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特開2024-31949高屈折低分散光学ガラス、ガラスプリフォーム、光学素子及び光学機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031949
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】高屈折低分散光学ガラス、ガラスプリフォーム、光学素子及び光学機器
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/068 20060101AFI20240229BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136059
(22)【出願日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】202211030923.2
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】512264046
【氏名又は名称】成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU GUANG MING GUANG DIAN GLASS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.359,Sec.3,Chenglong Avenue,Long quan yi District,Chengdu,Sichuan China
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】孫 偉
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB05
4G062DA03
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4G062MM02
4G062NN02
4G062NN03
4G062NN29
4G062NN34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた化学安定性と耐失透性を有する高屈折低分散光学ガラスを提供する。
【解決手段】重量%で示される以下の成分を含む、高屈折低分散光学ガラスを提供する。SiO:3~20%、B:10~25%、La:35~65%、Y:5~30%、ZrO:2~15%。本発明の光学ガラスは、合理的な成分設計により、所望の屈折率とアッベ数を有すると同時に、優れた化学安定性と耐失透性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で示される以下の成分を含む、高屈折低分散光学ガラス:SiO:3~20%、B:10~25%、La:35~65%、Y:5~30%、ZrO:2~15%。
【請求項2】
重量%で示される以下の成分をさらに含む、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス:Ta:0~10%、及び/又はGd:0~10%、及び/又はNb:0~5%、及び/又はTiO:0~5%、及び/又はRO:0~8%、及び/又はRnO:0~8%、及び/又はWO:0~5%、及び/又はZnO:0~8%、及び/又はAl:0~8%、及び/又はYb:0~8%、及び/又はGeO:0~5%、及び/又は清澄剤:0~2%、
ただし、前記ROは、MgO、CaO、SrO及びBaOのうちの一種又は複数種であり、前記RnOは、LiO、NaO及びKOのうちの一種又は複数種であり、前記清澄剤は、Sb、SnO、SnO及びCeOのうちの一種又は複数種である。
【請求項3】
重量%で示される以下の成分を含む、高屈折低分散光学ガラス:SiO:3~20%、B:10~25%、La:35~65%、Y:5~30%、ZrO:2~15%、Ta:0~10%、Gd:0~10%、Nb:0~5%、TiO:0~5%、RO:0~8%、RnO:0~8%、WO:0~5%、ZnO:0~8%、Al:0~8%、Yb:0~8%;GeO:0~5%、清澄剤:0~2%、
ただし、前記ROは、MgO、CaO、SrO及びBaOのうちの一種又は複数種であり、前記RnOは、LiO、NaO及びKOのうちの一種又は複数種であり、前記清澄剤は、Sb、SnO、SnO及びCeOのうちの一種又は複数種である。
【請求項4】
以下の1)~9)のうちの一つ又は複数の条件を満たす、重量%で示される成分を含む、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス:
1)La+Y+Gdが45~75%であり;
2)(Gd+ZnO)/Yが1.0以下であり;
3)(Gd+Ta)/Yが1.5以下であり;
4)(B+Gd+Ta)/SiOが0.8~8.0であり;
5)SiO/(B+Nb)が0.15~1.5であり;
6)Y/(B+Nb)が0.3~2.0であり;
7)Ta/Bが0.85以下であり;
8)(Al+Gd)/ZrOが2.5以下であり;
9)(TiO+WO+Nb)/Taが1.5以下である。
【請求項5】
以下の1)~9)のうちの一つ又は複数の条件を満たす、重量%で示される成分を含む、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス:
1)La+Y+Gdが50~75%であり;
2)(Gd+ZnO)/Yが0.8以下であり;
3)(Gd+Ta)/Yが0.05~1.0であり;
4)(B+Gd+Ta)/SiOが1.0~6.0であり;
5)SiO/(B+Nb)が0.2~1.0であり;
6)Y/(B+Nb)が0.4~1.8であり;
7)Ta/Bが0.05~0.7であり;
8)(Al+Gd)/ZrOが2.0以下であり;
9)(TiO+WO+Nb)/Taが1.0以下である。
【請求項6】
以下の1)~9)のうちの一つ又は複数の条件を満たす、重量%で示される成分を含む、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス:
1)La+Y+Gdが55~70%であり;
2)(Gd+ZnO)/Yが0.6以下であり;
3)(Gd+Ta)/Yが0.1~0.8であり;
4)(B+Gd+Ta)/SiOが1.5~5.0であり;
5)SiO/(B+Nb)が0.2~0.8であり;
6)Y/(B+Nb)が0.5~1.5であり;
7)Ta/Bが0.1~0.6であり;
8)(Al+Gd)/ZrOが1.5以下であり;
9)(TiO+WO+Nb)/Taが0.8以下である。
【請求項7】
以下の1)~9)のうちの一つ又は複数の条件を満たす、重量%で示される成分を含む、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス:
1)La+Y+Gdが60~70%であり;
2)(Gd+ZnO)/Yが0.4以下であり;
3)(Gd+Ta)/Yが0.1~0.6であり;
4)(B+Gd+Ta)/SiOが1.5~3.5であり;
5)SiO/(B+Nb)が0.25~0.65であり;
6)Y/(B+Nb)が0.6~1.2であり;
7)Ta/Bが0.15~0.5であり;
8)(Al+Gd)/ZrOが1.0以下であり;
9)(TiO+WO+Nb)/Taが0.5以下である。
【請求項8】
重量%で示される以下の成分を含む、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス:SiO:4~15%、及び/又はB:12~22%、及び/又はLa:40~60%、及び/又はY:6~25%、及び/又はZrO:3~12%、及び/又はNb:0~3%、及び/又はTa:2~8%、及び/又はGd:0~8%、及び/又はTiO:0~3%、及び/又はRO:0~3%、及び/又はRnO:0~3%、及び/又はWO:0~3%、及び/又はZnO:0~4%、及び/又はAl:0~4%、及び/又はYb:0~5%、及び/又はGeO:0~3%、及び/又は清澄剤:0~1%、
ただし、前記ROは、MgO、CaO、SrO及びBaOのうちの一種又は複数種であり、前記RnOは、LiO、NaO及びKOのうちの一種又は複数種であり、前記清澄剤は、Sb、SnO、SnO及びCeOの一種又は複数種である。
【請求項9】
重量%で示される以下の成分を含む、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス:SiO:5~12%、及び/又はB:14~20%、及び/又はLa:42~55%、及び/又はY:11~22%、及び/又はZrO:4~10%、及び/又はNb:0~2%、及び/又はTa:3~6%、及び/又はGd:0~3%、及び/又はTiO:0~2%、及び/又はRO:0~2%、及び/又はRnO:0~2%、及び/又はWO:0~2%、及び/又はZnO:0~2%、及び/又はAl:0~2%、及び/又はYb:0~3%、及び/又はGeO:0~1%、及び/又は清澄剤:0~0.5%、
ただし、前記ROは、MgO、CaO、SrO及びBaOのうちの一種又は複数種であり、前記RnOは、LiO、NaO及びKOのうちの一種又は複数種であり、前記清澄剤は、Sb、SnO、SnO及びCeOのうちの一種又は複数種である。
【請求項10】
前記成分が、WOを含まない、及び/又はTiOを含まない、及び/又はROを含まない、及び/又はRnOを含まない、及び/又はZnOを含まない、及び/又はAlを含まない、及び/又はGeOを含まない、
ただし、前記ROは、MgO、CaO、SrO及びBaOのうちの一種又は複数種であり、前記RnOは、LiO、NaO及びKOのうちの一種又は複数種である、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス。
【請求項11】
重量%で、SiO、B、La、Y、ZrO及びTaの合計含有量が、88%以上である、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス。
【請求項12】
重量%で、SiO、B、La、Y、ZrO及びTaの合計含有量が、95%以上である、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス。
【請求項13】
前記高屈折低分散光学ガラスの屈折率nが1.78~1.86であり、アッベ数vが42~50である、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス。
【請求項14】
前記高屈折低分散光学ガラスの屈折率nが1.80~1.83であり、アッベ数vが45~47.5である、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス。
【請求項15】
前記高屈折低分散光学ガラスの密度ρが5.10g/cm以下であり、及び/又は熱膨張係数α-30/70℃が85×10-7/K以下であり、及び/又は耐水安定性Dが2類以上であり、及び/又はλ80が410nm以下であり、及び/又はλが325nm以下であり、及び/又は耐候性CRが2類以上であり、及び/又はヌープ硬度Hが680×10Pa以上であり、及び/又はヤング率Eが10500×10Pa~14000×10Paであり、及び/又は摩耗度Fが100~150であり、及び/又は気泡度がA級以上である、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス。
【請求項16】
前記高屈折低分散光学ガラスの密度ρが4.90g/cm以下であり、及び/又は熱膨張係数α-30/70℃が70×10-7/K以下であり、及び/又は耐水安定性Dが1類であり、及び/又はλ80が395nm以下であり、及び/又はλが310nm以下であり、及び/又は耐候性CRが1類であり、及び/又はヌープ硬度Hが710×10Pa以上であり、及び/又はヤング率Eが11500×10Pa~13000×10Paであり、及び/又は摩耗度Fが115~135であり、及び/又は気泡度がA00級である、請求項1に記載の高屈折低分散光学ガラス。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の高屈折低分散光学ガラスで製造される、ガラスプリフォーム。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の高屈折低分散光学ガラスを用いて製造される、光学素子。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載の高屈折低分散光学ガラスを含む、光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラスに関し、特に高屈折低分散光学ガラス、及びそれから製造されるガラスプリフォーム、光学素子及び光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高屈折低分散光学ガラスからなるレンズは超低分散ガラスからなるレンズなどと組み合わせて接合レンズを作製することができ、色収差を補正し、光学システムをコンパクト化することができる。したがって、高屈折低分散光学ガラスは、撮像光学システム、投影機などの投影光学システムを構成する光学素子として非常に重要な位置を占めている。
【0003】
屈折率が1.78~1.86、アッベ数が42~50である光学ガラスは、高屈折低分散光学ガラスに属し、近年、車載、監視セキュリティなどの分野で幅広く利用されている。光学ガラスは加工中に大量の腐食媒体に接触するので、その耐酸性、耐水性が低ければ、光学ガラスの結像品質に影響を与える。一方、特許文献1は、17~35%のZnOを含み、ガラスの耐失透性を向上させる必要がある屈折率が1.80~1.84であり、アッベ数が40.0~45.0である光学ガラスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第101041552号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、優れた化学安定性と耐失透性を有する高屈折低分散光学ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が技術的課題を解決するために採用する技術方案は次のとおりである。
【0007】
重量%で以下の成分を含む、高屈折低分散光学ガラス:SiO:3~20%、B:10~25%、La:35~65%、Y:5~30%、ZrO:2~15%。
【0008】
さらに、重量%で以下の成分をさらに含む、前記高屈折低分散光学ガラス:Ta:0~10%、及び/又はGd:0~10%、及び/又はNb:0~5%、及び/又はTiO:0~5%、及び/又はRO:0~8%、及び/又はRnO:0~8%、及び/又はWO:0~5%、及び/又はZnO:0~8%、及び/又はAl:0~8%、及び/又はYb:0~8%、及び/又はGeO:0~5%、及び/又は清澄剤:0~2%、ただし、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、前記RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種であり、前記清澄剤はSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種である。
【0009】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:SiO:3~20%、B:10~25%、La:35~65%、Y:5~30%、ZrO:2~15%、Ta:0~10%、Gd:0~10%、Nb:0~5%、TiO:0~5%、RO:0~8%、RnO:0~8%、WO:0~5%、ZnO:0~8%、Al:0~8%、Yb:0~8%、GeO:0~5%、清澄剤:0~2%、ただし、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、前記RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種であり、前記清澄剤はSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種である。
【0010】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:La+Y+Gdが45~75%、好ましくはLa+Y+Gdが50~75%、より好ましくはLa+Y+Gdが55~70%、さらに好ましくはLa+Y+Gdが60~70%である。
【0011】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:(Gd+ZnO)/Yが1.0以下、好ましくは(Gd+ZnO)/Yが0.8以下、より好ましくは(Gd+ZnO)/Yが0.6以下、さらに好ましくは(Gd+ZnO)/Yが0.4以下である。
【0012】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:(Gd+Ta)/Yが1.5以下、好ましくは(Gd+Ta)/Yが0.05~1.0、より好ましくは(Gd+Ta)/Yが0.1~0.8、さらに好ましくは(Gd+Ta)/Yが0.1~0.6である。
【0013】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:(B+Gd+Ta)/SiOが0.8~8.0、好ましくは(B+Gd+Ta)/SiOが1.0~6.0、より好ましくは(B+Gd+Ta)/SiOが1.5~5.0、さらに好ましくは(B+Gd+Ta)/SiOが1.5~3.5である。
【0014】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:SiO/(B+Nb)が0.15~1.5、好ましくはSiO/(B+Nb)が0.2~1.0、より好ましくはSiO/(B+Nb)が0.2~0.8、さらに好ましくはSiO/(B+Nb)が0.25~0.65である。
【0015】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:Y/(B+Nb)が0.3~2.0、好ましくはY/(B+Nb)が0.4~1.8、より好ましくはY/(B+Nb)が0.5~1.5、さらに好ましくはY/(B+Nb)が0.6~1.2である。
【0016】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:Ta/Bが0.85以下、好ましくはTa/Bが0.05~0.7、より好ましくはTa/Bが0.1~0.6、さらに好ましくはTa/Bが0.15~0.5である。
【0017】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:(Al+Gd)/ZrOが2.5以下、好ましくは(Al+Gd)/ZrOが2.0以下、より好ましくは(Al+Gd)/ZrOが1.5以下、さらに好ましくは(Al+Gd)/ZrOが1.0以下である。
【0018】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:(TiO+WO+Nb)/Taが1.5以下、好ましくは(TiO+WO+Nb)/Taが1.0以下、より好ましくは(TiO+WO+Nb)/Taが0.8以下、さらに好ましくは(TiO+WO+Nb)/Taが0.5以下である。
【0019】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:SiO:4~15%、好ましくはSiO:5~12%、及び/又はB:12~22%、好ましくはB:14~20%、及び/又はLa:40~60%、好ましくはLa:42~55%、及び/又はY:6~25%、好ましくはY:8~22%、より好ましくはY:11~22%、及び/又はZrO:3~12%、好ましくはZrO:4~10%、及び/又はNb:0~3%、好ましくはNb:0~2%、及び/又はTa:2~8%、好ましくはTa:3~6%、及び/又はGd:0~8%、好ましくはGd:0~5%、より好ましくはGd:0~3%、及び/又はTiO:0~3%、好ましくはTiO:0~2%、及び/又はRO:0~3%、好ましくはRO:0~2%、及び/又はRnO:0~3%、好ましくはRnO:0~2%、及び/又はWO:0~3%、好ましくはWO:0~2%、及び/又はZnO:0~4%、好ましくはZnO:0~2%、及び/又はAl:0~4%、好ましくはAl:0~2%、及び/又はYb:0~5%、好ましくはYb:0~3%、及び/又はGeO:0~3%、好ましくはGeO:0~1%、及び/又は清澄剤:0~1%、好ましくは清澄剤:0~0.5%、ただし、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、前記RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種であり、前記清澄剤はSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種である。
【0020】
さらに、前記成分が、WOを含まない、及び/又はTiOを含まない、及び/又はROを含まない、及び/又はRnOを含まない、及び/又はZnOを含まない、及び/又はAlを含まない、及び/又はGeOを含まない、ただし、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種であり、前記RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種である、前記高屈折低分散光学ガラス。
【0021】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記高屈折低分散光学ガラス:SiO、B、La、Y、ZrO、Taの合計含有量が86%以上、好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Taの合計含有量が88%以上、より好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Taの合計含有量が90%以上、さらに好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Taの合計含有量が95%以上である。
【0022】
さらに、前記高屈折低分散光学ガラスの屈折率nが1.78~1.86、好ましくは1.79~1.84、より好ましくは1.80~1.83、アッベ数vが42~50、好ましくは44~48、より好ましくは45~47.5である。
【0023】
さらに、前記高屈折低分散光学ガラスの密度ρが5.10g/cm以下、好ましくは5.00g/cm以下、より好ましくは4.90g/cm以下、及び/又は熱膨張係数α-30/70℃が85×10-7/K以下、好ましくは80×10-7/K以下、より好ましくは75×10-7/K以下、さらに好ましくは70×10-7/K以下、及び/又は耐水安定性Dが2類以上、好ましくは1類、及び/又はλ80が410nm以下、好ましくはλ80が400nm以下、より好ましくはλ80が395nm以下、及び/又はλが325nm以下、好ましくはλが315nm以下、より好ましくはλが310nm以下、及び/又は耐候性CRが2類以上、好ましくは1類、及び/又はヌープ硬度Hが680×10Pa以上、好ましくは690×10Pa以上、より好ましくは700×10Pa以上、さらに好ましくは710×10Pa以上、及び/又はヤング率Eが10500×10Pa~14000×10Pa、好ましくは11000×10Pa~13500×10Pa、より好ましくは11500×10Pa~13000×10Pa、及び/又は摩耗度Fが100~150、好ましくは105~145、より好ましくは110~140、さらに好ましくは115~135、及び/又は気泡度がA級以上、好ましくはA級以上、より好ましくはA00級である。
【0024】
上記高屈折低分散光学ガラスで製造される、ガラスプリフォーム。
【0025】
上記高屈折低分散光学ガラスか、上記のガラスプリフォームで製造される、光学素子。
【0026】
上記高屈折低分散光学ガラスを含み、及び/又は上記の光学素子を含む、光学機器。
【発明の効果】
【0027】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。合理的な成分設計により、本発明により得られる光学ガラスは、所望の屈折率とアッベ数を有するとともに、優れた化学安定性と耐失透性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る高屈折低分散光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で適宜変形して実施することが可能である。さらに、適宜省略はあるものの、記載を繰り返すことによって本発明の主旨が限定されるものではなく、以下では、本発明の高屈折低分散光学ガラスを単に光学ガラス又はガラスと称することもある。
【0029】
[高屈折低分散光学ガラス]
以下に、本発明の高屈折低分散光学ガラスの各構成要素(成分)の範囲について説明する。本明細書において、各成分の含有量および合計含有量は、特に指定のない限り、重量パーセント(wt%)で表すものとする。すなわち、各成分の含有量、合計含有量は、酸化物組成物に換算するガラス物質の総重量に対する重量パーセントで表すことである。ここでいう「酸化物組成物に換算した」とは、本発明の光学ガラスの組成物の原料として用いた酸化物、錯塩、水酸化物等が溶融時に分解して酸化物に変換された場合の酸化物物質の総重量を100%とした場合のことである。
【0030】
具体的には、本明細書に記載されている数値範囲には、上限値および下限値が含まれ、「以上」および「以下」には端点値、ならびに範囲に含まれるすべての整数および分数が含まれ、範囲が限定されている場合に記載されている具体的な値に限定されるものではない。本明細書で「及び/又は」と呼ばれるものは包括的であり、例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、またはAとBの両方を意味する。
【0031】
<必須成分とオプション成分>
SiOは光学ガラスの骨格であり、ガラスネットワーク生成体として、ガラスの化学安定性を維持し、ガラスの耐失透性を高める役割を果たす。本発明では、上記の効果を得るために3%以上のSiOを添加しており、好ましくはSiOの含有量が4%以上、より好ましくはSiOの含有量が5%以上である。SiOの含有量が20%を超えると、ガラスの溶融性が低下し、転移温度が上昇する。したがって、SiOの含有量上限値は20%、好ましくは15%、より好ましくは12%である。
【0032】
はガラスネットワーク構造を形成する成分であり、本発明では10%以上のBを添加することにより、ガラス形成の安定性を維持し、ガラスの溶融性及び耐失透性を向上させる。したがって、好ましくはBの含有量が12%以上、より好ましくはBの含有量が14%以上である。しかし、Bの含有量が25%を超えると、ガラスの化学安定性が低下し、屈折率が低下する。従って、本発明においては、Bの含有量上限値は25%、好ましくは22%、より好ましくは20%である。
【0033】
Laはガラスの屈折率を高める有効な成分であり、ガラスの化学安定性と耐失透性に対する改善効果が顕著であるが、その含有量が35%未満である場合は、所望の光学定数を達成することが困難であり、その含有量が65%を超えると、ガラスの失透傾向が逆に増大し、熱安定性が低くなる。従って、Laの含有量は35~65%、好ましくは40~60%、より好ましくは42~55%である。
【0034】
は低分散性を維持すると同時にガラスの屈折率と耐失透性を高め、ガラスのヤング率を調整することができ、本発明は上記の効果を得るために5%以上のYを添加している。しかし、その含有量が30%を超えると、ガラスの化学安定性と耐候性が悪くなる。従って、本発明におけるYの含有量は5~30%、好ましくは6~25%、より好ましくは8~22%,、さらに好ましくは11~22%である。
【0035】
Gdはガラスの屈折率と化学安定性を高めることができるが、その含有量が10%を超えると、ガラスの耐失透性が低くなり、摩耗度が高くなる。したがって、Gdの含有量は0~10%であり、好ましくは0~8%、より好ましくは0~5%、さらに好ましくは0~3%である。
【0036】
いくつかの実施形態において、La、YとGdの合計含有量:La+Y+Gdを45~75%以内に制御することにより、ガラスは所望の屈折率及びアッベ数を得やすくなり、ガラスの耐失透性と耐候性を最適化することができる。したがって、好ましくはLa+Y+Gdが45~75%、より好ましくはLa+Y+Gdが50~75%、さらに好ましくはLa+Y+Gdが55~70%、よりさらに好ましくはLa+Y+Gdが60~70%である。
【0037】
Ybもガラスに高屈折性、低分散性を付与する成分であり、その含有量が8%を超えると、ガラスの耐結晶性が低下する。したがって、Ybの含有量は0~8%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~3%、さらに好ましくはYbを含まないことである。
【0038】
ZrOは光学ガラスの粘度、硬度、屈折率と化学安定性を高めることができ、ガラスの熱膨張係数を下げることもできるが、ZrOの含有量が高すぎると、ガラスの耐失透性が低下し、溶融難度が増加し、溶融温度が上昇し、ガラス内部に介在物が発生し、光透過率が低下する。従って、本発明においては、ZrOの含有量は2~15%、好ましくは3~12%、より好ましくは4~10%である。
【0039】
TiOはガラスの屈折率を高めることができるが、含有量が高すぎると分散係数が大幅に低下し、結晶化傾向が増加し、ガラスの着色が明らかになる。従って、TiOの含有量は0~5%、好ましくは0~3%、より好ましくは0~2%に限定される。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはTiOを含まないことである。
【0040】
Taは屈折率を高め、ガラスの耐失透性を高めることができるが、その含有量が高すぎると、ガラスの熱安定性が低下し、密度が増大し、光学定数を所望の範囲に制御することが困難になる。一方、他の成分と比較して、Taは非常に高価であり、実用性かつコストの観点から、使用量をできるだけ減らす必要がある。したがって、本発明におけるTaの含有量は0~10%、好ましくは2~8%、より好ましくは3~6%に限定される。
【0041】
いくつかの実施形態において、Taの含有量とBの含有量との比:Ta/Bを0.85以下に制御することにより、ガラスの化学安定性と耐失透性を向上させることができる。したがって、好ましくはTa/Bが0.85以下である。さらに、Ta/Bを0.05~0.7の範囲に制御することにより、ガラスの耐候性と摩耗度をさらに最適化することもできる。したがって、より好ましくはTa/Bが0.05~0.7、さらに好ましくはTa/Bが0.1~0.6、よりさらに好ましくはTa/Bが0.15~0.5である。
【0042】
いくつかの実施形態において、GdとTaの合計含有量:Gd+TaとYの含有量との比:(Gd+Ta)/Yを1.5以下に制御することにより、ガラスが適切な摩耗度を獲得するのに有利となり、ガラスの化学安定性の低下を防止することができる。したがって、好ましくは(Gd+Ta)/Yが1.5以下である。さらに、(Gd+Ta)/Yを0.05~1.0以内に制御することにより、ガラスの密度とヤング率をさらに最適化することができる。したがって、より好ましくは(Gd+Ta)/Yが0.05~1.0、さらに好ましくは(Gd+Ta)/Yが0.1~0.8、よりさらに好ましくは(Gd+Ta)/Yが0.1~0.6である。
【0043】
いくつかの実施形態において、B、Gd、Taの合計含有量:B+Gd+TaとSiOの含有量との比:(B+Gd+Ta)/SiOを0.8~8.0以内に制御することにより、ガラスの硬度を高め、ガラスの耐候性の低下を防止することができる。したがって、好ましくは(B+Gd+Ta)/SiOが0.8~8.0、より好ましくは(B+Gd+Ta)/SiOが1.0~6.0である。さらに、(B+Gd+Ta)/SiOを1.5~5.0以内に制御することにより、ガラスの気泡度と熱膨張係数をさらに最適化することもできる。したがって、さらに好ましくは(B+Gd+Ta)/SiOが1.5~5.0、よりさらに好ましくは(B+Gd+Ta)/SiOが1.5~3.5である。
【0044】
Nbはガラスの屈折率を高め、ガラスの化学安定性と耐失透性を改善することができるが、その含有量が大きすぎると、ガラスの分散が上昇し、目的とする光学定数のガラスを得ることが困難になるとともに、ガラスのコストと密度が増加し、可視光領域における短波透過率が低下するので、本発明におけるNbの含有量は5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。
【0045】
いくつかの実施形態において、SiOの含有量とBとNbとの合計含有量:B+Nbとの比:SiO/(B+Nb)を0.15~1.5以内に制御することにより、ガラスの硬度と光透過率を高めることができる。したがって、好ましくはSiO/(B+Nb)が0.15~1.5、より好ましくはSiO/(B+Nb)が0.2~1.0である。さらに、SiO/(B+Nb)を0.2~0.8以内に制御することにより、ガラスの熱膨張係数とヤング率をさらに最適化することもできる。したがって、さらに好ましくはSiO/(B+Nb)が0.2~0.8、よりさらに好ましくはSiO/(B+Nb)が0.25~0.65である。
【0046】
いくつかの実施形態において、Yの含有量とBとNbの合計含有量:B+Nbとの比:Y/(B+Nb)を0.3~2.0以内に制御することにより、ガラスの化学安定性を高め、ガラスの密度増加を防止し、ガラスの摩耗度を最適化することができる。したがって、好ましくはY/(B+Nb)が0.3~2.0、より好ましくはY/(B+Nb)が0.4~1.8、さらに好ましくはY/(B+Nb)が0.5~1.5、よりさらに好ましくはY/(B+Nb)は0.6~1.2である。
【0047】
アルカリ土類金属酸化物RO(ROはMgO、CaO、SrO、BaOの一種又は複数種)はガラスの光学定数を調整し、ガラスの化学安定性を最適化することができるが、その含有量が高いとガラスの耐失透性が低下する。従って、ROの含有量は0~8%、好ましくは0~3%、より好ましくは0~2%に限定される。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはROを含まないことである。
【0048】
アルカリ性金属酸化物RnO(RnOはLiO、NaO、KOの一種又は複数種)はガラスの転移温度を下げ、ガラスの光学定数と高温粘度を調整し、ガラスの溶融性を改善することができるが、その含有量が高いとガラスの耐失透性と化学安定性が低下する。従って、本発明においては、RnOの含有量は0~8%、好ましくは0~3%、より好ましくは0~2%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはRnOを含まないことである。
【0049】
WOはガラスの屈折率と機械的強度を高めることができるが、WOの含有量が5%を超えると、ガラスの熱安定性が低下し、耐失透性が低下する。したがって、WOの含有量上限値は5%、好ましくは3%、より好ましくは2%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはWOを含まないことである。
【0050】
いくつかの実施形態において、TiO、WO、Nbの合計含有量:TiO+WO+NbとTaの含有量との比:(TiO+WO+Nb)/Taを1.5以下に制御することにより、ガラス熱膨張係数を低減するとともに、光透過率の低下を防止することができる。したがって、好ましくは(TiO+WO+Nb)/Taが1.5以下、より好ましくは(TiO+WO+Nb)/Taが1.0以下である。さらに、(TiO+WO+Nb)/Taを0.8以下に制御することにより、ガラスの気泡度をさらに最適化することもできる。したがって、さらに好ましくは(TiO+WO+Nb)/Taが0.8以下、よりさらに好ましくは(TiO+WO+Nb)/Taが0.5以下である。
【0051】
ZnOはガラスの屈折率と分散を調整し、ガラスの高温粘度と転移温度を下げることができる。ZnOの含有量が高すぎると、ガラス成形の難度が増加し、耐結晶性が低くなる。従って、ZnOの含有量は0~8%、好ましくは0~4%、より好ましくは0~2%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはZnOを含まないことである。
【0052】
いくつかの実施形態において、GdとZnOの合計含有量:Gd+ZnOとYの含有量との比:(Gd+ZnO)/Yを1.0以下に制御することにより、ガラスの熱膨張係数を低減し、ガラスの摩耗度を最適化することができる。したがって、好ましくは(Gd+ZnO)/Yが1.0以下、より好ましくは(Gd+ZnO)/Yが0.8以下である。さらに、(Gd+ZnO)/Yを0.6以下に制御することにより、ガラスは適切なヤング率を得やすく、ガラス硬度の低下を防止することができる。したがって、さらに好ましくは(Gd+ZnO)/Yが0.6以下、よりさらに好ましくは(Gd+ZnO)/Yが0.4以下である。
【0053】
Alはガラスの化学安定性を改善することができるが、その含有量が8%を超えると、ガラスの溶融性と光透過率が低くなる。従って、本発明においては、Alの含有量は0~8%、好ましくは0~4%、より好ましくは0~2%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはAlを含まないことである。
【0054】
いくつかの実施形態において、AlとGdの合計含有量:Al+GdとZrOの含有量との比:(Al+Gd)/ZrOを2.5以下に制御することにより、ガラスは適切な摩耗度とヤング率を得やすく、光透過率の低下を防止することができる。したがって、好ましくは(Al+Gd)/ZrOが2.5以下、より好ましくは(Al+Gd)/ZrOが2.0以下、さらに好ましくは(Al+Gd)/ZrOが1.5以下、よりさらに好ましくは(Al+Gd)/ZrOが1.0以下である。
【0055】
GeOはガラスの屈折率と耐失透性を高めることができるが、その含有量が高すぎると、ガラスの化学安定性が低下する。一方、GeOは他の成分に比べて非常に高価であり、実用性とコストの観点から使用量をできるだけ減らす必要がある。したがって、本発明におけるGeOの含有量が0~5%、好ましくは0~3%、より好ましくは0~1%に限定され、さらに好ましくはGeOを含まないことである。
【0056】
本発明では、清澄剤として0~2%のSb、SnO、SnO、CeOの一種又は複数種を添加することにより、ガラスの清澄効果を高め、ガラスの気泡度を向上させることができる。好ましくは清澄剤の含有量が0~1%、より好ましくは清澄剤の含有量が0~0.5%である。Sbの含有量が2%を超えると、ガラスの清澄性能が低下する傾向があるとともに、その強い酸化作用によりガラスの溶融に用いる白金又は白金合金容器の腐食及び成形金型の劣化が加速するので、本発明におけるSbの含有量は0~2%、より好ましくは0~1%、さらに好ましくは0~0.5%である。SnOとSnOも清澄剤として使うことができるが、その含有量が2%を超えると、ガラス着色傾向が増加したり、ガラスを加熱、軟化してプレス成形などで再成形するとき、Snが結晶核生成の起点となり、失透したりする傾向がある。したがって、本発明におけるSnOの含有量は、好ましくは0~2%、より好ましくは0~1%、さらに好ましくは0~0.5%であり、SnOの含有量は、好ましくは0~2%、より好ましくは0~1%、さらに好ましくは0~0.5%である。CeOの作用及び含有量はSnOと一致し、その含有量は好ましくは0~2%、より好ましくは0~1%、さらに好ましくは0~0.5%、よりさらに好ましくはCeOを含まないことである。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスが低い熱膨張係数と密度、高い硬度、及び適切な摩耗度とヤング率を得るためには、好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Taの合計含有量が86%以上、より好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Taの合計含有量が88%以上、さらに好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Taの合計含有量が90%以上、よりさらに好ましくはSiO、B、La、Y、ZrO、Taの合計含有量が95%以上である。
【0058】
<含まれるべきでない成分>
本発明のガラスにおいては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の遷移金属の酸化物は、単独又は複合的に少量に含まれる場合でも、ガラスが着色され、可視光領域における特定の波長が吸収され、本発明の可視光透過効果を弱めるので、特に可視光領域の波長透過率を要求する光学ガラスは、実際には含まないことが好ましい。
【0059】
Th、Cd、Tl、Os、Be及びSeの酸化物は、近年、有害な化学物質として使用を制御する傾向にあり、ガラスの製造工程だけでなく、加工工程及び完成品の処置に至るまで、環境保護への取り組みが必要である。そのため、環境への影響を重視する場合は、不可避な混入以外は、それらを含まないことが好ましい。これにより、光学ガラスは実際に環境を汚染する物質を含まなくなる。したがって、本発明の光学ガラスは、特殊な環境措置を講じなくても、製造、加工及び廃棄が可能である。
【0060】
環境に配慮するため、本発明の光学ガラスは、As及びPbOを含まないことが好ましい。
【0061】
本明細書に記載されている「加えない」、「含まない」、「0%」という用語は、この成分を本発明のガラスの原料として意図的に添加しなかったことを意味する。しかし、ガラスを製造するための原料及び/又は設備として、意図的に添加されていない不純物や成分が、最終的なガラス中に少量または微量に存在することがあり、それらも本発明の特許の対象となる。
【0062】
以下、本発明の高屈折低分散光学ガラスの性能を説明する。
【0063】
<屈折率とアッべ数>
光学ガラスの屈折率(n)とアッべ数(ν)は、GB/T 7962.1-2010 に規定された方法に従って試験されている。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの屈折率(n)の下限値は1.78、好ましくは下限値が1.79、より好ましくは下限値が1.80である。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの屈折率(n)の上限値は1.86、好ましくは上限値が1.84、より好ましくは上限値が1.83である。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν)の下限値は42、好ましくは下限値が44、より好ましくは下限値が45である。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν)の上限値は50、好ましくは上限値が48、より好ましくは上限値が47.5である。
【0068】
<密度>
光学ガラスの密度(ρ)は、『GB/T7962.20-2010』に記載された方法に従って試験されている。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの密度(ρ)は5.10g/cm以下、好ましくは5.00g/cm以下、より好ましくは4.90g/cm以下である。
【0070】
<熱膨脹係数>
光学ガラスの熱膨張係数(α-30/70℃)は、『GB/T7962.16-2010』に記載された方法に従って-30~70℃のデータを測定する。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの熱膨張係数(α-30/70℃)は85×10-7/K以下、好ましくは80×10-7/K以下、より好ましくは75×10-7/K以下、さらに好ましくは70×10-7/K以下である。
【0072】
<耐水安定性>
光学ガラスの耐水安定性(D)(粉末法)はGB/T 17129に規定された方法で試験されている。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの耐水安定性(D)は2類以上、好ましくは1類である。
【0074】
<着色度>
本発明のガラスの短波透過スペクトル特性は着色度(λ80とλ)で示している。λ80とは、ガラス透過率が80%に達したときに対応する波長を指す。λ80の測定では、互いに平行で光学研磨された2つの相対平面を有する厚さ10±0.1mmのガラスを用い、280nmから700nmまでの波長領域における分光透過率を測定し、透過率80%の波長を示すことである。分光透過率又は透過率とは、ガラスの前記表面に垂直に強度Iinの光を入射し、ガラスを透過して強度Ioutの光を1つの平面から出射する場合にIout/Iinで表される量であり、ガラスの前記表面における表面反射損失の透過率も含まれる。ガラスの屈折率が高いほど、表面反射損失が大きくなる。したがって、高屈折率ガラスでは、λ80の値が小さいほど、ガラス自体の着色が極めて少なく、光透過率が高いことである。
【0075】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのλ80は410nm以下、好ましくλ80が400nm以下、より好ましくはλ80が395nm以下である。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのλは325nm以下、好ましくλが315nm以下、より好ましくはλが310nm以下である。
【0077】
<耐候性>
光学ガラスの耐候性(CR)の試験方法は以下の通りである:試料を相対湿度90%の飽和水蒸気環境の試験箱内に置き、40~50℃で1hごとに交互に循環し、15サイクル循環する。試料放置前後の濁度変化量に基づいて耐候性カテゴリを区分し、耐候性カテゴリを表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの耐候性(CR)は2類以上、好ましくは1類である。
【0080】
<ヌープ硬度>
光学ガラスのヌープ硬度(H)は『GB/T 7962.18-2010』に規定された試験方法に従って試験されている。
【0081】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのヌープ硬度(H)は680×10Pa以上、好ましくは690×10Pa以上、より好ましくは700×10Pa以上、さらに好ましくは710×10Pa以上である。
【0082】
<ヤング率>
ヤング率(E)は超音波を用いて縦波速度と横波速度を測定し、以下の式に従って計算される。
【数1】
G=V ρ
ここで:Eはヤング率、Pa;
Gはせん断係数、Pa;
は横波速度、m/s;
は縦波速度、m/s;
ρはガラス密度、g/cmである。
【0083】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのヤング率(E)の下限値は10500×10Pa、好ましくは下限値が11000×10Pa、より好ましくは下限値が11500×10Paである。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明の光学ガラスのヤング率(E)の上限値は14000×10Pa、好ましくは上限値が13500×10Pa、より好ましくは上限値が13000×10Paである。
【0085】
<摩耗度>
光学ガラスの摩耗度(F)とは、全く同じ条件下で、試料の摩耗量と標準試料(H-K9ガラス)の摩耗量(体積)との比に100を乗じて得られた数値であり、その式は以下の通りである:
=V/V×100=(W/ρ)/(W/ρ)×100
ここで、V-測定する試料の体積摩耗量;
-標準試料の体積摩耗量;
W-測定する試料の質量摩耗量;
-標準試料の品質摩耗量;
ρ-測定する試料の密度;
ρ-標準試料の密度。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの摩耗度(F)下限値は100、好ましくは下限値が105、より好ましくは下限値が110、さらに好ましくは下限値が115である。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの摩耗度(F)上限値は150、好ましくは上限値が145、より好ましくは上限値が140、さらに好ましくは上限値が135である。
【0088】
<気泡度>
光学ガラスの気泡度は、GB/T7962.8-2010に規定された方法に従って試験されている。
いくつかの実施形態では、本発明の光学ガラスの気泡度がA級以上、好ましくはA級以上、より好ましくはA00級である。
【0089】
[光学ガラスの製造方法]
本発明の高屈折低分散光学ガラスの製造方法は以下の通りである:酸化物、水酸化物、錯塩(炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩など)、ホウ酸などを含むがこれらに限定されない一般原料と従来の工程で製造され、常法により混合した後、調製した炉材を1200~1450℃の溶融炉(白金又は白金合金坩堝)に投入して溶融する。その後、清澄、均一化して、気泡及び未溶解物質のない均質な溶融ガラスを得るとともに、この溶融ガラスを金型に入れて鋳造し、焼きなましする。当業者であれば、実際の必要に応じて、原料、製法およびプロセスパラメータを適宜選択することができる。
【0090】
[ガラスプリフォーム及び光学素子]
直接滴下成形や研磨加工手段、又は熱プレス成形などのプレス成形手段を用いて作製された高屈折低分散光学ガラスでガラスプリフォームを製造することができる。すなわち、直接精密滴下成形により溶融光学ガラスを精密なガラスプリフォームに製造するか、研削や研磨などの機械加工によりガラスプリフォームを製造するか、光学ガラスを使用してプレス成形用のプリフォームブランクを作製し、このプリフォームブランクを熱プレス加工して研磨し、ガラスプリフォームを作製することができる。なお、光学プリフォームの製造手段は上記手段に限定されないことを理解されたい。
【0091】
上記のように、本発明の高屈折低分散光学ガラスは様々な光学素子及び光学設計に有用であり、その中でも特に好ましくは、本発明の高屈折低分散光学ガラスでプリフォームを形成し、このプリフォームを用いて再熱プレス成形、精密プレス成形などを行ってレンズ、プリズムなどの光学素子を製造することである。
【0092】
本発明のガラスプリフォーム及び光学素子は、いずれも本発明の上記高屈折低分散光学ガラスから形成される。本発明のガラスプリフォームは高屈折低分散光学ガラスが有する優れた特性を有し、本発明の光学素子は、光学ガラスが有する優れた特性を有し、光学的価値の高い様々なレンズ、プリズム等の光学素子を提供することができる。
【0093】
レンズの例としては、レンズ表面が球面または非球面の凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどのさまざまなレンズが挙げられる。
【0094】
[光学機器]
本発明の高屈折低分散光学ガラスにより形成される光学素子は、写真装置、撮像装置、投影装置、表示装置、車載装置及び監視装置などの光学機器を製造することができる。
【実施例0095】
<高屈折低分散光学ガラス実施例>
本発明の技術的解決策をさらに明確に説明するために、以下の非限定的な実施例を提供する。
【0096】
本実施例は、上記光学ガラスの製造方法を用いて、表2-1~表4-2に示す成分を有する高屈折低分散光学ガラスを得た。また、各ガラスの特性を本発明に記載の試験方法により測定し、その結果を表2-1~表4-2に表す。
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】

【0101】
【表6】
【0102】
【表7】
【0103】
<ガラスプリフォーム実施例>
高屈折低分散光学ガラスの実施例1~24#で得られたガラスから、研磨加工手段、又は再熱プレス成形、精密プレス成形などのプレス成形手段を用いて、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどの様々なレンズ、プリズムなどのプリフォームを製造する。
【0104】
<光学素子実施例>
上記ガラスプリフォームの実施例で得られたこれらのプリフォームをアニールし、屈折率などの光学特性が所望の値に達するようにガラス内部の応力を低下させながら屈折率を微調整する。
【0105】
次に、各プリフォームを研削し、研磨し、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどのさまざまなレンズ、プリズムを作製する。得られた光学素子の表面には反射防止膜を塗布することもできる。
【0106】
<光学機器実施例>
上記光学素子の実施例で製造された光学素子は、光学設計により、1つまたは複数の光学素子を用いて光学部品または光学コンポーネントを形成することにより、撮像装置、センサ、顕微鏡、医薬技術、デジタル投影、通信、光学通信技術/情報伝送、自動車分野における光学/照明、フォトリソグラフィ技術、エキシマレーザ、ウエハ、コンピュータチップ及びこのような回路及びチップを含む集積回路及び電子デバイスに用いることができる。