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特開2024-31957光学ガラス、ガラスプリフォーム、光学素子及び光学機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031957
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】光学ガラス、ガラスプリフォーム、光学素子及び光学機器
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/068 20060101AFI20240229BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136368
(22)【出願日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】202211032805.5
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】512264046
【氏名又は名称】成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU GUANG MING GUANG DIAN GLASS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.359,Sec.3,Chenglong Avenue,Long quan yi District,Chengdu,Sichuan China
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】匡 波
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB01
4G062DA03
4G062DA04
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4G062MM02
4G062NN01
4G062NN30
4G062NN32
4G062NN34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】屈折率が1.90~1.97、アッベ数が24~32であり、化学的安定性に優れた光学ガラスを提供する。
【解決手段】本発明は光学ガラスを提供し、重量%で以下の成分を含む:SiO2:2~15%、B2O3:5~20%、La2O3:25~45%、ZrO2:1~12%、TiO2:7~22%、Nb2O5:5~20%、RO:7~35%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量である。合理的な成分設計により、本発明で得られた光学ガラスは、所望の屈折率とアッベ数を有すると同時に、化学的安定性に優れる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス:
SiO2:2~15%、B2O3:5~20%、La2O3:25~45%、ZrO2:1~12%、TiO2:7~22%、Nb2O5:5~20%、RO:7~35%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量である。
【請求項2】
重量%で以下の成分をさらに含む、請求項1に記載の光学ガラス:
Y2O3:0~8%、及び/又はGd2O3:0~8%、及び/又はYb2O3:0~5%、及び/又はZnO:0~8%、及び/又はRn2O:0~8%、及び/又はGeO2:0~5%、及び/又はWO3:0~5%、及び/又はTa2O5:0~8%、及び/又はAl2O3:0~5%、及び/又は清澄剤:0~1%、前記Rn2OはLi2O、Na2O、K2Oの一種又は複数種であり、前記清澄剤はSb2O3、SnO、SnO2、CeO2の一種又は複数種である。
【請求項3】
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス:
SiO2:2~15%、B2O3:5~20%、La2O3:25~45%、ZrO2:1~12%、TiO2:7~22%、Nb2O5:5~20%、RO:7~35%、Y2O3:0~8%、Gd2O3:0~8%、Yb2O3:0~5%、ZnO:0~8%、Rn2O:0~8%、GeO2:0~5%、WO3:0~5%、Ta2O5:0~8%、Al2O3:0~5%、清澄剤:0~1%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量であり、前記Rn2OはLi2O、Na2O、K2Oの一種又は複数種であり、前記清澄剤はSb2O3、SnO、SnO2、CeO2の一種又は複数種である。
【請求項4】
重量%で成分を含み、以下の9つの状況の一つ又は複数を満たす、請求項1に記載の光学ガラス:
1) CaO/(SiO2+ZrO2)は0.01~2.0;
2) (B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)は0.1~1.0;
3) (Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が1.0以下であり;
4) (SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)は0.2~1.0;
5) B2O3の含有量はSiO2の含有量よりも多い;
6) (SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)は0.15~1.0;
7) ZnO/CaOが2.0以下であり;
8) RO/Nb2O5は0.5~5.0;
9) (La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROは0.8~5.0であり、
前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量である。
【請求項5】
重量%で成分を含み、以下の8つの状況の一つ又は複数を満たす、請求項1に記載の光学ガラス:
1) CaO/(SiO2+ZrO2)は0.02~1.5;
2) (B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)は0.1~0.8;
3) (Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が0.8以下であり;
4) (SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)は0.25~0.9;
5) (SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)は0.2~0.8;
6) ZnO/CaOが1.5以下であり;
7) RO/Nb2O5は0.6~3.0;
8) (La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROは1.0~4.0であり、
前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量である。
【請求項6】
重量%で成分を含み、以下の8つの状況の一つ又は複数を満たす、請求項1に記載の光学ガラス:
1) CaO/(SiO2+ZrO2)は0.05~1.0;
2) (B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)は0.2~0.6;
3) (Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が0.5以下であり;
4) (SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)は0.3~0.8;
5) (SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)は0.25~0.65;
6) ZnO/CaOが1.0以下であり;
7) RO/Nb2O5は0.8~2.5;
8) (La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROは1.2~3.0であり、
前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量である。
【請求項7】
重量%で成分を含み、以下の8つの状況の一つ又は複数を満たす、請求項1に記載の光学ガラス:
1) CaO/(SiO2+ZrO2)は0.08~0.7;
2) (B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)は0.25~0.5;
3) (Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が0.2以下であり;
4) (SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)は0.4~0.6;
5) (SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)は0.3~0.5;
6) ZnO/CaOが0.5以下であり;
7) RO/Nb2O5は1.0~2.0;
8) (La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROは1.5~2.5であり、
前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量である。
【請求項8】
重量%で以下の成分を含む、請求項1に記載の光学ガラス:
SiO2:3~13%、及び/又はB2O3:8~18%、及び/又はLa2O3:28~40%、及び/又はZrO2:2~10%、及び/又はTiO2:10~20%、及び/又はRO:10~30%、及び/又はY2O3:0~4%、及び/又はGd2O3:0~4%、及び/又はYb2O3:0~3%、及び/又はNb2O5:6~15%、及び/又はZnO:0~5%、及び/又はRn2O:0~5%、及び/又はGeO2:0~3%、及び/又はWO3:0~3%、及び/又はTa2O5:0~5%、及び/又はAl2O3:0~3%、及び/又は清澄剤:0~0.5%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量であり、前記Rn2OはLi2O、Na2O、K2Oの一種又は複数種であり、前記清澄剤はSb2O3、SnO、SnO2、CeO2の一種又は複数種である。
【請求項9】
重量%で以下の成分を含む、請求項1に記載の光学ガラス:
SiO2:6~11%、及び/又はB2O3:9~15%、及び/又はLa2O3:31~38%、及び/又はZrO2:3~8%、及び/又はTiO2:12~18%、及び/又はRO:12~25%、及び/又はY2O3:0~2%、及び/又はGd2O3:0~2%、及び/又はYb2O3:0~1%、及び/又はNb2O5:8~13%、及び/又はZnO:0~2%、及び/又はRn2O:0~3%、及び/又はGeO2:0~1%、及び/又はWO3:0~1%、及び/又はTa2O5:0~1%、及び/又はAl2O3:0~1%、及び/又は清澄剤:0~0.2%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量であり、前記Rn2OはLi2O、Na2O、K2Oの一種又は複数種であり、前記清澄剤はSb2O3、SnO、SnO2、CeO2の一種又は複数種である。
【請求項10】
重量%で以下の成分を含む、請求項1に記載の光学ガラス:
BaO:7~22%、及び/又はSrO:0~10%、及び/又はCaO:0~10%、及び/又はMgO:0~10%である。
【請求項11】
重量%で以下の成分を含む、請求項1に記載の光学ガラス:
BaO:11~17%、及び/又はSrO:0~2%、及び/又はCaO:1~6%、及び/又はMgO:0~2%である。
【請求項12】
前記成分がWO3を含まない、及び/又はTa2O5を含まない、及び/又はAl2O3を含まない、及び/又はGeO2を含まない、及び/又はY2O3を含まない、及び/又はGd2O3を含まない、及び/又はSrOを含まない、及び/又はMgOを含まない、及び/又はYb2O3を含まない、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項13】
前記光学ガラスの屈折率ndは1.90~1.97、アッベ数νdは24~32である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項14】
前記光学ガラスの屈折率ndは1.92~1.95、アッベ数νdは26~29である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項15】
前記光学ガラスの熱膨張係数α20/120℃が95×10-7/K以下、及び/又は耐水安定性DWが2類以上、及び/又は耐候性CRが2類以上、及び/又は転移温度Tgが690℃以下、及び/又は密度ρが4.80g/cm3以下、及び/又は気泡度がA級以上、及び/又は結晶上限温度が1180℃以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項16】
前記光学ガラスの熱膨張係数α20/120℃が85×10-7/K以下、及び/又は耐水安定性DWが1類、及び/又は耐候性CRが1類、及び/又は転移温度Tgが670℃以下、及び/又は密度ρが4.60g/cm3以下、及び/又は気泡度がA00級以上、及び/又は結晶上限温度が1130℃以下である、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の光学ガラスを用いて製造される、ガラスプリフォーム。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の光学ガラスを用いて製造される、光学素子。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載の光学ガラスを含む、光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学ガラスに関し、特に屈折率が1.90~1.97、アッベ数が24~32である光学ガラス、及びそれからなるガラスプリフォーム、光学素子及び光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学と電子情報科学、新材料科学の融合に伴い、光電子の基礎材料とする光学ガラスの光伝送、光貯蔵と光電表示などの技術分野での応用が飛躍的に拡大しつつある。近年、光学素子と光学機器はデジタル化、集積化、高精細化の面で急速に発展し、光学機器と機器に用いられる光学ガラスの性能に対してより高い要求を出していた。
【0003】
屈折率が1.90~1.97、アッベ数が24~32である光学ガラスは、光学設計と光通信分野における光学システムの簡略化、結像品質の向上に非常に重要な意義を持っている。従来技術では、光学ガラスの化学的安定性が比較的低いため、ガラス加工時又は使用時に、酸、アルカリ、水などの物質に接触して損傷を受けやすく、光学ガラスの使用寿命を短縮する欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、屈折率が1.90~1.97、アッベ数が24~32であり、化学的安定性に優れた光学ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が技術的課題を解決するために採用する技術方案は次のとおりである。
【0006】
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス:SiO2:2~15%、B2O3:5~20%、La2O3:25~45%、ZrO2:1~12%、TiO2:7~22%、Nb2O5:5~20%、RO:7~35%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量である。
【0007】
さらに、重量%で以下の成分をさらに含む、前記光学ガラス:Y2O3:0~8%、及び/又はGd2O3:0~8%、及び/又はYb2O3:0~5%、及び/又はZnO:0~8%、及び/又はRn2O:0~8%、及び/又はGeO2:0~5%、及び/又はWO3:0~5%、及び/又はTa2O5:0~8%、及び/又はAl2O3:0~5%、及び/又は清澄剤:0~1%、前記Rn2OはLi2O、Na2O、K2Oの一種又は複数種であり、清澄剤はSb2O3、SnO、SnO2、CeO2の一種又は複数種である。
【0008】
重量%で以下の成分を含む、光学ガラス:SiO2:2~15%、B2O3:5~20%、La2O3:25~45%、ZrO2:1~12%、TiO2:7~22%、Nb2O5:5~20%、RO:7~35%、Y2O3:0~8%、Gd2O3:0~8%、Yb2O3:0~5%、ZnO:0~8%、Rn2O:0~8%、GeO2:0~5%、WO3:0~5%、Ta2O5:0~8%、Al2O3:0~5%、清澄剤:0~1%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量であり、Rn2OはLi2O、Na2O、K2Oの一種又は複数種であり、清澄剤はSb2O3、SnO、SnO2、CeO2の一種又は複数種である。
【0009】
さらに、重量%で以下の成分を含む、光学ガラス:CaO/(SiO2+ZrO2)が0.01~2.0、好ましくはCaO/(SiO2+ZrO2)が0.02~1.5、より好ましくはCaO/(SiO2+ZrO2)が0.05~1.0、さらに好ましくはCaO/(SiO2+ZrO2)が0.08~0.7である。
【0010】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス:(B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)が0.1~1.0、好ましくは(B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)が0.1~0.8、より好ましくは(B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)が0.2~0.6、さらに好ましくは(B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)が0.25~0.5である。
【0011】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス:(Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が1.0以下、好ましくは(Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が0.8以下、より好ましくは(Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が0.5以下、さらに好ましくは(Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が0.2以下である。
【0012】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス:(SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)が0.2~1.0、好ましくは(SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)が0.25~0.9、より好ましくは(SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)が0.3~0.8、さらに好ましくは(SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)が0.4~0.6である。
【0013】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス:B2O3の含有量がSiO2の含有量よりも高く、及び/又は(SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)が0.15~1.0、好ましくは(SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)が0.2~0.8、より好ましくは(SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)が0.25~0.65、さらに好ましくは(SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)が0.3~0.5である。
【0014】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス:ZnO/CaOが2.0以下、好ましくはZnO/CaOが1.5以下、より好ましくはZnO/CaOが1.0以下、さらに好ましくはZnO/CaOが0.5以下である。
【0015】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス:RO/Nb2O5が0.5~5.0、好ましくはRO/Nb2O5が0.6~3.0、より好ましくはRO/Nb2O5が0.8~2.5、さらに好ましくはRO/Nb2O5が1.0~2.0、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量である。
【0016】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス:(La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROが0.8~5.0、好ましくは(La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROが1.0~4.0、より好ましくは(La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROが1.2~3.0、さらに好ましくは(La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROが1.5~2.5、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量である。
【0017】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス:SiO2:3~13%、好ましくはSiO2:6~11%、及び/又はB2O3:8~18%、好ましくはB2O3:9~15%、及び/又はLa2O3:28~40%、好ましくはLa2O3:31~38%、及び/又はZrO2:2~10%、好ましくはZrO2:3~8%、及び/又はTiO2:10~20%、好ましくはTiO2:12~18%、及び/又はRO:10~30%、好ましくはRO:12~25%、及び/又はY2O3:0~4%、好ましくはY2O3:0~2%、及び/又はGd2O3:0~4%、好ましくはGd2O3:0~2%、及び/又はYb2O3:0~3%、好ましくはYb2O3:0~1%、及び/又はNb2O5:6~15%、好ましくはNb2O5:8~13%、及び/又はZnO:0~5%、好ましくはZnO:0~2%、及び/又はRn2O:0~5%、好ましくはRn2O:0~3%、及び/又はGeO2:0~3%、好ましくはGeO2:0~1%、及び/又はWO3:0~3%、好ましくはWO3:0~1%、及び/又はTa2O5:0~5%、好ましくはTa2O5:0~1%、及び/又はAl2O3:0~3%、好ましくはAl2O3:0~1%、及び/又は清澄剤:0~0.5%、好ましくは清澄剤:0~0.2%、前記ROはMgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量であり、Rn2OはLi2O、Na2O、K2Oの一種又は複数種であり、清澄剤はSb2O3、SnO、SnO2、CeO2の一種又は複数種である。
【0018】
さらに、重量%で以下の成分を含む、前記光学ガラス:BaO:7~22%、好ましくはBaO:10~20%、より好ましくはBaO:11~17%、及び/又はSrO:0~10%、好ましくはSrO:0~5%、より好ましくはSrO:0~2%、及び/又はCaO:0~10%、好ましくはCaO:0.5~8%、より好ましくはCaO:1~6%、及び/又はMgO:0~10%、好ましくはMgO:0~5%、より好ましくはMgO:0~2%である。
【0019】
さらに、前記成分がWO3を含まない、及び/又はTa2O5を含まない、及び/又はAl2O3を含まない、及び/又はGeO2を含まない、及び/又はY2O3を含まない、及び/又はGd2O3を含まない、及び/又はSrOを含まない、及び/又はMgOを含まない、及び/又はYb2O3を含まない、前記光学ガラス。
【0020】
さらに、前記光学ガラスの屈折率ndが1.90~1.97、好ましくは1.91~1.96、より好ましくは1.92~1.95、アッベ数νdが24~32、好ましくは25~30、より好ましくは26~29である。
【0021】
さらに、前記光学ガラスの熱膨張係数α20/120℃が95×10-7/K以下、好ましくは90×10-7/K以下、より好ましくは85×10-7/K以下、及び/又は耐水安定性DWが2類以上、好ましくは1類、及び/又は耐候性CRが2類以上、好ましくは1類、及び/又は転移温度Tgが690℃以下、好ましくは680℃以下、より好ましくは670℃以下、及び/又は密度ρが4.80g/cm3以下、好ましくは4.70g/cm3以下、より好ましくは4.60g/cm3以下、さらに好ましくは4.50g/cm3以下、及び/又は気泡度はA級以上、好ましくはA0級以上、より好ましくはA00級、及び/又は結晶上限温度は1180℃以下、好ましくは1150℃以下、より好ましくは1130℃以下である。
【0022】
上記の光学ガラスを用いて製造される、ガラスプリフォーム。
【0023】
上記の光学ガラス、又は上記のガラスプリフォームを用いて製造される、光学素子。
【0024】
上記の光学ガラス、及び/又は上記の光学素子を含む、光学機器。
【発明の効果】
【0025】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。合理的な成分設計により、本発明により得られる光学ガラスは、所望の屈折率とアッベ数を有すると同時に、優れた化学的安定性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明にかかる光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で適宜変形して実施することが可能である。さらに、適宜省略はあるものの、記載を繰り返すことによって本発明の主旨が限定されるものではなく、以下では、本発明の光学ガラスを単にガラスと称することもある。
【0027】
[光学ガラス]
以下に、本発明の光学ガラスの成分の範囲について説明する。本説明書において、各成分の含有量及び合計含有量は、特に指定のない限り、重量パーセント(wt%)で表すものとする。すなわち、各成分の含有量、合計含有量は、酸化物組成物に換算するガラス物質の総重量に対する重量パーセントで表す。ここでいう「酸化物組成物に換算した」とは、本発明の光学ガラスの組成物の原料として用いた酸化物、錯塩、水酸化物等が溶融時に分解して酸化物に変換された場合の酸化物物質の総重量を100%とした場合のことである。
【0028】
具体的には、本明細書に記載されている数値範囲には、上限値及び下限値が含まれ、「以上」及び「以下」には端点値、並びに範囲に含まれるすべての整数及び分数が含まれ、範囲が限定されている場合に記載されている具体的な値に限定されるものではない。本明細書で「及び/又は」と呼ばれるものは包括的であり、例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、又はAとBの両方を意味する。
【0029】
<必須成分とオプション成分>
SiO2は光学定数を調整し、ガラスの化学的安定性を改善し、溶融ガラスに適した粘度を維持し、摩耗度と耐火物への浸食を低下させることができ、本発明では上記の効果を得るために2%以上のSiO2を添加しており、好ましくはSiO2の含有量が3%以上、より好ましくはSiO2の含有量が6%以上である。SiO2の含有量が高すぎると、ガラスの溶融難度が増加し、転移温度が上昇する。従って、本発明においては、SiO2の含有量上限値は15%、好ましくは13%、より好ましくは11%である。
【0030】
B2O3はガラスの溶融性と耐失透性を高め、ガラスの転移温度を下げることに有利であり、本発明は上記の効果を得るために5%以上のB2O3を添加しており、好ましくはB2O3の含有量が8%、より好ましくはB2O3の含有量が9%以上である。B2O3の含有量が高すぎると、ガラスの化学的安定性が悪くなり、特に耐水性が悪くなり、ガラスの屈折率と光透過率が低下する。したがって、B2O3の含有量が20%以下、好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下である。本発明のいくつかの実施形態において、B2O3の含有量がSiO2の含有量よりも大きい場合、ガラスの耐候性と気泡度を向上させ、ガラスの良好な摩耗度を得るのに有利である。
【0031】
La2O3はガラスの屈折率を高める有効な成分であり、ガラスの化学的安定性と耐失透性を改善する効果が顕著であり、その含有量が25%未満である場合は、必要な光学定数を達成することが困難であり、含有量が45%を超えると、ガラスの失透傾向が逆に増大し、熱安定性が悪くなる。従って、La2O3の含有量が25~45%、好ましくは28~40%、より好ましくは31~38%である。
【0032】
Y2O3はガラスの屈折率と耐失透性を高めることができ、その含有量が8%を超えると、ガラスの化学的安定性と耐候性が悪くなる。従って、本発明においては、Y2O3の含有量が0~8%、好ましくは0~4%、より好ましくは0~2%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはY2O3を含まない。
【0033】
Gd2O3はガラスの屈折率と化学的安定性を高めることができるが、その含有量が8%を超えると、ガラスの耐失透性と摩耗度が悪くなる。従って、Gd2O3の含有量が0~8%、好ましくは0~4%、より好ましくは0~2%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはGd2O3を含まない。
【0034】
Yb2O3もガラスに高屈折性、低分散性を付与する成分であり、その含有量が5%を超えると、ガラスの耐結晶性が低下する。したがって、Yb2O3の含有量が0~5%、好ましくは0~3%、より好ましくは0~1%、さらに好ましくはYb2O3を含まない。
【0035】
ZrO2は光学ガラスの粘度、硬度、屈折率と化学的安定性を高めることができ、ガラスの熱膨張係数を下げることもできるが、ZrO2の含有量が高すぎると、ガラスの耐失透性が低下し、溶融難度が増加し、溶融温度が上昇し、ガラス内部に介在物が発生し、光透過率が低下する。従って、本発明においては、ZrO2の含有量が1~12%、好ましくは2~10%、より好ましくは3~8%である。
【0036】
MgOはガラスの相対部分分散を効果的に低減することができるが、MgOの含有量が高すぎると、ガラスの屈折率が設計要件を満たさなくなり、ガラスの耐結晶性及び安定性が低下する。従って、MgOの含有量が0~10%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~2%に限定される。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはMgOを含まない。
【0037】
CaOはガラスの光学定数を調整し、ガラスの化学的安定性を高め、ガラスの加工性を改善し、ガラスの高温粘度と表面張力を下げ、ガラスの生産難度を下げることができるが、その含有量が高すぎると、ガラスの耐失透性が低下する。従って、CaOの含有量が0~10%、好ましくは0.5~8%、より好ましくは1~6%である。
【0038】
いくつかの実施形態において、CaOはSiO2及びZrO2の合計含有量SiO2+ZrO2との比CaO/(SiO2+ZrO2)を0.01~2.0以内に制御することにより、ガラスの摩耗度及び耐候性を最適化し、ガラスの密度上昇及び硬度劣化を防止することができる。したがって、好ましくはCaO/(SiO2+ZrO2)が0.01~2.0、より好ましくはCaO/(SiO2+ZrO2)が0.02~1.5、さらに好ましくはCaO/(SiO2+ZrO2)が0.05~1.0、よりさらに好ましくはCaO/(SiO2+ZrO2)が0.08~0.7である。
【0039】
SrOはガラスに添加することでガラスの屈折率とアッベ数を調整することができるが、その含有量が高すぎると、ガラスの化学的安定性と耐失透性が低下する。従って、SrOの含有量が0~10%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~2%に限定される。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはSrOを含まない。
【0040】
BaOはガラスの屈折率、溶融性と熱安定性を高め、ガラスの摩耗度と光透過率を改善することができるが、その含有量が高すぎると、ガラスの密度が増加し、耐失透性が低下する。従って、BaOの含有量が7~22%、好ましくは10~20%、より好ましくは11~17%である。
【0041】
いくつかの実施形態において、アルカリ土類金属酸化物MgO、CaO、SrO、BaOの合計含有量ROを7~35%以内に制御することにより、ガラスが所望の光学定数を得やすくなり、ガラスの化学的安定性を最適化し、ガラスの耐失透性の低下を防止することができる。したがって、好ましくはROが7~35%、より好ましくはROが10~30%、さらに好ましくはROが12~25%である。
【0042】
いくつかの実施形態において、La2O3、Gd2O3、Y2O3の合計含有量La2O3+Gd2O3+Y2O3とROの含有量との比(La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROを0.8~5.0の範囲に制御することにより、ガラスが所望の屈折率とアッベ数を得やすくなり、ガラスの化学的安定性を高め、転移温度と熱膨張係数の上昇を防止することができる。したがって、好ましくは(La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROが0.8~5.0、より好ましくは(La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROが1.0~4.0、さらに好ましくは(La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROが1.2~3.0、よりさらに好ましくは(La2O3+Gd2O3+Y2O3)/ROが1.5~2.5である。
【0043】
ZnOはガラスの屈折率と分散を調整し、ガラスの高温粘度と転移温度を下げることができる。ZnOの含有量が高すぎると、ガラスの耐失透性が悪くなる。従って、ZnOの含有量が0~8%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~2%である。
【0044】
いくつかの実施形態において、ZnOの含有量とCaOの含有量との比ZnO/CaOを2.0以下に制御することにより、ガラスの耐候性と耐結晶性の低下を防止し、優れた耐候性と耐結晶性を得ることができる。したがって、好ましくはZnO/CaOが2.0以下、より好ましくはZnO/CaOが1.5以下である。さらに、ZnO/CaOを1.0以下に制御することにより、ガラスの気泡度をさらに最適化することもできる。したがって、さらに好ましくはZnO/CaOが1.0以下、よりさらに好ましくはZnO/CaOが0.5以下である。
【0045】
TiO2はガラスの屈折率と分散を高め、ガラスの耐失透性を改善することができるが、含有量が高すぎると分散係数を大幅に低下させ、結晶傾向を増加させ、ガラスを明らかに着色させることもある。従って、TiO2の含有量が7~22%、好ましくは10~20%、より好ましくは12~18%に限定される。
【0046】
いくつかの実施形態において、B2O3及びSrOの合計含有量B2O3+SrOとCaO、BaO、TiO2の合計含有量CaO+BaO+TiO2との比(B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)を0.1~1.0以内に制御することにより、ガラスの耐結晶性と耐候性の向上に有利である。したがって、好ましくは(B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)が0.1~1.0、より好ましくは(B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)が0.1~0.8である。さらに、(B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)を0.2~0.6以内に制御することにより、ガラスの熱膨張係数と密度をさらに低減することができる。したがって、さらに好ましくは(B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)が0.2~0.6、よりさらに好ましくは(B2O3+SrO)/(CaO+BaO+TiO2)が0.25~0.5である。
【0047】
Nb2O5は高屈折高分散成分であり、ガラスの屈折率と耐失透性を高め、ガラスの熱膨張係数を低減することができ、本発明は、上記の効果を得るために5%以上Nb2O5を添加しており、好ましくはNb2O5の含有量が6%以上、より好ましくは8%以上である。Nb2O5の含有量が20%を超えると、ガラスの熱安定性及び耐候性が低下し、光透過率が低下するので、本発明におけるNb2O5の含有量が20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下である。
【0048】
いくつかの実施形態において、SiO2とBaOの合計含有量SiO2+BaOとLa2O3とNb2O5の合計含有量La2O3+Nb2O5との比(SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)を0.2~1.0以内に制御することにより、ガラスの耐候性を高め、ガラスの熱膨張係数を低減することができる。したがって、好ましくは(SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)が0.2~1.0、より好ましくは(SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)が0.25~0.9である。さらに、(SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)を0.3~0.8以内に制御することにより、ガラスの気泡度とストライプをさらに最適化することができる。したがって、さらに好ましくは(SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)が0.3~0.8、よりさらに好ましくは(SiO2+BaO)/(La2O3+Nb2O5)が0.4~0.6である。
【0049】
いくつかの実施形態において、SiO2及びNb2O5の合計含有量SiO2+Nb2O5とB2O3及びLa2O3の合計含有量B2O3+La2O3との比(SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)を0.15~1.0以内に制御することにより、ガラスの密度を低下させ、ガラスの気泡度を最適化することができる。したがって、好ましくは(SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)が0.15~1.0、より好ましくは(SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)が0.2~0.8である。さらに、(SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)を0.25~0.65以内に制御することにより、ガラスの摩耗度と耐結晶性をさらに最適化することができるしたがって、さらに好ましくは(SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)が0.25~0.65、よりさらに好ましくは(SiO2+Nb2O5)/(B2O3+La2O3)が0.3~0.5である。
【0050】
いくつかの実施形態において、ROの含有量とNb2O5の含有量との比RO/Nb2O5を0.5~5.0以内に制御することにより、ガラスの転移温度を低下させ、ガラスの化学的安定性を高めることができる。したがって、好ましくはRO/Nb2O5が0.5~5.0、より好ましくはRO/Nb2O5が0.6~3.0である。さらに、RO/Nb2O5を0.8~2.5以内に制御するにより、ガラスの熱膨張係数をさらに低減し、ガラスの気泡度を最適化することもできる。したがって、さらに好ましくはRO/Nb2O5が0.8~2.5、よりさらに好ましくはRO/Nb2O5が1.0~2.0である。
【0051】
Ta2O5は屈折率を高め、ガラスの耐失透性を高めることができるが、その含有量が高すぎると、ガラスの熱安定性が低下し、密度が増大し、光学定数を所望の範囲に制御することが困難になる。一方、他の成分と比較して、Ta2O5は非常に高価であり、実用性かつコストの観点から、使用量をできるだけ減らす必要がある。したがって、本発明におけるTa2O5の含有量が0~8%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~1%に限定される。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはTa2O5を含まない。
【0052】
いくつかの実施形態において、Gd2O3、Y2O3、Ta2O5の合計含有量Gd2O3+Y2O3+Ta2O5とTiO2の含有量との比(Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2を1.0以下に制御することにより、ガラスの化学的安定性と耐結晶性を向上させることができる。したがって、好ましくは(Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が1.0以下、より好ましくは(Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が0.8以下である。さらに、(Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2を0.5以下に制御することにより、ガラスの気泡度をさらに最適化し、ガラスの転移温度を下げることができる。したがって、さらに好ましくは(Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が0.5以下、よりさらに好ましくは(Gd2O3+Y2O3+Ta2O5)/TiO2が0.2以下である。
【0053】
アルカリ性金属酸化物Rn2O(Rn2OはLi2O、Na2O、K2Oの一種又は複数種)は、ガラスの転移温度を下げ、ガラスの光学定数及び高温粘度を調整し、ガラスの溶融性を改善することができるが、その含有量が高いと、ガラスの耐失透性と化学的安定性が低下する。従って、本発明においては、Rn2Oの含有量が0~8%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~3%である。
【0054】
WO3はガラスの屈折率と機械的強度を高めることができるが、WO3の含有量が5%を超えると、ガラスの熱安定性が低下し、耐失透性が低下する。したがって、WO3の含有量の上限値は5%、好ましくは3%、より好ましくは1%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはWO3を含まない。
【0055】
Al2O3はガラスの化学的安定性を改善することができるが、その含有量が5%を超えると、ガラスの溶融性と光透過率が悪くなる。従って、本発明においては、Al2O3の含有量が0~5%、好ましくは0~3%、より好ましくは0~1%である。いくつかの実施形態では、さらに好ましくはAl2O3を含まない。
【0056】
GeO2は屈折率と耐失透性を高めることができるが、その含有量が高すぎると、ガラスの化学的安定性が低下する。また、GeO2は他の成分に比べて非常に高価であり、実用性かつコストの観点から使用量をできるだけ減らす必要がある。したがって、本発明におけるGeO2の含有量が0~5%、好ましくは0~3%、より好ましくは0~1%に限定され、さらに好ましくはGeO2を含まない。
【0057】
本発明は、清澄剤としてSb2O3、SnO、SnO2、CeO2の一種又は複数種を0~1%添加することにより、ガラスの清澄効果を高め、ガラスの気泡度を向上させることができ、好ましくは清澄剤の含有量が0~0.5%、より好ましくは清澄剤の含有量が0~0.2%である。本発明の光学ガラスの成分の種類及び含有量の設計が合理的であり、その気泡度が優れているため、いくつかの実施形態において、好ましくは清澄剤を含まない。Sb2O3の含有量が1%を超えると、ガラスの清澄性能が低下する傾向があると同時に、その強い酸化作用によりガラスの溶融用白金又は白金合金容器の腐食及び成形金型の劣化が加速するので、本発明におけるSb2O3の含有量は、好ましくは0~1%、より好ましくは0~0.5%、さらに好ましくは0~0.2%、よりさらに好ましくはSb2O3を含まない。SnO及びSnO2も清澄剤として使うことができるが、その含有量が1%を超えると、ガラスの着色傾向が増加したり、ガラスを加熱、軟化してプレス成形などで再成形するときに、Snが結晶核生成の起点となり、失透する傾向がある。したがって、本発明のSnO2の含有量は、好ましくは0~1%、より好ましくは0~0.5%、さらに好ましくは0~0.2%、よりさらに好ましくはSnO2を含まない。SnOの含有量は、好ましくは0~1%、より好ましくは0~0.5%、さらに好ましくは0~0.2%、よりさらに好ましくはSnOを含まない。CeO2の作用及び含有量の比率はSnO2と一致し、その含有量は、好ましくは0~1%、より好ましくは0~0.5%、さらに好ましくは0~0.2%、よりさらに好ましくはCeO2を含まない。
【0058】
<含まれるべきでない成分>
本発明のガラスにおいては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の遷移金属の酸化物は、単独又は複合的に少量に含まれる場合でも、ガラスが着色され、可視光領域における特定の波長が吸収され、本発明の可視光透過効果を弱めるので、特に可視光領域の波長透過率を要求する光学ガラスは、実際には含まないことが好ましい。
【0059】
Th、Cd、Tl、Os、Be及びSeの酸化物は、近年、有害な化学物質として使用を制御する傾向にあり、ガラスの製造工程だけでなく、加工工程及び完成品の処置に至るまで、環境保護への取り組みが必要である。そのため、環境への影響を重視する場合は、不可避な混入以外は、それらを含まないことが好ましい。これにより、光学ガラスは実際に環境を汚染する物質を含まなくなる。したがって、本発明の光学ガラスは、特殊な環境措置を講じなくても、製造、加工及び廃棄が可能である。
【0060】
環境に配慮するため、本発明の光学ガラスは、As2O3及びPbOを含まないことが好ましい。
【0061】
本明細書に記載されている「加えない」、「含まない」、「0%」という用語は、この成分を本発明のガラスの原料として意図的に添加しなかったことを意味する。しかし、ガラスを製造するための原料及び/又は設備として、意図的に添加されていない不純物や成分が、最終的なガラス中に少量又は微量に存在することがあり、それらも本発明の特許の対象となる。
【0062】
以下では、本発明の光学ガラスの特性について説明する。
【0063】
<屈折率とアッべ数>
光学ガラスの屈折率(nd)とアッべ数(νd)は、『GB/T 7962.1-2010』に規定された方法に従って試験される。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)の下限値が1.90、好ましくは下限値が1.91、より好ましくは下限値が1.92である。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)の上限値が1.97、好ましくは上限値が1.96、より好ましくは上限値が1.95である。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)の下限値が24、好ましくは下限値が25、より好ましくは下限値が26である。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)の上限値が32、好ましくは上限値が30、より好ましくは上限値が29である。
【0068】
<熱膨脹係数>
光学ガラスの熱膨張係数(α20/120℃)は、『GB/T 7962.16-2010』に規定された方法に従って20~120℃のデータを測定する。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの熱膨脹係数(α20/120℃)は95×10-7/K以下、好ましくは90×10-7/K以下、より好ましくは85×10-7/K以下である。
【0070】
<耐水安定性>
光学ガラスの耐水安定性(DW)(粉末法)は『GB/T 17129』に規定された方法で試験される。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの耐水安定性(DW)は2類以上、好ましくは1類である。
【0072】
<耐候性>
光学ガラスの耐候性(CR)の試験方法は以下の通りである:試料を相対湿度90%の飽和水蒸気環境の試験箱内に置き、40~50℃で1hごとに交互に循環し、15サイクル循環する。試料放置前後の濁度変化量に基づいて耐候性分類を区分し、耐候性分類を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの耐候性(CR)は2類以上、好ましくは1類である。
【0075】
<気泡度>
光学ガラスの気泡度は、『GB/T 7962.8-2010』に規定された方法に従って試験されている。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明の光学ガラスの気泡度がA級以上、好ましくはA0級以上、より好ましくはA00級である。
【0077】
<密度>
光学ガラスの密度(ρ)は、『GB/T 7962.20-2010』に記載された方法に従って試験されている。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの密度(ρ)は4.80g/cm3以下、好ましくは4.70g/cm3以下、より好ましくは4.60g/cm3以下、さらに好ましくは4.50g/cm3以下である。
【0079】
<転移温度>
光学ガラスの転移温度(Tg)は、『GB/T 7962.16-2010』に規定された方法に従って測定されている。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの転移温度(Tg)は690℃以下、好ましくは680℃以下、より好ましくは670℃以下である。
【0081】
<結晶上限温度>
温度勾配炉法を用いて光学ガラスの耐結晶性を測定し、180×10×10mmのガラスのサンプルを作製し、側面を研磨し、温度勾配(10℃/cm)のある最高温度領域の温度が1200℃である炉内で4時間保温した後、取り出して室温まで自然冷却し、顕微鏡でガラスの結晶状況を観察し、結晶が確認された時の最高温度を、すなわちガラスの結晶上限温度とする。ガラスの結晶上限温度が低いほど、ガラスの耐結晶性がより優れる。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明の光学ガラスの結晶上限温度が1180℃以下、好ましくは1150℃以下、より好ましくは1130℃以下である。
【0083】
[光学ガラスの製造方法]
本発明の光学ガラスの製造方法は以下の通りである:酸化物、水酸化物、錯塩(炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩など)、ホウ酸などを含むがこれらに限定されない一般原料と従来の工程で製造され、常法により混合した後、調製した炉材を1200℃~1500℃の溶融炉(白金又は白金合金坩堝)に投入して溶融する。その後、清澄化、均一化して、気泡及び未溶解物質のない均質な溶融ガラスを得るとともに、この溶融ガラスを金型に入れて鋳造し、焼きなましする。当業者であれば、実際の必要に応じて、原料、製法及びプロセスパラメータを適宜選択することができる。
【0084】
[ガラスプリフォーム及び光学素子]
直接滴下成形や研磨加工、又は熱プレス成形などのプレス成形加工方法を用いて、作製された光学ガラスを用いてガラスプリフォームを製造することができる。すなわち、直接精密滴下成形により溶融した光学ガラスを精密なガラスプリフォームに製造するか、研削や研磨などの機械加工によりガラスプリフォームを製造するか、光学ガラスを使用してプレス成形用のプリフォームブランクを作製し、このプリフォームブランクを熱プレス加工して研磨し、ガラスプリフォームを作製することができる。なお、光学プリフォームの製造手段は上記手段に限定されないことを説明したい。
【0085】
上記のように、本発明の光学ガラスは、各種光学素子及び光学設計に有用であり、特に本発明の光学ガラスからブランクを形成し、このブランクを用いて熱プレス成形、精密プレス成形等を行い、レンズ、プリズム等の光学素子を作製することが好ましい。
【0086】
本発明の光学プリフォーム及び光学素子は、いずれも上記本発明の光学ガラスから形成さる。本発明の光学プリフォームは、光学ガラスが備えている優れた特性を有し、本発明の光学素子は、光学ガラスが備えている優れた特性を有し、光学的価値の高いさまざまなレンズ、プリズム等の光学素子を提供することができる。
【0087】
レンズの例としては、レンズ表面が球面又は非球面の凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどのさまざまなレンズが挙げられる。
【0088】
[光学機器]
本発明の光学ガラスにより形成される光学素子は、写真装置、撮像装置、投影装置、表示装置、車載装置及び監視装置などの光学機器を製造することができる。
【0089】
実施例
<光学ガラスの実施例>
本発明の技術的解決策をさらに明確に説明するために、以下の非限定的な実施例を提供する。
【0090】
本実施例は、上記光学ガラスの製造方法を用いて、表2-1~表4-2に示す成分を有する光学ガラスを得る。また、各ガラスの特性を本発明に記載の試験方法により測定し、その結果を表2-1~表4-2に表した。
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
【表7】
【0097】
<ガラスプリフォームの実施例>
光学ガラスの実施例1~24#で得られたガラスは、研磨加工手段、又は再熱プレス成形、精密プレス成形などのプレス成形手段を用いて、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどの様々なレンズ、プリズムなどのプリフォームを製造する。
【0098】
<光学素子の実施例>
上記ガラスプリフォームの実施例で得られたこれらのプリフォームをアニールし、屈折率などの光学特性が所望の値に達するようにガラス内部の応力を低下させながら屈折率を微調整する。
【0099】
次に、各プリフォームを研削し、研磨し、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどのさまざまなレンズ、プリズムを作製する。得られた光学素子の表面には反射防止膜を塗布することもできる。
【0100】
<光学機器の実施例>
上記光学素子の実施例で製造された光学素子は、光学設計により、1つ又は複数の光学素子を用いて光学部品又は光学コンポーネントを形成することにより、撮像装置、センサ、顕微鏡、医薬技術、デジタル投影、通信、光学通信技術/情報伝送、自動車分野における光学/照明、フォトリソグラフィ技術、エキシマレーザ、ウエハ、コンピュータチップ及びこのような回路及びチップを含む集積回路及び電子デバイスに用いることができる。