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特開2024-31986EEGおよびバイオメトリックセンサを有するウェアラブルデバイスのための方法および装置
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  • 特開-EEGおよびバイオメトリックセンサを有するウェアラブルデバイスのための方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031986
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】EEGおよびバイオメトリックセンサを有するウェアラブルデバイスのための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/375 20210101AFI20240229BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240229BHJP
   A61N 5/06 20060101ALI20240229BHJP
   A61N 5/067 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61B5/375
A61B5/00 A
A61N5/06 Z
A61N5/067
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023170775
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2021515307の分割
【原出願日】2019-05-27
(31)【優先権主張番号】62/762,982
(32)【優先日】2018-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/757,485
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520461026
【氏名又は名称】センズ.エーアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SENS.AI INC.
【住所又は居所原語表記】2768 Coyote Place, Whistler, British Columbia, CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テルファー, パオラ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリーン, コーリー
【テーマコード(参考)】
4C082
4C117
4C127
【Fターム(参考)】
4C082PA01
4C082PA10
4C082PC09
4C082PE09
4C082PJ11
4C082RA10
4C082RL02
4C082RL21
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE18
4C117XE24
4C117XE37
4C117XH02
4C117XL01
4C127AA03
4C127DD01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒトの脳によって生成される電気的活動を監視し、刺激し、同調させるための装置および方法を提供する。
【解決手段】ヒトの脳によって生成される電気的活動を監視し、刺激し、および同調させるためのウェアラブルデバイスであって、少なくとも1つのEEGセンサと、少なくとも1つのPBM刺激器とを有し、前記ウェアラブルデバイスは、ヒトのバイオメトリックパラメータに影響を与えるために、前記EEGセンサからデータを受信し、前記PBM刺激器から脳にパルス化された近赤外光を供給する、ウェアラブルデバイス。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの脳によって生成される電気的活動を監視し、刺激し、および同調させるためのウェアラブルデバイスであって、
少なくとも1つのEEGセンサと、
少なくとも1つのPBM刺激器とを有し、
前記ウェアラブルデバイスは、ヒトのバイオメトリックパラメータに影響を与えるために、前記EEGセンサからデータを受信し、前記PBM刺激器から脳にパルス化された近赤外光を供給する、ウェアラブルデバイス。
【請求項2】
前記PBM刺激器の出力を変調するために前記ウェアラブルデバイスにバイオメトリックデータを提供する、少なくとも1つの追加のバイオメトリックセンサをさらに有する、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの追加のバイオメトリックセンサは、心拍数センサ、温度センサ、血圧センサ、またはパルスオキシメータセンサでありうる、請求項2に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つのPBM刺激器は600~1150nmの間の波長で光を出射する近赤外線レーザまたはLEDでありうる、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項5】
異なる周波数でパルス化しうる2つ以上のPBM刺激器を有する、請求項4に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つのEEGセンサは、前記脳にパルス化された近赤外光を供給する前記少なくとも1つのPBM刺激器と同時に、前記脳の電気的活動に関するデータを取得しうる、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つのEEGセンサおよび前記少なくとも1つの追加のバイオメトリックセンサは、前記PBM刺激器の動作と同時にニューロフィードバックループにおいて用いられうるバイオメトリックデータを提供する、請求項2に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項8】
前記ウェアラブルデバイスは、ヘッドホンのセットの形態を有する、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項9】
ヒトのバイオメトリックパラメータを最適化する方法であって、
少なくとも1つのEEGセンサと、少なくとも1つの追加のバイオメトリックセンサと、少なくとも1つのPBM刺激器とを有し、ヒトの脳によって生成される電気的活動を監視し、刺激し、および同調させるためのウェアラブルデバイスをヒトに提供することと、
前記ヒトのEEGデータを測定することと、
PBM刺激を前記ヒトに供給することと、
前記ヒトのEEGデータを測定することと、
前記ヒトのEEGデータを最適化するためにニューロフィードバックループを開始することと、を有する方法。
【請求項10】
PBM刺激の前後に少なくとも1つの追加のバイオメトリックパラメータを測定することと、前記追加のバイオメトリックデータを前記ニューロフィードバックループに提供することと、をさらに有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ヒトのバイオメトリックパラメータをさらに最適化するために、PBM刺激に加え、前記ヒトに聴覚/視覚フィードバックを提供することをさらに有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの他のバイオメトリックセンサが心拍数センサ、温度センサ、血圧センサ、またはパルスオキシメータセンサでありうる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのPBM刺激器は、600~1150nmの間の波長を有し、600~1150nmの範囲の異なる周波数でパルス化され得る光を出射する、近赤外レーザまたはLEDであり得る、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのEEGセンサは、前記脳にパルス化された近赤外光を供給する前記少なくとも1つのPBM刺激器と同時に、前記脳の電気的活動に関するデータを取得しうる、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのEEGセンサおよび前記少なくとも1つの追加のバイオメトリックセンサは、前記PBM刺激器の動作と同時に前記ニューロフィードバックループにおいて用いられうるバイオメトリックデータを提供する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人間の脳によって生成される電気的活動を監視し、刺激し、同調させるための装置および方法に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、人間の脳によって生成される電気的活動を監視および刺激するための、脳波検査(EEG)およびフォトバイオモジュレーション(PBM)デバイスを提供する。また、提供されるデバイスを用いて人間の認知状態および生理学的状態を監視し、刺激するための方法についても述べる。本発明は、目標とする脳波周波数の増加を刺激し、ミトコンドリアに追加のエネルギーを提供するためのPBM光のパルス化を提供する。PBM刺激は、EEGセンサおよびニューロフィードバックと組み合わされる。
【背景技術】
【0003】
神経刺激とは、神経系の活動の意図的な調節である。神経刺激は従前、以下のような直接的な電気刺激を通じて行われてきた:
・tMS - 経頭蓋磁気刺激
・tACS - 経頭蓋交流電気刺激
・tRNS - 経頭蓋ランダムノイズ刺激
・tDCS - 経頭蓋直流電気刺激
【0004】
ニューロフィードバックのプロセスは脳波(EEG)センサを使用して神経系の活動を測定し、それらの信号を処理し、フィルタリングし、次いで、視覚的、聴覚的、または他の形態のフィードバックで人の神経系活動を増強または抑制することを含む。
【0005】
刺激電流がEEGセンサーに直接干渉するため、ニューロフィードバックと神経刺激とは歴史的に併用することができなかった。したがって、今日に至るまで、本発明者は、これらの原理が単一のデバイスや方法に組み合わされていることを認識しておらず、それらは互いに別々にアプローチされてきたに過ぎなかった。その結果、ニューロフィードバックプロトコルと神経刺激プロトコルとは、互いに独立して機能するように研究され、開発されてきた。
【0006】
フォトバイオモジュレーション(PBM)療法は、細胞構造(通常はミトコンドリア)内に光化学変化をもたらすために非イオン化光子エネルギーを用いる。この技術は主に、痛みと炎症を軽減し、損傷した組織の治癒過程を速めるために用いられてきた。
【0007】
最近、フォトバイオモジュレーションは脳シトクロムオキシダーゼ活性を光刺激することが示されている。F. Gonzalez-LimaおよびDouglas W. Barrett (2014)は、「近赤外レーザーと発光ダイオード (LED) が脳機能と相互作用する方法は生体エネルギー学に基づいており、そのメカニズムは電気的および磁気的刺激のような他の脳刺激方法とは根本的に異なる。...有効な近赤外光エネルギ線量が与えられれば、それは脳のATP産生(LapchakおよびDe Taboada, 2010)と血流(Uozumiら、2010)を刺激し、それによってATP依存性膜イオンポンプが付勢され、膜の安定性と脱分極への抵抗力を高め、ニューロンの興奮性を一過性に低下させる(Konstantinovicら、2013年)ことが示されている。一方、電磁刺激はニューロンの電気的興奮性を直接変化させる」と述べている。
【0008】
本発明は、目標周波数でPBM光をパルス化することにより、エントレインメントによって対応する脳波周波数の増加を刺激し、目標位置でミトコンドリアに付加的なエネルギーを提供する。本発明はまた、PBM刺激を脳波(EEG)センサおよびニューロフィードバックと組み合わせる。これにより、ニューロフィードバック、バイオフィードバック、および神経刺激プロトコルの新たな共同応用が可能となる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、埋め込み型バイオメトリックセンサを内蔵したウェアラブルヘッドホンセットを提供する。センサから収集されたデータは分析されるデータパターンを提供し、音声信号(いくつかのシナリオでは視覚信号も)を調整することにより、バイオメトリックフィードバックループが生成される。このフィードバックループは、ストレス、不安、疲労、気分(mood)、創造性、および、精神的集中および鋭敏性を有するユーザを支援するために用いることができる。フィードバックループはさらに、人と人との生理学的同調性のためにも用いることができる。本発明は、認知の改善、メディテーションの「深さ」、「感情的回復力」、または改善された家族、仕事、またはスポーツ「チーム」のダイナミクスおよびパフォーマンスを達成するために、これらの生体情報の組合せからの読み取り値をバランスさせる。
【0010】
生体情報データ(バイオメトリックデータ)には、EEG(脳波)、心拍変動(HRV)、パルスオキシメータ、血中酸素レベル(SPO2)、呼吸数、血圧、および体温が含まれるが、これらに限定されない。本発明は、心拍数、心拍変動、血中酸素レベル、体温、呼吸数、および血圧などの生体情報に加え、追加のEEGセンサ位置を利用する。
【0011】
電極は、10 20 脳マッピング標準によるCz、Fz、P3、およびP4に配置される。装置はまた、電極位置の数を拡張し、代替の電極位置を提供することができるアタッチメントをクリップ留めする機構を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は添付の図面に関するいくつかの実施形態の以下の詳細な説明により、より良く理解されるであろう。
図1図1は、本発明の一実施形態による、ウェアラブルデバイスをリモートリソースに接続するための例示的なシステムアーキテクチャを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明はその一態様においてヘッドホンにEEGおよびパルスオキシメータを提供する。
一実施形態において本発明のヘッドホンは、ヘッドホンフォームファクタおよびアルゴリズムにおいて、EEG(脳波計)を心拍変動(HRV)またはパルスオキシメータと組み合わせる。一実施形態において、パルスオキシメータはオーバーイヤヘッドホンの設計に組み込まれ、これにより周囲雑音が低減され、精度が向上する。
【0014】
本発明は、ユーザから生理学的信号を収集する埋め込み型バイオメトリックセンサを有するウェアラブルヘッドホンセットを提供する。この装置は、Bluetooth(登録商標)(無線)オーディオおよびデータ伝送と、充電式バッテリと、スピーカと、マイクロフォンと、アクティブノイズキャンセル(ANC)機能とを含む。
【0015】
電極は、EEG信号を収集するために用いられる。電極は、国際10-20システムによるC3、Cz、C4、Pz、およびFz位置に配置される。また、A1またはA2に基準電極または接地電極を含むことができる。
【0016】
パルスオキシメータは、追加の生体情報を収集するために用いられる。フォトプレチスモグラフィ(PPG)は、身体による特定波長の光の吸収の光学的測定である。LEDおよび光センサを備えるパルスオキシメータは、1つのイヤピースの内部に設けられ、外耳に対向して配置される。パルスオキシメータは、測定に反射率法を用いることができる。耳を覆うイヤーピースの内部にパルスオキシメータを設けることで、環境光による信号ノイズが軽減される。
【0017】
パルスオキシメータのデータは、心拍数(脈拍)、心拍変動、呼吸数、血圧、血中酸素レベル(SPO2)、および水分補給レベルなどの生体情報信号に変換されるが,これらに限定されない。一実施形態では、体温信号を収集するために1つまたは複数の温度センサが用いられる。体温測定の精度を上げるためだけでなく、外部温度を取得するために複数のセンサーが必要になる場合もある。
【0018】
他のセンサーには、加速度センサ、磁力計、ジャイロスコープ、気圧/圧力センサ、オーディオ/ボイスセンサーなどがある。
【0019】
別の実施形態において装置は、より確実な心拍数および心拍変動(HRV)を得るためにEKGまたはECG信号を用いる。
【0020】
バイオメトリックフィードバックキャリブレーション
心拍変動(HRV)は、すべての人に固有である。ストレス、疲労、集中力などの指標としてHRVを用いるには、HRVが各人に関する値に基づく必要がある。本発明の一実施形態は、2部較正法(two-part calibration method)を用いる。第1の部分では、ユーザがオーディオプロンプトによって設定されたペースで呼吸しながら、約30~90秒間、目を閉じた状態でリラックスする。第2の部分では、ユーザは目を開け、15~30秒間息を止める。このデータは、リラックス状態およびストレス状態の両方におけるHRVの基準を確立するために用いられる。
【0021】
個々のユーザのバイオメトリックフィードバックのための基準値および正常範囲値の確立は、較正手順を通じて行うことができる。較正手順の間、生体信号が装置によって取得および処理され、モバイルデバイスに送信され、その後、追加の処理のためにクラウドサーバに送信されるであろう。較正手順はユーザが身体活動を実行し、質問に答え、および/または短いゲームをプレイすることを必要とする。これらのエクササイズは、ユーザの生体信号を高めたり低めたりすることにより、ユーザに固有の基準または正常範囲を確立するように設計されている。
【0022】
呼吸活動の例:第1の部分では、ユーザが音声プロンプトによって設定されたペースで呼吸しながら、30秒間、目を閉じた状態でリラックスする。第2の部分では、ユーザは目を開け、15~30秒間息を止める。このデータは、リラックス状態およびストレス状態の両方において、HRVおよび他の生体信号のための基準を確立するために用いられる。
【0023】
バイオメトリックフィードバックの利用
本発明の実施形態は、ストレスを低減し、集中力を増加させ、またはユーザに疲労またはストレスのレベルを警告するために、生体データ、EEG、心拍数(脈拍)、心拍変動、体温および血中酸素(SPO2)レベルの組合せを利用して、オーディオおよびビジュアル(ニューロフィードバックおよびバイオフィードバック)を調整する。対象となる応用には、(1)フロー状態(集中力の向上)、(2)ストレス軽減、(3)気分改善、(4)疼痛管理、(5)睡眠改善、(6)瞑想的変化状態の深化、(7)認知低下の抑制が含まれる。
フォームファクタはすべて同じである。しかし、ソフトウェアアルゴリズムは異なり、実施形態では、サブスクリプションベースである。
【0024】
生体信号は、ヘッドホン装置で処理されるとともに、さらなる処理のためにモバイルデバイスおよびクラウドベースのサーバに送信される。処理後、ヘッドホンの音声、ユーザのモバイルデバイスの通知、図表、グラフなどの調整を通じて、および音および言葉による指示を含むオーディオプロンプトを通じて、フィードバックがユーザに与えられる。また、振動または光パターンのような他の物理的フィードバック方法も存在し得る。フィードバックは、較正された基準(上記参照)に基づいて、個々のユーザに合わせて調整される。
【0025】
フィードバック手順
装置は特定の状態を検出し、フィードバックを自動的に調整する。本発明のヘッドホン装置は以下のフィードバック機能を実行する。ユーザの現在の生体信号レベルを読み取る、現在のレベルおよび較正された基準に基づいて目標レベルを設定する、ユーザが徐々に目標レベルに近づくに伴ってユーザに「報酬を与える」ようにバイオフィードバックとしてのオーディオおよび/またはビジュアルを調整する、ユーザの現在レベルを監視し、それを較正された基準および目標と比較し、フィードバック「報酬」を調整する。
【0026】
刺激を伴う適応フィードバック
本発明の別の技術は、適応フィードバックとフォトバイオモジュレーションを組み合わせる。装置はEEG(脳波)および心拍変動(HRV)に基づいて装着者のための全体的な基準生体信号を確立し、また、血中酸素レベル(SPO2)、呼吸数、血圧、および体温を含む追加の生体信号を組み合わせてもよい。基準は、(1)較正動作、(2)履歴データ、(3)現在のフィードバックセッション生体情報データ、および/または(4)システムによって収集された補足調査データによって確立され、動的に調整される。
【0027】
フィードバックプロトコルは、基準データに基づいて、装着者またはシステムのいずれかによって選択される。このプロトコルは基準と装着者の現在の生体信号レベルに基づいて、フィードバックセッション中の目標生体信号レベルを設定し、適合させる。装着者の生体信号レベルが目標に近づく、または目標から離れるにつれて、装着者は、視覚的、聴覚的、または他の形態のフィードバックで報酬を与えられるか、または抑制される。
【0028】
この技術では、生体フィードバックが生体刺激で補完される。一実施形態では、これはEEG電極と同じ位置でのパルスフォトバイオモジュレーションによって達成される。
特定の周波数で赤色光または近赤外光をパルス化することは、同調(エントレインメント)によって目標脳波周波数の増加を刺激し、目標位置でミトコンドリアにさらなるエネルギーを提供する。さらに、生体刺激の効果を測定し、生体フィードバックプロトコルに組み込むことができる。
【0029】
フォトバイオモジュレーション
ミトコンドリア内で、チトクローム酸化酵素は赤色光および近赤外光を吸収し、エネルギーのアデノシン三リン酸(ADT)に変換する能力を有する。
【0030】
この装置は、600~1150ナノメートルの波長の光を送信し、810nmは生物学的組織にさらに浸透する能力のために、理想的な波長である。
【0031】
本発明の装置および方法は特定の周波数でフォトバイオモジュレーション光をパルス化し、エントレインメントを通じて目標脳波周波数の増加を刺激し、目標位置でミトコンドリアに追加のエネルギーを提供する。
【0032】
他の実施形態において本発明は以下の追加のまたは代替の形態の刺激を利用することができるが、これらに限定されない。
・tACS-経頭蓋交流電流刺激
・tRNS-経頭蓋ランダムノイズ刺激
・tDCS-経頭蓋直流電流刺激
【0033】
バイノーラルビート
さらに別の実施形態では、聴覚的拍動刺激(ABS)が適応フィードバックおよびフォトバイオモジュレーション刺激と共に用いられる。バイノーラルビートは、2つのオーディオ正弦波が互いに近い周波数内で各耳に別々に提示されるときに生成される。周波数の差(例えば12Hz)は拍動として知覚され、主観的には頭部の内側に「位置する」ものとして知覚される。この場合も、この聴覚刺激は脳波に影響を及ぼすことができ、この刺激を測定し、バイオメトリックフィードバックプロトコルにフィードバックすることができる。
【0034】
心拍変動(HRV)
心拍変動(HRV)は、ストレス反応と直接相関することが示されている。本発明においてHRVはまた、フィードバック量および目標、セッション長、プロトコル選択を適応させるために、あるいは、フィードバックから刺激モードまたは複合モードに切り替えるために用いられてもよい。
【0035】
別の技法では、HRVフィードバックおよび呼吸数フィードバックが適応フィードバックおよび刺激と共に用いられる。これは、フィードバックプロトコルの有効性を高めることができるだけでなく、装着者のストレスおよび感情的回復力に影響を及ぼすことができる。HRVおよび呼吸数フィードバックは、プロトコルセッションの開始時または終了時に、またはセッション中に、独立して、または全体的なプロトコルフィードバック信号と組み合わせて行うことができる。
【0036】
バイオメトリック同期
別の実施形態では、複数の装着者を同様の生理的同期レベルとするために、2つ以上の装置が,複数の装置および装着者にわたってフィードバック信号の同期が取られるバイオメトリック同期モードに入ることができる。これは心拍変動(HRV)、体温、呼吸数、EEG、または他の生体信号を含むことができるが、これらに限定されない。
【0037】
バイオメトリック目標:簡単なレベルでは、バイオメトリック目標は、ユーザの現在のレベルとユーザの個人的な較正データとに基づいて計算された信号レベルである。目標レベルに到達することによって、改善された集中力(focus/concentration)、ストレス低減、改善された気分、より良好な疼痛管理、および/またはより深い睡眠などの具体的な利益をユーザが享受することが期待される。一例として、2つの小さな振動モータが、ヘッドホン装置の左右のイヤピースに含まれ、HRVおよびEEG信号を供給されてもよい。ユーザは、この新しいデータの解釈を学ぶことができる。
【0038】
TAGバイオメトリックフィードバック
バイオメトリックフィードバックプロトコルの一例では、本発明がアルファ脳波(8~12Hz)、シータ脳波(4~7Hz)、および/またはガンマ(40~100Hz)脳波の増加シーケンスをトレーニングし、報酬を与え、刺激することができる。この実施形態では、装置がP3およびP4位置でのアルファ波の増加に報酬を与えるために装着者フィードバックを提供するとともに、これらサイト間の同期性または一貫性にも報酬を与える。
装置はまた、同期性または一貫性を含むCzおよびFz位置におけるシータ周波数の増加に報酬を与える。最後に、このプロトコルは、部位Pz、Fz、Cz、P3、およびP4におけるガンマ周波数の増加に報酬を与える。このフィードバックプロトコルは、適応フィードバックおよび刺激を用いて実施されてもよい。それは、アルファだけを排他的にトレーニングするか、またはアルファ-シータ、またはシータ-ガンマ、またはアルファ-ガンマ、またはシータ-アルファ-ガンマ(TAG)をまとめてトレーニングする。
【0039】
本発明は、シータ、アルファ、ガンマ同期アルゴリズムを適用して、消費者用ウェアラブル装置で深い瞑想状態を誘発し、リラックスした集中力を訓練し、アウトオブボックス思考を磨く。
【0040】
SMRフィードバック
本発明によって実施されるフィードバックプロトコルの別の例は、以下の部位: Cz、C3、および/またはC4のうちの1つ以上において、SMR脳波(12~15Hz)の増加に報酬を与え、刺激する。
【0041】
遅い皮質電位フィードバック
本発明によって実施されるフィードバックプロトコルの別の例は、部位T3/T4、Fp1、P4部位のうちの1つ以上において、低下脳波または緩徐皮質電位において報酬および刺激を与える。
【0042】
本発明はまた、12~15Hzの範囲内で目標とする周波数を絞り込むために使用され得るスマートフォンまたはタブレットのような接続されたデバイスを介して、装着者に質問を促すことができる。
質問には、関与のレベル、頭痛、警戒感、疲労感などのトピックが含まれる可能性がある。
【0043】
デジタル処方箋
この装置は、デジタル処方箋を提供することができる。このシナリオでは、訓練を受けた臨床医、医師によって、または装置自体における生体情報データから、医学的診断が提供される。診断には、ADHD、うつ病、不安などが含まれる。
【0044】
次いで、医師またはデバイスは、処置プロトコルを処方する。処方箋はサーバに格納され、ユーザまたは患者は、装置が治療プロトコルによって記述された生体フィードバックシーケンスを入力する装置上の所定の治療プロトコルにアクセスすることができる。装置は患者のプロトコルの遵守状況、および治療の結果を監視し、このデータを処方の情報源に報告することができる。さらに、これらのデジタル処方箋へのアクセスは、処方されたユーザに限定される。
【0045】
図1は、ヘッドホン装置を、遠隔操作されるサーバであって、追加の機能、記憶装置、およびトランザクション機能をヘッドフォン装置およびそのユーザに提供するサーバへの公衆通信ネットワークに接続することによってヘッドホン装置を遠隔リソースに接続するための例示的なシステムアーキテクチャを示す。
【0046】
図1は、本発明の実施形態に従って動作するクライアントサーバアプリケーションシステム100の一般的なアーキテクチャを示す。好ましい実施形態では、システム100は、クライアント層に配置された1つ以上のクライアントデバイス101、中間層またはサーバアプリケーション層に配置された1つ以上のサーバ102、およびデータベース層に配置された1つ以上のデータベースサーバ103を有する多層またはn層アーキテクチャで実施される。上記の3層アーキテクチャの変形では、第1層のクライアントは、ユーザインターフェースを実行する、すなわち、入力を検証するだけでよい。この場合、中間層がすべてのバックエンドロジックを保持してデータ処理を行い、第3層であるデータサーバがデータ検証を実行してデータベースアクセスを制御する。
【0047】
1つ以上のクライアント装置101は、ネットワーク114を介してシステムサーバ102に接続される。システムサーバ102はネットワーク114を介してクライアント装置101と通信し、本発明のサービスシステム100のためのユーザインターフェースまたはグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を提示する。本発明のサービスシステム100のユーザインターフェースはウェブブラウザを介して、またはシステムサーバ102と通信するモバイルアプリケーションを介して提示することができ、サービスに必要なデータの表示、入力、公開、および/または管理に用いられる。本明細書において、用語「ネットワーク」は、一般に、ユーザにとって単一のネットワークとして見えるように協働する別個のネットワークの任意の集合を意味する。この用語はまた、インターネットプロトコル(IP)および他の類似のプロトコルを用いて互いに接続される、いわゆるワールドワイドな「複数のネットワークのネットワーク」またはインターネットも意味する。
【0048】
本明細書における、図1の例示的な公衆ネットワーク114は、説明のためだけのものであり、また、有線ネットワークでも無線ネットワークであってもよい。説明は、インターネットのような公衆ネットワークを説明する際に一般的に使用される用語を意味しうるが、説明および概念は、図1に示されるものとは異なるアーキテクチャを有するシステムを含む、他の公衆およびプライベートコンピュータネットワークに等しく適用される。
本発明のアイデアは、GSM、UMTS/HSPA、LTE等のような、全ての既存のセルラネットワークトポロジまたはそれぞれの通信規格に適用可能である。
【0049】
本説明に関して、システムサーバ102はネットワークを介してアクセス可能なデータベースシステムに依存する任意のサービスを含むことができ、この場合、データベースシステムのハードウェアおよびソフトウェアの様々な要素は、システム100の1人以上のユーザによって共有されうる。この目的のために、クライアント装置101のユーザ(その要求または指示がネットワーク114を介して受信される)は、任意の個人顧客、政府または非政府組織、グループなどを含むことができる。システムサーバ102によってクライアント装置101上でウェブブラウザまたはモバイルアプリを介して提供されるGUIまたはユーザインターフェースは、ユーザによってサービスシステム100を利用するために利用されてもよい。
【0050】
システムサーバ102に登場する構成要素は、本発明が想定するツールおよびサービスを提供するためのインフラストラクチャを作るために組み立てられる必要がある構成要素の例示的な組合せを示す。当業者には明らかなように、システムサーバ102「内部」のすべての構成要素は、接続されてもよく、広域またはローカルエリアネットワーク(WANまたはLAN)を介して通信してもよい。
【0051】
システムサーバ102は、アプリケーションサーバまたは実行部104を有する。
アプリケーションサーバまたは実行部104は、ウェブサーバ106と、本発明のアプリケーション層として機能するコンピュータサーバ108とを有する。Webサーバ106はリモートブラウザ(すなわち、クライアント装置101にインストールされたブラウザ)からのハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)リクエストに応答して、またはクライアント装置101にインストールされた本発明のモバイルアプリまたはモバイルアプリケーションを介してなされた同様の要求に応答して、電子データファイルを含むWebページを送出するシステムである。ウェブサーバ106は、本発明のモバイルアプリおよび/またはクライアント装置101にインストールされたウェブブラウザと通信して、サービスに必要なユーザインターフェースを提供することができる。
【0052】
コンピュータサーバ108は、プロセッサ110と、情報を一時的に記憶するための不図示のランダムアクセスメモリ(RAM)と、情報を永久的に記憶するための不図示のリードオンリーメモリ(ROM)とを含んでもよい。コンピュータサーバ108は一般に、オペレーティングシステムソフトウェアによって制御および調整することができる。オペレーティングシステムはシステムリソースの割り当てを制御し、とりわけ、処理、スケジューリング、メモリ管理、ネットワーキング、およびI/Oサービスなどのタスクを実行する。したがって、オペレーティングシステムはシステムメモリ内に存在し、CPUによって実行されると、ARサーバ102の他の要素の動作を調整する。
【0053】
コンピュータサーバ108の説明はコンピュータサーバの説明に一般的に用いられる用語を意味しうるが、説明および概念は図1に示されているものとは異なるアーキテクチャを有するシステムを含む、他の処理システムにも同様に適用される。
【0054】
データベース層はデータソースであり、そこでは少なくとも1つのデータベースサーバ103が一般に複数のデータベース112とインタフェースする。これらのデータベースは、ユーザおよび管理者によって頻繁に更新され、プライベートネットワークと、インターネットを含むパブリックネットワーク114との組合せを通じて最も頻繁に更新される。本明細書では、単一のデータベースに格納されるデータとして説明するが、異なる別個のデータベースが複数のユーザの様々なデータおよびファイルを格納することもできることは、当業者には明らかであろう。
【0055】
モバイルアプリケーション、すなわち「アプリ(app)」は、当技術分野で公知の方法を使用してクライアント装置101にダウンロードされ、インストールされ得るコンピュータプログラムである。以下、モバイルアプリ130をアプリ130と呼ぶ。本発明のためにカスタムビルドされたアプリ130は、本発明のシステムを使用して、1人または複数の人が、ライブの対面翻訳サービスに関連する様々なタスクを行うことを可能にする。また、本発明のサービスに関連する動作は、クライアント装置ベースのWebブラウザを介して提示されるユーザインタフェース(またはGUI)を用いて実行することができる。以下、「ユーザインタフェース」という用語は、本発明のアプリユーザインタフェースとウェブブラウザユーザインタフェースの両方を示すために用いられる。クライアント装置101の例としては、モバイルデバイス、タブレット、ハンドヘルドまたはラップトップデバイス、スマートフォン、パーソナルデジタルアシスタント、デスクトップコンピュータ、ウェアラブルデバイス、ARメガネ、VRヘッドセット、または任意の類似のデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
図1に示すように、クライアント装置101は、この種の装置について当技術分野で知られている様々な電子部品を含むことができる。この実施形態では、クライアント装置101が、装置ディスプレイ118と、コンピュータプロセッサ120と、ユーザ入力デバイス122(例えば、タッチスクリーン、キーボード、マイクロフォン、および/または当技術分野で知られている他の形態の入力デバイス)と、通信のための装置トランシーバ124と、装置メモリ128と、コンピュータメモリ128に動作可能にインストールされたARアプリ130と、デバイスメモリ128にさらにインストールされたローカルデータストア134と、前述の構成要素を相互接続するデータバス126とを含むことができる。本出願の目的のために、用語「トランシーバー」は、セルラー、WIFI、無線、および/または当該技術分野で知られている他の形態の無線または有線通信のための、当該技術分野で知られている任意の形態の送信機および/または受信機を含むように定義される。
【0057】
明らかに、これらの要素は、当該技術分野で知られている代替物を含んでもよく、そのような代替実施形態は、請求項に係る発明の範囲に含まれるものと見なされるべきである。代替的な実施形態は、本発明の神経フィードバックおよび神経刺激モダリティを、ヘッドフォン以外の他の適切なウェアラブルデバイスに統合することを含むが、決してこれらに限定されるものではない。当業者の1人は、装着者の脳の適切な領域への刺激および測定が可能である限り、そのような代替的な実施形態が可能であることを理解するであろう。当業者の1人はまた、他の既知のPBMおよびEEGプロトコルの適用が、本発明の範囲内で可能であろうことを理解するであろう。本明細書で提供される実施例は、本質的に例示的なものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書および図面に記載された発明。
【外国語明細書】