(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031972
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子およびその使用
(51)【国際特許分類】
H10K 50/12 20230101AFI20240229BHJP
H10K 85/30 20230101ALI20240229BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240229BHJP
C07F 15/00 20060101ALI20240229BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240229BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20240229BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K85/30
G09F9/30 365
C07F15/00 E CSP
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K101:30
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137424
(22)【出願日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】202211022169.8
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519333413
【氏名又は名称】北京夏禾科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲クアン▼ 志遠
(72)【発明者】
【氏名】蔡 ▲維▼
(72)【発明者】
【氏名】高 亮
(72)【発明者】
【氏名】王 静
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ソウ▼
(72)【発明者】
【氏名】李 宏博
(72)【発明者】
【氏名】王 珍
(72)【発明者】
【氏名】夏 伝軍
【テーマコード(参考)】
3K107
4H050
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
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3K107FF13
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB92
5C094AA08
5C094BA27
5C094FB01
5C094FB02
5C094JA01
5C094JA02
5C094JA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有機エレクトロルミネッセンス素子およびその使用を開示する。
【解決手段】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、特定のスペクトル特性を有する金属錯体を含む。金属錯体は、商業上で求められるBT.2020の発光にいっそう接近するという性能を達成することができる。DおよびAR要求を満たしていない金属錯体に対して、有機エレクトロルミネッセンス素子に適用されることにより得られた有機エレクトロルミネッセンス素子は、より高い素子の効率およびより飽和した緑色発光を有し、市場でBT.2020の発光に対するニーズを満たすことができるとともに、BT.2020の発光に接近した際に、依然として高い素子の性能、特に素子の効率を維持し、且つ大体、素子の最大効率を達成することができる。金属錯体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子は、広い商業的な適用見込みを有し、より飽和した発光を達成することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極、陽極、および陰極と陽極との間に設けられた有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層は、金属Mと、金属Mと配位する少なくとも1つのC^N2座配位子Laとを含む金属錯体を含有し、
金属Mは、相対原子質量が40を超える金属から選ばれ、
前記金属錯体の室温下でのフォトルミネッセンススペクトルの面積比がARであり、AR≦0.331であり、
前記金属錯体は、トップエミッション素子において最大電流効率を有する場合、対応する色座標がCIE(x,y)であり、
前記CIE(x,y)と色座標CIE(0.170,0.797)との距離がDであり、
ただし、CIEy≧0.797またはD≦0.0320である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記金属錯体は、エレクトロルミネッセンススペクトル(EL)における最大放射波長がλmaxであり、半値全幅がFWHMであり、ただし、490nm≦λmax≦524nm且つFWHM≦35nmであり、
好ましくは、500nm≦λmax≦524nm且つFWHM≦34nmである、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
D≦0.0280である、
請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記金属錯体の最高被占分子軌道エネルギーレベル(EHOMO)が-5.05eV以下であり、
好ましくは、前記金属錯体の最高被占分子軌道エネルギーレベル(EHOMO)が-5.10eV以下である、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記金属錯体の最低未占有分子軌道エネルギーレベル(ELUMO)が-2.1eV以下であり、
好ましくは、前記金属錯体の最低未占有分子軌道エネルギーレベル(ELUMO)が-2.3eV以下である、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記有機層は、さらに第1の化合物を含有し、前記第1の化合物の最低未占有分子軌道エネルギーレベル(ELUMO-H1)が-2.70eV以下であり、
好ましくは、前記第1の化合物の最低未占有分子軌道エネルギーレベル(ELUMO-H1)が-2.80eV以下である、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記有機層は、さらに第2の化合物を含有し、前記第2の化合物の最高被占分子軌道エネルギーレベル(EHOMO-H2)が-5.60eV以上であり、
好ましくは、前記第2の化合物の最高被占分子軌道エネルギーレベル(EHOMO-H2)が-5.50eV以上である、
請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記第1の化合物および/または第2の化合物は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、カルバゾール、アザカルバゾール、インドロカルバゾール、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、アザジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、フルオレン、シリコンフルオレン、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、フェナントレン、アザフェナントレン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1種の化学基を含む、
請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記金属錯体は、前記第1の化合物および第2の化合物にドーピングされ、金属錯体の重量が有機層の総重量に対して1%~30%であり、
好ましくは、金属錯体の重量が有機層の総重量に対して3%~13%である、
請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記金属錯体は、M(La)m(Lb)n(Lc)qの一般式を有し、
La、LbおよびLcは、それぞれ金属Mと配位する第1、第2および第3の配位子であり、La、Lb、Lcは、同一または異なり、La、LbおよびLcは、結合して4座または複数座配位子を形成していてもよく、
金属Mは、出現毎に同一または異なってCu、Ag、Au、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtからなる群から選ばれ、
mは1、2または3から選ばれ、nは0、1または2から選ばれ、qは0、1または2から選ばれ、m+n+qは、Mの酸化状態に等しく、mが2または3である場合、複数のLaは、同一または異なってもよく、nが2である場合、2つのLbは、同一または異なってもよく、qが2である場合、2つのLcは、同一または異なってもよく、
Laは、A-Eの構造を有し、
前記Aは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の環原子数5~6のヘテロ芳香族環から選ばれ、前記ヘテロ芳香族環に少なくとも1つの窒素原子が含まれ、Aは、前記ヘテロ芳香族環における前記窒素原子によって金属と金属-窒素結合または金属-G-窒素結合を形成し、
前記Eは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の環原子数13~30の芳香族環または置換または非置換の環原子数13~30のヘテロ芳香族環から選ばれ、前記芳香族環またはヘテロ芳香族環は、少なくとも3つの環を有する縮合構造であり、且つ前記少なくとも3つの環は、少なくとも2つの6員環および1つの5員環を含み、Eは、前記芳香族環またはヘテロ芳香族環における炭素原子によって金属と金属-炭素結合または金属-G-炭素結合を形成し、
LbおよびLcは、出現毎に同一または異なってC-L-Dの構造を有し、
CおよびDは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の環原子数6~30の芳香族環、置換または非置換の環原子数5~30のヘテロ芳香族環、またはこれらの組合せから選ばれ、CおよびDは、出現毎に同一または異なって前記芳香族環またはヘテロ芳香族環における炭素原子または窒素原子によって金属と金属-炭素結合、金属-窒素結合、金属-G-炭素結合または金属-G-窒素結合を形成し、
Lは、出現毎に同一または異なって単結合、BRL、CRLRL、NRL、SiRLRL、PRL、GeRLRL、O、S、Se、置換または非置換のビニリデン基、アセチレン基、置換または非置換の炭素原子数5~30のアリーレン基、置換または非置換の炭素原子数5~30のヘテロアリーレン基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、2つのRLが同時に存在する場合、2つのRLは、同一または異なり、
RLは、出現毎に同一または異なって水素または置換基を表し、
Gは、出現毎に同一または異なって単結合、OまたはSから選ばれ、
隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよい、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
金属Mは、出現毎に同一または異なってPtまたはIrから選ばれる、
請求項1または9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記金属錯体を含む前記有機層は、発光層である、
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む、
表示アセンブリ。
【請求項14】
M(La)m(Lb)n(Lc)qの一般式を有する金属錯体であって、
La、LbおよびLcは、それぞれ金属Mと配位する第1の、第2のおよび第3の配位子であり、且つLa、Lb、Lcは、同一または異なり、La、LbおよびLcは、結合して4座または複数座配位子を形成していてもよく、
mは1、2または3から選ばれ、nは0、1または2から選ばれ、qは0、1または2から選ばれ、m+n+qは、Mの酸化状態に等しく、mが2または3である場合、複数のLaは、同一または異なってもよく、nが2である場合、2つのLbは、同一または異なってもよく、qが2である場合、2つのLcは、同一または異なってもよく、
前記金属錯体は、金属Mと、金属Mと配位する少なくとも1つのC^N2座配位子Laと、を含み、
金属Mは、相対原子質量が40を超える金属から選ばれ、
LbおよびLcは、出現毎に同一または異なってモノアニオン性2座配位子から選ばれ、
前記金属錯体の室温下でのフォトルミネッセンススペクトルの面積比がARであり、且つAR≦0.331であり、
前記金属錯体は、トップエミッション素子において最大電流効率を有する場合、対応する色座標がCIE(x,y)であり、
前記CIE(x,y)と色座標CIE(0.170,0.797)との距離は、Dであり、
ただし、CIEy≧0.797またはD≦0.0320である、金属錯体。
【請求項15】
前記金属錯体は、式1または式2で表される構造を有する、請求項14に記載の金属錯体。
【化1】
【化2】
(金属Mは、相対原子質量が40を超える金属から選ばれ、
環Aは、出現毎に同一または異なって環原子数5~6の窒素含有ヘテロ芳香族環から選ばれ、
環Eは、出現毎に同一または異なって少なくとも3つの環を有する縮合構造である環原子数13~30の芳香族環またはヘテロ芳香族環から選ばれ、2つの6員環および1つの5員環を少なくとも含み、
環Cおよび環Dは、出現毎に同一または異なって炭素原子数6~30の芳香族環、炭素原子数3~30のヘテロ芳香族環、またはこれらの組合せから選ばれ、
Zは、出現毎に同一または異なってCまたはNから選ばれ、
Gは、出現毎に同一または異なって単結合、OまたはSから選ばれ、
L、L
1およびL
2は、出現毎に同一または異なって単結合、BR
L、CR
LR
L、NR
L、SiR
LR
L、PR
L、GeR
LR
L、O、S、Se、置換または非置換のビニリデン基、アセチレン基、置換または非置換の炭素原子数5~30のアリーレン基、置換または非置換の炭素原子数5~30のヘテロアリーレン基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、2つのR
Lが同時に存在する場合、2つのR
Lは、同一または異なり、
a、bおよびcは、出現毎に同一または異なって0または1から選ばれ、
R
a、R
e、R
cおよびR
dは、出現毎に同一または異なって一置換、複数置換または無置換を表し、
R
a、R
e、R
c、R
dおよびR
Lは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
隣り合う置換基R
a、R
e、R
c、R
dおよびR
Lは、結合して環を形成していてもよい。)
【請求項16】
Ra、Re、RcおよびRdの少なくとも1つは、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
好ましくは、Ra、Re、RcおよびRdの少なくとも1つは、フッ素、置換または非置換炭素原子数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~18のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~18のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~12のアルキルシリル基、シアノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項15に記載の金属錯体。
【請求項17】
Reのうちの少なくとも1つは、FまたはCNから選ばれ、且つReのうちの少なくとも1つは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
好ましくは、Reのうちの少なくとも1つは、FまたはCNから選ばれ、且つReのうちの少なくとも1つは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項15に記載の金属錯体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子素子、たとえば有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。特に、特定のスペクトル特性を有する金属錯体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子を含む表示アセンブリ、および該金属錯体の有機光電素子における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子素子は、有機発光ダイオード(OLEDs)、有機電界効果トランジスタ(O-FETs)、有機発光トランジスタ(OLETs)、有機起電セル(OPVs)、色素-増感太陽電池(DSSCs)、有機光検出器、有機感光装置、有機電界効果素子(OFQDs)、発光電気化学セル(LECs)、有機レーザダイオードおよび有機プラズマ発光素子を含むが、それに限定されない。
【0003】
1987年、イーストマンコダック(Eastman Kodak)のTangおよびVan Slykeにより、電子輸送層および発光層として、アリールアミン正孔輸送層とトリス-8-ヒドロキシキノリン-アルミニウム層とを含む二層有機エレクトロルミネセント素子が報道されている(Applied Physics Letters、1987、51(12):913~915)。素子に対してバイアスが一旦印加されると、緑色光が素子から発射される。この発明は、現代の有機発光ダイオード(OLEDs)の発展に対する基礎を築き上げている。最も先進的なOLEDsは、電荷注入・輸送層、電荷・励起子ブロッキング層、および陰極と陽極との間の1つまたは複数の発光層などの複数の層を含んでもよい。OLEDsは、自発光性ソリッドステート素子であるので、表示および照明の適用に対して極めて大きな潜在力を提供している。また、有機材料の固有な特性、例えばそれらの可撓性は、可撓性基板で行った製造などの特殊な適用に非常に適合するようになっている。
【0004】
OLEDは、その発光メカニズムに応じて、3種の異なるタイプに分けられている。Tangおよびvan Slykeにより発明されたOLEDは、蛍光OLEDであり、一重項発光のみを使用する。素子において生成した三重項が非輻射減衰通路により浪費され、蛍光OLEDの内部量子効率(IQE)が25%に過ぎないため、この制限はOLEDの商業化を妨害している。1997年、ForrestおよびThompsonにより、錯体含有重金属からの三重項発光を発光体として用いるりん光OLEDが報道されている。そのため、一重項および三重項を収穫し、100%のIQEを実現することができる。その効率が高いため、りん光OLEDの発見および発展は、直接的にアクティブマトリクスOLED(AMOLED)の商業化に貢献する。最近、Adachiは、有機化合物の熱活性化遅延蛍光(TADF)によって高効率を実現している。これらの発光体は、小さい一重項-三重項ギャップを有するため、励起子が三重項から一重項に戻るトランジションが可能となる。TADF素子において、三重項励起子がリバースシステム間で貫通すること(逆項間交差)によって一重項励起子を生成することに起因してIQEが高くなっている。
【0005】
OLEDsは、さらに、所用材料の形態に応じて、小分子とポリマーOLEDに分けられてもよい。小分子とは、ポリマーではない、有機または有機金属のいずれかの材料を指し、精確な構造を有すれば、小分子の分子量が大きくてもよい。明確な構造を有するデンドリマーは、小分子と認められている。ポリマーOLEDは、共役ポリマーと、側鎖の発光基を有する非共役ポリマーとを含む。製造過程において後重合を発生すると、小分子OLEDがポリマーOLEDになり得る。
【0006】
様々なOLEDの製造方法が公知されている。小分子OLEDは、一般的に、真空熱蒸発により製造されるものである。ポリマーOLEDは、例えばスピンコート、インクジェット印刷およびノズル印刷などの溶液法により製造されるものである。材料が溶剤に溶解または分散することが可能であれば、小分子OLEDも溶液法により製造されることができる。
【0007】
OLEDの発光色は、発光材料の構造設計により実現することができる。OLEDは、所望のスペクトルを実現するように、1つまたは複数の発光層を含んでもよい。緑色、黄色、赤色OLEDにおいて、りん光材料は、既に商業化の実現に成功したが、青色のりん光素子には、依然として、青色が飽和せず、耐用年数が短く、作業電圧が高いなどの問題が存在する。市販のフルカラーOLEDディスプレイは、一般的に混合策略を用い、青色の蛍光、および黄色、赤色または緑色のりん光を用いる。現在、りん光OLEDの効率が高輝度の場合に急速に低下するという問題が存在する。また、より飽和した発光スペクトル、より高い効率、およびより長いデバイス耐用年数を有することが望まれている。
【0008】
フルカラーディスプレイは、現在、我々の仕事および生活、たとえば携帯電話のディスプレイ、コンピューターのディスプレイ、ショッピングモールの広告ディスプレイなどに広く適用されており、主に文字、図形、アニメーション、ビデオ、録画などの情報を表示するために用いられている。1つのフルカラーディスプレイの良否を鑑定すると、平坦性、輝度、可視角度、ホワイトバランス効果などの特徴を考慮する必要がある以外、色再現性もそのうちの最も重要な特徴の1つである。色再現性とは、通常、ディスプレイにおけるRGBサブ画素が表現可能な色を指し、BT.2020は、現在の色再現性が最も高い色域要求であり、フルカラーディスプレイのBT.2020のカバレッジが高いほど、その色再現性が高くなっている。2012年に、国際電気通信連合(International Telecommunication Union、ITU)により、新たなUHDTV色域規格である放送サービステレビジョン2020(Broadcast Service Television 2020、BT.2020)が宣告されている。しかしながら、色域規格については、BT.2020の方がより高いが、BT.2020の三原色の彩色が飽和すぎるため、普通の素子が達成しにくい。
【0009】
BT.2020は、赤色・緑色・青色の三原色の色座標要求がそれぞれ(0.708,0.292)、(0.131,0.046)および(0.170,0.797)である。現在よく用いられるOLED表示パネルにおける赤色光素子および青色光素子は、いずれも色域要求をほぼ満たすことができ、主に緑色光素子の性能がまだ色域要求を満たしていないことにより制限されている。このようなBT.2020のカバレッジを達成しようとすると、緑色光素子の色座標を、BT.2020の要求に接近するように調節する必要がある。単一色のレーザ光源は、BT.2020の色域要求を実現するために用いられてもよいが、投影型テレビ表示装置のみに用いられている。また、その物理的なサイズが比較的に大きく、製造コストが比較的に高いため、ほとんど解像度の高い中小型アクティブマトリックス表示装置に用いられることができない。他の潜在的な、BT.2020の色域要求を実現するための候補者は、量子ドット(Quantum Dots、QD)である。量子ドットは、相対的に狭い発光スペクトルを有するため、広く研究されているが、QDを自発光素子として用いる量子ドット発光ダイオードは、依然として安定性の問題が存在して商業化されることができない。また、Micro LED技術は、半導体エピタキシャルウェハにおいて製造されたLEDチップを剥離して表示バックパネルに転移し、バックパネル回路と電気接続(bonding)を実現することにより、新規な表示技術の研究ホットスポットとなっており、LEDと同様なスペクトルが狭く、色飽和度が高いという特徴を有し、適切な半導体材料を選択することにより、所望する放射スペクトルを取得することができる。しかし、Micro LEDチップは、サイズが小さくなるときに、効率もそれに従って低下することがある。「物質移動(Mass transfer)」という技術が成熟していないことに加えて、その携帯電話などの移動機器の表示部材としての適用は、未だ商業化されていない。
【0010】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、各種のサイズのディスプレイ、たとえば、携帯電話、タブレット、ラップトップ、AR、VRメガネなどに広く適用されている。一部の検討によれば、OLEDの消費電力は、LEDバックライトの液晶ディスプレイよりも37%低い可能性がある。そのため、他の潜在的な、BT.2020の色域要求を実現するための候補者は、OLED技術である。しかし、現在のOLED素子は、理想的なBT.2020の色域カバレッジを達成しにくく、各々のディスプレーメーカおよび端末メーカからのOLED製品のBT.2020のカバレッジが一般的に80%よりも小さい。そのため、如何に、BT.2020の要求を達成するようにOLED素子またはOLED表示製品の表示色を向上させるかは、業界内で差し迫って解決する必要がある技術的問題となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Applied Physics Letters、1987、51(12):913~915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記した問題の少なくとも一部を解決するために、有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、特定のスペクトル特性を有する金属錯体を含む。前記金属錯体は、商業上で求められるBT.2020の発光にいっそう接近するという性能を達成することができるとともに、BT.2020発光に接近するときに、依然として高い素子の性能、特に素子の効率を維持し、大体素子の最大効率を達成することができる。上記金属錯体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子は、広い商業的な適用見込みを有し、より飽和した発光を達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施例によれば、陰極、陽極、および陰極と陽極との間に設けられた有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層は、金属Mと金属Mと配位する少なくとも1つのC^N2座配位子Laとを含む金属錯体を含有し、
金属Mは、相対原子質量が40を超える金属から選ばれ、
前記金属錯体の室温下でのフォトルミネッセンススペクトルの面積比がARであり、且つAR≦0.331であり、
前記金属錯体は、トップエミッション素子において最大電流効率を有する場合、対応する色座標がCIE(x,y)であり、
前記CIE(x,y)と色座標CIE(0.170,0.797)との距離は、Dであり、
ただし、CIEy≧0.797またはD≦0.0320である、有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。
【0014】
本発明の他の実施例によれば、上記実施例に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子を含む表示アセンブリがさらに開示される。
【0015】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、特定のスペクトル特性(即ち、DおよびAR要求を満たす)を有する金属錯体を用いる。前記金属錯体は、商業上で求められるBT.2020発光にいっそう接近するという性能を達成することができるため、DおよびAR要求を満たしていない金属錯体に対して、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられることにより得た有機エレクトロルミネッセンス素子は、より高い素子の効率、およびより飽和した緑色発光を有し、市場でBT.2020の発光に対するニーズを満たすことができ、BT.2020の発光に接近するときに、依然として高い素子の性能、特に素子の効率を維持し、大体素子の最大効率を達成することができる。上記金属錯体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子は、商業的な適用見込みが広く、より飽和した発光を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の模式図である。
【
図2】本発明に係る他の有機エレクトロルミネッセンス素子の模式図である。
【
図3】典型的なトップエミッションOLED素子の構造模式図である。
【
図4】模擬時に用いられる素子の構造模式図である。
【
図5】発光スペクトル面積比を計算するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
OLEDは、ガラス、プラスチック、および金属などの様々な基板で製造することができる。
図1は、有機発光装置100を例示的に制限せずに示している。図面に対して、必ずしも縮尺どおりに製作するわけではなく、図において、必要に応じて一部の層構造を省略してもよい。装置100には、基板101、陽極110、正孔注入層120、正孔輸送層130、電子ブロッキング層140、発光層150、正孔ブロッキング層160、電子輸送層170、電子注入層180および陰極190が含まれてもよい。装置100は、記載される層を順に堆積することにより製造されてもよい。各層の性質、機能および例示的な材料については、米国特許US7279704B2の第6~10欄においてより詳細に記載されており、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0018】
これらの層のそれぞれには、より多くの実例がある。例示的には、全文を援用するように組み込まれた米国特許第5844363号において、可撓性で透明な基板-陽極の組合せが開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2003/0230980号において、p型ドープの正孔輸送層の実例は50:1のモル比でF4-TCNQがドーピングされたm-MTDATAであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた、トンプソン(Thompson)らによる米国特許第6303238号において、ホスト材料の実例が開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2003/0230980号において、n型ドープの電子輸送層の実例は1:1のモル比でLiがドーピングされたBPhenであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許第5703436号および第5707745号において、例えばMg:Agなどの金属薄層と、その上に被覆された、スパッタ堆積された透明な導電ITO層とを有する複合陰極を含む陰極の実例が開示されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許第6097147号および米国特許出願公開第2003/0230980号において、より詳細に、ブロッキング層の原理と使用が記載されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2004/0174116号において注入層の実例が提供されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2004/0174116号において、保護層が記載されている。
【0019】
非限定的な実施例により上述した分層構造が提供される。上述した各種の層を組み合わせることによってOLEDの機能が実現することができ、或いは、一部の層を完全に省略することができる。それは、明確に記載されていない他の層を含んでもよい。それぞれの層内に、最適な性能を実現するように、単一の材料または多種の材料の混合物を使用することができる。機能層はいずれも、複数なサブ層を含んでもよく、例えば、発光層は、所望の発光スペクトルを実現するように、2層の異なる発光材料を有してもよい。
【0020】
一実施例において、OLEDは、陰極と陽極との間に設けられた「有機層」を有すると記載されてもよい。当該有機層は、1つまたは複数の層を含んでもよい。
【0021】
OLEDにもカプセル化層が必要であり、
図2に示すように、有機発光装置200が例示的に制限せずに示されている。
図1との相違点は、水分および酸素などの外界からの有害物質を防止するように、陰極190上にカプセル化層102を含んでもよい。ガラス、または有機-無機混合層などのカプセル化機能を提供可能ないかなる材料も、カプセル化層として用いられてもよい。カプセル化層は、OLED素子の外部に、直接または間接的に配置されるべきである。多層薄膜カプセル化については、米国特許US7968146B2において記載されており、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0022】
本発明の実施例により製造される素子は、当該素子の1つまたは複数の電子部材モジュール(或いは、ユニット)を有する各種の消費製品に組み込まれてもよい。これらの消費製品は、例えば、フラットパネルディスプレイ、モニタ、医療用モニタ、テレビ、ビルボード、室内または室外用照明ランプおよび/または信号ランプ、ヘッドアップディスプレイ、全部または一部透明のディスプレイ、可撓性ディスプレイ、スマートフォン、フラットパネルコンピューター、フラットパネル携帯電話、ウェアラブル素子、スマートウォッチ、ラップトップコンピューター、デジタルカメラ、携帯型ビデオカメラ、ファインダー、マイクロディスプレイ、3-Dディスプレイ、車載ディスプレイおよびテールライトを含む。
【0023】
本明細書に記載される材料および構造は、上述にて列挙されている他の有機電子素子にも用いられてもよい。
【0024】
「頂部」とは、基板から最も遠く、「底部」とは、基板から最も近いことを意味する。第1の層が第2の層「上」に設けられていると記載されている場合、第1の層が基板から相対的に遠いように設けられている。第1の層が第2の層「と」「接触する」ことを規定していない限り、第1の層と第2の層との間に他の層が存在してもよい。例示的には、陰極と陽極との間に各種の有機層が存在しても、依然として、陰極が陽極「上」に設けられていると記載されることができる。
【0025】
「溶液が処理可能である」とは、溶液または懸濁液の形態で液体媒体に溶解、分散または輸送可能であり、および/または液体媒体から堆積可能であることを意味する。
【0026】
配位子は、直接的に発射材料の感光性質を促成すると、「感光性」と呼ばれてもよいことが信じられている。配位子は、発射材料の感光性質を促成しないと、「補助性」と呼ばれてもよい。しかし、補助性の配位子は、感光性配位子の性質を変更することができることが信じられている。
【0027】
蛍光OLEDの内部量子効率(IQE)は、遅延蛍光の存在によって25%のスピン統計による制限を超えてもよいことが信じられている。遅延蛍光は、一般的に2つのタイプ、すなわちP型遅延蛍光およびE型遅延蛍光に分けられてもよい。P型遅延蛍光は、三重項-三重項消滅(TTA)により生成される。
【0028】
一方、E型遅延蛍光は、2つの三重項の衝突ではなく、三重項と一重項との励起状態の変換に依存する。E型遅延蛍光を生成可能な化合物は、エネルギー状態の変換を行うように、極めて小さい一重項-三重項ギャップを有することが必要である。熱エネルギーは、三重項から一重項までの遷移を活性化することができる。このようなタイプの遅延蛍光は、熱活性化遅延蛍光(TADF)とも呼ばれる。TADFの顕著な特徴は、遅延成分が温度の上昇と伴って向上することにある。リバースシステム(RISC)間の貫通(逆項間交差)の速度が十分に速いと、三重項からの非輻射減衰を最小化させ、バックフィルした一重項の励起状態の割合は75%に達することができる。一重項の合計割合は100%であってもよく、エレクトロによる励起子のスピン統計の25%をはるかに超えている。
【0029】
E型遅延蛍光の特徴は、励起複合物系または単一の化合物から見える。理論に限定されず、E型遅延蛍光は、発光材料が小さい一重項-三重項エネルギーギャップ(ΔES-T)を有する必要がある。有機非金属含有の供与体・受容体発光材料は、この点を実現する可能性がある。これらの材料の発射は、通常、供与体・受容体電荷遷移(CT)型発射であると特徴付けられる。これらの供与体・受容体型化合物において、HOMOとLUMOとの空間分離は、一般的に小さいΔES-Tを生成することになる。これらの状態は、CT状態を含んでもよい。通常、供与体・受容体発光材料は、電子供与体部分(例えば、アミン基またはカルバゾール誘導体)と電子受容体部分(例えば、N含有の六員芳香族環)を結合することにより構築される。
【0030】
本明細書に用いられるように、用語「色座標」とは、CIE 1931色空間において対応する座標を指す。
【0031】
1つの典型的なトップエミッションOLED素子の構造は、
図3に示される。そのうち、OLED素子300には、陽極110、正孔注入層(HIL)120、正孔輸送層(HTL)130、電子ブロッキング層(EBL)140(prime層とも呼ばれてもよく)、発光層(EML)150、正孔ブロッキング層(HBL)160(正孔ブロッキング層160が選択可能な層である)、電子輸送層(ETL)170、電子注入層(EIL)180、陰極190、キャッピング層191、およびカプセル化層102が含まれる。そのうち、陽極110は、高反射率を有する材料または材料の組合せであり、Ag、Al、Ti、Cr、Pt、Ni、TiN、および上記材料とITOおよび/またはMoOx(酸化モリブデン)の組合せを含むがそれに限定されない。通常、陽極の反射率が50%よりも大きく、好ましくは、陽極の反射率が70%よりも大きく、より好ましくは、陽極の反射率が80%よりも大きい。陰極190は、半透明または透明の導電材料であり、MgAg合金、MoOx,Yb、Ca、ITO、IZO、またはこれらの組合せを含むがそれに限定されず、その可視光領域における光に対する平均透過率が15%よりも大きく、好ましくは、可視光領域における光に対する平均透過率が20%よりも大きく、より好ましくは、可視光領域における光に対する平均透過率が25%よりも大きい。正孔注入層120は、単一材料の層、たとえばよく用いられたHATCNであってもよい。正孔注入層120は、さらに正孔輸送材料に一定の割合のp型導電ドープ材料がドーピングされたものであってもよく、ドーピング率は、通常5%を上回らず、よく用いられるものは1%~3%である。電子ブロッキング層(EBL)140は、選択可能層であるが、よくホスト材料のエネルギーレベルと合致するために、通常EBLを有する素子の構造を用いる。正孔輸送層の厚みが一般的に100nm~200nmであり、トップエミッション素子にマイクロキャビティ効果が存在するため、正孔輸送層または電子ブロッキング層の厚みを調節・制御することにより、素子のマイクロキャビティを調整することができる。たとえば、1つのトップエミッションOLED素子のマイクロキャビティ効果が最適を達成し、すなわち電流効率が最高値を達成するために、EBLの厚みを一定にしてから、HTLの厚みを調節することにより、イクロキャビティを調節することができる。当業者であれば、2つのトップエミッション素子に対して、それらの相違は、素子のうちの1つの有機層に使用された材料が異なるのみであり、たとえば、EMLのみにおいて異なる有機材料を用いる(他の機能層が同様である)場合、EMLにおける異なる有機材料の屈折率がやや異なるので、この2つのトップエミッション素子の最適なマイクロキャビティの長さは、僅かに異なるかもしれないことを理解すべきである。つまり、異なるトップエミッション素子に対して、同じ設定条件(たとえば、CEmax、CIEx座標またはEQEmaxなど)を達成するために、最適なマイクロキャビティの長さは、僅かに異なるかもしれない。
【0032】
本明細書に用いられるように、用語「模擬」とは、各層の材料の屈折率曲線および厚みだけによって行われた光学的模擬ソフトウェアの模擬を指し、電気的模擬などを含まない。本発明に用いられる模擬ソフトウェアは、FLUXiM公司により開発されたSetfos 5.0半導体薄膜光学的模擬ソフトウェアである。模擬時に用いられる素子の構造は、
図4に示される素子400であり、具体的に言えば、厚み0.7mmのガラス基板上において、第1の電極(即ち陽極)は、ITO(75Å)/Ag(1500Å)/ITO(150Å)の三層の構造を用い、HIL(正孔注入層)は、化合物HTおよび化合物PD(重量比97:3)からなり、厚みが100Åであり、HTL(正孔輸送層)は、化合物HTからなる。HTLがマイクロキャビティ調節層であり、HTLの厚みが最適化された厚みを用いるので、1000~1500Åの範囲内にマイクロキャビティを調節して、トップエミッション素子が所要する要求を満たすことができる。HTL上において、化合物PH-23によりEBL(電子ブロッキング層)が形成され、厚みが50Åである。EBL上において、化合物PH-1、化合物H-40および有機発光ドープ材料により共にEMLが形成され(発光層、化合物PH-1、化合物H-40および有機発光ドープ材料の重量比が48:48:4であり)、厚みが400Åである。EML上において、化合物H-2によりHBL(正孔ブロッキング層)が形成され、厚みが50Åである。HBL上において、ETL(電子輸送層)は、化合物ETおよび化合物Liqにより形成され(重量比が40:60であり)、厚みが350Åである。ETL上において、第2の電極(即ち陰極)は、MgおよびAgの合金により形成され(重量比が9:1であり)、厚みが230Åである。陰極上において厚み800ÅのCPL(Capping layer、キャッピング層)を有する。CPL上においてガラスがカプセル化層として用いられる。上記化合物の具体的な構造は、以下の素子の実施例に示される。Setfos 5.0は、光学的模擬ソフトウェアであるため、模擬時に素子構造における各層の厚みおよび屈折率(各有機層に用いられた屈折率が、材料の厚みが300Åである場合に対応する屈折率である)を確定するだけでよい。そのため、上記各層の材料は、限定的ではなく、例示的なものだけに過ぎない。EMLにおいて用いられる有機発光ドープ材料のPLスペクトルデータを模擬ソフトウェアに入力することにより、PLスペクトルの異なる有機発光ドープ材料が素子に対してもたらす可能となる性能上の変化を模擬することができる。また、EMLにおける複合位置は、ソフトウェアにおいて発光層における中間位置として設定される。
【0033】
本明細書に用いられるように、有機材料の屈折率の測定方法は、Angstrom Engineeringの蒸着機内に、シリコンウェハ上において厚み30nmの材料を蒸着し、北京量拓科学技術有限公司製のエリプソメータによって測定して波長400nm~800nmの屈折率曲線を得ることである。
【0034】
本明細書に用いられるように、有機発光ドープ材料のPLスペクトルの測定方法は、上海▲リョウ▼光技術有限公司製の型番が▲リョウ▼光F98の蛍光分光光度計を用いて測定して、測定待ち材料のフォトルミネッセンススペクトル(PL)および半値幅データを測定することである。具体的には、測定待ち材料サンプルを、HPLCレベルのトルエンで、濃度1×10-6mol/Lの溶液に調製し、調製した溶液へ、窒素ガスを導入して酸素除去を5分間行い、そして室温(298K)下で、波長500nmの光で励起して、放射スペクトルを測定し、スペクトルから半値幅データを直接読み出す。
【0035】
置換基の専門用語の定義について
【0036】
ハロゲンまたはハロゲン化物とは、本明細書に用いられるように、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0037】
アルキル基とは、本明細書に用いられるように直鎖および分岐鎖のアルキル基を含む。アルキル基は、炭素原子数1~20のアルキル基であってもよく、炭素原子数1~12のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基の実例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、ネオペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-ペンチルヘキシル、1-ブチルペンチル、1-ヘプチルオクチル、および3-メチルペンチルを含む。そのうち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチルおよびn-ヘキサンであることが好ましい。また、アルキル基は、置換されていてもよい。
【0038】
シクロアルキル基とは、本明細書に用いられるように環状のアルキル基を含む。シクロアルキル基は、環炭素原子数3~20のシクロアルキル基であってもよく、炭素原子数4~10のシクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の実例は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4、4-ジメチルシクロヘキシル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、1-ノルボルニル基、2-ノルボルニル基などを含む。そのうち、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4、4-ジメチルシクロヘキシルであることが好ましい。また、シクロアルキル基は、置換されていてもよい。
【0039】
ヘテロアルキル基とは、本明細書に用いられるように、アルキル鎖のうちの1つまたは複数の炭素が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、リン原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子で置換されてなる。ヘテロアルキル基は、炭素原子数1~20のヘテロアルキル基であってもよく、炭素原子数1~10のヘテロアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~6のヘテロアルキル基であることがより好ましい。ヘテロアルキル基の実例は、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、エチルチオエチル基、メトキシメトキシメチル基、エトキシメトキシメチル基、エトキシエトキシエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メルカプトメチル基、メルカプトエチル基、メルカプトプロピル基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、ジメチルアミノメチル基、トリメチルゲルマニウムメチル基、トリメチルゲルマニウムエチル基、トリメチルゲルマニウムイソプロピル基、ジメチルエチルゲルマニウムメチル基、ジメチルイソプロピルゲルマニウムメチル基、tert-ブチルジメチルゲルマニウムメチル基、トリエチルゲルマニウムメチル基、トリエチルゲルマニウムエチル基、トリイソプロピルゲルマニウムメチル基、トリイソプロピルゲルマニウムエチル基、トリメチルシリルメチル基、トリメチルシリルエチル基、トリメチルシリルイソプロピル基、トリメチルシリルイソプロピル基、トリイソプロピルシリルメチル基、トリイソプロオイルシリルエチル基。また、ヘテロアルキル基は、置換されていてもよい。
【0040】
アルケニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖、分岐鎖および環状オレフィン基を含む。鎖状のアルケニル基は、炭素原子数2~20のアルケニル基であってもよく、炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましい。アルケニル基の例は、ビニル基、プロピレン基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1、3-ブタジエニル基、1-メチルビニル基、スチリル基、2、2-ジフェニルビニル基、1、2-ジフェニルビニル基、1-メチルアリル基、1、1-ジメチルアリル基、2-メチルアリル基、1-フェニルアリル基、2-フェニルアリル基、3-フェニルアリル基、3、3-ジフェニルアリル基、1、2-ジメチルアリル基、1-フェニル-1-ブテニル基、3-フェニル-1-ブテニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクテニル基、シクロオクタテトラエニル基およびノルボルニルアルケニル基を含む。また、アルケニル基は、置換されていてもよい。
【0041】
アルキニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖のアルキニル基を含む。アルキニル基は、炭素原子数2~20のアルキニル基であってもよく、炭素原子数2~10のアルキニル基であることが好ましい。アルキニル基の実例は、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3、3-ジメチル-1-ブチニル基、3-エチル-3-メチル-1-ペンチニル基、3、3-ジイソプロピル1-ペンチニル基、フェニルエチニル基、フェニルプロピニル基などを含む。そのうち、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、フェニルエチニル基であることが好ましい。また、アルキニル基は、置換されていてもよい。
【0042】
アリール基または芳香族基とは、本明細書に用いられるように、非縮合および縮合系を考慮する。アリール基は、炭素原子数6~30のアリール基であってもよく、炭素原子数6~20のアリール基であることが好ましく、炭素原子数6~12のアリール基であることがより好ましい。アリール基の例は、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、テトラフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、およびアズレンを含み、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、フルオレンおよびナフタレンであることが好ましい。非縮合アリール基の例は、フェニル、ビフェニル-2-イル、ビフェニル-3-イル、ビフェニル-4-イル、p-ターフェニル-4-イル、p-ターフェニル-3-イル、p-トリビフェニル-2-イル、m-ターフェニル-4-イル、m-ターフェニル-3-イル、m-ターフェニル-2-イル、o-トリル、m-トリル、p-トリル、p-(2-フェニルプロピル)フェニル、4’-メチルビフェニル、4’’-tert-ブチル-p-ターフェニル-4-イル、o-クミル、m-クミル、p-クミル、2、3-キシリル、3、4-キシリル、2、5-ジメチルフェニル、メシチレンおよびm-テトラフェニルを含む。また、アリール基は、置換されていてもよい。
【0043】
複素環基とは、本明細書に用いられるように、非芳香族の環状基を考慮する。非芳香族複素環基は、環原子数3~20の飽和複素環基および環原子数3~20の不飽和非芳香族複素環基を含み、そのうちの少なくとも1つの環原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、リン原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれ、非芳香族複素環基は、環原子数3~7のものであることが好ましく、窒素、酸素、ケイ素または硫黄などの少なくとも1つのヘテロ原子を含む。非芳香族複素環基の実例は、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソペンチル、ジオキサニル、アジリジニル、ジヒドロピロール、テトラヒドロピロリル、ピペリジニル、オキサゾリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、オキサシクロヘプタトリエニル、チアシクロヘプタトリエニル、アザシクロヘプタトリエニルおよびテトラヒドロシロールを含む。また、複素環基は、置換されていてもよい。
【0044】
ヘテロアリール基とは、本明細書に用いられるように、ヘテロ原子数1~5の非縮合および縮合ヘテロ芳香族基を含んでもよく、そのうちの少なくとも1つのヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、リン原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれる。イソアリール基とは、ヘテロアリール基も指す。ヘテロアリール基は、炭素原子数3~30のヘテロアリール基であってもよく、炭素原子数3~20のヘテロアリール基であることが好ましく、炭素原子数3~12のヘテロアリール基であることがより好ましい。好適なヘテロアリール基は、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリドインドール、ピロロピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インデノアジン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、ベンゾフランピリジン、フランジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノビピリジン、ベンゾセレノピリジン、およびセレンベンゾピリジンを含み、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン、ベンズイミダゾール、1、2-アザボラン、1、3-アザボラン、1、4-アザボラン、ボラゾールおよびそのアザ類似物を含むことが好ましい。また、ヘテロアリール基は、置換されていてもよい。
【0045】
アルコキシ基とは、本明細書に用いられるように、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-ヘテロアルキル基または-O-複素環基で表される。アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基および複素環基の例および好ましい例は、上記例と同様である。アルコキシ基は、炭素原子数1~20のアルコキシ基であってもよく、炭素原子数1~6のアルコキシ基であることが好ましい。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、メトキシプロピルオキシ、エトキシエチルオキシ、メトキシメチルオキシおよびエトキシメチルオキシを含む。また、アルコキシ基は、置換されていてもよい。
【0046】
アリールオキシ基とは、本明細書に用いられるように、-O-アリール基または-O-ヘテロアリール基で表される。アリール基およびヘテロアリール基の例および好ましい例は、上記例と同様である。アリールオキシ基は、炭素原子数6~30のアリールオキシ基であってもよく、炭素原子数6~20のアリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例は、フェノキシおよびビフェノキシを含む。また、アリールオキシ基は、置換されていてもよい。
【0047】
アラルキル基とは、本明細書に用いられるように、アリール基で置換されたアルキル基を含む。アラルキル基は、炭素原子数7~30のアラルキル基であってもよく、炭素原子数7~20のアラルキル基であることが好ましく、炭素原子数7~13のアラルキル基であることがより好ましい。アラルキル基の例は、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピル、2-フェニルイソプロピル、フェニル-tert-ブチル、α-ナフチルメチル、1-α-ナフチルエチル、2-α-ナフチルエチル、1-α-ナフチルイソプロピル、2-α-ナフチルイソプロピル、β-ナフチルメチル、1-β-ナフチル-エチル、2-β-ナフチル-エチル、1-β-ナフチルイソプロピル、2-β-ナフチルイソプロピル、p-メチルベンジル、m-メチルベンジル、o-メチルベンジル、p-クロロベンジル、m-クロロベンジル、o-クロロベンジル、p-ブロモベンジル、m-ブロモベンジル、o-ブロモベンジル、p-ヨードベンジル、m-ヨードベンジル、o-ヨードベンジル、p-ヒドロキシベンジル、m-ヒドロキシベンジル、o-ヒドロキシベンジル、p-アミノベンジル、m-アミノベンジル、o-アミノベンジル、p-ニトロベンジル、m-ニトロベンジル、o-ニトロベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-ヒドロキシ-2-フェニルイソプロピルおよび1-クロロ-2-フェニルイソプロピルを含む。そのうち、ベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピルおよび2-フェニルイソプロピルであることが好ましい。また、アラルキル基は、置換されていてもよい。
【0048】
アルキルシリル基とは、本明細書に用いられるように、アルキル基で置換されたシリル基を含む。アルキルシリル基は、炭素原子数3~20のアルキルシリル基であってもよく、炭素原子数3~10のアルキルシリル基であることが好ましい。アルキルシリル基の例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、メチルジエチルシリル、エチルジメチルシリル、トリプロピルシリル、トリブチルシリル、トリイソプロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、トリ-tert-ブチルシリコン、トリイソブチルシリル、ジメチル-tert-ブチルシリル、およびメチルジ-tert-ブチルシリルを含む。また、アルキルシリル基は、置換されていてもよい。
【0049】
アリールシリル基とは、本明細書に用いられるように、少なくとも1つのアリール基で置換されたシリル基を含む。アリールシリル基は、炭素原子数6~30のアリールシリル基であってもよく、炭素原子数8~20のアリールシリル基であることが好ましい。アリールシリル基の例は、トリフェニルシリル、フェニルジビフェニルシリル、ジフェニルビフェニルシリル、フェニルジエチルシリル、ジフェニルエチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジイソプロピルシリル、ジフェニルイソプロピルシリル、ジフェニルブチルシリル、ジフェニルイソブチルシリル、ジフェニル-tert-ブチルシリルを含む。また、アリールシリル基は、置換されていてもよい。
【0050】
アルキルゲルマニウム基とは、本明細書に用いられるように、アルキル基で置換されたゲルマニウム基を含む。アルキルゲルマニウム基は、炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基であってもよく、炭素原子数3~10のアルキルゲルマニウム基であることが好ましい。アルキルゲルマニウム基の例は、トリメチルゲルマニウム基、トリエチルゲルマニウム基、メチルジエチルゲルマニウム基、エチルジメチルゲルマニウム基、トリプロピルゲルマニウム基、トリブチルゲルマニウム基、トリイソプロピルゲルマニウム基、メチルジイソプロピルゲルマニウム基、ジメチルイソプロピルゲルマニウム基、トリ-tert-ブチルゲルマニウム基、トリイソブチルゲルマニウム基、ジメチル-tert-ブチルゲルマニウム基、メチルジ-tert-ブチルゲルマニウム基を含む。また、アルキルゲルマニウム基は、置換されていてもよい。
【0051】
アリールゲルマニウム基とは、本明細書に用いられるように、少なくとも1つのアリール基またはヘテロアリール基で置換されたゲルマニウム基を含む。アリールゲルマニウム基は、炭素原子数6~30のアリールゲルマニウム基であってもよく、炭素原子数8~20のアリールゲルマニウム基であることが好ましい。アリールゲルマニウム基の例は、トリフェニルゲルマニウム基、フェニルジビフェニルゲルマニウム基、ジフェニルビフェニルゲルマニウム基、フェニルジエチルゲルマニウム基、ジフェニルエチルゲルマニウム基、フェニルジメチルゲルマニウム基、ジフェニルメチルゲルマニウム基、フェニルジイソプロピルゲルマニウム基、ジフェニルイソプロピルゲルマニウム基、ジフェニルブチルゲルマニウム基、ジフェニルイソブチルゲルマニウム基、ジフェニル-tert-ブチルゲルマニウム基を含む。また、アリールゲルマニウム基は、置換されていてもよい。
【0052】
アザジベンゾフラン、アザジベンゾチオフェンなどにおける「アザ」とは、対応する芳香族フラグメントにおける1つまたは複数のC-H基が窒素原子に置換されることを指す。例えば、アザトリフェニレンは、ジベンゾ[f、h]キノキサリン、ジベンゾ[f、h]キノリン、および環系において2つ以上の窒素を有する他の類似物を含む。当業者であれば、上述したアザ誘導体の他の窒素類似物を容易に想到することができ、且つこれらの類似物は、すべて本明細書に記載される専門用語に含まれるものとして確定される。
【0053】
本発明において、特に断りのない限り、置換のアルキル基、置換のシクロアルキル基、置換のヘテロアルキル基、置換の複素環基、置換のアラルキル基、置換のアルコキシ基、置換のアリールオキシ基、置換のアルケニル基、置換のアルキニル基、置換のアリール基、置換のヘテロアリール基、置換のアルキルシリル基、置換のアリールシリル基、置換のアルキルゲルマニウム基、置換のアリールゲルマニウム基、置換のアミノ基、置換のアシル基、置換のカルボニル基、置換のカルボキシル基、置換のエステル基、置換のスルフィニル基、置換のスルホニル基、置換のホスフィノ基からなる群のうちのいずれかの用語を使用すると、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクリル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルキニル、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルゲルマニウム基、アリールゲルマニウム基、アミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、スルフィニル基、スルホニル基、およびホスフィノ基のうちのいずれか1つの基が、重水素、ハロゲン、非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、非置換の環原子数3~20の複素環基、非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、非置換の炭素原子数6~30のアリール基、非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基およびこれらの組合せから選ばれる1つまたは複数により置換され得ることを意味する。
【0054】
分子フラグメントについて、置換基または他の形態で他の部分に結合させると記載する場合、フラグメント(例えば、フェニル基、フェニレン基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基)であるか否か、或いは、分子全体(例えば、ベンゼン、ナフタレン、ジベンゾフラン)であるか否かにより、その名称を確定することができることを理解すべきである。本明細書に用いられるように、置換基の指定、或いはフラグメントの結合の異なる形態は、均等であると認められている。
【0055】
本明細書で言及される化合物において、水素原子が重水素で一部または全部置換されてもよい。他の原子、例えば炭素および窒素も、それらの他の安定した同位体で置換されてもよい。素子の効率および安定性を向上させるために、化合物において他の安定した同位体の置換が好ましい可能性がある。
【0056】
本明細書で言及される化合物において、複数置換とは、二重置換を含む、最も多くの使用可能な置換に達するまでの範囲を指す。本明細書で言及される化合物中のある置換基は、複数置換(二重置換、三重置換、四重置換などを含む)を意味すると、その置換基はその結合構造上の複数の利用可能な置換位置に存在してもよいことを意味し、複数の利用可能な置換位置にいずれも存在する当該置換基は、同じ構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
【0057】
本明細書で言及される化合物において、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいように特に限定されない限り、前記化合物における隣り合う置換基は結合して環を形成することができない。本明細書で言及される化合物において、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいことは、隣り合う置換基が結合して環を形成してもよい情況を含むだけでなく、隣り合う置換基が結合して環を形成しない情況を含む。隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよい場合、形成される環は、単環または多環、および脂環、ヘテロ脂環、アリール環、またはヘテロアリール環であってもよい。このような記述において、隣り合う置換基は、同一の原子に結合された置換基、互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基、または更に離れた炭素原子に結合された置換基を指してもよい。好ましくは、隣り合う置換基は、同一の炭素原子に結合された置換基および互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基を指す。
【0058】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、同一の炭素原子に結合された2つの置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化1】
【0059】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、互いに直接結合する炭素原子に結合された2つ置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化2】
【0060】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、さらに離れる炭素原子に結合された2つの置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化3】
【0061】
本発明の一実施例によれば、陰極、陽極、および陰極と陽極との間に設けられた有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層は、金属Mと、金属Mと配位する少なくとも1つのC^N2座配位子Laとを含む金属錯体を含有し、
金属Mは、相対原子質量が40を超える金属から選ばれ、
前記金属錯体の室温下でのフォトルミネッセンススペクトルの面積比がARであり、且つAR≦0.331であり、
前記金属錯体は、トップエミッション素子において最大電流効率を有する場合、対応する色座標がCIE(x,y)であり、
前記CIE(x,y)と色座標CIE(0.170,0.797)との距離は、Dであり、
ただし、CIEy≧0.797またはD≦0.0320である、有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。
【0062】
本明細書において、前記CIE(x,y)と色座標CIE(0.170,0.797)との距離は、Dであり、Dの計算式は、
【数1】
である。
【0063】
本明細書において、「前記金属錯体は、トップエミッション素子において最大電流効率を有する場合、対応する色座標がCIE(x,y)である」のうちの「トップエミッション素子」とは、基板の反対する方向に向かって発光する任意の素子である。本願に用いられる以下のトップエミッション素子を含むがそれに限定されない。ITO 75Å/Ag 1500Å/ITO 150Åを順次に蒸着して陽極として用いる。化合物HTおよび化合物PDを蒸着してHIL(重量比97:3)として用い、厚みが100Åである。化合物HTを蒸着してHTLとして用い、1000~1500Åの範囲内にマイクロキャビティを調節する。化合物PH-23を蒸着してEBLとして用いる。金属錯体、化合物PH-1および化合物H-40を蒸着してEMLとして用い(化合物PH-1、化合物H-40および金属錯体の重量比が48:48:4であり)、厚みが400Åである。化合物H-2を蒸着してHBLとして用い、厚みが50Åである。化合物ETおよびLiqを蒸着してETLとして用い(重量比40:60)、厚みが350Åである。金属Ybを蒸着してEILとして用い、厚みが10Åである。金属Agおよび金属Mgを蒸着して陰極として用い(重量比9:1)、厚みが140Åである。化合物CPを蒸着してキャッピング層として用い、厚みが800Åである。上記化合物の具体的な構造は、以下の素子の実施例に示される。上記具体的なトップエミッション素子は、例示的なものに過ぎない。当業者であれば、必要に応じて、いずれの層の厚みを調節したり、適切な材料の組合せおよび抱き合わせをいずれの層に用いたり、ひいては一部の機能層を増加または減少したりすることにより、トップエミッション素子を調節することができる。あるトップエミッション素子において測定してCIEy≧0.797またはD≦0.0320を得、且つ該トップエミッション素子に含まれる金属錯体の室温下でのフォトルミネッセンススペクトルの面積比がAR≦0.331であれば、本願に記載の金属錯体に属する。本願では、該金属錯体のどのような素子における適用が限定されず、実施例の部分において該金属錯体の特定のトップエミッション素子およびボトムエミッション素子における適用が例示的に示されている。当業者は、素子に対する了解によれば、本願に示される素子を調節するか、または他の素子、たとえば積層素子に適用することができる。
【0064】
1つの完全なトップエミッション素子の構造は、基板/陽極/正孔輸送領域/発光層/電子輸送領域/陰極/キャッピング層/カプセル化層である。そのうち、正孔輸送領域には、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子ブロッキング層(EBL)が含まれ、電子輸送領域には、正孔ブロッキング層(HBL)、電子輸送層(ETL)および電子注入層(EIL)が含まれてもよい。そのうち、HBLおよび/またはEBLは、素子の構造が異なることに起因して選択的に存在してもよく、素子の構造が異なることに起因して上述した機能層も1層または複数層を含んでもよい。トップエミッション素子の素子構造は、ボトムエミッション素子に対して、ボトムエミッション素子およびトップエミッション素子の出光方向が異なるので、電極に対する要求が異なる。トップエミッションの光が素子の陰極から出射するので、陰極が高い光透過率を有することを要求し、陽極は、通常、高反射率を有する材料または材料の組合せである。トップエミッション素子の詳細な説明については、前文における
図3に示されるトップエミッション素子に対する説明内容をご参照ください。
【0065】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体のエレクトロルミネッセンススペクトルの最大放射波長がλmaxであり、半値全幅がFWHMであり、ただし、490nm≦λmax≦524nm且つFWHM≦35nmである。
【0066】
本明細書において、前記「前記金属錯体のエレクトロルミネッセンススペクトル」のうちの「エレクトロルミネッセンススペクトル」とは、前記金属錯体を含む任意のボトムエミッション素子の発光スペクトルである。そのうち、「ボトムエミッション素子」は、本願に用いられる以下のボトムエミッション素子を含むがそれに限定されない。厚み80nmのITOを蒸着して陽極として用いる。化合物HIをHILとして用い、厚みが100Åである。化合物HTをHTLとして用い、厚みが350Åである。化合物PH-23をEBLとして用い、厚みが50Åである。金属錯体、化合物PH-23および化合物H-40(重量比6:56:38)を共蒸着して発光層(EML)として用い、厚みが400Åである。化合物H-2を蒸着してHBLとして用い、厚みが50Åである。化合物ETおよびLiq(重量比40:60)を共蒸着してETLとして用い、厚みが350Åである。厚み1nmのLiqを蒸着してEILとして用いる。120nmのアルミニウムを蒸着して陰極として用いる。上記化合物の具体的な構造は、以下の素子の実施例に示される。上記具体的なボトムエミッション素子は、例示的なものに過ぎない。当業者であれば、必要に応じて、いずれの層の厚みを調節したり、適切な材料の組合せおよび抱き合わせをいずれの層に用いたり、ひいては一部の機能層を増加または減少したりすることにより、ボトムエミッション素子を調節することができる。
【0067】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体は、エレクトロルミネッセンススペクトルの最大放射波長がλmaxであり、半値全幅がFWHMであり、ただし、500nm≦λmax≦524nm且つFWHM≦34nmである。
【0068】
本発明の一実施例によれば、D≦0.0280である。
【0069】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体の最高被占分子軌道エネルギーレベル(EHOMO)は、-5.05eV以下である。
【0070】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体の最高被占分子軌道エネルギーレベル(EHOMO)は、-5.10eV以下である。
【0071】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体の最高被占分子軌道エネルギーレベル(EHOMO)は、-5.20eV以下である。
【0072】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体の最低未占有分子軌道エネルギーレベル(ELUMO)は、-2.1eV以下である。
【0073】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体の最低未占有分子軌道エネルギーレベル(ELUMO)は、-2.2eV以下である。
【0074】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体の最低未占有分子軌道エネルギーレベル(ELUMO)は、-2.3eV以下である。
【0075】
本発明の一実施例によれば、前記有機層は、第1の化合物をさらに含有する。
【0076】
本発明の一実施例によれば、前記第1の化合物の最低未占有分子軌道エネルギーレベル(ELUMO-H1)は、-2.70eV以下である。
【0077】
本発明の一実施例によれば、前記第1の化合物の最低未占有分子軌道エネルギーレベル(ELUMO-H1)は、-2.80eV以下である。
【0078】
本発明の一実施例によれば、前記有機層は、第1の化合物および第2の化合物をさらに含有する。
【0079】
本発明の一実施例によれば、前記第2の化合物の最高被占分子軌道エネルギーレベル(EHOMO-H2)は、-5.60eV以上である。
【0080】
本発明の一実施例によれば、前記第2の化合物の最高被占分子軌道エネルギーレベル(EHOMO-H2)は、-5.50eV以上である。
【0081】
本発明の一実施例によれば、前記第1の化合物および/または第2の化合物は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、カルバゾール、アザカルバゾール、インドロカルバゾール、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、アザジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、フルオレン、シリコンフルオレン、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、フェナントレン、アザフェナントレン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1種の化学基を含む。
【0082】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体は、前記第1の化合物および第2の化合物にドーピングされ、金属錯体の重量が有機層の総重量に対して1%~30%である。
【0083】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体は、前記第1の化合物および第2の化合物にドーピングされ、金属錯体の重量が有機層の総重量に対して3%~13%である。
【0084】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、トップエミッション素子である。
【0085】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、トップエミッション素子であり、前記トップエミッション素子の最大放射波長がλmaxであり、且つ500nm≦λmax≦540nmである。
【0086】
本発明の一実施例によれば、前記トップエミッション素子は、単層素子または積層素子である。
【0087】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、ボトムエミッション素子である。
【0088】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、積層素子である。
【0089】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、積層素子であり、且つ前記積層素子が白色光を放射する。
【0090】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体は、M(La)m(Lb)n(Lc)qの一般式を有し、
La、LbおよびLcは、それぞれ金属Mと配位する第1、第2および第3の配位子であり、且つLa、Lb、Lcは、同一または異なり、La、LbおよびLcは、結合して4座または複数座配位子を形成していてもよく、
金属Mは、出現毎に同一または異なってCu、Ag、Au、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtからなる群から選ばれ、
mは1、2または3から選ばれ、nは0、1または2から選ばれ、qは0、1または2から選ばれ、m+n+qは、Mの酸化状態に等しく、mが2または3である場合、複数のLaは、同一または異なってもよく、nが2である場合、2つのLbは、同一または異なってもよく、qが2である場合、2つのLcは、同一または異なってもよく、
Laは、A-Eの構造を有し、
前記Aは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の環原子数5~6のヘテロ芳香族環から選ばれ、前記ヘテロ芳香族環は、少なくとも1つの窒素原子を含み、Aは、前記ヘテロ芳香族環における前記窒素原子によって金属と金属-窒素結合または金属-G-窒素結合を形成し、
前記Eは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の環原子数13~30の芳香族環または置換または非置換の環原子数13~30のヘテロ芳香族環から選ばれ、前記芳香族環またはヘテロ芳香族環は、少なくとも3つの環を有する縮合構造であり、前記少なくとも3つの環は、少なくとも2つの6員環および1つの5員環を含み、Eは、前記芳香族環またはヘテロ芳香族環における炭素原子によって金属と金属-炭素結合または金属-G-炭素結合を形成し、
LbおよびLcは、出現毎に同一または異なってC-L-Dの構造を有し、
CおよびDは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の環原子数6~30の芳香族環、置換または非置換の環原子数5~30のヘテロ芳香族環、またはこれらの組合せから選ばれ、CおよびDは、出現毎に同一または異なって、前記芳香族環またはヘテロ芳香族環における炭素原子または窒素原子によって金属と金属-炭素結合、金属-窒素結合、金属-G-炭素結合または金属-G-窒素結合を形成し、
Lは、出現毎に同一または異なって単結合、BRL、CRLRL、NRL、SiRLRL、PRL、GeRLRL、O、S、Se、置換または非置換のビニリデン基、アセチレン基、置換または非置換の炭素原子数5~30のアリーレン基、置換または非置換の炭素原子数5~30のヘテロアリーレン基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、2つのRLが同時に存在する場合、2つのRLは、同一または異なり、
RLは、出現毎に同一または異なって水素または置換基を表し、
Gは、出現毎に同一または異なって単結合、OまたはSから選ばれ、
隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよい。
【0091】
本発明の一実施例によれば、前記金属Mは、出現毎に同一または異なってPtまたはIrから選ばれる。
【0092】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体を含む前記有機層は、発光層である。
【0093】
本発明の他の目的によれば、上述したいずれか1つの実施例に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子を含む表示アセンブリがさらに開示される。
【0094】
本発明の他の目的によれば、更に、金属錯体についての実施例が単独で開示される。開示された金属錯体は、M(La)m(Lb)n(Lc)qの一般式を有し、
La、LbおよびLcは、それぞれ金属Mと配位する第1の、第2のおよび第3の配位子であり、且つLa、Lb、Lcは、同一または異なり、La、LbおよびLcは、結合して4座または複数座配位子を形成していてもよく、
mは1、2または3から選ばれ、nは0、1または2から選ばれ、qは0、1または2から選ばれ、m+n+qは、Mの酸化状態に等しく、mが2または3である場合、複数のLaは、同一または異なってもよく、nが2である場合、2つのLbは、同一または異なってもよく、qが2である場合、2つのLcは、同一または異なってもよく、
前記金属錯体は、金属Mと、金属Mと配位する少なくとも1つのC^N2座配位子Laと、を含み、
金属Mは、相対原子質量が40を超える金属から選ばれ、
LbおよびLcは、出現毎に同一または異なってモノアニオン性2座配位子から選ばれ、
前記金属錯体の室温下でのフォトルミネッセンススペクトルの面積比がARであり、且つAR≦0.331であり、
前記金属錯体は、トップエミッション素子において最大電流効率を有する場合、対応する色座標がCIE(x,y)であり、
前記CIE(x,y)と色座標CIE(0.170,0.797)との距離は、Dであり、
ただし、CIEy≧0.797またはD≦0.0320である。
【0095】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体は、式1または式2で表される構造を有する。
【化4】
(金属Mは、相対原子質量が40を超える金属から選ばれ、
環Aは、出現毎に同一または異なって環原子数5~6の窒素含有ヘテロ芳香族環から選ばれ、
環Eは、出現毎に同一または異なって少なくとも3つの環を有する縮合構造である環原子数13~30の芳香族環またはヘテロ芳香族環から選ばれ、2つの6員環および1つの5員環を少なくとも含み、
環Cおよび環Dは、出現毎に同一または異なって炭素原子数6~30の芳香族環、炭素原子数3~30のヘテロ芳香族環、またはこれらの組合せから選ばれ、
Zは、出現毎に同一または異なってCまたはNから選ばれ、
Gは、出現毎に同一または異なって単結合、OまたはSから選ばれ、
L、L
1およびL
2は、出現毎に同一または異なって単結合、BR
L、CR
LR
L、NR
L、SiR
LR
L、PR
L、GeR
LR
L、O、S、Se、置換または非置換のビニリデン基、アセチレン基、置換または非置換の炭素原子数5~30のアリーレン基、置換または非置換の炭素原子数5~30のヘテロアリーレン基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、2つのR
Lが同時に存在する場合、2つのR
Lは、同一または異なり、
a、bおよびcは、出現毎に同一または異なって0または1から選ばれ、
R
a、R
e、R
cおよびR
dは、出現毎に同一または異なって一置換、複数置換または無置換を表し、
R
a、R
e、R
c、R
dおよびR
Lは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
隣り合う置換基R
a、R
e、R
c、R
dおよびR
Lは、結合して環を形成していてもよい。)
【0096】
本明細書において、「隣り合う置換基Ra、Re、Rc、RdおよびRLが結合して環を形成していてもよい」とは、そのうちの隣り合う置換基グループ、たとえば2つの置換基Ra同士、2つの置換基Re同士、2つの置換基Rc同士、2つの置換基Rd同士、2つの置換基RL同士、置換基RaおよびRe同士、置換基RcおよびRd同士、置換基RcおよびRL同士、置換基RdおよびRL同士、置換基RaおよびRL同士、置換基ReおよびRL同士のうちのいずれか1つまたは複数が結合して環を形成してもよいことを意味する。明らかには、これらの置換基は、いずれも結合して環を形成しなくてもよい。
【0097】
本発明の一実施例によれば、L
bおよびL
cは、出現毎に同一または異なって式a~式mからなる群から選ばれる。
【化5】
(R
AおよびR
Bは、出現毎に同一または異なって一置換、複数置換、または無置換を表し、
X
Bは、出現毎に同一または異なってO、S、Se、NR
N1、CR
C1R
C2からなる群から選ばれ、
R
A、R
B、R
C、R
D、R
N1、R
C1およびR
C2は、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
隣り合う置換基R
A、R
B、R
C、R
D、R
N1、R
C1およびR
C2は、結合して環を形成していてもよい。)
【0098】
本明細書において、「隣り合う置換基R
A、R
B、R
C、R
D、R
N1、R
C1およびR
C2が結合して環を形成していてもよい」とは、そのうちの隣り合う置換基グループ、たとえば、2つの置換基R
A同士、2つの置換基R
B同士、置換基R
AおよびR
B同士、置換基R
AおよびR
C同士、置換基R
BおよびR
C同士、置換基R
AおよびR
N1同士、置換基R
BおよびR
N1同士、置換基R
AおよびR
C1同士、置換基R
AおよびR
C2同士、置換基R
BおよびR
C1同士、置換基R
BおよびR
C2同士、並びにR
C1およびR
C2同士のうちのいずれか1つまたは複数が結合して環を形成してもよいことを意味する。明らかには、これらの置換基同士は、いずれも結合して環を形成しなくてもよい。たとえば、
【化6】
における隣り合う置換基R
A、R
Bは、結合して環を形成していてもよく、R
Aが結合して環を形成していてもよい場合、
【化7】
は、
【化8】
の構造を形成してもよい。
【0099】
本発明の一実施例によれば、L
aは、出現毎に同一または異なって式3で表される構造を有し、L
bは、出現毎に同一または異なって式4で表される構造を有する。
【化9】
(Aは、出現毎に同一または異なって環原子数5~6の窒素含有ヘテロ芳香族環から選ばれ、
Xは、O、S、Se、NR’、CR’R’およびSiR’R’からなる群から選ばれ、2つのR’が同時に存在する場合、2つのR’は、同一または異なり、
U
1~U
8は、出現毎に同一または異なってCR
uまたはNから選ばれ、
Gは、出現毎に同一または異なって単結合、OまたはSから選ばれ、
X
1~X
7は、出現毎に同一または異なってC、NまたはCR
xから選ばれ、X
1、X
2およびX
3のうちの1つは、Cから選ばれるとともに、Aと結合し、
X
1、X
2およびX
3のうちの1つは、Nから選ばれ、金属-窒素結合によって金属と結合し、またはX
1、X
2およびX
3のうちの1つは、Cから選ばれ、Gによって金属と結合し、
X
1~X
7のうちの少なくとも1つは、CR
xから選ばれ、且つ前記R
xは、シアノ基またはフッ素であり、
R
aは、出現毎に同一または異なって一置換、複数置換または無置換を表し、
R’、R
u、R
xおよびR
aは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
R
yは、出現毎に同一または異なってハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
隣り合う置換基R
xは、結合して環を形成していてもよく、
隣り合う置換基R
aは、結合して環を形成していてもよく、
隣り合う置換基R
uは、結合して環を形成していてもよい。)
【0100】
本明細書において、「隣り合う置換基Rxが結合して環を形成していてもよい」とは、任意の2つの隣り合う置換基Rxからなる置換基グループのうちの1つまたは複数が結合して環を形成してもよいことを意味する。明らかには、これらの置換基グループは、いずれも結合して環を形成しなくてもよい。
【0101】
本明細書において、「隣り合う置換基Raが結合して環を形成していてもよい」とは、任意の2つの隣り合う置換基Raからなる置換基グループのうちの1つまたは複数が結合して環を形成してもよいことを意味する。明らかには、これらの置換基グループは、いずれも結合して環を形成しなくてもよい。
【0102】
本明細書において、「隣り合う置換基Ruが結合して環を形成していてもよい」とは、任意の2つの隣り合う置換基Ruからなる置換基グループのうちの1つまたは複数が結合して環を形成してもよいことを意味する。明らかには、これらの置換基グループは、いずれも結合して環を形成しなくてもよい。
【0103】
本発明の一実施例によれば、式3における
【化10】
は、出現毎に同一または異なって以下のいずれか1つの構造から選ばれる。
【化11】
(Rは、出現毎に同一または異なって一置換、複数置換、または無置換を表し、いずれか1つの構造において複数のRが存在する場合、前記Rは、同一または異なり、
Rは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
隣り合う置換基Rは、結合して環を形成していてもよく、
「#」は、Gとの結合箇所を表し、
【化12】
は、X
1、X
2またはX
3との結合箇所を表す。)
【0104】
本明細書において、「隣り合う置換基Rは、結合して環を形成していてもよい」とは、任意の2つの隣り合う置換基Rからなる置換基グループのうちの1つまたは複数が結合して環を形成してもよいことを意味する。明らかには、これらの置換基グループは、いずれも結合して環を形成しなくてもよい。
【0105】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体は、Ir(L
a)
m(L
b)
3-mの一般式を有し、式5で表される構造を有する。
【化13】
(mは、1または2から選ばれ、m=1の場合、2つのL
bは、同一または異なり、m=2の場合、2つのL
aは、同一または異なり、
Xは、O、S、Se、NR’、CR’R’、SiR’R’およびGeR’R’からなる群から選ばれ、2つのR’が同時に存在する場合、2つのR’は、同一または異なり、
Y
1~Y
4は、出現毎に同一または異なってCR
YまたはNから選ばれ、
U
1~U
8は、出現毎に同一または異なってCR
uまたはNから選ばれ、
X
3~X
7は、出現毎に同一または異なってCR
xまたはNから選ばれ、
X
3~X
7のうちの少なくとも1つは、CR
xから選ばれ、且つ前記R
xは、シアノ基またはフッ素であり、
R’、R
x、R
YおよびR
uは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
R
yは、出現毎に同一または異なってフッ素、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
隣り合う置換基R
Yは、結合して環を形成していてもよく、
隣り合う置換基R
uは、結合して環を形成していてもよい。)
【0106】
本明細書において、「隣り合う置換基RYが結合して環を形成していてもよい」とは、任意の2つの隣り合う置換基RYからなる置換基グループのうちの1つまたは複数が結合して環を形成してもよいことを意味する。明らかには、これらの置換基グループは、いずれも結合して環を形成しなくてもよい。
【0107】
本発明の他の実施例によれば、Xは、出現毎に同一または異なってOまたはSから選ばれる。
【0108】
本発明の他の実施例によれば、Xは、Oである。
【0109】
本発明の一実施例によれば、X4~X7のうちの少なくとも1つは、CRxから選ばれ、且つ前記Rxは、出現毎に同一または異なってハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0110】
本発明の一実施例によれば、X4~X7のうちの少なくとも1つは、CRxから選ばれ、且つ前記Rxは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、フッ素、シアノ基、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0111】
本発明の一実施例によれば、X4~X7のうちの少なくとも1つは、CRxから選ばれ、且つ前記Rxは、フッ素またはシアノ基である。
【0112】
本発明の一実施例によれば、X6は、CRxから選ばれ、且つ前記Rxは、フッ素またはシアノ基である。
【0113】
本発明の一実施例によれば、X7は、CRxから選ばれ、且つ前記Rxは、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、フッ素、シアノ基、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0114】
本発明の一実施例によれば、U1~U8のうちの少なくとも1つまたは少なくとも2つは、CRuから選ばれ、且つRuは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つすべての前記Ruの炭素原子数の和が少なくとも4である。
【0115】
本発明の一実施例によれば、U5~U8のうちの少なくとも1つまたは少なくとも2つは、CRuから選ばれ、且つRuは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つすべての前記Ruの炭素原子数の和が少なくとも4である。
【0116】
本発明の一実施例によれば、U1~U4のうちの少なくとも1つまたは少なくとも2つは、CRuから選ばれ、且つRuは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つすべての前記Ruの炭素原子数の和が少なくとも4である。
【0117】
本発明の一実施例によれば、U1~U4の少なくとも1つまたは少なくとも2つは、CRuから選ばれ、且つRuは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つすべての前記Ruの炭素原子数の和が少なくとも4である。それと同時に、U5~U8のうちの少なくとも1つまたは少なくとも2つは、CRuから選ばれ、且つRuは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つすべての前記Ruの炭素原子数の和が少なくとも4である。
【0118】
本発明の一実施例によれば、U2またはU3は、CRuから選ばれ、且つRuは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0119】
本発明の一実施例によれば、U2またはU3は、CRuから選ばれ、且つRuは、置換または非置換の炭素原子数4~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数4~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0120】
本発明の一実施例によれば、U1~U4のうちの少なくとも1つは、CRuから選ばれ、且つY1~Y4のうちの少なくとも1つは、CRから選ばれ、前記Ru、Rは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つRu、Rの合計が2以上である。
【0121】
本発明の一実施例によれば、U5~U8のうちの少なくとも1つは、CRuから選ばれ、且つY1~Y4のうちの少なくとも1つは、CRから選ばれ、前記Ru、Rは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つRu、Rの合計が2以上である。
【0122】
本発明の一実施例によれば、U1~U4のうちの少なくとも1つは、CRuから選ばれ、且つU5~U8のうちの少なくとも1つは、CRuから選ばれ、前記Ruは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つRuの合計が2以上である。
【0123】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体は、Ir(L
a)
m(L
b)
3-mの一般式を有し、且つ式5-1で表される構造を有する。
【化14】
(mは、1または2から選ばれ、m=1の場合、2つのL
bは、同一または異なり、m=2の場合、2つのL
aは、同一または異なり、
Xは、O、S、Se、NR’、CR’R’、SiR’R’およびGeR’R’からなる群から選ばれ、2つのR’が同時に存在する場合、2つのR’は、同一または異なり、
X
6~X
7は、出現毎に同一または異なってCR
xまたはNから選ばれ、
R
xおよびR
Yは、出現毎に同一または異なって一置換、複数置換または無置換を表し、
少なくとも1つのR
xは、シアノ基またはフッ素であり、
R’、R
x、R
YおよびR
1~R
8は、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
R
yは、出現毎に同一または異なってフッ素、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
隣り合う置換基R
Yは、結合して環を形成していてもよく、
隣り合う置換基R
1~R
8は、結合して環を形成していてもよい。)
【0124】
本発明の一実施例によれば、Ryは、出現毎に、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基からなる群から選ばれる。
【0125】
本発明の一実施例によれば、Ryは、出現毎に、置換または非置換の炭素原子数4~20のアルキル基からなる群から選ばれる。
【0126】
本発明の一実施例によれば、R
yは、置換または非置換の下記置換基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
【化15】
上記基における水素は、一部または全部重水素化されていてもよく、
「*」は、前記置換基と炭素との結合箇所を表す。
【0127】
本発明の一実施例によれば、R1~R8のうちの少なくとも1つまたは少なくとも2つは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つすべての前記R1~R4および/またはR5~R8の炭素原子数の和が少なくとも4である。
【0128】
本発明の一実施例によれば、R5~R8のうちの少なくとも1つまたは少なくとも2つは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つすべての前記置換基R5~R8の炭素原子数の和が少なくとも4である。
【0129】
本発明の一実施例によれば、R1~R4のうちの少なくとも1つまたは少なくとも2つは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つすべての前記置換基R1~R4の炭素原子数の和が少なくとも4である。
【0130】
本発明の一実施例によれば、R1~R4の少なくとも1つまたは少なくとも2つは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つすべての前記置換基R1~R4の炭素原子数の和が少なくとも4である。それと同時に、R5~R8のうちの少なくとも1つまたは少なくとも2つは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれ、且つすべての前記置換基R5~R8の炭素原子数の和が少なくとも4である。
【0131】
本発明の一実施例によれば、R2またはR3は、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0132】
本発明の一実施例によれば、R2またはR3は、置換または非置換の炭素原子数4~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数4~20のシクロアルキル基、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0133】
本発明の一実施例によれば、金属Mは、出現毎に同一または異なってCu、Ag、Au、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtからなる群から選ばれる。
【0134】
本発明の一実施例によれば、金属Mは、出現毎に同一または異なってPtまたはIrから選ばれる。
【0135】
本発明の一実施例によれば、Aは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRaで置換された環原子数6の窒素含有芳香族環から選ばれる。
【0136】
本発明の一実施例によれば、Aは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRaで置換されたピリジン、非置換または1つまたは複数のRaで置換されたピリミジン、または非置換または1つまたは複数のRaで置換されたトリアジンから選ばれる。
【0137】
本発明の一実施例によれば、Eは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のReで置換された、6員環-5員環-6員環構造を有する芳香族環またはヘテロ芳香族環から選ばれる。
【0138】
本発明の一実施例によれば、Eは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のReで置換された、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、フルオレン、シリコンフルオレン、ゲルマニウムフルオレン、アザジベンゾチオフェン、アザジベンゾフラン、アザジベンゾセレノフェン、アザカルバゾール、アザフルオレン、アザシリコンフルオレン、アザゲルマニウムフルオレンから選ばれる。
【0139】
本発明の一実施例によれば、Cは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRcで置換された環原子数6~20の芳香族環、非置換または1つまたは複数のRcで置換された環原子数5~20のヘテロ芳香族環、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0140】
本発明の一実施例によれば、Cは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRcで置換された環原子数6~12の芳香族環、非置換または1つまたは複数のRcで置換された環原子数5~12のヘテロ芳香族環、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0141】
本発明の一実施例によれば、Cは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRcで置換されたベンゼン環、非置換または1つまたは複数のRcで置換された環原子数5~6のヘテロ芳香族環、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0142】
本発明の一実施例によれば、Dは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRdで置換された環原子数6~20の芳香族環、非置換または1つまたは複数のRdで置換された環原子数5~20のヘテロ芳香族環、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0143】
本発明の一実施例によれば、Dは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRdで置換された環原子数6~12の芳香族環、非置換または1つまたは複数のRdで置換された環原子数5~12のヘテロ芳香族環、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0144】
本発明の一実施例によれば、Dは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRdで置換されたベンゼン環、非置換または1つまたは複数のRdで置換された環原子数5~6のヘテロ芳香族環、またはこれらの組合せから選ばれる。
【0145】
本発明の一実施例によれば、Cは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRcで置換された、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、イミダゾールカルベン環、ピラゾール環、チアゾール環、およびオキサゾール環から選ばれ、且つCは、金属-窒素結合によって金属と結合する。
【0146】
本発明の一実施例によれば、Cは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRcで置換されたピリジン環から選ばれる。
【0147】
本発明の一実施例によれば、Dは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRdで置換された、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、イミダゾールカルベン環、ピラゾール環、チアゾール環、およびオキサゾール環から選ばれ、且つDは、金属-炭素結合によって金属と結合する。
【0148】
本発明の一実施例によれば、Dは、出現毎に同一または異なって非置換または1つまたは複数のRdで置換されたベンゼン環から選ばれる。
【0149】
本発明の一実施例によれば、Ra、Re、RcおよびRdの少なくとも1つは、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0150】
本発明の一実施例によれば、Ra、Re、RcおよびRdの少なくとも1つは、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、シアノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0151】
本発明の一実施例によれば、Ra、Re、RcおよびRdの少なくとも1つは、フッ素、置換または非置換炭素原子数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~18のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~18のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~12のアルキルシリル基、シアノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0152】
本発明の一実施例によれば、Rcのうちの少なくとも1つ、および/またはRdのうちの少なくとも1つは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基からなる群から選ばれる。
【0153】
本発明の一実施例によれば、Rcのうちの少なくとも1つ、および/またはRdのうちの少なくとも1つは、置換または非置換の炭素原子数4~10のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数4~10のシクロアルキル基からなる群から選ばれる。
【0154】
本発明の一実施例によれば、Rcのうちの1つは、置換または非置換の炭素原子数4~10のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数4~10のシクロアルキル基からなる群から選ばれ、且つRdのうちの1つは、置換または非置換の炭素原子数4~10のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数4~10のシクロアルキル基からなる群から選ばれる。
【0155】
本発明の一実施例によれば、Reのうちの少なくとも1つは、FまたはCNから選ばれる。
【0156】
本発明の一実施例によれば、Reのうちの少なくとも1つは、FまたはCNから選ばれ、且つReのうちの少なくとも1つは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0157】
本発明の一実施例によれば、Reのうちの少なくとも1つは、FまたはCNから選ばれ、且つReのうちの少なくとも1つは、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0158】
本発明の他の実施例によれば、L
bおよびL
cは、出現毎に同一または異なって、
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
からなる群から選ばれる。
【0159】
本発明の一実施例によれば、上記Lb1~Lb147における水素は、一部または全部重水素化されてもよい。
【0160】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体は、出現毎に同一または異なって金属錯体1~金属錯体61からなる群から選ばれる。
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【0161】
本発明の一実施例によれば、金属錯体1~金属錯体61における水素は、一部または全部重水素化されてもよい。
【0162】
本発明の他の目的によれば、金属錯体の光電素子における適用がさらに開示される。前記金属錯体は、上述したいずれか1つの実施例をご参照ください。
【0163】
本発明の一実施例によれば、第1の化合物は、式6で表される構造を有する。
【化26】
(E
1~E
6は、出現毎に同一または異なってC、CR
EまたはNから選ばれ、E
1~E
6のうちの少なくとも2つは、Nであり、E
1~E
6のうちの少なくとも1つは、Cであり、式Aと結合し、
【化27】
Qは、出現毎に同一または異なってO、S、Se、N、NR
Q、CR
QR
Q、SiR
QR
Q、GeR
QR
QおよびR
QC=CR
Qからなる群から選ばれ、2つのR
Qが同時に存在する場合、2つのR
Qは、同一または異なってもよく、
pは、0または1であり、rは、0または1であり、
QがNから選ばれる場合、pは、0であり、rは、1であり、
QがO、S、Se、NR
Q、CR
QR
Q、SiR
QR
Q、GeR
QR
QおよびR
QC=CR
Qからなる群から選ばれる場合、pは、1であり、rは、0であり、
L
qは、出現毎に同一または異なって単結合、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリーレン基、置換または非置換の炭素原子数3~20のヘテロアリーレン基、またはこれらの組合せから選ばれ、
Q
1~Q
8は、出現毎に同一または異なってC、CR
qまたはNから選ばれ、
R
E、R
QおよびR
qは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
「*」は、式Aと式6との結合箇所を表し、
隣り合う置換基R
E、R
Q、R
qは、結合して環を形成していてもよい。)
【0164】
本明細書において、「隣り合う置換基RE、RQ、Rqが結合して環を形成していてもよい」とは、そのうちの隣り合う置換基グループ、たとえば、2つの置換基RE同士、2つの置換基RQ同士、2つの置換基Rq同士、2つの置換基RQおよびRq同士のうちのいずれか1つまたは複数が結合して環を形成してもよいことを意味する。明らかには、これらの置換基同士は、いずれも結合して環を形成しなくてもよい。
【0165】
本発明の一実施例によれば、第1の化合物は、以下の化合物からなる群から選ばれる。
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【0166】
本発明の一実施例によれば、第2の化合物は、式X-1またはX-2で表される構造を有する。
【化34】
(L
xは、出現毎に同一または異なって単結合、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリーレン基、置換または非置換の炭素原子数3~20のヘテロアリーレン基、またはこれらの組合せから選ばれ、
Gは、出現毎に同一または異なってC(R
g)
2、NR
g、OまたはSから選ばれ、
Vは、出現毎に同一または異なってC、CR
vまたはNから選ばれ、
式X-1中、Tは、出現毎に同一または異なってC、CR
tまたはNから選ばれ、
式X-2中、Tは、出現毎に同一または異なってCR
tまたはNから選ばれ、
R
g、R
vおよびR
tは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
Ar
1は、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、またはこれらの組合せから選ばれ、
隣り合う置換基R
g、R
vおよびR
tは、結合して環を形成していてもよい。)
【0167】
該実施例において、「隣り合う置換基Rg、RvおよびRtが結合して環を形成していてもよい」とは、そのうちの隣り合う置換基グループ、たとえば、2つの置換基Rv同士、2つの置換基Rt同士、2つの置換基Rg同士、置換基RvおよびRt同士、置換基RvおよびRg同士、置換基RgおよびRt同士のうちのいずれか1つまたは複数が結合して環を形成してもよいことを意味する。明らかには、これらの置換基同士は、いずれも結合して環を形成しなくてもよい。
【0168】
本発明の一実施例によれば、第2の化合物は、式X-a~式X-pのうちの1つで表される構造を有する。
【化35】
(L
xは、出現毎に同一または異なって単結合、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキレン基、置換または非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキレン基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリーレン基、置換または非置換の炭素原子数3~20のヘテロアリーレン基、またはこれらの組合せから選ばれ、
Gは、出現毎に同一または異なってC(R
g)
2、NR
g、OまたはSから選ばれ、
Vは、出現毎に同一または異なってCR
vまたはNから選ばれ、
Tは、出現毎に同一または異なってCR
tまたはNから選ばれ、
R
g、R
vおよびR
tは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
Ar
1は、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、またはこれらの組合せから選ばれ、
隣り合う置換基R
g、R
vおよびR
tは、結合して環を形成していてもよい。)
【0169】
本発明の一実施例によれば、第2の化合物は、以下の化合物からなる群から選ばれる。
【化36】
【化37】
【化38】
【0170】
本発明の一実施例によれば、前記エレクトロルミネッセンス素子において、金属錯体は、前記第1の化合物および第2の化合物にドーピングされ、金属錯体の重量が発光層の総重量に対して1%~30%である。
【0171】
本発明の一実施例によれば、前記エレクトロルミネッセンス素子において、金属錯体が前記第1の化合物および第2の化合物にドーピングされ、金属錯体の重量が発光層の総重量に対して3%~13%である。
【0172】
本発明の一実施例によれば、前記有機電界素子において、さらに正孔注入層が含まれ、前記正孔注入層は、単一材料の機能層であってもよいし、複数種の材料を含む機能層であってもよい。含まれた複数種の材料のうち、正孔輸送材料に一定の割合のp型導電ドープ材料がドーピングされたものが最もよく用いられる。よく見られるp型ドープ材料は、以下の通りである。
【化39】
【0173】
本発明の一実施例によれば、上述したいずれか1つの実施例に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子を含む表示アセンブリが開示される。
【0174】
他の材料との組合せ
【0175】
本発明に記載される有機発光素子に用いられる特定層の材料は、素子に存在する各種の他の材料と組み合わせて使用することができる。これらの材料の組合せについて、米国特許出願US2016/0359122A1の第0132~0161段落において詳細に記載されており、その内容を全て本明細書に援用する。記載または言及された材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて使用可能な材料の非限定的な実例であり、且つ当業者にとっては、文献を容易に参照して組み合わせて使用可能な他の材料を識別することができる。
【0176】
本明細書において、有機発光素子に用いられる具体的な層の材料は、前記素子に存在する多種の他の材料と組み合わせて使用することができると記載されている。例示的には、本明細書において開示される発光ドーパントは、多種のホスト、輸送層、ブロッキング層、注入層、電極および他の存在可能な層と組み合わせて使用することができる。これらの材料の組合せは、特許出願US2015/0349273A1の第0080~0101段落において詳細に記載されており、その内容を全て本明細書に援用する。記載または言及された材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて使用可能な材料の非限定的な実例であり、且つ当業者にとっては、文献を容易に参照して組み合わせて使用可能な他の材料を識別することができる。
【0177】
材料合成の実施例において、説明しない限り、すべての反応が窒素の保護で行われる。すべての反応溶剤は、無水であり、且つ市販品由来のまま使用される。合成される生成物に対して、本分野通常の1種または多種の機器(Bruker製の核磁気共鳴装置、Shimadzu製の液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー/質量分析計、気体クロマトグラフィー/質量分析計、示差熱走査熱量装置、上海▲リョウ▼光技術製の蛍光分光光度計、武漢科思特製の電気化学作業ステーション、安徽貝意克製の昇華装置などを含むがそれに限定されず)を用いて、当業者にとって熟知の方法で構造確認と特性テストを行った。素子の実施例において、素子の特性に対しても、本分野通常の機器(Angstrom Engineering製の蒸着機、蘇州弗士達製の光学テストシステム、耐用年数テストシステム、北京量拓製のエリプソメータなどを含むがそれに限定されず)を用いて、当業者にとって熟知の方法でテストを行った。当業者は上述した機器の使用、テスト方法などの関連内容を知っているので、サンプルの固有データを確実に、影響を受けずに取得することができるため、上記関連内容を本明細書において繰り返し説明はしない。
【0178】
本発明では、発光スペクトル面積比の計算方法は、以下の通りである。
【0179】
まず、上海▲リョウ▼光技術有限公司製の型番が▲リョウ▼光F98の蛍光分光光度計を用いて測定待ち化合物のフォトルミネッセンススペクトル(PL)のデータを測定した。測定待ち化合物を、HPLCレベルのトルエン溶液で、濃度1×10-6mol/Lの溶液に調製した後、室温(298K)下で、最大波長の吸収ピーク±30nmのうちのいずれか1つの波長の光で励起してその放射スペクトルを測定した。放射スペクトルは、最大放射波長λmaxを有する。
【0180】
その後、放射スペクトルデータを正規化処理し(正規化処理は、すべての放射強度データを放射強度のうちの最大値で除算することであり)、以下の方法に従って発光面積比を計算する。
【0181】
最大放射波長がλmaxであり、且つ490nm≦λmax<580nmであると、計算範囲は、500nm~650nmであり、スペクトルを正規化した後、スペクトル曲線の下側における放射輝度が0.02よりも大きい領域を積分して、面積Area 1-1を得た。500nm~650nmの間の長さに0.02~1.00の間の高さを乗算して、面積Area 1-2が147であることを得た。発光スペクトル面積比=[Area 1-1]/[Area 1-2]=[Area 1-1]/147=AR。
【0182】
発光スペクトル面積比の計算については、
図5をご参照ください。
図5は、発光スペクトル面積比を計算するための模式図であり、そのうち、放射スペクトルは、正規化されたフォトルミネッセンススペクトルである。その最大放射波長は、λ
maxが所在する波長区間に位置すれば、発光面積比を計算する場合、上述した方法に従って計算する。そのうち、曲線下における濃い色部分の面積は、Area 1-1であり、黒色の短線でカバーされた方形面積は、Area 1-2であり、その際に、ARは、[Area 1-1]/[Area 1-2]である。
【0183】
本発明における金属錯体17を例として、その最大放射波長が520nmであることを測定し、そのスペクトルを正規化した後、スペクトル曲線の下側における放射輝度が0.02よりも大きい領域を積分して、面積Area 1-1が47.222であることを得た。500nm~650nmの間の長さに0.02~1.00の間の高さを乗算して、面積Area 1-2が147であることを得た。発光スペクトル面積比AR=[Area 1-1]/[Area 1-2]=47.222/147=0.321。
【0184】
本願における一部の金属錯体、および比較例における化合物のフォトルミネッセンススペクトルの最大放射波長および発光スペクトル面積比の計算データは、表1に示される。
【0185】
【0186】
上記に係る金属錯体は、以下のように示される。
【化40】
【0187】
化合物の電気化学的性質である最高被占分子軌道エネルギーレベル、最低未占有分子軌道エネルギーレベルは、いずれもサイクリックボルタンメトリー(CV)により測定された。測定には、武漢科思特計器股フン有限公司製の型番CorrTest CS120の電気化学的ステーションが用いられると共に、プラチナディスク電極を作業電極、Ag/AgNO3電極を参照電極、プラチナワイヤ電極を補助電極とする3電極作業体系が用いられた。無水DMFを溶剤、0.1mol/Lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを支持電解質として、測定待ち化合物を10-3mol/Lの溶液に調製し、テスト前に、溶液に窒素ガスを10min導入して酸素を除去した。計器のパラメータ設定は、以下の通りである。走査速度100mV/s、電位間隔0.5mV、酸化電位テストウィンドウ0V~1V、還元電位テストウィンドウ-1V~-2.9V。本願に用いられる金属錯体および一部の化合物のエネルギーレベルは、以下の表に示される。
【0188】
【0189】
金属錯体のエレクトロルミネッセンススペクトル試験
【0190】
実施例1
【0191】
まず、厚みが80nmのインジウムスズ酸化物(ITO)陽極を有するガラス基板を洗浄した後、酸素プラズマおよびUVオゾンで処理した。処理した後、基板をグローブボックスで乾燥させて水を除去した。その後、基板を基板ホルダ上に取り付けて真空室に置いた。以下、指定された有機層に対して、真空度が約10-6トルの場合、0.01~10Å/sの速度でホット真空蒸着によって順にITO陽極上に蒸着を行った。化合物HIを正孔注入層(HIL)として用いた。化合物HTを正孔輸送層(HTL)として用いた。化合物PH-23を電子ブロッキング層(EBL)として用いた。そして、本発明における金属錯体17、化合物PH-23および化合物H-40を共蒸着して発光層(EML)として用いた。EML上において、化合物H-2を正孔ブロッキング層(HBL)として用いた。HBL上において、化合物ETおよび8-ヒドロキシキノリン-リチウム(Liq)を共蒸着して電子輸送層(ETL)として用いた。最後に、厚みが1nmの8-ヒドロキシキノリン-リチウム(Liq)を蒸着して電子注入層として用いるとともに、120nmのアルミニウムを蒸着して陰極として用いた。そして、該素子をグローブボックスに転移させ、ガラスカバーを用いてカプセル化して該素子を完成させた。
【0192】
実施例2
【0193】
実施例2の実施形態は、発光層において本発明における金属錯体32で本発明における金属錯体17を代替する以外、実施例1と同様である。
【0194】
実施例3
【0195】
実施例3の実施形態は、発光層において本発明における金属錯体23で本発明における金属錯体17を代替する以外、実施例1と同様である。
【0196】
比較例1
【0197】
比較例1の実施形態は、発光層においてGD1で本発明における金属錯体17を代替する以外、実施例1と同様である。
【0198】
比較例2
【0199】
比較例2の実施形態は、発光層においてGD2で本発明における金属錯体17を代替する以外、実施例1と同様である。
【0200】
比較例3
【0201】
比較例3の実施形態は、発光層においてGD3で本発明における金属錯体17を代替する以外、実施例1と同様である。
【0202】
比較例4
【0203】
比較例4の実施形態は、発光層においてGD4で本発明における金属錯体17を代替する以外、実施例1と同様である。
【0204】
比較例5
【0205】
比較例5の実施形態は、発光層においてGD5で本発明における金属錯体17を代替する以外、実施例1と同様である。
【0206】
比較例6
【0207】
比較例6の実施形態は、発光層においてGD6で本発明における金属錯体17を代替する以外、実施例1と同様である。
【0208】
比較例7
【0209】
比較例7の実施形態は、発光層においてGD7で本発明における金属錯体17を代替する以外、実施例1と同様である。
【0210】
詳細な素子の層構造および厚みを以下の表に示す。用いられる材料が1種超えの層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0211】
【0212】
素子に用いられる材料の構造は、以下のように示される。
【化41】
【0213】
素子のIVL特性を測定した。1000cd/m2下で、素子のCIEデータ、最大放射波長λMAX、半値全幅(FWHM)を測定した。これらのデータは、表3に記録され示される。
【0214】
【0215】
まとめ
【0216】
表3から分かるように、実施例1~3における素子のλMAX(即ち、金属錯体のエレクトロルミネッセンススペクトルの最大放射波長)は、いずれも522nmであり、且つ524nmよりも小さく、半値全幅(FWHM)は、それぞれ30.1nm、31.0nmおよび32.3nmであり、いずれも明らかに34.7nmよりも小さい。比較例1~3に用いられた金属錯体は、実施例1~3における金属錯体と類似する骨格を有し、そのλMAXがそれぞれ532nm、531nmおよび531nmであり、FWHMがそれぞれ35.8nm、34.7nmおよび57.6nmであり、実施例1~3に対していずれも異なる程度のレッドシフトを有し、且つFWHMが広くなり、特に比較例3におけるFWHMが20nm超え広くなった。比較例4および比較例5は、そのλMAXがいずれも525nmのようなより飽和した緑色発光を達成したが、そのFWHMがいずれも広く、それぞれ58.7nmおよび59.4nmである。比較例6~7も実施例1~3に用いられた金属錯体と類似する骨格を有し、そのλMAXがいずれも531nmであり、FWHMがそれぞれ58.0nmおよび59.0nmであり、実施例1~3に対していずれも異なる程度のレッドシフトを有し、且つFWHMが23nm超え広くなった。
【0217】
それと同時に、実施例1~3に用いられた金属錯体のピーク面積ARは、それぞれ0.321、0.330および0.331であり、いずれも0.331以下である。比較例に用いられた金属錯体のピーク面積比がいずれも0.331よりも大きく、比較例2に用いられた金属錯体GD2のピーク面積比ARが0.332であり、且つ実施例に用いられた金属錯体と同じ骨格を有するが、実施例1~3の発光性能も著しく比較例2よりも優れている。
【0218】
これから分かるように、実施例1~3は、λMAXが比較例1~7に対して明らかなブルーシフトを有し、FWHMが狭くなり、且つ実施例1~3は、CIExがいずれも0.300よりも小さく、CIEyがいずれも0.650よりも大きく、比較例1~7は、その逆である。そのため、実施例1~3は、より飽和した発光を有することが示されている。
【0219】
トップエミッション素子の実施例:
【0220】
BT.2020の発光要求に最も接近する場合の金属錯体の素子の性能を研究するために、以下のトップエミッション素子に対して、マイクロキャビティを、素子のCIExが0.170となるように調節するとともに、この時の素子の性能を記録した。それと同時に、素子がBT.2020の発光要求に接近する時の素子の性能が素子の最適な性能に達するか否か、および素子の最適な性能との差異を考察するために、同時に以下のトップエミッション素子のマイクロキャビティを、素子が最大電流効率に達するように調節するとともに、この時の素子の性能を記録した。前文においてトップエミッション素子に対する説明のように、異なる金属錯体の屈折率が異なるので、これらの異なる金属錯体を含むトップエミッション素子のマイクロキャビティの長さは、やや異なり、即ちHTLの厚みはやや異なる。
【0221】
実施例4:金属錯体17をトップエミッション素子に適用し、具体的に以下の通りである。
【0222】
まず、予め図形化されたインジウムスズ酸化物ITO 75Å/Ag 1500Å/ITO 150Åを有する厚みが0.7mmのガラス基板を陽極として用い、ここでAgの上に蒸着した150ÅのITOが正孔注入機能を果たした。その後、基板をグローブボックスで乾燥させて水分を除去し、ホルダに取り付けて真空室に置いた。以下、指定された有機層に対して、真空度が約10-6Torrの場合、0.01~10Å/sの速度でホット真空蒸着によって順次に陽極上に蒸着を行った。まず、化合物HTおよび化合物PDを共蒸着して正孔注入層(HIL、97:3、100Å)として用い、HIL上において化合物HTを蒸着して正孔輸送層(HTL、HTLが同時にマイクロキャビティ調節層として用いられ、1000~1500Åの範囲内にマイクロキャビティを調節する)として用いた。次に、正孔輸送層上において化合物PH-23を蒸着して電子ブロッキング層(EBL、50Å)として用いた。そして、本発明における金属錯体17、化合物PH-1および化合物H-40を共蒸着して発光層(EML、4:48:48、400Å)として用い、化合物H-2を蒸着して正孔ブロッキング層(HBL、50Å)として用い、化合物ETおよびLiqを共蒸着して電子輸送層(ETL、40:60、350Å)として用い、10Åの金属Ybを蒸着して電子注入層(EIL)として用いるとともに、金属AgおよびMgを9:1の割合で140Å共蒸着して陰極として用い、厚みが800Åの化合物CP(化合物CPは、530nmにおいて屈折率が約2.01の材料である)を蒸着してキャッピング層として用いた。そして、該素子をグローブボックスに転移させ、窒素ガス雰囲気下でガラスカバーによりカプセル化して該素子を完成させた。そのうち、マイクロキャビティを1410Å程度(即ち、HTLの厚みが1410Å程度である)に調節して素子のCEmaxを得、マイクロキャビティを1370Å程度に調節して素子のCIExが0.170であることを得、このときのCEmax2を得た。
【0223】
実施例5
【0224】
実施例5の実施形態は、発光層において本発明における金属錯体32で本発明における金属錯体17を代替する以外、実施例4と同様である。そのうち、マイクロキャビティを1340Å程度に調節して素子のCEmaxを得、マイクロキャビティを1340Å程度に調節して素子のCIExが0.170であることを得、この時のCEmax2を得た。
【0225】
比較例8
【0226】
比較例8の実施形態は、発光層においてGD2で本発明における金属錯体17を代替する以外、実施例4と同様である。そのうち、マイクロキャビティを1370Å程度に調節して素子のCEmaxを得、マイクロキャビティを1410Å程度に調節して素子のCIExが0.170であることを得、この時のCEmax2を得た。
【0227】
素子の一部の層の構造および厚みを以下の表に示す。用いられる材料が1種超えは、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0228】
【0229】
素子に新たに用いられる材料の構造は、以下のように示される。
【化42】
【0230】
素子のIVL特性を測定した。10mA/cm2の定電流下で、前記トップエミッション素子が最大電流効率(CEmax)を有する時の外部量子効率(EQEmax)、CIE(x,y)、計算して得た距離D、および10mA/cm2の定電流下で、色座標CIE(x,y)におけるCIExが0.170である場合に対応する素子のCEmax2、外部量子効率(EQEmax2)、CEmax2とCEmaxの比を記録した。これらのデータは、表5に記録され示される。
【0231】
【0232】
まとめ
【0233】
表5から分かるように、実施例4~5に用いられた発光材料は、本発明における金属錯体17および32であり、発光スペクトル面積比がそれぞれ0.321および0.331であり、いずれも0.331以下であり、比較例8に用いられた本発明における発光材料と同じ骨格を有する発光材料GD2は、発光スペクトル面積比が0.332である。
【0234】
表3における金属錯体のエレクトロルミネッセンススペクトル試験から分かるように、実施例4~5に用いられた本発明における発光材料ELは、λMAXがいずれも522nmであり、いずれも524nmよりも小さく、半値全幅(FWHM)がそれぞれ30.1nmおよび31.0nmであり、いずれも34.7nmよりも小さく、比較例2に用いられた本発明における発光材料と同じ骨格を有する発光材料ELは、λMAXが531nmであり、半値全幅(FWHM)が34.7nmである。比較例2は、実施例4~5に対して、λMAXがいずれも明らかなレッドシフトを有し、且つ半値幅が広くなった。
【0235】
表5から分かるように、実施例4~5に用いられた本発明における発光材料は、トップエミッション素子のCEmaxを取った際の色座標CIE(x,y)とBT.2020の緑色光色座標CIE(0.170,0.797)の距離Dがそれぞれ0.0219および0.0178であり、いずれも0.0300よりも小さく、比較例8に用いられた本発明における発光材料と同じ骨格を有する発光材料の距離Dが0.0614である。そのため、実施例4~5のBT.2020の緑色光色座標CIE(0.170,0.797)からの距離が明らかに比較例8よりも近く、より飽和した緑色光発光およびより広いBT.2020のカバレッジを有することが示されている。
【0236】
表5から分かるように、比較例8の最大CEmaxが194cd/Aに達し、実施例4~5(160cd/A、173cd/A)よりも21.3%および12.1%高くなった。比較例8の最大外部量子効率EQEmaxが43.77%に達し、実施例4~5よりもそれぞれ13.1%および3.5%高くなった。CIEx=0.170の場合、比較例8のCEmax2が147cd/Aだけであり、CEmaxに対して24.22%低下し、実施例4~5のCEmax2(156cd/A、171cd/A)に対してかえって9cd/Aおよび24cd/A低くなり、5.8%および14.0%低下した。比較例8のEQEmax2が35.45%だけであり、EQEmaxに対して8.32%低下し、実施例4~5のEQEmax2に対してそれぞれ2.55%および5.84%低くなった。
【0237】
それと同時に、実施例4~5の最大CEmaxとBT.2020の緑色光色座標CIE(0.170,0.797)のx=0.170の場合、得たCEmax2が4cd/Aおよび2cd/Aのみ違い、CEmax2がひいてはCEmaxの97.50%および98.84%に達した。CEmax2とCEmaxの差が小さいことは、BT.2020の緑色光りん光材料の素子における使用に有利であることで、より飽和した緑色光発光を満たすだけでなく、BT.2020の緑色光発光時の最大CEを満たすことができる。これは極めて得難いことである。比較例8は、CEmaxおよびEQEmaxが高いが、BT.2020の素子に適用された場合(即ち、CIExが0.170である場合)、CEmax2およびEQEmax2が極めて明らかに低下した。そのため、本発明における金属錯体は、BT.2020の緑色光発光素子において、より飽和した緑色光発光、およびより効率的である優れた性能を有することが示されている。
【0238】
要するに、本発明における金属錯体は、素子に適用される場合、放射距離Dとスペクトル面積比ARを満たしていない金属錯体に対して、より高い素子の効率、およびより飽和した緑色発光を有し、且つ商業上で求められるBT.2020の要求にいっそう接近するという性能を達成し、より広い商業的な適用見込みを有する。
【0239】
模擬トップエミッション素子例
【0240】
図4に示す素子の構造を結び付けて、本発明では、FLUXiM公司製の半導体薄膜光学的模擬ソフトウェアSetfos 5.0を用いて模擬を行った。
【0241】
模擬実施例1
【0242】
FLUXiM公司製のSetfos 5.0半導体薄膜光学的模擬ソフトウェアにより、実施例4と同じ素子の構造を設計し、本発明における金属錯体17のPLスペクトルデータを模擬ソフトウェアに入力し、模擬計算を行った。
【0243】
模擬実施例2
【0244】
FLUXiM公司製のSetfos 5.0半導体薄膜光学的模擬ソフトウェアにより、実施例5と同じ素子の構造を設計し、本発明における金属錯体32のPLスペクトルデータを模擬ソフトウェアに入力し、模擬計算を行った。
【0245】
模擬比較例1
【0246】
FLUXiM公司製のSetfos 5.0半導体薄膜光学的模擬ソフトウェアにより、比較例8と同じ素子の構造を設計し、GD2のPLスペクトルデータを模擬ソフトウェアに入力し、模擬計算を行った。
【0247】
上記模擬実施例および比較例の試験により、いずれも1グループの電流効率(CE)と色座標CIE(x,y)との対応関係を得ることができる。最大CEmaxを取った際に対応する色座標CIE(x,y)、算出したBT.2020の緑色光色座標CIE(0.170,0.797)との距離D、色座標CIE(x,y)のうちのCIExが0.170である場合に対応する模擬素子の電流効率CEmax2、CEmax2とCEmaxの比は、表6に記録され示される。
【0248】
【0249】
まとめ
【0250】
表6から分かるように、模擬実施例1~2および模擬比較例1は、最大CEmaxを取った際に、D値およびCEmax2/CEmaxが上記表5に記録された実測値と同様な規律を有し、即ち、実測のトップエミッション素子例において、比較例8のD値>実施例5のD値>実施例6のD値であり、同様に模擬素子霊いおいて、模擬比較例1のD値>模擬実施例1のD値>模擬実施例2のD値である。それと同時に、CEmax2/CEmaxも同様な結論に合った。
【0251】
要するに、本願に用いられた模擬素子例の方法により得られた素子のデータの結果は、実測構造において得られたデータの結果の規律と合致することが示されている。そのため、該方法により模擬を行った素子のデータの結果は、更なる研究に対して極めて大きな指導作用を有する。
【0252】
更に、以下の素子に対して模擬を行った。
【0253】
模擬実施例3
【0254】
模擬実施例3の模擬形態は、本発明における金属錯体23のPLスペクトルデータで本発明における金属錯体17のPLスペクトルデータを代替して模擬ソフトウェアに入力し、模擬計算を行う以外、模擬実施例1と同様である。
【0255】
模擬比較例2
【0256】
模擬比較例2の模擬形態は、GD1のPLスペクトルデータで本発明における金属錯体17のPLスペクトルデータを代替して模擬ソフトウェアに入力し、模擬計算を行う以外、模擬実施例1と同様である。
【0257】
模擬比較例3
【0258】
模擬比較例3の模擬形態は、GD3のPLスペクトルデータで本発明における金属錯体17のPLスペクトルデータを代替して模擬ソフトウェアに入力し、模擬計算を行う以外、模擬実施例1と同様である。
【0259】
模擬比較例4
【0260】
模擬比較例4の模擬形態は、GD4のPLスペクトルデータで本発明における金属錯体17のPLスペクトルデータを代替して模擬ソフトウェアに入力し、模擬計算を行う以外、模擬実施例1と同様である。
【0261】
模擬比較例5
【0262】
模擬比較例5の模擬形態は、GD5のPLスペクトルデータで本発明における金属錯体17のPLスペクトルデータを代替して模擬ソフトウェアに入力し、模擬計算を行う以外、模擬実施例1と同様である。
【0263】
模擬比較例6
【0264】
模擬比較例6の模擬形態は、GD6のPLスペクトルデータで本発明における金属錯体17のPLスペクトルデータを代替して模擬ソフトウェアに入力し、模擬計算を行う以外、模擬実施例1と同様である。
【0265】
模擬比較例7
【0266】
模擬比較例7の模擬形態は、GD7のLスペクトルデータで本発明における金属錯体17のPLスペクトルデータを代替して模擬ソフトウェアに入力し、模擬計算を行う以外、模擬実施例1と同様である。
【0267】
表7には、模擬実施例1~3および模擬比較例1~7素子の最大CEmaxを取った際のCIE(x,y)、算出したBT.2020の緑色光色座標CIE(0.170,0.797)との距離D、色座標CIE(x,y)のうちのCIExが0.170である場合に対応する模擬素子の電流効率CEmax2、およびCEmax2とCEmaxの比が示される。これらのデータは、表7に記録され示される。
【0268】
【0269】
まとめ
【0270】
表7から分かるように、模擬素子1~3は、最大CEmaxを取った際に、D値がそれぞれ0.0262、0.0217および0.0314であり、いずれも0.0320よりも小さく、即ちBT.2020の緑色光色座標CIE(0.170,0.797)から近い。模擬比較例1~7は、CEmaxを取った際に、D値がそれぞれ0.0714、0.0707、0.0942、0.0686、0.0792、0.0870、0.0870であり、いずれも0.0680よりも大きく、即ち対応するCIE(x,y)とBT.2020緑色光色座標CIE(0.170,0.797)の距離が遠いことで、緑色光発光が飽和せず、および効率が低くなることが引き起こされた。
【0271】
表5、6、7から分かるように、本発明における金属錯体を含む実施例1~3は、より小さい距離D値を有し、BT.2020の緑色光色座標CIE(0.170,0.797)からより近く、素子がより飽和した緑色光発光、より高い素子の効率(CE、EQE)、およびより小さいBT.2020の色座標距離を有した。比較例1~7は、0.0680より大きな距離Dを有し、BT.2020の緑色光色座標CIE(0.170,0.797)からより遠いことで、素子の緑色光発光が飽和せず、素子の効率がより低くなることが引き起こされた。
【0272】
模擬実施例4:
【0273】
模擬実施例4の模擬形態は、本発明における金属錯体17のフォトルミネッセンススペクトル(PL)データを基に、最大放射波長λMAXをそのまま維持し、その半値幅を調節して18nmに窄めて新たな模擬PLスペクトルデータを得、そのピーク面積比が0.170である以外、模擬実施例1と同様である。該模擬PLスペクトルデータを模擬ソフトウェアに入力して新たな模擬実施例4を形成した。
【0274】
FLUXiM公司製のSetfos 5.0半導体薄膜光学的模擬ソフトウェアにより、模擬実施例1と同じ素子の構造を設計した。表8には、模擬実施例4のCEmaxを取った際に対応する色座標CIE(x,y)が記録される。
【0275】
【0276】
まとめ
表8から分かるように、模擬実施例4は、CIEyが0.797よりも大きく、より広いBT.2020のカバレッジを有することで、より広い色域範囲を実現することができると同時に、そのCEmaxが230cd/Aの高水準に達し、模擬比較例に対して多く向上した。CIEyを0.797よりも大きくすることは、理論的に実行可能であり、優れた素子の性能を取得することができる。
【0277】
要するに、本発明におけるDおよびAR要求を満たす金属錯体が素子に適用される場合は、DおよびAR要求を満たしていない金属錯体が有機エレクトロルミネッセンス素子に適用される場合に対して、取得された有機エレクトロルミネッセンス素子は、より高い素子の効率、およびより飽和した緑色発光を有し、市場でBT.2020発光に対するニーズを満たすことができ、BT.2020の発光要求下で高い素子の効率を有する。
【0278】
ここで記載される各種の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではないことを理解すべきである。そのため、当業者にとって、保護しようとする本発明は、本明細書に記載される具体的な実施例および好ましい実施例の変形を含むことが自明である。本発明の構想を逸脱しない前提で、本明細書に記載される材料および構造の多くは、他の材料および構造で代替することができる。本発明がなぜ機能するかについての様々な理論は、限定的ではないことを理解すべきである。