(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031919
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】非晶質相改質装置及び単結晶材料の加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/53 20140101AFI20240229BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20240229BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B23K26/53
B23K26/082
H01L21/78 B
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023135333
(22)【出願日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】63/400,052
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515087558
【氏名又は名称】環球晶圓股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Global Wafers Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.8 Industrial East Road 2,Science Park,Hsinchu City, Taiwan
(71)【出願人】
【識別番号】523320814
【氏名又は名称】米雷迪恩飛秒光源股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】mRadian Femto Sources Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】李 建中
(72)【発明者】
【氏名】王 柏凱
(72)【発明者】
【氏名】王 上棋
(72)【発明者】
【氏名】蔡 佳▲チー▼
(72)【発明者】
【氏名】李 依晴
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CB01
4E168CB04
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA37
4E168DA47
4E168EA15
4E168JA13
4E168KA06
5F063AA21
5F063CB07
5F063DD27
5F063DD31
5F063DD32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改質層の厚さを数十ミクロン以下に減少させる効果的なレーザー光適用方法、及び改質層を効果的に生成する単結晶材料加工方法を欠いている。
【解決手段】単結晶材料の加工方法は下記ステップを含む。単結晶材料を改質すべき物体として提供する。改質すべき物体の内部を加工するためにフェムト秒レーザビームを放射するため、非晶質相改質装置を用いる。加工は、改質すべき物体の内部に複数の加工線を形成するためフェムト秒レーザビームを用いることを含み、各加工線はジグザグパターン加工を含み、複数の加工線の間の加工線間隔は200μm~600μmの範囲であり、改質すべき物体が加工された後、改質すべき物体中に改質層が形成される。改質すべき物体の改質層を含む部分をスライス又は分離する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質相改質層を形成するために用いられる非晶質相改質装置であって、
レーザービームを放射するために用いられるフェムト秒レーザー源と、
前記フェムト秒レーザー源により放射される前記レーザービームのスペックルサイズを調整するために用いられるスペックル調整器と、
前記スペックル調整器から受け取る前記レーザービームの角度を調整するために用いられ、100Hz~10,000Hzの運動周波数で小角走査を実行するビーム角スキャナと、
前記ビーム角スキャナを通過した前記レーザービームを受け取り、前記レーザービームを集束するために用いられる集束対物レンズと、
改質すべき物体を搭載するために用いられ、前記改質すべき物体が前記集束対物レンズを通過した前記レーザービームを受け取ることを可能にするモーションモジュールと
を含む、
非晶質相改質装置。
【請求項2】
前記フェムト秒レーザ源により放射される前記レーザービームの波長は800nm~1600nmである、
請求項1に記載の非晶質相改質装置。
【請求項3】
前記フェムト秒レーザ源により放射される前記レーザービームの波長は1020nm~1080nmである、
請求項2に記載の非晶質相改質装置。
【請求項4】
前記ビーム角スキャナは単一回転軸を有する、
請求項1に記載の非晶質相改質装置。
【請求項5】
前記小角は0.01ラジアン~0.05ラジアンである、
請求項1に記載の非晶質相改質装置。
【請求項6】
前記ビーム角スキャナは、レゾナントスキャナ、圧電材料駆動レンズ、又は音響光学変調器である、
請求項1に記載の非晶質相改質装置。
【請求項7】
前記フェムト秒レーザ源により放射される前記レーザービームのパルス繰り返し率は100kHz~10MHzの範囲であり、パルス幅は300フェムト秒~2000フェムト秒の範囲であり、パルスエネルギーは1マイクロジュール~30マイクロジュールの範囲である、
請求項1に記載の非晶質相改質装置。
【請求項8】
前記フェムト秒レーザ源により放射される前記レーザービームのパルス繰り返し率は500kHz~1000kHzの範囲であり、パルス幅は1000フェムト秒~2000フェムト秒の範囲である、
請求項7に記載の非晶質相改質装置。
【請求項9】
前記スペックル調整器を通過した後の前記レーザービームのスペックル品質(M2)は1.0~1.4の範囲である、
請求項1に記載の非晶質相改質装置。
【請求項10】
前記ビーム角スキャナは100Hz~800Hzの運動周波数で前記小角走査を実行する、
請求項1に記載の非晶質相改質装置。
【請求項11】
単結晶材料を改質すべき物体として提供することと、
前記改質すべき物体の内部の加工のため非晶質相改質装置により放射されるフェムト秒レーザビームを用いることと
を含み、
前記加工は、
前記改質すべき物体の内部に複数の加工線を形成するためフェムト秒レーザビームを用いることであって、各前記複数の加工線はジグザグパターン加工を含み、前記複数の加工線の間の加工線間隔は200μm~600μmの範囲であり、前記改質すべき物体が加工された後、前記改質すべき物体の前記内部に改質層が形成されることと、
前記改質すべき物体の前記改質層を含む部分をスライス又は分離することと
を含む、
単結晶材料の加工方法。
【請求項12】
前記加工は、前記改質すべき物体の縁部に沿って加工するために前記フェムト秒レーザービームを用いることを更に含む、
請求項11に記載の単結晶材料の加工方法。
【請求項13】
前記改質すべき物体の前記内部を加工するために前記フェムト秒レーザービームを用いることは、前記単結晶材料の結晶軸方向に対して垂直フラットカットモードで加工することにより実行される、
請求項11に記載の単結晶材料の加工方法。
【請求項14】
各前記複数の加工線の加工回数は2回~10回の範囲である、
請求項11に記載の単結晶材料の加工方法。
【請求項15】
各前記複数の加工線の加工回数は2回~6回の範囲である、
請求項14に記載の単結晶材料の加工方法。
【請求項16】
前記改質すべき物体の前記内部の前記加工は0.02ミクロン~0.08ミクロンの検流計振幅で実行される、
請求項11に記載の単結晶材料の加工方法。
【請求項17】
前記改質すべき物体の前記内部を加工するため、各前記複数の加工線は毎秒5mm~毎秒20mmの加工速度で前記フェムト秒レーザービームを用いて加工される、
請求項11に記載の単結晶材料の加工方法。
【請求項18】
前記改質すべき物体の前記内部を加工するため、各前記複数の加工線は3W~8.5Wの加工電力で前記フェムト秒レーザービームを用いて加工される、
請求項11に記載の単結晶材料の加工方法。
【請求項19】
前記改質すべき物体の前記内部に前記複数の加工線を形成するため前記フェムト秒レーザービームを用いることは、非繋ぎ合せ方式により前記改質すべき物体の前記内部全体を加工することにより実行される、
請求項11に記載の単結晶材料の加工方法。
【請求項20】
前記改質すべき物体の前記内部に前記複数の加工線を形成するため前記フェムト秒レーザービームを用いることは繋ぎ合せ方式により実行され、前記改質すべき物体の前記内部の第1部分を加工した後に前記改質すべき物体の前記内部の第2部分を加工することにより実行される、
請求項11に記載の単結晶材料の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非晶質相改質装置に関するものであり、特に、非晶質相改質装置及びそれを用いた単結晶材料の加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単結晶材料において、炭化ケイ素は、産業上の応用価値が高く、機械的に切断するのが比較的難しい注目すべき例である。炭化ケイ素単結晶ウェハはトランジスタを製造するために使用することができ、高温及び高電圧下で適切に使用可能であるため、電気自動車や電力変換といった分野において使用することができる。先行技術に関する限り、ウェハを取得するために炭化ケイ素インゴットを切断するには、ダイヤモンドワイヤが一般的に用いられる。しかし、この方法による切断線のカーフ損失は比較的大きく、150ミクロンから300ミクロンの切断線のカーフ損失が一般的に見られる。
【0003】
加えて、従来の方法は、単結晶シリコン又はサファイアの内部を改質するためにパルスレーザーを使用することを試みており、レーザー光の波長は部分的に材料を貫通することができる。レーザー光による改質の後、改質された層は既に元の単結晶構造ではないことから、その結合強度は単結晶材料に比べて大きく低下する。このため、外力を加えた後に単結晶材料の一部をスライス又は分離することができる。しかし、従来のレーザー光は改質層に過度な厚さを持たせやすく、よって改質のためにレーザー光を用いる場合の切断線のカーフ損失を減少させる利点が失われる。
【0004】
現在、改質層の厚さを数十ミクロン以下に減少させる効果的なレーザー光適用方法、及び改質層を効果的に生成する単結晶材料加工方法を欠いている。このため、上記課題を解決する単結晶材料の加工方法を緊急に必要としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切断線のカーフ損失を低減させるために改質層の厚さを数十ミクロン以下に減少させる効果的なレーザー光適用方法、及び改質層を効果的に生成する単結晶材料加工方法を欠いている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、改質層を効果的に生成することができ、改質層の厚さを減少させる、非晶質相改質装置及び単結晶材料の加工方法を提供する。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態において、非晶質相改質装置は非晶質相改質層を形成するために用いることができる。非晶質相改質装置は、フェムト秒レーザ源と、スペックル調整器と、ビーム角スキャナと、集束対物レンズと、モーションモジュールとを含む。フェムト秒レーザ源は、レーザービームを放射するために用いられる。スペックル調整器は、フェムト秒レーザ源により放射されるレーザービームのスペックルサイズを調整するために用いられる。ビーム角スキャナは、スペックル調整器から受け取るレーザービームの角度を調整するために用いられ、ビーム角スキャナは10Hz~10,000Hzの運動周波数で小角走査を実行する。集束対物レンズは、ビーム角スキャナを通過したレーザービームを受け取り、レーザービームを集束するために用いられる。モーションモジュールは、改質すべき物体を搭載するために用いられ、改質すべき物体が集束対物レンズを通過したレーザービームを受け取ることを可能とする。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、フェムト秒レーザ源により放射されるレーザービームの波長は800nm~1600nmである。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、フェムト秒レーザ源により放射されるレーザービームの波長は1020nm~1080nmである。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、ビーム角スキャナは単一回転軸を有する。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、小角は0.01ラジアン~0.05ラジアンである。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、ビーム角スキャナは、レゾナントスキャナ、圧電材料駆動レンズ、又は音響光学変調器である。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、フェムト秒レーザ源により放射されるレーザービームのパルス繰り返し率は100kHz~10MHzの範囲であり、パルス幅は300フェムト秒~2000フェムト秒の範囲であり、パルスエネルギーは1マイクロジュール~30マイクロジュールの範囲である。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、フェムト秒レーザ源により放射されるレーザービームのパルス繰り返し率は500kHz~1000kHzの範囲であり、パルス幅は1000フェムト秒~2000フェムト秒の範囲である。
【0015】
本発明の1つの実施形態において、スペックル調整器を通過した後のレーザービームのスペックル品質(M2)は1.0~1.4の範囲である。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、ビーム角スキャナは100Hz~800Hzの運動周波数で小角走査を実行する。
【0017】
本発明の実施形態による単結晶材料の加工方法は下記ステップを含む。単結晶材料を改質すべき物体として提供する。改質すべき物体の内部を加工するためにフェムト秒レーザビームを放射するため、非晶質相改質装置を用いる。加工は、改質すべき物体の内部に複数の加工線を形成するためフェムト秒レーザビームを用いることを含み、各加工線はジグザグパターン加工を含み、複数の加工線の間の加工線間隔は200μm~600μmの範囲であり、改質すべき物体が加工された後、改質すべき物体中に改質層が形成される。改質すべき物体の改質層を含む部分をスライス又は分離する。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、加工は、改質すべき物体の縁部に沿って加工するためにフェムト秒レーザービームを用いることを含む。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、改質すべき物体の内部を加工するためにフェムト秒レーザービームを用いることは、単結晶材料の結晶軸方向に対して垂直フラットカットモードで加工することにより実行される。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、各複数の加工線の加工回数は2回~10回の範囲である。
【0021】
本発明の1つの実施形態において、各複数の加工線の加工回数は2回~6回の範囲である。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、改質すべき物体の内部の加工は、0.02ミクロン~0.08ミクロンの検流計振幅で実行される。
【0023】
本発明の1つの実施形態において、改質すべき物体の内部を加工するため、各複数の加工線は毎秒5mm~毎秒20mmの加工速度でフェムト秒レーザービームを用いて加工される。
【0024】
本発明の1つの実施形態において、改質すべき物体の内部を加工するため、各複数の加工線は3W~8.5Wの加工電力でフェムト秒レーザービームを用いて加工される。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、改質すべき物体の内部に複数の加工線を形成するためフェムト秒レーザービームを用いることは、非繋ぎ合せ方式により改質すべき物体の内部全体を加工することにより実行される。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、改質すべき物体の内部に複数の加工線を形成するためフェムト秒レーザービームを用いることは、繋ぎ合せ方式により実行され、改質すべき物体の内部の第1部分を加工した後に改質すべき物体の内部の第2部分を加工することにより実行される。
【発明の効果】
【0027】
上記に基づき、本発明の実施形態の非晶質相改質装置及び単結晶材料の加工方法は、改質層の厚さを減少させつつ改質層を効果的に生成することができる。従って、改質層の厚さを機械切断による切断線のカーフ損失よりも小さくすることができ、改質層は外力を加えた後に容易に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の1つの実施形態による非晶質相改質装置の概略図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態による動作の間の非晶質相改質装置の概略図である。
【
図3】本発明の1つの実施形態による単結晶材料の加工方法の概略図である。
【
図4A】本発明の1つの実施形態による単結晶材料の加工方法の概略図である。
【
図4B】本発明の1つの実施形態による単結晶材料の加工方法の概略図である。
【
図5】本発明の1つの実施形態による単結晶材料の加工方法の概略図である。
【
図6】本発明の1つの実施形態による単結晶材料の加工方法の概略図である。
【
図7A】本発明の1つの実施形態による改質層を形成した後の光学顕微鏡画像である。
【
図7B】本発明の比較例における加工方法による改質層を形成していない光学顕微鏡画像である。
【
図8A】本発明のもう1つの実施形態による単結晶材料の加工方法の概略図である。
【
図8B】本発明のもう1つの実施形態による単結晶材料の加工方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の1つの実施形態による非晶質相改質装置の概略図である。本発明の実施形態の非晶質相改質装置は、単結晶材料に非晶質相改質層を形成するために用いることができる。
図1を参照し、非晶質相改質装置は、フェムト秒レーザー源10と、スペックル調整器20と、ビーム角スキャナ30と、集束対物レンズ40と、モーションモジュール50とを含む。
図1に示すように、フェムト秒レーザー源10はレーザービームL1を放射するために用いることができる。本発明の実施形態において、フェムト秒レーザー源10により放射されるレーザービームL1の波長は、改質すべき物体S1(改質すべき単結晶材料)を貫通可能な波長である。例えば、改質すべき物体S1が炭化ケイ素である場合、レーザービームL1の波長は800nm~1600nmの範囲である。いくつかの実施形態において、レーザービームL1の波長は1020nm~1080nmの範囲である。加えて、本発明のいくつかの実施形態において、フェムト秒レーザー源10は、ドープされたイッテルビウムといった適切なレーザー利得材料を有する透明ガラス又はクリスタルを用いて構成される。
【0030】
1つの例示的な実施形態において、フェムト秒レーザ源10により放射されるレーザービームL1のパルス繰り返し率は100kHz~10MHzの範囲であり、パルス幅は300フェムト秒~2000フェムト秒であり、パルスエネルギーは1マイクロジュール~30マイクロジュールである。特定の実施形態において、フェムト秒レーザ源10により放射されるレーザービームL1のパルス繰り返し率は500kHz~1000kHzの範囲であり、パルス幅は1000フェムト秒~2000フェムト秒である。加えて、本発明の実施形態のフェムト秒レーザー源10は、外部電圧信号又は命令を受け取ることによりその出力電力を調整するための手段を含むべきである。。
【0031】
図1に示すように、スペックル調整器20はフェムト秒レーザー源10により放射されるレーザービームL1のスペックルサイズを調整するために用いられる。いくつかの実施形態において、スペックル調整器20は、合焦後の極小焦点の機能を達成するためフェムト秒レーザー源10のスペックルサイズを拡大するために用いられる。焦点での高エネルギー密度のため、焦点から短距離を移動した場合にエネルギー密度は急激に落ちる。このため、上記条件で改質が実行された場合、垂直方向における改質領域の分布が小さいという効果がある。本発明のいくつかの実施形態において、スペックル調整器20を通過した後のレーザービームL1のスペックル品質(M
2)は1.0~1.4の範囲である。
【0032】
図1を参照し、ビーム角スキャナ30は、スペックル調整器20から受け取ったレーザービームL2の角度を調整するために用いられる。いくつかの実施形態において、ビーム角スキャナ30は10Hz~10,000Hzの運動周波数で小角走査を実行する。即ち、小角は1秒に100~1000回、往復して走査されることができる。いくつかの実施形態において、ビーム角スキャナ30は100Hz~800Hzの運動周波数で小角走査を実行する。即ち、小角は1秒に100~800回、往復して走査されることができる。加えて、小角は0.01ラジアン~0.05ラジアンであり、+/-0.005ラジアン~+/-0.025ラジアンで走査することに等しい。。
【0033】
本発明の実施形態において、ビーム角スキャナ30は異なる方式で実装可能である。例えば、レゾナントスキャナ、圧電材料駆動レンズ、又は音響光学変調器をビーム角スキャナ30はとして使用可能である。加えて、本発明の実施形態において、ビーム角スキャナ30と従来のガルバノスキャナとの間の差異は、ビーム角スキャナ30は単一軸回転のみを含む点にある。ただし、本発明はこれに限定されない。いくつかの他の実施形態において、ビーム角スキャナ30は2つ以上の回転軸を有してよい。
【0034】
図1を更に参照し、集束対物レンズ40は、ビーム角スキャナ30を通過したレーザービームL3を受け取るために用いられ、レーザービームL3を集束するために用いられる。加えて、モーションモジュール50は改質すべき物体S1を搭載するために用いられ、改質すべき物体S1が集束対物レンズ40を通過したレーザービームL4を受け取ることを可能とする。
図2に示すように、本発明の1つの実施形態において、非晶質相改質装置が動作中のとき、ビーム角スキャナ30の回転軸は+Y方向にあり、これは入射紙方向である。従って、ビーム角スキャナ30が回転するとき、レーザービームL3はX軸方向において偏移する。レーザービームL3’のX方向の偏移は直接、合焦されたレーザービームL4’の偏移方向もX軸方向とする。このため、モーションモジュール50の移動方向はビーム偏移方法X軸に垂直でなければならず、これはY軸方向に移動することを意味する。換言すれば、本発明の実施形態において、走査方向がモーションモジュール50の移動方向に垂直であることは好ましい設定である。このような条件において、走査領域は固定された走査角で最大となり、レーザーの非晶質改質効果が最も効果的となることが可能である。
【0035】
図3~
図6は、本発明の1つの実施形態による単結晶材料の加工方法の概略図である。
図3を参照し、本発明のいくつかの実施形態による単結晶材料の加工方法において、単結晶材料を改質すべき物体S1として提供する。単結晶材料は、例えば炭化ケイ素製の単結晶材料である。いくつかの実施形態において、改質すべき物体S1は第1面102Aと、第1面102Aとは逆の第2面102Bとを有する。
図3に示すように、改質すべき物体S1の内部は、
図1に示した非晶質相改質装置から放射されるフェムト秒レーザービームL4を用いることにより第1面102Aから加工される。
【0036】
図4Aと
図4Bに示すように、フェムト秒レーザービームL4は、改質すべき物体S1の内部に複数の加工線104Aを形成するために用いられる。本発明の1つの実施形態において、加工線104A間の加工線間隔は200μm~600μmの範囲である。いくつかの実施形態において、加工は、改質すべき物体S1の縁部に加工線104Bを形成するため、縁部に沿って加工するためにフェムト秒レーザービームL4を用いることを更に含む。改質すべき物体S1を加工するための改質装置の使用の間に、改質すべき物体S1の面102Aと102Bは改質されないことは留意するに値する。代わりに、改質されるのは改質すべき物体S1の内部である。例えば、
図6に示すように、改質すべき物体S1の内部に位置する層106のみが改質され、面102Aと102Bは改質されずに維持される。
【0037】
図4Aに示すように、いくつかの実施形態において、複数の加工線104Aを形成するために改質すべき物体S1の内部を加工するためフェムト秒レーザービームL4を使用することは、単結晶材料の結晶軸方向に対して垂直フラットカットモードで加工することにより実行される。例えば、本実施形態において、複数の加工線104AはX軸方向に沿って延伸し、Y軸方向に平行に配置される。
図4Bに示すように、いくつかの実施形態において、複数の加工線104Aを形成するために改質すべき物体S1の内部を加工するためフェムト秒レーザービームL4を使用することは、単結晶材料の結晶軸方向に対して平行フラットカットモードで加工することにより実行される。例えば、本実施形態において、複数の加工線104AはY軸方向に沿って延伸し、X軸方向に平行に配置される。他の実施形態において、加工方法は、フラットカット、ノッチといった任意の他のマークに対応する方向、又は結晶軸方向に対応する他のマークの方向に加工することができ、本発明はこれに限定されない。
【0038】
1つの例示的な実施形態において、各複数の加工線104A/104Bの加工回数は2回~10回の範囲である。いくつかの実施形態において、各複数の加工線104A/104Bの加工回数は2回~6回の範囲である。複数の加工線104A/104Bの加工回数が上述した範囲よりも少ない場合、加工回数が少なすぎて、改質すべき物体S1中に改質層を効果的に形成することができない。複数の加工線104A/104Bの加工回数が上述した範囲よりも多い場合、加工時間が長すぎて経済的でなく、形成される改質層の厚さが過度に厚くなる可能性がある。
【0039】
図5に示すように、いくつかの実施形態において、各加工線104A/104Bの加工は、ジグザグパターン加工を含む。例えば、
図5を参照し、P1は加工経路の開始点であり、P2は第1経路の折り返し点であり、P3は第2経路の折り返し点であり、上記ジグザグパターン加工は経路終点P4に達するまで繰り返される。上述した実施形態において、X軸方向における開始点P1と折り返し点P2との間の距離はΔXであり、これはビーム角スキャナ30の走査角により決定される。換言すれば、距離ΔXはf*Δθに等しく、fは集束対物レンズ40の焦点距離であり、Δθはビーム角スキャナ30の走査角である。加えて、距離ΔYはモーションモジュール50の移動速度及びビーム角スキャナ30の揺動周波数により決定される。換言すれば、距離ΔYは下記式に等しい。
【数1】
vはモーションモジュール50の直線移動速度であり、fscanはビーム角スキャナ30の揺動周波数である。いくつかの特定の実施形態において、距離ΔXは50ミクロン~100ミクロンであり、理想的な改質層を得る効果を達成するには、距離ΔXの距離ΔYに対する比率(ΔX:ΔY)は1:0.5~1:1である。
【0040】
加えて、本発明の実施形態において、各加工線104A/104Bの加工は、0.02ミクロン~0.08ミクロンの検流計振幅で改質すべき物体S1の内部を加工することにより実行される。改質すべき物体S1の内部を加工するため、各加工線104A/104Bは毎秒5mm~毎秒20mmの加工速度でフェムト秒レーザービームを用いて加工される。加えて、改質すべき物体S1の内部を加工するため、各加工線104A/104Bは3W~8.5Wの加工電力でフェムト秒レーザービームを用いて加工される。更に、改質すべき物体S1の内部を加工するため、各加工線104A/104Bの加工の初回は3W~6Wの比較的低い加工電力でフェムト秒レーザービームを用いて実行される。本発明の実施形態における単結晶材料の加工方法が上記条件を満たすと、理想的な改質層を効果的に形成することができる。
【0041】
図6に示すように、本発明の実施形態において、レーザービームL4を用いることによる改質すべき物体S1の加工の後、改質層106が改質すべき物体S1の内側(例えば内部)に形成される。例えば、加工線104A間に連続した亀裂CX1が存在するか否かを判断するため、改質層106が適切に形成されたか否かを判断するため、光学顕微鏡を用いる。いくつかの実施形態において、形成された改質層106の厚さは40ミクロン~80ミクロンの範囲内に制御される。
図7Aは、本発明の1つの実施形態による改質層を形成した後の光学顕微鏡画像である。
図7Bは、本発明の比較例における加工方法による改質層を形成していない光学顕微鏡画像である。
図7Aに示すように、加工線104A間の連続した亀裂CX1が光学顕微鏡で明確に見られる場合、改質層106が正常に形成されたと判断することができる。逆に、
図7Bに示すように、明らかな連続した亀裂CX1が光学顕微鏡で見られない場合、改質すべき物体S1は正常に改質されていないことを意味する。本発明の実施形態の加工方法を用いて改質層106が正常に形成された後、改質すべき物体S1中の改質層106を有する部分をスライス又は分離することができる。例えば、改質すべき物体S1が炭化ケイ素インゴットである場合、炭化ケイ素ウェハを分離して取得するため、改質層106に沿って外力を容易に加えることができる。
【0042】
図8Aと
図8Bは、本発明のもう1つの実施形態による単結晶材料の加工方法の概略図である。前述した実施形態において、改質すべき物体S1の加工は第1面102Aから内部全体を加工することにより実行される。換言すれば、非繋ぎ合せ方式により改質すべき物体S1の内部に複数の加工線104A/104Bを形成するため、フェムト秒レーザービームが用いられる。ただし、本発明はこれに限定されない。
図8Aと
図8Bを参照し、本発明の実施形態において、繋ぎ合せ方式により改質すべき物体S1の内部に複数の加工線104A/104Bを形成するため、フェムト秒レーザービームが用いられ、改質すべき物体S1の内部の第1部分を加工した後に、改質すべき物体S1の内部の第2部分(又は他の部分)を加工する。
【0043】
例えば、本発明の実施形態における改質すべき物体S1は、そこに含まれる複数の部分X1を有してよく、加工は改質すべき物体S1の部分X1のうちの1つにおける複数の加工線104Aの形成を完了し、次いで改質すべき物体S1のもう1つの部分X1における複数の加工線104Aを形成するため加工を継続することにより実行される。従って、改質すべき物体S1の複数の部分X1の加工が完了した後に、改質すべき物体S1の内部の加工は繋ぎ合わせにより達成可能であり、改質層106が形成される。加えて、
図8Aと
図8Bに示すように、複数の加工線104Aを形成するための加工方法は、単結晶材料の結晶軸方向に対して垂直フラットカットモードで加工する(
図8A)又は単結晶材料の結晶軸方向に対して平行フラットカットモードで加工する(
図8B)ことにより実行される。他の実施形態において、加工方法は、フラットカット、ノッチといった任意の他のマークに対応する方向、又は結晶軸方向に対応する他のマークの方向に加工することができ、本発明はこれに限定されない。
実施例
【0044】
本発明の単結晶材料の加工方法が改質層を効果的に形成可能であり、同時に改質層の厚さを減少させ、改質層の厚さが機械切断によるカーフ損失よりも小さくすることができることを証明するため、更なる説明のために下記実施例を提供する。
第1実施例:
【0045】
第1実施例において、加工のために
図3~
図6に示した非繋ぎ合わせ方式及び垂直フラットカットモードを実行し、実施例1~実施例7(EX1~EX7)及び比較例1~比較例7(CX1~CX7)の検流計振幅、加工線間隔、線加工速度、加工回数、加工電力。及び総加工時間の加工条件は表1に記したとおりである。加えて、改質層が正常に形成されたか否かの評価を光学顕微鏡で亀裂が見られたか否かにより判定し、評価結果を表1に列記した。
【0046】
【0047】
表1の実施例1(EX1)~実施例7(EX7)に示すように、検流計振幅、加工線間隔、線加工速度、加工回数、及び加工電力が加工の間に本発明の範囲内にある場合、複数の加工線間に亀裂が正常に形成され、よって改質層が正常に形成されている(評価OK)。これに比べ、比較例1(CX1)~比較例3(CX3)を参照し、加工速度が速すぎ(毎秒7mmを超える)、高電力が用いられた(3.9Wを超える)場合、複数の加工線間に連続した亀裂が形成されず、よって改質層を正常に形成できていない(評価NG)。比較例2(CX2)を参照し、加工電力が高すぎ(4.1W)、加工速度が比較的遅い(毎秒5mm)場合、複数の加工線間に連続した亀裂が形成されず、よって改質層を正常に形成できていない。比較的4(CX4)を参照し、検流計振幅が小さすぎる場合、複数の加工線間に連続した亀裂が形成されず、よって改質層を正常に形成できていない。比較例5(CX5)を参照し、検流計振幅が大きすぎる場合、加工密度が低すぎ、亀裂が延伸することが難しくなり、よって改質層を正常に形成できていない。比較例6(CX6)を参照し、加工線間隔が広すぎる場合、亀裂が形成されたとしても、加工線間の間隔が広すぎるため亀裂が延伸することが難しくなり、よって改質層を正常に形成できていない。比較例7(CX7)を参照し、加工回数が少なすぎる(1回)場合、複数の加工線間に連続した亀裂は形成されず、よって改質層を正常に形成できていない。
第2実施例:
【0048】
第2実施例において、加工のために
図8Aに示した繋ぎ合わせ方式及び垂直フラットカットモードを実行し、実施例8~実施例11(EX8~EX11)及び比較例8~比較例12(CX8~CX12)の検流計振幅、加工線間隔、線加工速度、加工回数、加工電力。及び総加工時間の加工条件は表2に記したとおりである。加えて、改質層が正常に形成されたか否かの評価を光学顕微鏡で亀裂が見られたか否かにより判定し、評価結果を表2に列記した。
【0049】
【0050】
表2の実施例8(EX8)~実施例11(EX11)に示すように、検流計振幅、加工線間隔、線加工速度、加工回数、及び加工電力が加工の間に本発明の範囲内にある場合、加工のために繋ぎ合わせ方式が用いられたとしても、複数の加工線間に亀裂が正常に形成され、よって改質層が正常に形成されている。これと比較し、比較例8(CX8)を参照し、検流計振幅が小さすぎる場合、複数の加工線間に連続した亀裂は形成されず、よって改質層を正常に形成できていない。比較例9(CX9)を参照し、検流計振幅が大きすぎる場合、加工密度が低すぎ、亀裂が延伸することが難しくなり、よって改質層を正常に形成できていない。比較例10(CX10)を参照し、加工線間隔が広すぎる場合、亀裂が形成されたとしても、加工線間の間隔が広すぎるため亀裂が延伸することが難しくなり、よって改質層を正常に形成できていない。比較例11(CX11)を参照し、加工回数が少なすぎる(1回)場合、複数の加工線間に連続した亀裂は形成されず、よって改質層を正常に形成できていない。比較例12(CX12)を参照し、加工電力が高すぎ(8.3W)て、垂直な損傷が形成され、水平でない亀裂をもたらして連続した亀裂が延伸することを難しくし、よって改質層を正常に形成できていない。比較例13(CX13)を参照し、初回の電力が低すぎる(3W)場合、複数の加工線間に連続した亀裂は形成されず、よって改質層を正常に形成できていない。
【0051】
上記によると、本発明の実施形態における非晶質相改質装置及び単結晶材料の加工方法は、フェムト秒レーザービームを用いて改質層を正常に形成することができ、改質層の厚さが減少する(40~80ミクロンの範囲に制御される)。このように、改質層の厚さを機械切断による切断線の損失よりも小さくすることができ、外力を加えた後に改質層を容易に分離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
非晶質相改質装置及び単結晶材料の加工方法は、炭化ケイ素といった単結晶材料に改質層を効果的に生成するために用いることができ、そのような改質層は容易にスライス又は分離することができる。
【符号の説明】
【0053】
10:フェムト秒レーザー源
20:スペックル調整器
30:ビーム角スキャナ
40:集束対物レンズ
50:モーションモジュール
102A:第1面
104A、104B:加工線
106:改質層
CX1:亀裂
L1、L2、L3、L3’、L4、L4’:レーザービーム
P1:開始点
P2、P3:折り返し点
P4:経路終点
S1:改質すべき物体
X1:改質すべき物体の部分
【外国語明細書】