(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031967
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】外科用クリップアプライヤ用の部分的クリップ閉じ機構、及びそれを組み込む外科用クリップアプライヤ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/128 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A61B17/128
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137118
(22)【出願日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】17/896,391
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ シー. バリル
(72)【発明者】
【氏名】ギャレット ピー. エバーソール
(72)【発明者】
【氏名】ソーミャ バナジー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC03
4C160CC07
4C160DD03
4C160DD23
4C160NN12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外科用クリップアプライヤ用の部分的クリップ閉じ機構、及びそれを組み込む外科用クリップアプライヤの提供。
【解決手段】長尺状部分、エンドエフェクタ、及び部分的クリップ閉じ機構を含む、外科用クリップアプライヤが開示されている。エンドエフェクタは、凹部を規定する第1のジョー部材、及び第2のジョー部材を含む。第1のジョー部材又は第2のジョー部材の少なくとも一方は、開放位置と閉鎖位置との間で、第1のジョー部材又は第2のジョー部材の他方の方へ向かって可動である。エンドエフェクタは、第1のジョー部材と第2のジョー部材との間で外科用クリップを支えるように構成される。部分的クリップ閉じ機構は、凹部と係合するように選択的に位置決め可能である楔形部分を含む。楔形部分が凹部との係合が免れているとき、ジョー部材は閉鎖位置に位置決め可能である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端部を含む長尺状部分;
前記長尺状部分の前記遠位端部に隣接して配置されたエンドエフェクタであって、前記エンドエフェクタは第1のジョー部材及び第2のジョー部材を含み、前記第1のジョー部材又は前記第2のジョー部材の少なくとも一方は、開放位置と閉鎖位置との間で、前記第1のジョー部材又は前記第2のジョー部材の他方の方へ向かって可動であり、前記第1のジョー部材は凹部を規定し、前記エンドエフェクタは、前記第1のジョー部材と前記第2のジョー部材との間で外科用クリップを支えるように構成される、エンドエフェクタ;及び
楔形部分を含む部分的クリップ閉じ機構であって、前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記凹部と係合するように選択的に位置決め可能である、部分的クリップ閉じ機構
を含む、外科用クリップアプライヤであって、
前記楔形部分が前記第1のジョー部材の前記凹部との係合が免れているとき、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材は前記閉鎖位置に位置決め可能であり、及び前記楔形部分が前記第1のジョー部材の前記凹部と係合されているとき、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材は、前記閉鎖位置に位置決めされるのを防止される、外科用クリップアプライヤ。
【請求項2】
前記楔形部分が前記第1のジョー部材の前記凹部と係合されているとき、前記第1のジョー部材又は前記第2のジョー部材の少なくとも一方は、部分的な閉鎖位置へ可動である、請求項1に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項3】
前記第2のジョー部材は凹部を規定し、前記楔形部分は、前記第2のジョー部材の前記凹部と係合するように選択的に位置決め可能である、請求項1に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項4】
前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記凹部と係合し且つ前記第2のジョー部材の前記凹部と係合するように、同時に位置決め可能である、請求項3に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項5】
前記第1のジョー部材の前記凹部は三角形を規定する、請求項1に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項6】
前記楔形部分は、斜面を形成する近位部分を含んで、前記楔形部分と前記第1のジョー部材の前記凹部との間の係合解除を容易にする、請求項1に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項7】
前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記凹部と係合するように偏る、請求項1に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項8】
前記第1のジョー部材はレールを含み、及び前記第2のジョー部材はレールを含み、前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記レールに沿って及び前記第2のジョー部材の前記レールに沿って、長手方向に移動可能である、請求項1に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項9】
前記楔形部分は近位部分及び遠位部分を含み、前記楔形部分の前記近位部分は台形であり、前記楔形部分の前記遠位部分は三角形である、請求項1に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項10】
前記部分的クリップ閉じ機構は、スイッチと、近位部分及び遠位部分を有する長尺状リンクとを含み、前記スイッチは、前記長尺状リンクの前記近位部分と機械的に協働して配置され、及び前記楔形部分は、前記長尺状リンクの前記遠位部分に隣接して配置される、請求項1に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項11】
長手方向軸を規定し且つ遠位端部を含む長尺状部分;
前記長尺状部分の前記遠位端部に隣接して配置されたエンドエフェクタであって、前記エンドエフェクタは第1のジョー部材及び第2のジョー部材を含み、前記第1のジョー部材は、開放位置と閉鎖位置との間で、前記第2のジョー部材方へ向かって可動であり、前記エンドエフェクタは、前記第1のジョー部材と前記第2のジョー部材との間で外科用クリップを支えるように構成される、エンドエフェクタ;及び
楔形部分を含む部分的クリップ閉じ機構であって、前記楔形部分は:
前記第1のジョー部材が前記第2のジョー部材に対して前記閉鎖位置へと可動である近位位置と、
前記第1のジョー部材が前記第2のジョー部材に対して前記閉鎖位置へと動くのを物理的に防止される遠位位置と
の間で可動である、部分的クリップ閉じ機構
を含む、外科用クリップアプライヤ。
【請求項12】
前記楔形部分は、前記長手方向軸に対して平行な方向に可動である、請求項11に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項13】
前記楔形部分は、前記長手方向軸に対して角度をなして配置される方向に可動である、請求項12に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項14】
前記楔形部分は、斜面を形成する近位部分を含んで、前記楔形部分が前記遠位位置にあるときに、前記楔形部分の近位側への動きを容易にする、請求項11に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項15】
前記第1のジョー部材はレールを含み、及び前記第2のジョー部材はレールを含み、前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記レールに沿って及び前記第2のジョー部材の前記レールに沿って、長手方向に移動可能である、請求項11に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項16】
前記楔形部分は近位部分及び遠位部分を含み、前記楔形部分の前記近位部分は台形であり、前記楔形部分の前記遠位部分は三角形である、請求項11に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項17】
遠位端部を含む長尺状部分;
前記長尺状部分の前記遠位端部に隣接して配置されたエンドエフェクタであって、前記エンドエフェクタは、凹部を有する第1のジョー部材と、凹部を有する第2のジョー部材とを含み、前記エンドエフェクタは、前記第1のジョー部材と前記第2のジョー部材との間で外科用クリップを支えるように構成される、エンドエフェクタ;及び
楔形部分を含む部分的クリップ閉じ機構であって、前記楔形部分は:
前記エンドエフェクタが外科用クリップを完全に形成することが許される第1の位置と、
前記エンドエフェクタが外科用クリップを完全に形成することが防止される第2の位置と
の間で可動である、部分的クリップ閉じ機構
を含む、外科用クリップアプライヤ。
【請求項18】
前記第1のジョー部材は凹部を規定し、及び前記第2のジョー部材は凹部を規定する、請求項17に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項19】
前記楔形部分が前記第1の位置にあるとき、前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記凹部及び前記第2のジョー部材の前記凹部との係合が免れている、請求項18に記載の外科用クリップアプライヤ。
【請求項20】
前記楔形部分が前記第2の位置にあるとき、前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記凹部及び前記第2のジョー部材の前記凹部と係合される、請求項19に記載の外科用クリップアプライヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は外科手術用器具に関する。より詳細には、本開示は、外科用クリップアプライヤ(surgical clip appliers)用の部分的クリップ閉じ機構、及びそれを含む外科用クリップアプライヤに関する。
【背景技術】
【0002】
外科用クリップアプライヤは当業界で公知であり、及び内視鏡外科的処置、開放外科的処置、及びロボット外科的処置を含む、いくつかの異なる有用な外科的処置に使用される。様々なサイズ(例えば、直径)を有する外科用クリップアプライヤは、多種多様な外科用クリップを用いるように構成され、及び体腔内で単一又は複数の外科用クリップを用いることができる。そのような外科用クリップは、一般に、生体適合性材料から製作され、及び通常、組織を覆って締め付けられる(compressed)。ひとたび組織に用いられると、締め付けられた外科用クリップは、そこを通る流体の流れを止める。
【0003】
いくつかの外科的処置又は状況は、例えば、血管を可変的に閉塞するため、又は血管を閉塞せずに(例えば、胆管造影法の最中)、血管内にカテーテルを保持するために、部分的に形成された外科用クリップの実装例から恩恵を受け得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第17/572,669号明細書
【特許文献2】米国特許第11,246,601号明細書
【特許文献3】米国特許第8,828,023号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/0116416号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、長尺状部分、エンドエフェクタ、及び部分的クリップ閉じ機構を含む、外科用クリップアプライヤに関する。長尺状部分は遠位端部を含む。エンドエフェクタは、長尺状部分の遠位端部に隣接して配置され、及び第1のジョー部材と第2のジョー部材とを含む。第1のジョー部材又は第2のジョー部材の少なくとも一方は、開放位置と閉鎖位置との間で、第1のジョー部材又は第2のジョー部材の他方の方へ向かって可動である。第1のジョー部材は凹部を規定する。エンドエフェクタは、第1のジョー部材と第2のジョー部材との間で外科用クリップを支えるように構成される。部分的クリップ閉じ機構は、第1のジョー部材の凹部と係合するように選択的に位置決め可能である楔形部分を含む。楔形部分が第1のジョー部材の凹部との係合が免れているとき、第1のジョー部材及び第2のジョー部材は閉鎖位置に位置決め可能である。楔形部分が第1のジョー部材の凹部と係合されているとき、第1のジョー部材及び第2のジョー部材は、閉鎖位置に位置決めされるのを防止される。
【0006】
開示した実施形態では、楔形部分が第1のジョー部材の凹部と係合されているとき、第1のジョー部材又は第2のジョー部材の少なくとも一方は、部分的な閉鎖位置へ可動である。
【0007】
開示した実施形態では、第2のジョー部材は凹部を規定する。楔形部分は、第2のジョー部材の凹部と係合するように選択的に位置決め可能である。複数の実施形態では、楔形部分は、第1のジョー部材の凹部と係合し且つ第2のジョー部材の凹部と係合するように、同時に位置決め可能である。
【0008】
開示した実施形態では、第1のジョー部材の凹部は三角形を規定する。
【0009】
開示した実施形態では、楔形部分は、斜面を形成する近位部分を含んで、楔形部分と第1のジョー部材の凹部との間の係合解除を容易にする。
【0010】
開示した実施形態では、楔形部分は、第1のジョー部材の凹部と係合するように偏る。
【0011】
開示した実施形態では、第1のジョー部材はレールを含み、及び第2のジョー部材はレールを含む。楔形部分は、第1のジョー部材のレールに沿って及び第2のジョー部材のレールに沿って、長手方向に移動可能である。
【0012】
開示した実施形態では、楔形部分は近位部分及び遠位部分を含む。楔形部分の近位部分は台形であり、及び楔形部分の遠位部分は三角形である。
【0013】
開示した実施形態では、部分的クリップ閉じ機構は、スイッチと、近位部分及び遠位部分を有する長尺状リンクとを含む。スイッチは、長尺状リンクの近位部分と機械的に協働して配置され、及び楔形部分は、長尺状リンクの遠位部分に隣接して配置される。
【0014】
本開示はまた、長尺状部分、エンドエフェクタ、及び部分的クリップ閉じ機構を含む、外科用クリップアプライヤに関する。長尺状部分は、長手方向軸を規定し、及び遠位端部を含む。エンドエフェクタは、長尺状部分の遠位端部に隣接して配置され、及び第1のジョー部材と、第2のジョー部材とを含む。第1のジョー部材は、開放位置と閉鎖位置との間で、第2のジョー部材方へ向かって可動である。エンドエフェクタは、第1のジョー部材と第2のジョー部材との間で外科用クリップを支えるように構成される。部分的クリップ閉じ機構は、第1のジョー部材が第2のジョー部材に対して閉鎖位置へと可動である近位位置と、第1のジョー部材が第2のジョー部材に対して閉鎖位置へと動くのを物理的に防止される遠位位置との間で可動である楔形部分を含む。
【0015】
開示した実施形態では、楔形部分は、長手方向軸に対して平行な方向に可動である。楔形部分が、長手方向軸に対して角度をなして配置される方向に可動であることも開示される。
【0016】
開示した実施形態では、楔形部分は、斜面を形成する近位部分を含んで、楔形部分が遠位位置にあるときに、楔形部分の近位側への動きを容易にする。
【0017】
開示した実施形態では、第1のジョー部材はレールを含み、及び第2のジョー部材はレールを含む。楔形部分は、第1のジョー部材のレールに沿って及び第2のジョー部材のレールに沿って、長手方向に移動可能である。
【0018】
開示した実施形態では、楔形部分は近位部分及び遠位部分を含む。楔形部分の近位部分は台形であり、楔形部分の遠位部分は三角形である。
【0019】
本開示はまた、長尺状部分、エンドエフェクタ、及び部分的クリップ閉じ機構を含む、外科用クリップアプライヤに関する。長尺状部分は遠位端部を含む。エンドエフェクタは、長尺状部分の遠位端部に隣接して配置され、及び凹部を有する第1のジョー部材と、凹部を有する第2のジョー部材とを含む。エンドエフェクタは、第1のジョー部材と第2のジョー部材との間で外科用クリップを支えるように構成される。部分的クリップ閉じ機構は、エンドエフェクタが外科用クリップを完全に形成することが許される第1の位置と、エンドエフェクタが外科用クリップを完全に形成することが防止される第2の位置との間で可動である楔形部分を含む。
【0020】
開示した実施形態では、第1のジョー部材は凹部を規定し、及び第2のジョー部材は凹部を規定する。楔形部分が第1の位置にあるとき、楔形部分は、第1のジョー部材の凹部及び第2のジョー部材の凹部との係合が免れていることも開示される。さらに、楔形部分が第2の位置にあるとき、楔形部分は、第1のジョー部材の凹部及び第2のジョー部材の凹部と係合されることが開示される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
遠位端部を含む長尺状部分;
前記長尺状部分の前記遠位端部に隣接して配置されたエンドエフェクタであって、前記エンドエフェクタは第1のジョー部材及び第2のジョー部材を含み、前記第1のジョー部材又は前記第2のジョー部材の少なくとも一方は、開放位置と閉鎖位置との間で、前記第1のジョー部材又は前記第2のジョー部材の他方の方へ向かって可動であり、前記第1のジョー部材は凹部を規定し、前記エンドエフェクタは、前記第1のジョー部材と前記第2のジョー部材との間で外科用クリップを支えるように構成される、エンドエフェクタ;及び
楔形部分を含む部分的クリップ閉じ機構であって、前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記凹部と係合するように選択的に位置決め可能である、部分的クリップ閉じ機構
を含む、外科用クリップアプライヤであって、
前記楔形部分が前記第1のジョー部材の前記凹部との係合が免れているとき、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材は前記閉鎖位置に位置決め可能であり、及び前記楔形部分が前記第1のジョー部材の前記凹部と係合されているとき、前記第1のジョー部材及び前記第2のジョー部材は、前記閉鎖位置に位置決めされるのを防止される、外科用クリップアプライヤ。
(項目2)
前記楔形部分が前記第1のジョー部材の前記凹部と係合されているとき、前記第1のジョー部材又は前記第2のジョー部材の少なくとも一方は、部分的な閉鎖位置へ可動である、上記項目に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目3)
前記第2のジョー部材は凹部を規定し、前記楔形部分は、前記第2のジョー部材の前記凹部と係合するように選択的に位置決め可能である、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目4)
前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記凹部と係合し且つ前記第2のジョー部材の前記凹部と係合するように、同時に位置決め可能である、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目5)
前記第1のジョー部材の前記凹部は三角形を規定する、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目6)
前記楔形部分は、斜面を形成する近位部分を含んで、前記楔形部分と前記第1のジョー部材の前記凹部との間の係合解除を容易にする、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目7)
前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記凹部と係合するように偏る、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目8)
前記第1のジョー部材はレールを含み、及び前記第2のジョー部材はレールを含み、前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記レールに沿って及び前記第2のジョー部材の前記レールに沿って、長手方向に移動可能である、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目9)
前記楔形部分は近位部分及び遠位部分を含み、前記楔形部分の前記近位部分は台形であり、前記楔形部分の前記遠位部分は三角形である、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目10)
前記部分的クリップ閉じ機構は、スイッチと、近位部分及び遠位部分を有する長尺状リンクとを含み、前記スイッチは、前記長尺状リンクの前記近位部分と機械的に協働して配置され、及び前記楔形部分は、前記長尺状リンクの前記遠位部分に隣接して配置される、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目11)
長手方向軸を規定し且つ遠位端部を含む長尺状部分;
前記長尺状部分の前記遠位端部に隣接して配置されたエンドエフェクタであって、前記エンドエフェクタは第1のジョー部材及び第2のジョー部材を含み、前記第1のジョー部材は、開放位置と閉鎖位置との間で、前記第2のジョー部材方へ向かって可動であり、前記エンドエフェクタは、前記第1のジョー部材と前記第2のジョー部材との間で外科用クリップを支えるように構成される、エンドエフェクタ;及び
楔形部分を含む部分的クリップ閉じ機構であって、前記楔形部分は:
前記第1のジョー部材が前記第2のジョー部材に対して前記閉鎖位置へと可動である近位位置と、
前記第1のジョー部材が前記第2のジョー部材に対して前記閉鎖位置へと動くのを物理的に防止される遠位位置と
の間で可動である、部分的クリップ閉じ機構
を含む、外科用クリップアプライヤ。
(項目12)
前記楔形部分は、前記長手方向軸に対して平行な方向に可動である、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目13)
前記楔形部分は、前記長手方向軸に対して角度をなして配置される方向に可動である、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目14)
前記楔形部分は、斜面を形成する近位部分を含んで、前記楔形部分が前記遠位位置にあるときに、前記楔形部分の近位側への動きを容易にする、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目15)
前記第1のジョー部材はレールを含み、及び前記第2のジョー部材はレールを含み、前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記レールに沿って及び前記第2のジョー部材の前記レールに沿って、長手方向に移動可能である、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目16)
前記楔形部分は近位部分及び遠位部分を含み、前記楔形部分の前記近位部分は台形であり、前記楔形部分の前記遠位部分は三角形である、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目17)
遠位端部を含む長尺状部分;
前記長尺状部分の前記遠位端部に隣接して配置されたエンドエフェクタであって、前記エンドエフェクタは、凹部を有する第1のジョー部材と、凹部を有する第2のジョー部材とを含み、前記エンドエフェクタは、前記第1のジョー部材と前記第2のジョー部材との間で外科用クリップを支えるように構成される、エンドエフェクタ;及び
楔形部分を含む部分的クリップ閉じ機構であって、前記楔形部分は:
前記エンドエフェクタが外科用クリップを完全に形成することが許される第1の位置と、
前記エンドエフェクタが外科用クリップを完全に形成することが防止される第2の位置と
の間で可動である、部分的クリップ閉じ機構
を含む、外科用クリップアプライヤ。
(項目18)
前記第1のジョー部材は凹部を規定し、及び前記第2のジョー部材は凹部を規定する、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目19)
前記楔形部分が前記第1の位置にあるとき、前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記凹部及び前記第2のジョー部材の前記凹部との係合が免れている、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(項目20)
前記楔形部分が前記第2の位置にあるとき、前記楔形部分は、前記第1のジョー部材の前記凹部及び前記第2のジョー部材の前記凹部と係合される、上記項目のいずれか一項に記載の外科用クリップアプライヤ。
(摘要)
長尺状部分、エンドエフェクタ、及び部分的クリップ閉じ機構を含む、外科用クリップアプライヤが開示されている。エンドエフェクタは、凹部を規定する第1のジョー部材、及び第2のジョー部材を含む。第1のジョー部材又は第2のジョー部材の少なくとも一方は、開放位置と閉鎖位置との間で、第1のジョー部材又は第2のジョー部材の他方の方へ向かって可動である。エンドエフェクタは、第1のジョー部材と第2のジョー部材との間で外科用クリップを支えるように構成される。部分的クリップ閉じ機構は、凹部と係合するように選択的に位置決め可能である楔形部分を含む。楔形部分が凹部との係合が免れているとき、ジョー部材は閉鎖位置に位置決め可能である。楔形部分が凹部と係合されているとき、ジョー部材は、閉鎖位置に位置決めされるのを防止される。
【0021】
本開示の実施形態は、図面を参照して詳細に説明され、同様の参照符号が、同様又は同一の構造要素を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1-1】
図1Aは、本開示の実施形態による、引っ込められた位置にある部分的クリップ閉じ機構のスイッチを示す、内視鏡外科用クリップアプライヤの斜視的な前面図である。
【
図1-2】
図1Bは、本開示の実施形態による開放外科用クリップアプライヤの斜視的な前面図である。
図1Cは、本開示の実施形態によるロボット外科用クリップアプライヤの斜視的な前面図である。
【
図2】複数の部分が除去され、及び非作動位置に配置された外科用クリップアプライヤのトリガー部を示す、
図1Aの外科用クリップアプライヤのハンドルアセンブリの側面図である。
【
図3】複数の部分が除去され、及び作動位置にあるトリガー部を示す、
図1Aの外科用クリップアプライヤのハンドルアセンブリの側面図である。
【
図4】外科用クリップを内部に備える外科用クリップアプライヤの遠位端部を示す、
図1Aに示す領域の詳細な拡大図である。
【
図5】複数の部分が省略され、複数の外科用クリップと、押込みアセンブリの遠位部分とを示す、
図1Aの外科用クリップアプライヤの遠位部分の斜視図である。
【
図6】
図1Aの外科用クリップアプライヤの押込みアセンブリの一部分の斜視図である。
【
図7】複数の部分が省略され、外科用クリップ、ジョー部材、及び駆動アセンブリの一部分を示す、
図1Aの外科用クリップアプライヤの遠位部分の斜視図である。
【
図8】
図1Aの外科用クリップアプライヤの駆動アセンブリ、ジョー部材、及び部分的クリップ閉じ機構の部分の斜視的な展開図である。
【
図9】
図8の部分的クリップ閉じ機構の部分の、それぞれ側面図及び平面図である。
【
図10】
図8の部分的クリップ閉じ機構の部分の、それぞれ側面図及び平面図である。
【
図11】
図8~10の部分的クリップ閉じ機構の遠位部分の斜視図である。
【
図12】引っ込められた位置にある部分的クリップ閉じ機構を示す、
図4の線12-12に沿って取った、外科用クリップを内部に備える外科用クリップアプライヤの遠位端部の断面図である。
【
図13】引っ込められた位置にある部分的クリップ閉じ機構を示す、
図12の線13-13に沿って取った、外科用クリップを内部に備える外科用クリップアプライヤの遠位端部の断面図である。
【
図14】前進した位置にある部分的クリップ閉じ機構のスイッチを示す、
図1Aの外科用クリップアプライヤのハンドルアセンブリの斜視図である。
【
図15】前進した位置にある部分的クリップ閉じ機構を示す、外科用クリップを内部に備える外科用クリップアプライヤの遠位端部の断面図である。
【
図16】前進した位置にある部分的クリップ閉じ機構及び引っ込められた位置にある駆動アセンブリの一部分を示す、非形成状態の外科用クリップを内部に備える外科用クリップアプライヤの遠位端部の断面図である。
【
図17】前進した位置にある部分的クリップ閉じ機構及び前進した位置にある駆動アセンブリの一部分を示す、部分的に形成された外科用クリップを内部に備える外科用クリップアプライヤの遠位端部の断面図である。
【
図18】引っ込められた位置にある部分的クリップ閉じ機構のスイッチを示す、
図1Aの外科用クリップアプライヤのハンドルアセンブリの斜視図である。
【
図19】部分的に引っ込められた位置にある部分的クリップ閉じ機構を示す、外科用クリップを内部に備える外科用クリップアプライヤの遠位端部の断面図である。
【
図20】引っ込められた位置にある部分的クリップ閉じ機構及び前進した位置にある駆動アセンブリの一部分を示す、完全に形成された外科用クリップを内部に備える外科用クリップアプライヤの遠位端部の断面図である。
【
図21】本開示に従って使用するように構成されたロボット外科手術システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の外科用クリップアプライヤの実施形態は、図面を参照して詳細に説明され、図面では、同様の参照符号が、いくつかの図面のそれぞれにおいて、同一又は対応する要素を示す。本開示による外科用クリップアプライヤの非限定的な例は、手動、ロボット、機械式及び/又は電気機械式などを含む。本明細書で使用されるような用語「遠位」は、使用者から離れている外科用クリップアプライヤ、又はその構成要素、の部分を指す一方で、用語「近位」は、使用者に近い外科用クリップアプライヤ、又はその構成要素、の部分を指す。
【0024】
下記でより詳細に説明するように、本開示は、クリップを部分的にのみ形成するように外科用クリップアプライヤを使用したいときに、選択的に作動可能である部分的クリップ閉じ機構を有する外科用クリップアプライヤを含む。部分的クリップ閉じ機構、並びに関連の使用方法も、本開示に含まれる。
【0025】
図1A~21は、本開示の実施形態による外科用クリップアプライヤを示す。より詳細には、
図1A及び
図2~20は、内視鏡外科用クリップアプライヤ100aを示し、
図1Bは、開放外科用クリップアプライヤ100bを示し、並びに
図1C及び
図21は、ロボット外科用クリップアプライヤ100cを示す。内視鏡外科用クリップアプライヤ100aの詳細について本明細書で詳述するが、本開示の部分的クリップ閉じ機構500はまた、開放外科用クリップアプライヤ100b及びロボット外科用クリップアプライヤ100cと一緒に使用するために構成される。単純化するために、本開示の外科用クリップアプライヤのそれぞれは、全体的に、外科用クリップアプライヤ100と呼ばれる。
【0026】
初めに
図1Aを参照して説明すると、外科用クリップアプライヤ100は、ハンドルアセンブリ200と、ハンドルアセンブリ200から遠位側に延在し且つ長手方向軸「A-A」を規定する内視鏡又は長尺状部分300と、長尺状部分300の遠位端部に隣接して配置されたエフェクタ(すなわち対のジョー)400とを含む。さらに、作動アセンブリ220(
図2~3)及び駆動アセンブリ250(
図2~3)が、ハンドルアセンブリ200と機械的に協働して配置され、且つ外科用クリップ600(
図4~5)を遠位側に前進させ且つそれを形成するように構成される。
【0027】
特定のハンドルアセンブリ200、特定の作動アセンブリ220、及び特定の駆動アセンブリ250の詳細を下記で説明するが、本開示の外科用クリップアプライヤ100は、本開示の範囲から逸脱することなく、他のタイプのハンドルアセンブリ、作動アセンブリ、及び駆動アセンブリと使用できる。
【0028】
ここで
図2~7を参照すると、ハンドルアセンブリ200、作動アセンブリ220、駆動アセンブリ250、及び外科用クリップアプライヤ100の遠位部分のさらなる詳細が示されている。ハンドルアセンブリ200は、ハンドルハウジング202、固定ハンドル204、及び枢動可能なハンドル206を含む。作動アセンブリ220は、枢動可能なハンドル206と動作的に係合して配置された複数のリンク機構222を含む。駆動アセンブリ250は、駆動部260及び押込みアセンブリ270を含む(
図5~6)。一般的に、枢動可能なハンドル206の作動によって、駆動アセンブリ250の少なくとも複数の部分を遠位側へ動かし、それにより、次に、外科用クリップ600の形成及び/又は遠位側への前進を生じる。好適な駆動アセンブリ及び作動アセンブリについてのさらなる詳細は、2022年1月11日出願の(特許文献1)、及び2019年6月6日出願の(特許文献2)に説明されており、それらそれぞれの内容全体を、参照することにより本書に援用する。
【0029】
特に
図4、
図5及び
図7を参照して説明すると、エンドエフェクタ400は、第1のジョー部材410及び第2のジョー部材420を含む。押込みアセンブリ270は、外科用クリップ600を、一度に一つずつ、第1のジョー部材410と第2のジョー部材420との間の位置へ前進させ、及び駆動部260は前進して、第1のジョー部材410又は第2のジョー部材420の少なくとも一方を他方の方へ向かって閉鎖位置へと動かし、それにより、外科用クリップ600を締め付け、且つそれを形成する(例えば、組織を通して)。最遠位の外科用クリップ600が形成された(及び押し出された)後、それに続く枢動可能なハンドル206の作動によって、次の最遠位の外科用クリップ600の遠位側への前進及び形成をもたらす。第1のジョー部材410及び第2のジョー部材420が閉鎖位置にあるとき、第1のジョー部材410及び第2のジョー部材420は、必ずしも、互いに接触しているわけではない。
【0030】
特に
図6を参照して説明すると、押込みアセンブリ270の複数の部分が示されている。押込みアセンブリ270は、押込みロッド272、及び係合部分274を含む。係合部分274は、押込みロッド272の遠位端部に配置され、及び最遠位の外科用クリップ600に接触するように構成される。押込みアセンブリ270はエンドエフェクタ400に対して遠位側へ動くため、押込みロッド272の押込み面275が外科用クリップ600と係合し、及び外科用クリップ600を遠位側へ動かす。
【0031】
具体的に
図7を参照して説明すると、エンドエフェクタ400に対する駆動部260の遠位側への動きは、駆動部260の第1のラテラル面(lateral surface)262及び第2のラテラル面264を、第1のジョー部材及び第2のジョー部材の斜めにされた面又はカム面(camming surface)412、422とそれぞれ係合させる。駆動部260が、エンドエフェクタ400に対して遠位側へ動くときの、駆動部260とそれぞれの第1のジョー部材410及び第2のジョー部材420のカム面412、422との係合によって、第1のジョー部材410又は第2のジョー部材420の少なくとも一方を閉鎖位置へ動かし、それにより、外科用クリップ600を形成する。
【0032】
ここで
図8~20を参照すると、部分的クリップ閉じ機構500の詳細が示されている。概して、及び特に
図8を参照して説明すると、部分的クリップ閉じ機構500は、長尺状リンク510と、第1のジョー部材410及び第2のジョー部材420の方へ向かう方向に長尺状リンク510から延在/突出する楔形部分(wedge)520とを含む。長尺状リンク510の近位部分512は、ハウジング202にあるスイッチ550(
図1A、
図14、及び
図18)と機械的に協働して配置される(例えば、それに結合される)。楔形部分520は、長尺状リンク510の遠位部分514に配置され、且つエンドエフェクタ400の第1のジョー部材410及び第2のジョー部材420によってそれぞれ規定される凹部415a、415b(まとめて、凹部415)と選択的に係合可能である。下記でさらに詳細に説明するように、楔形部分520が第1及び第2のジョー部材410、420の凹部415a、415bと係合されると、第1及び第2のジョー部材410、420は、閉鎖位置へと動くのを物理的に防止され、それにより、第1及び第2のジョー部材410、420によって支えられる外科用留め具600を完全に形成することができない。
【0033】
図9~11を参照すると、部分的クリップ閉じ機構500の楔形部分520のさらなる詳細が示されている。一般的に、楔形部分520は、三角形部分520a及び台形部分520bを規定する(
図10において上から見るとき)。楔形部分520の三角形部分520aは、遠位点522、第1のラテラル点(lateral point)524、遠位点522と第1のラテラル点524を相互接続する第1の側面525、第2のラテラル点526、遠位点522と第2のラテラル点526を相互接続する第2の側面527、及び第1のラテラル点524と第2のラテラル点526を相互接続する横辺529を含む。
【0034】
楔形部分520の台形部分520bは、斜面530を含み、且つ楔形部分520の三角形部分520aの横辺529の近位側に、それと接触して配置される。斜面530は、一般的に、台形を規定する(
図10において上から見るとき)。図示の実施形態では、斜面530の第1のラテラル点532は、楔形部分520の三角形部分520aの第1のラテラル点524と接触し、及び斜面530の第2のラテラル点534は、楔形部分520の三角形部分520aの第2のラテラル点526と接触する。
【0035】
図17に示すように、楔形部分520が第1のジョー部材410の凹部415a及び第2のジョー部材420の凹部415bと係合されると、楔形部分520の三角形部分520aの少なくとも第1のラテラル点524は、少なくとも部分的に第1の凹部415a内にあり、及び楔形部分520の三角形部分520aの少なくとも第2のラテラル点526は、少なくとも部分的に第2の凹部415b内にある。
図16及び
図17に示すように、各凹部415a、415bの形状は、その凹部415a、415bに係合するように構成される楔形部分520の部分の形状に相補的である。図示の実施形態では、凹部415a、415bは全体的に三角形である。
【0036】
使用中、使用者が外科用クリップ600を部分的に閉じたいとき(例えば、血管を可変的に閉塞するために、又は胆管造影法の最中などに、血管を閉塞することなく、血管内にカテーテルを保持するために)、使用者は、スイッチ550を遠位側へ摺動させる(又はスイッチ550が既に確実にその遠位位置にあるようにする)ことによって、部分的クリップ閉じ機構500を前進させる。(部分的クリップ閉じ機構500を作動させる又は展開するための他の構造、例えばボタンを押すことも想定される)。部分的クリップ閉じ機構500の作動によって、長尺状リンク510及び楔形部分520をエンドエフェクタ400に対して遠位側へ動かし、且つ楔形部分520を、第1のジョー部材410及び第2のジョー部材420のレール414、424のそれぞれに沿って遠位側へ動かす(
図12及び
図13参照)。エンドエフェクタ400に対して楔形部分520が十分に遠位側へ移動した後、クリップ閉じ機構500の楔形部分520の複数の部分は、第1のジョー部材410及び第2のジョー部材420のそれぞれによって規定された凹部415a、415bと係合され、それにより、ジョー部材410、420が互いの方へ向かって動くことができる動きの量を制限する。さらに、複数の実施形態では、長尺状リンク510の遠位部分514(例えば、楔形部分520を含む長尺状リンク510の部分)は、
図13の矢印「B」の一般的な方向に偏り、それにより、楔形部分520とジョー部材410、420の凹部415との間の係合を容易にする。
【0037】
図15~17を参照して説明すると、部分的クリップ閉じ機構500が遠位位置にあるとき、駆動アセンブリ250の作動によって(例えば、枢動可能なハンドル206を枢動させることによる)、ジョー部材410と420との間で外科用クリップ600を遠位側に前進させ、及び駆動アセンブリ250の駆動部260を前進させて、第1のジョー部材410と第2のジョー部材420を部分的に閉じ、それにより、外科用クリップ600を締め付け、且つそれを部分的に形成する。すなわち、
図7に関して上述したように、駆動部260の遠位側への動きによって、駆動部260の第1のラテラル面262及び第2のラテラル面264が第1のジョー部材410及び第2のジョー部材420のカム面412、422のそれぞれと係合するようにし、それが、第1のジョー部材410及び第2のジョー部材420の少なくとも部分的な閉鎖を引き起こし、それにより、外科用クリップ600を少なくとも部分的に形成する。ここで、
図15~17では、楔形部分520は凹部415a、415bと係合されているため、ジョー部材410、420は完全には閉じないようにされ、且つ外科用クリップ600は部分的にのみ形成されることができる。
【0038】
図18~20を参照して説明すると、使用者が外科用クリップ600を完全に閉じたいとき、使用者は、スイッチ550を近位側へ摺動する(又はスイッチ550が既に確実にその近位位置にあるようにする;
図18)ことによって、部分的クリップ閉じ機構500を引っ込める。初めに、部分的クリップ閉じ機構500を引っ込めることによって、
図19の矢印「C」の一般的な方向に動かすことにより、楔形部分520を第1及び第2のジョー部材410、420の凹部415a、415bのそれぞれから係合解除する。楔形部分520の斜面530は、楔形部分520がエンドエフェクタ400に対して近位側へ動かされるとき、楔形部分520とジョー部材410、420の凹部415a、415bのそれぞれとの間の係合解除を容易にする。スイッチ550の継続的な近位側への動きによって、エンドエフェクタ400に対して、並びに第1のジョー部材410及び第2のジョー部材420のレール414、424のそれぞれに沿って、長尺状リンク510及び楔形部分520を近位側へ動かす(
図19参照)。エンドエフェクタ400に対して楔形部分520が十分に近位側へ移動した後、部分的クリップ閉じ機構500はその近位位置にある(
図20)。
【0039】
図20を参照して説明すると、部分的クリップ閉じ機構500が近位位置にあるとき、駆動アセンブリ250の作動によって(例えば、枢動可能なハンドル206を枢動することによる)、ジョー部材410と420との間で外科用クリップ600を遠位側に前進させ、及び駆動アセンブリ250の駆動部260を前進させて、第1のジョー部材410又は第2のジョー部材420の少なくとも一方を他方の方へ向かって閉鎖位置へと動かし、それにより、外科用クリップ600を締め付け、且つそれを完全に形成する。ここでは、楔形部分520はジョー部材410、420の閉鎖量を制限せず、それにより、外科用クリップ600が完全に形成されることを可能にする。
【0040】
説明されているように、部分的クリップ閉じ機構500は、駆動アセンブリ250とは無関係に機能する。従って、各外科用クリップ600の展開前(又は展開の最中)、使用者には、部分的クリップ閉じ機構500を近位位置(例えば、
図12、
図13及び
図20)又は遠位位置(例えば、
図15~17)にそれぞれ位置決めすることによって、外科用クリップ600を完全に-又は部分的に-形成するというオプションがある。
【0041】
本明細書で開示する様々な実施形態はまた、ロボット外科手術システムと連携するように構成され得、及びこれは、一般に「遠隔手術」と呼ばれるものである。そのようなシステムは、様々なロボット要素を用いて、手術室にいる外科医を支援し、且つ外科手術用器具類の遠隔操作(remote operation)(又は部分的な遠隔操作)を可能にする。様々なロボットアーム、ギア、カム、プーリー、電気モータ及び機械的モータなどが、この目的のために用いられてもよく、且つロボット外科手術システムを念頭に置いて設計されて、手術や治療の過程において外科医を支援し得る。そのようなロボットシステムは、遠隔で操縦可能なシステム、自動的に曲げられる(flexible)外科手術システム、遠隔で曲げられる外科手術システム、遠隔関節運動外科手術システム、無線外科手術システム、モジュール式の又は選択的に構成可能な遠隔操作外科手術システムなどを含み得る。
【0042】
ロボット外科手術システムは、手術室の隣にあるか又はリモート位置に置かれる1つ以上のコンソールと一緒に用いられてもよい。この場合、外科医や看護師の1つのチームが、手術に備えて患者の準備を行い、及び本明細書で開示する器具の1種以上を備えるようにロボット外科手術システムを構成する一方で、別の外科医(又は外科医の群)が、ロボット外科手術システムによって器具を遠隔で制御する。認識され得るように、非常に熟練した外科医が、外科医の遠隔コンソールから離れることなく、複数のロケーションで複数の操作・手術を行ってもよく、これは、経済的に好都合であり、且つ患者又は一連の患者に利点があり得る。
【0043】
外科手術システムのロボットアームは、一般に、コントローラによって一対の主ハンドルに結合される。ハンドルは、任意のタイプの外科手術用器具の作業端部(例えば、エンドエフェクタ、把持具、ナイフ、ハサミなど)の対応する動きを生じるために、外科医によって動かされ得、これは、本明細書で説明する実施形態のうちの1つ以上の使用を補完し得る。主ハンドルの動きは拡大縮小されてもよいため、作業端部は、外科医の操作している手によって行われる動きとは異なる、それよりも小さい、又はそれよりも大きい、対応する動きを有する。倍率又は歯車比(gearing ratio)は、執刀医が1つ又は複数の外科手術用器具の作業端部の解像度を制御できるように、調整可能とし得る。
【0044】
主ハンドルは、様々な組織のパラメータ又は条件、例えば、操作(manipulation)、切断又はそうでなければ治療に起因する組織抵抗、器具による組織への圧力、組織温、組織インピーダンスなどに関するフィードバックを外科医に提供する様々なセンサーを含み得る。認識され得るように、そのようなセンサーは、外科医に、実際の手術条件を模倣する高度な触覚フィードバックを提供する。主ハンドルはまた、繊細な組織の操作又は治療のための様々な異なるアクチュエータを含み得、実際の手術条件を再現する外科医の能力をさらに高める。
【0045】
図21を参照して説明すると、外科手術システム、例えば、ロボット外科手術システムなどが、全体的に外科手術システム1000として示され、及び本開示の外科用クリップアプライヤ100c、又はその複数の部分と一緒に使用できる。外科手術システム1000は、一般的に、複数のロボットアーム1002、1003、制御装置1004、及び制御装置1004に結合された操作コンソール1005を含む。操作コンソール1005は、特に三次元像を表示するようにセットアップされるディスプレイ装置1006;及び手動入力装置1007、1008であって、それによって、原理上は当業者に公知のように、人(図示せず)、例えば外科医が、第1の操作モードでロボットアーム1002、1003を遠隔操作(telemanipulate)することができる、手動入力装置を含む。
【0046】
ロボットアーム1002、1003のそれぞれは、複数の部材で構成され、これらは、ジョイントによって接続されている。システム1000はまた、ロボットアーム1002、1003のそれぞれの遠位端部に接続された器具駆動ユニット1200を含む。下記でより詳細に説明するように、外科用クリップアプライヤ100cは、本明細書で開示するいくつかの実施形態のいずれか1つに従って、器具駆動ユニット1200に取り付けられ得る。
【0047】
ロボットアーム1002、1003は、制御装置1004に接続される電気駆動部(図示せず)によって駆動され得る。制御装置1004(例えば、コンピュータ)は、特にコンピュータプログラムによって、ロボットアーム1002、1003、それらの器具駆動ユニット1200、それゆえ外科手術用器具10(エンドエフェクタアセンブリ22を含む)が手動入力装置1007、1008によって規定された動きに従って所望の動きを実行するように、電気駆動部を起動するようにセットアップされる。制御装置1004はまた、ロボットアーム1002、1003及び/又は電気駆動部の動きを調整するように、セットアップされ得る。
【0048】
外科手術システム1000は、外科用クリップアプライヤ100cによって低侵襲式に治療される予定の、手術台1012に横たわっている患者1013で使用するように構成される。外科手術システム1000はまた、3つ以上のロボットアーム1002、1003を含み得、追加的なロボットアームは、同様に、制御装置1004に接続され、且つ操作コンソール1005によって遠隔操作可能である。
【0049】
外科手術システム1000の構造及び動作の詳細な説明に関しては、現在は(特許文献3)である、2011年11月3日出願の(特許文献4)(「Medical Workstation」)(その内容全体を本願明細書に援用する)を参照してもよい。
【0050】
上記の説明は、本開示の説明にすぎないことが理解されるべきである。様々な代替例及び修正例が、本開示から逸脱することなく、当業者によって考案され得る。従って、本開示は、全てのそのような代替例、修正例及び変形例を含むものとする。添付図面を参照して説明した実施形態は、本開示のいくつかの例を実証するために提示されているにすぎない。上述したもの及び/又は添付の特許請求の範囲内にあるものとは非実質的に異なる他の要素、ステップ、方法及び技術は、本開示の範囲内に入るものとする。
【0051】
符号の説明
10 外科手術用器具
22 エンドエフェクタアセンブリ
100 外科用クリップアプライヤ
100a 内視鏡外科用クリップアプライヤ
100b 開放外科用クリップアプライヤ
100c ロボット外科用クリップアプライヤ
200 ハンドルアセンブリ
202 ハンドルハウジング
204 固定ハンドル
206 枢動可能なハンドル
220 作動アセンブリ
222 リンク機構
250 駆動アセンブリ
260 駆動部
262 第1のラテラル面
264 第2のラテラル面
270 押込みアセンブリ
272 押込みロッド
274 係合部分
275 押込み面
300 長尺状部分
400 エンドエフェクタ
410 第1のジョー部材
412、422 カム面
414 レール
415、415a、415b 凹部
420 第2のジョー部材
424 レール
500 部分的クリップ閉じ機構
510 長尺状リンク
512 近位部分
514 遠位部分
520 楔形部分
520a 三角形部分
520b 台形部分
522 遠位点
524 第1のラテラル点
525 第1の側面
526 第2のラテラル点
527 第2の側面
529 横辺
530 斜面
532 第1のラテラル点
534 第2のラテラル点
550 スイッチ
600 外科用クリップ
1000 外科手術システム
1002、1003 ロボットアーム
1004 制御装置
1005 操作コンソール
1006 ディスプレイ装置
1007、1008 手動入力装置
1012 手術台
1013 患者
1200 器具駆動ユニット