(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031971
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電流センサの伝達関数を用いた動的試験のためのデスキュー方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20240229BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240229BHJP
G01R 13/32 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G01R19/00 M
G01R31/26 B
G01R13/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023137422
(22)【出願日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】63/400,775
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514046574
【氏名又は名称】キーサイト テクノロジーズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】新井 崇雅
【テーマコード(参考)】
2G003
2G035
【Fターム(参考)】
2G003AA02
2G003AB09
2G003AE06
2G003AF03
2G003AH05
2G035AA04
2G035AB11
2G035AD28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】方形信号を使用して比較的単純なデスキュー方法を実施することに加えて、動的試験中に得られた電流波形に電流センサの伝達関数を適用する方法を提供する。
【解決手段】動的試験セットアップは、オシロスコープ100のそれぞれのチャネルに接続された少なくとも1つのデスキューされた電圧プローブ203及び少なくとも1つのデスキューされた電流測定ケーブル201bと、デスキューされた電流測定ケーブル201bに接続されDUTの電流を測定する電流センサ301とを含む。本方法は、オシロスコープ100上に表示するための電流波形を得るために、動的試験セットアップを使用してDUTに対して動的試験セットアップを実施するステップと、対応するディエンベディングされた電流波形をオシロスコープ100上に表示するために、電流センサ301の伝達関数を電流波形に適用するステップとをさらに含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オシロスコープ(100)の第1のチャネル、第2のチャネル及び第3のチャネルにそれぞれ接続された第1の電圧プローブ、第2の電圧プローブ及び電流測定ケーブル(201)をデスキューするステップと、
前記オシロスコープ(100)と、デスキューされた前記第1の電圧プローブ及び前記第2の電圧プローブと、デスキューされた前記電流測定ケーブル(201)とを有する試験対象デバイス(DUT)の動的試験セットアップを構成するステップであって、前記動的試験セットアップはさらに、前記DUTと前記電流測定ケーブル(201)との間に接続された電流センサ(301)を有する、ステップと、
前記DUTの動的試験を行い、前記オシロスコープ(100)に表示される電流波形を得るステップと、
前記オシロスコープ(100)を用いて前記電流センサ(301)の伝達関数を前記電流波形に適用することにより前記電流波形をディエンベディングし、前記オシロスコープ(100)に表示されるディエンベディングされた電流波形を得るステップと
を含む動的試験方法。
【請求項2】
前記第1の電圧プローブと前記第2の電圧プローブと前記電流測定ケーブル(201)とをデスキューするステップは、
前記第1の電圧プローブの一端と前記第2の電圧プローブの一端と前記電流測定ケーブル(201)の一端とを、オシロスコープ(100)の前記第1のチャネルと前記第2のチャネルと前記第3のチャネルとにそれぞれ接続するステップと、
前記第1の電圧プローブの他端と前記第2の電圧プローブの他端とを前記電流測定ケーブル(201)の他端に接続するステップと、
前記オシロスコープ(100)を用いて、前記第1の電圧プローブと前記第2の電圧プローブと前記電流測定ケーブル(201)とをデスキューするステップと
を含む、請求項1に記載の動的試験方法。
【請求項3】
前記オシロスコープを用いたデスキューが方形波信号を用いて行われる、請求項2に記載の動的試験方法。
【請求項4】
前記動的試験セットアップを構成するステップは、
デスキューされた前記第1の電圧プローブ(203)の他端を前記DUTの第1の端子に接続するステップと、
デスキューされた前記第2の電圧プローブ(203)の他端を前記DUTの第2の端子に接続するステップと、
前記電流センサ(301)の入力部を前記DUTの第3の端子に接続するステップと、
前記電流センサ(301)の出力部を、デスキューされた前記電流測定ケーブル(201)に接続するステップと、
前記DUTの前記第2の端子と前記第3の端子との間にゲートドライバ(302)を接続するステップと、
前記第1の端子を負荷素子及びフリーホイールダイオードに接続するステップと
を含む、請求項1に記載の動的試験方法。
【請求項5】
前記DUTの前記第1の端子がドレイン電極またはコレクタ電極であり、
前記DUTの前記第2の端子がゲート電極であり、
前記DUTの前記第3の端子がソース電極またはエミッタ電極である、
請求項4に記載の動的試験方法。
【請求項6】
前記DUTがパワートランジスタである、請求項5に記載の動的試験方法。
【請求項7】
前記DUTがGaNパワートランジスタである、請求項6に記載の動的試験方法。
【請求項8】
前記電流センサ(301)の前記伝達関数が予め求められたものである、請求項1に記載の動的試験方法。
【請求項9】
前記電流センサ(301)の前記伝達関数がベクトルネットワークアナライザを用いて求められる、請求項8に記載の動的試験方法。
【請求項10】
オシロスコープ(100)のそれぞれのチャネルに接続された少なくとも1つのデスキューされた電圧プローブ(203)及び少なくとも1つのデスキューされた電流測定ケーブル(201)と、デスキューされた前記電流測定ケーブル(201)に接続され前記DUTの電流を測定する電流センサ(301)とを有する、試験対象デバイス(DUT)のための動的試験セットアップを構成するステップと、
前記動的試験セットアップを用いて前記DUTのための動的試験セットアップを行い、前記オシロスコープ(100)に表示される電流波形を得るステップと、
前記電流センサ(301)の伝達関数を前記電流波形に適用し、対応するディエンベディングされた電流波形を前記オシロスコープ(100)に表示するステップと
を含む動的試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
スキュー(skew)は、オシロスコープにおけるプローブ間及び/またはチャネル間の伝搬遅延差を意味し、これはタイミング測定精度に影響を及ぼす可能性がある。パワー半導体デバイスの動的パラメータを明らかにしようとする場合、オシロスコープのVds(またはVce)測定チャネルとIds(またはIce)測定チャネルとの間のスキューを補償することは常に重要である。この補償がスイッチング損失パラメータの精度に著しく影響を及ぼすためである。非特許文献1に記載されているように、これまでにいくつかのスキュー補償(de-skew; デスキュー)方法が提案されており、その開示内容はその全体を引用することにより本明細書の一部を成すものとする。しかし、記載されたすべての方法には賛否両論がある。すなわち、以下に説明するように、いずれも特別な仕掛け(治具)、テスト回路の修正、複雑な事後的データ解析が必要となる。したがって、デスキューは、パワーデバイスの動的特性を評価する技術者にとって常に頭痛の種である。
【背景技術】
【0002】
Zhangによる第1の方法は、電力測定デスキューまたは較正用の仕掛けを適用することを含む。この方法は便利であるが、コネクタの制約により互換性が低いという欠点がある。すなわち、デスキューを行うためには特別な仕掛けが必要であり、そのような仕掛けを作ることは常に容易とは限らない。加えて、この仕掛けでデスキューすることができるのは、Tektronix社の電流プローブのみである。それとはまた別に、その最大許容電圧は8Vrmsであり、これは高いダイナミックレンジを有するアクティブプローブの較正には適していない。
【0003】
Zhangによる第2の方法では、V-Iアラインメントのために、標準的な方形波形信号源としてそのスコープのプローブ補償出力を使用する。入力電圧が低いこと(~2.5V)に加え、この方法の別の問題は、同軸ケーブルとシャントとの組合せではなく同軸ケーブルのみがデスキューされることであり、このことは、スイッチング電流測定におけるタイミングの不整合をもたらすことになる。この第2の方法は、実行が比較的容易であるが、電流センサ(電流シャント、変流器など)の遅延がデスキューされないため、精度が低下する。
【0004】
Zhangによる第3の方法は、ダブルパルス試験(DPT)においてインダクタを取り除き、それを低インダクタンスの100Ω抵抗器に置き換えることを伴うものである。この抵抗性負荷DPTにおいては、純粋な抵抗器の電圧はその抵抗器を流れる電流の100倍であり、直列のインダクタンスと抵抗との間の極めて小さい比によって生じる位相シフト(実際には約50ps)は無視できる。最大入力電圧は、抵抗器によって決まり、通常は数百ボルトである。この方法の欠点は、テスト回路を修正するコストと不便さにある。
【0005】
Zhangによる第4の方法は、既知のV-Iの関係に基づく実際のDPTスイッチング波形を使用するものである。di/dtのターンオン過渡状態の間、電力ループ内の寄生インダクタンスによる、動作デバイスのドレイン-ソース端子間の電圧低下を観測することができる。したがって、電流チャネルのデスキューは、VDSの初期降下が、ターンオン過渡状態の間の電力ループインダクタンスの電圧降下計算(すなわち、Lds×dId/dt)にグラフィカルに整合するように、オシロスコープ上で調整することができる。この方法は、di/dt過渡状態期間がより長いことにより、高い負荷電流において最も効果的である。この方法は、外部の専用治具もテスト回路の変更も必要としないので、V-Iアラインメントのためのこの方法が好まれる。電流または電圧チャネルにおけるリンギングまたはノイズの大きさが、いずれかの波形の実際の大きさに匹敵する場合、この方法を実施するのが困難である可能性がある。したがって、di/dt過渡状態時間間隔の間にオシロスコープ画面全体を満たすように、電流チャネルと電圧チャネルの両方のDCオフセット及びスケールを調整することが有用である。このデスキューは、以前に収集されたデータにおけるV-Iアラインメントを検証するために、MATLAB(登録商標)などにおけるデータ処理中に実行することもできる。それにもかかわらず、この方法は、ターンオン過渡状態時の電圧低下が常に明らかであるとは限らないので、使用が困難なことがある。さらに、電力ループインダクタンスがデータ解析の前には知られていないため、デスキューを実行するためのデータ後処理は比較的複雑なプロセスである。この結果は、データ後処理を実行する人またはアルゴリズムに依存して変化し得る。
【0006】
さらに、4つの方法はすべて、電流センサの周波数応答を補償することができない。電流センサの周波数応答が測定帯域幅にわたって平坦でない場合、電流波形の立ち上がり/立ち下がりエッジのタイミングが変化し、その結果、電圧波形と電流波形との不整合が生じる。この問題は、GaNパワートランジスタなどの高周波応答型のワイドギャップ半導体(WBG)デバイスを評価するときに、より影響力が大きくなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"Methodology for Wide Bandgap Device Dynamic Characterization" (Zheyu Zhang, IEEE Transactions on Power Electronics, Volume: 32, Issue: 2017年12月12日, URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/7827079)
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様によれば、オシロスコープの第1、第2、及び第3のチャネルにそれぞれ接続された第1及び第2のプローブならびに電流測定ケーブルをデスキューすることを含む動的試験方法が提供される。本方法は、オシロスコープと、デスキューされた第1及び第2の電圧プローブと、デスキューされた電流測定ケーブルとを含む試験対象デバイス(DUT、被試験デバイス)の動的試験セットアップを構成するステップをさらに含み、動的試験セットアップは、DUTと電流測定ケーブルとの間に接続された電流センサをさらに含む。本方法は、オシロスコープ上に表示される電流波形を得るためにDUTの動的試験を実施するステップと、オシロスコープにより電流センサの伝達関数を電流波形に適用することにより電流波形をディエンベディングして、オシロスコープ上に表示されるディエンベディングされた電流波形を得るステップとをさらに含む。
【0009】
第1及び第2の電圧プローブならびに電流測定ケーブルのデスキューは、第1及び第2の電圧プローブならびに電流測定ケーブルの一端を、オシロスコープの第1、第2、及び第3のチャネルにそれぞれ接続するステップと、第1及び第2の電圧プローブの他端を電流測定ケーブルの他端に接続するステップと、オシロスコープを使用して第1及び第2の電圧プローブならびに電流測定ケーブルをデスキューするステップとを含んでいてもよい。
【0010】
オシロスコープを使用してデスキューすることは、方形波信号を使用して行ってもよい。
【0011】
動的試験セットアップを構成するステップは、デスキューされた第1の電圧プローブの他端をDUTの第1の端子に接続するステップと、デスキューされた第2の電圧プローブの他端をDUTの第2の端子に接続するステップと、電流センサの入力部をDUTの第3の端子に接続するステップと、電流センサの出力部をデスキューされた電流測定ケーブルに接続するステップと、ゲートドライバをDUTの第2の端子と第3の端子との間に接続するステップと、第1の端子を負荷素子とソース電圧を受けるフリーホイールダイオードとに接続するステップとを含んでいてもよい。
【0012】
DUTの第1の端子は、ドレイン電極またはコレクタ電極であってもよく、DUTの第2の端子は、ゲート電極であってもよく、DUTの第3の端子は、ソース電極またはエミッタ電極であってもよい。DUTは、GaNパワートランジスタなどのパワートランジスタであってもよい。
【0013】
電流センサの伝達関数は、予め求めることができ、ベクトルネットワークアナライザを使用して求めてもよい。
【0014】
本発明の概念の別の態様によれば、動的試験方法は、試験対象デバイス(DUT)用の動的試験セットアップを構成するステップを含み、動的試験セットアップは、オシロスコープのそれぞれのチャネルに接続された少なくとも1つのデスキューされた電圧プローブ及び少なくとも1つのデスキューされた電流測定ケーブルと、デスキューされた電流測定ケーブルに接続されDUTの電流を測定する電流センサとを含む。本方法は、オシロスコープ上に表示するための電流波形を得るために動的試験セットアップを使用してDUT用の動的試験セットアップを実施するステップと、対応するディエンベディングされた電流波形をオシロスコープ上に表示するために電流センサの伝達関数を電流波形に適用するステップとをさらに含む。
【0015】
本発明の概念の上記及び他の態様及び特徴は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明概念の実施形態によるデスキュー方法について説明する際に参照するためのフローチャートである。
【
図2】
図1のデスキュー方法による電圧プローブ及び電流測定ケーブルをデスキューするための回路構成を示す図である。
【
図3A】
図2の回路構成を使用した電圧プローブ及び電流測定ケーブルのデスキューする前の表示された信号トレースの例を示す図である。
【
図3B】
図2の回路構成を使用した電圧プローブ及び電流測定ケーブルのデスキューした後の表示された信号トレースの例を示す図である。
【
図4】
図1のデスキュー方法による試験対象デバイス(DUT)の動的試験を実行するための回路構成を示す図である。
【
図5】
図4の回路構成に使用される電流センサのSパラメータの測定について説明する際に参照するための回路図である。
【
図6】
図4の回路構成で使用される電流センサの伝達関数を求めるための測定回路を示す図である。
【
図7】
図4の回路構成で使用される電流センサの伝達関数を求めるためのシミュレーション回路を示す図である。
【
図8A】本発明概念の実施形態によるディエンベディング前のGaNパワートランジスタのターンオン波形に関する表示された信号トレースの例を示す図である。
【
図8B】本発明概念の実施形態によるディエンベディング後のGaNパワートランジスタのターンオン波形に関する表示された信号トレースの例を示す図である。
【
図9A】本発明概念の実施形態によるディエンベディング前のSiCパワートランジスタのターンオン波形に関する表示された信号トレースの例を示す図である。
【
図9B】本発明概念の実施形態によるディエンベディング後のSiCパワートランジスタのターンオン波形に関する表示された信号トレースの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明では、限定ではなく説明を目的として、本教示による実施形態の完全な理解を与えるために、具体的な詳細を開示する代表的な実施形態を記載する。既知のシステム、デバイス、材料、動作方法、及び製造方法の説明は、代表的な実施形態の説明が不明瞭となることを避けるために省略され得る。それにもかかわらず、当業者の範囲内にあるシステム、デバイス、材料、及び方法は、本教示の範囲内であり、代表的な実施形態に従って使用され得る。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定を意図するものではないことを理解されたい。定義された用語は、本教示の技術分野において一般に理解され、受け入れられている定義された用語の技術的及び科学的意味に追加される。
【0018】
第1、第2、第3などの用語は、様々な要素または構成要素を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素または構成要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、1つの要素または構成要素を別の要素または構成要素と区別するためにのみ使用される。したがって、以下で議論される第1の要素または構成要素は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素または構成要素と称され得る。
【0019】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであって、限定することを意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」の単数形は、文脈が明らかに他を指示しない限り、単数形及び複数形の両方を含むことを意図する。さらに、用語「含む(comprises)」及び/または「含んでいる(comprising)」及び/または同様の用語は、本明細書で使用されるとき、述べられた特徴、要素、及び/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、要素、構成要素、及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。本明細書で使用する「及び/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つまたは複数の任意のまたはすべての組合せを含む。
【0020】
特に断りのない限り、要素または構成要素が別の要素または構成要素に「接続される」、「結合される」、または「隣接する」と言われる場合、その要素または構成要素は、他の要素または構成要素に直接接続または結合されてもよく、あるいは介在する要素または構成要素が存在してもよいことが理解されよう。すなわち、これら及び同様の用語は、2つの要素または構成要素を接続するために1つまたは複数の中間要素または構成要素が採用され得る場合を包含する。しかしながら、ある要素または構成要素が別の要素または構成要素に「直接接続されている」と言う場合、これは、中間の要素もしくは構成要素または介在する要素もしくは構成要素なしに、2つの要素または構成要素が互いに接続されている場合のみを含む。
【0021】
したがって、本開示は、その様々な態様、実施形態、及び/または特定の特徴もしくは下位構成要素のうちの1つまたは複数を通して、以下で具体的に述べられる利点のうちの1つまたは複数をもたらすことを意図する。限定ではなく説明を目的として、本教示による実施形態の完全な理解を与えるために、具体的な詳細を開示する例示的な実施形態を記載する。しかしながら、本明細書に開示する特定の詳細から逸脱する、本開示と一致する他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にとどまる。さらに、よく知られている装置及び方法の説明は、例示的な実施形態の説明を不明瞭にしないように省略されることがある。そのような方法及び装置は、本開示の範囲内である。
【0022】
本発明の概念は、背景技術のセクションで述べたZhangの第2の方法の改良と考えることのできるデスキュー(de-skew)技法を対象とする。本方法は、方形信号を使用して比較的単純なデスキュー方法を実施することに加えて、動的試験中に得られた電流波形に電流センサの伝達関数を適用する。
【0023】
図1は、本発明の概念の実施形態による半導体デバイスの動的試験のためのデスキュー方法について説明する際に参照するためのフローチャートである。
【0024】
図1に示すように、まずステップ1000にて、電圧プローブ及び電流測定ケーブルがオシロスコープのチャネルに接続され、標準的な方形波信号を用いてデスキューされる。
【0025】
次いで、ステップ2000において、試験対象デバイス(device under test、 DUT、被試験デバイス)が、駆動回路、電流センサ、オシロスコープ、電圧プローブ、及び電流測定ケーブルを含む動的試験の回路構成に接続される。
【0026】
次いで、ステップ3000において、とりわけDUTの電流波形を得るために、DUTの動的試験が行われる。また、それまでに求められた電流センサの伝達関数が、本明細書にて「ディエンベディング」(de-embedding)と呼ばれるプロセスにおいて、得られた電流波形に適用される。
【0027】
以下、
図1の各ステップ1000~3000についてより詳細に説明する。
【0028】
図2に、
図1に示したデスキュー方法の第1のステップ1000を実行するために利用できる試験セットアップを示す。
【0029】
図2に示すように、この例の試験セットアップには、複数のチャネルCh1、Ch2及びCh3を有するオシロスコープ100が含まれる。図示するように、同軸ケーブル201a及び201bにより、信号源202がオシロスコープ100の第3チャネルCh3の終端抵抗101に接続される。この例では、ケーブル201a、201bの中心導体は、オシロスコープ100の、接地された終端抵抗101に接続され、ケーブル201a/201bの外側導体は接地される。さらに、ゲート-ソース電圧(Vgs)(またはゲート-エミッタ電圧(Vge))プローブ203は、第1のチャネルCh1とケーブル201a、201bの長さ方向に沿った中心導体との間に接続され、ドレイン-ソース電圧(Vds)(またはコレクタ-エミッタ電圧(Vce))プローブ204は、第2のチャネルCh2とケーブル201a、201bの長さ方向に沿った中心導体との間に接続される。プローブ203、204の接続部とチャネルCh3との間のケーブル201bを、
図2に表す電流測定(Ids)ケーブルと見なしてもよい。例として、信号の伝送線路及び電流測定ケーブル201は、50オームの特性インピーダンスを有してもよく、終端抵抗101は、信号反射を回避するために50オームの終端であってもよい。
【0030】
図1のステップ1000では、
図2のようにセットアップされたオシロスコープ100のデスキュー機能を使用して、電圧(VgsまたはVge)プローブ203、電圧(VdsまたはVce)プローブ204、及び電流(IdsまたはIce)測定ケーブル201bについて標準的な方形波形信号を用いてデスキュー(スキュー値の調整)が行われる。
図3Aは、デスキュー前にオシロスコープディスプレイ上で観測された、対応する信号軌跡の例を示す。
図3Aに見られるように、観測された信号軌跡はある程度離れている。
図3Bは、デスキュー後にオシロスコープディスプレイ上で観測された、対応する信号軌跡の例を示す。
図3Bに見られるように、観測された信号軌跡は、ステップ1000のデスキュープロセスの結果、重なり合うようになる。
【0031】
次に、
図1のステップ2000において、デスキューされたプローブ203/204及びIdsケーブル201bが、動的試験回路に接続される。
図4は、得られる試験セットアップの例を示す回路図である。
【0032】
図4に示すように、Vgsプローブ203は試験対象デバイス(DUT)のゲートに直接接続され、Vdsプローブ204はDUTのドレインに直接接続される。電流センサ301は、DUTのソースに接続され、DUTを通る現在の流れに応じて電圧Vを生成する。Idsケーブル201bは、電流センサ301の電圧Vを受けるように接続される。試験の際、DUTは、電圧源V
DDと、ゲート端子R
Gに接続されたゲートドライバ302とにより駆動される。この図において、Lは、回路の負荷インダクタである。負荷インダクタLは、負荷素子を構成し、これはむしろ抵抗性負荷とすることができる。図示されたショットキーダイオード(またはボディダイオード)は、DUTがオフである間に負荷インダクタLからの電流がフリーホイールのように流れることを可能にするため、通常、フリーホイールダイオード(FWD)と呼ばれる。
【0033】
次に、
図1のステップ3000にて、上述した
図4のハードウェア構成を用いて動的試験が行われる。その結果、電流(IdsまたはIce)波形を含むいくつかの信号軌跡が得られる。また、ステップ300では、得られた電流(IdsまたはIce)の波形に電流センサ301の伝達関数(transfer function)が適用される。このことを本明細書では「ディエンベディング(de-embedding)」と呼ぶ。
【0034】
動的試験の前に、電流センサ301の伝達関数を予め求めることができる。
図5に示すように、伝達関数を得るべく、まず、電流センサ301の2ポートSパラメータを、2ポートベクトルネットワークアナライザ(VNA)により測定する。Sパラメータは、センサ301の電流入力ポートをVNAポート1に接続し、センサ301の電圧出力ポートをVNAポート2に接続することによって測定することができる。VNAの較正面(calibration plane)は、
図5に示すように、電流センサの両端子上にある。
【0035】
Sパラメータが測定されたのち、電流センサ301の伝達関数を、Sパラメータによって表される実際の測定回路(
図6)と理想的なシミュレーション回路(
図7)との比較により計算することができる。
図6及び
図7に示す測定回路及びシミュレーション回路を前提とすれば、以下の伝達関数を得ることができる。
H(f)=Vsim(f)/Vmeas(f)
【0036】
Zsrcが電流センサの入力インピーダンスよりも十分に大きい場合、以下を仮定することができる。
Vsrcsim~Vsrc*(Zsrc+Zosc)/Zsrc
【0037】
電流波形のディエンベディングは、オシロスコープ100によって提供される逆フーリエ変換及び畳込みの機能によって行うことができる。
【0038】
電流シャントを例にする。電流シャントは通常、シャント抵抗器と直列の寄生インダクタンス(Ls)を有する。この寄生インダクタンスは、観測された波形に追加の電圧Ls*di/dtを与え、その結果、観測されるターンオン、ターンオフ電流波形は、実際の電流波形よりも早く上昇、下降しているように見える。この観点から、ディエンベディング前のGaNパワートランジスタの実際のターンオン波形である
図8Aと、ディエンベディング後のGaNパワートランジスタの実際のターンオン波形を示す
図8Bとに着目する。赤色で示されたVds波形は、電力ループインダクタンス及びドレイン電流のdi/dtによって引き起こされる電圧低下を明確に示している。理論的には、di/dtとVdsの低下とは比例していなければならない。しかし、ディエンベディング無しの波形を見ると、di/dtのエッジはVds降下よりも早く現れ、これが電流シャントにおける寄生インダクタンスの影響を示している。電流シャントのディエンベディングを適用することによって、di/dtエッジとVds降下とのタイミングは
図8Bに示すように一致し、di/dtエッジとVds降下とは比例するようになり、正確なデスキューが達成できることが示されている。
【0039】
同様の結果を、SiCパワートランジスタに関する
図9A及び
図9Bに示す。すなわち、
図9Aは、ディエンベディング前のGaNパワートランジスタの実際のターンオン波形であり、
図9Bは、ディエンベディング後のそれである。
【0040】
上述した発明の概念は、いくつかの利点を提供する。第1に、デスキューを行うにあたり特別な治具が必要とされず、動的試験回路の変更が必要とされない。さらに、デスキュー技法は、業界標準のデータ後処理の使用を可能にし、すなわち、アルゴリズムが、市販のオシロスコープのソフトウェアに既に組み込まれている。さらに、本発明の概念は、電流センサの周波数応答を補償するものであり、これにより精度の向上がもたらされる。
【0041】
電流センサのSパラメータを知ることが必要である。しかし、電流センサのSパラメータは、時間とともに著しく変化するというものではない。したがって、Sパラメータの測定は、たまに、例えば、1年に1回程度行うだけでよい。
【0042】
本発明の上述の実施形態は、本発明の様々な態様を例示するために提供してきた。しかしながら、異なる特定の実施形態に示される本発明の異なる態様を組み合わせて、本発明の他の実施形態を提供することができることを理解されたい。それに加えて、本発明に対する様々な修正形態が、前述の説明及び添付の図面から明らかになるであろう。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【外国語明細書】