(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031976
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱用カップ冷凍米飯
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240229BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20240229BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240229BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240229BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B65D81/34 U
A23L7/10 E
A23L5/00 G
A23L5/10 C
A47J27/00 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137519
(22)【出願日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2022134508
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 有未
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕二
(72)【発明者】
【氏名】千葉 聖也
【テーマコード(参考)】
3E013
4B023
4B035
4B055
【Fターム(参考)】
3E013BA15
3E013BA30
3E013BB09
3E013BC01
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD02
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF23
3E013BG15
4B023LE13
4B023LE22
4B023LP07
4B023LP19
4B023LP20
4B035LC16
4B035LE11
4B035LE16
4B035LG34
4B035LP16
4B035LP43
4B035LP46
4B035LT16
4B055AA10
4B055BA03
4B055CA21
4B055CB06
4B055CB08
4B055DB15
4B055FA14
4B055FB34
(57)【要約】
【課題】電子レンジの複数の出力に対応するカップ冷凍米飯を提供すること。
【解決手段】電子レンジ加熱用カップ冷凍米飯は、上端部が開口し、前記上端部にフランジを有するカップ本体と、前記カップ本体に設けられる冷凍米飯と、積層フィルムにより形成され、前記フランジに熱融着され、開口することで蒸通する蒸気抜き機構を有するトップシールと、を備え、前記フランジ及び前記トップシールのシール部のシール強度が、前記蒸気抜き機構の開口強度よりも大きく、前記蒸気抜き機構は、前記開口を3つ以上形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部が開口し、前記上端部にフランジを有するカップ本体と、
前記カップ本体に設けられる冷凍米飯と、
積層フィルムにより形成され、前記フランジに熱融着され、開口することで蒸通する蒸気抜き機構を有するトップシールと、
を備え、
前記フランジ及び前記トップシールのシール部のシール強度が、前記蒸気抜き機構の開口強度よりも大きく、
前記蒸気抜き機構は、前記開口を3つ以上形成する、電子レンジ加熱用カップ冷凍米飯。
【請求項2】
前記蒸気抜き機構は、内圧の上昇によって前記積層フィルムが破断することで、前記開口を形成する、請求項1に記載の電子レンジ加熱用カップ冷凍米飯。
【請求項3】
前記シール部のシール強度は、34kPa~64kPaである、請求項1に記載の電子レンジ加熱用カップ冷凍米飯。
【請求項4】
前記冷凍米飯は、電子レンジで加熱した後の蒸気量が、0.088g/ml以上である、請求項1に記載の電子レンジ加熱用カップ冷凍米飯。
【請求項5】
前記積層フィルムは、三層の積層体であって、少なくとも一部にPETで形成された層を含む、請求項1に記載の電子レンジ加熱用カップ冷凍米飯。
【請求項6】
前記シール部は、前記フランジ及び前記トップシールの接触部分の最内周部を含む一部である、
請求項1に記載の電子レンジ加熱用カップ冷凍米飯。
【請求項7】
前記冷凍米飯は、ブロッキング率が50%以下である、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の電子レンジ加熱用カップ冷凍米飯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで加熱調理される電子レンジ加熱用カップ冷凍米飯に関する。
【背景技術】
【0002】
容器入りの冷凍食品として、チャーハンやピラフ等の米飯をカップ容器で包装したカップ冷凍米飯が考えられている。カップ冷凍米飯は、例えば、カップ本体の上部開口がトップシールで密封されたカップ容器に米飯が包装される。このようなカップ冷凍米飯は、電子レンジ加熱時に発生する蒸気を逃さずに加熱できると、加熱効率(短時間加熱)や、加熱後の品質(乾燥防止)の点で有利である。しかし、密封状態で電子レンジ加熱すると、加熱による内圧上昇によって、包材が破裂し、高温の中身の飛び出しや、爆発音がする等の懸念がある。
【0003】
このため、ユーザーが電子レンジ調理前に包材を開封する必要がある。例えば、コンビニエンスストアやスーパー等の店舗で購入したカップ冷凍米飯を開封した後に、カップ冷凍米飯を電子レンジ調理する場合、開封の手間や持ち帰り時に開封口から異物が混入するリスクがある。
【0004】
また、電子レンジ調理時に発生する内圧を自動蒸通(レンジスルー)し、開封を不要とする技術は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、店舗や家庭において用いられる電子レンジは、例えば、500W、600W、800W、1500Wといったように、複数の出力を有する。このため、電子レンジの複数の出力に対応しながら、自動蒸通するのに必要な内圧(自動蒸通の開口強度)に耐えるシール強度(耐圧強度)を有し、開封性を兼ね備えた、カップ冷凍米飯が求められている。
また、一般的に、同じシール強度の場合には、円形容器は角形容器よりもシール部における破裂強さが大きい。角形容器の破裂強さを円形容器の破裂強さと同じとなるように設計した場合には、角形容器のシール強度が円形容器のシール強度よりも大きくなる。即ち、角形容器の破裂強さを円形容器の破裂強さとなるように設計した場合には、角形容器のトップシールは剥がし難くなる。
【0007】
そこで本発明は、電子レンジの複数の出力に対応するカップ冷凍米飯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る電子レンジ加熱用カップ冷凍米飯は、上端部が開口し、前記上端部にフランジを有するカップ本体と、前記カップ本体に設けられる冷凍米飯と、積層フィルムにより形成され、前記フランジに熱融着され、開口することで蒸通する蒸気抜き機構を有するトップシールと、を備え、前記フランジ及び前記トップシールのシール部のシール強度が、前記蒸気抜き機構の開口強度よりも大きく、前記蒸気抜き機構は、前記開口を3つ以上形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、電子レンジの複数の出力に対応するカップ冷凍米飯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るカップ冷凍米飯の構成を示す斜視図。
【
図2】同カップ冷凍米飯のカップ容器に設けられる配向緩和部及び蒸通部の構成の一例を示す平面図。
【
図3】同カップ冷凍米飯のカップ容器の構成の一部を
図2中III-III線断面で示す断面図。
【
図4】同カップ冷凍米飯のトップシールの層構成を示す断面図。
【
図5】同カップ冷凍米飯の一例として、電子レンジによって加熱した状態を示す斜視図。
【
図6】同カップ冷凍米飯の嵩密度の例を示す説明図。
【
図7】同カップ冷凍米飯のブロッキング率の例を示す説明図。
【
図8】同カップ冷凍米飯の空隙率の例を示す説明図。
【
図9】同カップ冷凍米飯に設けられる配向緩和部及び蒸通部の構成の一例を示す平面図。
【
図10】同カップ冷凍米飯のトップシールに設けられる配向緩和部及び蒸通部の構成の他の一例を示す平面図。
【
図11】同トップシールに設けられる配向緩和部及び蒸通部の構成の他の一例を示す平面図。
【
図12】同トップシールに設けられる配向緩和部及び蒸通部の構成の他の一例を示す平面図。
【
図13】同トップシールに設けられる配向緩和部及び蒸通部の構成の他の一例を示す平面図。
【
図14】同トップシールに設けられる配向緩和部及び蒸通部の構成の他の一例を示す平面図。
【
図15】同トップシールに設けられる配向緩和部及び蒸通部の構成の他の一例を示す平面図。
【
図16】カップ冷凍米飯の実施例及び比較例の評価試験1の結果を示す説明図。
【
図17】カップ冷凍米飯の実施例及び比較例の評価試験2の結果を示す説明図。
【
図18】カップ容器に充填した水の評価試験3の結果を示す説明図。
【
図19】カップ容器に充填した水の評価試験3の結果を示す説明図。
【
図20】カップ容器に充填した水の評価試験3における結果を示す説明図。
【
図21】カップ容器に充填した米飯の評価試験3における結果を示す説明図。
【
図22】カップ容器に充填した米飯の評価試験3における結果を示す説明図。
【
図23】カップ容器に充填した米飯の評価試験3における結果を示す説明図。
【
図24】カップ冷凍米飯の実施例及び比較例の評価試験4における条件及び結果を示す説明図。
【
図25】カップ冷凍米飯の実施例及び比較例の評価試験4における条件及び結果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
本発明の実施形態に係るトップシール11を用いたカップ容器2に冷凍米飯100が設けられたカップ冷凍米飯1を、
図1乃至
図25を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るカップ冷凍米飯1の構成を示す斜視図、
図2は、カップ容器2に設けられる一対の配向緩和部21a及び蒸気抜き機構13の構成の一例を示す平面図、
図3は、カップ容器2の構成の一部を
図2中III-III線断面で示す断面図である。
図4は、カップ容器2に用いられるトップシール11の層構成を模式的に示す断面図、
図5は、カップ容器2の使用の一例として、電子レンジによって加熱した状態を示す斜視図である。
【0012】
(カップ冷凍米飯1の構成)
カップ冷凍米飯1は、カップ容器2と、カップ容器2に包装された冷凍米飯100と、を備える。カップ冷凍米飯1は、カップ容器2の容積よりも、冷凍米飯100の充填量が小さい。即ち、カップ冷凍米飯1に充填される冷凍米飯100の量は、冷凍米飯100が充填された状態で、カップ容器2の上部に空間が生じる量に設定される。カップ容器2の上部にカップ冷凍米飯1は、米飯100がカップ容器2に収容され、冷凍されることで構成される。例えば、カップ冷凍米飯1は、少なくとも流通過程、より具体例として、少なくとも店舗において販売されているときに米飯100が冷凍される。
【0013】
(米飯100の構成)
先ず、カップ冷凍米飯1の米飯100について説明する。米飯100は、米を用いた食品である。例えば、米飯100は、炒飯、ピラフ、白飯、赤飯、酢飯、釜飯、ジャンバラヤ、パエリア、ビリヤニ、ビビンバ、カオマンガイ、ガパオライス、ガーリックライス、バターライス、チキンライス、リゾット、粥が挙げられる。なお、米飯100は、丼物としての中華丼、牛丼、豚丼、海鮮丼や、カレーライス、オムライス等であってもよい。また、米飯100は、ソースや畜肉類、卵、野菜の加工品等の別具材を含む構成であってもよい。即ち、米飯100は、これらの例に限定されず、米を主材料とする調理された食品であれば、適宜用いることができる。
【0014】
米飯100は、例えば、カップ容器2に充填されるときに凍結されているか、又は、カップ容器2に充填された後に凍結される。米飯100の凍結方法は限定されないが、IQF凍結(Individual Quick Frozen)が好ましい。
【0015】
カップ容器2に充填される米飯100の嵩密度は、0.3g/cm
3~0.7g/cm
3が好ましく、0.4g/cm
3~0.5g/cm
3がより好ましい。例えば、米飯100の例として、
図6に、A社のチャーハン、及び、味の素冷凍食品株式会社製のチャーハンの嵩密度の例を示す。
【0016】
また、凍結された米飯100のブロッキング率は、50%以下が好ましく、35%以下がより好ましい。例えば、米飯100の例として、
図7に、A社のチャーハン、及び、味の素冷凍食品株式会社製のチャーハンのブロッキング率の例を示す。なお、ここで、ブロッキング率は、目開き8.00mmの篩に150gの各社の製品(チャーハン)を載せて篩かけし、篩上に残ったチャーハンのうち、米のみの重量から求めた。即ち、篩かけ前の重量をA、篩かけ後の篩上のチャーハンの米の重量をBとしたとき、B/A×100をブロッキング率とした。
【0017】
また、カップ容器2に充填された米飯100の空隙率は、電子レンジによる加熱調理として、マイクロウェーブ(MW)調理を考慮すると、30%~70%が好ましく、40%~60%がより好ましい。なお、
図8に、A社のチャーハン、及び、味の素冷凍食品株式会社製のチャーハンの空隙率の例を示す。なお、空隙率は、カップ本体10に各社の製品(チャーハン)を充填した後に、水を入れて重量を測定することで求めた。即ち 、カップ容器2の容積をC、カップ容器2にチャーハンを充填した後の空隙に充填した水の量をDとしたとき、D/C×100を空隙率とした。
【0018】
(カップ容器2の構成)
カップ容器2は、電子レンジで米飯100を加熱可能に、米飯100を収容する電子レンジ加熱用容器である。
図1に示すように、カップ容器2は、例えば、有底筒状のカップ本体10と、カップ本体10を密封するトップシール11と、を備える。
【0019】
カップ本体10は、樹脂材料および/または紙により形成される。カップ本体10は、上端部が開口する有底筒状の胴部10aと、胴部10aの開口の外周縁に形成されるフランジ10bと、を備える。
【0020】
胴部10aは、円筒状、又は、多角形筒状等に形成される。胴部10aは、内部に所望量の米飯100を収容可能な容積に形成される。
【0021】
フランジ10bは、カップ本体10の開口形状に沿って、カップ本体10の軸線方向に対して直交方向に延びる円環状、または四角形、五角形等の多角形の平板状に形成される。好ましくは、フランジ10bは円環状に形成される。フランジ10bが円環状の場合には、内圧が上昇して、トップシール11が伸長する際、均等に伸長するので、安定して開口を3つ以上形成することができる。
【0022】
トップシール11は、PET層21を外面側に有する積層構造、好適な例として、三層構造のフィルムにより形成される。即ち、トップシール11を形成するフィルムは、三層の積層体が積層された積層フィルムである。トップシール11は、カップ本体10のフランジ10bに熱融着することで形成されたシール部30によって固定される。トップシール11は、固定されたフランジ10bから剥がすときに、摘まむことができるタブ11aを有する。
【0023】
また、トップシール11は、カップ容器2の内圧が上昇したときに剥離又は破断することで蒸気が排出される蒸気口13aが形成される3箇所以上の蒸通部13Aを有する蒸気抜き機構13を備える。
【0024】
トップシール11の外形状は、タブ11aを除き、フランジ10bの外周縁形状と同形状又はフランジ10bの外周縁形状よりも若干大きい略同形状の円形状に形成される。
図2及び
図3において、トップシール11のタブ11aを除く外周縁形状(外径)がフランジ10bの外周縁形状(外径)よりも若干大径に形成される例を示す。なお、トップシール11のタブ11aを除く外周縁形状(外径)は、フランジ10bの外周縁形状(外径)よと同じであってもよく、例えば、
図9乃至
図15において、トップシール11の外周縁形状(外径)をフランジ10bの外周縁形状(外径)と同じとした例を示す。トップシール11のタブ11aは、手指で摘まむことが可能に、外方へと突出するように、例えば、略三角形状や半円形状に形成される。
【0025】
トップシール11(トップシール11を構成するフィルム)は、外面側から、PET層21と、中間層22と、シーラント層23と、を備える三層構造を有する。また、トップシール11は、印刷層を有していても良い。この印刷層は、例えば、製品等の情報や意匠を表示するか、又は、内容物100を視認不可とするための白ベタ等のベタ印刷である。印刷層は、PET層21の外面や、PET層21及び中間層22の間に設けられる。なお、印刷層は、例えば、中間層22及びシーラント層23に設ける構成であってもよいが、トップシール11をフランジ10bから剥離するときのデラミネーションの発生を抑制するために、印刷層は、PET層21か、又は、中間層22のPET層21と対向する面に設けることが好ましい。
【0026】
また、トップシール11は、PET層21、中間層22及びシーラント層23の間に、一般的な食品用途のドライラミ用接着剤から適宜選択した接着層を有する。ただし、カップ容器2は、電子レンジ加熱に用いるため、接着層は、耐熱性を有するものが好適である。接着層の厚さは、0.5μm~5μmが性能的、経済的観点より好ましい。
【0027】
PET層21は、一部を融点近傍の所定温度以上に加熱することで形成された配向緩和部21aを含む。配向緩和部21aは、蒸気抜き機構13の一部を構成する。配向緩和部21aは、蒸気抜き機構13の構成によって数、形状及び配置が適宜設定される。
【0028】
PET層21は、結晶性延伸配向フィルムである。PET層21は、例えば、二軸延伸PETフィルムである。PET層21の厚さは、12μm以上50μm以下が好適である。PET層21は、透明蒸着PETフィルム、バリア樹脂コートPETフィルム、ナノコンポジットコートPETフィルム等のバリア性を有するPETフィルムであってもよいが、トップシール11にバリア性を付与する場合は中間層22との組み合わせにより適宜選択される。
【0029】
これは、PET層21の厚さを12μm未満とすると、カップ容器2の物理的強度が低下する虞があり、また、成膜技術的に難しく、コストアップとなるためである。また、PET層21の厚さが50μmを超えると、PET層21を含むトップシール11が伸長しにくくなるためである。但し、配向緩和部21aの形状等によって蒸気抜き機構13の蒸通部13Aが破断する構成であれば、PET層21の厚さは、限定されない。
【0030】
配向緩和部21aは、PET層21を融点近傍の所定温度以上に加熱し、配向を緩和させるか、又は、配向を消失させることで形成される。即ち、トップシール11のPET層21は、融点近傍の所定温度以上に加熱されていない配向を有する配向部21bの一部に、融点近傍の所定温度以上に加熱された配向緩和部21aを有する。なお、融点近傍の所定温度とは、PET層21によって異なるが、少なくとも、配向を緩和し、配向緩和部21a及び配向部21bの破断伸度等を所望の関係とできる温度である。
【0031】
なお、PET層21に配向緩和部21aを形成するためのPET層21の加熱方法は、レーザー光加熱、熱板加熱、インパルス加熱、近赤外線加熱等の方法を用いることが好ましい。
【0032】
例えば、レーザー光加熱、近赤外線加熱は、非接触でPET層21を加熱できる利点があるが、局所的に加熱が可能であることからレーザー光加熱が好ましい。また、使用するPET層21のレーザー光の吸収性が乏しく、配向緩和部21aの形成が困難である場合、PET層21にレーザー光の吸収性を向上させるレーザー光吸収材を事前にPET層21の材料にブレンドしても良く、あるいはPET層21にレーザー光吸収材をコートしても良い。
【0033】
また、レーザー光の種類としては、PET層21に使用される樹脂素材の多くが比較的吸収性が高い炭酸ガスレーザーを用いることが好ましい。レーザー光吸収材としてはレーザー光の種類によって適宜選択することができる。これらの加熱方法は、使用するPET層21の材質等によって適宜選択できる。
【0034】
熱板加熱やインパルス加熱は、押さえヘッド部に溶融したPET層21の樹脂やシーラント層23の樹脂の一部が付かないようテフロン(登録商標)表面処理等の処理を押えヘッド部に行うことが好ましい。例えば、熱板加熱であれば、PET層21の融点近傍の所定温度以上で温度設定され加熱された押さえヘッド(熱板)をPET層21に押し当てて溶融加熱することにより、配向緩和部21aを形成する。
【0035】
また、形成した配向緩和部21aが適正に形成されているか否かについては、形成したPET層21を検査することで判断できる。この検査方法としては、X線回折、FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)、DSC(示差走査熱量測定)等による結晶化度測定、偏光板を使用した配向ビュワー等を用いることができる。
【0036】
このようなPET層21は、例えば、配向部21bの破断伸度が200%以下に設定され、配向緩和部21aの破断伸度が300%以上に設定される。
【0037】
中間層22は、PET層21とともに、一部を融点近傍の所定温度以上に加熱することで形成された配向緩和部22aを含む。配向緩和部22aは、蒸気抜き機構13の一部を構成する。配向緩和部22aは、蒸気抜き機構13の構成によって数、形状及び配置が適宜設定される。配向緩和部22aは、PET層21の配向緩和部21aと同じ形状及び配置に形成される。
【0038】
配向緩和部22aは、中間層22を融点近傍の所定温度以上に加熱し、配向を緩和させるか、又は、配向を消失させることで形成される。即ち、トップシール11の中間層22は、融点近傍の所定温度以上に加熱されていない配向を有する配向部22bの一部に、融点近傍の所定温度以上に加熱された配向緩和部22aを有する。
【0039】
中間層22は、例えば、PET、ONY、PBTにより形成される二軸延伸フィルムである。また、中間層22は、NY/EVOH/NY、NY/MXD-6/NY等のバリア性樹脂を中間層に有する共押出二軸延伸フィルムであってもよい。また、中間層22は、透明蒸着PETフィルム、透明蒸着ONYフィルム等の二軸延伸フィルムに透明蒸着をしたバリア性を有するフィルムであってもよい。また、中間層22は、バリア樹脂コートPETフィルム、バリア樹脂コートONYフィルム、ナノコンポジットコートPETフィルム、ナノコンポジットコートONYフィルム等の二軸延伸フィルムにバリア性を有するコート剤を塗布したフィルムであってもよい。中間層22の厚さは、12μm以上50μm以下が好適である。
【0040】
シーラント層23は、例えば、EP(イージーピール)フィルムである。シーラント層23の厚さは、10μm以上100μm以下が好適である。なお、シーラント層23の厚さは、20μm以上60μm以下がより好ましい。
【0041】
これは、シーラント層23の厚さが10μm未満ではトップシール11の実用的な強度が不足する虞があり、輸送時の振動や落下の衝撃でシール部30が破断し易くなる虞があるためである。また、シーラント層23の厚さが100μmを超えると、伸長しにくくなるため、蒸気抜きに対する確実性の問題が生じる虞があるためである。シーラント層23によりフランジ10bに熱溶着されることで形成されるシール部30のシール強度は、30℃であるときに34kPa~64kPaである。
【0042】
このようなトップシール11の三層構造のフィルムの好適な例としては、PET(12)/PET(12)/EP(30)である。
【0043】
蒸気抜き機構13は、3つ以上の蒸通部13A、例えば、3つの蒸通部13Aを有する。蒸通部13Aは、例えば、対向する配向緩和部21aの間に配置される配向部21b及び対向する配向緩和部22aの間に配置される配向部22bにより形成される。即ち、3つの蒸通部13Aは、隣り合う配向緩和部21a、22aの間の3個所の配向部21b、22bにより形成される。例えば、蒸気抜き機構13の3つの蒸通部13Aは、トップシール11の一部に設けられ、直線の線状に延びる4つの配向緩和部21a、22aの端部同士が対向して配置されることで、配向緩和部21a、22aの間に存する配向部21b、22bによって構成される。
【0044】
即ち、蒸通部13Aは、PET層21の融点近傍の所定温度以上に加熱されていない配向部21b、22b、換言すると配向を有するPET層21の配向部21b及び中間層22の配向部22bを介在して配向緩和部21a、22aの一部が対向することで構成される。これら3の蒸通部13Aが、カップ容器2の内圧の上昇によって破断することで、3つの蒸気口13aを形成する。
【0045】
具体例として、
図2及び
図9乃至
図14に示すように、長手方向が一方向に沿って、短辺及び長辺の寸法が同じ配向緩和部21a、22aが該一方向に4つ並ぶことで、3つの蒸通部13Aを有する蒸気抜き機構13が形成される。また、例えば、
図15に示すように、長手方向が一方向に沿って、配向緩和部21a、22aが該一方向に4つ並ぶとともに、並び方向で両端側の二つの配向緩和部21a、22aが同じ寸法であり、中央側の二つの配向緩和部21a、22aが両端側の二つの配向緩和部21a、22aよりも短い、3つの蒸通部13Aを有する蒸気抜き機構13が形成される構成であってもよい。また、蒸気抜き機構13は、
図2、
図9及び
図10に示すように、トップシール11のシール部30に隣接するように、中央よりも外周縁側に配置される構成であってもよく、また、
図11乃至
図15に示すように、トップシール11の中央に設けられる構成であってもよい。なお、タブ11aが排出された蒸気により加熱されることや、蒸気が付着することを抑制するために、
図2、
図9及び
図10に示すように、蒸気抜き機構13は、タブ11aに隣接するトップシール11の外周縁側を避けて設けることが好ましい。
【0046】
また、蒸通部13Aを構成する隣り合う配向緩和部21a、22aは、短辺同士が間隔を空けて対向する。3つの蒸通部13Aが破断することで形成される3つの蒸気口13aの総開口面積は、例えば、最大で7mm2以上に設定される。
【0047】
具体例として、蒸通部13Aを構成する隣り合う配向緩和部21a、22aは、配向部21b、22bを挟んで所定の距離だけ間隔を開けて近接することで構成される。ここで、所定の距離とは、電子レンジ加熱時に蒸通部13Aが破断して蒸気口13aを形成できる距離であれば、適宜設定可能であるが、好ましくは5mm未満である。
【0048】
なお、配向緩和部21a、22aは、短辺の長さを0.5~10mm、長辺の長さを3~100mmの範囲とし、且つ、短辺の長さは長辺の長さよりも短い範囲に設定することが好ましく、カップ容器2のサイズやトップシール11の構成によって適宜選択される。また、二つの配向緩和部21a及び二つの配向緩和部22aの対向するそれぞれの短辺間の距離は、5mm未満に設定され、さらにいえば0.5~3.0mmに設定することがより好ましく、カップ容器2のサイズやトップシール11の構成によって適宜選択する。
【0049】
これは、配向緩和部21a、22aの寸法が当該範囲未満では伸長する範囲が狭すぎて蒸気抜きがうまく発動できない虞があり、当該範囲を超えるとトップシール11の強度の低下やガスバリア性低下の影響が大きくなる虞があるためである。また、二つの配向緩和部21a、22aの対向するそれぞれの短辺間の距離は、当該範囲未満では対向する配向緩和部21a、22aの先端同士が一体化してしまい蒸気口13aを形成できずに蒸通部13Aの破断前にシール部30が破裂してしまう虞があり、また、当該範囲を超えると二つの配向緩和部21a、22aの対向するそれぞれの短辺間の領域が伸長できなくなるため、蒸通部13Aが破断せずに、カップ容器2が蒸気口13aを形成できずに破裂してしまう虞があるためである。
【0050】
例えば、蒸通部13Aの開口強度は、シール部30のシール強度である34kPa~64kPaの範囲の設定値よりも小さく、好ましくは、シール部30のシール強度の下限である34kPaより小さく、さらに好ましくは、33kPa以下、より好ましくは31kPa以下であり、トップシール11がPET(12μm)/PET(12μm)/EP(30μm)である場合には、29kPa以下であることが最も好ましい。
【0051】
トップシール11をフランジ10bに熱融着することで形成されるシール部30は、フランジ10bに沿って環状に形成されるとともに、フランジ10bの幅、円環状のフランジ10bの場合には、フランジ10bの径方向の幅よりも小さい幅に設定される。また、シール部30は、フランジ10bの外周縁よりも内方向、より具体例としては、フランジ10bの内周縁側に設けられる。具体例として、シール部30は、フランジ10b及びトップシール11の接触部分のうち、最内周部を含む一部が熱融着されることで形成される。シール部30によるトップシール11のフランジ10bへのシール強度は、蒸通部13Aがカップ容器2の容器内圧の上昇によって破断する開口強度よりも高い。ここで、シール強度及び開口強度は、例えば、内圧が上昇してトップシール11が膨張したとき、即ち、電子レンジによって内容物が加熱した、加熱後の強度である。
【0052】
また、ここでいうシール強度及び開口強度とは、JISZ0238の『容器の破裂強さ試験』に基づき測定した値である。即ち、トップシール11でカップ本体10のフランジ10bに熱融着した試験容器にて、カップ本体10の底部から、金属製の空気針で試験容器内に空気を送入し、シール部30が破裂して空気が排出されたときの圧力値をシール強度、蒸通部13Aが開口して空気が排出された圧力値を開口強度とする。通常、シール強度>開口強度であれば、蒸通部13Aが先に開口することになり、シール強度<開口強度であれば、蒸通部13Aは開口せずに先にシール部30が破裂することになる。なお、シール強度、開口強度は、30℃に設定した恒温水槽中で測定した値である。
【0053】
(カップ冷凍米飯1の製造方法)
次に、このようなカップ冷凍米飯1の製造方法について説明する。
先ず、トップシール11を構成するフィルムの一部をPET層21及び中間層22の融点近傍の所定温度以上に加熱し、PET層21及び中間層22の一部の配向を消失させて、所定の形状の配向緩和部21a、22aを形成する。具体例として、PET層21を融点近傍の所定温度以上とする出力で炭酸ガスレーザー等のレーザー光をトップシール11の一部に照射する。
【0054】
次いで、形成する配向緩和部21a、22aの形状にレーザー光を走査する。例えば、一対の配向緩和部21a、22aを形成する場合には、一方の配向緩和部21a、22aの形状にレーザー光を走査その後、レーザー光の照射を停止し、他方の配向緩和部21a、22aを形成する位置に再びレーザー光を照射する。次いで、他方の配向緩和部21a、22aの形状にレーザー光を走査する。なお、このとき、配向緩和部21a、22aは、配向が緩和されていれば良く、配向がなくなる無配向となるまでレーザー光を照射する必要はないが、無配向としてもよい。これらの工程によって、トップシール11の一部を加熱して、配向緩和部21a、22aを形成する。これにより、一部に蒸通部13Aが形成されたトップシール11が製造される。なお、蒸通部13Aの形成は、フィルムをトップシール11の形状に切断した後であっても良く、また、フィルムをトップシール11の形状に切断する前であってもよい。
【0055】
次に、カップ本体10に所定の量の凍結した米飯100を充填する。次いで、フランジ10b上にトップシール11を配置し、トップシール11をフランジ10bにヒートシールし、シール部30を形成することで、凍結した米飯100が充填され、密封されたカップ容器2(カップ冷凍米飯1)が製造される。ヒートシールは、例えば、シール部30の形状に形成された熱融着溶の型を、1回又は2回、トップシール11に押し当てることで行われる。このとき、トップシール11の最外層が熱に強いPET層21であることから、ヒートシールによりトップシール11の最外層が破損や溶融することを防止できる。
【0056】
(カップ冷凍米飯1の使用方法)
次に、このようなカップ冷凍米飯1の使用方法として、カップ冷凍米飯1の加熱調理について説明する。
内容物が収容されたカップ容器2は電子レンジに配置され、次いで電子レンジにより内容物が加熱される。電子レンジにより内容物を加熱すると、内容物から水蒸気が生じ、内圧が上昇してカップ容器2が膨張してトップシール11が伸長する。トップシール11が伸長すると、配向緩和部21a、22aの対向する短辺間の蒸通部13Aが破断し、3つの蒸気口13aが形成される。この3つの蒸気口13aからカップ容器2の蒸気が外部に逃げて、カップ容器2の内圧が減少し、米飯100の加熱調理に好適な内圧及び蒸気量となる。
【0057】
蒸通部13Aが破断し、カップ容器2から蒸気が排出される機能について具体的に説明する。水分を含有する内容物を包装したカップ容器2を電子レンジで加熱すると、内容物から水蒸気が発生し、内圧が上昇し、結果、カップ容器2が膨張する。このときシーラント層23であるEPフィルムは通常無延伸、即ち無配向であるため、延伸フィルムよりも引張強度は低く、また破断伸度の数値も高い。一方でPET層21、中間層22は、通常引張強度が高く、また破断伸度の数値も低いため、PET層21、中間層22及びシーラント層23を貼りあわせたトップシール11は伸長しにくい。
【0058】
しかし、PET層21及び中間層22の配向緩和部21a、22aは、PET層21及び中間層22が無配向の状態となっている無配向領域であるため、PET層21及び中間層22の配向部21b、22bである配向領域と比較して、引張強度は低い。そして、内圧が上昇してカップ容器2が膨張し、トップシール11が伸長すると、配向緩和部21a、22aの領域のトップシール11が応力集中により幅方向に伸長する。
【0059】
このとき配向緩和部21a、22aの対向する短辺間に位置する配向部21b、22bの領域のトップシール11も配向緩和部21a、22aの領域の伸長に追従して伸長するが、配向緩和部21a、22aの領域の方が破断伸度の数値が高い。また、シール部30のシール強度は、蒸通部13Aの開口強度よりも高い。結果、配向緩和部21a、22a及び配向部21b、22bの破断伸度差により、トップシール11がある程度伸長したときに、配向緩和部21a、22aの対向する短辺間に位置する3箇所の配向部21b、22b(蒸通部13A)が、トップシール11の他の箇所よりも先に破断し、水蒸気を排出する3つの小孔が生じる。これら3つの小孔を蒸気口13aとしてカップ容器2から蒸気が排出される。
【0060】
カップ冷凍米飯1の内容物100を電子レンジで加熱後、ユーザーがタブ11aを摘まんでトップシール11をカップ本体10から離れる方向に移動させることで、トップシール11は、フランジ10bから剥がれる。これにより、カップ本体10から内容物100を取り出せる様になる。
【0061】
このように構成されたカップ冷凍米飯1によれば、カップ本体10及びトップシール11をヒートシール(熱融着)したときのシール強度を、蒸通部13Aの開口強度よりも高くした。これにより、電子レンジでカップ冷凍米飯1の内容物100を加熱したときに、蒸通部13Aが先に開口し、蒸通部13Aを確実に開口させることが可能となる。よって、カップ容器2は、電子レンジ加熱時に蒸通部13Aを破断させて、内部の蒸気を排出することができる。これにより、カップ容器2内の内圧がシール部30において破断し、開口する内圧よりも低い圧力となり、シール部30の破断を防止できるとともに、カップ容器2内で米飯100を好適に加熱調理できる内圧及び蒸気量を維持できるため、冷凍した米飯100を短時間で所望の温度に加熱することができる。
【0062】
また、カップ本体10及びトップシール11のシール部30がフランジ10bの外周縁側に存せず、フランジ10bの内周縁側でヒートシールされることで、フランジ10bからトップシール11が剥離するときに、フランジ10bが変形することが防止できる。よって、フランジ10bからトップシール11を剥がす方向の力が、シール部30に集中することから、シール部30のシール強度が蒸通部13Aの開口強度より高い構成であっても、トップシール11を容易に剥離させることができる。
【0063】
(評価試験)
次に、このようなカップ冷凍米飯1の評価試験について、以下、説明する。なお、評価試験は本発明の特徴を明らかにするためのものであり、本発明の範囲は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
[評価試験1]
評価試験1として、以下の実施例1のカップ冷凍米飯1、及び、比較例1乃至比較例3のカップ冷凍米飯を作成し、電子レンジにより500W、600W、1500Wの出力で、加熱し、蒸通適正、内圧の下がりやすさ及び蒸通までの時間の早さを評価した。
【0065】
なお、電子レンジによるレンジ調理時間は、500Wで3分40秒、600Wで3分10秒、1500Wで1分20秒とした。また、500W及び600Wの電子レンジとして、Panasonic製、MS-231を用い、1500Wの電子レンジとして、SANYO製MICROWAVE RANGE PROを用いた。
【0066】
実施例1として、カップ容器2のカップ本体10に米飯100として味の素冷凍食品社製の凍結チャーハンを170g充填し、蒸通部13Aを3つ設けたトップシール11をフランジ10bにヒートシールしたカップ冷凍米飯1を作成した。カップ容器2のシール部30のシール強度(耐圧強度)は、34kPa~64kPaの範囲に設定し、蒸通部13Aの開口強度を約33kPaに設定し、シール強度が開口強度よりも高いカップ冷凍米飯1を作成した。
【0067】
また、比較例1として、カップ容器2のカップ本体10に米飯100として味の素冷凍食品社製の凍結チャーハンを170g充填し、蒸通部13Aを1つ設けたトップシール11をフランジ10bにヒートシールしたカップ冷凍米飯を作成した。カップ容器2のシール部30のシール強度(耐圧強度)は、29kPa~33kPaの範囲に設定し、蒸通部13Aの開口強度を25kPaに設定し、シール強度が開口強度よりも高いカップ冷凍米飯を作成した。
【0068】
また、比較例2として、カップ容器2のカップ本体10に米飯100として凍結したチャーハンを170g充填し、蒸通部13Aを2つ設けたトップシール11をフランジ10bにヒートシールしたカップ冷凍米飯を作成した。カップ容器2のシール部30のシール強度(耐圧強度)は、30kPa~63kPaの範囲に設定し、蒸通部13Aの開口強度を約35kPaに設定し、シール強度が開口強度よりも低いカップ冷凍米飯、及び、シール強度が開口強度よりも高いカップ冷凍米飯を作成した。
【0069】
比較例3として、カップ容器2のカップ本体10に米飯100として凍結したチャーハンを170g充填し、蒸通部13Aを2つ設けたトップシール11をフランジ10bにヒートシールしたカップ冷凍米飯1を作成した。カップ容器2のシール部30のシール強度(耐圧強度)は、26.3kPa~44.7kPaの範囲に設定し、蒸通部13Aの開口強度を約25.0kPa~27.3kPaに設定し、いずれもシール強度が開口強度よりも高いカップ冷凍米飯を作成した。
【0070】
[評価試験1の結果]
評価試験1の結果を
図16に示す。
図16に示すように、実施例1のカップ冷凍米飯1は、500W、600W、1500Wのいずれの出力で加熱した場合であっても、蒸通部13Aにおいて蒸気口13aが形成され、そして、シール部30において開口することがなかった。また、内圧の下がりやすさ及び蒸通までの時間の早さも好適であった。また、500Wで加熱調理したカップ冷凍米飯1のN数(サンプル数)は253個、600Wで加熱調理したカップ冷凍米飯1のN数は209個、1500Wで加熱調理したカップ冷凍米飯1のN数は154個であったが、全てにおいて、蒸通部13Aにおいて蒸気口13aが形成され、そして、シール部30(フランジ10b)において開口することがなく、正常率は100%であった。このため、実施例1のカップ冷凍米飯1は、性能としていずれの出力においても合格であった。
【0071】
これに対し、比較例1のカップ冷凍米飯では、蒸通部13Aにおいて蒸気口13aが開口する蒸通後に、シール部30(フランジ10b)において開口する、蒸通後フランジ抜けが500W、600W、1500Wのいずれでも生じ、性能として不合格であった。
【0072】
また、比較例2のカップ冷凍米飯では、蒸通部13Aにおいて蒸気口13aが開口する蒸通前に、シール部30(フランジ10b)において開口する、蒸通前フランジ抜けが500W、600W、1500Wのいずれでも生じ、性能として不合格であった。
【0073】
また、比較例3のカップ冷凍米飯では、蒸通部13Aにおいて蒸気口13aが開口する蒸通後に、シール部30(フランジ10b)において開口する、蒸通後フランジ抜けが500W、600Wにおいては発生しなかったが、1500Wにおいて一部発生した。このため、比較例3のカップ冷凍米飯は、500W及び600Wでは、性能として合格であるが、1500Wは不合格であることから、総合的な性能としては、不合格である。
【0074】
このように、評価試験1の結果から、カップ冷凍米飯1は、蒸通部13Aを3つ有し、シール部30の耐圧強度を開口強度よりも大きくしたトップシール11とすることで、電子レンジの各出力の加熱調理でも、シール部30(フランジ10b)において開口する所謂フランジ抜けが生じないことが明らかとなった。これは、蒸通部13Aを3つ設けることで、好適に内圧の低下が可能であるとともに、蒸通部13Aの開口強度を34kPa未満とすることで、蒸通までの時間を好適とすることができる為である。
【0075】
[評価試験2]
評価試験2として、内容物として米飯100及び米飯以外の食品をカップ容器2に充填して500Wで加熱したときの温度ムラを評価した。具体的には、以下の実施例2のカップ冷凍米飯1、及び、比較例4及び比較例5のカップ冷凍食品を作成し、電子レンジにより500Wの出力で加熱し、温度ムラを評価した。電子レンジとして、TOSHIBA製ER-VD100を用いた。また、温度は、トップシール11の直下1cmの位置1及びカップ本体10の底から1cmの位置2の2個所にて温度を測定した。
【0076】
実施例2として、カップ容器2のカップ本体10に米飯100として凍結したチャーハン(味の素冷凍食品株式会社製の「ザ☆チャーハン」)を170g充填し、蒸通部13Aを3つ設けたトップシール11をフランジ10bにヒートシールしたカップ冷凍米飯1を作成した。カップ容器2のシール部30のシール強度(耐圧強度)は、34kPa~64kPaの範囲に設定し、蒸通部13Aの開口強度を約33kPaに設定し、シール強度が開口強度よりも高いカップ冷凍米飯1を作成した。
【0077】
比較例4として、カップ容器2のカップ本体10に内容物の冷凍食品として凍結した中華丼の具(味の素冷凍食品株式会社製の「野菜たっぷり中華丼の具」)(米飯を含まず)を170g充填し、蒸通部13Aを3つ設けたトップシール11をフランジ10bにヒートシールしたカップ冷凍食品を作成した。カップ容器2のシール部30のシール強度(耐圧強度)は、34kPa~64kPaの範囲に設定し、蒸通部13Aの開口強度を約33kPaに設定し、シール強度が開口強度よりも高いカップ冷凍食品を作成した。
【0078】
比較例5として、カップ容器2のカップ本体10に内容物の冷凍食品として凍結した唐揚げ(味の素冷凍食品株式会社製の「やわらか若鶏から揚げ」)を120g充填し、蒸通部13Aを3つ設けたトップシール11をフランジ10bにヒートシールしたカップ冷凍食品を作成した。カップ容器2のシール部30のシール強度(耐圧強度)は、34kPa~64kPaの範囲に設定し、蒸通部13Aの開口強度を約33kPaに設定し、シール強度が開口強度よりも高いカップ冷凍食品を作成した。
【0079】
[評価試験2の結果]
評価試験2の結果を
図17に示す。
図17に示すように、実施例2のカップ冷凍米飯1は、500Wで加熱調理してから2分40秒で、位置1で40℃、位置2で80℃まで上昇し、3分40秒で、位置1で90℃、位置2で90℃まで上昇し、好適に米飯100であるチャーハンを加熱することができた。
【0080】
これに対し、比較例4のカップ冷凍食品は、500Wで加熱調理してから3分40秒で、位置1で0℃、位置2で80℃まで上昇し、4分00秒で、位置1で-2℃、位置2で86℃であり、カップ容器2を用いた加熱調理でも、冷凍食品であり、且つ、米飯100でない中華丼の具は、好適に加熱することができなかった。
【0081】
また、比較例5のカップ冷凍食品は、500Wで加熱調理してから2分20秒で、位置1で2℃、位置2で70℃であり、比較例4と同様に、カップ容器2を用いた加熱調理でも、冷凍食品であり、且つ、米飯100でない唐揚げは、好適に加熱することができなかった。
【0082】
これらの評価試験2の結果からも明らかなように、カップ容器2に米飯を充填したカップ冷凍米飯1は、好適に加熱することができることが明らかとなった。これに対し、冷凍食品として米飯以外の食品を加熱する場合には、温度ムラが生じ、加熱調理後でも、冷たい部分が残ることから、カップ容器2に充填する冷凍食品には適さないことが分かった。
【0083】
[評価試験3]
評価試験3として、内容物として米飯100及び水をカップ容器2に充填して500W、1500Wで加熱したときの蒸気量、温度(芯温)を測定し、米飯100及び水による、調理時間と蒸気量の推移を比較した。
【0084】
具体的には、以下の実施例3のカップ冷凍米飯1、及び、比較例6のカップ入り水を作成し、実施例3及び比較例6をそれぞれ電子レンジにより500Wで加熱し、30秒毎に蒸気量及び温度を検出するとともに、1500Wで加熱し、10秒毎に蒸気量及び温度を検出した。なお、本評価試験3においては、蒸気量及び温度の推移を比較するため、カップ本体10に-13℃の米飯100及び水を充填し、トップシール11は設けない構成とした。
【0085】
また、実施例3では、米飯100としてチャーハンを170g、カップ容器2に充填し、比較例6では、水道水100gをカップ容器2に充填し、蒸気量及び温度を測定した。
【0086】
[評価試験3の結果]
評価試験3の結果を
図18乃至
図23に示す。
図18乃至
図20に示すように、比較例6の水の場合、500Wで120秒前あたりから沸騰が開始し、それに伴って、蒸気量が増加していき、1500Wで40秒前あたりから沸騰が開始し、それに伴って、蒸気量が増加していった。
【0087】
これに対し、
図21乃至
図23に示すように、実施例3のチャーハンの場合、蒸気の発生が500W以降、1500Wで30秒を超えてからとなり、水に比べて、蒸気の発生が遅いことが明らかとなった。
【0088】
また、カップ容器2の容積、及び、トップシール11の蒸通部13Aの蒸通を考慮すると、蒸気量が3.4g以上発生しないと、内圧が上昇せずに、蒸気口13aが形成されないものと推定される。
【0089】
[評価試験4]
評価試験4として、以下の実施例4のカップ冷凍米飯1、及び、比較例7乃至比較例11のカップ冷凍米飯及びカップに水を入れたカップ入り水を作成し、電子レンジにより1600Wの出力で、2分加熱し、加熱後の蒸気口13aの面積をハイロックス社製のデジタルマイクロスコープで計測した。なお、電子レンジによる加熱時間は、カップ冷凍米飯1を製品としたときに、1500Wの指定時間1分20秒に対して安全率1.5である。また、実施例4及び比較例7乃至比較例13のトップシールは、PET(12)/PET(12)/EP(30)の三層構成のレンジスルーフィルムを、カップ本体10のフランジ10bに180℃で0.2MPaの圧力で1秒加熱してシール部30を形成した。
【0090】
実施例4は、トップシール11の蒸通部13A(蒸気口13a)を1つとし、カップ本体10に内容物(米飯100)としてエビピラフを170g充填した。
【0091】
比較例7は、トップシール11の蒸通部13A(蒸気口13a)を1つとし、カップ本体10に内容物(米飯100)としてエビピラフ又はチャーハンを170g充填した。
【0092】
比較例8は、トップシール11の蒸通部13A(蒸気口13a)を1つとし、カップ本体10に内容物として水道水を170g充填した。
【0093】
比較例9は、トップシール11の蒸通部13A(蒸気口13a)を2つとし、カップ本体10に内容物(米飯100)としてエビピラフを170g充填した。
【0094】
比較例10は、トップシール11の蒸通部13A(蒸気口13a)を2つとし、カップ本体10に内容物として水道水を170g充填した。
【0095】
比較例11は、トップシール11の蒸通部13A(蒸気口13a)を3つとし、カップ本体10に内容物として水道水を170g充填した。即ち、比較例11は、実施例4とトップシール11の構成は同じとし、内容物を米飯ではなく、水道水とした。
【0096】
[評価試験4の結果]
評価試験4の結果を
図24及び
図25に示す。
図24及び
図25に示すように、比較例7及び比較例8では、蒸気口13aを1つとした場合には、蒸気口13aの開口後にフランジ抜けが生じたものと、フランジ抜けが生じなかったものが有った。比較例9、比較例10、比較例11及び実施例4においては、蒸気口13aの開口後にフランジ抜けが生じなかった。
【0097】
比較例7及び比較例8のうち、蒸気口13aの開口後にフランジ抜けが生じた蒸気口13aの開口面積を測定したところ、蒸気口13aの開口面積は、6.38mm2以下であった。
【0098】
一方で、比較例7~比較例11及び実施例4のように、蒸気口13aの開口後フランジ抜けが生じなかった蒸気口13aの開口面積(蒸気口13aが2又は3の場合には、総開口面積)は、6.75mm2以上であった。
【0099】
このことからも分かるように、開口面積(総開口面積)が6.75mm2以上、好ましくは7.00mm2以上、より好ましくは8.00mm2以上であれば、蒸気口13aの開口後にフランジ抜けが生じないことが明らかとなった。しかしながら、蒸気口13aが1つであると、開口するまでに時間が掛かり、また、開口前のフランジ抜けの可能性が高くなることから、蒸気口13aの数を増やすこと、具体的には蒸気口13aを3以上とすることが好ましい。即ち、総開口面積が同じでも、蒸気口13aの数が異なると、1箇所辺りの開口面積が異なる。ここで、1箇所の開口面積が小さいと、開口までの時間が低減することから、本実施形態のように、蒸気口13aは3以上とすることが好ましい。
【0100】
これらの評価試験からも分かるように、実施形態に係るカップ冷凍米飯1によれば、蒸通部13A(蒸気口13a)を3以上有するカップ容器2に米飯100を充填し、トップシール11を、シール部30のシール強度を蒸通部13Aの開口強度よりも高くする。また、カップ冷凍米飯1は、トップシール11に開口に要する開口圧力が小さい蒸通部13Aの数を3以上設け、電子レンジで米飯100を加熱調理中にシール部30のシール強度を、3以上の蒸通部13Aから蒸通したときの内圧に耐えられる強度に設定する。これにより、カップ冷凍米飯1は、蒸通後に内圧を下げ、シール部30へ負荷をかけづらくすることが可能となり、電子レンジで異なる出力で加熱調理しても、シール部30からの開口を防止し、蒸通部13Aを開口させることが可能となる。
【0101】
即ち、
図21乃至
図23に示すように、電子レンジの出力が増加すると、所定の蒸気量が米飯100から発生するまでの時間が短くなる。しかしながら、実施形態のように、シール部30のシール強度及び蒸通部13Aの数、面積及び開口強度を、上述のように設定することで、迅速な蒸通部13Aの開口、及び、外部に排出される蒸気量を好適とし、内圧を所定の圧力で維持しつつ、シール部30での開口を防止できる。また、電子レンジによる加熱調理時において、内圧を好適に調整することで、米飯100の加熱時間を短くし、温度ムラを防止することもできる。
【0102】
上述したように、実施形態に係るカップ冷凍米飯1によれば、電子レンジの複数の出力に対応することが可能となる。
【0103】
即ち、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0104】
1…カップ冷凍米飯、2…カップ容器、10…カップ本体、10a…胴部、10b…フランジ、11…トップシール、11a…タブ、13…蒸気抜き機構、13A…蒸通部、13a…蒸気口、21…PET層、21a、22a…配向緩和部、21b、22b…配向部、22…中間層、23…シーラント層、30…シール部、100…内容物。