)は5.20g/cm以下、好ましくは5.10g/cm以下、より好ましくは5.00g/cm以下である。
【0072】
<熱膨脹係数>
光学ガラスの熱膨張係数(α-30/70℃)は、『GB/T 7962.16-2010』に記載された方法にしたがって-30~70℃のデータを測定する。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの熱膨張係数(α-30/70℃)が85×10-7/K以下、好ましくは80×10-7/K以下、より好ましくは75×10-7/K以下である。
【0074】
<耐水安定性>
光学ガラスの耐水安定性(D)(粉末法)は『GB/T 17129』に規定された方法で試験されている。
【0075】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの耐水安定性(D)は2類以上、好ましくは1類である。
【0076】
<耐酸安定性>
光学ガラスの耐酸安定性(D)(粉末法)は『GB/T 17129』に規定された方法で試験されている。
【0077】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの耐酸安定性(D)は2類以上、好ましくは1類である。
【0078】
<耐候性>
光学ガラスの耐候性(CR)の試験方法は以下の通りである:試料を相対湿度90%の飽和水蒸気環境の試験箱内に置き、40~50℃で1hごとに交互に循環し、15サイクル循環する。試料放置前後の濁度変化量に基づいて耐候性カテゴリを区分し、耐候性カテゴリを表1に示す。
【表1】
【0079】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの耐候性(CR)は2類以上、好ましくは1類である。
【0080】
<ヌープ硬度>
光学ガラスのヌープ硬度(H)は『GB/T 7962.18-2010』に規定された試験方法にしたがって試験されている。
【0081】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのヌープ硬度(H)が670×10Pa以上、好ましくは680×10Pa以上、より好ましくは690×10Pa以上である。
【0082】
<ヤング率>
ヤング率(E)は超音波を用いて縦波速度と横波速度を測定し、以下の式にしたがって計算される。
G=V ρ
ここで:Eはヤング率、Pa;
Gはせん断係数、Pa;
は横波速度、m/s;
は縦波速度、m/s;
ρはガラス密度、g/cmである。
【0083】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのヤング率(E)の下限値が11500×10Pa、好ましくは下限値が12000×10Pa、より好ましくは下限値が12500×10Pa 、さらに好ましくは下限値が13000×10Paである。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのヤング率(E)の上限値が15500×10Pa、好ましくは上限値が15000×10Pa、より好ましくは上限値が14500×10Pa、さらに好ましくは上限値が14000×10Paである。
【0085】
<摩耗度>
光学ガラスの摩耗度(F)とは、全く同じ条件下で、試料の摩耗量と標準試料(H-K9ガラス)の摩耗量(体積)との比に100を乗じて得られた数値であり、その式は以下の通りであり:
=V/V×100=(W/ρ)/(W/ρ)×100
ここで、Vは測定する試料の体積摩耗量;
は標準試料の体積摩耗量;
Wは測定する試料の質量摩耗量;
は標準試料の品質摩耗量;
ρは測定する試料の密度;
ρは標準試料の密度。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの摩耗度(F)の下限値が80、好ましくは下限値が85、より好ましくは下限値が90である。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの摩耗度(F)上限値が125、好ましくは上限値が115、より好ましくは上限値が105である。
【0088】
<気泡度>
光学ガラスの気泡度は、『GB/T 7962.8-2010』に規定された方法にしたがって試験されている。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明の光学ガラスの気泡度がA級以上、好ましくはA級以上、より好ましくはA00級である。
【0090】
[光学ガラスの製造方法]
本発明の光学ガラスの製造方法は以下の通りである:酸化物、水酸化物、錯塩(炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩など)、ホウ酸などを含むがこれらに限定されない一般原料と従来の工程で製造され、常法により混合した後、調製した炉材を1200~1450℃の溶融炉(白金又は白金合金坩堝)に投入して溶融する。その後、清澄、均一化して、気泡及び未溶解物質のない均質な溶融ガラスを得るとともに、この溶融ガラスを金型に入れて鋳造し、焼きなましをする。当業者であれば、実際の必要に応じて、原料、製法およびプロセスパラメータを適宜選択することができる。
【0091】
[ガラスプリフォーム及び光学素子]
直接滴下成形や研磨加工、又は熱プレス成形などのプレス成形加工方法を用いて、作成された光学ガラスでガラスプリフォームを製造することができる。すなわち、直接精密滴下成形により溶融光学ガラスを精密なガラスプリフォームに製造するか、研削や研磨などの機械加工によりガラスプリフォームを製造するか、光学ガラスを使用してプレス成形用のプリフォームブランクを作製し、このプリフォームブランクを熱プレス加工して研磨し、ガラスプリフォームを作製することができる。なお、光学プリフォームの製造手段は上記手段に限定されないことを説明されたい。
【0092】
上記のように、本発明の光学ガラスは、各種光学素子及び光学設計に有用であり、特に本発明の光学ガラスからブランクを形成し、このブランクを用いて熱プレス成形、精密プレス成形等を行い、レンズ、プリズム等の光学素子を作製することが好ましい。
【0093】
本発明の光学プリフォーム及び光学素子は、いずれも上記本発明の光学ガラスから形成されている。本発明の光学プリフォームは、光学ガラスが備えている優れた特性を有し、本発明の光学素子は、光学ガラスが備えている優れた特性を有し、光学的価値の高いさまざまなレンズ、プリズム等の光学素子を提供することができる。
【0094】
レンズの例としては、レンズ表面が球面または非球面の凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどのさまざまなレンズが挙げられる。
【0095】
[光学機器]
本発明の光学ガラスにより形成される光学素子は、写真装置、撮像装置、投影装置、表示装置、車載装置及び監視装置などの光学機器を製造することができる。
【実施例0096】
<光学ガラス実施例>
本発明の技術的解決策をさらに明確に説明するために、以下の非限定的な実施例を提供する。
【0097】
本実施例は、上記光学ガラスの製造方法を用いて、表2~表4に示す成分を有する光学ガラスを得る。また、各ガラスの特性を本発明に記載の試験方法により測定し、その結果を表2~表4に表した。
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
<ガラスプリフォーム実施例>
光学ガラスの実施例1~24#で得られたガラスは、研磨加工手段、又は再熱プレス成形、精密プレス成形などのプレス成形手段を用いて、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどの様々なレンズ、プリズムなどのプリフォームを製造する。
【0101】
<光学素子実施例>
上記ガラスプリフォームの実施例で得られたこれらのプリフォームをアニールし、屈折率などの光学特性が所望の値に達するようにガラス内部の応力を低下させながら屈折率を微調整する。
【0102】
次に、各プリフォームを研削し、研磨し、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどのさまざまなレンズ、プリズムを作製する。得られた光学素子の表面には反射防止膜を塗布することもできる。
【0103】
<光学機器実施例>
上記光学素子の実施例で製造された光学素子は、光学設計により、1つまたは複数の光学素子を用いて光学部品または光学コンポーネントを形成することにより、撮像装置、センサ、顕微鏡、医薬技術、デジタル投影、通信、光学通信技術/情報伝送、自動車分野における光学/照明、フォトリソグラフィ技術、エキシマレーザ、ウエハ、コンピュータチップ及びこのような回路及びチップを含む集積回路及び電子デバイスに用いることができる。