(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031966
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】廃棄シェルモールド再生処理方法及びそのためのシステム
(51)【国際特許分類】
B22C 5/00 20060101AFI20240229BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20240229BHJP
B03C 1/005 20060101ALI20240229BHJP
B03C 1/30 20060101ALI20240229BHJP
B07B 1/28 20060101ALI20240229BHJP
B07B 4/08 20060101ALI20240229BHJP
B07B 9/00 20060101ALI20240229BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20240229BHJP
B22C 5/04 20060101ALI20240229BHJP
B22C 5/06 20060101ALI20240229BHJP
B22C 5/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B22C5/00 C
B03C1/00 B ZAB
B03C1/005
B03C1/30 Z
B07B1/28 Z
B07B4/08 B
B07B9/00 A
B09B3/35
B22C5/04 A
B22C5/06
B22C5/10
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137117
(22)【出願日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】111132383
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523325130
【氏名又は名称】李連資源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LEELINK RESOURCE TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 177‐2 SHIBANKENG, HOULONG TOWNSHIP, MIAOLI COUNTRY, TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】李 聰棋
【テーマコード(参考)】
4D004
4D021
4E093
【Fターム(参考)】
4D004AA16
4D004AA43
4D004AB03
4D004BA06
4D004CA04
4D004CA09
4D004CA12
4D004CB13
4D021AA03
4D021AB02
4D021AC01
4D021CA03
4D021CB11
4D021EA10
4D021EB01
4D021FA09
4D021GA08
4D021GA17
4D021GB01
4D021HA01
4D021HA10
4E093CA04
4E093CA06
(57)【要約】
【課題】再生シェルモールド砂を提供できる廃棄シェルモールド再生処理方法及びシステムを提供する。
【解決手段】廃棄シェルモールドに対し、粗破砕S2、破砕顆粒篩い分けS3、第1磁選S4、研磨S5、第2磁選S6、乾式空気浮選S7及び振動篩い分けS8等のステップを順番的に行うことで再生シェルモールド砂を得る。研磨ステップS5では、粒径をなるべく維持しながら粗破砕ステップS2及び破砕顆粒篩い分けステップS3で得られた細シェルモールド砂からコロイダルシリカを除去する。第1及び第2磁選ステップS4,S6では、廃棄シェルモールド内に混在している磁性体金属を除去する。乾式空気浮選ステップS7では、廃棄シェルモールド内に混在している非磁性体不純物を除去する。振動篩い分けステップS8では、金属、不純物及びコロイダルシリカが残留していない再生シェルモールド砂が篩い分けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得した廃棄シェルモールドを粗シェルモールド砂に破砕する粗破砕ステップ(a)と、
前記粗シェルモールド砂から、粒径が第1粒径範囲内にある細シェルモールド砂を篩い分ける破砕顆粒篩い分けステップ(b)と、
前記細シェルモールド砂内に混在している磁性体金属粒子を除去する第1磁選ステップ(c)と、
前記細シェルモールド砂を回転させながら互いに衝突させて研磨させ、これにより、当該細シェルモールド砂の表面に付着しているコロイダルシリカを除去してシェルモールド砂粒状材を形成する研磨ステップ(d)と、
前記シェルモールド砂粒状材内に混在している磁性体金属粉末を除去する第2磁選ステップ(e)と、
前記シェルモールド砂粒状材を気流によって吹き飛ばして当該シェルモールド砂粒状材内に混在している非磁性体不純物を除去し、これにより、当該シェルモールド砂粒状材から再生シェルモールド砂を分離する乾式空気浮選ステップ(f)と、
前記再生シェルモールド砂を金属篩上において転動させることで、静電気によって当該再生シェルモールド砂の表面に付着している粉塵を除去し、且つ、当該金属篩上に留まった当該再生シェルモールド砂を回収する振動篩い分けステップ(g)と、
を含む廃棄シェルモールド再生処理方法。
【請求項2】
前記ステップ(d)は、順次に行われる複数の研磨工程を含み、
各前記研磨工程においては、前記細シェルモールド砂を回転させながら互いに衝突させて研磨させる、請求項1に記載の廃棄シェルモールド再生処理方法。
【請求項3】
前記ステップ(f)において、
前記非磁性体不純物には、密度が前記再生シェルモールド砂の密度よりも大きい非磁性体不純物粒子と、粒径が当該再生シェルモールド砂の粒径よりも小さい非磁性体不純物粉末とが含まれており、
気流が上方に吹くと、前記再生シェルモールド砂は空中に浮遊し、前記非磁性体不純物粉末は気流によって前記再生シェルモールド砂から吹き飛ばされる、請求項2に記載の廃棄シェルモールド再生処理方法。
【請求項4】
前記ステップ(f)において、気流は傾斜気流であり、気流が吹く間に、シェルモールド砂粒状材は水平方向において移動する、請求項1から3のいずれか一項に記載の廃棄シェルモールド再生処理方法。
【請求項5】
前記ステップ(g)は複数の振動篩い分け工程を含み、
前記複数の振動篩い分け工程では互いに異なるメッシュサイズの金属篩が使用され、
前記金属篩のメッシュサイズは、前記複数の振動篩い分け工程が行われる順に従って大から小へ変化する、請求項4に記載の廃棄シェルモールド再生処理方法。
【請求項6】
前記ステップ(g)は四つの振動篩い分け工程を含み、
前記金属篩のメッシュサイズは、第1振動篩い分け工程、第2振動篩い分け工程、第3振動篩い分け工程、第4振動篩い分け工程の順に従って小さくなり、
前記第1振動篩い分け工程では、粒径が第2粒径範囲内にある再生シェルモールド砂を回収し、当該第2粒径範囲は、当該第1振動篩い分け工程で使用される前記金属篩のメッシュサイズと、前記第1粒径範囲の最大値との間にある範囲であり、
前記第2振動篩い分け工程では、粒径が第3粒径範囲内にある再生シェルモールド砂を回収し、当該第3粒径範囲は、当該第2振動篩い分け工程で使用される前記金属篩のメッシュサイズと、前記第1振動篩い分け工程で使用される前記金属篩のメッシュサイズとの間の範囲であり、
前記第3振動篩い分け工程では、粒径が第4粒径範囲内にある再生シェルモールド砂を回収し、当該第4粒径範囲は、当該第3振動篩い分け工程で使用される前記金属篩のメッシュサイズと、前記第2振動篩い分け工程で使用される前記金属篩のメッシュサイズとの間の範囲であり、
前記第4振動篩い分け工程では、粒径が第5粒径範囲内にある再生シェルモールド砂を回収し、当該第5粒径範囲は、当該第4振動篩い分け工程で使用される前記金属篩のメッシュサイズと、前記第3振動篩い分け工程で使用される前記金属篩のメッシュサイズとの間の範囲である、請求項5に記載の廃棄シェルモールド再生処理方法。
【請求項7】
前記第1粒径範囲は4mmから6mmの間の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の廃棄シェルモールド再生処理方法。
【請求項8】
廃棄シェルモールドを粗シェルモールド砂に破砕する破砕機と、
前記破砕機に接続されており、当該破砕機において得られた前記粗シェルモールド砂を受け入れて当該粗シェルモールド砂から粒径が第1粒径範囲内にある細シェルモールド砂を篩い分ける篩い分け機と、
前記篩い分け機に接続されており、当該篩い分け機において篩い分けられた前記細シェルモールド砂を受け入れて当該細シェルモールド砂内に混在している磁性体金属粒子を除去する第1磁選機と、
前記第1磁選機に接続されている研磨機であって、当該第1磁選機からの前記細シェルモールド砂を受け入れて回転させる少なくとも一つの研磨室を有し、当該少なくとも一つの研磨室内において当該細シェルモールド砂が互いに衝突して研磨されることで、当該細シェルモールド砂の表面に付着しているコロイダルシリカが除去されてシェルモールド砂粒状材が得られる研磨機と、
前記研磨機に接続されており、当該研磨機において得られた前記シェルモールド砂粒状材を受け入れて当該シェルモールド砂粒状材内に混在している磁性体金属粉末を除去する第2磁選機と、
前記第2磁選機に接続されている乾式空気浮選機であって、当該第2磁選機からの前記シェルモールド砂粒状材を受け入れる浮選室を有し、当該浮選室内において、当該シェルモールド砂粒状材内に混在している非磁性体不純物粒子が除去され且つ当該シェルモールド砂粒状材に混在している非磁性体不純物粉末が吹き飛ばされることで、再生シェルモールド砂が分離される乾式空気浮選機と、
前記乾式空気浮選機に接続されている回転振動篩機であって、当該乾式空気浮選機において分離された前記再生シェルモールド砂を受け入れる金属篩を有し、当該金属篩上で当該再生シェルモールド砂が転動することで、静電気によって当該再生シェルモールド砂の表面に付着している粉塵が除去され、当該金属篩上に留まった当該再生シェルモールド砂が回収される回転振動篩機と、を備えた廃棄シェルモールド再生処理システム。
【請求項9】
前記破砕機は、破砕ドラムを有するドラム型の破砕機であり、
前記破砕ドラムは、
前記廃棄シェルモールドを前記破砕ドラム内に供給するための廃棄シェルモールドインレットと、
前記粗シェルモールド砂を前記破砕ドラムから排出するための粗シェルモールド砂アウトレットと、を有し、前記廃棄シェルモールドインレットの開口方向と、前記粗シェルモールド砂アウトレットの開口方向とは互いに直交である、請求項8に記載の廃棄シェルモールド再生処理システム。
【請求項10】
前記篩い分け機は有孔篩板を有する、請求項8又は9に記載の廃棄シェルモールド再生処理システム。
【請求項11】
前記研磨機は、
外部ケーシングと、
前記外部ケーシングと共に前記少なくとも一つの研磨室を画定するように当該外部ケーシング内に配置されている底板であって、当該底板に対して直交する排気管が複数設けられている底板と、
前記外部ケーシングに設けられて前記少なくとも一つの研磨室と連通し、前記第1磁選機からの前記細シェルモールド砂を当該少なくとも一つの研磨室内に供給するための細シェルモールド砂インレットと、
前記外部ケーシングに設けられて前記少なくとも一つの研磨室と連通し、前記シェルモールド砂粒状材を当該少なくとも一つの研磨室から排出するためのシェルモールド砂粒状材アウトレットと、
前記底板における前記排気管から所定の距離だけ離間するように前記少なくとも一つの研磨室内に配置されている少なくとも一つのローラと、
前記少なくとも一つのローラに連結されて当該少なくとも一つのローラを回転駆動させるように、前記外部ケーシング上に設けられている少なくとも一つの駆動装置と、
を有する、請求項8又は9に記載の廃棄シェルモールド再生処理システム
【請求項12】
前記外部ケーシング内に気流室が更に形成され、前記底板により前記気流室と前記少なくとも一つの研磨室とが仕切られ、前記排気管は前記少なくとも一つの研磨室と前記気流室とを連通し、
前記外部ケーシングにおける、前記気流室に対応する中央部に給気口が設けられている、請求項11に記載の廃棄シェルモールド再生処理システム。
【請求項13】
前記研磨機は三つの仕切り板を更に有し、
前記三つの仕切り板は、互いに間隔をあけて前記底板上に直立に設けられ、第1研磨室、第2研磨室、第3研磨室及び第4研磨室を画定し、
各前記仕切り板に、前記第1研磨室から前記第4研磨室を互いに連通させる傾斜連通路が形成され、
前記細シェルモールド砂インレットは前記第1研磨室と連通し、
前記シェルモールド砂粒状材アウトレットは前記第4研磨室と連通し、
前記ローラの数量は四つであり、四つの前記ローラは前記第1研磨室から前記第4研磨室内にそれぞれ配置され、
前記駆動装置の数量は四つであり、四つの前記駆動装置は前記ローラとそれぞれ連結している、請求項12に記載の廃棄シェルモールド再生処理システム。
【請求項14】
前記乾式空気浮選機は、
前記第2磁選機からのシェルモールド砂粒状材を前記浮選室内に供給するためのシェルモールド砂粒状材インレットと、前記再生シェルモールド砂を前記浮選室から排出するための再生シェルモールド砂アウトレットとが対向する両側に形成されたケーシングと、
前記シェルモールド砂粒状材インレット及び前記再生シェルモールド砂アウトレットの下方に位置するように前記ケーシング内に配置されている底板であって、互いに間隔をあけて配列され、前記ケーシングの前記再生シェルモールド砂アウトレットに向かって傾斜するように前記浮選室内に延出している複数の傾斜排気管を有する底板と、
を更に有し、
前記乾式空気浮選機の前記底板は、前記ケーシングと共に前記浮選室を画定し、
前記浮選室は、前記シェルモールド砂粒状材インレット及び前記再生シェルモールド砂アウトレットと連通している、請求項8又は9に記載の廃棄シェルモールド再生処理システム。
【請求項15】
前記ケーシング内に気流室が更に形成され、前記気流室及び前記浮選室は、前記乾式空気浮選機の前記底板によって仕切られ、前記傾斜排気管は、前記浮選室及び前記気流室を連通させ、
前記乾式空気浮選機の前記ケーシングにおける、前記気流室に対応する中央部には給気口が設けられ、
前記乾式空気浮選機の前記ケーシングに、前記浮選室と連通している集塵器が更に設けられている、請求項14に記載の廃棄シェルモールド再生処理システム。
【請求項16】
前記回転振動篩機は、
振動ユニットと、
外側に前記振動ユニットが連結されている枠部と、
前記枠部内に斜めに固定されている少なくとも一つの篩枠体であって、メッシュサイズが同一である複数の金属篩と、当該少なくとも一つの篩枠体の最も低い側に設けられている再生シェルモールド砂出口とを有する少なくとも一つの篩枠体と、
を更に有する、請求項8又は9に記載の廃棄シェルモールド再生処理システム。
【請求項17】
前記少なくとも一つの篩枠体の数量は四つであり、第1篩枠体、第2篩枠体、第3篩枠体及び第4篩枠体は、前記枠部内に上から下へ順番的に固定され、当該第1篩枠体から第4篩枠体は、前記振動ユニットに近い側から、当該振動ユニットから離れた側に向かって傾斜しており、
前記第1篩枠体から前記第3篩枠体のそれぞれに傾斜ホッパが設けられており、前記傾斜ホッパはそれぞれ、前記第1篩枠体から前記第3篩枠体のうちの対応する篩枠体及び当該篩枠体の前記金属篩の下方に配置され、前記傾斜ホッパは、前記振動ユニットから離れた側から、前記振動ユニットに近い側に向かって傾斜しており、各前記傾斜ホッパにおける前記振動ユニットに近い側に開口部が形成され、
前記第1篩枠体から前記第4篩枠体のそれぞれに配置されている前記金属篩のメッシュサイズは、当該第1篩枠体から当該第4篩枠体の順に従って小さくなる、請求項16に記載の廃棄シェルモールド再生処理システム。
【請求項18】
前記第1磁選機及び前記第2磁選機の内部に電磁石がそれぞれ配置されている、請求項8又は9に記載の廃棄シェルモールド再生処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物の再生処理方法及びそのためのシステムに関し、特にロストワックス鋳造法において生じた廃棄シェルモールドを再生シェルモールド砂に再生する再生処理方法及びそのためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロストワックス鋳造法は、予め成形されて外形が鋳物と一致する蝋型を、シェルモールド砂にコロイダルシリカを混ぜて作製したシェルモールドで被覆し、その次に脱ロウ処理してシェルモールド内に形成したキャビティ内に液状金属を流し込み、金属が冷却して硬化した後にシェルモールドを破砕させて鋳物を取り出す製法である。この過程中に生じた廃棄シェルモールドは破砕されており且つシェルモールド砂がコロイダルシリカによって被覆されているため、再利用することができず、埋め立て処分する必要があった。しかしながら、環境保護意識の高まりにより、廃棄シェルモールドの埋め立てにかかる費用は日増しに高まっているため、鋳造工程で再利用できるように廃棄シェルモールドをシェルモールド砂に再生する技術が求められていた。
【0003】
従来より知られている廃棄シェルモールド処理システムが
図9に示されており、当該廃棄シェルモールド処理システムは、二つの破砕ローラ911を有する破砕ユニット91と、湿度制御モジュール92と、剥離ユニット93と、篩94とを備えている。湿度制御モジュール92は破砕ユニット91の下方に配置されている。剥離ユニット93は、湿度制御モジュール92の下方に配置されている。剥離ユニット93の筒体931の内部には、二つの羽根933が設けられた回転軸932が挿設されており、筒体931の内壁面には、当該二つの羽根933に対応して二つの突起リブ934が周設されている。篩94は剥離ユニット93の下方に配置されている。
図9に示すように、廃棄シェルモールド90を廃棄シェルモールド処理システムによってシェルモールド砂に再生することが可能である。当該廃棄シェルモールド90は、ロストワックス鋳造法において生じたものであるため、磁性体金属粒子(例えば鉄)及び非磁性体不純物粒子(例えばステンレス、チタニウム、又はアルミニウム、ジルコン砂など)が混在している。上記廃棄シェルモールド処理システムにおいて、廃棄シェルモールド90は、破砕ユニット91内に送り込まれて比較的に容易に処理できる廃棄シェルモールド破片901に破砕された後、湿度制御モジュール92によって乾燥される。破砕ユニット91において生じた廃棄シェルモールド破片901は、剥離ユニット93内に送り込まれると、回転する羽根933との衝突により突起リブ934へ弾き飛ばされて突起リブ934間溜まったコロイダルシリカと摩擦し、これにより、廃棄シェルモールド破片901の表面からコロイダルシリカが剥離し、再生シェルモールド砂顆粒902が生成される。再生シェルモールド砂顆粒902は、篩94により、再生シェルモールド砂及び廃棄シェルモールド残渣903に篩い分けられる。
【0004】
しかしながら、上記廃棄シェルモールド処理システムは、廃棄シェルモールド内に混在している磁性体金属粒子を分離することができず、また、非磁性体不純物粒子を効果的に分離することができない。更に、剥離ユニットの羽根との衝突により、廃棄シェルモールド破片は粒径が小さすぎる粉末に粉砕されてしまうのであるが、不純物が多く混在している再生シェルモールド砂粉末はシェルモールド砂の代わりにはならないので、従来の廃棄シェルモールド処理システムは再生シェルモールド砂の回収率が低い。したがって、従来の廃棄シェルモールド処理システムを更に改良する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、廃棄シェルモールドに混在する磁性体金属粒子を分離することができなく、また、非磁性体不純物粒子を効果的に分離することができず、且つ廃棄シェルモールド破片を粒径が小さすぎる粉末に粉砕してしまうという上記廃棄シェルモールド処理システムの問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、元のシェルモールド砂の代替として使用可能な高品質な再生シェルモールド砂を提供できる、分離効率及び回収率に優れた廃棄シェルモールド再生処理方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記発明の目的を達成するために提供される本発明に係る廃棄シェルモールド再生処理方法は、
取得した廃棄シェルモールドを粗シェルモールド砂に破砕する粗破砕ステップ(a)と、
前記粗シェルモールド砂から、粒径が第1粒径範囲内にある細シェルモールド砂を篩い分ける破砕顆粒篩い分けステップ(b)と、
前記細シェルモールド砂内に混在している磁性体金属粒子を除去する第1磁選ステップ(c)と、
前記細シェルモールド砂を回転させながら互いに衝突させて研磨させ、これにより、当該細シェルモールド砂の表面に付着しているコロイダルシリカを除去してシェルモールド砂粒状材を形成する研磨ステップ(d)と、
前記シェルモールド砂粒状材内に混在している磁性体金属粉末を除去する第2磁選ステップ(e)と、
前記シェルモールド砂粒状材を気流によって吹き飛ばして当該シェルモールド砂粒状材内に混在している非磁性体不純物を除去し、これにより、当該シェルモールド砂粒状材から再生シェルモールド砂を分離する乾式空気浮選ステップ(f)と、
前記再生シェルモールド砂を金属篩上において転動させることで、静電気によって当該再生シェルモールド砂の表面に付着している粉塵を除去し、且つ、当該金属篩上に留まった当該再生シェルモールド砂を回収する振動篩い分けステップ(g)と、
を含む点に特徴がある。
【0007】
上記発明の目的を達成するために提供される本発明に係る廃棄シェルモールド再生処理システムは、
廃棄シェルモールドを粗シェルモールド砂に破砕する破砕機と、
前記破砕機に接続されており、当該破砕機において得られた前記粗シェルモールド砂を受け入れて当該粗シェルモールド砂から粒径が第1粒径範囲内にある細シェルモールド砂を篩い分ける篩い分け機と、
前記篩い分け機に接続されており、当該篩い分け機において篩い分けられた前記細シェルモールド砂を受け入れて当該細シェルモールド砂内に混在している磁性体金属粒子を除去する第1磁選機と、
前記第1磁選機に接続されている研磨機であって、当該第1磁選機からの前記細シェルモールド砂を受け入れて回転させる少なくとも一つの研磨室を有し、当該少なくとも一つの研磨室内において当該細シェルモールド砂が互いに衝突して研磨されることで、当該細シェルモールド砂の表面に付着しているコロイダルシリカが除去されてシェルモールド砂粒状材が得られる研磨機と、
前記研磨機に接続されており、当該研磨機において得られた前記シェルモールド砂粒状材を受け入れて当該シェルモールド砂粒状材内に混在している磁性体金属粉末を除去する第2磁選機と、
前記第2磁選機に接続されている乾式空気浮選機であって、当該第2磁選機からの前記シェルモールド砂粒状材を受け入れる浮選室を有し、当該浮選室内において、当該シェルモールド砂粒状材内に混在している非磁性体不純物粒子が除去され且つ当該シェルモールド砂粒状材に混在している非磁性体不純物粉末が吹き飛ばされることで、再生シェルモールド砂が分離される乾式空気浮選機と、
前記乾式空気浮選機に接続されている回転振動篩機であって、当該乾式空気浮選機において分離された前記再生シェルモールド砂を受け入れる金属篩を有し、当該金属篩上で当該再生シェルモールド砂が転動することで、静電気によって当該再生シェルモールド砂の表面に付着している粉塵が除去され、当該金属篩上に留まった当該再生シェルモールド砂が回収される回転振動篩機と、を備える点に特徴がある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、廃棄シェルモールドに混在する磁性体金属及び非磁性体不純物を効果的に除去することができ、且つ、元のシェルモールド砂の粒径に近い粒径を有する再生シェルモールド砂を得ることができる。得られた再生シェルモールド砂は、元のシェルモールド砂の代替として使用可能である。本発明によれば、再生シェルモールド砂の回収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る廃棄シェルモールド再生処理方法のフローチャートを示す図である。
【
図2】本発明に係る廃棄シェルモールド再生処理システムの概略構成を示す図である。
【
図4】
図3に示す研磨機の動作を示す模式図である。
【
図6】
図5に示す乾式空気浮選機の動作を示す模式図である。
【
図9】従来の廃棄シェルモールド処理装置の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、本発明に係る廃棄シェルモールド再生処理方法は、以下のステップS1~S9を含む。
【0011】
まず、廃棄シェルモールドを取得する廃棄シェルモールド供給ステップS1が行われる。本実施形態では、廃棄シェルモールドはロストワックス鋳造法において生じた廃棄物である。廃棄シェルモールドには、コロイダルシリカによって被覆されたシェルモールド砂が含まれており、且つ磁性体金属粒子及び非磁性体不純物粒子が混在している。
【0012】
廃棄シェルモールド供給ステップS1の後に、取得された廃棄シェルモールドを粗シェルモールド砂に破砕する粗破砕ステップS2が行われる。破砕の過程において、廃棄シェルモールド内に埋め込まれていた磁性体金属粒子及び非磁性体不純物粒子は、廃棄シェルモールドから分離されて粗シェルモールド砂内に混在することになる。
【0013】
粗破砕ステップS2の後に、破砕顆粒篩い分けステップS3が行われる。粗破砕ステップS2において破砕された粗シェルモールド砂は粒径が不揃いである。本ステップでは、粗シェルモールド砂から、第1粒径範囲内にある粒径を有する細シェルモールド砂を篩い分けた。本実施形態では、第1粒径範囲は4mmから6mmの間にある範囲であるが、これに限定されない。なお、粗シェルモールド砂内に混在している磁性体金属粒子及び非磁性体不純物粒子は、その粒径が比較的に小さいため、本ステップでは細シェルモールド砂と共に篩い分けられて細シェルモールド砂内に混在することになる。
【0014】
破砕顆粒篩い分けステップS3の後に、細シェルモールド砂内に混在している磁性体金属粒子を磁力により除去する第1磁選ステップS4が行われる。
【0015】
第1磁選ステップS4の後に、研磨ステップS5が行われる。本ステップでは、上昇気流によって細シェルモールド砂を上向きに吹き上げて回転させ、細シェルモールド砂同士を互いに衝突させて研磨させる。これにより、細シェルモールド砂の表面に付着したコロイダルシリカが除去され、シェルモールド砂粒状材が形成される。本実施形態において、研磨ステップS5には、コロイダルシリカが除去されている間に細シェルモールド砂の表面の角を落し、シェルモールド砂粒状材の最終的な形状を丸みを帯びた形状とする複数の研磨工程が含まれている。なお、細シェルモールド砂を回転させて細シェルモールド砂同士を互いに衝突させて研磨させる各研磨工程は低応力研磨であるため、研磨後の殆どの細シェルモールド砂の粒径は前述した第1粒径範囲内に保たれる。本実施形態において、研磨ステップS5には四つの研磨工程が含まれているが、本発明はこれに限定されない。また、研磨ステップS5においては、少量の磁性体金属粉末、除去されたコロイダルシリカの粉末、及びシェルモールド砂の微細な粉末が依然として形成されるが、これらの粉末はシェルモールド砂粒状材内に混在することになる。そして、非磁性体不純物粒子のうちの小さな一部も研磨されて非磁性体不純物粉末となるが、この粉末も同じくシェルモールド砂粒状材内に混在することになる。
【0016】
研磨ステップS5の後に、シェルモールド砂粒状材内に混在している磁性体金属粉末を磁力により除去する第2磁選ステップS6が行われる。
【0017】
第2磁選ステップS6の後に、乾式空気浮選ステップS7が行われる。本ステップでは、気流によってシェルモールド砂粒状材を吹き飛ばすことで、シェルモールド砂粒状材内に混在している非磁性体不純物を除去し、シェルモールド砂粒状材から再生シェルモールド砂を分離する。非磁性体不純物には非磁性体不純物粒子及び非磁性体不純物粉末が含まれている。本ステップでは、再生シェルモールド砂と非磁性体不純物粒子とを、その密度の差を利用して分離させ、また、再生シェルモールド砂と非磁性体不純物粉末とを、その粒径の差を利用して分離させる。すなわち、気流によってシェルモールド砂粒状材を吹き飛ばす際、密度が再生シェルモールド砂よりも大きい非磁性体不純物粒子は気流によって吹き飛ばされずに除去され、一方、適度な密度及び粒径を有する再生シェルモールド砂は気流によって吹き飛ばされて空中に浮遊する。そして、粒径が再生シェルモールド砂よりも小さい非磁性体不純物粉末はさらに、再生シェルモールド砂から吹き飛ばされて気流の方向に沿って遠くへ移動される。非磁性体不純物粉末は集塵ステップにおいて除去することができる。これにより、再生シェルモールド砂が分離される。好ましい実施形態では、シェルモールド砂粒状材を斜めに流れる気流によって吹き飛ばす。この場合、シェルモールド砂粒状材は水平方向において移動するので、空中に浮遊する再生シェルモールド砂の回収が容易になる。なお、ここでいう再生シェルモールド砂よりも密度が大きい非磁性体不純物粒子は、少なくともステンレス、チタニウム、又はアルミニウム、ジルコン砂などを含むが、これらに限定されない。
【0018】
乾式空気浮選ステップS7の後に、振動篩い分けステップS8が行われる。本ステップでは、再生シェルモールド砂を金属篩上で旋回させて転がり落とさせ、再生シェルモールド砂と金属篩とを十分に接触させる。これにより、静電気によって再生シェルモールド砂の表面に付着している粉塵が除去される。金属篩に残った再生シェルモールド砂は回収される。本実施形態において、振動篩い分けステップS8には複数の振動篩い分け工程が含まれていてもよい。複数の振動篩い分け工程では異なるメッシュサイズの金属篩が使用され、これらの金属篩は、工程の順に従ってメッシュサイズが小さくなるように配置される。四つの振動篩い分け工程が含まれる場合を例にすると、金属篩のメッシュサイズは、第1篩い分け工程から第4篩い分け工程の順に従って小さくなり、この場合、第2粒径範囲~第5粒径範囲のうちの各粒径範囲内の粒径を有する再生シェルモールド砂が回収される。
【0019】
本実施形態において、第1振動篩い分け工程では、第2粒径範囲内の粒径を有する再生シェルモールド砂を回収する。第2粒径範囲は、第1振動篩い分け工程で使用される金属篩のメッシュサイズと、前述した第1粒径範囲の最大値である6mmとの間の範囲である。第2振動篩い分け工程では、第3粒径範囲内の粒径を有する再生シェルモールド砂を回収する。第3粒径範囲は、第2振動篩い分け工程で使用される金属篩のメッシュサイズと、第1振動篩い分け工程で使用される金属篩のメッシュサイズとの間の範囲である。第3振動篩い分け工程では、第4粒径範囲内の粒径を有する再生シェルモールド砂を回収する。第4粒径範囲は、第3振動篩い分け工程で使用される金属篩のメッシュサイズと、第2振動篩い分け工程で使用される金属篩のメッシュサイズとの間の範囲である。第4振動篩い分け工程では、第5粒径範囲内の粒径を有する再生シェルモールド砂を回収する。第5粒径範囲は、第4振動篩い分け工程で使用される金属篩のメッシュサイズと、第3振動篩い分け工程で使用される金属篩のメッシュサイズとの間の範囲である。
【0020】
振動篩い分けステップS8の後に、振動篩い分けステップS8において金属篩から回収された再生シェルモールド砂を貯蔵庫に送る再生シェルモールド砂排出ステップS9が行われる。本実施形態においては、四つの振動篩い分け工程で異なる粒径の再生シェルモールド砂が回収されるので、再生シェルモールド砂排出ステップS9において、第2粒径範囲内にある粒径を有する再生シェルモールド砂の平均粒度は22Sであり、第3粒径範囲内にある粒径を有する再生シェルモールド砂の平均粒度は35Sであり、第4粒径範囲内にある粒径を有する再生シェルモールド砂の平均粒度は60Sであり、第5粒径範囲内にある粒径を有する再生シェルモールド砂の平均粒度は70Sである。但し、再生シェルモールド砂の平均粒度はこれに限定されない。
【0021】
以上のように、研磨ステップS5における低応力研磨工程によれば、細シェルモールド砂に付着しているコロイダルシリカを効果的に除去し、且つ細シェルモールド砂の表面上の角を落とすことができ、その結果、丸みを帯びたシェルモールド砂粒状材を得ることができる。研磨ステップS5の前及び後に行われる磁選ステップS4、S6によれば、細シェルモールド砂及びシェルモールド砂粒状材内に夫々混在している磁性体金属粒子及び磁性体金属粉末を効果的に除去することができる。乾式空気浮選S7によれば、シェルモールド砂粒状材を気流によって吹き飛ばすだけで、シェルモールド砂粒状材内に混在している非磁性体不純物粒子及び非磁性体不純物粉末を効果的に除去し、シェルモールド砂粒状材から再生シェルモールド砂を分離することができる。したがって、従来の浮選ステップで使用される水及び界面活性剤が不要であり、廃水や及び汚染物質が発生することもない。振動篩い分けステップS8によれば、再生シェルモールド砂を金属篩と十分に接触させて静電気を除去することができ、これにより、静電気によって再生シェルモールド砂の表面に付着している粉塵を除去することができる。したがって、本発明に係るシェルモールド砂再生処理方法によって得られた再生シェルモールド砂には次の利点がある。まず、金属及び不純物の残留量が低い。そして、形状が丸みを帯びているため、鋳物の成形後に容易に崩壊させることができる。更に、粉塵の残留量が低く通気性が高いため、鋳物内に気泡が発生しにくく、鋳物の歩留りが向上する。よって、本発明に係るシェルモールド砂再生処理方法によって得られた再生シェルモールド砂は、確かに元のシェルモールド砂の代替として使用可能である。
【0022】
以下、本発明に係る廃棄シェルモールド再生処理システムについて更に詳しく説明する。
図2に示すように、廃棄シェルモールド再生処理システムは破砕機20、篩い分け機30、第1磁選機40、研磨機50、第2磁選機60、乾式空気浮選機70及び回転振動篩機80を備える。
【0023】
破砕機20は、取得した廃棄シェルモールド10を粗シェルモールド砂11に破砕するために物である。廃棄シェルモールド10の表面はコロイダルシリカによって覆われている。本実施形態において、破砕機20はドラム型の破砕機であってもよい。ドラム型の破砕機の破砕ドラム21は、廃棄シェルモールドインレット211及び粗シェルモールド砂アウトレット212を有する。廃棄シェルモールド10は廃棄シェルモールドインレット211を通して破砕ドラム21内に供給される。粗シェルモールド砂11は粗シェルモールド砂アウトレット212を通して破砕ドラム21から排出される。廃棄シェルモールドインレット211の開口の方向と、粗シェルモールド砂アウトレット212の開口の方向とは互いに直交である。したがって、廃棄シェルモールド10は廃棄シェルモールドインレット211を通して破砕ドラム21内に供給されて粗シェルモールド砂11に破砕される。そして、粗シェルモールド砂11は粗シェルモールド砂アウトレット212を通して破砕ドラム21から排出される。破砕後の粗シェルモールド砂11には、磁性体金属粒子15及び非磁性体不純物粒子が混在している。これらの粒子は、粗シェルモールド砂11と共に粗シェルモールド砂アウトレット212を通して破砕ドラム21から排出される。
【0024】
篩い分け機30は、破砕機20において得られて粗シェルモールド砂アウトレット212を通して破砕機20から排出された粗シェルモールド砂11を受け取る有孔篩板31を有する。破砕機20において得られた粗シェルモールド砂11は粒径が均一ではない。篩い分け機30は、粗シェルモールド砂11から、粒径が第1粒径範囲内にある細シェルモールド砂12を篩い分ける。本実施形態において、第1粒径範囲は、4mmから6mmの間にある範囲である。但し、第1粒径範囲はこれに限定されない。なお、粗シェルモールド砂11内に混在している磁性体金属粒子15、磁性体金属粉末、非磁性体不純物粒子及び非磁性体粉末は、粒径が比較的に小さいため、細シェルモールド砂121内に混在したまま、粗シェルモールド砂11から篩い分けられる。
【0025】
第1磁選機40は、篩い分け機30によって篩い分けられた細シェルモールド砂12を受け入れ、且つ、当該細シェルモールド砂12内に混在している磁性体金属粒子15を除去するための磁力を発生する。本実施形態において、第1磁選機40の内部には、細シェルモールド砂12内に混在している磁性体金属粒子15を除去する磁力の発生源となる電磁石41が配置されている。但し、第1磁選機40の磁力の発生源はこれに限定されない。
【0026】
図2及び
図3に示すように、研磨機50は、第1磁選機40からの細シェルモールド砂12を受け入れる少なくとも一つの研磨室521を有する。少なくとも一つの研磨室521において、細シェルモールド砂12は、
図4に示すように、上昇気流によって上方に吹き飛ばされる。研磨機50は更に、少なくとも一つの研磨室521内に配置されている少なくとも一つのローラ56を有する。少なくとも一つのローラ56は、少なくとも一つの研磨室521内に収容されて空中に浮遊している細シェルモールド砂12を動かして回転させ、細シェルモールド砂12同士を互いに衝突させて研磨させる。これにより、細シェルモールド砂12の表面に付着しているコロイダルシリカが除去され、シェルモールド砂粒状材13が形成される。本実施形態において、研磨機50は四つの研磨室521を有する。コロイダルシリカが除去される間に、細シェルモールド砂12の表面の角は更に研磨されて落される。したがって、シェルモールド砂粒状材の最終的な形状は丸みを帯びた形状となる。なお、研磨室521内において回転しながら互いに衝突することによる細シェルモールド砂12の研磨は低応力の研磨であるため、研磨後の殆どの細シェルモールド砂12の粒径は前述した第1粒径範囲内に保たれる。
【0027】
第2磁選機60は、研磨機50において得られたシェルモールド砂粒状材13を受け入れ、且つ、当該シェルモールド砂粒状材13内に混在している磁性体金属粉末を除去するための磁力を発生する。本実施形態において、第2磁選機60の内部には、磁性体金属粉末を除去する磁力の発生源となる電磁石61が配置されている。但し、第2磁選機60の磁力の発生源はこれに限定されない。
【0028】
図2及び
図5に示すように、乾式空気浮選機70は、第2磁選機60からのシェルモールド砂粒状材13を受け入れる浮選室73を有する。浮選室73においてシェルモールド砂粒状材13が気流によって吹き飛ばされる間に、シェルモールド砂粒状材13内に混在している非磁性体不純物が除去され、これにより、シェルモールド砂粒状材13から再生シェルモールド砂14が分離される。非磁性体不純物には非磁性体不純物粒子及び非磁性体不純物粉末が含まれている。乾式空気浮選機70は、再生シェルモールド砂14と非磁性体不純物粒子とを、その密度の差を利用して分離させ、また、再生シェルモールド砂14と非磁性体不純物粉末とを、その粒径の差を利用して分離させる。
【0029】
図2及び
図7に示すように、回転振動篩機80は、乾式空気浮選機70において分離された再生シェルモールド砂14を受け入れる金属篩831を有する。再生シェルモールド砂14が金属篩831上で転がり落ちる間に、静電気によって再生シェルモールド砂14の表面に付着している粉塵が除去される。金属篩831に残った再生シェルモールド砂14は回収される。
【0030】
以下、研磨機50の構造について更に詳しく説明する。
図3及び
図4に示すように、研磨機50は、外部ケーシング51、底板52、細シェルモールド砂インレット53、シェルモールド砂粒状材アウトレット54、少なくとも一つのローラ56、及び少なくとも一つの駆動装置57を有する。底板52は、少なくとも一つの研磨室521と、気流室523とを画定するように外部ケーシング51内に配置されている。底板52には、少なくとも一つの研磨室521と気流室523とを連通させる複数の排気管522が設けられている。本実施形態において、これらの排気管522はいずれも底板52に対して直交している。少なくとも一つの研磨室521は底板52の上側に位置し、気流室523は底板52の下側に位置する。外部ケーシング51における、気流室523に対応する中央部には給気口524が設けられている。細シェルモールド砂インレット53は、第1磁選機40からの細シェルモールド砂12が当該細シェルモールド砂インレット53を通って少なくとも一つの研磨室521内に供給されるように、外部ケーシング51の一つの側面に設けられて少なくとも一つの研磨室521と連通している。シェルモールド砂粒状材アウトレット54は、研磨機50において得られたシェルモールド砂粒状材13が当該シェルモールド砂粒状材アウトレット54を通って少なくとも一つの研磨室521から排出されるように、外部ケーシング51上に設けられて少なくとも一つの研磨室521と連通している。少なくとも一つのローラ56は、底板52における排気管522から所定の距離だけ離間するように少なくとも一つの研磨室521内に配置されている。少なくとも一つの駆動装置57は、少なくとも一つのローラ56に連結されて当該少なくとも一つのローラ56を回転駆動させるように、外部ケーシング51上に設けられている。
【0031】
本実施形態において、研磨機50は、互いに間隔をあけて底板52上に直立に設けられ、第1研磨室521a、第2研磨室521b、第3研磨室521c及び第4研磨室521dを画定する三つの仕切り板55を更に有する。各仕切り板55に傾斜連通路551が形成されている。
図4に示すように、第1研磨室521aは、第1研磨室521aから第2研磨室521bに向かって斜めに延びる傾斜連通路551aを介して第2研磨室521bと連通している。同じように、第2研磨室521bは、第2研磨室521bから第3研磨室521cに向かって斜めに延びる傾斜連通路551bを介して第3研磨室521cと連通している。第3研磨室521cは、第3研磨室521cから第4研磨室521dに向かって斜めに延びる傾斜連通路551cを介して第4研磨室521dと連通している。細シェルモールド砂インレット53は第1研磨室521aと連通し、シェルモールド砂粒状材アウトレット54は第4研磨室521dと連通している。ローラ56の数量は四つであり、四つのローラ56は第1研磨室~第4研磨室521a、521b、521c、521d内にそれぞれ配置されている。駆動装置57の数量はローラ56に対応するように四つであり、四つの駆動装置57はローラ56とそれぞれ連結している。
【0032】
以下、研磨機50による研磨動作について更に詳しく説明する。
図4に示すように、気流は給気口524から気流室523に入り、排気管522を通って第1研磨室~第4研磨室521a、521b、521c、521d内において上方に吹き出される。同時に、第1磁選機40からの細シェルモールド砂12は細シェルモールド砂インレット53から研磨機50の第1研磨室521a内に供給され、排気管522から吹き出される気流によって上方に吹き飛ばされて第1研磨室521a内において浮遊する。第1研磨室521a内のローラ56は、駆動装置57によって回転駆動され、細シェルモールド砂12を第1研磨室521a内において回転させながら互いに衝突させて研磨させる。これにより、細シェルモールド砂12に付着しているコロイダルシリカが除去され、細シェルモールド砂12の表面の角が落とされる。第1研磨室521a内に溜まった細シェルモールド砂12の高さが仕切り板55の傾斜連通路551aの高さに到達すると、一部の細シェルモールド砂12は第2研磨室521b内に押し込まれる。第2研磨室521bにおいて、細シェルモールド砂12上のコロイダルシリカを更に除去して細シェルモールド砂12の表面の角を更に落とす研磨が引き続き行われる。その後、同様にして、細シェルモールド砂12は、順を追って第3研磨室521c、第4研磨室521d内に押し込まれて、これらの研磨室内において研磨される。研磨機50での研磨により、少量の磁性体金属粉末、除去されたコロイダルシリカの粉末、及びシェルモールド砂の微細な粉末が形成されが、これらの粉末は、表面がコロイダルシリカによって覆われていないシェルモールド砂粒状材13内に混在することになる。そして、非磁性体不純物粒子のうちの小さな一部も研磨されて非磁性体不純物粉末となるが、この粉末もやはり表面がコロイダルシリカによって覆われていないシェルモールド砂粒状材13内に混在することになる。最終的に、表面がコロイダルシリカによって覆われていないシェルモールド砂粒状材13は、シェルモールド砂粒状材アウトレット54を通って研磨機50から排出される。
【0033】
以下、乾式空気浮選機70の構造について更に詳しく説明する。
図5及び
図6に示すように、乾式空気浮選機70は、ケーシング71及び底板72を有する。ケーシング71の互いに対向する二つの側面にシェルモールド砂粒状材インレット711及び再生シェルモールド砂アウトレット712がそれぞれ設けられている。第2磁選機60からのシェルモールド砂粒状材はシェルモールド砂粒状材インレット711を通って乾式空気浮選機70内に供給される。再生シェルモールド砂14は再生シェルモールド砂アウトレット712を通って乾式空気浮選機70から排出される。底板72はシェルモールド砂粒状材インレット711及び再生シェルモールド砂アウトレット712の下方に位置するようにケーシング71内に配置されている。底板72は、ケーシング71と共に浮選室73を画定する。浮選室73は、シェルモールド砂粒状材インレット711及び再生シェルモールド砂アウトレット712と連通している。シェルモールド砂粒状材13は、シェルモールド砂粒状材インレット711を通って浮選室73内に供給され、再生シェルモールド砂14は再生シェルモールド砂アウトレット712を通って浮選室73から排出される。本実施形態において、ケーシング71には、浮選室73と連通している集塵器713が更に設けられている。底板72は、互いに間隔をあけて配列された複数の傾斜排気管721を有する。これらの傾斜排気管721は、ケーシング71の再生シェルモールド砂アウトレット712に向かって傾斜するように浮選室73内に延出している。この構成により、浮選室73内においてシェルモールド砂粒状材は再生シェルモールド砂アウトレット712に向かって水平方向において移動するので、シェルモールド砂粒状材内に混在している非磁性体不純物の分離及びシェルモールド砂粒状材内の再生シェルモールド砂14の回収が容易になる。本実施形態において、ケーシング71内には、気流室74が更に形成され、気流室74及び浮選室73は底板72によって仕切られている。気流室74は底板72の下方に位置する。傾斜排気管721は気流室74及び浮選室73を連通させる。ケーシング71における、気流室74に対応する中央部には給気口714が設けられている。
【0034】
以下、乾式空気浮選機70の動作について更に詳しく説明する。
図5及び
図6に示すように、気流は給気口714から気流室74に入り、傾斜排気管721を通って浮選室73内に斜めに吹き出される。気流の圧力は4kPa~6kPaの間であり、好ましくは5kPaである。同時に、第2磁選機60からのシェルモールド砂粒状材はシェルモールド砂粒状材インレット711から浮選室73内に供給される。シェルモールド砂粒状材内に混在している非磁性体不純物粒子16は、その密度が再生シェルモールド砂14の密度よりも大きいので、傾斜気流によって吹き飛ばされることなく、底板52上の傾斜排気管721同士の隙間に落下する。非磁性体不純物粒子16は少なくともステンレス、チタニウム、又はアルミニウム、ジルコン砂などを含むが、これらに限定されない。一方、シェルモールド砂粒状材に含まれている、適度な密度及び粒径を有する再生シェルモールド砂14は、気流によって吹き飛ばされて空中に浮遊し、再生シェルモールド砂アウトレット712に向かって移動する。このようにして分離された再生シェルモールド砂14は、再生シェルモールド砂アウトレット712を通って乾式空気浮選機70から排出される。そして、シェルモールド砂粒状材内に混在している、非磁性体不純物粉末17(例えばステンレス、チタニウム、又はアルミニウム、ジルコン砂の粉末、コロイダルシリカ粉末、シェルモールド砂の粉末など)は、その粒径が再生シェルモールド砂14の粒径よりも小さいので、傾斜気流によって再生シェルモールド砂14から吹き飛ばされて浮選室73の上部に溜り、最終的に
図5に示す集塵器713による吸引によって回収されて除去される。
【0035】
以下、回転振動篩機80の構造について更に詳しく説明する。
図7及び
図8に示すように、回転振動篩機80は、振動ユニット81、枠部82、及び少なくとも一つの篩枠体83を有する。振動ユニット81は枠部82を振動させるためのものであり、枠部82の外側に連結されている。少なくとも一つの篩枠体83は、枠部82内に斜めに固定されており、メッシュサイズが同一である複数の金属篩831と、当該少なくとも一つの篩枠体83の最も低い側に設けられた再生シェルモールド砂出口832とを有する。本実施形態において、少なくとも一つの篩枠体83の数量は四つである。
図8に示すように、第1篩枠体83a、第2篩枠体83b、第3篩枠体83c及び第4篩枠体83dは、枠部82に上から下へ順番的に固定されている。第1篩枠体83a、第2篩枠体83b、第3篩枠体83c及び第4篩枠体83dは、振動ユニット81に近い側から、振動ユニット811から離れた側に向かって傾斜している。本実施形態において、第1篩枠体83a、第2篩枠体83b、第3篩枠体83cのそれぞれに、傾斜ホッパ833a、833b、833cが設けられている。これらの傾斜ホッパ833a、833b、833cはそれぞれ、第1篩枠体から第3篩枠体83a、83b、83cのうちの対応する篩枠体及びその金属篩831の下方に配置されている。傾斜ホッパ833a、833b、833cは、振動ユニット81から離れた側から、振動ユニット81に近い側に向かって傾斜している。各傾斜ホッパ833における振動ユニット81に近い側には開口部が形成されている。第4篩枠体83dの下方に他の篩枠体83が設けられていないため、第4篩枠体83dには傾斜ホッパ833が設けられていない。第1篩枠体83a、第2篩枠体83b、第3篩枠体83c及び第4篩枠体83dのそれぞれに配置されている金属篩831のメッシュサイズは、第1篩枠体83a、第2篩枠体83b、第3篩枠体83c及び第4篩枠体83dの順に従って小さくなる。なお、本実施形態における金属篩831のメッシュサイズは米国のASTM規格で定められているサイズを指すが、これに限られない。
【0036】
以下、回転振動篩機80による振動篩い分けについて更に詳しく説明する。振動ユニット81は、枠部82を振動させて篩枠体83及び金属篩831を往復移動させる。同時に、
図6に示す乾式空気浮選機70からの再生シェルモールド砂は第1篩枠体83aの上方から供給されて金属篩831によって受け取られる。振動ユニット81によって金属篩831が振動させられているため、再生シェルモールド砂は金属篩831上において往復に転動する。金属篩831のメッシュサイズよりも大きい粒径を有する再生シェルモールド砂は、金属篩831上に留まり、且つ金属篩831及び金属製の篩枠体83と十分に接触することにより静電気が除去され、その結果、静電気によって再生シェルモールド砂の表面に付着している粉塵が除去される。本実施形態において、第1篩枠体83aの金属篩831上に留まった再生シェルモールド砂の粒径は第2粒径範囲内にある。第2粒径範囲は、第1篩枠体83aの金属篩831のメッシュサイズと、上述した第1粒径範囲の最大値である6mmとの間の範囲である。第1篩枠体83aの金属篩831上に留まった再生シェルモールド砂は最終的に、第1篩枠体83aの再生シェルモールド砂出口832から回収されて対応の貯蔵庫内へ送られる。
【0037】
金属篩831を通過した再生シェルモールド砂は、第1篩枠体83aの傾斜ホッパ833aにより案内されて、第2篩枠体83bの振動ユニット81に近い側に落下する。第2篩枠体83bにおいて振動篩い分けが引き続き行われ、第2篩枠体83bの金属篩831上に留まった再生シェルモールド砂が回収されて貯蔵庫へ送られる。第2篩枠体83bの金属篩831上に留まった再生シェルモールド砂の粒径は第3粒径範囲内にある。第3粒径範囲は、第2篩枠体83bの金属篩831のメッシュサイズと第1篩枠体83aの金属篩831のメッシュサイズとの間の範囲である。同様に、第2篩枠体83bの金属篩831を通過した再生シェルモールド砂は、第2篩枠体83bの傾斜ホッパ833bにより案内されて、第3篩枠体83cの振動ユニットに近い側に落下し、そして、第3篩枠体83cの金属篩831を通過した再生シェルモールド砂は、第3篩枠体83cの傾斜ホッパ833cにより案内されて、第4篩枠体83dの振動ユニットに近い側に落下する。第3篩枠体83cから、第4粒径範囲内にある再生シェルモールド砂が回収され、第4篩枠体83dから、第5粒径範囲内にある再生シェルモールド砂が回収される。第4粒径範囲は、第3篩枠体83cの金属篩831のメッシュサイズと、第2篩枠体83bの金属篩831のメッシュサイズとの間の範囲である。第5粒径範囲は、第4篩枠体83dの金属篩831のメッシュサイズと、第3篩枠体83cの金属篩831のメッシュサイズとの間の範囲である。本実施形態において、回転振動篩機80によって篩い分けられた、粒径が第2粒径範囲内にある再生シェルモールド砂の平均粒度は22Sである。粒径が第3粒径範囲内にある再生シェルモールド砂の平均粒度は35Sである。粒径が第4粒径範囲内にある再生シェルモールド砂の平均粒度は60Sである。粒径が第5粒径範囲内にある再生シェルモールド砂の平均粒度は70Sである。但し、再生シェルモールド砂の平均粒度は上記の値に限定されない。
【0038】
以上の説明から分かるように、本発明においては、第1磁選機により、細シェルモールド砂内に混在している磁性体金属粒子を除去するようにしている。そして、研磨機により、細シェルモールド砂の粒径を低下させることなく、細シェルモールド砂からコロイダルシリカを効果的に除去するようにしている。この工程において細シェルモールド砂の角が落とされるので、丸みを帯びた形状のシェルモールド砂粒状材が得られる。更に、第2磁選機により、シェルモールド砂粒状材内に混在している磁性体金属粉末を除去するようにしている。そして、乾式空気浮選機により、シェルモールド砂粒状材内の非磁性体不純物粒子及び非磁性体不純物粉末を効果的に除去するようにしている。この工程では従来の浮選において使用されている水及び界面活性剤を必要としないので、廃水や汚染物質は発生しない。また、回転振動篩機により、再生シェルモールド砂を金属篩上において転動させて静電気を除去し、これにより、静電気によって再生シェルモールド砂の表面に付着している粉塵を除去するようにしている。したがって、本発明によれば、再生シェルモールド砂の回収率を向上させることができる。また、得られた再生シェルモールド砂は、磁性体金属及び非磁性体不純物が残留しておらず、使用時の通気性及び使用後の崩壊性に優れているため、元のシェルモールド砂の代替として使用可能である。
【0039】
本発明を上記実施形態により説明したが、本発明はこれら開示された実施形態に限定されず、当業者であれば、本発明の技術的思想を逸脱することなく、様々な変更および修飾を加えて均等物とすることができる。したがって、上記実施形態に変更、改変および修飾を加えた内容もまた、本発明の技術的思想に含まれるものである。