(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031958
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造と、その調製方法、使用法及び経口剤形
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20240229BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20240229BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20240229BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240229BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240229BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240229BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20240229BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240229BHJP
A61K 36/07 20060101ALI20240229BHJP
A61K 31/4172 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/175
A61K9/50
A61K47/22
A61K47/36
A61K47/10
A61P1/10
A61K47/42
A61K36/07
A61K31/4172
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136422
(22)【出願日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】111132345
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523322944
【氏名又は名称】樂蕈生技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LeShroom Corporation Limited
【住所又は居所原語表記】No.97,Sec.4,Chongqing N.Rd.,Shilin Dist.,Taipei City111,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】顏添財
(72)【発明者】
【氏名】朱瑞宗
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE02
4B018MD08
4B018MD19
4B018MD33
4B018MD82
4B018ME04
4B018ME06
4B018ME11
4B018ME14
4B018MF08
4C076AA62
4C076AA64
4C076BB01
4C076CC16
4C076DD38
4C076DD60
4C076EE30
4C076EE42H
4C076GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA38
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZA72
4C088AA02
4C088CA05
4C088MA02
4C088MA38
4C088MA52
4C088NA05
4C088NA10
4C088ZA72
(57)【要約】
【課題】プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造、その調製方法、使用法及び経口剤形を提供する。
【解決手段】本発明に係る前記マイクロカプセル構造は、複数の孔を有するコア層及び付着層を備え、前記孔は互いに連通されるか、連通されないか、部分的に連通されるか、或いは部分的に連通されず、前記付着層は前記コア層及び前記孔の部分的な表面又は全表面に濃縮液を噴霧して形成される。濃縮液は複数種のプレバイオティクスを含み、コア層はキノコ類子実体粒子で形成される。各マイクロカプセル構造に豊富に含まれる多糖体、ポリフェノール及びエルゴチオネインの含有量を増加させて、マイクロカプセル構造が人体に対しヘルスケア効果を有する薬用活性成分の濃度を確保し、従来大量の食用キノコが必要で不便であり、消化吸収も難しく、過剰摂取していた欠点を解決する。本発明は調製方法、使用法、及び経口剤形を更に提供する。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコア層(11)及び付着層(13)を備えているプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造であって、前記コア層(11)は複数の孔(12)を有し、これら前記孔(12)は互いに連通されるか、連通されないか、部分的に連通されるか、或いは部分的に連通されず、前記付着層(13)は前記コア層(11)及びこれら前記孔(12)の両者の部分的な表面または全表面に濃縮液を噴霧した後に形成され、前記濃縮液は、多糖体と、ポリフェノールと、エルゴチオネインと、を含み、前記コア層(11)はキノコ類子実体粒子で形成され、前記コア層(11)は不規則構造体、球体、楕円体、円柱体、或いは多面体であり、前記プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造(1)は同じ粒径または異なる粒径を有している複数の前記コア層(11)で構成されていることを特徴とするプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造。
【請求項2】
前記コア層(11)はエルゴチオネインを含むことを特徴とする請求項1に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造。
【請求項3】
前記コア層(11)は冷凍乾燥処理を経て取得することを特徴とする請求項1に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造。
【請求項4】
前記付着層(13)の重量及び前記コア層(11)の重量の比率は1:0.5~1:2.2であることを特徴とする請求項1に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造。
【請求項5】
便秘の改善及び宿便の解消に用いられるエルゴチオネインマイクロカプセルとして調製されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造。
【請求項6】
プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造(1)の調製に用いられるプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法(2)であって、
少なくとも1つの第1キノコ類子実体粒子をコア層(11)として提供し、前記コア層(11)は複数の孔(12)を有しているステップ(a)と、
造粒ステップにおいて、前記コア層(11)及びこれら前記孔(12)の両者の部分的な表面または全表面に濃縮液を噴霧した後に付着層(13)が形成され、前記濃縮液は、多糖体と、ポリフェノールと、エルゴチオネインと、を含み、前記付着層(13)の重量及び前記コア層(11)の重量の比率は1:0.5~1:2.2であるステップ(b)と、
を含むことを特徴とするプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法。
【請求項7】
前記濃縮液は第2キノコ類子実体が第2粉砕ステップ、抽出ステップ、及び濃縮ステップを順次経由することで製造されていることを特徴とする請求項6に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法。
【請求項8】
前記第2粉砕ステップでは、前記第2キノコ類子実体に溶剤を添加してキノコ類混合物を形成した後に粉砕し、前記キノコ類混合物は計100重量部に、10~80重量部の前記キノコ類子実体及び残りの重量部の前記溶剤を含み、前記溶剤は純水または20%~95%のエタノール溶液であることを特徴とする請求項7に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法。
【請求項9】
前記抽出ステップは、粉砕後の前記キノコ類混合物が熱水抽出ステップまたは超音波抽出ステップを経て抽出された後に第1抽出液が取得され、前記抽出ステップの所要時間は0.5~24時間であり、前記第1抽出液は遠心分離ステップを経た後に上澄み液が収集され、前記上澄み液は第2抽出液であることを特徴とする請求項7に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法。
【請求項10】
前記濃縮ステップは第2抽出液が減圧濃縮ステップまたは加熱濃縮ステップを経て濃縮された後に前記濃縮液が取得され、前記濃縮液の重量及び前記第2キノコ類子実体の重量の比率は0.1~0.3の間の範囲であることを特徴とする請求項7に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法。
【請求項11】
前記キノコ類子実体粒子は、第1キノコ類子実体が冷凍乾燥ステップ及び乾式研磨ステップを順次経由した後に製造されることを特徴とする請求項6に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法。
【請求項12】
前記冷凍乾燥ステップは前記第1キノコ類子実体を冷凍温度で冷凍し、前記冷凍温度は-20℃~-80℃であることを特徴とする請求項11に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法。
【請求項13】
前記乾式研磨ステップでは、冷凍後の前記第1キノコ類子実体を乾式研磨技術により前記キノコ類子実体粒子として研磨することを特徴とする請求項11に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法。
【請求項14】
前記キノコ類子実体粒子は第1スクリーンメッシュにより更に篩い分けることで取得し、前記第1スクリーンメッシュのメッシュサイズは80メッシュであることを特徴とする請求項13に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法。
【請求項15】
前記プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造(1)は、第2スクリーンメッシュにより更に篩い分けることで取得し、前記第2スクリーンメッシュのメッシュサイズは60メッシュであることを特徴とする請求項14に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法。
【請求項16】
前記第1キノコ類子実体または前記第2キノコ類子実体は椎茸、エノキタケ、エリンギ、タモギタケ、或いはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項6に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法。
【請求項17】
複数のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造(1)を含む経口剤形であって、前記プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造(1)は請求項6乃至請求項16の何れか1項に記載のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法(2)で製造され、前記経口剤形はゼラチンカプセル及び非ゼラチンカプセルから選ばれることを特徴とする経口剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセル構造に関し、更に詳しくは、キノコ類子実体粒子で形成されたコア層、及びコア層の表面に多糖体と、ポリフェノールと、エルゴチオネインと、を含む付着層が形成されているマイクロカプセル構造と、その調製方法、使用法及び経口剤形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サプリメントにおいて、キノコ類は古来より人々に愛されてきた食材の1つであり、キノコ類には複数種の機能性成分が豊富に含まれており、人体に対し体力増強、免疫力の向上、抗癌作用、血糖値及び血中脂質の調節等のヘルスケア効果を有している。キノコ類の機能性成分において、エルゴチオネインは強力な抗酸化活性及び抗炎症能力により、徐々に人々に重要視されるようになっている。また、キノコ類の多糖体は、血糖値やコレステロール値の低下、免疫の調節、及び腸内菌叢の調整による腸蠕動の促進等、人体の健康にとって有益な様々な効果を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エルゴチオネインは動物或いは植物の体内で合成することができず、飲食によってしか摂取できないため、キノコ類を摂取することがエルゴチオネインを獲得する最も有効的な方法であった。但し、人体に対するヘルスケア効果を発揮する濃度を獲得するためには、大量のキノコ類を摂取する必要があったが、キノコ類自体は高カリウム食物であるため、血中カリウム濃度が高い腎臓病患者及び尿酸値が高い通風患者には適さなかった。また、キノコ類は肉厚の細胞壁を有しているため、人体にとって消化しにくく、過量に摂取すると却って胃腸の負担が増し、胃腸の不調を引き起こした。さらには、エルゴチオネイン自体が水溶性の高い成分であるため、調理法が適切でなければ容易に流失した。
【0004】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、従来のキノコ類を直接調理することでエルゴチオネインを摂取する不便さを有効的に改善し、ユーザーが十分なエルゴチオネイン、ポリフェノール、及び多糖体等のプレバイオティクスをより容易に摂取可能にし、腸の機能を改善し、便秘を減少させる。
【0005】
従来は大量の食用キノコ類が必要であったために不便であり、過量に摂取することになったという欠点を解決するために、本発明はプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造と、その調製方法、使用法及び経口剤形を提供する。マイクロカプセル構造のそれぞれに豊富に含まれる多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネインの含有量を増加することで、マイクロカプセル中に十分な量の薬用活性成分濃度が含まれるように確保すると共に、キノコ類を直接摂取することに伴う欠点を減少させる。
【0006】
本発明は、プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造は、少なくとも1つのコア層及び付着層を備え、前記コア層は複数の孔を有している。これら前記孔は互いに連通されるか、連通されないか、部分的に連通されるか、或いは部分的に連通されない。前記付着層は前記コア層及びこれら前記孔の両者の部分的な表面または全表面に濃縮液を噴霧した後に形成される。
【0008】
本発明の好適例において、前記濃縮液は多糖体と、ポリフェノールと、エルゴチオネインと、を含み、前記コア層はキノコ類子実体粒子で形成されている。
【0009】
本発明の好適例において、前記コア層は不規則構造体、球体、楕円体、円柱体、または多面体である。
【0010】
本発明の好適例において、前記プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造は同じまたは異なる粒径を有する複数の前記コア層で構成されている。
【0011】
本発明の好適例において、前記コア層は冷凍乾燥処理を経て取得される。
【0012】
本発明の好適例において、前記付着層の重量及び前記コア層の重量の比率は1:0.5~1:2.2である。
【0013】
また、本発明は、便秘を改善し、宿便を解消するためのエルゴチオネインマイクロカプセルとして調製されるプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造を更に提供することを主目的とする。
【0014】
また、本発明は、プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製に用いられるプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法を更に提供することを主目的とする。前記調製方法は以下のステップを含む。第1キノコ類子実体粒子をコア層とし、前記コア層は複数の孔を有しているステップ(a)、及び、造粒ステップにおいて、前記コア層及びこれら前記孔の両者の部分的な表面または全表面に濃縮液を噴霧した後に付着層が形成され、前記濃縮液は多糖体と、ポリフェノールと、エルゴチオネインと、を含み、前記付着層の重量及び前記コア層の重量の比率は1:0.5~1:2.2であるステップ(b)。
【0015】
本発明の好適例において、前記濃縮液は第2キノコ類子実体が、第2粉砕ステップ、抽出ステップ、及び濃縮ステップを順次経由することで製造されている。
【0016】
本発明の好適例において、前記第2粉砕ステップでは、前記第2キノコ類子実体に溶剤を添加してキノコ類混合物を形成した後に粉砕する。前記キノコ類混合物は計100重量部に10~80重量部の前記キノコ類子実体及び残りの重量部の溶剤を含み、溶剤は純水または20%~95%のエタノール溶液である。
【0017】
本発明の好適例において、前記抽出ステップは、粉砕後の前記キノコ類混合物が熱水抽出ステップまたは超音波抽出ステップを経て抽出されて第1抽出液が取得される。前記抽出ステップの所要時間は0.5~24時間であり、前記第1抽出液は遠心分離ステップを経た後に上澄み液が収集され、前記上澄み液は第2抽出液である。
【0018】
本発明の好適例において、前記濃縮ステップは前記第2抽出液が減圧濃縮ステップまたは加熱濃縮ステップを経て濃縮された後に前記濃縮液が取得され、且記濃縮液の重量及び前記第2キノコ類子実体の重量の比率は0.1~0.3の間の範囲である。
【0019】
本発明の好適例において、前記キノコ類子実体粒子は、第1キノコ類子実体が冷凍乾燥ステップ及び乾式研磨ステップを順次経由した後に製造される。
【0020】
本発明の好適例において、前記冷凍乾燥ステップは前記第1キノコ類子実体を冷凍温度で冷凍し、前記冷凍温度は-20℃~-80℃である。
【0021】
本発明の好適例において、前記乾式研磨ステップでは、冷凍後の第1キノコ類子実体を乾式研磨技術により前記キノコ類子実体粒子として研磨する。
【0022】
本発明の好適例において、前記キノコ類子実体粒子は第1スクリーンメッシュにより更に篩い分けることで取得し、前記第1スクリーンメッシュのメッシュサイズは80メッシュである。
【0023】
本発明の好適例において、前記プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造は、第2スクリーンメッシュにより更に篩い分けることで取得し、前記第2スクリーンメッシュのメッシュサイズは60メッシュである。
【0024】
本発明の好適例において、前記第1キノコ類子実体または前記第2キノコ類子実体は椎茸、エノキタケ、エリンギ、タモギタケ、或いはそれらの組み合わせである。
【0025】
また、本発明は、複数のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造を備えている経口剤形を更に提供することを主な目的とする。前記プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造は上記のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法で製造され、前記経口剤形はゼラチンカプセル及び非ゼラチンカプセルから選ばれる。
【発明の効果】
【0026】
これにより、本発明は、キノコ類子実体粒子で形成されているコア層、及びコア層の表面に多糖体と、ポリフェノールと、エルゴチオネインと、を含む付着層が形成されているマイクロカプセル構造により、付着層の表面積または充填用量を増加させ、マイクロカプセル構造のそれぞれに豊富に含まれる多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネインの含有量を増加させることで、マイクロカプセル構造が人体に対するヘルスケア効果を有する薬用活性成分濃度を確保し、従来は大量の食用キノコ類が必要であったため不便であり、過量に摂取することになったという欠点を解決する。
【0027】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一好ましい実施例に係るプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の全体を示す概略図である。
【
図2A】本発明の一好ましい実施例に係るコア層を示す断面図である。
【
図2B】本発明の一好ましい実施例に係るプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造を示す断面図である。
【
図3】
図3Aは、本実施形態において、走査型電子顕微鏡でコア層を観察した拡大図である。
図3Bは、本実施形態において、走査型電子顕微鏡でプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造を観察した拡大図である。
【
図4】本発明の一好ましい実施例に係るプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法を示す図である。
【
図5】
図5Aは、本発明に係るプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造と一般的なキノコ粉末カプセルを摂取する前後の排便状態に関するアンケート調査結果を示すデータグラフである。
図5Bは、本発明に係るプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造と一般的なキノコ粉末カプセルを摂取する前後の排便状態に関するアンケート調査結果を示すデータグラフである。
【
図6】本実施形態において、各種キノコを用いて濃縮液を調製し、エルゴチオネインの含有量を試験する実験データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0030】
本発明の内容の説明を更に詳細で完全なものにするため、以下、本発明の実施態様及び具体的な実施例を提供して説明する。但し、実施や運用を本発明の具体的な実施例に限定するものではない。
【0031】
なお、本明細書において、単数形式の表現は特に記載のない限り、複数形式の概念も含まれている。また、本明細書において使用する用語は特に記載のない限り、前記分野において通常用いられる意義で使用されている。よって、他に定義のない限り、本明細書において使用する全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明が属する分野の業者にとって一般的に理解されている意義を有する。
【0032】
本発明の主な目的は、プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造を提供する(
図1参照)。本発明はキノコ類子実体粒子をコア層(11)とし、前記コア層(11)及びこれら前記孔(12)の両者の表面に濃縮液を噴霧することで付着層(13)が形成され、濃縮液は多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネイン等のプレバイオティクスを含む。複数の孔(12)は多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネインが付着する表面積または充填用量を増加させることで、マイクロカプセル構造のそれぞれに豊富に含まれる多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネインの含有量を増加させている。本発明はマイクロカプセル構造を選択してキノコ類子実体粒子、多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネインを効果的に放出し、且つ溶解速度を速め、人体へ吸収されやすくしている。
【0033】
本発明の一実施例において、前記コア層(11)は不規則構造体、球体、楕円体、円柱体、または多面体でもよく、前記不規則構造体は不規則な表面を有する構造体でもよい。前記コア層(11)は複数の孔(12)を有し、これら前記孔(12)は互いに連通されるか、連通されないか、部分的に連通されるか、或いは部分的に連通されない。前記付着層(13)は前記コア層(11)及びこれら前記孔(12)の両者の部分的な表面または全表面に濃縮液を噴霧した後に形成される。前記コア層(11)の部分的な表面または全表面とは、これら前記孔(12)の部分的または全部の表面を含む。前記コア層(11)の複数の孔(12)及び不規則な表面構造は付着層(13)の吸着量を増加させている。
【0034】
本発明の一実施例において、前記コア層(11)は球体であり、複数の孔(12)を有し、これら前記孔(12)は互いに連通されない(
図2A参照)。
図2Bを併せて参照し、
図2Bは
図1のA-A’線に沿う断面図である。前記コア層(11)及びその前記孔(12)の表面には付着層(13)が形成されている。濃縮液は多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネイン等のプレバイオティクスを含み、前記濃縮液は、例えば、エリンギ、タモギタケ、椎茸、或いはエノキタケの乾燥粉末から抽出された濃縮液でもよいが、本発明はこれらに限定されない。前記コア層(11)はキノコ類子実体粒子で形成され、前記コア層(11)は、例えば、エリンギやタモギタケで製造されるが、本発明はこれらに限定されない。
図3Aは走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)でコア層(11)を観察した拡大図である。
図3Bは走査型電子顕微鏡でプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造を観察した拡大図であり、縮尺は20.0μmである。
図3Aの例では、走査型電子顕微鏡を使用して拡大倍率2000倍でエリンギのキノコ類子実体粒子で製造されたコア層(11)を観察し、拡大図を見ると、前記コア層(11)が冷凍乾燥処理を経て不規則な構造体及び孔(12)を獲得している。不規則な構造体は3D構造であり、これら前記孔(12)は互いに連通されるか、連通されないか、部分的に連通されるか、或いは部分的に連通されないように形成されている。
図3Bの例では、同様に走査型電子顕微鏡を使用して拡大倍率2000倍で1つのマイクロカプセル構造のエリンギのキノコ類子実体粒子で製造されているコア層(11)及び付着層(13)を観察し、拡大図を見ると、コア層(11)及びその孔(12)の表面には付着層(13)が形成されている。ちなみに、本発明は冷凍乾燥処理によりコア層内の有効成分構造の破壊が減少しており、その化学構造及び薬用活性が保持されている。
【0035】
前記プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造(1)は複数種のキノコ類子実体由来の同じまたは異なる粒径を有する複数のコア層(11)が混合されることで構成され、80メッシュ及び60メッシュのスクリーンメッシュによりそれぞれ篩い分けられて平均粒径180μm~250μmのプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造が取得され、付着層(13)の重量及びコア層(11)の重量の比率が1:0.5~1:2.2の間の範囲に間接的に制御されている。
【0036】
図3Aと
図4に示す如く、本発明の主な目的は、プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製に用いられるプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法(2)を更に提供する。前記調製方法は以下のステップを含む。少なくとも1種類のキノコ類子実体粒子で構成されている第1キノコ類子実体粒子をコア層(11)として提供し、前記コア層(11)は複数の孔(12)を有し、前記キノコ類子実体粒子は第1キノコ類子実体が冷凍乾燥ステップ及び乾式研磨ステップを順次経由した後に製造され、前記コア層(11)は不規則構造体であり、且つ互いに連通されるか、連通されないか、部分的に連通されるか、或いは部分的に連通されない複数の孔(12)を有するステップ(a)(
図2A参照)。前記冷凍乾燥ステップは真空方式により前記第1キノコ類子実体を-20℃~-80℃の冷凍温度に放置して冷凍し、残留する液体を減少させる。冷凍乾燥処理によりコア層(11)の構造の破壊を減少させるのみならず、キノコ類子実体粒子の化学構造及び薬用活性を保持し、保存期限を延長し、後続の加工に利する。前記乾式研磨ステップは乾式研磨技術により冷凍後の第1キノコ類子実体を前記キノコ類子実体粒子として研磨し、前記乾式研磨技術は第1キノコ類子実体及びカッターを高速に衝突させることで粒子を生成し、後続のサイクロン分離器または気流粉砕機の遠心分離原理により研磨した粒子を排出する。前記コア層(11)は、例えばエリンギやタモギタケで製造されるが、本発明はこれらに限定されない。
【0037】
図3Bと
図4に示す如く、プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法において、ステップ(b)は、造粒ステップにおいて、前記コア層(11)及びこれら前記孔(12)の両者の部分的な表面または全表面に濃縮液を噴霧した後に付着層(13)が形成される。前記コア層(11)の複数の孔(12)及び不規則な表面構造は、付着層(13)の吸着量を増加している。造粒ステップは噴霧造粒方式でもよく、前記噴霧造粒方式は噴霧乾燥機により実行する。噴霧乾燥機内部の温度及び噴射口の温度は実際の需要に応じて調整可能である。噴霧造粒方式により、自由流動する粉末粒子を取得する以外、同時にプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の薬用成分が噴霧乾燥過程でその薬用活性が破壊されるのを防止している。前記濃縮液は多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネイン等プレバイオティクスを含み、前記付着層(13)及び前記コア層(11)の重量%は1:0.5~1:2.2である。実際の実施において、高い含有量の多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネインを保留する以外、これら前記薬用活性成分が人体内で放出される時間及び血液中に放出される濃度も保持し、最大の効果を達成している。前記濃縮液は、例えば、エリンギ、タモギタケ、椎茸、或いはエノキタケの乾燥粉末から抽出された濃縮液であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0038】
本発明の一実施例において、前記濃縮液は、少なくとも1種類のキノコ類子実体で構成されている第2キノコ類子実体が第2粉砕ステップ、抽出ステップ、及び濃縮ステップを順次経由することで製造されている。
【0039】
前記第2粉砕ステップでは、前記第2キノコ類子実体に溶剤を添加してキノコ類混合物を形成した後に粉砕を行う。前記キノコ類混合物は計100重量部に、10~80重量部の前記キノコ類子実体及び残りの重量部の溶剤を含み、溶剤は純水または20%~95%のエタノール溶液である。好ましくは、溶剤は50%~70%のエタノール溶液であり、純水またはエタノールは親水性の高い溶剤であり、実際の実施においては、異なる重量部の前記キノコ類子実体に基づいて純水または適合する濃度のエタノール溶液を選択して抽出を行う。前記第2キノコ類子実体は、例えば、エリンギ、タモギタケ、椎茸、エノキタケ、或いは他のキノコ類であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0040】
前記抽出ステップでは、粉砕後の前記キノコ類混合物を熱水抽出ステップまたは超音波抽出ステップにより抽出した後に第1抽出液を取得し、前記抽出ステップの所要時間は0.5~24時間である。溶剤が純水である場合は熱水抽出ステップを実行し、溶剤がエタノール溶液である場合は超音波抽出ステップを実行する。上述した2つの抽出ステップにより粉砕後のキノコ類混合物を60℃~80℃の加熱温度で抽出し、抽出ステップの所要時間は0.5~24時間であり、高い含有量の有効成分を取得する。前記第1抽出液が遠心分離ステップを経ることで第2抽出液が取得され、前記遠心分離ステップは遠心分離温度が4 ℃である環境において、9000rpm(rpmはRevolution(s)Per Minuteの略)の回転速度で15分間作用した後に上澄み液を収集し、前記上澄み液は多糖体と、ポリフェノールと、エルゴチオネインと、を含む第2抽出液である。
【0041】
前記濃縮ステップでは、前記第2抽出液が減圧濃縮ステップまたは加熱濃縮ステップを経て濃縮されると共に前記濃縮液が取得される。減圧濃縮ステップ及び加熱濃縮ステップでは、一定の圧力、温度、及び時間条件で第2抽出液の濃縮をそれぞれ実行し、余剰の溶剤を除去し、取得された濃縮液の重量は第2キノコ類子実体の重量の0.1倍~0.3倍である。濃縮ステップにおいて、本来第2キノコ類子実体から抽出された第2抽出液を濃縮し、後続の付着層(13)の調製を行う際に、一定の有効成分の含有量及び濃度を保持している。
【0042】
本発明の主な目的は経口剤形を更に提供する。前記経口剤形は複数のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造(1)を備え、前記プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造(1)はプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法(2)で製造され、前記経口剤形はゼラチンカプセル及び非ゼラチンカプセルから選ばれている。ゼラチンカプセルの材料は、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルビトール、グリセリン、ポリプロピレングリコール、及び他のポリオールから選択可能である。非ゼラチンカプセルの材料は、デンプン、デンプン派生物、セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、ニトロセルロース、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート(CAP)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒプロメロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及びヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)から選択可能である。実際の実施においては、本発明に係るプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造は、服用者の必要に応じ、異なる種類のカプセルの経口剤形を選ぶことができ、例えば、動物由来ではアレルギーの心配がある、宗教的理由、ベジタリアンである等の要望を考慮し、非ゼラチンカプセルの経口剤形を採用してもよい。
【0043】
本発明の主な目的は、便秘の改善及び宿便の解消に用いられるエルゴチオネインマイクロカプセルを調製するためのプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造を更に提供する。
【0044】
今回の試験では便秘問題を抱える計24名のボランティア被験者を募集し、本発明のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造を服用する実験群及び一般的なキノコ粉末カプセルを服用する統制群に分けた。本発明のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造は、キノコ類子実体粒子をコア層とし、前記コア層の表面に濃縮液を噴霧することで形成されている付着層で構成されているが、一般的なキノコ粉末カプセルはマルトデキストリン及びキノコ類濃縮液で構成されている。各群の被験者の年齢層及び人数の分布は、40~50歳の男性2名、60~70歳の男性2名、40~50歳の女性4名、及び60~70歳の女性4名の計12名である。カプセル服用前に、被験者は先に腸年齢アンケート表(表1参照)に記入し、排便状況の関連データの統計を取った。前記腸年齢アンケート表は日本理化学研究所微生物機能分析室室長辨野義己博士が製作した評価表を参照している。次に、今回の試験期間は4週間とし、カプセル服用時間は朝食及び夕食後とした。実験群の被験者は4粒の本発明のエルゴチオネインカプセル(500mg/粒、カプセル内にそれぞれプレバイオティクスを含有する複数のエルゴチオネインマイクロカプセル構造を含む)を毎日服用し、統制群の被験者は4粒の一般的なキノコ粉末カプセル(500mg/粒)を毎日服用した。カプセル服用から4週間後に、各群の被験者に自身の体感に基づいた腸年齢アンケート表に記入してもらい、排便状況の関連データの統計を取った。
【0045】
【0046】
今回の試験結果は排便状況に関する関連データの統計であり、分析を行い、今回の試験の目的に基づいて腸年齢アンケート表の質問(1)力まないと排便が困難である、質問(2)排便後に残便感がある、質問(3)便が硬く、排便が困難である、及び質問(4)便が途切れ途切れに排便される等の質問を便秘の改善の有無を評価するための根拠とする。被験者がこれら前記質問に「はい」と回答している場合、「はい」の回答数を加算し、且つ数式に基づいて指標値を取得した。前記数式は、各群の全ての被験者が質問(1)~質問(4)において「はい」と回答した総数/(各群の全ての被験者人数×4つの質問)であり、改善度は、カプセル服用前の指標値-カプセル服用後の指標値、である。
【0047】
試験結果
表2と
図5も併せて参照し、表2は実験群及び統制群のカプセル服用前後の指標値と改善度を示し、
図5は本発明に係るプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造及び一般的なキノコ粉末カプセル服用前後の排便状況についてのアンケート調査結果を示すデータグラフである。X軸はカプセル服用前後を示し、Y軸は指標値を示す。試験結果から分かるように、カプセル服用前の実験群及び統制群の指標値はそれぞれ77%及び69%であり、カプセル服用後の4週間に、
図5(A)に示すように、一般的なキノコ粉末カプセル服用後の統制群の指標値は約65%を保持し、改善度は僅か4%であった。しかしながら、
図5(B)に示すように、実験群の指標値は27%低下し、改善度は50%であり、本発明のプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造は服用後に便秘の改善及び宿便の解消について良好な効果を有している。ちなみに、人体の消化器官の運動は、飲食や生活リズムによって影響を受け、年齢と共に増長し、消化器官が徐々に老化し、排便不順の問題を引き起こす。本発明に係るプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造は、平均年齢40~70歳の男女に対し便秘の改善及び宿便の解消について良好な効果を有している。
【0048】
【0049】
続いて、本発明の目的、特徴、及び達成する効果について、審査官の更なる理解を促すため、以下では本発明に係るプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法を例に挙げ、本発明により調製したプレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造が多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネインを豊富に含むことを実証し、本発明の実際の応用範囲を更に証明するが、本発明の範囲はどのような形式にも制限しない。
【0050】
<実施例1>
異なる種類のキノコを濃縮液の調製に用い、且つそのエルゴチオネイン含有量を測定した。
調製フローチャート:
椎茸、エノキタケ、エリンギ、及びタモギタケ等の異なる種類のキノコを原料とし、1kgのエリンギ、タモギタケ、椎茸、或いはエノキタケ乾燥粉末を計量すると共にそれぞれ取得した後、95%のエタノール溶液または純水等の抽出溶剤10Lをそれぞれ添加し、ホモジナイザーにより5分間均一に混合して均質液を取得した。食品グレードの超音波抽出機により、超音波の周波数を35KHZの範囲とし、パワーを180Wとし、抽出温度を60℃とする条件において、均質液に対し30~60分間抽出を行って第1抽出液を取得した。第1抽出液を遠心分離温度4 ℃の環境において、9000rpmの回転速度で15分間作用させた後に上澄み液を収集し、前記上澄み液は椎茸、エノキタケ、エリンギ、及びタモギタケの第2抽出液である。第2抽出液を減圧濃縮機により、40℃~60℃の減圧温度において1Lまで減圧濃縮し、濃縮液を取得した。
【0051】
<エルゴチオネイン含有量の測定>
超高圧液体クロマトグラフィー(略称UPLC)を使用して取得した濃縮液に対しエルゴチオネインの含有量を分析し、且つ異なる濃度のエルゴチオネイン標準品により調製した検量線により各濃縮液から取得したエルゴチオネインに対し定量分析を行った。超高圧液体クロマトグラフィーの分析条件は下記の通りである。
システム:Waters acquity UPLC H-Class
検出器:Photodiode Array Detector、波長254 nm
カラム:HSS T3(2.1 mm×100 mm, 1.8μm)
カラム温度:35 ℃
移動相溶液:0.1 % ギ酸水溶液
流速:0.3 mL/min
サンプル注射量:10μL
【0052】
測定結果
図6を参照し、
図6は異なる種類のキノコにより濃縮液を調製すると共にそのエルゴチオネイン含有量を測定した実験データを示すグラフである。椎茸、エノキタケ、エリンギ、及びタモギタケ等の異なる種類のキノコから、95%のエタノール溶液または純水等の抽出溶剤により抽出した後に取得したエルゴチオネイン含有量のデータを示すグラフである。分析結果からは、95%のエタノール溶液と比較すると、純水を抽出溶剤として抽出を行った後に取得されたエルゴチオネインの含有量が高く、一方で、タモギタケにより調製した濃縮液のエルゴチオネインが最高(約2.3~5.0 g/L)であり、エリンギが続き(約0.5~1.5 g/L)、エノキタケ(約0.1~0.3 g/L)及び椎茸(約0.01~0.07 g/L)のエルゴチオネイン含有量が低かったことが示された。
【0053】
<実施例2>
異なる濃度及び異なる種類の抽出溶剤により新鮮なキノコで調製された濃縮液に対しエルゴチオネイン含有量の分析を行った。
調製フローチャート:
新鮮なエリンギ(含水率72%±3%)及び新鮮なタモギタケ(含水率78%±3%)等の異なる種類の新鮮なキノコを原料とし、1kgの新鮮なエリンギまたは新鮮なタモギタケを計量すると共にそれぞれ取得した後、2.5Lの純水、50%のエタノール溶液、70%のエタノール溶液、及び95%のエタノール溶液等の抽出溶剤をそれぞれ添加し、ホモジナイザーにより5分間均一に混合して均質液を取得した。食品グレードの超音波抽出機により、超音波の周波数を35KHZの範囲とし、パワーを180Wとし、抽出温度を60℃とする条件において、均質液に対し30~60分間抽出を行って第1抽出液を取得した。第1抽出液を遠心分離温度4 ℃の環境において9000rpmの回転速度で15分間作用させた後に上澄み液を収集し、前記上澄み液は新鮮なエリンギまたはタモギタケの第2抽出液である。第2抽出液を減圧濃縮機により、40℃~60℃の減圧温度において取得したエリンギの濃縮液は元の新鮮なエリンギの重量の0.2倍であり、タモギタケから取得した濃縮液の重量を元の新鮮なタモギタケの重量の0.15倍まで濃縮した。
【0054】
<エルゴチオネイン含有量の測定>
超高圧液体クロマトグラフィー(略称UPLC)を使用して取得した濃縮液に対しエルゴチオネインの含有量を分析し、異なる濃度のエルゴチオネイン標準品により調製された検量線により各濃縮液が取得したエルゴチオネインに対し定量分析を行った。超高圧液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
システム:Waters acquity UPLC H-Class
検出器:Photodiode Array Detector、波長254 nm
カラム:HSS T3(2.1 mm×100 mm, 1.8μm)
カラム温度:35 ℃
移動相溶液:0.1 % ギ酸水溶液
流速:0.3 mL/min
サンプル注射量:10μL
【0055】
測定結果
表3には、新鮮なエリンギ及び新鮮なタモギタケ等の異なる種類のキノコから、2.5Lの純水、50%のエタノール溶液、70%のエタノール溶液、及び95%のエタノール溶液等の抽出溶剤により抽出した後に取得したエルゴチオネインの含有量データを示す。分析結果からは、50%のエタノール溶液及び70%のエタノール溶液を使用してそれぞれ取得したエルゴチオネインの含有量は、95%のエタノール溶液及び純水によりそれぞれ取得したエルゴチオネインの含有量よりも高かったことが示された。
【0056】
【0057】
<実施例3>
異なる種類のキノコにより濃縮液を調製すると共にその可溶性固形物、粗多糖、及び総ポリフェノール含有量を測定した。
調製フローチャート:
新鮮なエリンギ(含水率72%±3%)及び新鮮なタモギタケ(含水率78%±3%)等の異なる種類の新鮮なキノコを原料とし、1kgの新鮮なエリンギまたは新鮮なタモギタケを計量すると共にそれぞれ取得した後、2.5Lの50%のエタノール溶液及び70%のエタノール溶液等の抽出溶剤をそれぞれ添加し、ホモジナイザーにより5分間均一に混合して均質液を取得した。食品グレードの超音波抽出機により、超音波の周波数を35KHZの範囲とし、パワーを180Wとし、抽出温度を60℃とする条件において、均質液に対し30~60分間抽出を行って第1抽出液を取得した。第1抽出液を遠心分離温度4 ℃の環境において9000rpmの回転速度で15分間作用させた後に上澄み液を収集し、前記上澄み液は新鮮なエリンギまたは新鮮なタモギタケの第2抽出液である。第2抽出液を減圧濃縮機により、40℃~60℃の減圧温度において取得したエリンギの濃縮液は元の新鮮なエリンギの重量の0.2倍であり、タモギタケから取得した濃縮液の重量を元の新鮮なタモギタケの重量の0.15倍まで濃縮した。
【0058】
<可溶性固形物、粗多糖、及び総ポリフェノール含有量の測定>
新鮮なエリンギ及び新鮮なタモギタケにより調製された濃縮液をそれぞれ10ml取得し、50℃の温度で恒量まで乾燥し、これを可溶性固形物含有量とした。粗多糖の含有量の測定は、新鮮なエリンギ及び新鮮なタモギタケによりそれぞれ調製された濃縮液に対し、フェノール硫酸法により粗多糖の含有量を分析した。
【0059】
測定結果
表4に示す如く、新鮮なエリンギにより調製された濃縮液の可溶性固形物は約34.9±2.14 g/Lであり、粗多糖は約26.9±3.26 g/Lであり、総ポリフェノール含有量は約2.5±0.14 g/Lである。新鮮なタモギタケにより調製された濃縮液の可溶性固形物は約22.7±1.77g/Lであり、粗多糖は約18.2±1.76 g/Lであり、総ポリフェノール含有量は約3.7±0.21 g/Lである。
【0060】
【0061】
<実施例4>
異なる種類の新鮮なキノコ類子実体により複数の孔を有するコア層を調製すると共にその収率、エルゴチオネイン、及び粗多糖の含有量を測定した。
調製フローチャート:
新鮮なエリンギ(含水率72%±3%)及び新鮮なタモギタケ(含水率78%±3%)等の異なる種類の新鮮なキノコを原料とし、1kgの新鮮なエリンギまたは新鮮なタモギタケを計量すると共にそれぞれ取得した後、新鮮なエリンギ及び新鮮なタモギタケを-20℃ ~-80℃の温度の冷凍庫にそれぞれ放置し、16時間冷凍した。冷凍後の新鮮なエリンギ及び新鮮なタモギタケを冷凍乾燥機により冷凍乾燥した。乾式研磨機により研磨した後、80メッシュのスクリーンメッシュにより篩い分け、キノコ類子実体粒子(粉体の粒径は180μm未満)を複数の孔を有するコア層として収集した。
【0062】
<収率、エルゴチオネイン、及び粗多糖含有量の測定>
収率は、収集した粉体を計量すると共に、1kgに占める新鮮なエリンギまたは新鮮なタモギタケの重量%を計算した。粗多糖の含有量の測定は、新鮮なエリンギ及び新鮮なタモギタケによりそれぞれ調製した濃縮液に対し、フェノール硫酸法により粗多糖の含有量を分析した。エルゴチオネインの含有量の分析は、超高圧液体クロマトグラフィー(略称UPLC)により取得したキノコ類子実体粒子に対しエルゴチオネイン含有量の分析を行い、異なる濃度のエルゴチオネイン標準品により調製された検量線によりキノコ類子実体粒子のエルゴチオネインに対し定量分析を行った。超高圧液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
システム:Waters acquity UPLC H-Class
検出器:Photodiode Array Detector、波長254 nm
カラム:HSS T3(2.1 mm×100 mm, 1.8μm)
カラム温度:35 ℃
移動相溶液:0.1 % ギ酸水溶液
流速:0.3 mL/min
サンプル注射量:10μL
【0063】
測定結果
タモギタケのキノコ類子実体粒子の収率は187.3±27.6 g/kgであり、含有されるエルゴチオネイン及び粗多糖の含有量はそれぞれ0.57±0.04%及び37.75±1.43%である。エリンギのキノコ類子実体粒子の収率は262.2±41.1 g/kgであり、含有されるエルゴチオネイン及び粗多糖の含有量はそれぞれ0.39±0.31%及び39.85±1.3%である。
【0064】
<実施例5>
マイクロカプセルの調製
調製フローチャート:
エリンギまたはタモギタケのキノコ類子実体粒子(粉体の粒径は180μm未満)を複数の孔を有するコア層とする。造粒ステップにおいて、コア層粉体を空気中に噴霧し、噴霧方式によりエリンギ及びタモギタケにより調製された濃縮液をコア層にそれぞれ付着する。その後、60メッシュのスクリーンメッシュにより篩い分け(粉体の粒径は250μm未満)、マイクロカプセル構造を取得する。
【0065】
エルゴチオネイン含有量の測定では、超高圧液体クロマトグラフィー(略称UPLC)により取得したマイクロカプセル構造に対しエルゴチオネイン含有量の分析を行い、異なる濃度のエルゴチオネイン標準品により調製された検量線によりマイクロカプセル構造のエルゴチオネインに対し定量分析を行った。超高圧液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
システム:Waters acquity UPLC H-Class
検出器:Photodiode Array Detector、波長254 nm
カラム:HSS T3(2.1 mm×100 mm, 1.8μm)
カラム温度:35 ℃
移動相溶液:0.1 % ギ酸水溶液
流速:0.3 mL/min
サンプル注射量:10μL
【0066】
測定結果
表5に示す如く、1部は計100gとする。群1では、1部のタモギタケのキノコ類子実体粒子及び1部のエリンギにより調製された濃縮液により取得したマイクロカプセル構造が、0.69±0.03%のエルゴチオネインを有している。群2では、1部のエリンギのキノコ類子実体粒子及び1部のタモギタケにより調製された濃縮液により取得したマイクロカプセル構造が0.45±0.02%のエルゴチオネインを有している。群3では、1部のタモギタケのキノコ類子実体粒子及び1部のエリンギのキノコ類子実体粒子に、0.7部のタモギタケにより調製された濃縮液及び0.7部のエリンギにより調製された濃縮液を組み合わせてマイクロカプセル構造を取得し、これは0.50±0.04%のエルゴチオネインを有している。
【0067】
【0068】
結論として、本発明は従来技術の製品と比較すると、本発明は下記利点の1つを有している。
本発明の目的の1つは、キノコ類子実体粒子で形成されたコア層、及びコア層の表面または孔に多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネインを含む付着層が形成されているマイクロカプセル構造により、付着層の表面積または充填用量を増加することで、マイクロカプセル構造のそれぞれに豊富に含まれる多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネインの含有量を増加し、マイクロカプセル構造が人体に対するヘルスケア効果を有する薬用活性成分濃度を確保し、従来は大量の食用キノコ類が必要であったため不便であり、過量に摂取することになったという欠点を解決する。
【0069】
本発明の目的の1つは、便秘の改善及び宿便を解消するためのエルゴチオネインマイクロカプセルを調製する使用法を提供し、本発明はキノコ類子実体粒子で形成されたコア層、及びコア層の表面またはその孔に多糖体と、ポリフェノールと、エルゴチオネインと、を含む付着層が形成されているマイクロカプセル構造により、メーカーが特定の群、服用回数、或いは服用間隔に基づいてマイクロカプセル自体の薬用活性成分濃度を調整し、生理状況が異なる各年齢層の需要に適合可能する。
【0070】
本発明の目的の1つは、プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法により、特定の調製フローチャートの順序を選択し、前記付着層の重量及び前記コア層の重量の比率を1:0.5~1:2.2に制御し、多糖体、ポリフェノール、及びエルゴチオネインの高い含有量を保留すると共に、これら前記薬用活性成分が人体内に放出される時間及び血液中に放出される濃度を保持し、最大の効果を達成する。
【0071】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造
11 コア層
12 孔
13 付着層
a ステップ
b ステップ
A-A’ 接線
2 プレバイオティクスを含有するエルゴチオネインマイクロカプセル構造の調製方法