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特開2024-31922電気車両の熱管理システムのための熱回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031922
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電気車両の熱管理システムのための熱回路
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/02 20060101AFI20240229BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240229BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240229BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20240229BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20240229BHJP
【FI】
B60K11/02
B60L3/00 H
B60L50/60
B60L58/26
B60L58/27
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023135543
(22)【出願日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】10 2022 121 618.7
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ツァイアー
(72)【発明者】
【氏名】マルセル ダノフスキ
【テーマコード(参考)】
3D038
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
3D038AC23
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD06
5H125CD09
5H125FF22
5H125FF23
5H125FF24
5H125FF27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱管理システムを有する電気車両に関する。
【解決手段】熱回路が、少なくとも、第1のポンプ8、熱交換器装置9を伴う第1の導管部分6と、第2の導管部分7とを有する主回路5と、第2のポンプ13、温度制御される構成要素14、15、16を伴う第1の導管部分11と、第2の導管部分12とを有する副回路10と、接続弁17と、第1の流体接続部18と、第2の流体接続部19と有し、流体接続部18、19が、主回路5及び副回路10の両方の第1の導管部分6、11及び第2の導管部分7、12の両方にそれぞれ接続されている、熱回路である。提案された熱回路及び熱回路の動作方法によって、構成要素での温度分布は均質化可能であり、主回路は、温度制御された体積流で動作可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両(4)の熱管理システム(3)のための主搬送方向(2)を有する熱回路(1)であって、前記熱回路(1)が少なくとも、
第1のポンプ(8)及び前記第1のポンプ(8)の下流に設けられた熱交換器(9)を有する第1の導管部分(6)と、第2の導管部分(7)とを有する主回路(5)と、
第2のポンプ(13)及び前記第2のポンプ(13)の下流に設けられた温度制御される構成要素(14、15、16)を有する第1の導管部分(11)と、第2の導管部分(12)とを有する副回路(10)と、
前記主回路(5)又は前記副回路(10)の前記第1の導管部分(6、11)及び前記第2の導管部分(7、12)に接続され、体積流を制御する接続弁(17)と、
前記接続弁(17)に接続された第1の流体接続部(18)と、
第2の流体接続部(19)とを有し、
前記流体接続部(18、19)が、前記主回路(5)及び前記副回路(10)の両方の前記第1の導管部分(6、11)及び前記第2の導管部分(7、12)の両方にそれぞれ接続される、熱回路(1)。
【請求項2】
前記副回路(10)では、少なくとも1つの温度センサ(20、21)が、温度制御される前記構成要素(14、15、16)の上流及び下流に配置されている、請求項1に記載の熱回路(1)。
【請求項3】
前記副回路(10)の前記第2の導管部分(12)が、スロットルデバイス(22)を有する、請求項1又は2に記載の熱回路(1)。
【請求項4】
前記熱交換器(9)が、ラジエータ及び/又はヒータを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱回路(1)。
【請求項5】
前記主回路(5)の前記第1の導管部分(6)では、前記熱交換器(9)の下流に第3の温度センサ(23)が設けられている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱回路(1)。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱回路(1)の動作方法であって、
第1の状態では、前記接続弁(17)によって、前記主回路(5)の前記第1の導管部分(6)及び前記第2の導管部分(7)が、排他的に流体接続され、
第2の状態では、前記接続弁(17)によって、前記主回路(5)の前記第1の導管部分(6)が、前記第1の流体接続部(18)を介して前記副回路(10)に排他的に流体接続され、
好ましくは第3の状態では、前記接続弁(17)によって、前記主回路(5)の前記第1の導管部分(6)及び前記第2の導管部分(7)の両方が、同様に前記主回路(5)の前記第1の導管部分(6)が、前記第1の流体接続部(18)を介して前記副回路(10)に流体接続され、前記主回路(5)及び前記副回路(10)から流体の混合物を生成する、方法。
【請求項7】
熱回路(1)の動作方法であって、前記熱回路(1)が、
温度制御流体を循環するための第2のポンプ(13)と、温度制御される構成要素(14、15、16)と、前記温度制御される構成要素(14、15、16)の上流に配置された第1の温度センサ(20)と、前記温度制御される構成要素(14、15、16)の下流に配置された第2の温度センサ(21)とを有する副回路(10)と、を少なくとも有し、
前記方法が、信号を記録、処理、及び出力するためにプロセッサによって実行される少なくとも以下のステップであって、
a.前記第1の温度センサ(20)で、支配的温度に依存する第1の温度信号を検出するステップと、
b.前記第2の温度センサ(21)で、支配的温度に依存する第2の温度信号を検出するステップと、
c.検出された前記第1の温度信号及び検出された前記第2の温度信号に基づいて比較値を形成するステップと、
d.前記形成された比較値を限界値と比較するステップと、
e.前記限界値を維持するように、前記第2のポンプ(13)のポンプ速度を設定するステップと、を含む、方法。
【請求項8】
前記熱回路(1)が、
流体接続部(18、19)を介して前記副回路(10)に接続可能な主回路(5)であって、熱交換器(9)と、温度制御流体を循環するための第1のポンプ(8)とを有する、主回路(5)と、
前記主回路(5)と前記副回路(10)との間の前記流体接続部(18、19)を介する体積流を制御するための接続弁(17)とを更に有し、
前記方法が、信号を記録、処理、及び出力するためにプロセッサによって実行される少なくとも以下のステップであって、
f.前記温度制御される構成要素(14、15、16)に対する現在の温度制御要求を取得及び/又は計算するステップと、
g.前記温度制御される構成要素(14、15、16)の温度レベルを前記現在の温度要求に適合するように、前記体積流を混合する前記接続弁(17)の弁位置を調整するステップと、を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱交換器(9)が、ラジエータ及び/又はヒータを含み、
前記現在の温度制御要求に従って前記温度レベルに達するために、前記ラジエータ及び/又はヒータが、前記主回路(5)に熱を積極的に導入及び/又は前記主回路(5)から熱を放出するように制御される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記温度制御される構成要素(14、15、16)が、熱エネルギーを貯蔵するために使用される、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記温度制御される構成要素(14、15、16)に貯蔵された前記熱エネルギーが、別の構成要素(16、15、14)のために利用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記温度制御される構成要素が、電気車両(4)の高電圧電池(14)及び/又は冷凍器(15)である、請求項7乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の少なくとも1つの熱回路(1)を有する、電気車両(4)のための熱管理システム(3)であって、
前記熱回路(1)が、更に好ましくは、少なくとも1つの更なる副回路(10)を有し、
前記更なる副回路(10)のうちの少なくとも1つが、好ましくは前記熱回路(1)の前記副回路(10)のように設計される、熱管理システム(3)。
【請求項14】
請求項13に記載の熱管理システム(3)と、以下の構成要素のうちの少なくとも1つとを有する、電気車両(4)であって、
前記構成要素が、
高電圧電池(14)、
冷凍器(15)、及び
電気駆動ユニット(16)、のうちの少なくとも1つであり、
前記構成要素(14、15、16)の少なくとも1つが、前記熱管理システム(3)によって温度制御可能であり、
前記構成要素(14、15、16)のうちの1つの熱エネルギーが、前記熱管理システム(3)によって、前記構成要素のうちの別の構成要素(16、15、14)に好ましくは移動可能である、電気車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車両の熱管理システムのための主搬送(送出)方向を有する熱回路、熱回路の動作方法、電気車両のためのこのような熱回路を有する熱管理システム、及び熱管理システムを含むこのような熱管理システムを有する電気車両に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術から、電気車両に対する熱管理システムのための熱回路が公知である。電気構成要素の高効率のため、従来の燃焼エンジン駆動車両の構成要素と比較して、電気車両では、廃熱の発生が著しく少ない。加えて、燃焼エンジン駆動車両の構成要素と比較して、構成要素を動作可能な温度範囲は著しく小さいため、熱回路に対する機能的要求は大幅に増加している。高効率のため、冷たい周囲温度において、乗客用キャビンの温度制御に対しては、廃熱からの十分な熱エネルギーが利用できない。したがって、熱エネルギーのこの欠乏分は、高電圧電池からの電気エネルギーによって電力供給される電気ヒータ又はヒートポンプの使用により生成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで問題となるのは、これでは電動化車両の航続距離が短くなってしまうことである。
【0004】
そこから、本発明によって対処される問題は、先行技術からの既知の不利益を少なくとも部分的に克服することである。本発明による特徴は独立請求項から生じ、その有利な構成は従属請求項で開示される。請求項の特徴は、任意の技術的に有意義な方法で組み合わせられてもよく、以下の説明並びに本発明の補足的構成を含む図面の特徴を、この目的のために使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電気車両の熱管理システムのための主搬送方向を有する熱回路に関し、熱回路は、少なくとも、
第1のポンプ及び第1のポンプの下流側に配置された熱交換器を有する第1の導管部分と、第2の導管部分とを有する主回路と、
第2のポンプと、第2のポンプの下流側に配置された温度制御される構成要素を有する第1の導管部分と、第2の導管部分とを有する副回路と、
主回路又は副回路の第1の導管部分及び第2の導管部分に接続され、体積流を制御する接続弁と、
接続弁に接続された第1の流体接続部と、
第2の流体接続部とを有し、
流体接続部はそれぞれ、主回路及び副回路の両方の第1の導管部分及び第2の導管部分の両方にそれぞれ接続される熱回路である。
【0006】
上述及び後述で使用される順序の番号は、明確な区別を行う目的でのみ使用され、明示的に別段の示唆がない限り、指定された構成要素の順序又はランキングを反映するものではない。1より大きい順序数は、更にそのような構成要素が必ずしも存在しなければならないことを必要としない。
【0007】
ここで提案する熱回路は、加熱(又は冷却)を必要とする構成要素に加熱を割り当てるように設計される。この場合、温度分布又は保存された加熱量は、(その後分離された)主回路からの更なる加熱入力又は冷却入力なしに、それぞれの構成要素(例えば、高電圧電池又は電気駆動機械)を介して副回路で均質化することができる。加えて、接続弁を混合弁として用いて、副回路の構成要素で温度制御が必要な場合、主回路の加熱又は冷却は、必ずしも副回路に急激に伝達されるわけではなく、好ましくは徐々に伝達され、それによって、温度ショック及び/又は温度制御される構成要素の温度分布の大きな不均質性を回避する。動作は、以下で更に詳細に説明される。
【0008】
ここで提案する熱回路は、例えば、オイル又は水・グリコール混合物などの冷却剤である温度制御流体を搬送する役割を果たす。温度制御流体を使用して、温度制御される電気車両の構成要素は、温度制御されることができ、温度制御は温度制御される構成要素の加熱及び温度制御される構成要素の冷却の両方を意味すると理解されるべきである。
【0009】
温度制御(加熱又は冷却)される構成要素は、以下で更に詳細に説明される複数の異なる構成要素から形成され得ることに留意されたい。
【0010】
一実施形態では、電気車両は、ハイブリッド(例えば、電気エンジン及び燃焼エンジン)駆動車両である。代替的に、電気車両は純粋に電気駆動される車両である。
【0011】
本定義による熱回路は、主回路及び副回路に分割される。副回路及び主回路の両方はそれぞれ、ポンプを備える。こうしたポンプは、例えば、遠心ポンプ又はスピンドルポンプを含む。ポンプの助けを借りて、温度制御流体は熱回路を通して搬送可能である。
【0012】
主回路及び副回路の両方はそれぞれ、第1の導管部分及び第2の導管部分を備える。それぞれの第1の導管部分は、それぞれのポンプを有する。結果として、それぞれのポンプを有する熱回路の2つの回路は、互いに別々に独立して動作可能である。それぞれの第2の導管部分が、(好ましくは更なる二次回路なしで)循環動作可能な閉流体回路が形成されるように、それぞれの回路を閉じる。
【0013】
好ましい実施形態では、導管部分は、導管要素を介して互いに接続される異なる構成要素の集合体を備えることに留意されたい。一実施形態では、1つの導管部分は、他の導管要素又は他の導管部分を接続するための導管要素である。
【0014】
熱回路の主搬送(送出)方向は、ポンプの主動作状態によって決定され、ここで言及される2つのポンプの主搬送方向は、主回路及び部分回路の第1の導管部分が接続弁及び流体接続部(以下参照)によって直列に接続される場合、同じ方向で整列される。好ましくは、ポンプは、熱交換器と温度制御される構成要素との間にそれぞれ配置され、特に好ましくは、熱交換器は第1のポンプの圧力側に配置され、温度制御される構成要素は第1のポンプの吸引側に配置され、逆に、熱交換器は第2のポンプの吸引側に配置され、温度制御される構成要素は第2のポンプの圧力側に配設される。実施形態では、主搬送方向の配向は変更不可能である。一実施形態では、主搬送方向の配向は、前述のものとは異なり、例えばその逆方向であり、及び/又は副モードでは異なるように動作可能であり、例えば逆方向である。
【0015】
熱交換器は、1つ以上の熱交換器を含む。これらの熱交換器は、加熱出力を主回路内の中に導入して、それによって主回路における温度制御流体の温度を上昇させるか、又は主回路から熱エネルギーを放出し、それによって主回路における温度制御流体の温度を低下させるように配置される。例えば、これらの熱交換器のうちの少なくとも1つは、熱が周囲空気と交換される空気冷却器である。一実施形態では、例えば、熱交換器のうちの少なくとも1つは、熱エネルギーが電気エネルギーを使用して生成される電気ヒータである。1つの実施形態では、例えば、熱交換器のうちの少なくとも1つは、熱エネルギーを電気エネルギーに変換可能な手段による化学及び/又は電気ラジエータである。1つの実施形態では、熱交換器のうちの少なくとも1つは、主に他の目的に使用される構成要素であり、駆動ユニット又は(他の)電気構成要素などの熱を吸収及び/又は放射するのにも適している。
【0016】
好ましい実施形態では、接続弁は、3つの接続ノズルを伴うハウジングと、対応する弁座を有するバルブ本体とを備える。弁本体及びその弁座によって、それぞれの接続ノズルの開口部断面は、一実施形態では、排他的に(少なくともそれぞれの終了状態において)それぞれ完全に、かつ一実施形態では、制御可能に、すなわち、体積流を設定するために、部分的に閉じられるように、つまり、多段階又は連続的に可変な仕様で、2つの極端な位置によって制限される体積流範囲にわたって、ハウジング内で遮断及び遮断解除され得る。一実施形態では、接続ノズルのうちの1つ(この場合、流入口)に入る体積流は、他の2つの接続ノズルのうちの1つ(この場合、流出口)に排他的に向けられてもよく、好ましくは、接続ノズルのうちの少なくとも2つの接続ノズルを流入口として(交互に又は同時に)使用可能である。好ましい実施形態では、流出口として機能する2つの接続ノズル間に体積流量分布を設定可能である。別の実施形態において、接続弁は、より多くの又は2つの接続ノズルのみを有することに留意されたい。また、弁本体は、例えば、体積流量または流れ方向を調整するための並進運動のためにも、またはそれ専用に設置されることにも留意すべきである。
【0017】
接続弁は、電気的に制御可能な混合弁からなることが好ましい。別の実施形態では、接続弁は、弁に含まれる制御要素を熱的に拡張することによって体積流を調節する温度制御接続弁である。
【0018】
流体接続部は、主回路及び副回路を接続する役割を果たす。好ましい実施形態では、温度制御流体は、第1の流体接続部を介して主回路から副回路の中に流れ、温度制御流体は、第2の流体接続部を介して副回路から主回路の中に流れ戻る。一実施形態では、流体接続部のうちの少なくとも1つは、画定された長さを有する導管要素である。代替的に、流体接続部のうちの少なくとも1つは、主回路及び副回路からの直接接続部であり、したがって導管要素を必要としない。一実施形態では、第1の流体接続部は、接続弁と一体に形成され、例えば、1つの接続ノズルにより形成される。
【0019】
熱回路の有利な実施形態では、少なくとも1つの温度センサが、温度制御される構成要素の前及び後の両方で、副回路に設けられていることが更に推奨される。
【0020】
温度センサは、第1の温度で第1の信号を出力し、第2の温度で第2の信号を出力する任意のタイプのセンサである。信号を介して、どの信号がどの温度に対応するかを知ることができれば、温度を(通常は間接的に)測定することができる。この場合、間接的な測定は、温度が物理的量自体として測定されないことを示すために理解されるべきである。物理的補助変数が測定され、それが特定の温度に対応する。例えば、このような補助変数は、可変電気抵抗、電気静電容量、又は体積的に検出可能な熱膨張である。
【0021】
一実施形態では、例えば、少なくとも1つのNi-Cr-Ni温度センサ[ニッケル-クロム-ニッケル]が利用され、これは、電気エネルギー源によって通電され、それによって、この温度センサの電気抵抗を検出することができ、これが温度に対応する。他の実施形態では、温度センサのうちの少なくとも1つは、NTC[負温度係数]センサ若しくはPTC[正温度係数]センサ、又は任意の他の電気的及び/又は電子的に評価可能な温度センサなどの、その抵抗を変更するセンサである。
【0022】
温度制御される構成要素の上流及び下流の両方の温度センサの有利な配置により、温度制御される構成要素の温度差を測定できる。この温度差(後で更に詳細に説明するように)は、温度制御される構成要素の動作点についての情報を提供し、更に、温度差が分かれば、第2のポンプは特に有利に制御されることができる。
【0023】
更に、熱回路の有利な実施形態では、副回路の第2の導管部分がスロットルデバイスを含むことが提案される。
【0024】
スロットルデバイスは、第2のパイプセクションを経由する体積流量を、それに平行に走るパイプセクションを経由する体積流量に基づいて調整または設定できるような方法(可変または恒久的)で、第2のパイプセクションの圧力損失のパイプセクション直径の幾何学的変化を介して、具体的に調整または恒久的に設定することができる。
【0025】
スロットルデバイスを使用する場合に特に有利な点は、第2の導管部分の圧力損失が、第2の導管部分の長さ及び/又は他の幾何学的設計に関係なく非常に容易に影響を及ぼすことができ、したがって、特定の設計又は設置状況又は作業員の技能に無関係に、非常に正確に決定され得ることである。スロットルデバイスを使用することによる圧力降下についてのこの影響は、有利なことに、固定又は(好ましくは1回限りの)調整可能なスロットル作用を有する挿入スロットルを使用することによって実施される。これにより、第1の導管部分及び/又は第2の導管部分に対する他の幾何学的要件から高い柔軟性と独立性を得ることができる。
【0026】
更に、熱回路の有利な実施形態では、熱交換器がラジエータ及び/又はヒータを含むことが提案される。
【0027】
一実施形態では、ラジエータは、温度制御流体(以下、冷却剤と称する)が一方側(以下、内側と称する)を通り、空気が第2の側(以下、外側と称する)を通り抜ける空気冷却器を含む。内側と外側との間の支配的温度の差の結果として、熱は、本明細書では、より冷たい媒体により吸収され、より暖かい流体を冷却し、冷たい媒体は冷却の場合冷却液である。ラジエータファンを使用して、空気を(ラジエータファンによって能動的に、及び/又は駆動速度によって受動的に)空気冷却器の外側を横切って通過させ、それによって冷却剤から空気への高速の熱伝達を達成することができる。
【0028】
一実施形態では、ラジエータは、冷却剤-冷却剤冷却器を含む。その場合、より暖かい冷却剤はまた、より冷たい冷却剤に熱を放出する。
【0029】
一実施形態では、ラジエータは、冷媒冷却器、例えば、冷媒と冷却剤との間で熱を伝達させる、いわゆる冷凍器を含む。冷媒は、少なくとも極端な動作状態で、液体形態とガス形態との間の相転移を経る流体であり、それにより熱容量が大幅に増加する流体である。冷却剤及び冷媒の両方は、配管によって周囲環境から遮断される。
【0030】
この場合、ヒータという用語は、熱を温度制御流体に導入する任意の構成要素を指す。実施形態では、ヒータは、電気エネルギーが熱エネルギーに変換可能であるPTCヒータを含む。実施形態では、ヒータは、冷媒からの熱が温度制御流体に放出されることによるヒートポンプを含む。しかしながら、熱を温度制御流体に放出する任意の構成要素も、ヒータを構成すると理解され得る。
【0031】
いくつかの動作点では、例えば、冷却剤空気ラジエータでは、空気が冷却剤よりも暖かい場合、これらの特定の動作点において冷却剤によって空気から熱を吸収することもできる。ラジエータはまた、ヒータとして動作可能である。
【0032】
熱回路の有利な実施形態では、更に、第3の温度センサが、主回路の第1の導管部分において熱交換器の下流に設けられることが提案される。
【0033】
この第3の温度センサを使用して、熱交換器を介して温度制御流体にどれくらいの温度制御量が加えられるか、及び/又は放出されるかを決定することができる。この温度情報の助けを借りて、主回路における温度は、熱交換器を介して設定することができ、好ましくは、この第3の信号を入力変数として直接調整することができる。第3の温度センサの実施形態は、第1の温度センサ及び第2の温度センサについて既に上述した実施形態と同様に実行可能である。好ましくは、全ての温度センサは、高度の信頼性又は干渉変数に対する低い異なる感応性について、類似しており、特に好ましくは同一である。
【0034】
別の態様によれば、上述した一実施形態による熱回路を動作させる方法が提案され、
第1の状態では、接続弁によって、主回路の第1の導管部分及び第2の導管部分のみが、流体接続され、
第2の状態では、接続弁によって、主回路の第1の導管部分のみが、副回路に流体接続され、
好ましくは、第3の状態では、接続弁によって、主回路の第1の導管部分及び第2の導管部分の両方が、同様に主回路の第1の導管部分が、第1の流体接続部を介して、副回路に流体接続され、主回路及び副回路からの流体の混合物を生成する。
【0035】
第1の状態では、第1のポンプによって搬送される流体の全量が、主回路の第1の導管部分から、主回路の第2の導管部分へと導かれる。結果として、(第1のポンプによって送出される)温度制御流体は、もっぱら主回路を流れる。この第1の状態では、第1の流体接続部は接続弁によって閉鎖されるため、温度制御流体は、主回路と副回路との間の第2の流体接続部を流れることができない。熱交換器の助けを借りて、主回路における温度制御流体の温度レベルは、この第1の状態で有利に調整可能である。この第1の状態では、副回路もまた、それ自体内で閉じ、第2のポンプは、特に有利な方法で流体のある量を送出し、この量は、第1のポンプの動作とは無関係である。
【0036】
第2の状態では、主回路の第2の導管部分は、接続弁によって閉じられる。その結果、完全な温度制御流体が、主回路から副回路に流れる。この第2の状態では、第1のポンプと第2のポンプは直列に接続され、それによって第1のポンプと第2のポンプの流量が互いに補いあう。第2のポンプの作動及び結果として生じる圧力降下に応じて、第2のポンプによって送出される温度制御流体は、A)副回路の第1の導管部分から、第2の流体接続を通って、主回路の第1の導管部分へ流れるか、又はB)副回路の第2の導管部分を通って、副回路の第1の導管部分へ直接戻る。これら2つの平行な流路の間で発生する分布比は、それぞれの導管部分の圧力降下と第2のポンプの制御によって決定される。代替的に又は追加的に、副回路の第2の導管部分を閉じる、又はそれを通る流れを制限するために、少なくとも1つの更なる弁が、副回路の第2の導管部分の入力側及び/又は出力側に設けられる。
【0037】
特に好ましい追加的に可能な第3の状態では、接続弁は、主回路の第1の流体接続部と第2の導管部分との間の接続弁の弁本体の位置に応じて、温度制御流体の体積流を分割する。第1の温度レベルにある温度制御流体を、主回路から第2の温度レベルにある副回路に導入することによって、温度制御される構成要素の中に流れる温度制御流体の温度は調節可能であり、好ましくは、非常に正確に調整可能である。これにより、熱回路は、温度制御される構成要素を通過する温度制御流体の体積流量とは独立して、温度制御される構成要素に伝達される温度制御量を調節することができる。
【0038】
別の態様によれば、熱回路の動作方法が提供され、熱回路が、少なくとも、
温度制御流体を循環するための第2のポンプと、温度制御される構成要素と、温度制御される構成要素の上流に配置された第1の温度センサと、同様に、温度制御される構成要素の下流に配置された第2の温度センサとを備える副回路と、を備え、
方法が、信号を記録、処理、及び出力するためにプロセッサによって実行される少なくとも以下のステップであって、
a.第1の温度センサの支配的温度に依存する第1の温度信号を検出するステップと、
b.第2の温度センサの支配的温度に依存する第2の温度信号を検出するステップと、
c.検出された第1の温度信号及び検出された第2の温度信号に基づいて比較値を形成するステップと、
d.形成された比較値を限界値と比較するステップと、
e.この限界値を維持するように、第2のポンプのポンプ速度を設定するステップと、を含む。
【0039】
1つの有利な実施形態では、プロセッサは熱回路の制御ユニットである。代替的に又は追加的に、プロセッサは、複数の制御ユニット、例えば、熱回路の制御ユニット及び温度制御される構成要素の制御ユニットを含む。プロセッサは、センサからの信号を読み込んで(又は代替的に、準備されたデータを処理して)、それらの信号又は対応する処理済みデータを、計算演算を使用して処理し、及び/又は特性曲線及び/又はマップの値と比較するように構成される。1つの有利な実施形態では、プロセッサはまた、ポンプに対する制御信号又は弁、好ましくは少なくとも制御弁に対する制御信号などのように、構成要素に制御信号を発するように構成される。これにより、プロセッサは、対象のポンプの流量を調整するか、又は流れの分割が仕様に対応するように接続弁の弁本体を調整することができる。
【0040】
温度制御される構成要素の前後の温度センサの特に有利に配置されているため、当該構成要素の上流側の(主搬送方向の)温度制御流体の温度と、温度制御される構成要素の下流側の(主搬送方向の)温度制御流体の温度との間の温度差が、例えば、比較値として計算される。この温度差、並びに温度制御される構成要素を通る温度制御流体の(ポンプ制御により決定可能である)体積流を用いて、温度制御される構成要素の温度制御性能を計算することができる。これは、温度制御流体から温度制御される構成要素へどれだけの温度制御パワーの量が伝達されるかを計算することができることを意味する。
【0041】
この特に好ましい実施形態では、第2のポンプは、温度制御流体を、副回路を通して、したがって温度制御される構成要素に、排他的に搬送する。
【0042】
温度制御される構成要素のいくつかは、温度制御される構成要素における温度が特に均質であるとき、特に有利に動作可能である。温度制御される構成要素において均質な温度を達成するためには、温度制御流体を定義された体積流で、温度制御される構成要素を通して搬送する必要がある。これは、特に大きな構成要素、強く分岐した冷却チャネルを有する構成要素、及び/又は不均質な温度分布を有する構成要素(例えば、不均質な負荷により)に特に有利である。計算された温度差を定義された限界値と比較することによって、本明細書に記載する方法は、所望の均質性に常に十分な温度制御流体の体積流が、温度制御される構成要素を通って流れるように、第2のポンプを調整することを可能にする。
【0043】
本方法の1つの有利な実施形態では、熱回路は更に、
流体接続部を介して副回路に接続可能な主回路であって、熱交換器と、温度制御流体を循環するための第1のポンプとを有する、主回路と、
主回路と副回路との間の流体接続部を介する体積流を制御するための接続弁とを更に有し、
方法が、信号を記録、処理、及び出力するためにプロセッサによって実行される少なくとも以下のステップであって、
f.温度制御される構成要素に対する現在の温度制御要求を取得及び/又は計算するステップと、
g.温度制御される構成要素の温度レベルを現在の温度要求に適合するように、前記体積流を混合する接続弁の弁位置を調整するステップと、を更に含む。
【0044】
特に好ましい説明される実施形態では、例えば、主回路及び副回路は、異なる温度レベルにある。主回路の温度レベル又はその体積流は、通常、現在の温度制御要求にのみ依存して、又は主に依存して制御される。
既に説明したように、第2のポンプは、温度制御される構成要素の温度分布が(ほぼ技術的に)均質であることを保証する。いくつかの動作点では、温度制御される構成要素は、十分に均質な温度であるが、例えば、高すぎる温度レベルにある可能性がある。この場合、温度制御要求が生成される。
【0045】
この温度制御要求により、接続弁は、以下に例で示すように、特に有利な方法でプロセッサによって制御することができる。
【0046】
接続弁は、主回路から副回路への第1の流体接続部を通る接続を開き、それによって副回路の温度レベル及び主回路の温度レベルが調整される。例示的な動作点では、主回路の温度レベルは、副回路の温度レベルよりも低い。主回路と副回路との間の流体接続部を開くと、副回路の温度レベル、及びそれによって温度制御される構成要素の温度レベルも、この動作点で低下させることができる。副回路内の温度レベルを減少させることは、第2のポンプの流量に無関係に、温度制御される構成要素によって制御可能である。ここで特に有利なことは、温度制御される構成要素の均質化は、温度制御される構成要素の温度レベルに無関係に、制御可能であるか、又は好ましくは調整することができることである。
【0047】
更に、本方法の1つの有利な実施形態では、熱交換器がラジエータ及び/又はヒータを有することが提案され、
現在の温度制御要求に従って温度レベルを達成するために、ラジエータ及び/又はヒータは、主回路に熱を積極的に導入及び/又は主回路から熱を放出するように制御される。
【0048】
現在の温度レベルと、現在の温度制御要求にしたがう温度レベルとの間に大きな差異がある場合、主回路の温度レベルは、熱交換器によって能動的に制御できることに留意されたい。これは、ラジエータを(例えば、ラジエータファンによって)制御し、それによって主回路の温度を低下させるか、又はヒータを制御し熱が主回路に導入し(すなわち、導入され)、それによって主回路の温度を上昇させるか、いずれかによって行われる。ラジエータ及び/又はヒータの可能な実施形態に関しては、熱回路に関する前述の説明を参照されたい。
【0049】
方法の有利な実施形態では、温度制御される構成要素が、熱エネルギーを貯蔵するために使用されることが更に提案される。
【0050】
いくつかの適用例では、温度制御される構成要素は、高い熱容量を有する。これは、大量の熱が加熱される構成要素に貯蔵され得ることを意味する。この量は、比熱容量とも呼ばれ、物質(すなわち、本明細書では構成要素)の量に供給又は回収される熱を、関連する温度の増加又は減少と物質の質量で除算したものである。
【0051】
熱エネルギーを蓄えることで、ある一定期間にわたって温度制御される構成要素をある一定の温度レベルに保つことができ、温度制御される構成要素が後で再度動作するときにすでに適切な温度レベルにあるようにすることができる。別の用途では、熱エネルギーを蓄えることは、この熱エネルギーを放電することよりも熱回路にとってエネルギー的に理にかなっている。
【0052】
更に、本方法の1つの有利な実施形態では、温度制御される構成要素に貯蔵される熱エネルギーを、別の構成要素に利用することが提案される。
【0053】
特に有利な点は、熱回路で発生した(余分な)熱(一般に廃熱と呼ばれる)を温度制御される構成要素に蓄えることができ、必要に応じて別の機会に温度制御される構成要素から取り出して別の構成要素に供給できることである。一方では、これにより、電気部品の非常に低い熱損失電力を熱回路内に保持し(環境に不可逆的に放出せず)、この熱損失電力を(別の時点で)温度制御の必要性がある別の構成要素に利用可能にすることができる。
【0054】
更に、本方法の有利な実施形態では、温度制御される構成要素は、電気車両の高電圧電池及び/又は冷凍器であることが提案される。
【0055】
例えば、温度制御される構成要素が高電圧電池である場合、高電圧電池は、動作中に(例えば、冷却への異なるアクセス又は異なる負荷のために)異なる温度まで加熱される複数の電池セルからなることが多いため、均質化が特に有利である。高電圧電池の快適な温度範囲は、比較的狭い。これは、高電圧電池が小さな温度範囲でしか特に効率よく強力に作動できないことを意味する。有利なことに、この快適温度範囲は、20℃~50℃である。この快適な温度範囲は、25℃~35℃の間が特に有利である。
【0056】
別の態様によれば、電池の内部制御及び/又はヒューズの調節のために、多くの場合、高電圧電池の性能及び効率を確保するために、最も高温の電池セルと最も低温の電池セルの両方が、この快適な温度範囲内になければならない。したがって、高電圧電池の均質化が特に重要である。この均質化は、(既に上述したように)高電圧電池を通る温度制御流体の大量の流れによって保証される。この場合、主回路から温度制御流体を混合することによって、温度制御流体の体積流に関係なく、高電圧電池の温度レベルを調整することができるか、又は確保することができる。主回路またはその体積流量は通常、温度または現在の温度制御要件のみに依存して、または主に依存して制御される。接続バルブの正確な、好ましくは無段階の調整可能性の結果として、温度制御される構成部品の温度レベルが低い勾配で変化することを保証することも可能である。好ましくは、この勾配の値域は1K/minから2K/minまでである。これは、高電圧バッテリーの長寿命化に特に有利である。
【0057】
例えば、加熱される構成要素が冷凍器、すなわち冷却回路への熱ブリッジである場合、副回路からの熱エネルギーは、冷凍器を通して冷却回路に伝達することができる。ほとんどの場合、冷却回路は、冷凍器に加えて別の熱交換器を有し、これは車両キャビンの加熱及び/又は冷却に使用することができる。これにより、温度制御流体から室内、例えば車両の車両キャビンへと熱エネルギーを、輸送する可能性が提供される。
冷凍器において冷媒の相変化が起こるため、温度制御流体の温度範囲を限定して運転されることが好ましい。主回路における温度制御流体の温度範囲から独立して温度制御性能を設定することができるように、温度制御流体の混合比を正確に制御することが特に有利である。
【0058】
さらなる態様によれば、上述のような実施形態による少なくとも1つの熱回路を含み、好ましくは、熱回路が更に少なくとも1つの更なる副回路を含み、特に好ましくは、更なる副回路の少なくとも1つが熱回路の副回路のように設計されている、電動車両のための熱管理システムが提案される。
【発明の効果】
【0059】
第1の実施形態では、この熱管理システムは、副回路と主回路との間で熱エネルギーをシフトさせ、それによって、必要最小限の熱エネルギーが主回路に伝達され、残りの熱エネルギーは副回路に留まる。
【0060】
第2の実施形態では、好ましい熱管理システムは、熱エネルギーを第1の副回路から主回路に放散させること、及び/又は熱エネルギーの全部または一部を第2の副回路に放散させ、例えば、温度制御される構成要素に放散させることを可能にする。
【0061】
更なる実施形態では、この特に好ましい熱管理システムは、熱管理システムのこれらの(好ましくはすべての)構成要素と主回路との間の熱エネルギーの完全な可変伝達を確実にするために、主回路と、温度制御される構成要素が例えば高電圧バッテリーである第1の副回路と、温度制御される構成要素が例えば冷凍機であるさらなる副回路とを相互接続(熱伝達)することを可能にする。
【0062】
別の態様では、上述の一実施形態による熱管理システムを有する電気車両が提供され、以下の構成要素のうちの少なくとも1つが、
高電圧電池、
冷凍器、及び
電気駆動ユニットであり、
構成要素のうちの少なくとも1つが、熱管理システムによって温度制御可能であり、
好ましくは、熱管理システムによって、構成要素のうちの1つの熱エネルギーが、別の構成要素に移動可能である。
【0063】
熱エネルギーの移動(伝達)とは、ここでは熱輸送の任意の形態を指す。この場合、第1の構成要素が熱エネルギーを放出し、それが第2の構成要素によって再吸収される。これにより、第1の構成要素の温度が下降し、第2の構成要素の温度が上昇する。
【0064】
好ましい実施形態では、熱管理システムの主回路には、例えば冷却器(ラジエータ)および/または加熱器(ヒータ)に加えて電気駆動機が配置される。例示的な用途では、電気駆動機の廃熱により主回路で熱エネルギーが利用可能である。同時に、高電圧バッテリーの温度制御(例えば温度上昇)の必要性と、車両の車室の温度制御(例えば温度上昇)の必要性があり、これらは冷却器を介して供給することができる。この場合、熱管理システムは、特に有利な方法で、主回路の熱エネルギーを高電圧バッテリーと冷凍機の間で必要に応じて分配することを可能にする。これにより、熱管理システムで生成された熱エネルギーは、温度制御を必要とする構成部品に供給されるか、あるいは(熱容量の大きい)高電圧バッテリーに蓄えられるなどして、熱管理システム内にできるだけ長く留まることができる。これにより、個々のコンポーネントを温度制御するためだけに熱エネルギーを発生させる必要性が減るため、電気エネルギーが少なくて済み、ひいては電動車両の航続距離が延びる。
【0065】
この熱管理システム(TMMとも略される)では、温度制御される各構成要素及び熱交換器の各構成要素は、熱源及び/又はヒートシンクとして使用可能であることが好ましい。そのようにすることで、熱源は温度制御流体内に熱を放射し、ヒートシンクは温度制御流体から熱を吸収する。
【0066】
上述の本発明を、関連する技術背景に照らして、好ましい構成を示す添付図面を参照しながら、以下で詳細に説明する。本発明は、いかなる方法でも純粋な概略図に限定されるものではなく、図面はサイズに忠実ではなく、かつ割合を定義するのに適していないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】熱回路を模式的に示した回路図である。
図2】熱回路を動作させる第1の方法の概略図である。
図3】熱回路を動作させる第2の方法の概略図である。
図4】熱管理システムを有する電動車両の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1では、熱回路1が回路概略図に示されている。熱回路1は、主回路5及び副回路10に分割可能である。主回路5及び副回路10への分割は、破線フレームを用いて図1に示される。主搬送方向2が、主回路5及び副回路10において矢印によって示される。それぞれの導管部分の終端部及び開始部は、点によってマークされる。全ての温度センサ20、21、23は、塗りつぶされた正方形で表される。
【0069】
主回路5は、第1のポンプ8、第1のポンプ8の下流側に設けられた熱交換器9、及び熱交換器9の下流側に設けられた第3の温度センサ23を備え、ここで下流側という方向は、熱回路1の主搬送方向2に関係するものである。主回路5のこの部分は、第1の導管部分6と呼ばれる。
【0070】
主回路5の第1の導管部分6の下流側に接続弁17が配置される。この接続弁17は複数の接続ノズルを有する。これらの接続ノズルは、この実施形態の例において、1つの流入口及び2つの流出口からなる。接続弁17の第1の流出口は、主回路5の第2の導管部分7に接続される。主回路5の第2の導管部分7は、第1の導管部分6への接続を通してこの回路を閉じる。接続弁17の第2の流出口は、第1の流体接続部18を介して、主回路5を副回路10に接続する。
【0071】
副回路10はまた、第1の導管部分11及び第2の導管部分12を備える。この第1の導管部分11は、第2のポンプ13と、第2のポンプ13の下流側に配置された温度制御される構成要素14、15、16と、2つの温度センサ20、21を備える。本明細書では、第1の温度センサ20は、温度制御される構成要素14、15、16のすぐ前の上流側に配置され、第2の温度センサ21は、温度制御される構成要素14、15、16のすぐ後ろの下流側に配置される。
【0072】
副回路10の第1の導管部分11の端部は、副回路10の第2の導管部分12及び第2の流体接続部19の両方に接続される。副回路10は、第1の導管部分6と第2の導管部分7との接続を介して閉じられる。
【0073】
流体接続部18、19は順に、主回路5を副回路10に接続する。
接続弁17により、体積流は、第1の流出口(すなわち、主回路5の第2の導管部分7)へ完全に制御可能であるか、又は第2の流出口(すなわち、副回路10の第1の導管部分11)へ完全に制御可能である。更に、接続弁17によって、第1の流出口と第2の流出口との間の体積流は、すなわち、主回路5の第2の導管部分7と副回路10の第1の導管部分11との間で分割できる。
【0074】
図示される実施形態では、副回路10の第2の導管部分12は、(純粋に任意選択的に)スロットルデバイス22を備える。
【0075】
図2では、例えば図1に示すように、熱回路1を動作する第1の方法の概略図を示す。個々の方法ステップは、長方形の箱の中に小文字で示される。図2は、方法ステップa.及びb.が、並列に、すなわち、互いに同時に行われることを示す。次に、方法ステップc.、d.、及びe.は、連続配列で、すなわち、経時的に連続的に行われる。方法ステップe.の結果は、方法ステップa.及びb.の開始値としての役割を果たす。これは、これらの方法ステップが、図示される矢印によって示されるように、ループ状に実行されることを意味する。
【0076】
図3では、例えば図1に図示されるように、熱回路1を動作させるための第2の方法の概略図が、方法ステップf.及びg.で示されている。ここで、方法ステップは、連続する順序で実施される。方法ステップg.の結果は、次に、方法ステップf.、すなわち、矢印によって示されるように、方法ステップがループ状に実行されるための開始値として機能する。図2の方法ステップ及び図3の方法ステップは、互いに独立して実行される。図2の方法ステップ及び図3の方法ステップは、互いに平行に実行することもできる。
【0077】
図4には、熱管理システム3を有する電気車両4が概略上面図で示されている。電気車両4の熱管理システム3は、
-主回路5と、
-副回路10に位置する冷凍器15と、
-副回路10に位置する高電圧電池14と、
-電気駆動ユニット16とを有する。
これらの回路は、ある構成要素14、15、16及び/又は回路の熱エネルギーが別の構成要素16、15、14及び/又は回路に移動、伝達可能であるように相互接続される。熱エネルギーの移動、伝達は、1つ以上のプロセッサ24によって制御され、プロセッサ24は、温度制御要求を処理して、ポンプ8、13及び接続弁17を制御する。
【0078】
ここで提案する熱回路及び熱回路の動作方法によって、温度分布は、構成要素において均質化され、主回路は、温度制御された体積流で動作可能である。
【符号の説明】
【0079】
参照番号一覧
1 熱回路
2 主搬送方向
3 熱管理システム
4 電気車両
5 主回路
6 主回路の第1の導管部分
7 主回路の第2の導管部分
8 第1のポンプ
9 熱交換器
10 副回路
11 副回路の第1の導管部分
12 副回路の第2の導管部分
13 第2のポンプ
14 高電圧電池
15 冷凍装置
16 電気駆動ユニット
17 接続弁
18 第1の流体接続部
19 第2の流体接続部
20 第1の温度センサ
21 第2の温度センサ
22 スロットルデバイス
23 第3の温度センサ
24 プロセッサ
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両(4)の熱管理システム(3)のための主搬送方向(2)を有する熱回路(1)であって、前記熱回路(1)が少なくとも、
第1のポンプ(8)及び前記第1のポンプ(8)の下流に設けられた熱交換器(9)を有する第1の導管部分(6)と、第2の導管部分(7)とを有する主回路(5)と、
第2のポンプ(13)及び前記第2のポンプ(13)の下流に設けられた温度制御される構成要素(14、15、16)を有する第1の導管部分(11)と、第2の導管部分(12)とを有する副回路(10)と、
前記主回路(5)又は前記副回路(10)の前記第1の導管部分(6、11)及び前記第2の導管部分(7、12)に接続され、体積流を制御する接続弁(17)と、
前記接続弁(17)に接続された第1の流体接続部(18)と、
第2の流体接続部(19)とを有し、
前記流体接続部(18、19)が、前記主回路(5)及び前記副回路(10)の両方の前記第1の導管部分(6、11)及び前記第2の導管部分(7、12)の両方にそれぞれ接続される、熱回路(1)。
【請求項2】
前記副回路(10)では、少なくとも1つの温度センサ(20、21)が、温度制御される前記構成要素(14、15、16)の上流及び下流に配置されている、請求項1に記載の熱回路(1)。
【請求項3】
前記副回路(10)の前記第2の導管部分(12)が、スロットルデバイス(22)を有する、請求項に記載の熱回路(1)。
【請求項4】
前記熱交換器(9)が、ラジエータ及び/又はヒータを含む、請求項に記載の熱回路(1)。
【請求項5】
前記主回路(5)の前記第1の導管部分(6)では、前記熱交換器(9)の下流に第3の温度センサ(23)が設けられている、請求項に記載の熱回路(1)。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱回路(1)の動作方法であって、
第1の状態では、前記接続弁(17)によって、前記主回路(5)の前記第1の導管部分(6)及び前記第2の導管部分(7)が、排他的に流体接続され、
第2の状態では、前記接続弁(17)によって、前記主回路(5)の前記第1の導管部分(6)が、前記第1の流体接続部(18)を介して前記副回路(10)に排他的に流体接続され、
好ましくは第3の状態では、前記接続弁(17)によって、前記主回路(5)の前記第1の導管部分(6)及び前記第2の導管部分(7)の両方が、同様に前記主回路(5)の前記第1の導管部分(6)が、前記第1の流体接続部(18)を介して前記副回路(10)に流体接続され、前記主回路(5)及び前記副回路(10)から流体の混合物を生成する、方法。
【請求項7】
熱回路(1)の動作方法であって、前記熱回路(1)が、
温度制御流体を循環するための第2のポンプ(13)と、温度制御される構成要素(14、15、16)と、前記温度制御される構成要素(14、15、16)の上流に配置された第1の温度センサ(20)と、前記温度制御される構成要素(14、15、16)の下流に配置された第2の温度センサ(21)とを有する副回路(10)と、を少なくとも有し、
前記方法が、信号を記録、処理、及び出力するためにプロセッサによって実行される少なくとも以下のステップであって、
a.前記第1の温度センサ(20)で、支配的温度に依存する第1の温度信号を検出するステップと、
b.前記第2の温度センサ(21)で、支配的温度に依存する第2の温度信号を検出するステップと、
c.検出された前記第1の温度信号及び検出された前記第2の温度信号に基づいて比較値を形成するステップと、
d.前記形成された比較値を限界値と比較するステップと、
e.前記限界値を維持するように、前記第2のポンプ(13)のポンプ速度を設定するステップと、を含む、方法。
【請求項8】
前記熱回路(1)が、
流体接続部(18、19)を介して前記副回路(10)に接続可能な主回路(5)であって、熱交換器(9)と、温度制御流体を循環するための第1のポンプ(8)とを有する、主回路(5)と、
前記主回路(5)と前記副回路(10)との間の前記流体接続部(18、19)を介する体積流を制御するための接続弁(17)とを更に有し、
前記方法が、信号を記録、処理、及び出力するためにプロセッサによって実行される少なくとも以下のステップであって、
f.前記温度制御される構成要素(14、15、16)に対する現在の温度制御要求を取得及び/又は計算するステップと、
g.前記温度制御される構成要素(14、15、16)の温度レベルを前記現在の温度要求に適合するように、前記体積流を混合する前記接続弁(17)の弁位置を調整するステップと、を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱交換器(9)が、ラジエータ及び/又はヒータを含み、
前記現在の温度制御要求に従って前記温度レベルに達するために、前記ラジエータ及び/又はヒータが、前記主回路(5)に熱を積極的に導入及び/又は前記主回路(5)から熱を放出するように制御される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記温度制御される構成要素(14、15、16)が、熱エネルギーを貯蔵するために使用される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記温度制御される構成要素(14、15、16)に貯蔵された前記熱エネルギーが、別の構成要素(16、15、14)のために利用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記温度制御される構成要素が、電気車両(4)の高電圧電池(14)及び/又は冷凍器(15)である、請求項7乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載の少なくとも1つの熱回路(1)を有する、電気車両(4)のための熱管理システム(3)であって、
前記熱回路(1)が、更に好ましくは、少なくとも1つの更なる副回路(10)を有し、
前記更なる副回路(10)のうちの少なくとも1つが、好ましくは前記熱回路(1)の前記副回路(10)のように設計される、熱管理システム(3)。
【請求項14】
請求項13に記載の熱管理システム(3)と、以下の構成要素のうちの少なくとも1つとを有する、電気車両(4)であって、
前記構成要素が、
高電圧電池(14)、
冷凍器(15)、及び
電気駆動ユニット(16)、のうちの少なくとも1つであり、
前記構成要素(14、15、16)の少なくとも1つが、前記熱管理システム(3)によって温度制御可能であり、
前記構成要素(14、15、16)のうちの1つの熱エネルギーが、前記熱管理システム(3)によって、前記構成要素のうちの別の構成要素(16、15、14)に好ましくは移動可能である、電気車両。
【外国語明細書】