(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031959
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】吸水性樹脂及びその製造方法、並びに吸水性樹脂を使用して芝生を張る方法
(51)【国際特許分類】
C08L 29/04 20060101AFI20240229BHJP
C09K 17/20 20060101ALI20240229BHJP
C09K 17/32 20060101ALI20240229BHJP
C08L 3/04 20060101ALI20240229BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20240229BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20240229BHJP
C08K 5/21 20060101ALI20240229BHJP
D06M 15/333 20060101ALI20240229BHJP
D06M 15/11 20060101ALI20240229BHJP
D06M 13/11 20060101ALI20240229BHJP
D06M 13/395 20060101ALI20240229BHJP
A01G 20/00 20180101ALI20240229BHJP
A01G 24/35 20180101ALI20240229BHJP
【FI】
C08L29/04 B
C09K17/20 H
C09K17/32 H
C08L3/04
C08L101/14
C08K3/32
C08K5/21
D06M15/333
D06M15/11
D06M13/11
D06M13/395
A01G20/00
A01G24/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136601
(22)【出願日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2022133996
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022171931
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】沖田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 孝司
【テーマコード(参考)】
2B022
4H026
4J002
4L033
【Fターム(参考)】
2B022AA05
2B022AB02
2B022BA25
2B022BB01
4H026AA09
4H026AA10
4H026AB01
4J002AB042
4J002BE021
4J002CD003
4J002DH026
4J002DH046
4J002EG057
4J002EG097
4J002ER007
4J002ET016
4J002EZ007
4J002FD143
4J002FD147
4J002GA00
4J002GA02
4J002HA09
4L033AB07
4L033AC07
4L033BA08
4L033BA69
4L033CA06
4L033CA29
(57)【要約】
【課題】 土壌中、水中又は肥料中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等で失活しにくい吸水性樹脂を提供する。
【解決手段】 この吸水性樹脂は、架橋ポリビニルアルコール及び架橋リン酸化澱粉を含有する。具体的には、ポリビニルアルコール相互間、リン酸化澱粉相互間及びポリビニルアルコールとリン酸化澱粉相互間が架橋されている。この吸水性樹脂は、ポリビニルアルコール、リン酸化澱粉、架橋剤及び水を混合しスラリーを形成し、このスラリーを100℃~140℃で加熱乾固して得ることができる。ポリビニルアルコールは、部分ケン化型ポリビニルアルコール、かルポキシル化ポリビニルアルコール又はリン酸化ポリビニルアルコールが用いられる。架橋剤は、多官能チタン化合物、ジイソシアネート化合物、ジグリシジル化合物又はジカルボン酸化合物が用いられる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリビニルアルコール及び架橋リン酸化澱粉を含有する吸水性樹脂。
【請求項2】
架橋ポリビニルアルコールが架橋カルボキシル化ポリビニルアルコール及び/又は架橋リン酸化ポリビニルアルコールである請求項1記載の吸水性樹脂。
【請求項3】
形状が粒状であって、質量平均粒子径が50~1000μmである請求項1記載の吸水性樹脂。
【請求項4】
不織布に請求項1記載の吸水性樹脂を担持してなる吸水性不織布。
【請求項5】
バインダーにより吸水性樹脂が担持されてなる請求項4記載の吸水性不織布。
【請求項6】
ポリビニルアルコール、リン酸化澱粉、架橋剤及び水を混合しスラリーを形成し、該スラリーを100℃~140℃で加熱乾固する吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
ポリビニルアルコールが、カルボキシル化ポリビニルアルコール及び/又はリン酸化ポリビニルアルコールである請求項6記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
ポリビニルアルコール、リン酸及び/又はその塩、尿素、並びに水を混合して得られた水溶液を100℃~140℃で加熱乾固し、洗浄してリン酸化ポリビニルアルコールを得る請求項7記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
架橋剤が、多官能イソシアネート化合物、多官能チタン化合物、多官能エポキシ化合物及び多官能カルボン酸よりなる群から選ばれた化合物である請求項6記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
不織布に、請求項6記載のスラリーを含浸した後、100℃~140℃で加熱乾固する吸水性不織布の製造方法。
【請求項11】
土壌に、目砂及び請求項1記載の吸水性樹脂を入れて改善土壌とし、該改善土壌上に芝生を張る方法。
【請求項12】
改善土壌上に芝生の種を撒く請求項11記載の芝生を張る方法。
【請求項13】
改善土壌上に切り芝を張る請求項11記載の芝生を張る方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性及び保水性に優れた吸水性樹脂及びその製造方法に関し、特に長期に亙って吸水性及び保水性を維持しうる吸水性樹脂及びその製造方法に関するものである。また、この吸水性樹脂を使用して芝生を張る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の育成に灌水は欠かせないものである。この灌水を少なくする又は省略したいため、土壌に高吸水性樹脂を入れることが行われている(特許文献1)。すなわち、土壌に水を飽和吸収した高吸水性樹脂を入れておけば、灌水を少なくしても、高吸水性樹脂が保水している水を植物に供給し、植物が枯死するのを防止しうるというものである。特許文献1で用いられている高吸水性樹脂としては、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体ケン化物、澱粉-アクリル酸グラフト物の中和架橋物、架橋アクリル酸塩、架橋ポリエチレンキシサイド又は酢酸ビニル-不飽和カルボン酸(エステル)共重合体ケン化物等が挙げられている(特許文献1、2頁左上欄17行乃至右上欄2行)。
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の高吸水性樹脂を土壌と混合し灌水しながら長期に亙って使用すると、吸水能力及び保水能力が低下するということがあった。この理由は、土壌中、水中(特に硬水中)又は肥料中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等で、高吸水性樹脂中のカルボキシイオンが失活するためである(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高橋正通・柴崎一樹・仲摩栄一郎・石塚森吉・太田誠一共著「林業・緑化分野における高吸水性高分子樹脂の利用」、日林誌(2018)100:229-236
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、土壌中、水中又は肥料中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等で失活しにくい吸水性樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、リン酸基によって吸水する吸水性樹脂を開発することにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、架橋ポリビニルアルコール及び架橋リン酸化澱粉を含有する吸水性樹脂及びその製造方法に関するものである。また、この吸水性樹脂と目砂を土壌に入れて改善土壌とし、この改善土壌上に芝生を張る方法に関するものである。
【0008】
本発明に係る吸水性樹脂は、架橋ポリビニルアルコール及び架橋リン酸化澱粉を含有するものである。具体的には、ポリビニルアルコール同士或いはリン酸化澱粉同士が架橋されているものが混合されている形態又はポリビニルアルコールとリン酸化澱粉とが架橋されている形態ものがあり、さらに両形態が混合している形態もある。
【0009】
ポリビニルアルコールは、部分ケン化型のものであるのが好ましく、ケン化度は70~90%程度のものが好ましい。また、重合度は1000~10000程度であるのが好ましい。ポリビニルアルコールは、カルボキシル化ポリビニルアルコール又はリン酸化ポリビニルアルコールであってもよい。カルボキシル化ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールの水酸基及びアセチル基の他に、カルボキシル基を有するものである。リン酸化ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールの水酸基及びアセチル基の他に、リン酸基を有するものである。リン酸基の存在により、吸水性樹脂は、長期に亙って吸水能力及び保水能力を維持する。架橋リン酸化澱粉はリン酸基を持つと共に架橋されてなるものであり、加工澱粉の一種として市販されているものである。
【0010】
本発明に係る吸水性樹脂は土壌又は目砂と混合して使用される。土壌は、天然土壌でも人工土壌でもよい。吸水性樹脂は、土壌を形成する土砂と同様の形状であるのが好ましく、一般的に粒状であるのが好ましい。また、その大きさも土砂で同程度であるのが好ましく、具体的には質量平均粒子径が50~10000μmであるのが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る吸水性樹脂を不織布に担持させて、吸水性不織布としてもよい。かかる吸水性不織布は、土壌上又は土壌下に敷設して使用したり、土壌表面層又は目砂の下に埋設して使用してもよい。不織布としては、従来公知のものを採用しうるが、土壌中で生分解する生分解性不織布を採用するのが好ましい。生分解性不織布としては、コットン繊維やポリ乳酸繊維を構成繊維とするものを採用しうる。
【0012】
吸水性樹脂を不織布に担持するには、バインダーで不織布に接着させればよい。たとえば、粒状の吸水性樹脂を不織布の構成繊維表面にバインダーで接着させて担持してもよいし、フィルム状の吸水性樹脂を不織布表面にバインダーで接着させてもよい。バインダーとしては従来公知のものを用いうるが、水溶性バインダーであるのが好ましい。たとえば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はアルギン酸塩等の水溶性バインダーを用いるのが好ましい。さらに、吸水性樹脂を不織布の構成繊維相互間の間隙に、バインダーなしで沈積させてもよい。
【0013】
本発明に係る吸水性樹脂は、以下の方法により製造することができる。すなわち、ポリビニルアルコール、リン酸化澱粉、架橋剤及び水を混合しスラリーを形成し、該スラリーを100℃~140℃で加熱乾固する方法である。ポリビニルアルコールとしては、前述したように、部分ケン化型ポリビニルアルコール、カルボキシル化ポリビニルアルコール又はリン酸化ポリビニルアルコールであるのが好ましい。部分ケン化型ポリビニルアルコールやカルボキシル化ポリビニルアルコールは従来公知のものであり、市販品を用いればよい。リン酸化ポリビニルアルコールは、以下の方法で製造されたものを用いるのが好ましい。すなわち、ポリビニルアルコール、リン酸及び/又はその塩、尿素、並びに水を混合して得られた水溶液を100℃~140℃で加熱乾固し、洗浄するという方法で製造することができる。リン酸及び/又はその塩としては、リン酸、リン酸塩、リン酸水素塩又はリン酸二水素塩が用いられる。本発明においては、リン酸水素カリウム又はリン酸二水素カリウムを用いるのが好ましい。水溶液を100℃~140℃に加熱した後、洗浄することにより、ポリビニルアルコールの水酸基にリン酸基(第四級アンモニウムリン酸基)が結合してリン酸化ポリビニルアルコールを得ることができる。また、第四級アンモニウムイオンをカリウムイオンやナトリウムイオン等に置換すれば、窒素原子を含まないリン酸化ポリビニルアルコールとすることができる。
【0014】
リン酸化澱粉は加工澱粉の一種として公知のものであり、市販品を採用すればよい。また、架橋剤は、ポリビニルアルコール及び澱粉を架橋しうる多官能化合物を用いればよい。本発明に係る吸水性樹脂は水中で反応させて製造するため、水溶性多官能化合物を用いるのが好ましい。多官能化合物としては、多官能イソシアネート化合物、多官能チタン化合物、多官能エポキシ化合物又は多官能カルボン酸等を単独で又は混合して用いればよい。一般的には、ジイソシアネート化合物、ジグリシジル化合物又はジカルボン酸化合物等の二官能化合物が用いられる。
【0015】
ポリビニルアルコール、リン酸化澱粉、架橋剤及び水を混合してスラリーを得た後、このスラリーを100℃~140℃に加熱することにより、ポリビニルアルコール及びリン酸化澱粉が架橋され三次元網目構造を持つ吸水性樹脂が得られる。また、100℃~140℃に加熱することにより、水は蒸発し固形の吸水性樹脂が得られる。
【0016】
ポリビニルアルコール、リン酸化澱粉、架橋剤及び水を混合して得られたスラリーを、不織布に含浸した後、100℃~140℃に加熱することにより、吸水性不織布を得てもよい。不織布に含浸されたスラリーは、含浸した状態で三次元網目構造を持つ吸水性樹脂となり、不織布の構成繊維相互間の間隙に固形の吸水性樹脂として沈積する。
【0017】
本発明に係る吸水性樹脂は、従来公知の用途に用いうるが、特に土壌中等のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等で吸水能力及び保水能力が低下しにくいので、植物成育用の土壌で用いるのが好ましい。たとえば、土壌中の土砂と混合し、長期に亙って吸水能力及び保水能力を維持する改善土壌とし、この改善土壌で灌水の量を少なくして植物を成育することができる。この場合、吸水性樹脂の生分解を抑えるため、抗菌剤と共に使用してもよい。本発明に係る吸水性樹脂は、特に灌水の量の多い芝生の成育に用いるのが好ましい。具体的には、土壌に、目砂及び本発明に係る吸水性樹脂を入れて改善土壌とし、この改善土壌上に芝生の種を播いたり、切り芝を張って芝張りを行う。これにより、灌水の量を低減させることができ、節水に寄与するものである。なお、本発明に係る吸水性樹脂は、芝生以外のその他の植物の生育に広く用いることができ、たとえば、灌水の多い野菜や果樹等の植物又は観葉植物等の生育にも用いうることは言うまでもない。
【0018】
本発明に係る吸水性不織布も、吸水性樹脂と同様に、従来公知の用途に用いうる。すなわち、土壌中の土砂と混合したり、土壌土壌上又は土壌下に敷設して使用したり、土壌表面層又は目砂の下に埋設して、長期に亙って吸水能力及び保水能力を維持する改善土壌とし、この改善土壌で灌水の量を少なくして植物を成育することができる。また、吸水性不織布を用いると、土壌の不存在下でも、植物の生育が可能となる。たとえば、建物の屋上又は壁面に、吸水性不織布を敷設し、当該吸水性不織布面上に植物の種を播き又は植物の苗を植えて、植物を生育することも可能である。かかる植物の生育方法は、建物の屋上緑化工法又は建物の壁面緑化工法として用いることもできる。なお、吸水性不織布に代えて、スポンジ等の多孔質体に吸水性樹脂を担持させたものや、天然繊維、合成繊維又は鉱物繊維等の繊維塊に吸水性樹脂を担持させたものの面上に、植物の種を播き又は植物の苗を植えて、植物を生育することもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る吸水性樹脂は、リン酸基により吸水能力及び保水能力を持つものであるため、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等の影響で吸水能力及び保水能力が低下しにくい。したがって、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等が多く存在する土壌や肥料を用いる植物の成育のために使用することができる。また、本発明に係る吸水性樹脂は、架橋ポリビニルアルコールと架橋リン酸化澱粉の両者を含むので、適度な靱性と脆性を持つので粒状にしやすく取り扱いやすいという効果を奏する。
【実施例0020】
実施例1
部分ケン化型ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-33)40質量部、リン酸化澱粉(日本食品化工株式会社製、スプレット#250)60質量部及び水1900質量部を混合攪拌し、そこに水溶性イソシアネート水分散液(第一工業製薬株式会社製、エラストロンBN-69、ジイソシアネート含有量40wt%)5質量部を添加撹拌しスラリーを得た。スラリーをシャーレ中で120℃の熱風乾燥機で120分加熱乾燥してフィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0021】
実施例2
カルボキシル化ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、AF-17)40質量部、リン酸化澱粉(日本食品化工株式会社製、スプレット#250)60質量部及び水1900質量部を混合攪拌し、そこにポリエチレングリコール♯400ジグリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、エポライト400E )100質量部を添加撹拌しスラリーを得た。スラリーをシャーレ中で110℃の熱風乾燥機で120分加熱乾燥することでフィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0022】
実施例3
<リン酸化ポリビニルアルコールの製造>
ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-33)5質量部、水95質量部、リン酸二水素カリウム3.5質量部及び尿素2.5質量部を混合撹拌して水溶液を得た。この水溶液を120℃で180分間加熱乾固した。得られた固形物を再度水に溶解させ、透析膜(ケニス株式会社製、透析用セルローズチューブ)で洗浄して、リン酸化ポリビニルアルコールを得た。
【0023】
得られたリン酸化ポリビニルアルコール80質量部、リン酸化澱粉(日本食品化工株式会社製、スプレット#250)20質量部及び水1900質量部を混合攪拌し、そこにポリエチレングリコール♯400ジグリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、エポライト400E )100質量部を添加撹拌しスラリーを得た。スラリーをシャーレ中で110℃の熱風乾燥機で120分加熱乾燥することでフィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0024】
実施例4
リン酸化ポリビニルアルコールの質量部を60質量部に変更し、リン酸化澱粉の質量部を40質量部に変更した他は、実施例3と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0025】
実施例5
リン酸化ポリビニルアルコールの質量部を50質量部に変更し、リン酸化澱粉の質量部を50質量部に変更した他は、実施例3と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0026】
実施例6
リン酸化ポリビニルアルコールの質量部を40質量部に変更し、リン酸化澱粉の質量部を60質量部に変更した他は、実施例3と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0027】
実施例7
リン酸化ポリビニルアルコールの質量部を20質量部に変更し、リン酸化澱粉の質量部を80質量部に変更した他は、実施例3と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0028】
実施例8
ポリエチレングリコール♯400ジグリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、エポライト400E )の質量部を50質量部に変更した他は、実施例5と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0029】
実施例9
ポリエチレングリコール♯400ジグリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、エポライト400E )の質量部を20質量部に変更した他は、実施例5と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0030】
実施例10
実施例3で得られたリン酸化ポリビニルアルコール50質量部、リン酸化澱粉(日本食品化工株式会社製、スプレット#250)50質量部及び水1900質量部を混合攪拌し、そこに水溶性イソシアネート水分散液(第一工業製薬株式会社製、エラストロンBN-69、ジイソシアネート含有量40wt%)5質量部を添加撹拌しスラリーを得た。スラリーをシャーレ中で120℃の熱風乾燥機で120分加熱乾燥してフィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0031】
実施例11
水溶性イソシアネート水分散液(第一工業製薬株式会社製、エラストロンBN-69、ジイソシアネート含有量40wt%)5質量部に代えて、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)(マツモトファインケミカル株式会社製、オルガチックス TC-400、Ti含有量8.2wt%)35質量部を用いる他は、実施例10と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0032】
実施例12
水溶性イソシアネート水分散液(第一工業製薬株式会社製、エラストロンBN-69、ジイソシアネート含有量40wt%)5質量部に代えて、こはく酸(関東化学株式会社製)30質量部を用い、かつ、乾燥熱風機の温度を130℃に変更した他は、実施例10と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0033】
比較例1
リン酸化澱粉(日本食品化工株式会社製、スプレット#250)を用いずに、かつ、部分ケン化型ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-33)の質量部を100質量部に変更した他は、実施例1と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0034】
比較例2
部分ケン化型ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-33)100質量部を、カルボキシル化ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、AF-17)100質量部に変更した他は、比較例1と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0035】
比較例3
リン酸化ポリビニルアルコールを用いずに、かつ、リン酸化澱粉(日本食品化工株式会社製、スプレット#250)の質量部を100質量部に変更した他は、実施例3と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0036】
比較例4
リン酸化ポリビニルアルコールを用いずに、かつ、リン酸化澱粉(日本食品化工株式会社製、スプレット#250)の質量部を100質量部に変更した他は、実施例11と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0037】
比較例5
リン酸化ポリビニルアルコールを用いずに、かつ、リン酸化澱粉(日本食品化工株式会社製、スプレット#250)の質量部を100質量部に変更した他は、実施例12と同一の方法により、フィルム状の吸水性樹脂を得た。
【0038】
比較例6
市販の吸水性樹脂(ケニス株式会社製、超吸水性樹脂)を入手した。
【0039】
比較例7
市販の吸水性樹脂(Aquatrols社製、SuperSorb-F)を入手した。
【0040】
実施例1~12及び比較例1~7で得られた吸水性樹脂の吸水倍率、靱性及び脆性を、以下の方法で評価した。これらの結果を表1に示した。
【0041】
[脱イオン水吸水倍率]
吸水性樹脂1質量部を500質量部の脱イオン水に浸漬し、1時間室温で静置した。可溶成分を除去した後、脱イオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂の質量(W1)を秤量する。その後、脱イオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂を、熱風乾燥機で温度105℃の条件において乾固させ、乾固質量(W2)を秤量する。W1/W2の値を脱イオン水吸水倍率とした。
【0042】
[カルシウムイオン水吸水倍率]
塩化カルシウム二水和物(関東化学株式会社製 試薬特級)1質量部を100質量部の水に溶解させ、カルシウムイオン水を得た。吸水性樹脂1質量部をカルシウムイオン水100質量部に浸漬し、1時間室温で静置した。可溶成分を除去した後、カルシウムイオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂の質量(X1)を秤量する。その後、カルシウムイオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂を、熱風乾燥機で温度105℃の条件において乾固させ、乾固質量(X2)を秤量する。X1/X2の値をカルシウムイオン水吸水倍率とした。
【0043】
[カルシウムイオン水再吸水倍率]
カルシウムイオン水吸水倍率を測定する方法で同一の方法で、カルシウムイオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂を得た。カルシウムイオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂を、熱風乾燥機で温度70℃の条件において乾燥させて準乾固物を得、この質量(Y1)を秤量する。その後、この準乾固物1質量部をカルシウムイオン水100質量部に浸漬し、1時間室温で静置した。可溶成分を除去した後、カルシウムイオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂の質量(Y2)を秤量する。Y2/Y1の値をカルシウムイオン水再吸水倍率とした。
【0044】
[靱性及び脆性]
実施例1~12及び比較例1~5で得られたフィルム状の吸水性樹脂を両手で引っ張って、低伸度で切断するものを靱性が「低」と評価し、中伸度で切断するものを靱性が「中」と評価し、高伸度で切断するものを靱性が「高」と評価した。また、低強度で切断するものを脆性が「高」と評価し、中強度で切断するものを脆性が「中」と評価し、高強度で切断するものを脆性が「低」と評価した。靱性が「中」で脆性が「中」のものが、取り扱いやすく、かつ、粒状にしやすいため、好ましいものである。なお、比較例6及び7の市販品である吸水性樹脂は粒状のものであるため、靱性及び脆性を評価していない。
【0045】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
脱イオン水 カルシウムイオ カルシウムイオ 靱性 脆性
吸水倍率 ン水吸水倍率 ン水再吸水倍率
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 32倍 18倍 16倍 中 中
実施例2 34倍 17倍 17倍 中 中
実施例3 52倍 20倍 22倍 中 中
実施例4 65倍 20倍 23倍 中 中
実施例5 69倍 21倍 24倍 中 中
実施例6 72倍 21倍 24倍 中 中
実施例7 44倍 20倍 21倍 中 中
実施例8 85倍 20倍 26倍 中 中
実施例9 132倍 21倍 31倍 中 中
実施例10 90倍 18倍 23倍 中 中
実施例11 45倍 20倍 21倍 中 中
実施例12 65倍 20倍 23倍 中 中
比較例1 7倍 8倍 7倍 高 低
比較例2 8倍 7倍 5倍 高 低
比較例3 64倍 18倍 20倍 低 高
比較例4 63倍 18倍 22倍 低 高
比較例5 102倍 19倍 24倍 低 高
比較例6 465倍 10倍 4倍 - -
比較例7 414倍 5倍 3倍 - -
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【0046】
表1の結果から分かるように、実施例に係る吸水性樹脂は、脱イオン水吸水倍率、カルシウムイオン吸水倍率及びカルシウムイオン再吸水倍率のいずれの吸水倍率も高く、カルシウムイオンが多く含まれる硬水を灌水しても、良好な吸水性が示すことが分かる。したがって、植物を育成する際に、土壌に適用しうるものである。また、靱性及び脆性が中程度であるので、取り扱いやすく、かつ、粒状にしやすいものである。
一方、比較例1及び2に係る吸水性樹脂は、いずれの吸水倍率も低く、吸水性樹脂として適当なものではなかった。また、脆性が低いため、粒状にしにくいものである。比較例3~5に係る吸水性樹脂はいずれの吸水倍率も高く、土壌に適用しうるものであるが、靱性が低く脆性が高いため、取り扱いにくいものである。比較例6及び7に係る吸水性樹脂は、脱イオン水吸水倍率は高いが、カルシウムイオン吸水倍率及びカルシウムイオン再吸水倍率が低く、硬水を灌水すると吸水性が極端に低下する。したがって、土壌に適用しうる吸水性樹脂としては、不適当である。
【0047】
使用例1
土壌表面積が1/5000a(200cm2)のワグネルポットを準備した。一方、実施例11で得られたフィルム状の吸水性樹脂を粉砕してなる質量平均粒子径500μmの粒状の吸水性樹脂を準備した。このワグネルポットに培地として山砂を敷き、その上に10gの目砂及び0.2gの粒状の吸水性樹脂を混合した改善土壌を敷き詰め、平滑に均した。そして、この上にホールカッター(Φ108mm)で切り出した切り芝(株式会社那須ナーセリー製、品種「ケンタッキーブルーグラス」、商品名「ビバターフ」)を中央に設置して張り、空隙を山砂で充填した。芝が根付くまでの1週間は毎日灌水し、その後降雨の影響が無い状態で1ケ月間灌水を停止して、芝の状況を観察した。
【0048】
比較使用例1
吸水性樹脂を使用しない他は、使用例1と同一の方法で芝の状況を観察した。
【0049】
比較使用例2
粒状の吸水性樹脂を、市販品(Aquatrols社製、SuperSorb-F)に変更した他は、使用例1と同一の方法で芝の状況を観察した。
【0050】
使用例1、比較使用例1及び2の芝の状況は、比較使用例1では芝が殆ど枯死したのに対し、使用例1及び比較使用例2では枯死した芝は少なかった。