(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031977
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】圧迫衣服の製造方法および製造システム並びに製造された衣服
(51)【国際特許分類】
A41B 11/14 20060101AFI20240229BHJP
A41H 43/00 20060101ALI20240229BHJP
A41H 43/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A41B11/14 F
A41B11/14 A
A41H43/00 A
A41H43/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023137555
(22)【出願日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】22192469.9
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファティー コヌコウルー
(72)【発明者】
【氏名】セルカン メルツ
(72)【発明者】
【氏名】トゥンチャイ イイドアン
(72)【発明者】
【氏名】アガミレズ ハーミトべリィ
(72)【発明者】
【氏名】バルシュ エルドアン オッデン
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018HA00
3B018HA01
3B018HA05
3B018HB01
3B018JA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】費用効果の高い、異なるサイズの圧迫衣服を提供するための方法を提供する。
【解決手段】伸縮性生地から使用者用の圧迫衣服を製造する方法は、ベース衣服を提供する工程と、衣服の異なる部分を独立して加熱する複数の独立した加熱手段を有する支持マネキン1に衣服を装着する工程と、衣服によってマネキンの各部分に加えられる圧迫を測定する工程と、マネキン上の衣服の圧迫が所望の値に達するまで衣服の選択された部分を加熱する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者のための圧迫衣服(200)を製造する方法であって、前記衣服は、寸法の異なる複数の円周長を、異なる軸方向寸法位置(B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7,B8,B9)において有しており、前記衣服が着用されたときに、前記使用者の対応する位置に圧迫を加えるようになっており、前記方法は以下の工程:
A. 前記寸法の異なる軸方向寸法位置(B1~B9)において、前記圧迫衣服(200)により前記使用者(400)に加える複数の所望の圧迫を設定する工程;
B. 弾性繊維を含み、ASTM D3107により測定した場合に少なくとも15%の伸縮性を有する織物により、ベース衣服(20)を作製する工程;
C. 複数のヒーター(41a,41b)が設けられた支持マネキン(1)であって、前記複数のヒーター(41a,41b)が、前記支持マネキンの異なる軸方向位置に配置されて、互いに独立に操作可能である支持マネキン(1)に、前記ベース衣服(20)を着用させる工程;
D. 前記衣服の前記異なる軸方向位置(B1~B9)に対応する、前記支持マネキンの前記異なる軸方向位置(A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9)において、前記ベース衣服(20)により前記支持マネキン(1)に及す実際の圧迫を決定する工程;
E. 前記使用者が着用したときに、前記圧迫衣服(200)が、前記異なる軸方向寸法位置(B1~B9)において、前記所望の圧迫を及ぼすように、前記支持マネキン上の前記異なる軸方向位置(A1~A9)における、前記支持マネキン(1)上の前記衣服の異なる軸方向位置(B1~B9)において、前記ベース衣服(20)により加えられる目標圧迫を決定する工程;
F. 前記ベース衣服(20)により及ぼされる前記実際の圧迫が低下して、前記目標圧迫に到達するように、前記複数のヒーター(41a,41b)の少なくともいくつかを操作して、前記支持マネキン上の前記衣服の異なる軸方向寸法位置(B1~B9)において、前記ベース衣服(20)を加熱する工程;および
G. 前記ベース衣服(20)を冷却する工程
を有し、
前記工程Cにおいて、前記支持マネキン上の軸方向位置(A1~A9)で、前記衣服により非ヌル圧迫が前記支持マネキン(1)に与えられるように、前記工程Bにおいて、前記衣服は製造されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記工程Dにおいて、前記実際の圧迫は、前記支持マネキン(1)の前記異なる軸方向位置(A1~A9)で、複数の支持マネキン分画部分(4,5,6,7,8,9,10,11,12)に配置されたセンサー(13)により測定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センサー(13)は、前記工程F中に、前記実際の圧迫を測定することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程Fにおける前記複数のヒーター(41a,41b)の温度は、100℃~130℃の範囲の温度に到達することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記異なるヒーター(41a,41b)の作動時間は、前記該当する支持マネキン上の軸方向位置(A1~A9)で測定される前記実際の圧迫と前記目標圧迫の差の関数として計算されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のヒーター(41a,41b)の操作は、前記複数のヒーター(41a,41b)の加熱処理が実質的に同時に終了するように開始されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記工程Gの冷却は、前記支持マネキン(1)内での冷却剤(103)の循環、前記ベース衣服(20)に対するガスブロワー(102)による気体、好ましくは空気の送風、および少なくとも1つのペルチェ装置のうちの1種以上により行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程Gの冷却は、前記支持マネキン上の少なくとも1つの軸方向位置(A1~A9)において、30秒間未満で少なくとも100℃の前記支持マネキン(1)の温度低下を提供することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記工程Gの少なくとも一部、好ましくは、前記工程G全体は、前記ベース衣服(20)が前記支持マネキン(1)に着用されたままの状態で実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法における少なくとも工程C~Gを実行するシステムであって、
a. ベース衣服(20)を着用させる支持マネキン(1)であって、前記支持マネキン上の異なる軸方向位置(A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9)に設けられ、好ましくは互いに分離した複数の支持マネキン分画部分(4,5,6,7,8,9,10,11,12)と、前記支持マネキン(1)に着用させた前記ベース衣服(20)を加熱するように構成され、独立して操作可能な複数のヒーター(41a,41b)とが設けられた支持マネキン(1);
b. 前記支持マネキン(1)に着用させた前記ベース衣服(20)を冷却するように構成された冷却システム(101);および
c. 前記支持マネキン(1)に着用させた前記ベース衣服(20)により圧迫されたときに、前記支持マネキン分画部分(4,5,6,7,8,9,10,11,12)の前記支持マネキン上の前記異なる軸方向位置(A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9)において、圧迫を測定するように構成された複数のセンサー(13)
を有することを特徴とするシステム。
【請求項11】
前記センサー(13)から圧迫データを受信し、前記圧迫データの関数として前記支持マネキン分画部分(4~12)を必要な時間加熱するために前記複数のヒーターを独立して作動させるように構成されたplc制御ユニット(104)をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
請求項10に記載のシステムを用いた請求項1~9のいずれか1項に記載の方法により得られる衣服(200)であって、前記衣服の異なる軸方向寸法位置において、前記衣服の織物は異なる弾性特性を有し、好ましくは、前記特性は、ASTM D3107に従って、少なくとも緯方向において測定された伸縮性、伸長性、および回復性のうちの少なくとも1つから選択されるか、または少なくとも緯方向における引張強度および結晶化度から選択されることを特徴とする衣服。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムを用いた請求項1~9のいずれか1項に記載の方法により得られる衣服(200)であって、前記衣服の異なる軸方向寸法位置において、前記衣服の織物は異なる弾性特性を有し、好ましくは、前記特性は、ASTM D3107に従って、少なくとも緯方向において測定された伸縮性、伸長性、および回復性のうちの少なくとも1つから選択されるか、または少なくとも緯方向における引張強度および結晶化度から選択されることを特徴とする衣服。
【請求項14】
衣服の弾性特性を修正する方法であって、以下の工程:
a. 弾性繊維を含み、少なくとも15%の伸縮性を有する生地を用いてベース衣服(20)を作製する工程;
b. 前記ベース衣服(20)を支持マネキン(1)に着用させる工程であって、前記支持マネキン(1)は、前記支持マネキン上の複数の軸方向位置(A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9)に、複数の支持マネキン分画部分(4,5,6,7,8,9,10,11,12)を有し、前記支持マネキン上の軸方向位置(A1~A9)で前記支持マネキン分画部分(4~12)を独立して加熱するために互いに独立して操作可能な複数のヒーター(41a,41b)が設けられており、前記衣服は、前記支持マネキン分画部分(4~12)に、前記衣服によって非ヌル圧迫が加えられるように製造されている工程;
c. 前記ベース衣服(20)によって及ぼされる前記非ヌル圧迫が低下するように、前記複数のヒーター(41a,41b)を作動させて、前記支持マネキン分画部分(4~12)の少なくとも一部で前記ベース衣服(20)を加熱する工程;および
d. 必要な圧迫に達したら、前記ベース衣服(20)を冷却する工程
を有する方法。
【請求項15】
前記支持マネキン(1)の複数のセンサー(13)により前記非ヌル圧迫を測定することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記異なるヒーター(41a,41b)の作動時間は、前記異なるヒーター(41a,41b)間で異なり、前記支持マネキン上の前記異なる軸方向位置(A1~A9)で前記衣服を異なるように処理することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか1項に記載の方法により、織物から得られる衣服(200)であって、前記衣服の異なる軸方向寸法位置で採取された前記衣服の生地の試料は、異なる弾性特性を有し、好ましくは、前記特性は、少なくとも緯方向において、ASTM D3107に従って測定される伸縮性、伸長性、および回復性から選択される少なくとも1つであることを特徴とする衣服。
【請求項18】
前記衣服の異なる軸方向位置で、2つの部分XおよびYから採取された2つの生地試料は、ASTM D3107に従って測定された各々の伸縮値SXおよびSYを有し、前記伸縮値の比((SX-SY)/SX)×100は4%~50%の範囲であることを特徴とする請求項12に記載の衣服。
【請求項19】
前記衣服の異なる軸方向位置で、2つの部分XおよびYから採取された2つの生地試料は、ASTM D3107に従って測定された各々の伸縮値SXおよびSYを有し、前記伸縮値の比((SX-SY)/SX)×100は4%~50%の範囲であることを特徴とする請求項13に記載の衣服。
【請求項20】
前記衣服の異なる軸方向位置で、2つの部分XおよびYから採取された2つの生地試料は、ASTM D3107に従って測定された各々の伸縮値SXおよびSYを有し、前記伸縮値の比((SX-SY)/SX)×100は4%~50%の範囲であることを特徴とする請求項17に記載の衣服。
【請求項21】
前記衣服の異なる軸方向位置で2つの部分XおよびYから採取された2つの生地試料は、引張強度および結晶化度から選択された少なくとも1つの異なる値を有することを特徴とする請求項12に記載の衣服。
【請求項22】
前記衣服の異なる軸方向位置で2つの部分XおよびYから採取された2つの生地試料は、引張強度および結晶化度から選択された少なくとも1つの異なる値を有することを特徴とする請求項13に記載の衣服。
【請求項23】
前記衣服の異なる軸方向位置で2つの部分XおよびYから採取された2つの生地試料は、引張強度および結晶化度から選択された少なくとも1つの異なる値を有することを特徴とする請求項17に記載の衣服。
【請求項24】
前記衣服の異なる軸方向位置で2つの部分XおよびYから採取された2つの生地試料は、引張強度および結晶化度から選択された少なくとも1つの異なる値を有することを特徴とする請求項18に記載の衣服。
【請求項25】
前記衣服の異なる軸方向位置で2つの部分XおよびYから採取された2つの生地試料は、引張強度および結晶化度から選択された少なくとも1つの異なる値を有することを特徴とする請求項19に記載の衣服。
【請求項26】
前記衣服の異なる軸方向位置で2つの部分XおよびYから採取された2つの生地試料は、引張強度および結晶化度から選択された少なくとも1つの異なる値を有することを特徴とする請求項20に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧迫衣服の製造方法および製造システム並びに製造された衣服に関する。特に、本発明は、形状に適合する伸縮可能な圧迫衣服、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維産業において、日常生活やスポーツ、フィットネス、トレーニングなどにおいてさまざまなシーンで着用するウェアのニーズに応えるため、複数のサイズで衣服を製造するのが一般的である。複数のサイズの衣服を製造することは、コストのかかる作業である。
【0003】
最近の着用者は、自分の体型に適合し、自分のニーズや行う活動に応じて快適な着用感を提供できる衣服への関心を高めている。
【0004】
今日、伸縮可能な生地で形成された衣服は、体にフィットする衣服の業界で非常に人気がある。伸縮可能な衣料は通常、高い伸長性と弾性挙動を有する弾性繊維で構成され、伸長後は実質的に初期寸法に戻る。さらに、コンプレッションスポーツウェアは、着用者のスポーツの練習を助ける機能を有しているため、大きな関心を集めている。
【0005】
その結果、この種の衣服について、衣服が常に着用者の身体に正確にフィットすべきというさらなる問題が生じている。通常、着用者の身体に正確にフィットする衣服は、着用者の身体に目標(非ヌル)の着圧を与える。この点に関して、衣服の一部は着用者の身体に正確にフィットする(すなわち、身体に予め決められた目標圧迫を与える)一方で、同じ衣服の別の部分は、着用者の身体に正しくフィットしない、すなわち、予め決められた目標圧迫とは異なる圧迫を着用者の身体に与え、すなわち、少な過ぎるか多過ぎる圧迫を与え、場合によっては全く圧迫を与えない、ということが起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、上述の課題を解決することである。
【0007】
特に、本発明の目的は、先行技術より簡単で費用効果の高い、異なるサイズの圧迫衣服を提供するための方法、およびそのような方法を実施するための関連システムを提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、最終的な着用者の身体の異なる複数の位置に、それぞれ目標圧迫を提供する圧迫衣服を容易に製造するための方法および関連システムを提供することである。
【0009】
これらの問題および他の問題は、添付の請求項のうちの一つまたは複数に記載の本発明によって解決される。
【0010】
特に、本発明の対象は、独立請求項に記載の圧迫衣服を製造するための方法および関連システムであり、好ましい実施形態は従属請求項に記載されている。上述の方法により得られる衣服もまた、本発明の対象である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、弾性布から使用者用の圧迫衣服を製造する方法に関し、この方法は、ベース衣服を提供する工程と、複数の独立した圧力センサー、およびその衣服の異なる部分を独立して加熱する独立した加熱手段を含む複数の部分を有する支持マネキンに前記衣服を装着する工程と、前記衣服によってマネキン部分に加えられる圧迫を測定する工程と、マネキン上の前記衣服の圧迫が所望の値に達するまで、マネキンの選択された部分を加熱して前記衣服の対応する部分を加熱する工程とを含む。
【0012】
特に、本発明の一態様は、使用者のための圧迫衣服を製造する方法に関し、前記衣服は、異なる複数の円周長を、異なる軸方向寸法位置において有しており、前記衣服が着用されたときに、前記使用者の対応する位置に圧迫を加えるようになっており、前記方法は以下の工程:
A. 前記寸法の異なる軸方向寸法位置において、前記圧迫衣服により前記使用者に加える複数の所望の圧迫を設定する工程;
B. 弾性繊維を含み、少なくとも15%の伸縮性を有する織物により、ベース衣服を作製する工程;
C. 複数のヒーターが設けられた支持体であって、前記複数のヒーターが、前記支持体の異なる軸方向位置に配置されて、互いに独立に操作可能である支持体に、前記ベース衣服を着用させる工程;
D. 前記使用者の位置に対応する、前記支持体の異なる軸方向位置において、前記ベース衣服により前記支持体に及す実際の圧迫を決定する工程;
E. 前記使用者に着用された前記圧迫衣服が、前記異なる軸方向寸法位置において、所望の圧迫を及ぼすように、前記衣服の異なる軸方向寸法位置において、前記支持体上の前記ベース衣服により加えられる目標圧迫を決定する工程;
F. 前記ベース衣服により及ぼされる前記実際の圧迫が低下して、前記目標圧迫に到達するように、前記複数のヒーターの少なくともいくつかを操作して、前記衣服の異なる軸方向寸法位置において、前記ベース衣服を加熱する工程;および
G. 前記ベース衣服を冷却する工程
を有する。
【0013】
工程Eにおける異なる軸方向位置で、工程Cにおいて、前記衣服により非ヌル圧迫が前記支持体に与えられるように、工程Bにおいて前記衣服は製造される。
【0014】
説明したように、工程Bでは、前記ベース衣服の織物は弾性、すなわち少なくとも15%の伸縮性を有する。前記ベース衣服は、ASTM D3107(荷重3.0ポンド、試験時間30分)で試験したときに、少なくとも緯方向または経方向の一方において、少なくとも15%の弾性又は伸長性を有する織物からなる。弾性、すなわち伸縮性は、前記使用者に必要な圧迫を与えるように、前記衣服の織物の少なくとも緯方向にあることが好ましい。
【0015】
圧迫を測定するために使用され、前記衣服が装着される支持体は、好ましくは、本発明の方法に従って処理される圧迫衣服のタイプ、例えば一対のズボンに適したマネキンの形態である。前記支持体またはマネキンは、典型的な使用者/着用者の輪郭に従って寸法および形状が決められている。最終的な圧迫衣服は、(例えばサイズ表、データバンクなどから知られるように)予め定義された標準的な着用者のサイズプロファイルに従って、または使用者の修正された輪郭の測定値に従って製造することができることに留意されたい。
【0016】
圧迫衣服用のサイズ表は、この分野における一般的な知識の一部であり、例えばヒューマンソリューションズ(Human Solutions)社やアルバノン(Alvanon)社から市販されている。iSizeはヒューマンソリューションズ社によって開発された、いくつかの国に身体寸法とサイズ表へのアクセスを提供するポータルサイトであり、また身体寸法データベースである。同様に、アルバノン社はサイズ表(サイズチャート)を提供し、着用者の体のサイズを性別や国別に特定している。例えば、典型的には、サイズ表は、着用者(すなわち使用者)の脚に沿って、少なくとも7つの異なる軸方向位置で測定された円周長の測定値を提供する。
【0017】
典型的には、前記支持体として機能するマネキンは、前記使用者の輪郭を反映するように作られ、前記マネキンの複数の独立した部分に複数の圧力(圧迫)センサーを備えている。この配置により、選択した軸方向位置で圧迫力を測定することが可能になる。有利には、前記支持マネキンの前記選択された位置の形状および寸法、特に円周長は、上述のチャートサイズから得られる。
【0018】
本発明により、上述の方法で処理した後、多くの異なる最終寸法および/または異なるフィット感(「スキンフィット」、「スリムフィット」、「キャロットフィット」など)を提供できる、同じサイズのベース衣服を製造することが可能である。その結果、衣服の初期生産はより簡単でコスト効率が良く、さらに最終的な圧迫衣服の高いカスタマイズ性を可能にする。また、本発明により、着用者の身体の部位に所望の圧迫を与える圧迫衣服を製造することが可能である。これは、同じ寸法と弾性(伸縮)特性を持ち、同じ支持体(支持マネキン)を使用するベース衣服から出発して、異なる体格、すなわち異なるユーザープロファイルを持つ着用者に対して行うことができる。実際、本発明により、前記ベース衣服の織物の弾性特性を修正することができ、着用者に所望の圧迫プロファイル(および着用感)を提供する圧迫衣服を製造することができる。
【0019】
可能な態様によれば、前記支持体の異なる軸方向位置において、前記ベース衣服が前記支持体、すなわち前記マネキンに及ぼす実際の圧迫は、前記支持体のセンサーにより測定される。
【0020】
可能な態様によれば、前記センサーは、少なくとも前記ベース衣服を加熱する工程の間に、前記支持体上の異なる軸方向位置において、実際の圧迫を測定する。前記ベース衣服により及ぼされる実際の圧迫は、加熱工程の作用により、目標圧迫に達するまで減少する。典型的には、所定の軸方向位置において、該当するセンサーによって測定された、前記ベース衣服によって及ぼされる実際の圧迫と、目標圧迫との差が大きいほど、前記ベース衣服を加熱する時間が長くなる。
【0021】
可能な態様によれば、前記支持体上の異なる軸方向位置で前記ベース衣服を加熱するために使用される前記ヒーターの温度は、100℃を超える温度、好ましくは100℃~130℃の範囲の温度に達することがある。この加熱処理により、糸の弾性繊維の特性が変化し、その結果、前記ベース衣服の弾性特性が変化し、前記ベース衣服の繊維に一種のヒートセットが施される。
【0022】
可能な態様によれば、前記異なるヒーターの作動時間は、該当する支持体上の軸方向位置で測定された実際の圧迫と目標圧迫の差の関数として計算される。
【0023】
可能な態様によれば、前記複数のヒーターの操作は、加熱処理が実質的に同時に終了するように開始される。このおかげで、前記支持体の異なる軸方向位置にある加熱部分において、前記衣服の冷却を同時に開始することができる。
【0024】
可能な態様によれば、前記ベース衣服の冷却は、前記支持体内での冷却剤の循環、ベース衣服に対する空気などの冷却ガスの吹き付け、およびペルチェ装置の少なくとも1つを介して行われる。
【0025】
可能な態様によれば、前記ベース衣服の冷却は、前記支持体上の軸方向位置で少なくとも100℃の支持体の温度低下を提供する。好ましくは、上述の温度低下は30秒以内に起こる。
【0026】
この迅速な冷却工程により、前記衣服の特性(特に弾性特性)の変化をよりよく修正し、最終的な着用者に正確にフィットさせることができる。
【0027】
可能な態様によれば、前記ベース衣服の冷却の少なくとも一部は、前記ベース衣服が前記支持体に着用されたままの状態で行われる。好ましくは、前記ベース衣服の全冷却工程は、前記ベース衣服が前記支持体に装着されたままの状態で行われる。
【0028】
本発明の別の態様は、前記圧迫衣服を製造する方法の少なくとも工程C~Gを実行するシステムに関する。このシステムは、前記支持体の異なる軸方向位置に複数の分離部分が設けられた、一般にマネキンの形をした支持体を含む。前記マネキンの別々の部分にはそれぞれ、前記衣服によって前記部分に発生する圧迫力を検出するように構成された複数の圧力センサーが設けられている。前記別々の部分はまた、前記支持体上に着用された前記衣服を、前記衣服の対応する軸方向位置において独立に加熱するように構成された、独立に操作可能な複数のヒーターを備える。
【0029】
特に、前記衣服の軸方向寸法位置と、前記支持体の支持体/マネキンの軸方向位置とは、互いに一致するように構成される。すなわち、前記衣服の異なる軸方向寸法位置間の各距離は、前記支持体の異なる軸方向位置間の各距離と同じか、実質的に同じである。
【0030】
前記システムはさらに、前記支持体に着用された衣服を冷却するように構成された冷却システムと、前記支持体に着用された前記ベース衣服によって加えられる異なる支持体分画部分の圧迫を測定するように構成された複数のセンサーとを備える。
【0031】
前記支持マネキンは、通常、プレートから成るベースサポートを備えており、前記支持体を平らな表面に静止させることができる。
【0032】
好ましいセンサーは、前記ベース衣服が、異なる軸方向位置で前記支持体に及ぼす圧迫を、典型的には互いに独立して測定するように構成された複数のロードセルである。
【0033】
より一般的には、使用中、前記支持体の分離された部分は前記衣服によって圧迫され、そのような圧迫がセンサーによって測定できる。
【0034】
センサー、特にロードセルは、支持体内に配置されたベアリングロッドまたはベアリングブレードに取り付けることができる。各支持体分画部分と各センサーの間にセンサーロッドを配置することができ、分画部分自体の取り付けを可能にすることができる。前記支持マネキンに着用された前記ベース衣服により、各分画部分に及ぼされる圧迫は、前記センサーが感知できるようにセンサーロッドにも作用する。
【0035】
通常、使用条件を考慮すると、ベアリングロッドまたはベアリングブレードは実質的に垂直に配置され、センサーロッドは実質的に水平に配置される。有用で好ましいセンサーはロードセルであり、力検知抵抗器(fsr)も使用できる。
【0036】
可能な態様によれば、前記システムは、複数の圧力センサーから情報を受け取り、前記センサーによって感知されたデータの関数として支持体の各部分の加熱を作動させるように構成されたプログラマブルロジックコントロールシステム(plcコントロールシステム)を備えている。特にPLCは、前記支持体(ひいては支持体自体に装着された衣服)の異なる部分に異なる熱処理を施すようにプログラムされている。異なる熱処理は、通常、異なる加熱時間を意味する。
【0037】
好ましい実施形態では、PLC内で動作するソフトウェアによって、PLCコントロールシステム画面上に5つの異なるページが提供される。すなわち、ロードセルを較正する工程と、画面上の数値をmmHgとして読み取るためにロードセルをセンサー付きの圧迫試験装置と相関させる工程のためのページが用意されている。
【0038】
別のページでは、身体測定値が入力され、既存の値に応じて目標圧迫値を作成するアルゴリズムによって処理される。
【0039】
加熱工程、すなわち「固定」工程の制御ページでは、さらなるステップが視覚化される。ここでは、各部に必要な固定時間が計算される。上述したように、前記衣服の異なる軸方向位置はすべて、ユーザープロファイルに応じて異なる量で固定、すなわち熱処理する必要があることがある。
【0040】
例えば、ある部分が660秒間加熱される一方で、別の部分は210秒から加熱されることがある。システムが最初に始動すると、660秒間加熱される部分のみが作動し、所定温度まで上昇した時点から210秒に達するまでカウントダウンが開始される。カウントダウンが終了した時点で、別の部分の加熱が開始される。このようにして、すべての部分の加熱が同時に終了し、冷却工程がすべての部分について同時に開始される。
【0041】
最後のページは、前記マネキンのすべての加熱可能な部分について、各回で圧迫がどの程度減少したかを示すチャートを作成するために、各生地を数回テストすることにより作成される。そのチャートは、必要な処理時間を計算しながら、制御ページと同期して働く。
【0042】
本発明のさらなる態様は、上述した1つ以上の態様による方法で得られる衣服に関する。
【0043】
より一般的な態様によれば、本発明の教示は衣服の伸縮特性を修正するために適用することができる。衣服の修正された弾性特性を評価するための例示的なパラメータは、ASTM D3107に従った伸縮性、伸長性、および回復性の各パラメータである。
【0044】
より詳しくは、本発明の一態様は、衣服の弾性特性を修正する方法であって、以下の工程:
a)弾性繊維を含み、少なくとも15%の弾性を有する生地を用いてベース衣服を作製する工程;
b)前記ベース衣服を支持体に着用させる工程であって、前記支持体は、軸方向に複数の支持体分画部分を有し、前記各支持体分画部分を独立して加熱するために互いに独立して操作可能な複数のヒーターが設けられており、前記衣服は、前記各支持体分画部分において、前記支持体(1)に非ヌル圧迫が加えられるように製造されている工程;
c)前記ベース衣服によって及ぼされる非ヌル圧迫が低下するように、前記複数のヒーターを作動させて、前記各支持体分画部分においてベース衣服を加熱する工程;および
d)前記ベース衣服を冷却する工程
を有する方法に関する。
【0045】
上記のように、前記支持体の複数のセンサーは、前記非ヌル圧迫を測定することができる。
【0046】
それに加えて、前記異なるヒーターの作動時間が異なるヒーター間で異なり、前記支持体上の異なる軸方向位置で衣服を異なるように処理することも可能である。
【0047】
本発明のさらなる態様は、上述の態様の1つまたは複数に従って得られる衣服であって、前記衣服の異なる軸方向寸法位置において異なる弾性特性を有し、好ましくは、前記特性は、ASTM D3107に従って、少なくとも緯方向において測定された伸縮性、伸長性、および回復性のうちの少なくとも1つから選択される衣服に関する。好ましくは、差は5%より大きい。好ましい実施形態では、少なくとも伸縮性パラメータが異なっている。
【0048】
伸縮性、伸長性、および回復性に加えて、異なる熱処理が施された衣服の異なる軸方向位置に配置された部分の布地間のさらなる違いは、例えば、少なくとも緯方向の引張強度および結晶化度パーセンテージでもよい。
【0049】
一例として、異なる軸方向位置で本発明の衣服から採取した生地試料の少なくとも緯方向の引張強度は、通常異なる。織物の引張強度を試験する公知の方法が知られており、例えばASTM D5034がある。衣服の生地の異なる軸方向位置にあり、異なる方法で熱処理された部分は、通常、同じ方法で、同じ試験パラメータの下で試験した場合、引張強度が異なる。
【0050】
それに加えて、前記衣服がコア紡績糸のような綿/エラスタン糸を含む場合、前記衣服の生地の異なる軸方向位置に配置された、異なる熱処理が施された部分の結晶化度の差を測定することができる。綿/エラスタンへの熱セット工程は、衣服生地(すなわち衣服の繊維)のセルロース部分の再構築または再結晶化をもたらすと考えられる。織物の結晶化挙動は、例えば(株)島津製作所製XRD-6000のようなX線回折計を用いて、当該技術分野で公知の方法で測定することができる。
【0051】
綿繊維とエラストマー繊維(例えば、エラスタン繊維)の混紡糸を含む織物のATR-FT/IR分光法によって、熱セット工程によって誘発される構造変化を確認してもよい。
【0052】
一般的に、本発明による工程は、衣服の同じ布地の異なる軸方向位置に配置された部分が、異なる条件で熱処理されることを提供する。その結果、この衣服は、異なる軸方向位置で少なくとも異なる弾性特性、好ましくは、伸縮性,伸長性,回復性,引張強度および結晶化度パーセンテージのうちの少なくとも1つを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、本発明の可能な実施形態によるシステムの支持体を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の支持体の2つの支持体分画部分を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の支持体、および支持体に着用させた本発明の可能な実施形態によるベース衣服を示す上下逆の側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の可能な実施形態による、使用者の体に着用させた圧迫衣服を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本開示に従ったさらなる実施形態および利点について、非限定的な例として挙げる図面を参照してより詳細に説明する。
【0055】
システム100は、支持体上の異なる軸方向位置A1,A2,・・・ANにおける複数の支持体分画部分4,5,6,・・・,Mを有する支持体1を含む。特に、衣服の軸方向寸法位置B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7,B8,B9、および支持体1における支持体上の軸方向位置A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9は、互いに対応するように設定されており、すなわち、異なる軸方向寸法位置間の距離は、支持体上の異なる軸方向位置間の距離と同じである。
【0056】
図示の実施形態では、支持体上の9個の軸方向位置A1~A9、および9個の支持体分画部分4~12が設けられている。しかしながら、支持体分画部分および支持体上の軸方向位置の数は、実施形態に応じて異なっていてもよい。以下の説明は、分画部分および位置の数とは無関係に、これらすべての実施形態に適用される。
【0057】
支持体上の異なる軸方向位置A1~A9は、支持体、すなわち支持マネキン1の中心軸Cに沿った位置として定義される。中心軸Cは、支持マネキン1の伸長方向D1における主要寸法(すなわち大きい方の寸法)の軸である。
【0058】
好ましくは、支持体上の異なる軸方向位置A1~A9は、それぞれ各支持体分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12の高さH1の中点に位置する。高さH1は、例えば
図3に示すように、各支持体分画部分4~12における上端58と下端46との間で測定される、中心軸Cに平行な寸法として定義される。ここで、「上」と「下」は、使用中の支持体の状態を指す。
【0059】
支持体分画部分4~12は、実施形態に応じて異なる形状を有することができる。しかしながら、好ましい解決策では、支持マネキン分画部分4~12は、
図1および2から明らかなように、中心軸Cに垂直な平面上で、使用者の輪郭の対応する部分を少なくとも部分的に反映することができる、実質的に円周方向の断面を有する。このような円周の周囲長は、軸Cに沿って一定であってもよい(すなわち、支持体分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12は、実質的に円筒状あってもよい)し、変化していてもよい(例えば、支持体分画部分は、切り詰められた円錐形であってもよいし、その組合せ体であってもよい)。
【0060】
一般的に、例えば
図2および
図5に示すように、支持体分画部分4~12は、支持体上の異なる軸方向位置A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9において、複数の円周長48,49,50,51,52,53,54,55,56を有する。円周長とは、支持体上の異なる軸方向位置A1~A9に配置された軸Cに垂直な平面上の支持体分画部分4~12の断面の周囲長を意味する。分かり易くするため、支持体は好ましくは円周断面を有するので、この周囲長を「円周長」と呼ぶ。いずれにせよ、この定義は非円周形(例えば、楕円形)にも適用される。
【0061】
このように、支持体分画部分4~12は、中心軸Cに沿って、互いに直列に配置されている。しかしながら、好ましい態様によれば、支持体分画部分4~12は、2つの連続する支持体部分の各間に、軸Cに沿って測定された距離D2が存在するように、互いに分離されている。換言すると、距離D2は、2つの連続する支持体部分の各間の空隙を形成する。
【0062】
その結果、支持体1の使用状態を考慮すると、例えば
図3に概略的に示すように、ある支持体分画部分の下端46と、その後に続く支持体分画部分の上端59との間には距離D2が存在する。この距離D2は、好ましくはXXmmとYYmmの間である。
【0063】
支持体分画部分4~12は一体であってもよいし、複数の部品を互いに接合して構成されていてもよい。好ましい解決策は、例えば
図1および
図3に示すように、2つの半割体、すなわち2つの半部分4a,4b,5a,5bなどからなる支持体分画部分4~12を提供する。
【0064】
好ましくは、支持体1は、通常、支持体1の中心軸Cに配置される中心ロッド3を少なくとも有する。通常、1本または複数本の取付けロッド14が中央ロッド3から分岐し(典型的には中央ロッド3に対して垂直に)、支持体分画部分4~12に接続される。特に、通常、支持体分画部分4~12のそれぞれに対して、少なくとも1本の取付けロッド14がある。各々の支持体分画部分が複数の部品から構成されている場合、通常、これらの部品のそれぞれに取付けロッド14がある。
【0065】
一例として、好ましい実施形態では、図示するように、各支持体分画部分4~12は、2つの半割体または半部分4a,4b,5a,5bを備える。これらの実施形態において、支持体1は、したがって、好ましくは、その支持体分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12の各々に対して2本の取付けロッド14を備え、すなわち、半部分4a,4b,5a,5bの各々に対して1本の取付けロッド14を備える。
【0066】
中央ロッド3および取付けロッド14は、支持体1に十分な剛性が与えられるのであれば、異なる実施形態において異なる材料で作ることができ、例えば、木材、プラスチック、金属などで作ることができる。
【0067】
中心ロッド3は、通常、平らな面に置かれたときに支持体1が不安定になったり傾いたりする可能性を避けるために、通常は板状のベース支持体2に取り付けられている。
【0068】
支持体分画部分4~12の少なくとも一部、好ましくはすべてが多層体である。
【0069】
外層60(すなわち、中心軸Cからより遠い方であり、使用時に衣服と接触する方)は、以下でよりよく説明されるように、通常、銅などの熱伝導性材料で作られる(または少なくとも含む)。外層60は、関連する支持体分画部分4~12の形状に部分的に折り畳まれた、実質的に二次元の要素で作られてもよい。
【0070】
システム100はさらに、支持マネキン分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12のそれぞれを独立して加熱するために、互いに独立して操作可能な複数のヒーター(41a,41b)を備えている。
【0071】
好ましい解決策は、電気ヒーターを提供することである。通常、これらのヒーター(41a,41b)は電気源と抵抗で構成され、ジュール効果を利用するのが一般的である。システム100は、内部電気源(例えばバッテリー)を備えていてもよいし、より頻繁には、外部電気源に接続されるように構成された接続要素41a(例えばプラグ)を備えていてもよい。
【0072】
システム100はまた、外部電源の電力を抵抗によって必要とされる電力に適合させるための適切な電気的手段(例えばAC-DC変圧器など)を備えていてもよい。
【0073】
ヒーター(41a,41b)は、通常、関連する支持マネキン分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12の外層60と接触するように配置された、典型的には電気ヒーターの抵抗素子である加熱素子41bを含む。加熱素子41bは、異なる実施形態において異なる形で具現化され得る。一例として、加熱素子41bは、外層に対して巻かれた1本以上の抵抗性電気ケーブルで構成することができる。
【0074】
好ましい実施形態では、
図3に示すように、加熱素子41bは抵抗板として形成されており、外層60に対して内部に配置され、外層60と接触する。加熱素子41bは、外層60、例えば銅層と接触させたときに、外層60に電力が伝達されることなく外層60が加熱されるように、電気的に絶縁されていてもよい。
【0075】
加熱素子41bは、好ましくは、取付けロッド14との接触を避けるように構成される。一例として、抵抗板のような形状の加熱素子には、取付けロッド14への直接加熱を避けるために、加熱素子41b自体に触れることなく取付けロッド14が通過できる1つ以上の穴410を設けることができる。
【0076】
支持マネキン分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12はまた、加熱素子から外層60に向かって熱が流れるのを許容するが、加熱素子41bから支持マネキン1の中心軸Cに向かって熱が流れるのを防止する(または少なくとも制限する)ために、熱絶縁材料、例えばセラミック繊維などのセラミック材料を含む(またはセラミック材料からなる)断熱層42を備えることができる。加熱素子41bのために、支持体1は、好ましくは、取付けロッド14との接触を避けるように構成される。一例として、断熱層42には、取付けロッド14が通る穴410を設けることができる。
【0077】
その結果、取付けロッド14は、好ましくは、支持マネキン分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12の外層60に接続され、一方、加熱素子41bは、外層60に取り付けられる(絶縁層42が存在する場合、加熱素子41bおよび/または外層60に取り付けられる)。
【0078】
システム100はさらに、支持マネキン1に着用されたベース衣服20によって加えられる、異なる支持マネキン分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12における圧迫を測定するように構成されたセンサー13を備える。好ましくは、センサー13は、支持マネキン1の支持マネキン上の軸方向位置A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9そのものに配置される。センサー13は、典型的には、力を測定するように構成され、その力は、感知された力が加えられた面積(例えば、関連する支持マネキン分画部分の外面の面積、または支持マネキン分画部分の半分の外面の面積など)により、力の値を除算することを介して圧迫に変換することができる。この種のセンサーは当技術分野で知られている。好ましいセンサー13はロードセルである。
【0079】
好ましくは、センサー13は取り付けロッド14に結合され、センサー13が取り付けロッド14に加えられた力を測定できるようにする。説明したように、この値は、支持マネキン上の異なる軸方向位置A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9において支持マネキン分画部分に及ぼされる圧迫に変換することができる。
【0080】
前述のように、好ましい実施形態の支持マネキン分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12は、それぞれ2つの半部分4a,4b,5a,5bを備える。各半部分には、取付けロッド14を設けることができ、その結果、センサー13を設けることができる。その結果、支持マネキン上の各軸方向位置A1~A9に2つのセンサーを設置することができる。センサーによって読み取られた2つの値は、より良い精度を達成するために処理することができる(例えば、平均化することができる)。
【0081】
システム100はさらに、支持マネキン1に着用された衣服を冷却するように構成された冷却システム101を備える。冷却装置101は、支持マネキンの外部に配置してもよいし、冷却装置の少なくとも一部を支持マネキン1の内部に組み込んでもよい。外部冷却システム101は、例えば、複数の気体送風機102として具現化することができ、支持マネキン1(およびその上に着用される可能性のある衣服)に対して、1種または複数種の気体、好ましくは空気の流れを向けるように構成される。支持マネキン1内に少なくとも部分的に配置された冷却システム101は、例えば、支持マネキン1内の冷却剤103を循環させるための回路を有することができる。内部冷却システムのさらなる例として、ペルチェ素子を挙げることができる。
【0082】
外部冷却システムと(少なくとも部分的な)内部冷却システムは、異なる実施形態に対する代替的な解決策となり得るが、同じ実施形態においてこれらを組み合わせることも可能であり、例えば、ガスブロワー102と冷却剤103(および/またはペルチェ素子)用の回路を同じ実施形態において使用することができる。
【0083】
上述した実施例(すなわち、支持マネキン内での冷却剤の循環、ベース衣服に対する気体、好ましくは空気の吹き付け、およびペルチェ装置の使用)は、冷却システム101の好ましい解決策である。
【0084】
支持マネキン1に着用された衣服を効果的に冷却できるものであれば、他の冷却システムを使用することもできる。特に、後述するように、本発明の方法に対しては急速冷却が好ましい。
【0085】
システム100は通常、支持マネキン1の動作を制御するように構成された制御ユニット104、例えばプログラマブルロジックコントロールシステム(plcシステム)を含む。通常、制御ユニットは、別々の支持マネキン分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12を独立して加熱するようにヒーター(41a,41b)を制御するように構成されている。制御部104は、センサー13によって感知されたデータを読み取ることができる。制御部104は、冷却装置101を制御することができる。
【0086】
後述するように、本発明の方法によれば、ベース衣服20が支持マネキン1の上で処理される。ベース衣服20は、少なくとも一方向に均一な弾性特性を有する生地を含み、ベース衣服20は、弾性、すなわち伸縮性の糸中の弾性繊維を含み、少なくとも一方向に、少なくとも15%の弾性を有する。生地はエラストマー緯糸を含む織物である。弾性は、関連するASTM規格、例えば伸縮性、伸長性、および回復性の各パラメータに関するASTM D3107により測定することができる。ASTM D3107では、4.0ポンド、30分というように、ASTMの標準的なパラメータが使用される。
【0087】
少なくとも15%の弾性、すなわち伸縮性は、好ましくは少なくとも緯方向にある。ベース衣服20のための好ましい弾性繊維は、当該技術分野で知られており、例えばエラスタンを含む弾性繊維および弾性糸を含む。適切な弾性糸は、例えば好ましくは国際公開第2012/062480号に開示されている。
【0088】
ベース衣服20は、1つ以上の実質的に円周状の部分(例えば、ズボンの場合は脚部、シャツの場合は腕部および/または胴部)を含み、使用者400が着用すると、使用者の身体を取り囲み、身体自体に圧迫力を加える。身体に対する圧迫力は、緯方向に設けられた弾性糸によって生成される圧迫を提供する。特に、以下で詳細に説明されるように、本方法は、本発明の方法で処理された衣服が使用者の輪郭における選択された位置で定められる、使用者の輪郭400の円周長(すなわち周囲長)を規定することを提供する。
【0089】
実際、上述したように、マネキン1は、腰から脚、足首までの胴体部分、すなわちズボンの典型的な胴体部分を含む使用者の体型を再現している。これらの部分の主な(より大きな)寸法(例えば使用者の脚の軸)に沿って延びるこれらの部分の軸を考慮すると、例えば
図5に示すように、使用者の身体の部分の軸に沿って位置する異なる軸方向寸法位置B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7,B8,B9におけるこれらの部分の周囲長を知ることが可能である。異なる軸方向寸法位置B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7,B8,B9における使用者の輪郭400の円周長は、好ましくは、市販のサイズチャートを通じて取得することができる。この場合、標準的な「S」サイズの使用者、標準的な「M」サイズの使用者、標準的な「L」、「XL」、「XXL」サイズ等の使用者のための円周長を決定するために、一般的な基準表やチャートを使用することができる。
【0090】
特に、軸方向寸法位置B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7,B8,B9と、支持マネキン上の軸方向位置A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9は、互いに一致するように、すなわち、異なる軸方向寸法位置間の距離が、支持マネキン上の異なる軸方向位置間の距離と同じになるように構成されている。
【0091】
その結果、本方法を実行するために、最終的な使用者の輪郭400(実際のユーザーまたは標準的な参照ユーザーのもの)の円周長が決定される。
【0092】
その後、使用者に対する衣服の望ましいフィット感が決定される。これは、最終的な圧迫衣服200が、異なる軸方向寸法位置B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7,B8,B9において使用者に適用すべき所望の圧迫、すなわち使用者の軸方向寸法位置の各々に対する圧迫の値を決定することによって行われる。これは、参考表を介して、または衣服の最終的な用途の要件に応じて衣服の製造者の知識によって行うことができる。例えば、スポーツ用衣服に要求される圧迫値は、レギンスに要求される圧迫値とは、同じ軸方向の位置でも異なる場合がある。
【0093】
換言すると、使用者の輪郭400上のN個の軸方向サイズ位置B1,B2,B3・・・BNが与えられると、最終的な圧迫衣服200が最終的な使用者に適用すべきN個の所望の圧迫UC1,UC2,UC3・・・UCNの値が決定される。
【0094】
こうして、上述したようなベース衣服20が製造される。本方法でまだ処理されていないベース衣服20は、最終的な使用者に着用された場合、最終的な使用者に所望の圧迫UC1,UC2,UC3・・・UCNをまだ適用しない。また、本発明の有利な態様によれば、異なる種類の最終使用者のために同種のベース衣服20を製造することができる。本方法でこれらのベース衣服を異なる方法で処理することにより、2つの同一のベース衣服を2つの異なる最終的な圧迫衣服200に変更することができ、それぞれが2つの異なるサイズの利用者に正しくフィットする。
【0095】
一般的に、ベース衣服20は、処理される支持マネキン、すなわち支持マネキン1に着用される。ベース衣服20および/または支持マネキン1は、ベース衣服20がマネキン1に非ヌル圧迫を加えるように構成される。すなわち、軸方向位置において、弛緩状態におけるベース衣服の円周長は、支持マネキン1の円周長より小さいので、支持マネキンに着用されると、支持マネキンによって伸張される。
【0096】
その後、支持マネキン上の軸方向位置(説明したように、軸方向寸法位置に一致する)で、ベース衣服が支持マネキンに及ぼす実際の圧迫AC1,AC2,AC3・・・ACNが決定される。この決定は、例えば、支持マネキン1の寸法や、ベース衣服20の寸法や弾性特性を知ることによって、間接的に行うことができる。しかしながら、好ましい解決策では、支持マネキン1にベース衣服20によって及ぼされた実際の圧迫AC1,AC2,AC3・・・ACNを読み取るために、支持マネキンに適用されるセンサー13を提供する。
【0097】
その後、目標圧迫TC1,TC2,TC3・・・TCNが決定される。目標圧迫は、使用者が着用したときに、衣服が所望の圧迫UC1,UC2,UC3・・・UCNを加えるように、ベース衣服20が支持マネキン上の軸方向位置A1,A2,A3...ANにおいて支持マネキン1に加えるべき圧迫である。
【0098】
可能な条件では、支持マネキン1は最終的な使用と正確に同じサイズとする。この場合、目標圧迫TC1,TC2,TC3・・・TCNは、所望の圧迫UC1,UC2,UC3・・・UCNと一致する。
【0099】
一般に、支持マネキン1のサイズは、最終的な使用者のサイズとは異なる(すなわち、軸方向の支持マネキンにおける支持マネキン1のそれぞれの円周長は、対応する軸方向寸法位置における使用者のそれぞれの円周長と一致しない)。
【0100】
この場合、ベース衣服が支持マネキン1に適用すべき目標着圧TC1,TC2,TC3・・・TCNは、所望の着圧UC1,UC2,UC3・・・UCNとは異なる。従って、目標圧迫と所望の圧迫との間の差は、使用者の円周長に対する支持マネキン1の円周長の差の関数である。
【0101】
一態様によれば、目標圧迫力TC1,TC2,TC3・・・TCNは、ベース衣服の弾性特性の関数として見積もることができる。
【0102】
支持マネキン上の軸方向位置Aiにおける目標圧迫TCiの値を見積もるための、異なる、より単純なアプローチは、支持マネキン上の軸方向位置Aiにおける支持マネキンの円周長と、対応する軸方向寸法位置Biにおける使用者の円周長との間の比の関数として目標圧迫を決定することである。
【0103】
より詳しくは、支持マネキン1は、支持マネキン上の異なる軸方向位置A1,A2,A3・・・ANの各々において支持マネキン上の軸方向位置CLSを備え、それに応じて、最終的な使用者の身体は、異なる軸方向寸法位置B1,B2,B3・・・B7の各々における円周長CLUにより特徴付けられる。
【0104】
軸方向寸法位置Biにおいて所望の圧迫UCiが与えられた場合、所望の圧迫UCiと、該当する支持マネキン上の軸方向位置Aiにおいて支持マネキンにベース衣服によって及ぼされるべき目標圧迫TCiとの間の比は、軸方向寸法位置Biにおける最終的な使用者の円周長CLUiと、該当する支持マネキン上の軸方向位置Aiにおける支持マネキンの円周長CLSiとの間の比と実質的に同一である。その結果、支持マネキン上の軸方向位置Aiにおける目標圧迫は、式TCi=UCi×CLSi/CLUiに従って見積もることができる。
【0105】
以上の議論から明らかなように、上記の式中、記号は以下の通りである。
【0106】
TCiは、最終的な圧迫衣服が対応する軸方向寸法位置Biで最終的な使用者の身体に所望の圧迫UCiを及ぼすために、支持マネキン上のi番目の軸方向位置Aiで支持マネキンにベース衣服が加えるべき目標圧迫である。
【0107】
CLSiは、支持マネキン上の軸方向位置Aiにおける支持マネキンの円周長である。
【0108】
UCiは、最終的な圧迫衣服が軸方向寸法位置Biにおいて最終的な使用者の身体に及ぼすべき所望の圧迫である。
【0109】
CLUiは、軸方向寸法位置Biにおける最終な使用者の身体の円周長(単位:cm)である。
【0110】
目標着圧TC1,TC2,TC3・・・TCNが決まると、実際の着圧AC1,AC2,AC3・・・ACNが目標着圧になるまでベース衣服を処理する。
【0111】
特に、支持マネキン1(したがって、支持マネキンに着用されるベース衣服20)は加熱される。より詳しくは、各支持マネキン分画部分は、実際の圧迫AC1,AC2,AC3・・・ACNと目標圧迫TC1,TC2,TC3・・・TCNとの間の差の関数として加熱される。この差は、支持マネキン上の軸方向位置によって異なる可能性があるため、支持マネキン上の軸方向位置によって異なる熱処理を施すことができる。異なる熱処理とは、支持マネキン上の異なる軸方向位置A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9の間で、異なる時間および/または異なる温度で熱処理を施すことができることを意味する。
【0112】
また、支持マネキン上の軸方向位置によっては、実際の圧迫がすでに目標圧迫と等しくなっている可能性もある。その場合、ベース衣服20は、支持マネキン上のそれらの軸方向位置では加熱処理されない(すなわち、関連する支持マネキン分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12は加熱されない)。
【0113】
好ましくは、熱処理が適用される場合、熱処理の温度は実質的に同じであり、時間のみが支持マネキン上の異なる軸方向位置A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9の間で変更される。特に、アクティブヒーター(41a,41b)(通常、加熱素子41b)は、100℃以上の温度に達する。ここで、「アクティブヒーター」とは、ヒーター(41a,41b)がベース衣服20を実際に加熱することを意味し、したがって、非作動の可能性のあるもの、すなわち、実際の圧迫がすでに目標圧迫と一致している支持マネキン上の軸方向位置を結合したものを除く。
【0114】
ベース衣服に熱を加えることにより、通常、ベース衣服20によって支持マネキン1に加えられる圧迫の値が減少する。処理が長いほど、および/または温度が高いほど、ベース衣服20によって加えられる圧迫の低下は大きくなる。その結果、目標圧迫率は通常、実際の圧迫率より低くなる(熱処理を必要としない場合は、せいぜい実際の圧迫率と等しくなる)。その点を考慮すると、ベース衣服は、最終的な圧迫衣服200の可能性のある使用者の可能な最終的なサイズの全てに関して最初に高い圧迫を適用するように、又は最終的な圧迫衣服200の使用者の可能な最小のサイズに所望の圧迫を適用するように寸法決めされることが好ましい。
【0115】
その後、熱処理によって得られた衣服の特性を固定するために、ベース衣服の冷却が操作される。加熱と同様に、冷却システムは、支持マネキン上の異なる軸方向位置で衣服を独立して冷却するように構成されている。
【0116】
しかし、これを実現するのは、難しい作業であることがある。それに加えて、(実際の圧迫がすでに目標圧迫と一致しているため)熱処理されなかったベース衣服の一部を、特に副作用なく冷却することが可能である。その結果、ベースとなる衣服全体を同時に冷却することが望ましい。
【0117】
ベース衣服の特性がわかっているため、実際の圧迫を目標圧迫に変換するための各熱処理に必要な時間を計算することが可能である。その結果、異なる軸方向寸法位置のベース衣服の熱処理(すなわち、対応する異なるマネキン部分の熱処理)は、すべての熱処理が実質的に同時に終了するように、異なる時間に開始することができ、その結果、ベース衣服全体の冷却が可能になる。
【0118】
上述したように、冷却は、好ましくは「素早く」行われ、支持マネキンは30秒以内に実質的に室温に戻される。
【0119】
本発明のさらなる態様は、以下の工程を含む衣服の伸縮特性を修正する方法に関する:a)弾性繊維を含み、ASTM D3107に従って測定された弾性が少なくとも15%である生地でベース衣服20を製造する工程;b)複数の支持マネキン分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12を有し、支持マネキン分画部分4,5,6,7,8,9,10,11,12をそれぞれ独立して加熱するために、互いに独立して操作可能な複数のヒーター41a,41bを備えている支持マネキン1上に、ベース衣服20を着用させる工程であって、衣服が、支持マネキン部分4,5,6,7,8,9,10,11,12において支持マネキン1に非ヌル圧迫が加えられるように製造されている工程;c)ヒーター41a,41bにより、支持マネキン部分4,5,6,7,8,9,10,11,12においてベース衣服20を加熱し、ベース衣服20によって及ぼされる非ヌル圧迫が下がるようにする工程;およびd)衣服20を冷却する工程。
【0120】
可能な態様によれば、支持マネキン部分4,5,6,7,8,9,10,11,12において衣服を異なるように処理するために、異なるヒーター41a,41bの作動時間は、異なるヒーター41a,41b間で異なる。
【0121】
最終的な衣服200の修正された弾性特性は、衣服の異なる位置で採取された生地試料について、ASTM D3107に従って測定された伸縮性、伸長性、および回復性の各パラメータの少なくとも1つを測定することによって検出することができる。
【0122】
本発明のさらなる態様は、上述した1つ以上の態様に従って得られる衣服200に関し、衣服の異なる軸方向寸法位置は、異なる弾性特性を有し、好ましくは、少なくとも緯方向においてASTM D3107に従って測定される伸縮性、伸長性および回復性から選択される少なくとも1つの異なる弾性特性を有する。
【0123】
異なる軸方向寸法位置、すなわち衣服の異なる軸方向位置における最終衣服200の生地の異なる弾性特性の存在は、熱処理された最終衣服200の1つの軸方向寸法位置Biの生地試料1を選択し、熱処理された最終衣服200の別の位置Bjで生地試料2を選択することによって測定可能である。軸方向寸法位置Biは、軸方向寸法位置Bjと異なる。
【0124】
試料1と試料2が、関連するヒーター(41a,41b)によって異なる温度および/または異なる作動時間で熱処理された場合、ASTM D3107による弾性特性は異ったものとなる。
【0125】
試料1と試料2の寸法はASTM D3107によるものである。好ましくは、試料1および試料2は、対応する軸方向寸法位置BiおよびBjを中心とする。換言すると、各試料の総面積は、軸方向寸法位置で2等分される。
【0126】
試料1と試料2の異なる弾性特性は、ASTM D3107に従って測定される。
【0127】
ASTM D3107に従って測定された伸縮性、伸長性、および回復性から選択される少なくとも1つの生地の特性が、試料1と試料2との間で異なっており、好ましくは、ASTM D3107に従って測定された伸縮性、伸長性、回復性のうちの少なくとも2つの特性または全ての特性が、試料1と試料2との間で異なっている。
【0128】
試料1および試料2の他の特性は、異なる熱処理の結果として互いに異なる場合がある。引張強度は通常異なり、典型的には140℃までの温度上昇で熱処理された生地部分で増加する。また、試料が綿/エラスタンのコア紡績糸を含む場合、2つの試料の結晶化度指数に差が観察される。綿/エラスタン混紡織物の結晶化率は、熱処理を施した織物部分で増加する可能性がある。処理された生地の結晶化度パーセンテージは、同じ衣料用生地の未処理の生地の結晶化度パーセンテージの値より2倍(またはそれ以上)大きいことがある。
【0129】
未加工のベース衣服20では、生地がそのすべての部分において構造的および化学的に同一であるため、衣服の生地は少なくとも一方向、好ましくは少なくとも緯方向において同一の弾性特性を有する。換言すると、ASTM D3107に従って測定された伸縮性、伸長性、および回復性は、衣服のどの位置でも同じである。すなわち、ベース衣服20のある軸方向寸法位置Biの生地試料1と、ベース衣服20の別の、異なる軸方向寸法位置Bjで選択された生地試料2は、ASTM D3107に従って測定された同じ弾性特性を有する。
【0130】
以下、いくつかの例示的な実施形態について説明する。
【0131】
2人の異なる使用者に同じようにフィットする2着の最終的な圧迫衣服を提供するために、2着の同じベース衣服を同じ支持マネキンで異なる方法で処理する。
【0132】
実施例1
第一の実施例で取り上げた例示的なデータは以下の通りである。
【0133】
【0134】
分かり易くするために、3つの軸方向位置のみを考慮した。第1種の使用者は第2種の使用者より小さい。第1種の使用者の場合、支持マネキン上の軸方向位置A1,A2,A3に対応する3つの軸方向寸法位置において、最終的な圧迫衣服200は、所望の圧迫力UC1,UC2,およびUC3を発揮するはずである。
【0135】
ベース衣服20が用意される。支持マネキンに装着されると、ベース衣服20は実際の圧迫力AC1,AC2およびAC3を発揮する。
【0136】
最終的な圧迫衣服200が所望の圧迫力UC1,UC2,およびUC3を発揮するためには、ベース衣服20は、支持マネキンに目標圧迫力TC1a,TC2aおよびTC3aを加えるまで処理されるべきであることが決定される。そして、支持マネキン上の軸方向位置A1における実際の圧迫量AC1は、既に目標圧迫量TC1aと等しいので、支持マネキン上の軸方向位置A1におけるベース衣服には熱処理が施されない。他の2つの実圧迫AC2とAC3を、関連する目標圧迫TC2aとTC3aに達するまで下げるために、第2の支持マネキン上の軸方向位置A2では35秒間の加熱が必要であり、第3の支持マネキン上の軸方向位置A3では20秒間の加熱が必要であると判断される。
【0137】
第2の支持マネキン上の軸方向位置A2での加熱は、第3の支持マネキン上の軸方向位置A3での加熱の15秒前に開始する。
【0138】
加熱工程が終わると、ベース衣服は冷却される。第1種の使用者が着用すると、その使用者は、支持マネキン上の軸方向位置A1,A2,およびA3に対応する3つの軸方向寸法位置で、所望の圧迫UC1,UC2,およびUC3を感じるだろう。
【0139】
第2種の使用者の場合、支持マネキン上の軸方向位置A1,A2,およびA3に対応する3つの軸方向寸法位置において、最終的な圧迫衣服200は、第1種の使用者と同じ所望の圧迫力UC1,UC2,およびUC3を発揮するはずである。
【0140】
ベース衣服20が用意される。第2種の使用者のためのベース衣服20は、第1種の使用者のために準備されたベース衣服と同一であるので、同一の支持マネキンに取り付けられた場合、ベース衣服20は、同一の実際の圧迫力AC1,AC2,およびAC3を発揮する。
【0141】
しかしながら、第2の使用者は第1の使用者より大きいので、最終的な圧迫衣服200が所望の圧迫力UC1,UC2,およびUC3を発揮するためには、ベース衣服20は、支持マネキンに、第1種の使用者に対する目標圧迫力TC1a,TC2a,およびTC3aより低い目標圧迫力TC1b,TC2b,およびTC3bが加わるまで、処理されるべきであると決定される。
【0142】
実際の圧迫力AC1,AC2,およびAC3を目標圧迫力TC1b,TC2b,およびTC3cに達するまで下げるには、支持マネキン上の3つの軸方向位置A1,A2,およびA3において、それぞれ10秒,40秒,および35秒の加熱が必要である。
【0143】
支持マネキン上の第2の軸方向位置A2における加熱は、支持マネキン上の第1の軸方向位置A1における加熱の25秒前であって、支持マネキン上の第3の軸方向位置A3における加熱の5秒前に開始する。
【0144】
加熱プロセスの最後に、ベース衣服全体を冷却する。第2の使用者が着用すると、この使用者は、支持マネキン上の軸方向位置A1,A2およびA3に対応する3つの軸方向寸法位置で所望の圧迫UC1,UC2およびUC3、すなわち、第1の使用者に対して定められた最終的な圧迫衣服200を着用したときに第1種の使用者が感じるのと同じ圧迫を感じるだろう。
【0145】
同様にして、2つの同じベース衣服20を異なるように処理して、同じ種類の使用者に対して異なるフィット感を有する2つの異なる最終的な圧迫衣服200を提供することができる。
【0146】
実施例2
以下のさらなる実施例は、所望の圧迫UC2,UC3・・・UCNの関数として、目標圧迫TC1,TC2,TC3・・・TCNを見積もる方法と、支持マネキンおよび最終的な使用者の各々の測定値に関する例示的な実施形態を示す。
【0147】
特に以下の例では、支持マネキン上の7つの軸方向位置A1~A7と、したがって7つの異なる対応する軸方向寸法位置(衣服の位置)B1~B7が考慮される。
【0148】
第1列は、支持マネキン上の異なる軸方向位置A1~A7を定義している。第2列において、支持マネキン上の軸方向位置A1~A7の各々における、支持マネキンの円周長CLS1~CLS7が示されている。第4列において、軸方向寸法位置B1~B7において、最終的な圧迫衣服が最終的な使用者の身体に及ぼすべき所望の圧迫UC1~UC7が示されている。
【0149】
使用者に所望の圧迫力UC1~UC7を与えるために支持マネキン1に加えるべき目標圧迫力TC1~TC7は最後の欄に示されている。特に、前述の簡略化されたアプローチと同様に、目標圧迫の値は、TCi=UCi×CLSi/CLUiの式に従って見積もられる。一例として、支持マネキン上の軸方向位置A1を考慮すると、上記の式は次のようになる:TC1=UC1×CLS1/CLU1=15mmHg×28.2cm/23cm=18.4mmHg。
【0150】
上記の式を、支持マネキン上の軸方向位置A1~A7のすべてに適用し、以下のデータを得た。
【0151】
【0152】
上述したように、本発明の工程は、処理された生地の弾性特性を変化させる。すなわち、処理された生地の伸縮値は、同じ非処理生地の伸縮値より38%、好ましくは4%~50%、より好ましくは10%~50%小さくなることがある。
【0153】
議論したように、本発明の工程が衣服に実施された後、衣服の生地の特性(ASTM D3107に従って測定される)は、熱処理が異なる方法、例えば異なる時間及び/又は異なる温度で加熱することによって実施された衣服の異なる位置B1~B9において異なる。一例として、例えばB1の位置の生地の試料の伸縮性値は、B9の位置の生地の試料の伸縮性値とは異なる(例えばそれより低い)。実施形態において、大きい値(SB9)と小さい値(SB1)の差を大きい値で割った比、すなわち((SB9-SB1)/SB9)×100の百分率で表される差は、4%~50%、好ましくは10%~40%の範囲である。
【0154】
より一般的には、本発明のプロセスに従って処理された衣服では、上記で開示したような比率を提供する異なる特性を有する異なる位置に少なくとも2つの生地の部分が存在する。同じ衣服の中で、処理されていない2つの生地の部分は、同じか実質的に同じ伸縮値を有し、比率は0%か同等の低い値になる。
【0155】
衣服、例えば一対のズボンの2つの部分XとYから採取された2つの試料の一例として、伸縮値の比((SX-SY)/SX)×100は、処理されたか否かに応じて、0%から50%の範囲にある。2つの試料が処理されなかった(または同一の方法で処理された)場合、前記比((SX-SY)/SX)×100は0%または約0%である。試料Xが試料Yよりも大きな伸縮性を有するように、2つの試料が異なる時間及び/又は異なる温度で処理された場合、比((SX-SY)/SX)×100は、4%~50%、好ましくは10%~40%の範囲である。実施形態では、衣服の試料のすべての対が、前記範囲内の比率値を与える可能性がある。
【符号の説明】
【0156】
1・・・支持体(支持マネキン)
2・・・ベース支持体
3・・・中心ロッド
4,5,6,7,8,9,10,11,12・・・支持体分画部分
4a,4b,5a,5b・・・半部分
13・・・センサー
14・・・取付けロッド
20・・・ベース衣服
41a,41b・・・ヒーター
410・・・穴
42・・・断熱層
46・・・下端
58,59・・・上端
60・・・外層
100・・・システム
101・・・冷却システム
102・・・気体送風機
103・・・冷却剤
104・・・plc制御ユニット
200・・・圧迫衣服
400・・・使用者
A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A8,A9・・・支持体の軸方向位置
B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7,B8,B9・・・衣服の軸方向寸法位置
C・・・中心軸
【外国語明細書】