(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031910
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】放射線療法用のビーム整形デバイスのオフライン品質制御
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A61N5/10 Z
A61N5/10 H
A61N5/10 P
A61N5/10 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023135199
(22)【出願日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】22191888.1
(32)【優先日】2022-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】318004198
【氏名又は名称】イオン ビーム アプリケーションズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Ion Beam Applications S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ホトイユ ルシアン
(72)【発明者】
【氏名】ラバーベ ルディ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダー スタッペン フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】パケラ ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】テオ ブーンケン ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ズー ウェイ
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AC05
4C082AG42
4C082AP20
4C082AR02
4C082AR05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放射線療法用のビーム整形デバイスのオフライン品質制御を提供する。
【解決手段】粒子加速器システムによって放出された加速粒子のビームを整形するために計画デバイス設計に従って製造されたビーム整形デバイスの品質を評価するための方法において、治療計画システムを用いて、ビーム整形デバイスの計画デバイス設計を確立するステップと、計画デバイス設計に従ってビーム整形デバイスを製造するステップと、実際のCT画像を生成するためにビーム整形デバイスのCTスキャンを確立するステップと、実際のCT画像から寸法及び局所材料密度を決定するステップと、デバイスの実際のCT画像によって定義される形状及び密度を有する仮想ビーム整形デバイスを通じてビームを治療体積に仮想的に照射することによって得られる治療体積の計算済みの線量分布を決定するステップと、計算済みの線量分布を参照線量分布と比較するステップとを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子加速器システムによって放出された加速粒子の1つ又は複数のビーム(100.i)を整形するために計画デバイス設計(11d)に従って製造されたビーム整形デバイス(11)の品質を評価するための方法において、
(a) 治療体積(V)内の特定の場所に特定の線量(Dij)を沈着させるため、延いては、医師によって設定される前記治療体積における前記線量沈着に対する目標を満たす計画線量分布(pDD)を定義するために、治療計画システム(TPS)を用いて、腫瘍細胞(3t)を含む組織の前記治療体積(V)の形状と一致するように、加速粒子の1つ又は複数のビーム(100.i)の整形に適した前記ビーム整形デバイス(11)の前記計画デバイス設計(11d)を確立するステップと、
(b) 前記計画デバイス設計(11d)に従って前記ビーム整形デバイス(11)を製造するステップと、
(c) 実際のCT画像(11a)を生成するために前記ビーム整形デバイス(11)のCTスキャンを確立するステップと、
(d) 前記実際のCT画像(11a)から寸法及び局所材料密度を決定するステップと
を含み、
(e) 前記治療体積(V)、並びに、好ましくは、前記ビーム整形デバイス(11)に含まれていないリッジフィルタ(11f)、飛程シフタ(11s)及び/又は飛程補償器(11c)の1つ又は複数を含むように前記実際のCT画像(11a)を拡張するステップと、
(f) 線量エンジンを用いて、好ましくは、ステップ(a)で使用される前記TPSのものと同じものを用いて、前記デバイスの実際のCT画像(11a)によって定義される形状及び密度を有する仮想ビーム整形デバイスを通じて前記1つ又は複数のビームを前記治療体積(V)に仮想的に照射することによって得られる前記治療体積(V)の計算済みの線量分布を決定するステップと、
(g) 前記計算済みの線量分布(cDD)を参照線量分布(rDD)と比較するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記参照線量分布(rDD)が、
・ 計算済みの計画線量分布(cpDD)であって、
○ 第1に、前記TPSを用いて、前記実際のCT画像の分解能と一致する高い分解能を有する前記計画デバイス設計(11d)に相当する、高分解能計画デバイス設計(11hrd)を作成し、
○ 第2に、前記線量エンジンを用いて、前記高分解能計画デバイス設計(11hrd)を通じて前記1つ又は複数のビームを前記治療体積(V)に仮想的に照射することによって、前記計算済みの計画線量分布(cpDD)を決定すること
によって得られる、計算済みの計画線量分布(cpDD)
又は、
・ 前記計画線量分布(pDD)若しくはその関数
であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照線量分布(rDD)が、
・ 請求項2で定義されるような前記計算済みの計画線量分布(cpDD)において、前記高分解能計画デバイス設計(11hrd)が、±20%、好ましくは、±10%の公差で、前記実際のCT画像を確立するために使用されるCTボクセルサイズと等しいボクセルサイズで作成される、前記計算済みの計画線量分布(cpDD)、又は、
・ 所定の空間分解能で演算され、好ましくは、前記計画線量分布(pDD)において線形若しくは最近傍補間を使用して、±20%、好ましくは、±10%の公差で、前記CTボクセルサイズと一致するように前記ボクセルサイズが変更される、前記計画線量分布(pDD)の変換の結果である前記計画線量分布(pDD)の前記関数
のどちらかであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ビーム整形デバイス(11)の前記CTスキャンが、0.5mm以下の、好ましくは、0.2mm以下の、CTボクセルサイズで実行されることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記計画デバイス設計(11d)が、前記CTボクセルサイズと同様の又はそれより小さなボクセルサイズで、TPS、好ましくは、請求項1に記載のステップ(f)と同じTPSを使用して、治療計画(TP)から作成されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記計算済みの線量分布(cDD)を前記参照線量分布(rDD)と比較するステップが、ガンマ評価を用いて実行され、前記参照線量分布(rDD)の前記ボクセルの事前に定義されたパーセンテージで参照ガンマ値(γr)以下のガンマ値(γ)が得られる事例では(すなわち、γ≦γr)、前記ビーム整形デバイス(11)が、前記計画デバイス設計(11d)に合致していると考えられ、γが、以下の関数
の最小値として定義され、式中、|d(cDD)-d(rDD)|が、分析されたポイント間の距離であり、|D(cDD)-D(rDD)|が、線量差であり、DTA及びΔDが、スケーリングファクタであることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記参照線量分布(rDD)の事前に定義された数のボクセルにおいて前記ガンマ値(γ)が前記参照ガンマ値(γr)より高い事例では(すなわち、γ>γr)、前記ビーム整形デバイス(11)が拒絶され、前記計画デバイス設計(11d)からの前記ビーム整形デバイス(11)の前記寸法及び局所材料密度の偏差を確認するために、前記実際のCT画像(11a)から決定される前記寸法及び局所材料密度が前記計画デバイス設計(11d)又は請求項2に記載の前記計算済みの高分解能計画デバイス設計(11hrd)と比較されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
・ 1つ又は複数の偏差が確認される事例では、前記1つ又は複数の偏差を生じさせると考えられる製造パラメータを調査し、前記製造パラメータを相応に修正するステップを含み、
・ 偏差が確認されない事例では、請求項1に記載のステップ(a)を繰り返し、前記ビーム整形デバイス(11)の代替の計画デバイス設計を確立するステップを含む
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ビーム整形デバイス(11)の前記CTスキャンによって得られる前記デバイスの前記実際のCT画像(11a)が、CTハンスフィールド単位(HU)によって特徴付けられるグレースケール画像の形態であり、前記局所材料密度が、前記HUを対応する密度に変換することによって決定されることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ビーム整形デバイス(11)が、ポリマー、金属又はそれらの任意の組合せの中から選択された材料で、3D印刷又は機械加工によって生成されることを特徴とする、請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ビーム整形デバイス(11)が、エネルギー減弱ユニット(11.i)のセットを含むリッジフィルタ(11f)であり、各エネルギー減弱ユニット(11.i)が、前記計画線量分布(pDD)に従って線量が前記治療体積(V)に沈着するように、荷電粒子の対応するビーム(100.i)の初期エネルギー(E0)を低減エネルギー(Ei)に低減するように構成されることを特徴とする、請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記エネルギー減弱ユニット(11.i)が、
・ ビーム軸(X)に沿って測定される厚さ(xfb)を有する支持基盤(11fb)に並んで配置されるオリフィスであって、各オリフィスが、前記支持基盤(11fb)の表面のアパーチャ開口部から延びており、前記ビーム軸(X)に沿って測定される所定の深さまで貫通する、オリフィス、又は、
・ 並んで配置され、前記支持基盤(11fb)上で支持されるピンであって、各ピンが、前記支持基盤から前記ビーム軸(X)に沿って延びている、ピン
のどちらかの形態であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記エネルギー減弱ユニット(11.i)が、1つ又は複数の減弱サブユニット(11.ij)によって形成されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍細胞を含む治療体積内に計画線量分布(pDD)を沈着させるために治療計画システム(TPS)によって決定された計画デバイス設計に従って、実際のビーム整形デバイスが満足のいくように製造されていることを保証するための品質評価(QA)方法に関する。本方法は、粒子加速システムへのアクセスを必要としない。また、本方法は、多くの事例において、計画線量分布(pDD)からの偏差に対する責任を有する実際のビーム整形デバイスの潜在的な幾何学的欠陥又は密度欠陥を確認することができるという点で、有利である。製造に起因するこれらの欠陥は、後続の製造プロセス改善において補正することができる。
【背景技術】
【0002】
粒子又は波(電子ビーム、陽子ビーム、重イオンビーム、x線、γ線及び同様のものなど)による放射線療法は、腫瘍がある患者の治療のための不可欠なツールとなった。
【0003】
一定の体積内に含まれる腫瘍細胞と正常細胞の両方に照射が行われるため、がん治療における第1の課題は、腫瘍細胞を効果的に破壊するか又は殺すために、定義された線量をそれらの腫瘍細胞に沈着させる一方で、可能な限り正常細胞に危害を加えないように、それらの正常細胞への線量沈着を制限することを保証する治療計画を定義することである。第2の課題は、計画通りに、定義された線量を腫瘍細胞に実際に沈着させる一方で、限定された線量を正常細胞に実際に沈着させることである。
【0004】
放射線モダリティが異なれば、それらのエネルギー付与のパターンも異なる。例えば、X線は、それらのエネルギーの大部分を皮膚付近に付与し、付与エネルギーは、組織への貫通深度が増すにつれて減少する。従って、腫瘍細胞の治療体積の上流に位置する正常組織は、治療体積内に位置する細胞より高い線量を受ける。対照的に、荷電粒子ビーム(陽子及び炭素イオンなど)は、それらのエネルギーの大部分をそれらのビーム経路の終端近くに付与し、いわゆるブラッグピークが形成される。
【0005】
粒子加速器のノズルから出た荷電粒子は、狭ペンシルビームを形成する。実用的なサイズの治療体積をカバーするため、ペンシルビームは、ホイルによって散乱させるか又はスキャンの何れかを行わなければならない。ペンシルビームスキャン(PBS)及び二重散乱体(DS)陽子線療法は、医師が正常組織への放射線被ばくを最小限に抑えながら腫瘍をカバーする正確且つ強力な放射線線量を伝えられるようにするための技法の2つである。これは、ビーム整形デバイスによって、治療予定の体積に向けて伝達されるビームを整形することによって達成することができる。ビーム整形デバイスは、加速粒子の供給源と治療体積との間の粒子加速器のノズルに位置決めされるか又はノズルに固定され、エネルギープロファイル及び/又はビームの形状を変更するデバイスである。
【0006】
ペンシルビームスキャン(PBS)は、対応するビーム軸(Xi)に沿って、腫瘍細胞を含む治療体積を定義するスポットのマトリクスの個々のスポットに向けて、荷電粒子のPBSビーム(又はビームレット)をステアリングすることから成るアクティブスキャン技法である。従って、個々のスポットによってカバーされる細胞に事前に定義されたターゲット線量が沈着する。PBSビームは、対応するビーム軸(Xi)に沿ってステアリングされ、線量沈着は、ビーム軸(Xi)に沿って所定のスポットによってカバーされる各細胞に沈着させる線量(Dij)及びスポット照射のスキャン順序を定義する治療計画に従って進められる。PBSは、腫瘍形状を反映させるために、治療しているエリアを整形することによって、周囲の非がん細胞への不必要な放射線被ばくを低減する。ターゲットの形状以外に、PBSは、ターゲット内の所望の線量分布を達成するために、各PBSビームの強度の局所的な調整を可能にする。
【0007】
PBSは、腫瘍を取り囲む治療体積(V)の形状と一致するように線量沈着の幾何分布を最適化するため、非常に有利である。しかし、PBSビームは、各スポット(Sij)にわたって及び各エネルギー層(Tj)にわたってスキャンしなければならないため、PBS治療時間が長くなり得る。あるビーム軸(Xi)から異なるビーム軸(X(i+1))へのPBSビームの移動は、数ミリ秒の時間を要する。異なる層(Tj)の細胞(Cij)に所望の線量(Dij)を沈着させるために所定のビーム軸(Xi)に平行に所定のPBSビームのエネルギーを変更するには、さらなる時間を要し、それは500ミリ秒程度である。従って、層(Tj)の数は、治療の持続時間に強い影響を及ぼす。
【0008】
治療時間の節約により、各患者による粒子加速器の動作時間が低減する。また、患者にとっても、より快適である。また、少なくとも1Gy/sの、さらには、少なくとも40Gy/sまでもの高い線量率(HDR)で線量が細胞に沈着するFLASH照射が治療計画に含まれる場合は、有利でもある。HDRで沈着させる所定の線量は、より低い従来の線量率(CDR)で同じ線量を沈着させた場合と比べて、正常細胞に危害を加えないことを示した。FLASH照射の特に興味深い点は、HDRで沈着させるか又はCDRで沈着させるかにかかわらず、腫瘍細胞への所定の線量の沈着が同じ殺細胞効果を有することである。
【0009】
PBSによる治療体積への事前に定義された線量(Dij)の沈着は、リッジフィルタ及び単一のエネルギー層のPBSビームを使用することによって達成することができる。リッジフィルタは、対応するビーム軸(Xi)に沿って各層のスポットを位置合わせする必要がある。当技術分野では、スムーズピン、ステップピラミッド又はクレストの形態のエネルギー減弱ユニットを含むリッジフィルタが説明されている。例えば、(特許文献1)は、スポットのアレイに従って支持基盤に並んで配置されるオリフィス又はピンの形態の多数のエネルギー減弱ユニットを含むリッジフィルタについて説明している。各エネルギー減弱ユニットは、一般化された円筒形の形状の断面積(Ai)を有する及び支持ブロックから対応するビーム軸(Xi)に沿って延びているオリフィス又はピンの形態の1つ又は複数の減弱サブユニットによって形成される。同じエネルギー減弱ユニットの減弱サブユニットは、例えば、対応する照射軸(Xi)に沿って、互いに積み重ねることができる。各エネルギー減弱ユニットを形成する減弱サブユニットの重畳により、整形や、対応するビーム軸(Xi)に沿った拡大ブラッグピーク(SOBP)の幅の増大が可能になる。
【0010】
リッジフィルタの原理は、対応するビーム軸(Xi)に沿って方向付けられる所定のエネルギーのビーム(100.i)の一部が、フィルタの異なる材料厚を通過し、それにより、異なる飛程を有するブラッグピークが生じるというものであり、その重畳により、対応するビーム軸(Xi)に沿って体積の上流境界から体積の下流境界まで広がる、Xiに沿って治療体積(V)の深さ全体にわたる、均一なSOBPが生じる。リッジフィルタは、飛程シフタ及び飛程補償器を含む他のビーム整形デバイスと統合するか又は組み合わせることができる。
【0011】
二重散乱体陽子線療法は、パッシブ散乱技法であり、広ビームが、均一である第1の散乱体を通過し、ある程度は不均一でなければならない第2の散乱体においてガウスビームプロファイルを生み出し、それにより、ガウス分布及びビームエネルギーが修正されるというものである。二重散乱体技法で使用されるビーム整形デバイスは、飛程補償器(エネルギープロファイルを制御するための)及びアパーチャ(照射断面の形状を制御するための)を含む。なお、「ビーム」という用語は、別段の具体的な定義がない限り、PBS適用のためのPBSビーム(又はビームレット)と二重散乱体適用のための広ビームの両方を指すために使用される。
【0012】
患者のCTスキャン画像が生成され、その値が陽子阻止能に変換される。1つ又は複数のビーム整形デバイスの計画デバイス設計は、治療体積(V)内の特定の場所に特定の線量(Dij)を沈着させるために、腫瘍細胞(3t)を含む治療体積(V)の形状と一致するようにビームを整形する治療計画システム(TPS)によって生成される。従って、医師によって設定される治療体積及び周囲の正常組織における線量沈着に対する目標を満たす計画線量分布(pDD)を生成することができる。
【0013】
1つ又は複数のビーム整形デバイスは、対応する計画デバイス設計に従って製造される。機械加工を含めて、異なる技法を使用できるが、今日では、その技法に適した広範囲の材料で、コスト効果、迅速性、及び、微細且つ複雑な形状を生み出すその能力の観点から、3D印刷が有利である。
【0014】
しかし、機械加工も3D印刷も、まさに計画デバイス設計通りのビーム整形デバイスを生成する保証はない。いくつかの製造誤差が発生し得、それらの誤差には、ビーム整形デバイスのタワー又は空洞の幅及び高さに関する誤差、或いは、リッジフィルタのエネルギー減弱ユニットの軸が対応するビーム軸から外れることが含まれ得る。材料の密度は、デバイスのボリューム全体を通じて均一ではない可能性があり、デバイスの大部分には、気泡が存在し得、平坦な基盤として設計されたビーム整形デバイス設計の表面は、撓んだ状態又は湾曲した状態で3Dプリンタから出力される可能性がある。
【0015】
それらの大きさに応じて、これらの印刷誤差は、TPSが達成を試みる計画線量分布とは異なる線量分布をもたらし得る。例えば、モンテカルロシミュレーションは、線量分布の大幅な偏差を避けるために、タワーの公称幅又は高さと印刷された幅又は高さとの間の偏差が1mm未満であるべきであることを示している。従って、製造プロセスにおける欠陥の確認及び定量化を行うために、並びに、これらの欠陥から生じ得る治療体積における線量分布の変形を定量化するために、ビーム整形デバイスが製造された後の品質制御手順が必要とされる。
【0016】
1つの明白なQAプロセスは、ビーム整形デバイスをノズルに設置し、治療機械を用いて治療計画を届け、水ファントムにおける3D線量分布を測定することである。測定した3D線量分布は、ビーム整形デバイスの品質を評価するために、TPSの計画3D線量分布(pDD)と比較することができる。しかし、線量測定装置の設置とデータの取得は両方とも多大な時間を要し、面倒であるため、この方法は最適ではない。忙しい陽子線療法(PT)センターでQA測定を行うために利用可能な時間は限られており、陽子ビームを操作するコストはかなりのものであり得る。従って、時間、利用可能性及びコストの観点から、陽子ビームへのアクセス時間を必要としないQA方法が有利であろう。その上、この方法では、計画線量分布との不一致の原因を評価することはできない。
【0017】
(非特許文献1)及び(非特許文献2)は、ビーム整形デバイスの表面の幾何学的な比較に基づく代替の手法を開示している。参照表面は、TPSによって最適化される理想の形状であり、ビーム整形デバイスのCTスキャンから推定される表面と比較される。これらの手法は、治療室でビーム時間を使用しないという利点を有するが、参照からの幾何偏差のみを考慮し、ビーム整形デバイスの内部の材料密度の不均一性が有し得る治療体積内の線量分布に対する影響を無視するという制限も有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】欧州特許第21208699号明細書
【特許文献2】欧州特許第2021/0208699号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Heng Li et Al.(A CT-based software tool for evaluating range compensator quality in passively scattered proton therapy.Phys.Med.Biol.55,6759-6771 (2010))
【非特許文献2】Yoon M.et al.[11](Computerized tomography-based quality assurance tool for proton range compensators.Med.Phys.35,(2008))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明が解決を提案する課題は、ビームの使用を必要とせず、ビーム阻止能、ビーム整形デバイスの下流の体積内の線量分布を含むビーム整形デバイスの機能の定量分析、及び、線量分布の定量分析が十分ではない場合のビーム整形デバイスにおける欠陥の確認を可能にする、ビーム整形デバイスの高速品質保証方法を提供することである。続けて、本発明のこれらの及び他の利点を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、添付の独立請求項において定義される。好ましい実施形態は、従属請求項において定義される。具体的には、本発明は、粒子加速器システムによって放出された加速粒子の1つ又は複数のビームを整形するために計画デバイス設計に従って製造されたビーム整形デバイスの品質を評価するための方法に関する。方法は、
(a) 治療体積(V)内の特定の場所に特定の線量(Dij)を沈着させるため、延いては、医師によって設定される治療体積における線量沈着に対する目標を満たす計画線量分布(pDD)を定義するために、治療計画システム(TPS)を用いて、腫瘍細胞を含む組織の治療体積(V)の形状と一致するように、加速粒子の1つ又は複数のビームの整形に適したビーム整形デバイスの計画デバイス設計を確立するステップと、
(b) 計画デバイス設計に従ってビーム整形デバイスを製造するステップと、
(c) 実際のCT画像を生成するためにビーム整形デバイスのCTスキャンを確立するステップと、
(d) 実際のCT画像から寸法及び局所材料密度を決定するステップと、
(e) 治療体積(V)、並びに、好ましくは、ビーム整形デバイスに含まれていないリッジフィルタ、飛程シフタ及び/又は飛程補償器の1つ又は複数を含むように実際のCT画像を拡張するステップと、
(f) 線量エンジンを用いて、好ましくは、ステップ(a)で使用されるTPSのものと同じものを用いて、デバイスの実際のCT画像によって定義される形状及び密度を有する仮想ビーム整形デバイスを通じて1つ又は複数のビームを治療体積(V)に仮想的に照射することによって得られる治療体積(V)の計算済みの線量分布を決定するステップと、
(g) 計算済みの線量分布(cDD)を参照線量分布(rDD)と比較するステップと
を含む。
【0022】
参照線量分布(rDD)は、
・ 計算済みの計画線量分布(cpDD)であって、
○ 第1に、TPSを用いて、実際のCT画像の分解能と一致する高い分解能を有する計画デバイス設計に相当する、高分解能計画デバイス設計(11hrd)を作成し、
○ 第2に、線量エンジンを用いて、高分解能計画デバイス設計を通じて1つ又は複数のビームを治療体積(V)に仮想的に照射することによって、計算済みの計画線量分布(cpDD)を決定すること
によって得られる計算済みの計画線量分布(cpDD)、
又は、
・ 計画線量分布(pDD)若しくはその関数
であり得る。
【0023】
具体的には、参照線量分布(rDD)は、
・ 上記で定義されるような計算済みの計画線量分布(cpDD)において、高分解能計画デバイス設計が、±20%、好ましくは、±10%の公差で、実際のCT画像を確立するために使用されるCTボクセルサイズと等しいボクセルサイズで作成される、計算済みの計画線量分布(cpDD)、又は、
・ 所定の空間分解能で演算され、好ましくは、計画線量分布(pDD)において線形若しくは最近傍補間を使用して、±20%、好ましくは、±10%の公差で、CTボクセルサイズと一致するようにボクセルサイズが変更される、計画線量分布(pDD)の変換の結果である計画線量分布(pDD)の関数
のどちらかであり得る。
【0024】
好ましい実施形態では、ビーム整形デバイスのCTスキャンは、0.5mm以下の、好ましくは、0.2mm以下の、CTボクセルサイズで実行される。計画デバイス設計は、CTボクセルサイズと同様の又はそれより小さなボクセルサイズで、TPS、好ましくは、上記で定義されるステップ(f)と同じTPSを使用して、治療計画(TP)から作成することができる。
【0025】
上記のステップ(g)で定義されるように、計算済みの線量分布(cDD)を参照線量分布(rDD)と比較するステップは、ガンマ評価を用いて実行することができる。参照線量分布(rDD)のボクセルの事前に定義されたパーセンテージで参照ガンマ値(γr)以下のガンマ値(γ)が得られる事例では(すなわち、γ≦γr)、ビーム整形デバイスは、計画デバイス設計に合致していると考えることができる。ガンマ値(γ)は、以下の関数
の最小値として定義され、式中、|d(cDD)-d(rDD)|は、分析されたポイント間の距離であり、|D(cDD)-D(rDD)|は、線量差であり、DTA及びΔDは、スケーリングファクタである。
【0026】
参照線量分布(rDD)の事前に定義された数のボクセルにおいてガンマ値(γ)が参照ガンマ値(γr)より高い事例では(すなわち、γ>γr)、ビーム整形デバイスは拒絶され、計画デバイス設計からのビーム整形デバイスの寸法及び局所材料密度の偏差を確認するために、実際のCT画像から決定される寸法及び局所材料密度を計画デバイス設計又は上記で定義されるような計算済みの高分解能計画デバイス設計と比較することができる。
・ 1つ又は複数の偏差が確認される事例では、方法は、1つ又は複数の偏差を生じさせると考えられる製造パラメータを調査し、製造パラメータを相応に修正するステップを含み得る。
・ 偏差が確認されない事例では、方法は、上記で定義されるようなステップ(a)を繰り返し、ビーム整形デバイスの代替の計画デバイス設計を確立するステップを含み得る。
【0027】
ビーム整形デバイスのCTスキャンによって得られるデバイスの実際のCT画像は、好ましくは、CTハンスフィールド単位(HU)によって特徴付けられるグレースケール画像の形態である。従って、局所材料密度は、HUを対応する密度に変換することによって決定することができる。
【0028】
ビーム整形デバイスは、ポリマー、金属又はそれらの任意の組合せの中から選択された材料で、3D印刷又は機械加工によって生成することができる。
【0029】
ビーム整形デバイスは、エネルギー減弱ユニットのセットを含むリッジフィルタであり得、各エネルギー減弱ユニットは、計画線量分布(pDD)に従って線量が治療体積(V)に沈着するように、荷電粒子の対応するビームの初期エネルギー(E0)を低減エネルギー(Ei)に低減するように構成される。例えば、エネルギー減弱ユニットは、
・ ビーム軸(X)に沿って測定される厚さを有する支持基盤に並んで配置されるオリフィスであって、各オリフィスが、支持基盤の表面のアパーチャ開口部から延びており、ビーム軸(X)に沿って測定される所定の深さまで貫通する、オリフィス、又は、
・ 並んで配置され、支持基盤上で支持されるピンであって、各ピンが、支持基盤からビーム軸(X)に沿って延びている、ピン
のどちらかの形態であり得る。
【0030】
好ましい実施形態では、エネルギー減弱ユニットは、1つ又は複数の減弱サブユニットによって形成される。
【0031】
本発明の性質をより完全に理解するため、添付の図面と併せて取り入れられる以下の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1a】
図1(a)は、所定のエネルギーのビームの典型的なブラッグピークの深度線量プロファイルを示す。横軸は、水中の深さを表す。水中の最大ビーム飛程(W0)は、最大ブラッグピークを超えた深さとして定義され、最大ブラッグピークの80%に等しいエネルギーに相当し、W0は、少なくともdijに等しいか又はそれ以上でなければならない(dij≦W0)。
【
図1b】
図1(b)は、エネルギー減弱ユニットがビームの経路中に配置される、
図1(a)のビームのブラッグピークの深度線量プロファイルを示す。
【
図2a】
図2(a)は、飛程シフタ、リッジフィルタ及び飛程補償器を含むビーム整形デバイスを通過する、互いに平行であり、照射軸(X)に平行である、それぞれのビーム軸(Xi、X(i+1)…)に沿って延びているビーム(100.i、100.(i+1)…)を示す。
【
図2b】
図2(b)は、飛程シフタ、リッジフィルタ及び飛程補償器を通過する、照射軸(X)の周りを扇形に広がっている、それぞれのビーム軸(Xi、X(i+1)…)に沿って延びているビーム(100.i、100.(i+1)…)を示す。
【
図2c】
図2(c)は、2つのエネルギー減弱ユニットを示し、ビーム(100.i、100.(i+1))は、それぞれのビーム軸(Xi、X(i+1))に沿って延びているが、互いに平行ではない((Xi、X(i+1))角度が強調されている)。
【
図3a】
図3(a)は、リッジフィルタの実施形態を示す。
【
図3b】
図3(b)は、リッジフィルタの実施形態を示す。
【
図3c】
図3(c)は、リッジフィルタの実施形態を示す。
【
図3d】
図3(d)は、飛程シフタの実施形態を示す。
【
図3e】
図3(e)は、飛程補償器の実施形態を示す。
【
図4】
図4は、本発明の方法のステップを示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、計画デバイス設計(11d)に従って製造されたビーム整形デバイス(11)の品質を評価するための方法に関する。ビーム整形デバイスは、粒子加速器システムによって放出される加速粒子の1つ又は複数のビーム(100.i)を整形するために使用される。ビーム整形デバイス(11)は、加速粒子の供給源と治療体積との間の粒子加速器のノズルに位置決めされるデバイスであり、ビームの形状のみならず、エネルギー及びフルエンスプロファイルも変更する。ビーム整形デバイス(11)は、例えば、リッジフィルタ(11f)、飛程補償器(11c)、飛程シフタ(11s)又は前述の2つ以上の組合せであり得る。ビーム整形デバイスが前述の2つ以上のデバイスの組合せを含む場合は、それらは、照射軸(Xi)に沿って直列に配置された別々のモジュールの形態であり得るか、又は、単一のデバイスに統合することができる。例えば、リッジフィルタの基盤は、飛程シフタを形成し得る。以下では、本発明は、明確にするため、及び、リッジフィルタが飛程シフタより複雑な形状を有することを理由に、リッジフィルタ(11f)に関してのみ説明する。方法は、以下のステップを含む。
【0034】
最初に、治療計画システム(TPS)を用いて、ビーム整形デバイス(11)の計画デバイス設計(11d)が確立される。計画デバイス設計(11d)は、治療体積(V)内の特定の場所に特定の線量(Dij)を沈着させるため、延いては、医師によって設定される治療体積及び周囲の正常組織における線量沈着に対する目標を満たす計画線量分布(pDD)を定義するために、腫瘍細胞(3t)を含む組織の治療体積(V)の形状と一致するように、加速粒子の1つ又は複数のビーム(100.i)の整形に適したものでなければならない。患者のCT画像(CT-V)が取得され、計画線量分布を演算するためにTPSによって使用される。CT画像(CT-V)のボクセルサイズは、典型的には、1~3mmである。
【0035】
ビーム整形デバイス(11)は、計画デバイス設計(11d)に従って製造される。例えば、ビーム整形デバイス(11)は、3D印刷によって、任意の適切な材料、好ましくは、ポリマー又はポリマーの組合せで生成することができる。ビーム整形デバイス(11)のCTスキャンは、ビーム整形デバイス(11)の実際のCT画像(11a)を生成するように確立される。CT画像(11a)のボクセルの分解能は、ビーム整形デバイス(11)の最も小さな幾何学的な特徴を正しく解像するように選択される。寸法及び局所材料密度は、実際のCT画像(11a)から決定される。
【0036】
本発明の主旨は、実際のCT画像(11a)に従ってビーム整形デバイス(11)を使用して治療体積(V)に仮想的に照射することによって得られる治療体積(V)の計算済みの線量分布の計算に基礎を置く。この目的のため、方法は、以下のステップを含む。
【0037】
実際のCT画像(11a)は、治療体積(V)を含むように拡張される。CT-Vが補間され、拡張したCT画像(11a)に挿入される。補間は、CT-VのボクセルサイズがCT画像(11a)のものとは異なる事例において必要とされる。粒子加速器システムが、計画デバイス設計(11d)に従って、ビーム整形デバイス(11)に含まれていないリッジフィルタ(11f)、飛程シフタ(11s)及び/又は飛程補償器(11c)の中から選択される1つ又は複数の追加のビーム整形デバイスを含む事例では、実際のCT画像(11a)は、対応する追加のビーム整形デバイスを含むように拡張される。
【0038】
線量エンジン、好ましくは、本方法のステップ(a)で使用されるTPSのものと同じものは、デバイスの実際のCT画像(11a)によって定義される形状及び密度を有する仮想ビーム整形デバイス(粒子加速器システムに存在する任意の追加のビーム整形デバイスを含む)を通じて1つ又は複数のビームを治療体積(V)に仮想的に照射することによって得られる治療体積(V)の計算済みの線量分布を決定するために使用される。
【0039】
「線量エンジン」は、形状及びビームプロパティの記述から線量分布を演算するアルゴリズムである。異なるタイプの線量エンジンが存在する。当技術分野では、モンテカルロ線量エンジンが使用される場合が多い。
【0040】
この段階では、製造されたビーム整形デバイス(11)の品質を評価するために、計算済みの線量分布(cDD)を参照線量分布(rDD)と比較することができる。計画デバイス設計(11d)と実際のCT画像(11a)との間の相違が必ずしも治療計画からの容認できない偏差をもたらすとは限らないため、計算済みの線量分布(cDD)と参照線量分布(rDD)との比較は、単に計画デバイス設計(11d)を実際のCT画像(11a)と比較するよりはるかに有益である。そのような比較により、製造されたビーム整形デバイス(11)が治療計画に従って治療を行うのに適しているかどうかに関する特定の情報が得られる。比較により、適していないことが判明すれば、計画デバイス設計(11d)を実際のCT画像(11a)と比較することで、その理由を理解することが可能であり得る。
【0041】
参照線量分布(rDD)
一実施形態では、参照線量分布(rDD)は、
・ 第1に、TPSを用いて、実際のCT画像の分解能と一致する高い分解能を有する計画デバイス設計(11d)に相当する、高分解能計画デバイス設計(11hrd)を作成し、
・ 第2に、線量エンジンを用いて、高分解能計画デバイス設計(11hrd)を通じて、1つ若しくは複数の計画ペンシルビーム(PBSで)又は1つの大きなビーム(二重散乱体で)を治療体積(V)に仮想的に照射することによって、計算済みの計画線量分布(cpDD)を決定すること
によって得られる、計算済みの計画線量分布(cpDD)である。
【0042】
例えば、高分解能計画デバイス設計(11hrd)は、±20%、好ましくは、±10%の公差で、実際のCT画像で使用されるCTボクセルサイズに等しいボクセルサイズで作成することができる。この方法では、高分解能計画デバイス設計(11hrd)の分解能と実際のCT画像(11a)の分解能は、同等の分解能を有し、同等の線量分布の計算を生み出す。
【0043】
代替の実施形態では、参照線量分布(rDD)は、計画線量分布(pDD)又はその関数である。計画線量分布(pDD)の関数は、所定の空間分解能で演算され、好ましくは、計画線量分布(pDD)において線形若しくは最近傍補間を使用して、±20%、好ましくは、±10%の公差で、CTボクセルサイズと一致するようにボクセルサイズが変更される、計画線量分布(pDD)の変換の結果であり得る。この方法では、こうして得られた線量分布pDD及びcDDは、同様の分解能で比較することができる。
【0044】
典型的には、ビーム整形デバイス(11)のCTスキャンは、0.5mm以下、好ましくは、0.2mm以下のCTボクセルサイズで実行することができる。比較により、通常、計画デバイス設計(11d)は、CT-Vボクセルサイズと同様の又はそれより小さなボクセルサイズで、TPSを使用して治療計画(TP)から作成される。計画デバイス設計(11d)を確立するためのボクセルサイズは、1.0mm以下程度であり得る。
【0045】
従って、実際のCT画像(11a)と計画デバイス設計(11d)との間には、1~5の分解能比率が存在し得る。その大きさの分解能比率では、計算済みの線量分布(cDD)とより直接的に比較することができる参照線量分布(rDD)を生み出すために、前述の実施形態の何れか1つによって分解能比率を低減することが好ましい。
【0046】
製造されたビーム整形デバイス(11)のCTスキャンによって得られるデバイスの実際のCT画像(11a)は、好ましくは、CTハンスフィールド単位(HU)によって特徴付けられるグレースケール画像の形態である。局所材料密度は、HUを対応する密度に変換することによって決定することができる。
【0047】
モンテカルロ線量エンジンでは、拡張したCT画像(11a)とは異なるサイズのボクセルグリッド上での陽子のシミュレーションによって沈着する線量を計算することが可能である。従って、ビーム整形デバイス(11)を通じる陽子軌道が高分解能の拡張したCT画像(11a)において正しく説明される一方で、メモリ使用の低減及びモンテカルロシミュレーションの信号対雑音統計の改善のため、線量分布は、より低い分解能マップ上で計算される。従って、計算済みの線量分布(cDD)及び参照線量分布(rDD)は、拡張したCT画像(11a)より大きなボクセルを有し得る。
【0048】
ビーム整形デバイス(11)の品質評価
本発明の方法は、計算済みの線量分布(cDD)を参照線量分布(rDD)と比較するステップを含み、参照線量分布(rDD)は、上記で説明されるように定義される。好ましい実施形態では、計算済みの線量分布(cDD)を参照線量分布(rDD)と比較するステップは、ガンマ評価を用いて実行される。参照線量分布(rDD)のボクセルの事前に定義されたパーセンテージで参照ガンマ値(γr)以下のガンマ値(γ)が得られる事例では(すなわち、γ≦γr)、ビーム整形デバイス(11)は、計画デバイス設計(11d)に合致していると考えられる。ガンマ値(γ)は、以下の関数
の最小値として定義され、式中、|d(cDD)-d(rDD)|は、分析されたポイントと参照画像における同じ線量の最も近いポイントと間の距離であり、|D(cDD)-D(rDD)|は、2つの画像における同じポイントの線量差であり、DTA及びΔDは、スケーリングファクタである。例えば、γr=1の場合、この基準γ≦γrを満たすボクセルの事前に定義されたパーセンテージは、90%、好ましくは、95%であり得る。スケーリングファクタは、例えば、DTA=3mm及びΔD=3%であり得る。
【0049】
ボクセルの事前に定義されたパーセンテージでガンマ値(γ)が参照ガンマ値(γr)より高い事例では(すなわち、γ>γr)、ビーム整形デバイス(11)は拒絶される。ビーム整形デバイスの寸法及び局所材料密度は、実際のCT画像(11a)から決定し、計画デバイス設計(11d)又は上記で定義されるような計算済みの高分解能計画デバイス設計(11hrd)と比較することができる。従って、計画デバイス設計(11d)からのビーム整形デバイス(11)の寸法及び局所材料密度の偏差を確認することができる。経験では、場合により、人工知能では、異なるタイプの偏差は、計算済みの線量分布(cDD)に対する特定の影響に起因し得る。
【0050】
従って、計画デバイス設計(11d)からのビーム整形デバイス(11)の寸法及び/又は局所材料密度の1つ又は複数の偏差が確認される事例では、方法は、偏差を生じさせると考えられる製造パラメータを調査し、製造パラメータを相応に修正するステップを含み得る。偏差が確認されない事例では、方法は、治療計画システム(TPS)を用いて、ビーム整形デバイス(11)の代替の計画デバイス設計(11d)を確立するステップを繰り返すことを含み得る。
【0051】
ビーム整形デバイス(11)
図3(a)~3(e)に示されるように、ビーム整形デバイス(11)は、例えば、リッジフィルタ(11f)、飛程補償器(11c)、飛程シフタ(11s)又は前述の2つ以上の組合せであり得る。
【0052】
図1(a)は、所定のエネルギー(E0)のビーム(100.i)によるビーム軸(Xi)に沿った水等価厚さ(WET)の関数として沈着させる線量(Dij)をプロットしている。水中のビーム飛程(WET)の最大値は、W0として定義され、最大ブラッグピークを超えた深さに相当し、最大ブラッグピークの80%に等しいエネルギーに相当する。これは、所定のエネルギーのビーム(100.i)が対応する水等価厚さW0を超えて組織中をさらに深く貫通することはできないことを意味する(すなわち、ターゲット深度dij≦W0)。治療体積(V)がブラッグピークより深いターゲット深度(dij)まで広がっている場合は(すなわち、dij>W0)、より高いエネルギーのビームを使用しなければならない。
図1(b)は、所定のエネルギー(E0)の同じビーム(100.i)の経路中にビーム整形デバイス(11)又はその要素を挿入した際のブラッグピークの変位を示す。ここでは、ブラッグピークのWETが、患者の皮膚(3s)からW0より小さなターゲット深度(dij)に位置すること(すなわち、dij<W0)が分かる。この理由は、ビーム(100.i)のエネルギーの一部分(E0-Eij)が、ビームが通過しなければならないビーム整形デバイス(11)又はその要素によって吸収されるためである。
図1(b)は、整形デバイス(11)又はその要素を介在させることによって、あるブラッグピークをWET=W0からターゲットWET=dijにどのように変位させるかを示す。SOBPは、単一のエネルギー(又はペイント)層を有するPBSによって又は二重散乱体によって治療体積(V)のサブボリューム全体に必要な線量(Dij)を沈着させるために、照射軸(X)に沿って深度範囲にわたっていくつかのブラッグピークを重畳することによって形成できるため、
図3(b)及び3(c)に示されるように、いくつかの減弱サブユニット(11.ij)を重畳して、エネルギー減弱ユニット(11i)を形成することができ、ビーム(100.i)によって照射されるサブボリュームの各細胞(Cij)に必要な線量(Dij)が沈着することを保証するために、各減弱サブユニット(11.ij)は、WET=W0からターゲット深度(dij)にブラッグピークをシフトするように寸法指定される。TPに従って所望のSOBPを生み出すために必要なブラッグピークの数及びそれらの対応するターゲット深度(dij)を決定しなければならず、それにより、構成されるエネルギー減弱ユニット(11.i)及び減弱サブユニット(11.ij)の数が定義される。計画デバイス設計(11d)を確立するために、リッジフィルタ(11f)に対して使用される形状、材料及び材料密度も同様に決定する必要がある。
【0053】
飛程シフタ(11s)
図3(d)に示される飛程シフタ(11s)は、一般に、単純な平行六面体の形状を有し、ビーム(100.i)の制御されたエネルギーの一部を吸収する役割を果たし、従って、腫瘍細胞を含む治療体積(V)の深さと一致するように患者の体内の貫通深度を低減する。その単純な形状により、飛程シフタ(11)は、その製造に使用されるプロセスに応じた材料の密度の考えられる局所的な不均一性は別として、一般に、品質の観点から、問題を引き起こすことはほとんどない。
【0054】
飛程補償器(11c)
図3(e)に示される飛程補償器(11c)は、治療体積(V)の遠位境界を反映する空洞を含むブロックによって形成される。飛程補償器は、線量沈着パターンを治療体積(V)の遠位端と適合させる。飛程補償器(11c)の形状は、上記で論じられる飛程シフタ(11s)のものより複雑である。従って、計画治療の成功を保証するために、飛程補償器(11c)の形状と密度分布の両方の品質評価が重要である。
【0055】
リッジフィルタ(11f)
図3(a)~3(c)は、リッジフィルタ(11f)の3つの異なる実施形態を示す。それらの実施形態は、それらがすべてエネルギー減弱ユニット(11.i)のセットを含むという共通点があり、各エネルギー減弱ユニット(11.i)は、荷電粒子の対応するビーム(100.i)の初期エネルギー(E0)を低減エネルギー(Ei)及び対応する粒子数に低減するように構成され、その結果、計画線量分布(pDD)に従って、医師によって処方される線量が治療体積(V)に沈着する。
【0056】
図3(c)に示されるように、エネルギー減弱ユニット(11.i)は、ビーム軸(X)に沿って測定される厚さ(xfb)を有する支持基盤(11fb)に並んで配置されるオリフィスの形態であり得る。各オリフィスは、支持基盤(11fb)の表面のアパーチャ開口部から延びており、ビーム軸(X)に沿って測定される所定の深さまで貫通する。或いは、
図3(a)及び3(b)に示されるように、エネルギー減弱ユニット(11.i)は、並んで配置され、支持基盤(11fb)上で支持される、ピンの形態であり得る。各ピンは、支持基盤からビーム軸(X)に沿って延びている。すべてのピンは、
図3(a)に示されるように、単一の照射軸(X)に平行であり得る。或いは、ピンは、
図2(b)及び2(c)に示されるように、ペンシルビームスキャン(PBS)におけるビームのスキャンに起因する個々のビーム間の角度を考慮して、異なる照射軸(Xi)に平行であり得る。
【0057】
図2(c)、3(b)及び3(c)に示されるように、エネルギー減弱ユニット(11.i)は、1つ又は複数の減弱サブユニット(11.ij)によって形成することができる。治療計画に従って減弱サブユニット(11.ij)を備えるリッジフィルタを設計するための方法は、例えば、(特許文献2)において説明されている。
【0058】
また、ビーム整形デバイス(11)は、リッジフィルタ(11f)、飛程補償器(11c)、飛程シフタ(11s)の2つ以上の組合せでもあり得る。2つ以上のデバイスは、
図2(a)及び2(b)に示されるように、互いに分離することができる。或いは、それらは、単一のデバイスにおいて統合することができる。例えば、飛程シフタ(11s)は、リッジフィルタ(11f)の支持基盤(11fb)を形成することも、飛程補償器(11c)の厚さに加えることもできる。
【0059】
図4のフローチャート
図4は、本発明の方法を示すフローチャートを示す。医者によって治療計画(TP)が確立される(
図4(A)を参照)。TPは、医師によって処方される治療の終了時に満たすべき線量目標を含む。これらは、以下の1つ又は複数を含み得る。
・ 腫瘍細胞を含む、事前に定義された割合の治療体積又はサブボリュームに沈着すべき最小線量
・ 正常細胞を含むサブボリュームにおいて超えてはならない最大線量
・ 腫瘍細胞と正常細胞の両方を含むサブボリュームへの最小線量沈着率で沈着すべき線量
・ 及び同様のもの。
【0060】
(B)では、治療計画システム(TPS)を用いて、計画デバイス設計(11d)が生成される。ビーム整形デバイス(11)の形状及び密度を設計するために、ボクセルのサイズによって定義された第1の分解能が適用される。演算資源及び時間を節約するため、第1の分解能は、1ボクセルあたり1mm程度の適度のものであり得る。
【0061】
ボックス(C)では、計画線量分布(pDD)が演算され、計画線量分布(pDD)は、計画デバイス設計(11d)を用いて、1つ又は複数の照射ビーム(100.i)中にビーム整形ユニット(11)を位置決めすることから得られる。pDDの必要不可欠な条件は、TPで定義された要件を満たすことである。
【0062】
ビーム整形デバイス(11)は、ボックス(D)に示されるように、計画デバイス設計(11d)に従って製造することができる。ビーム整形デバイスは、3D印刷又は機械加工によって製造することができる。ボックス(E)では、こうして製造されたビーム整形デバイス(11)の実際のCT画像(11a)が生成される。実際のCT画像(11a)は、一般に、ビーム整形デバイス(11)の材料の局所密度を表す、CTハンスフィールド単位(HU)によって特徴付けられるグレースケール画像の形態である。
【0063】
ボックス(F)では、ビーム整形デバイスの実際のCT画像(11a)から、計算済みの線量分布(cDD)が計算される。この計算済みの線量分布(cDD)は、ボックス(M)において、ボックス(L)で定義された参照線量分布(rDD)と比較される。rDDの決定のための例として、2つの代替のルート(すなわち、ボックス(G)から(I)及び(L)において定義されたオプション1(=OPT.1)及びボックス(J)から(L)において定義されたオプション2(=OPT.2))が提案される。
【0064】
オプション1では、ボックス(H)において、TPSを用いて、高分解能計画デバイス設計(11hrd)が作成され、高分解能計画デバイス設計(11hrd)は、より高い分解能を有する計画デバイス設計(11d)に相当する。実際のCT画像の分解能は、補間を介して、計画デバイス設計のより高いCT分解能まで増加される。次いで、ボックス(I)において、線量エンジンを用いて、高分解能計画デバイス設計(11hrd)を通じて1つ又は複数のビームを治療体積(V)に仮想的に照射することによって、計算済みの計画線量分布(cpDD)が決定される。ボックス(L)では、参照線量分布(rDD)が計算済みの計画線量分布(cpDD)として定義される(すなわち、rDD=cpDD)。
【0065】
オプション2では、計画デバイス設計(11d)の分解能が実際のCT画像の分解能と適合する場合は、ボックス(L)において、参照線量分布(rDD)を計画線量分布(pDD)として定義することができる。計画デバイス設計(11d)の分解能が実際のCT画像の分解能より低く、適合しない場合は、ボックス(L)において、参照線量分布(rDD)を、計画線量分布(pDD)の変換の結果である計画線量分布の関数(f(pDD))として定義することができる。
【0066】
ボックス(F)で決定された計算済みの線量分布(cDD)は、ボックス(L)で定義された参照線量分布(rDD)と比較することができる。計算済みの線量分布(cDD)を参照線量分布(rDD)と比較することは、好ましくは、ガンマ評価を用いて実行され、その結果、参照線量分布(rDD)のボクセルの事前に定義されたパーセンテージで参照ガンマ値(γr)以下のガンマ値(γ)が得られる事例では(すなわち、γ≦γr)、ビーム整形デバイス(11)は、計画デバイス設計(11d)に合致していると考えることができ、従って、品質評価動作をうまく終えることができる(ボックス(M)からボックス「終了」につながる矢印「Y」を参照)。参照線量分布(rDD)のボクセルの事前に定義されたパーセンテージでガンマ値(γ)が参照ガンマ値(γr)以下ではない事例では(すなわち、γ>γr)、ボックス(N)において、形状及び局所密度の観点から、デバイスの実際のCT画像(11a)が計画デバイス設計(11d)と比較される。
【0067】
ビーム整形デバイス(11)の製造に起因し得る、実際のCT画像(11a)と計画デバイス設計(11d)との間の形状及び/又は密度の不一致が確認された場合は、異なるプロセスパラメータを用いて、新しいビーム整形デバイス(11)を製造して、こうして確認された不一致を減少する、好ましくは、排除することができる(ボックス(O)からボックス(D)に達する矢印「Y」を参照)。それに対して、不一致が確認されなかった場合又は製造プロセスにおいて補正することができない不一致が確認された場合は、新しい計画デバイス設計(11d)を確立することができる。例えば、
図3(a)及び3(b)に示されるようなピンを用いて本来設計されたリッジフィルタ(11f)は、必要な精度(例えば、長い及び/又は細いピン)での生成が困難になる可能性がある。対応するリッジフィルタ(11f)は、ピンの代わりに、
図3(c)に示されるようなオリフィスで設計することができ、それは、恐らくは欠陥なしで製造することができる。
【0068】
本方法は、以下の理由で非常に有利である。
・ スケジュールが一般に非常に過密であり、エネルギーの観点からその使用が高価である、粒子加速器システムを使用する必要が全くない。
・ いかなるタイプのビーム整形デバイス(11)にも使用することができる。
・ 計算済みの線量分布(cDD)を参照線量分布(rDD)と比較し、その比較は、治療計画を届けるためのビーム整形デバイス(11)の適合性に関する直接的な情報である。
・ 実際のCT画像(11a)と計画デバイス設計(11d)との間の形状及び/又は密度の不一致は、計算済みの線量分布(cDD)が参照線量分布(rDD)と事前に定義されたレベルを超えて異なる場合にのみ分析される(例えば、ガンマ評価)。
・ 多くの事例では、実際のCT画像(11a)と計画デバイス設計(11d)との間の形状及び/又は密度の所定の不一致を計算済みの線量分布(cDD)と参照線量分布(rDD)との間の対応する不一致に割り当てることが可能になり、次いで、それを新しい処理条件で実施して、計算済みの線量分布(cDD)と参照線量分布(rDD)との間の対応する不一致を排除することができる。
・ いくつかの事例では、計画デバイス設計(11d)を容易に製造することはできず、代替の計画デバイス設計が有利であることを教示することができる。
【符号の説明】
【0069】
3S 患者の皮膚
11 ビーム整形デバイス
11.i エネルギー減弱ユニット
11.ij 減弱サブユニット
11a 実際のCT画像
11c 飛程補償器
11d 計画デバイス設計
11f リッジフィルタ
11fb 支持基盤
11hrd 高分解能計画デバイス設計
11s 飛程シフタ
100 ビーム
100.i ビーム
cDD 計算済みの線量分布
cpDD 計算済みの計画線量分布
dij ターゲット深度
E0 ビームの初期エネルギー
Eij ビーム整形デバイス又はその要素を通過した後のビームエネルギー
pDD 計画線量分布
rDD 参照線量分布
TP 治療計画
TPS 治療計画システム
W0 最大ビーム飛程
X,Y,Z 空間座標
x,y,z 軸X、Y、Zに沿ったビーム整形デバイスの寸法
xc 軸Xに沿ったピンの高さ
xfb 軸Xに沿ったリッジフィルタの支持基盤の厚さ
xi,yi,zi 軸X、Y、Zに沿ったリッジフィルタのエネルギー減弱ユニットの寸法
【外国語明細書】