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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024031993
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】拮抗的抗原結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240229BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240229BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240229BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240229BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240229BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240229BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240229BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240229BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240229BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240229BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/13
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/18
A61P31/20
A61P31/22
A61P31/04
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61P37/04
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/76
C07K16/46
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196462
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2021500349の分割
【原出願日】2019-03-22
(31)【優先権主張番号】18163432.0
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520363465
【氏名又は名称】ケイレス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】ニコシア,アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】ザンブラーノ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】サッソ,エマヌエーレ
(72)【発明者】
【氏名】デ ロレンツォ,クラウディア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】拮抗的抗原結合タンパク質を提供する。
【解決手段】一態様では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、PD-1への結合について、特定の配列におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と別の特定の配列におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、と競合する、拮抗的抗原結合タンパク質を提供する。また、拮抗的結合タンパク質をコードする核酸、該核酸分子を含む組換え発現ベクター、該ベクターを含む宿主細胞、上記拮抗的抗原結合タンパク質を作製する方法、該方法により製造される拮抗的結合タンパク質、及び上記拮抗的結合タンパク質、上記核酸又は上記ベクターを含む医薬組成物を提供する。更に、上記医薬組成物を含むキット、並びに癌及び/又は慢性感染症の治療における上記拮抗的結合タンパク質の使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、PD-1への結合について、
(i)配列番号2におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号3におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(ii)配列番号11におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号12におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
と競合する、拮抗的抗原結合タンパク質。
【請求項2】
PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、PD-L1への結合について、
(i)配列番号20におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号21におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(ii)配列番号29におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号30におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(iii)配列番号83におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号84におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(iv)配列番号92におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号93におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(v)配列番号101におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号102におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
と競合する、拮抗的抗原結合タンパク質。
【請求項3】
LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、LAG-3への結合について、
(i)配列番号38におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号39におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
(ii)配列番号47におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号48におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
(iii)配列番号56におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号57におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
(iv)配列番号65におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号66におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(v)配列番号74におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号75におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
と競合する、拮抗的抗原結合タンパク質。
【請求項4】
PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、
(i)以下の組み合わせ:
配列番号3に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号12に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号11に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせ、
(ii)以下の組み合わせ:
配列番号8のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号9のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号17のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号18のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせ、
のいずれかを含み、好ましくは、配列番号4又は配列番号13のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号6又は配列番号15のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2、配列番号5又は配列番号14のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、及び配列番号7又は配列番号16のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2からなる群から選択される1つ以上を更に含む、拮抗的抗原結合タンパク質。
【請求項5】
PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、
(i)以下の組み合わせ:
配列番号21に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号20に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号30に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号29に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号84に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号83に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号93に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号92に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号102に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号101に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせ、
(ii)以下の組み合わせ:
配列番号26のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号27のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号35のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号36のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号89のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号90のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号98のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号99のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号107のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号108のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせ、
のいずれかを含み、好ましくは、配列番号22、配列番号31、配列番号85、配列番号94又は配列番号103のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号24、配列番号33、配列番号87、配列番号96又は配列番号105のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2、配列番号23、配列番号32、配列番号86、配列番号95又は配列番号104のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、及び配列番号25、配列番号34、配列番号88、配列番号97又は配列番号106のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2からなる群から選択される1つ以上を更に含む、拮抗的抗原結合タンパク質。
【請求項6】
LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、
(i)以下の組み合わせ:
配列番号39に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号38に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号48に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号47に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号57に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号56に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号66に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号65に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号75に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号74に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせ、
(ii)以下の組み合わせ:
配列番号44のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号45のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号53のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号54のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号62のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号63のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号71のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号72のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号80のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号81のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせ、
のいずれかを含み、好ましくは、配列番号40、配列番号49、配列番号58、配列番号67又は配列番号76のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号42、配列番号51、配列番号60、配列番号69又は配列番号78のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2、配列番号41、配列番号50、配列番号59、配列番号68又は配列番号77のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、及び配列番号43、配列番号52、配列番号61、配列番号70又は配列番号79のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2からなる群から選択される1つ以上を更に含む、拮抗的抗原結合タンパク質。
【請求項7】
(a)前記抗原結合タンパク質は、抗体、抗体様タンパク質又はそれらの断片であり、好ましくは、前記抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、組換え抗体、抗原結合性抗体断片、一本鎖抗体、一本鎖可変断片抗体、ダイアボディ、Fab断片、F(ab)2断片、抗体ミメティック、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択され、及び/又は、
(b)前記抗原結合タンパク質は、以下の特性:
(i)100 nM未満、50 nM未満、10 nM未満、1 nM未満、100 pM未満、10 pM未満又は5 pM未満のKdでPD-1、PD-L1又はLAG-3に結合する特性、
(ii)10 nM未満、1 nM未満又は200 pM未満のIC50でPD-1、PD-L1又はLAG-3へのリガンドの結合を遮断することができる特性、
(iii)T細胞増殖を刺激する特性、
(iv)リンパ球の増殖を誘導する特性、
(v)IL-2及び/又はIFNγの分泌を誘導する特性、及び/又は、
(vi)ベースライン値と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%腫瘍体積を減少させる特性、
の少なくとも1つを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質をコードする核酸。
【請求項9】
請求項8に記載の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質を作製する方法であって、前記抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞から前記抗原結合タンパク質を調製する工程を含む、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の宿主細胞における組換えDNAの発現により産生される拮抗的抗原結合タンパク質。
【請求項13】
少なくとも1つの請求項1~7若しくは請求項12のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質、請求項8に記載の核酸、又は請求項9に記載のベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物であって、好ましくは、少なくとも1種の更なる活性作用物質を含む、医薬組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の医薬組成物と、任意に少なくとも1種の更なる活性作用物質とを含むキット。
【請求項15】
癌及び/又は慢性感染症の治療において使用される、請求項1~7若しくは請求項12のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質、請求項8に記載の核酸、請求項9に記載のベクター、又は請求項13に記載の医薬組成物であって、好ましくは、
(i)前記癌は、
(a)口唇、口腔及び咽頭の悪性新生物、及び/又は、
(b)消化器の悪性新生物、及び/又は、
(c)呼吸器及び胸腔内臓器の悪性新生物、及び/又は、
(d)骨及び関節軟骨の悪性新生物、及び/又は、
(e)黒色腫及び他の皮膚の悪性新生物、及び/又は、
(f)中皮組織及び軟部組織の悪性新生物、及び/又は、
(g)乳房の悪性新生物、及び/又は、
(h)女性生殖器の悪性新生物、及び/又は、
(i)男性生殖器の悪性新生物、及び/又は、
(j)尿路の悪性新生物、及び/又は、
(k)目、脳及び他の中枢神経系の部分の悪性新生物、及び/又は、
(l)甲状腺及び他の内分泌腺の悪性新生物、及び/又は、
(m)リンパ系、造血系及び関連組織の悪性新生物、
からなる群から選択され、及び/又は、
(ii)前記慢性感染症は、HBV、HCV、HIV、HSV、HPV、EBV、CMV及びクラミジアからなる群から選択され、及び/又は、
(iii)少なくとも1種の更なる活性作用物質は、それを必要とする被験体に投与され、好ましくは、前記少なくとも1種の更なる活性作用物質と、請求項1~7若しくは請求項12のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質、請求項8に記載の核酸、請求項9に記載のベクター、又は請求項13に記載の医薬組成物とは、同時若しくは順次のいずれかで又はそれらの組み合わせで投与される、拮抗的抗原結合タンパク質、核酸、ベクター、又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拮抗的抗原結合タンパク質、該拮抗的結合タンパク質をコードする核酸、該核酸分子を含む組換え発現ベクター、該ベクターを含む宿主細胞、上記拮抗的抗原結合タンパク質を作製する方法、該方法により製造される拮抗的結合タンパク質、及び上記拮抗的結合タンパク質、上記核酸又は上記ベクターを含む医薬組成物に関する。本発明は更に、上記医薬組成物を含むキット、並びに癌及び/又は慢性感染症の治療における上記拮抗的結合タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗腫瘍応答に関与する免疫細胞の活性化及び増殖は、免疫抑制受容体を阻害するか、又はTリンパ球及びBリンパ球若しくはNK細胞の表面で発現される共刺激モジュレーター(免疫チェックポイントと総称される)を活性化して、それらの腫瘍特異的応答を増強するモノクローナル抗体(mAbs)が標的とし得る多数の刺激経路及び阻害経路によって制御される。
【0003】
この着想を臨床に橋渡しすることで、新規の効果的な免疫療法が開発された。これまでに、CTLA4(イピリムマブ)、PD-1(ニボルマブ及びペムブロリズマブ)及びPD-L1(アテゾリズマブ、デュルバルマブ及びアベルマブ)等の免疫抑制受容体を標的とする3つのクラスのヒト又はヒト化モノクローナル抗体が、黒色腫、NSCLC、RCC、頭頸部扁平上皮癌、ホジキンリンパ腫、尿路上皮癌、MSI CRC及びメルケル細胞癌を含む幾つかの腫瘍の治療のために承認されている。
【0004】
これらの免疫療法の著しい成功により拍車がかかって、新規の免疫経路を標的とすることにより更に効果的な治療を見出すことを期待して、他の免疫調節受容体に対する更に多くの抗体が臨床に持ち込まれている。実際は、それらの成功にもかかわらず、現在承認されている免疫チェックポイントに対する抗体(したがって、チェックポイント阻害剤(CI)と総称される)は、患者の約20%~30%にしか有効でない。新しい標的の中で、活性化Tリンパ球及びT制御性リンパ球で発現される免疫抑制受容体であるリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、T細胞免疫グロブリン3(TIM-3)、癌における疲弊CD8陽性T細胞で発現されるT細胞免疫グロブリン及びITIMドメイン(TIGIT)等の共抑制受容体がある。CD8 T細胞機能の改善の他に、Lag-3、TIM-3及びTIGITの遮断が、腫瘍組織のTreg細胞及びIL-10産生Tr1細胞に影響を及ぼすと予想されている。Bリンパ球及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)は、T細胞の活性化の間に発現が誘導される、ヒトCD8陽性癌特異的T細胞の阻害につながる別の共抑制受容体である。BTLAはB7ホモログのB7H4と相互作用するが、PD-1及びCTLA-4とは異なり、BTLAは細胞表面受容体のB7ファミリーのみならず、腫瘍壊死ファミリー受容体(TNF-R)との相互作用を介してT細胞阻害を示す。
【0005】
同様に、活性化リンパ球の早期死を防ぐ二次共刺激免疫チェックポイント分子であるOX40並びに活性化CD4 Tリンパ球及びCD8 Tリンパ球で発現される41BB等の共刺激受容体を認識する作動的抗体は臨床段階に達している。抗体媒介性免疫療法の優れた標的とみなされる他の共刺激タンパク質は、CD28スーパーファミリーに属する免疫チェックポイントタンパク質である誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)及び腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーであるCD27である。
【0006】
免疫調節抗体に基づく癌免疫療法は、現代の腫瘍学の中核になりつつある。チェックポイント阻害剤(すなわち、抗PD-1、抗PD-L1及び抗CTLA4)は、かつてないほどの有効性と共に、長期にわたる臨床的便益を達成することが示されている。ことによると最も重要なことには、これらの抗体は極めて広範な用途を有し、現在承認されている抗体は幾つかの腫瘍の治療に使用されている。これにもかかわらず、CIによる治療効果は依然として集団の20%~30%に限定され、結腸直腸癌、乳癌及び前立腺癌等の高頻度に見られる癌の種類では示され得なかった。しかしながら、共刺激受容体又は抑制受容体のそれぞれに作動的活性又は拮抗的活性を有する新しい標的に対するモノクローナル抗体の蓄えが近年充実していることから、免疫に基づく癌療法の可能性を高める新しい併用療法を設計することが可能となっている。
【0007】
種々の免疫チェックポイント受容体に対する抗体を組み合わせることで、相加的活性又は相乗的活性を達成することもでき、こうしてより優れた有効性につながる可能性がある。このアプローチの概念実証は、転移性黒色腫の治療においてイピリムマブとニボルマブとの併用療法の有効性が単剤療法に対して増加したという知見によってもたらされた。
【0008】
現在、単剤療法で又は他の生物製剤若しくは小分子と組み合わせて使用される免疫調節受容体に対する既に承認された抗体又は新規の抗体を用いた1000件を超える臨床試験が行われている。種々の免疫チェックポイントに対する抗体の多数のセットを単独の研究室で入手することはできないため、これらの試験のほとんどは、最も有効な治療の予測を可能にする前臨床の直接比較なしで展開されている。
【0009】
本発明者らは、ファージに提示された抗体ライブラリーの迅速な並行スクリーニングのための方略を使用して、活性化ヒトリンパ球に対して直接パニングすることによって、幾つかの免疫調節チェックポイントに対する完全ヒト型モノクローナル抗体の大規模なレパートリーを作製した。こうして選択されたモノクローナル抗体は、それらの標的に対する高い結合親和性及びリンパ球に対する改善された機能的活性を備えることが実証された。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、PD-1への結合について、
(i)配列番号2におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号3におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(ii)配列番号11におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号12におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
と競合する、拮抗的抗原結合タンパク質を提供する。
【0011】
第2の態様では、本発明は、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、PD-L1への結合について、
(i)配列番号20におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号21におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(ii)配列番号29におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号30におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(iii)配列番号83におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号84におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(iv)配列番号92におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号93におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(v)配列番号101におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号102におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
と競合する、拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0012】
第3の態様では、本発明は、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、LAG-3への結合について、
(i)配列番号38におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号39におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
(ii)配列番号47におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号48におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
(iii)配列番号56におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号57におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
(iv)配列番号65におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号66におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(v)配列番号74におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号75におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
と競合する、拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0013】
第4の態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、
(i)以下の組み合わせ:
配列番号3に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号12に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号11に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせ、
(ii)以下の組み合わせ:
配列番号8のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号9のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号17のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号18のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせ、
のいずれかを含む、拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0014】
第5の態様では、本発明は、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、
(i)以下の組み合わせ:
配列番号21に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号20に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号30に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号29に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号84に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号83に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号93に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号92に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号102に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号101に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせ、
(ii)以下の組み合わせ:
配列番号26のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号27のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号35のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号36のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号89のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号90のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号98のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号99のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号107のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号108のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせ、
のいずれかを含む、拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0015】
第6の態様では、本発明は、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、
(i)以下の組み合わせ:
配列番号39に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号38に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号48に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号47に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号57に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号56に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号66に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号65に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号75に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号74に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせ、
(ii)以下の組み合わせ:
配列番号44のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号45のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号53のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号54のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号62のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号63のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号71のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号72のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号80のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号81のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせ、
のいずれかを含む、拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0016】
第7の態様では、本発明は、本発明の態様1~態様6のいずれか1つの拮抗的抗原結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0017】
第8の態様では、本発明は、第7の態様による核酸分子を含む組換え発現ベクターに関する。
【0018】
第9の態様では、本発明は、本発明の第8の態様のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0019】
第10の態様では、本発明は、本発明の態様1~態様6のいずれか1つの拮抗的抗原結合タンパク質を作製する方法であって、前記抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞から前記抗原結合タンパク質を調製する工程を含む、方法に関する。
【0020】
第11の態様では、本発明は、本発明の第9の態様の宿主細胞における組換えDNAの発現により産生される拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0021】
第12の態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明の態様1~態様6のいずれか1つによる拮抗的抗原結合タンパク質、本発明の第7の態様による核酸、又は本発明の第8の態様によるベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物に関する。
【0022】
第13の態様では、本発明は、本発明の第12の態様による医薬組成物と、任意に少なくとも1種の更なる活性作用物質とを含むキットに関する。
【0023】
第14の態様では、本発明は、癌及び/又は慢性感染症の治療に使用される、本発明の態様1~態様6のいずれか1つによる拮抗的抗原結合タンパク質、本発明の第7の態様の核酸、本発明の第8の態様のベクター、又は本発明の第12の態様の医薬組成物に関する。
【0024】
以下で、本明細書に含まれる図面の内容を記載する。これに関連して、上記及び/又は下記の発明の詳細な説明も参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】イムノームスクリーニングを示す図である。スクリーニング手順は、活性化PBMCに対して未選択のライブラリーをパニングすることによって行われる種々の標的に共通したユニバーサルサイクルから開始した(内側の円)。各々の末広がりの扇形は、100万あたりのカウント値に従ってスコア付けされた、示された標的の1番目から10番目のscFvクローンの濃縮プロファイルを表している。各々の扇形内の線は、サイクル2(小さな円)及びサイクル3(大きな円)の後に得られた個々の濃縮を結んでいる。サイクル2及びサイクル3を、両方とも組換えタンパク質に対して実施した。
図2-1】選択された抗体のリンパ球に対する結合親和性を示す図である。ELISAアッセイは、モノクローナル抗体を漸増濃度(7.5 nM、25 nM、50 nM、100 nM)で使用して、活性化hPBMC(黒色の曲線)又は未処理のhPBMC(灰色の曲線)に対して実施した。各組換えタンパク質/Fcに対しても抗体を漸増濃度でELISAアッセイにより試験し、Kd値を表に報告する。
図2-2】同上
図2-3】同上
図3】免疫調節抗体の不存在下又は存在下での2.5 μg/mlのPHAによる刺激後のhPBMCの増殖を示す図である。示された選択された抗体によって決定されるCD3-T細胞増殖の増加倍率を、抗体の不存在下又は無関係のIgG4の存在下での2.5 μg/mlのPHAによるhPBMCの活性化に関して測定した。
図4】腫瘍細胞によって誘導されるリンパ球増殖に対する抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体の効果を示す図である。抗体の不存在下(白色の棒)又は漸増濃度(50 nM及び200 nM)のPD-L1_A(明灰色の棒)抗体若しくはPD-1_A(灰色の棒)抗体の存在下にMDA-MB-231(A)腫瘍細胞又はMCF-7(B)腫瘍細胞と一緒に37℃で72時間共培養されたhPBMC試料における抗BrdU抗体を用いたELISAによって得られた正規化された吸光度値によって決定されるhPBMC増殖の増加倍率。両方の実験で、ニボルマブをポジティブコントロールとして使用した(黒色の棒)。
図5】刺激されたT細胞によるサイトカインの分泌に対する新規の免疫調節抗体の効果を示す図である。抗体の不存在下又は抗体LAG-3_A、PD-1_A、PD-1_B、PD-L1_A、PD-L1_Bの存在下にて37℃で18時間~66時間にわたりPHA(2.5 μg/mL)又はSEB(50 ng/mL)で刺激されたhPBMCの上清に対するELISAアッセイによって得られたIL-2値及びIFNγ値。ニボルマブ及び無関係の抗体を、それぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして使用した。
図6】PD-1_A抗体及びPD-L1_A抗体のin vivo抗腫瘍活性を示す図である。0日目にCT26細胞を接種し、3日目、6日目及び10日目にPD-1_A、PD-L1_A又はマウスPD-1及びPD-L1に対して反応するポジティブコントロール抗体(α-mPD-1、α-mPD-L1)で処理したマウスにおける腫瘍成長。腫瘍チャレンジの21日後の腫瘍体積が示されている。
図7】リンパ球への抗PD-L1抗体の結合を示す図である。抗体PD-L1_C、PD-L1_D及びPD-L1_EがPD-L1タンパク質に結合することができるかどうかをPD-L1_Aと比較して評価するために、これら全てのモノクローナル抗体の結合曲線を、ヒト活性化リンパ球に対して作成した。健康なドナーから分離されたヒトPBMCを抗CD3/CD28ビーズで活性化して、PD-L1発現を刺激した。次いで、PD-L1_A抗体、PD-L1_C抗体、PD-L1_D抗体、PD-L1_E抗体を広範囲の濃度で添加し、フローサイトメトリー(CytoFLEXフローサイトメーター、Beckman Coulter社)により分析した。PD-L1を結合しているリンパ球の平均蛍光強度を抗体濃度に対してプロットした(図7A図7B)。
図8】刺激されたT細胞によるサイトカインの分泌に対する抗PD-L1抗体の効果を示す図である。抗体の不存在下又は抗体PD-L1_A、PD-L1_C及びPD-L1_Dの存在下にて37℃で18時間~66時間にわたりPHA(2.5 μg/mL)又はSEB(50 ng/mL)で刺激されたhPBMCの上清に対するELISAアッセイによって得られたIL-2値及びIFNγ値。ニボルマブ及び無関係の抗体を、それぞれポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして使用した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
配列の一覧
配列番号1 PD-1_Aのアミノ酸配列
配列番号2 PD-1_A;VHのアミノ酸配列
配列番号3 PD-1_A;VLのアミノ酸配列
配列番号4 PD-1_A;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号5 PD-1_A;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号6 PD-1_A;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号7 PD-1_A;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号8 PD-1_A;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号9 PD-1_A;CDRL3のアミノ酸配列
配列番号10 PD-1_Bのアミノ酸配列
配列番号11 PD-1_B;VHのアミノ酸配列
配列番号12 PD-1_B;VLのアミノ酸配列
配列番号13 PD-1_B;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号14 PD-1_B;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号15 PD-1_B;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号16 PD-1_B;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号17 PD-1_B;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号18 PD-1_B;CDRL3のアミノ酸配列
配列番号19 PD-L1_Aのアミノ酸配列
配列番号20 PD-L1_A;VHのアミノ酸配列
配列番号21 PD-L1_A;VLのアミノ酸配列
配列番号22 PD-L1_A;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号23 PD-L1_A;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号24 PD-L1_A;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号25 PD-L1_A;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号26 PD-L1_A;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号27 PD-L1_A;CDRL3のアミノ酸配列
配列番号28 PD-L1_Bのアミノ酸配列
配列番号29 PD-L1_B;VHのアミノ酸配列
配列番号30 PD-L1_B;VLのアミノ酸配列
配列番号31 PD-L1_B;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号32 PD-L1_B;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号33 PD-L1_B;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号34 PD-L1_B;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号35 PD-L1_B;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号36 PD-L1_B;CDRL3のアミノ酸配列
配列番号37 LAG-3_Aのアミノ酸配列
配列番号38 LAG-3_A;VHのアミノ酸配列
配列番号39 LAG-3_A;VLのアミノ酸配列
配列番号40 LAG-3_A;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号41 LAG-3_A;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号42 LAG-3_A;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号43 LAG-3_A;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号44 LAG-3_A;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号45 LAG-3_A;CDRL3のアミノ酸配列
配列番号46 LAG-3_Cのアミノ酸配列
配列番号47 LAG-3_C;VHのアミノ酸配列
配列番号48 LAG-3_C;VLのアミノ酸配列
配列番号49 LAG-3_C;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号50 LAG-3_C;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号51 LAG-3_C;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号52 LAG-3_C;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号53 LAG-3_C;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号54 LAG-3_C;CDRL3のアミノ酸配列
配列番号55 LAG-3_Dのアミノ酸配列
配列番号56 LAG-3_D;VHのアミノ酸配列
配列番号57 LAG-3_D;VLのアミノ酸配列
配列番号58 LAG-3_D;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号59 LAG-3_D;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号60 LAG-3_D;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号61 LAG-3_D;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号62 LAG-3_D;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号63 LAG-3_D;CDRL3のアミノ酸配列
配列番号64 LAG-3_Bのアミノ酸配列
配列番号65 LAG-3_B;VHのアミノ酸配列
配列番号66 LAG-3_B;VLのアミノ酸配列
配列番号67 LAG-3_B;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号68 LAG-3_B;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号69 LAG-3_B;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号70 LAG-3_B;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号71 LAG-3_B;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号72 LAG-3_B;CDRL3のアミノ酸配列
配列番号73 LAG-3_Eのアミノ酸配列
配列番号74 LAG-3_E;VHのアミノ酸配列
配列番号75 LAG-3_E;VLのアミノ酸配列
配列番号76 LAG-3_E;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号77 LAG-3_E;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号78 LAG-3_E;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号79 LAG-3_E;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号80 LAG-3_E;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号81 LAG-3_E;CDRL3のアミノ酸配列
配列番号82 PD-L1_Cのアミノ酸配列
配列番号83 PD-L1_C;VHのアミノ酸配列
配列番号84 PD-L1_C;VLのアミノ酸配列
配列番号85 PD-L1_C;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号86 PD-L1_C;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号87 PD-L1_C;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号88 PD-L1_C;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号89 PD-L1_C;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号90 PD-L1_C;CDRL3のアミノ酸配列
配列番号91 PD-L1_Dのアミノ酸配列
配列番号92 PD-L1_D;VHのアミノ酸配列
配列番号93 PD-L1_D;VLのアミノ酸配列
配列番号94 PD-L1_D;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号95 PD-L1_D;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号96 PD-L1_D;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号97 PD-L1_D;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号98 PD-L1_D;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号99 PD-L1_D;CDRL3のアミノ酸配列
配列番号100 PD-L1_Eのアミノ酸配列
配列番号101 PD-L1_E;VHのアミノ酸配列
配列番号102 PD-L1_E;VLのアミノ酸配列
配列番号103 PD-L1_E;CDRH1のアミノ酸配列
配列番号104 PD-L1_E;CDRL1のアミノ酸配列
配列番号105 PD-L1_E;CDRH2のアミノ酸配列
配列番号106 PD-L1_E;CDRL2のアミノ酸配列
配列番号107 PD-L1_E;CDRH3のアミノ酸配列
配列番号108 PD-L1_E;CDRL3のアミノ酸配列
【0027】
本発明を下記に詳細に説明する前に、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル及び試薬は変更することができるため、本発明がこれらに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態を説明することを目的とするものに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。他に定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0028】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", Leuenberger, H.G.W, Nagel, B. and Klbl, H. eds. (1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland)に記載のように定義される。
【0029】
以降の本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、文脈により特に必要とされない限り、用語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の別形は、示された整数若しくは工程又は複数の整数若しくは複数の工程の群を包含することを意味するが、その他のあらゆる整数若しくは工程又は複数の整数若しくは複数の工程の群を除外することを意味しないと解釈される。以下の節で、本発明の種々の態様をより詳細に定義する。こうして定義される各々の態様は、そうでないことが明確に示されていない限り、任意のその他の1つ以上の態様と組み合わせることができる。特に、任意であること、好ましいこと又は有利であることが示されるいずれかの特徴は、任意であること、好ましいこと又は有利であることが示されるいずれかのその他の1つ以上の特徴と組み合わせることができる。
【0030】
幾つかの文献が本明細書の文章全体を通して引用される。本明細書に引用される各々の文献(特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、使用説明書等の全てを含む)は、上記又は下記を問わず、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書中のいずれの記載も、本発明が先行発明のためにかかる開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるものではない。本明細書で引用される文献の幾つかは、「引用することにより本明細書の一部をなす」として特徴付けられる。そのような本明細書の一部をなす参考文献の定義又は教示と本明細書に列挙される定義又は教示との間に矛盾が生ずる場合に、本明細書の文章が優先される。
【0031】
下記で本発明の要素を記載する。これらの要素は特定の実施形態とともに挙げられているが、更なる実施形態を作成するのに、これらの要素をどのような方法及びどのような数でも組み合わせることができることを理解されたい。多様に記載された実施例及び好ましい実施形態は、本発明を例示的に記載された実施形態のみに限定するものとは解釈されない。本明細書は例示的に記載された実施形態と、あらゆる数の開示された及び/又は好ましい要素とを組み合わせた実施形態を支持及び包含するものであると理解されたい。さらに文脈上他に指定のない限り、本出願において記載された全ての要素のあらゆる並び替え(permutations)及び組み合わせが本出願の明細書により開示されていると見なされる。
【0032】
定義
以下で、本明細書で頻繁に使用される用語の幾つかの定義を示す。これらの用語は、それらがそれぞれ使用される場合に、本明細書の残りの部分では、それぞれ定義される意味及び好ましい意味を有することとなる。
【0033】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、数量を特定していない単数形(the singular forms "a", "an", and "the")は、文脈上他に明確に示されていない限り、複数の指示対象を含む。
【0034】
本明細書で使用される「拮抗的」という用語は、通常は生物学的応答を提供する第2の分子に結合してそれを遮断することによって上記生物学的応答を遮断又は減衰させる任意の分子又は分子の一部を指す。「拮抗的」という用語は、「競合的アンタゴニスト」、「非競合的アンタゴニスト(non-competitive antagonists)」、「不競合的アンタゴニスト(uncompetitive antagonists)」、「部分的アゴニスト」及び「逆アゴニスト」を含む。
【0035】
本明細書で使用される「PD-1」という用語は、CD279としても知られるプログラム細胞死タンパク質1を指す。
【0036】
本明細書で使用される「PD-L1」という用語は、CD274又はB7ホモログ1(B7-H1)としても知られるプログラム死リガンド1を指す。
【0037】
本明細書で使用される「LAG-3」という用語は、CD223としても知られるリンパ球活性化遺伝子3を指す。
【0038】
「抗原結合タンパク質」という用語は、本明細書中で使用する場合、標的分子又は標的エピトープと特異的に結合することができる任意の分子又は分子の一部を指す。本出願の文脈において好ましい結合タンパク質は、(a)抗体若しくはその抗原結合断片、(b)オリゴヌクレオチド、(c)抗体様タンパク質又は(d)ペプチド模倣物である。
【0039】
本明細書中で使用する場合、第1の化合物(例えば抗体)は、第2の化合物(例えば、標的タンパク質等の抗原)に対する解離定数Kdが、1 mM以下、好ましくは100 μM以下、好ましくは50 μM以下、好ましくは30 μM以下、好ましくは20 μM以下、好ましくは10 μM以下、好ましくは5 μM以下、より好ましくは1 μM以下、より好ましくは900 nM以下、より好ましくは800 nM以下、より好ましくは700 nM以下、より好ましくは600 nM以下、より好ましくは500 nM以下、より好ましくは400 nM以下、より好ましくは300 nM以下、より好ましくは200 nM以下、更により好ましくは100 nM以下、更により好ましくは90 nM以下、更により好ましくは80 nM以下、更により好ましくは70 nM以下、更により好ましくは60 nM以下、更により好ましくは50 nM以下、更により好ましくは40 nM以下、更により好ましくは30 nM以下、更により好ましくは20 nM以下、更により好ましくは10 nM以下である場合に、上記第2の化合物に「結合」するとみなされる。
【0040】
典型的には、第1の化合物(例えば、抗体)は、第2の化合物(例えば、標的タンパク質等の抗原)に対する解離定数Kdが10 nMから1 mMの間、10 nMから100 μMの間、10 nMから50 μMの間、10 nMから1 μMの間、好ましくは10 nMから900 nMの間、10 nMから800 nMの間、10 nMから700 nMの間、10 nMから600 nMの間、より好ましくは10 nMから500 nMの間、10 nMから400 nMの間、10 nMから300 nMの間、10 nMから200 nMの間、10 nMから100 nMの間、例えば10 nMから90 nMの間、10 nMから80 nMの間、10 nMから70 nMの間、10 nMから60 nMの間、10 nMから50 nMの間、10 nMから40 nMの間、10 nMから30 nMの間、10 nMから20 nMの間である場合に、上記第2の化合物に「結合する」とみなされる。本発明による「結合」という用語は好ましくは、特異的結合に関する。「特異的結合」は、結合タンパク質(例えば抗体)が、別の標的との結合と比較して特異的な標的、例えばエピトープとより強く結合することを意味する。結合タンパク質は、該結合タンパク質が第2の標的に対する解離定数より低い解離定数(Kd)で第1の標的と結合する場合、第2の標的と比較して第1の標的とより強く結合する。好ましくは、結合タンパク質が特異的に結合する標的についての解離定数(Kd)は、該結合タンパク質が特異的に結合しない標的についての解離定数(Kd)より10倍超、好ましくは20倍超、より好ましくは50倍超、更により好ましくは100倍超、200倍超、500倍超又は1000倍超低い。
【0041】
例えば、結合タンパク質が特異的に結合する標的についての解離定数(Kd)は、結合タンパク質が特異的に結合しない標的についての解離定数(Kd)よりも10倍~1000倍低く、例えば、結合タンパク質が特異的に結合しない標的についての解離定数(Kd)よりも20倍~1000倍、50倍~1000倍、100倍~1000倍、200倍~1000倍、300倍~1000倍、400倍~1000倍、500倍~1000倍低い。
【0042】
本明細書中で使用する場合、「Kd」(「mol/L」(「M」と略されることもある)で測定される)という用語は、結合タンパク質(例えば抗体又はその断片)と標的分子(例えば抗原又はそのエピトープ)との間の特定の相互作用の解離平衡定数を指すことを意図する。化合物の結合親和性を決定する方法、すなわち、解離定数Kdを決定する方法は当業者に知られており、例えば、当該技術分野で既知の以下の方法:表面プラズモン共鳴(SPR)ベースの技術、バイオレイヤー干渉法(BLI)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、フローサイトメトリー、等温滴定型熱量測定(ITC)、分析的超遠心分離、ラジオイムノアッセイ(RIA又はIRMA)及び増強化学発光(ECL)から選択され得る。本出願の文脈では、「Kd」値は、室温(25℃)での表面プラズモン共鳴分光法(Biacore(商標))によって決定される。例えば、表面プラズモン共鳴分析は、典型的には、例えばCM5センサーチップ(GE Healthcare社)を備えたBiacore X100機器(GE Healthcare社)にて25℃で実施され、その際、例えば、HBS-EPバッファー(10 mMのHepes、0.15 MのNaCl、3 mMのEDTA、及び0.05%の界面活性剤P20、pH 7.4)をランニングバッファーとして使用した(GE Healthcare社)。
【0043】
「IC50」値は、物質の半最大阻害濃度を指すため、これは特定の生物学的機能又は生化学的機能の阻害における物質の有効性の尺度である。この値は通常、モル濃度として表される。薬物のIC50は、機能的拮抗アッセイにおいて用量-応答曲線を作成し、種々の濃度での被検査物質の阻害効果を調べることによって決定され得る。あるいは、IC50値を決定するために、競合結合アッセイを実施することもできる。典型的には、本発明の阻害抗体は、50 nMから1 pMの間、より好ましくは10 nMから10 pMの間、更により好ましくは1 nMから50 pMの間、すなわち50 nM、10 nM、1 nM、900 pM、800 pM、700 pM、600 pM、500 pM、400 pM、300 pM、200 pM、100 pM、50 pM、又は1 pMのIC50値を示す。
【0044】
細胞増殖は、Tリンパ球活性化を監視する信頼のおける手段として認められている。Tリンパ球の増殖は、Nat. Prot. 2007; 2(9):2049-56に記載されているようにCFSEカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステルを使用して効果的に監視される。
【0045】
IL-2又はIFN-γの分泌は、Tリンパ球活性化を監視する別の信頼のおける手段である。分泌されたサイトカインタンパク質の検出は、これまでに最も広く使用されている種類の分析である。分泌されたタンパク質は生物学的に関連のある部分であるため、それを検出することは、細胞が応答する対象を最も密接に表現している。分泌されるタンパク質は、典型的にはELISAによって測定される。本明細書では、hPBMC(1×106個の細胞)を培養し、抗体の不存在下又は選択された抗LAG-3モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗PD-1モノクローナル抗体(20 μg/mL)若しくはネガティブコントロールとして使用されるアイソタイプコントロール抗体の存在下で、2.5 μg/mLのPHA-L又は50 ng/mLのブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)で18時間、42時間及び66時間刺激した。ニボルマブを、同じ条件で並行アッセイのポジティブコントロールとして試験した。細胞培養上清中のIL-2又はIFNγの濃度は、ELISAアッセイ(DuoSet ELISA、R&D Systems社)によって製造業者の推奨に従って標準曲線と比較して決定した。濃度値は、少なくとも3回の測定の平均として報告された(標準偏差≦5%)。
【0046】
動物研究では、抗癌療法に対する応答を評価するために腫瘍サイズが使用される。皮下異種移植腫瘍の体積をin vivoで決定するための最近の標準的な技術は、腫瘍体積を改変楕円体式(modified ellipsoid formula)1/2(長さ×幅2)の使用により計算する外部キャリパー(external caliper)によるものである。
【0047】
「競合する」という用語は、同じエピトープに対して競合する抗原結合タンパク質の文脈で使用される場合に、試験される抗原結合タンパク質(例えば、抗体又はその免疫学的に機能的な断片)が、参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンド又は参照抗体)の共通の抗原(例えば、PD-1、PD-L1及び/又はLAG-3又はそれらの断片)への特異的結合を妨げる又は阻害する(例えば、減少させる)アッセイによって決定される抗原結合タンパク質間の競合を意味する。多くの種類の競合結合アッセイ、例えば:固相直接ラジオイムノアッセイ又は間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接酵素イムノアッセイ又は間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al., 1983, Methods in Enzymology 9:242-253を参照)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al., 1986, J. Immunol. 137:3614-3619を参照)、固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane, 1988, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Pressを参照)、I-125標識を使用した固相直接標識RIA(例えば、Morel et al., 1988, Molec. Immunol. 25:7-15を参照)、固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung, et al., 1990, Virology 176:546-552を参照)及び直接標識RIA(Moldenhauer et al., 1990, Scand. J. Immunol. 32:77-82)を用いて、一方の抗原結合タンパク質がもう一方の抗原結合タンパク質と競合するかどうかを決定することができる。典型的には、そのようなアッセイは、固体表面に結合された精製抗原又はこれらのいずれかを有する細胞、非標識の試験抗原結合タンパク質及び標識された参照抗原結合タンパク質の使用を含む。競合阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下で固体表面又は細胞に結合された標識の量を決定することにより測定される。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイによって特定された抗原結合タンパク質(競合する抗原結合タンパク質)には、参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質と、参照抗原結合タンパク質が結合するエピトープに立体障害が発生するのに十分に近位の隣接エピトープに結合する抗原結合タンパク質とが含まれる。通常、競合する抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合に、競合する抗原結合タンパク質は、PD-1、PD-L1及び/又はLAG-3又はそれらの細胞外断片への参照抗原結合タンパク質の特異的結合を、少なくとも約40%~45%、45%~50%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%又は70%~75%、例えば約75%以上阻害する(例えば、減少させる)。幾つかの例では、結合は、少なくとも約80%~85%、85%~90%、90%~95%又は95%~97%、例えば約97%以上阻害される。
【0048】
抗原決定基としても知られる「エピトープ」は、免疫系によって、具体的には抗体、B細胞又はT細胞によって認識される高分子の一部である。本明細書中で使用する場合、「エピトープ」は、本明細書に記載されるような結合タンパク質(例えば抗体又はその抗原結合断片)と結合することが可能な高分子の一部である。これとの関連で、「結合」という用語は好ましくは、特異的結合に関する。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面の基からなり、通常、特定の三次元構造特徴、及び特定の電荷特徴を有する。立体構造エピトープ及び非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下で立体構造エピトープとの結合は失われるが、非立体構造エピトープとの結合は失われない点において区別される。
【0049】
本明細書中で使用する場合、「立体構造エピトープ」は、直鎖高分子(例えばポリペプチド)のエピトープを表し、このエピトープは上記高分子の三次元構造によって形成される。本出願の文脈において、「立体構造エピトープ」は、「不連続エピトープ」、すなわち高分子の一次配列(例えばポリペプチドのアミノ酸配列)における少なくとも2つの別々の領域から形成される高分子(例えばポリペプチド)における立体構造エピトープである。換言すれば、エピトープは、該エピトープが本発明の結合タンパク質(例えば抗体又はその抗原結合断片)が同時に結合する一次配列における少なくとも2つの別々の領域(これらの少なくとも2つの別々の領域には、本発明の結合タンパク質が結合しない一次配列における1つ以上の領域が割り込んでいる)からなる場合、本発明の文脈において「立体構造エピトープ」であるとみなされる。好ましくは、かかる「立体構造エピトープ」はポリペプチド上に存在し、一次配列における2つの別々の領域は、本発明の結合タンパク質(例えば抗体又はその抗原結合断片)が結合する2つの別々のアミノ酸配列(これらの少なくとも2つの別々のアミノ酸配列には、本発明の結合タンパク質が結合しない一次配列における1つ以上のアミノ酸配列が割り込んでいる)である。好ましくは、割り込むアミノ酸配列は、結合タンパク質が結合しない2つ以上のアミノ酸を含む、連続するアミノ酸配列である。本発明の結合タンパク質が結合する少なくとも2つの別々のアミノ酸配列は、その長さに関して特に限定されない。上記少なくとも2つの別々のアミノ酸配列内のアミノ酸の総数が結合タンパク質と立体構造エピトープとの間の特異的結合を達成するのに十分に大きいものであれば、かかる別々のアミノ酸配列は、1個のアミノ酸のみからなっていてもよい。
【0050】
「パラトープ」は、エピトープを認識する抗体の一部である。本発明の文脈において、「パラトープ」は、エピトープを認識する本明細書に記載されるような結合タンパク質(例えば抗体又はその抗原結合断片)の一部である。
【0051】
「抗体」という用語は典型的には、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖、又はその抗原結合部分を含む糖タンパク質を指す。「抗体」という用語はまた、抗体、特に本明細書に記載の抗体の全ての組換え形態、例えば原核生物において発現させた抗体、未グリコシル化抗体、並びに以下に記載の任意の抗原結合抗体断片及び誘導体を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVH又はVHとして略す)及び重鎖定常領域を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書においてVL又はVLとして略す)及び軽鎖定常領域を含む。VH領域及びVL領域は、より保存性の高い領域(フレームワーク領域(FR)と称される)が間に置かれた、超可変性を有する領域(相補性決定領域(CDR)と称される)に更に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配列した、3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)、及び古典的な補体系の第1の成分(C1q)を含む宿主組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0052】
抗体の「抗原結合断片」(又は単に「結合部分」)という用語は、本明細書中で使用する場合、抗原と特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって発揮され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合断片の例は、(i)Fab断片、すなわちVLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCHドメインからなる一価の断片、(ii)F(ab')2断片、すなわちヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片、(iii)VHドメイン及びCHドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341: 544-546)、(vi)単離相補性決定領域(CDR)、並びに(vii)合成リンカーによって任意に連結することができる2つ以上の単離CDRの組合せを含む。さらに、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、組換え法を使用して、VL領域及びVH領域が対になって一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる。例えば、Bird et al. (1988) Science 242: 423-426、及びHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883を参照されたい)を形成する単一のタンパク質鎖としてこれらを作製することを可能とする合成リンカーによって連結することができる。かかる一本鎖抗体は、抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含されることも意図する。更なる例は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドと融合した結合ドメインポリペプチド、(ii)該ヒンジ領域と融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び(iii)該CH2定常領域と融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。結合ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域又は軽鎖可変領域であり得る。結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、米国特許出願公開第2003/0118592号及び米国特許出願公開第2003/0133939号に更に開示されている。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来の技法を使用して取得され、該断片は、インタクトな抗体がスクリーニングされるのと同じ方法で有用性に関してスクリーニングされる。「抗原結合断片」の更なる例は、単一のCDRから得られるいわゆるマイクロ抗体である。例えば、Heap et al., 2005は、HIV-1のgp120エンベロープ糖タンパク質に対する抗体の重鎖CDR3由来の17個のアミノ酸残基のマイクロ抗体を記載している。他の例は、好ましくは同族の(cognate)フレームワーク領域によって、互いに融合した2つ以上のCDR領域を含む小抗体模倣物を含む。同族のVHのFR2によって連結したVHのCDR1及びVLのCDR3を含むかかる小抗体模倣物は、Qiu et al., 2007によって記載されている。
【0053】
本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、好ましくはIgG2a及びIgG2b、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスのものであり得る。
【0054】
本発明において使用可能な抗体及びその抗原結合断片は、トリ及び哺乳動物を含む任意の動物起源由来であり得る。好ましくは、抗体又は断片は、ヒト、チンパンジー、齧歯類(例えばマウス、ラット、モルモット又はウサギ)、ニワトリ、シチメンチョウ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ウシ、ウマ、ロバ、ネコ又はイヌ起源由来である。抗体がヒト又はマウス起源のものであることが特に好ましい。本発明の抗体は、1つの種、好ましくはヒト由来の抗体定常領域を別の種、例えばマウス由来の抗原結合部位と組み合わせたキメラ分子も含む。さらに、本発明の抗体は、非ヒト種(例えばマウス)由来の抗体の抗原結合部位をヒト起源の定常領域及びフレームワーク領域と組み合わせたヒト化分子を含む。
【0055】
本明細書で例示されるように、本発明の抗体は、該抗体を発現するハイブリドーマから直接取得することができ、又はクローニングして、宿主細胞(例えばCHO細胞又はリンパ球細胞)において組換え的に発現させることができる。宿主細胞の更なる例は、微生物、例えば大腸菌及び真菌、例えば酵母である。代替的には、該抗体をトランスジェニック非ヒト動物又は植物において組換え的に作製することができる。
【0056】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列の各々の一部分が、特定の種由来の又は特定のクラスに属する抗体中の対応する配列に対して相同であり(homologous)、該鎖の残りのセグメントが別の種又はクラスの抗体中の対応する配列に対して相同である抗体を指す。典型的には、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は哺乳動物の1つの種由来の抗体の可変領域を模倣し、定常部分は別の種由来の抗体の配列に対して相同である。かかるキメラ形態の明らかな利点の1つは、例えばヒト細胞調製物由来の定常領域と組み合わせて、可変領域を、非ヒト宿主生物から容易に入手可能なB細胞又はハイブリドーマを使用して、現在既知の供給源から都合良く得ることができることである。この可変領域は調製し易いという利点を有しており、その特異性は供給源によって影響されない一方で、ヒト種のものである定常領域は、非ヒト供給源由来の定常領域の場合よりも、抗体を注入した場合にヒト被験体から免疫応答を誘発する可能性が低い。しかしながら、この定義はこの特定の例に限定されない。
【0057】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト種の免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有する分子であって、該分子の残りの免疫グロブリン構造がヒト免疫グロブリンの構造及び/又は配列に基づくものである、分子を指す。抗原結合部位は、定常ドメイン上に融合した完全な可変ドメイン、又は可変ドメインにおける適切なフレームワーク領域上にグラフティングした相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを含み得る。抗原結合部位は、野生型であってもよく、又は1つ以上のアミノ酸置換によって修飾されていてもよく、例えばより密接にヒト免疫グロブリンに類似するように修飾されていてもよい。ヒト化抗体の幾つかの形態は、全てのCDR配列を保存している(例えば、マウス抗体由来の6つのCDRを全て含有するヒト化マウス抗体)。他の形態は、元の抗体に対して変化させた1つ以上のCDRを有する。
【0058】
抗体をヒト化する種々の方法は、その内容全体が引用することにより本明細書の一部をなす、Almagro & Fransson, 2008に概説されるように、当業者に既知のものである。Almagro及びFranssonによる総説論文を以下に簡潔にまとめる。Almagro及びFranssonは、合理的アプローチと経験的アプローチとを区別している。合理的アプローチは、操作された抗体の幾つかの変異体を作製し、それらの結合又はその他の対象となる特性を評価することを特徴とする。設計された変異体が期待される結果を生じない場合に、設計及び結合評価の新しいサイクルが開始される。合理的アプローチには、CDRグラフティング、リサーフェイシング(Resurfacing)、超ヒト化(Superhumanization)及びヒトストリングコンテント最適化(Human String Content Optimization)が含まれる。それに対して、経験的アプローチは、ヒト化変異体の大規模なライブラリーの作製と、濃縮技術又はハイスループットスクリーニングを使用した最良のクローンの選択とに基づく。したがって、経験的アプローチは、抗体変異体の莫大な広がりを通して調査することができる信頼のおける選択及び/又はスクリーニングシステムに依存している。ファージディスプレイ及びリボソームディスプレイ等のin vitroディスプレイ技術はこれらの要件を満たし、当業者によく知られている。経験的アプローチには、FRライブラリー、ガイド選択法、フレームワークシャッフリング(Framework-shuffling)及びヒューマニアリング(Humaneering)が含まれる。
【0059】
CDRグラフティング
CDRグラフティングのプロトコルは典型的には、3つの意思決定点:(1)ドナー抗体の特異性を決定する領域、すなわちグラフティングの標的の規定、(2)FRドナーとして利用されるべきヒト配列の供給源の特定、及び(3)特異性を規定する領域の範囲外の残基の選択、すなわちヒト化抗体の親和性を回復させる又は改善するための復帰突然変異の標的であるアミノ酸位置を決定することを含む。
【0060】
(1)抗体の特異性を決定する領域
抗原と複合する非ヒト抗体の実験的構造は、抗原と接触する残基、したがってその特異性の決定の要因となる残基の詳細なマップを提供する。アラニンスキャニング変異導入及び/又はコンビナトリアル変異導入によって構造情報を補うことで、結合エネルギー又は機能的パラトープに最も寄与する残基を特定することができる。機能的パラトープは接触する残基のサブセットであるため、機能的パラトープのみをグラフティングすることによって、ヒト化産物における非ヒト残基の数は削減されることとなる。しかしながら、抗原-抗体複合体及び/又は機能的パラトープの実験的構造がヒト化プロトコルの開始時に利用可能である場合はまれにしかない。所与の抗体特異性の要因となる残基の正確な規定が存在しない場合に、特異性を規定する領域としてしばしばCDRが使用される。グラフティングのための標的としてCDR及びHVループの組み合わせを使用することも可能である。ヒトFRにグラフティングされるべき残基の数を減らすために、SDRグラフティング、すなわち特異性決定残基(SDR)のグラフティングが記載されている。
【0061】
(2)ヒトFRの供給源
典型的なCDRグラフティングのプロトコルにおける第2工程は、ヒトFRドナーを特定することである。初期の研究では、非ヒト抗体に対するそれらの相同性にかかわらず、既知の構造のヒト抗体のFRが利用された。このアプローチは、「固定FR法」として知られている。後期の研究では、非ヒト抗体に対して最高の相同性を有するヒト配列が使用された。このアプローチは、「ベストフィット(Best Fit)」と呼ばれている。「ベストフィット」方略はより高い親和性を有する抗体をもたらす傾向がある一方で、ヒト化のためにFRを選択する場合に、低免疫原性及び生産収率等の他のパラメーターも考慮に入れる必要がある。したがって、「ベストフィット」及び「固定FR」の組み合わせも可能である。例えば、VL部分を固定FR法に従ってヒト化することができ、VH部分をベストフィット法に従ってヒト化することができ、又はその逆も可能である。
【0062】
成熟配列及び生殖系列配列といったヒト配列の2つの供給源が利用されている。免疫応答の産物である成熟配列はランダムな過程によって生成された体細胞突然変異を有し、種の選択下にはないことから、潜在的な免疫原性残基がもたらされる。したがって、免疫原性残基を避けるために、FRドナーの供給源として、ますますヒト生殖系列遺伝子が利用されてきている。ヒト生殖系列FRのヌクレオチド配列は、例えばDall'Acqua et al, 2005による論文の付録A及び付録Bに開示されている。さらに、生殖系列遺伝子に基づく抗体は、成熟抗体と比較してより柔軟である傾向がある。このより高い柔軟性は、ヒト化抗体の親和性を回復させるためにFRへの復帰突然変異をほとんど又は全く伴わずに、より良好に多様なCDRに対応すると考えられる。
【0063】
(3)親和性を回復させる又は増強するための復帰突然変異
一般的に、非ヒトCDRとヒトFRとの間の不適合の結果として、CDRグラフティング後に親和性が減少する。したがって、典型的なCDRグラフティングのプロトコルにおける第3工程は、親和性喪失を回復させる又は防止する突然変異を規定することである。復帰突然変異は、ヒト化抗体の構造又はモデルに基づいて慎重に設計し、実験的に試験する必要がある。WAMと呼ばれる自動化抗体モデリングに関するウェブサイトは、URL:http://antibody.bath.ac.ukに見出すことができる。タンパク質構造モデリング用のソフトウェアは、http://salilab.org/modeller/modeller.html(Modeller)及びhttp://spdbv.vital-it.ch(Swiss PdbViewer)のサイトでダウンロードすることができる。
【0064】
リサーフェイシング
リサーフェイシングは、CDRグラフティングに類似しており、最初の2つの意思決定点を共有する。CDRグラフティングに対して、リサーフェイシングは、非ヒト抗体の非露出残基を保持する。非ヒト抗体における表面残基のみがヒト残基へと交換される。
【0065】
超ヒト化
CDRグラフティングは非ヒト配列とヒト配列との間のFRの比較によるが、超ヒト化はCDRの比較に基づくため、FRの相同性は無関係である。このアプローチは、非ヒト配列と機能的ヒト生殖系列遺伝子のレパートリーとの比較を含む。次いで、マウス配列と同じ又は密接に関連したカノニカル構造をコードするこれらの遺伝子を選択する。次に、非ヒト抗体とカノニカル構造を共有する遺伝子の範囲内で、CDR内に最高の相同性を有する遺伝子をFRドナーとして選択する。最後に、これらのFRへと非ヒトCDRをグラフティングする。
【0066】
ヒトストリングコンテント最適化
このアプローチは、ヒトストリングコンテント(HSC)と呼ばれる抗体の「ヒト性」の指標に基づくものである。簡潔には、このアプローチは、マウスの配列をヒト生殖系列遺伝子のレパートリーと比較する。差異がHSCとしてスコア化される。全体的な同一性の尺度を使用するのではなくそのHSCを最大化することによって標的配列をヒト化して、多数の多様なヒト化変異体を作製する。
【0067】
フレームワークライブラリー(略してFRライブラリー)
FRライブラリーアプローチでは、残基変異体のコレクションをFR中の特定の位置に導入した後に、ライブラリーのパニングを行い、グラフティングされたCDRを最も良好に支持するFRを選択する。したがって、このアプローチはCDRグラフティングに似ているが、FR中に数個の復帰突然変異が生成される代わりに、典型的には100個を超える突然変異体のコンビナトリアルライブラリーが構築される。
【0068】
ガイド選択
このアプローチは、特定の抗原に特異的な所与の非ヒト抗体のVHドメイン又はVLドメインを、ヒトのVH及びVLのライブラリーと組み合わせることを含む。引き続き、対象となる抗原に対して特異的なヒトVドメインを選択する。例えば、最初に非ヒトVHをヒト軽鎖のライブラリーと組み合わせることによって、非ヒト抗体をヒト化することができる。次いで、ファージディスプレイによって標的抗原に対してライブラリーを選択し、選択されたVLをヒトVH鎖のライブラリーへとクローニングし、標的抗原に対して選択する。非ヒトVLをヒト重鎖のライブラリーと組み合わせることから始めることも可能である。次いで、このライブラリーを、ファージディスプレイによって標的抗原に対して選択し、選択されたVHをヒトVL鎖のライブラリーへとクローニングし、標的抗原に対して選択する。結果として、非ヒト抗体と同様の親和性を有する完全ヒト型抗体を単離することができる。エピトープドリフトの発生を避けるために、親抗体と同じエピトープを認識するクローンの選択を可能にする、いわゆる阻害ELISAを実行することが可能である。あるいは、CDR保持を適用して、エピトープドリフトを避けることができる。CDR保持においては、1つ以上の非ヒトCDR、好ましくは、抗原結合部位の中心にあるため重鎖CDR3が保持される。
【0069】
フレームワークシャッフリング(略してFRシャッフリング)
FRシャッフリングアプローチでは、FR全体を非ヒトCDRと組み合わせる。FRシャッフリングを使用して、Dall'Acqua及び共同研究者らはマウス抗体をヒト化した。マウス抗体の6つの全てのCDRを、全てのヒト生殖系列遺伝子のFRを含むライブラリーへとクローニングした(Dall'Acqua et al., 2005)。該ライブラリーを、まずVLをヒト化した後にVHをヒト化する2工程の選択法で結合についてスクリーニングした。その後の研究では、1工程のFRシャッフリング法を使用することに成功した(Damschroder et al., 2007)。全ての既知のヒト生殖系列軽鎖(κ)フレームワークをコードするオリゴヌクレオチド配列は、Dall'Acqua et al., 2005に付録Aとして開示されている。全ての既知のヒト生殖系列重鎖フレームワークをコードするオリゴヌクレオチド配列は、Dall'Acqua et al., 2005に付録Bとして開示されている。
【0070】
ヒューマニアリング
ヒューマニアリングは、ヒト生殖系列遺伝子抗体に対して91%~96%相同である抗体の単離を可能にする。この方法は、必須の最小特異性決定基(MSD)の実験的な特定と、ヒトFRのライブラリーへの非ヒト断片の順次置き換え及び結合の評価とに基づく。この方法は、非ヒトVH鎖及びVL鎖のCDR3の領域から始まり、VH及びVLの両方のCDR1及びCDR2を含む非ヒト抗体の他の領域をヒトFRへと次第に置き換える。
【0071】
上記で説明された抗体をヒト化する方法は、本明細書に記載される立体構造エピトープと特異的に結合するヒト化抗体を作製する場合に好ましい。それにもかかわらず、本発明は、抗体をヒト化するための上述の方法に限定されない。
【0072】
上述のヒト化方法の幾つか、すなわち「固定FR法」(CDRグラフティングの変法)、超ヒト化、フレームワークシャッフリング及びヒューマニアリングは、ドナー抗体中のFR配列についての情報なしに行うことができる。「固定FR法」の変形形態は、Qin et al., 2007及びChang et al., 2007によって首尾よく行われた。特に、Qin et al.では、3つのCDR領域がマウス抗体のCDR配列から得られた抗原ペプチドによって置き換えられたヒト重鎖可変領域を含む抗体断片が構築された。Chang et al.では、これらの実験が継続され、VH部分由来の全てのCDR及びVL部分由来のCDR3がマウス抗体のCDR配列から得られた抗原ペプチドによって置き換えられたscFv断片が構築された。
【0073】
本明細書中で使用する場合、「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域及び定常領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroでランダム変異導入若しくは部位特異的変異導入によって、又はin vivoで体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含んでいてもよい。本発明のヒト抗体は、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、又は例えばKucherlapati & Jakobovitsによる米国特許第5,939,598号に記載されるような、1つ以上のヒト免疫グロブリンに対してトランスジェニックであり、内在性免疫グロブリンを発現しない動物から単離される抗体を含む。
【0074】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書中で使用する場合、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。一実施形態では、モノクローナル抗体は、不死化細胞と融合した非ヒト動物(例えばマウス)から得られるB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0075】
「組換え抗体」という用語は、本明細書中で使用する場合、組換え手段によって調製、発現、創出又は単離される全ての抗体、例えば(a)免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニック若しくはトランスクロモソーマルである動物(例えばマウス)、又はそれから調製されるハイブリドーマから単離される抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離される抗体、(c)組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離される抗体、及び(d)免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、創出又は単離される抗体を含む。
【0076】
「トランスフェクトーマ」という用語は、本明細書中で使用する場合、抗体を発現する組換え真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞、NS/0細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、植物細胞、又は酵母細胞を含む真菌を含む。
【0077】
本明細書中で使用する場合、「異種抗体」は、かかる抗体を産生するトランスジェニック生物との関係において定義される。この用語は、トランスジェニック生物からなるものでない生物中に見出されるものに対応するアミノ酸配列又はコードする核酸配列を有する、一般的にトランスジェニック生物以外の種由来の抗体を指す。
【0078】
本明細書中で使用する場合、「ヘテロハイブリッド抗体」は、異なる生物起源の軽鎖及び重鎖を有する抗体を指す。例えば、マウス軽鎖と結合したヒト重鎖を有する抗体は、ヘテロハイブリッド抗体である。
【0079】
したがって、本発明における使用に好適な「抗体及びその抗原結合断片」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一価抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性抗体、組換え抗体、異種抗体、ヘテロハイブリッド抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体(特にCDRグラフティングを行った抗体)、脱免疫化(deimmunized)抗体若しくはヒト抗体、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、Fab発現ライブラリーによって作製される断片、Fd、Fv、ジスルフィド結合したFv(dsFv)、一本鎖抗体(例えばscFv)、ダイアボディ又はテトラボディ(Holliger P. et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90(14), 6444-6448)、ナノボディ(単一ドメイン抗体としても知られる)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、及び上記のいずれかのエピトープ結合断片を含むが、これらに限定されない。
【0080】
本明細書に記載される抗体は、単離されていることが好ましい。「単離抗体」は、本明細書中で使用する場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図する。
【0081】
「天然」という用語は、或る対象物に適用されるものとして本明細書中で使用する場合、対象物を自然中に見出すことができることを指す。例えば、自然中の供給源から単離することができる生物(ウイルスを含む)中に存在し、実験室において人間によって意図的に修飾されていないポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列は天然のものである。
【0082】
本明細書中で使用する場合、「核酸アプタマー」という用語は、in vitro選択の繰り返し又はSELEX(試験管内進化法)により標的分子と結合するように改変された核酸分子を指す(概説に関してはBrody E.N. and Gold L. (2000), Aptamers as therapeutic and diagnostic agents. J. Biotechnol. 74 (1):5-13を参照されたい)。核酸アプタマーはDNA分子又はRNA分子であり得る。アプタマーは、例えば修飾ヌクレオチド、例えば2'-フッ素置換ピリミジンのように修飾を含有していてもよい。
【0083】
本明細書中で使用する場合、「抗体様タンパク質」という用語は、標的分子と特異的に結合するように改変された(例えばループの変異導入により)タンパク質を指す。典型的には、かかる抗体様タンパク質は、両端でタンパク質骨格と結合した少なくとも1つの可変ペプチドループを含む。この二重の構造的制約により、抗体様タンパク質の結合親和性が抗体の結合親和性に匹敵するレベルまで大幅に増大する。可変ペプチドループの長さは典型的には、10個~20個のアミノ酸からなる。骨格タンパク質は、良好な溶解特性を有する任意のタンパク質であり得る。好ましくは、骨格タンパク質は小さい球状タンパク質である。抗体様タンパク質は、アフィボディ(affibodies)、アンチカリン(anticalins)、及び設計されたアンキリン反復タンパク質(概説に関してはBinz H.K. et al. (2005) Engineering novel binding proteins from nonimmunoglobulin domains. Nat. Biotechnol. 23(10):1257-1268を参照されたい)を含むがこれらに限定されない。抗体様タンパク質は、突然変異体の大規模ライブラリー由来のものであってもよく、例えば大規模ファージディスプレイライブラリーからパニングしてもよく、正規の抗体と同様に単離してもよい。また、抗体様結合タンパク質を、球状タンパク質の表面露出残基のコンビナトリアル変異導入により得ることができる。抗体様タンパク質は「ペプチドアプタマー」と呼ばれることもある。
【0084】
本明細書中で使用する場合、「ペプチド模倣物」は、ペプチドを模倣するように設計される小さいタンパク質様の鎖である。ペプチド模倣物は典型的には、分子の特性を変化させるための既存のペプチドの修飾によって生じる。例えば、ペプチド模倣物は、分子の安定性又は生物学的活性を変化させるための修飾によって生じ得る。これは、既存のペプチド由来の薬剤様化合物の開発において一定の役割を有し得る。これらの修飾は、自然には起こらないペプチドに対する変化(例えば、骨格の変化、及び非天然アミノ酸の組込み)を含む。
【0085】
「配列同一性のパーセント」は、2つの最適にアラインメントされた配列を比較ウィンドウにわたって比較することにより決定され、比較ウィンドウ内の配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのための参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。そのパーセントは、両方の配列に同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が存在する位置の数を調べることで、合致した位置の数を得て、その合致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数により割り、その結果に100を掛けることによって計算することで、配列同一性のパーセントが得られる。
【0086】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における「同一」という用語は、同じである、すなわちヌクレオチド又はアミノ酸の同じ配列を含む2つ以上の配列又は部分配列を指すように本明細書で使用される。以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、又は手動のアラインメント及び目視確認によって評価して、比較ウィンドウ又は指定領域にわたる最大の一致について比較及びアラインメントした場合に、同じであるヌクレオチド又はアミノ酸残基の特定のパーセントを配列が有するのであれば(例えば、特定の領域にわたって少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性)、配列は互いに「実質的に同一」である。これらの定義は、試験配列の相補体にも当てはまる。したがって、用語「少なくとも80%の配列同一性」は、本明細書全体を通して、ポリペプチド配列比較及びポリヌクレオチド配列比較に関して使用される。この表現は、好ましくは、それぞれの参照ポリペプチド又はそれぞれの参照ポリヌクレオチドに対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を指す。
【0087】
用語「配列比較」は、或る配列が参照配列としての役割を果たし、それと試験配列を比較する方法を指すように本明細書で使用される。配列比較アルゴリズムを使用する場合に、必要な部分列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定されたら、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力する。デフォルトのプログラムパラメーターが一般に使用され、又は代替的なパラメーターが指定され得る。その際に配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列についてのパーセントの配列同一性又は類似性を計算する。2つの配列が比較される場合であって、配列同一性のパーセントが計算される比較対象となるべき参照配列が特定されていない場合に、配列同一性は、特段の記載がない限りは、比較されるべき2つの配列のうち長い方を参照して計算されるべきである。参照配列が示される場合に、配列同一性は、特段の記載がない限り、配列番号によって示される参照配列の全長を基礎として決定される。
【0088】
配列アラインメントにおいて、「比較ウィンドウ」という用語は、同じ位置の数を有する配列の連続した位置の参照ストレッチと比較される配列の連続した位置のストレッチを指す。選択される連続した位置の数は、4個~1000個の連続した位置の範囲であり得て、すなわち4個、5個、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、600個、650個、700個、750個、800個、850個、900個、950個又は1000個の連続した位置を含み得る。典型的には、連続した位置の数は、約20個~800個の連続した位置、約20個~600個の連続した位置、約50個~400個の連続した位置、約50個~約200個の連続した位置、約100個~約150個の連続した位置の範囲である。
【0089】
比較のための配列のアラインメント方法は、当該技術分野でよく知られている。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith及びWatermanの局所的相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482, 1970)によって、Needleman及びWunschの相同性アラインメントアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:443, 1970)によって、Pearson及びLipmanの類似性検索法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988)によって、これらアルゴリズムのコンピューター化された実装(例えば、Wisconsin Genetics Software PackageにおけるGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA、Genetics Computer Group(ウィスコンシン州マジソン、サイエンスドライブ575))によって、又は手動のアラインメント及び目視検査(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology(1995追補)を参照)によって行うことができる。パーセントの配列同一性及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムはBLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれAltschul et al.(Nuc. Acids Res. 25:3389-402, 1977)及びAltschul et al.(J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、アメリカ国立生物工学情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初にデータベース配列内の同じ長さのワードとアラインメントしたときに幾つかの正の値の閾値スコアTに一致する又はそれを満たすクエリ配列内の長さWの短いワードを特定することによって、高スコアの配列ペア(HSP)を特定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.、前出)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見つける検索を開始するためのシードとしての役割を果たす。このワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各々の配列に沿って両方向に拡張される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合にはパラメーターM(一致する残基のペアに対するリワードスコア;常に>0)及びN(不一致の残基に対するペナルティースコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列の場合に、累積スコアを計算するためにスコア付けマトリックスが使用される。累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ落ちたとき、累積スコアが1つ以上の負のスコアの残基アラインメントの蓄積のため0以下になったとき、又はいずれかの配列の末端に達したときに、各方向へのワードヒットの拡張は停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、デフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合に、BLASTPプログラムは、デフォルトとして3のワード長、10の期待値(E)並びに50のBLOSUM62スコア付けマトリックス(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915, 1989を参照)アラインメント(B)、10の期待値、M=5、N=-4、及び両鎖の比較を使用する。BLASTアルゴリズムは2つの配列間の類似性の統計分析をも行う(例えば、Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-87, 1993を参照)。BLASTアルゴリズムにより与えられる類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド配列間又はアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率の指標を示す最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸の参照核酸に対する比較における最小合計確率が約0.2未満、典型的には約0.01未満、より典型的には約0.001未満であれば、核酸は参照配列に類似しているとみなされる。
【0090】
「保存的置換」は、例えば、関与するアミノ酸残基の極性、電荷、サイズ、溶解性、疎水性、親水性及び/又は両親媒性の類似性に基づいて行われ得る。アミノ酸は、以下の6つの標準的なアミノ酸群に分類することができる:
(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性、親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖の配向性に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、及び、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
本明細書中で使用する場合、「保存的置換」は、上で示される6つの標準的なアミノ酸群の同じ群内に列挙される別のアミノ酸による、或るアミノ酸の交換と定義される。例えば、GluによるAspの交換によって、そのように修飾されたポリペプチドにおける1つの負電荷は保持される。加えて、グリシン及びプロリンを、α-ヘリックスを破壊するその能力に基づき互いに置換することができる。上の6つの群内における幾つかの好ましい保存的置換は、以下の下位群内における交換である:(i)Ala、Val、Leu及びIle、(ii)Ser及びThr、(iii)Asn及びGln、(iv)Lys及びArg、並びに(v)Tyr及びPhe。既知の遺伝コード、並びに組換えDNA技法及び合成DNA技法を踏まえて、熟練した科学者は、保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することができる。
【0091】
本明細書中で使用する場合、「非保存的置換」又は「非保存的アミノ酸交換」は、上で示される6つの標準的なアミノ酸群(1)~(6)の異なる群に列挙される別のアミノ酸による、或るアミノ酸の交換と定義される。
【0092】
「核酸」及び「核酸分子」という用語は、本明細書では同義語として使用され、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドの塩基又はその両方の一本鎖又は二本鎖のオリゴマー又はポリマーとして理解される。ヌクレオチドモノマーは、核酸塩基と、5炭糖(限定されるものではないが、リボース又は2'-デオキシリボース等)と、1個~3個のリン酸基とから構成される。典型的には、核酸は、個々のヌクレオチドモノマー間でのホスホジエステル結合を介して形成される。本発明の文脈では、核酸という用語は、限定されるものではないが、リボ核酸(RNA)及びデオキシリボ核酸(DNA)分子を含むが、他の結合を含む合成形の核酸(例えば、Nielsen et al.(Science 254:1497-1500, 1991)に記載されるペプチド核酸)も含む。典型的には、核酸は一本鎖分子又は二本鎖分子であり、天然に存在するヌクレオチドから構成される。核酸の一本鎖の記述はまた、相補鎖の配列を(少なくとも部分的に)規定する。核酸は一本鎖若しくは二本鎖であり得る又は二本鎖及び一本鎖の配列の両方の一部を含み得る。例示される二本鎖核酸分子は、3'突出部又は5'突出部を有し得るため、その全長にわたって完全に二本鎖であることは必要とされず又は想定もされない。核酸は、生物学的合成方法、生化学的合成方法若しくは化学的合成方法、又は限定されるものではないが、増幅及びRNAの逆転写の方法を含む当該技術分野で既知のいずれかの方法によって得ることができる。核酸という用語は、染色体若しくは染色体セグメント、ベクター(例えば、発現ベクター)、発現カセット、裸のDNA若しくはRNAポリマー、プライマー、プローブ、cDNA、ゲノムDNA、組換えDNA、cRNA、mRNA、tRNA、マイクロRNA(miRNA)又は低分子干渉RNA(siRNA)を含む。核酸は、例えば一本鎖、二本鎖又は三本鎖であってもよく、何らかの特定の長さに限定されない。特段の指示がない限り、特定の核酸配列は、明示的に示された任意の配列に加えて、相補的配列を含む又はコードする。
【0093】
核酸は、エンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼ、特に細胞内に見出すことができるDNase及びRNaseによって分解され得る。したがって、分解に対してそれらを安定化するために本発明の核酸を修飾することによって、高濃度の核酸が長期間にわたって細胞内に維持されることを確実にすることは有利であり得る。典型的には、そのような安定化は、1つ以上のヌクレオチド間のリン系の基を導入することによって又は1つ以上のヌクレオチド間の非リン系の基を導入することによって得ることができる。したがって、核酸は、天然に存在しないヌクレオチド及び/又は天然に存在するヌクレオチドに対する修飾、及び/又は分子の骨格への変更から構成され得る。核酸中の修飾されたヌクレオチド間リン酸基及び/又は非リン系の架橋には、限定されるものではないが、メチルホスホン酸エステル、ホスホロチオ酸エステル、ホスホロアミド酸エステル、ホスホロジチオ酸エステル及び/又はリン酸エステルが含まれるのに対して、非リン系のヌクレオチド間類似体には、限定されるものではないが、シロキサン架橋、カーボネート架橋、カルボキシメチルエステル、アセトアミド酸架橋及び/又はチオエーテル架橋が含まれる。ヌクレオチド修飾の更なる例には、限定されるものではないが、ライゲーション又はエキソヌクレアーゼ分解/ポリメラーゼ伸長の防止をそれぞれ可能にする5'ヌクレオチド又は3'ヌクレオチドのリン酸化、共有結合及び共有結合に近い結合のためのアミノ修飾、チオール修飾、アルキン修飾又はビオチニル修飾、蛍光体及びクエンチャー、デオキシイノシン(dI)、5-ブロモ-デオキシウリジン(5-ブロモ-dU)、デオキシウリジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、逆dT、逆ジデオキシ-T、ジデオキシシチジン(ddC)、5-メチルデオキシシチジン(5-メチルdC)、ロックド核酸(LNA)、5-ニトロインドール、Iso-dC塩基及びIso-dG塩基、2'-O-メチルRNA塩基、ヒドロキシメチルdC、5-ヒドロキシブチル-2'-デオキシウリジン(5-hydroxybutyl-2'-deoxyuridine)、8-アザ-7-デアザグアノシン及びフッ素修飾塩基等の修飾塩基が含まれる。したがって、核酸はまた、限定されるものではないが、ポリアミド核酸又はペプチド核酸(PNA)、モルフォリノ核酸及びロックド核酸(LNA)並びにグリコール核酸(GNA)及びトレオース核酸(TNA)を含む人工核酸であり得る。
【0094】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に配置される場合に「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーター若しくはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合に、コーディング配列に作動可能に連結されている、又はリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置されている場合に、コーディング配列に作動可能に連結されている。
【0095】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本発明の文脈で使用される場合に、約50ヌクレオチドを超える長さ、例えば51ヌクレオチド以上の長さの核酸を指す。
【0096】
本発明のポリペプチドは、限定されるものではないが、既存の配列若しくは天然の配列の単離、DNA複製若しくは増幅、逆転写、適切な配列のクローニング及び制限消化、又はNarang et al.のホスホトリエステル法(Meth. Enzymol. 68:90-99, 1979)、Brown et al.のホスホジエステル法(Meth. Enzymol. 68:109-151, 1979)、Beaucage et al.のジエチルホスホロアミダイト法(Tetrahedron Lett. 22:1859-1862, 1981)、Matteucci et al.のトリエステル法(J. Am. Chem. Soc. 103:3185-3191, 1981)、自動合成法、又は米国特許第4,458,066号の固相担体法等の方法、又は当業者に既知の他の方法による直接的化学合成を含む任意の適切な方法によって調製される。
【0097】
本明細書で使用される場合に、「ベクター」という用語は、細胞中に導入され得る又はその中に含まれるタンパク質及び/又は核酸を細胞に導入し得るタンパク質又はポリヌクレオチド又はそれらの混合物を指す。ベクターの例には、限定されるものではないが、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス又は人工染色体が含まれる。特に、ベクターは、対象となる遺伝子産物、例えば外来DNA又は異種DNAを適切な宿主細胞へと輸送するために使用される。ベクターは、そのベクターの宿主細胞内での自律複製を促す「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含み得る。外来DNAは、宿主細胞において天然に見られないDNAであり、例えばベクター分子を複製し、選択可能若しくはスクリーニング可能なマーカーをコードし、又は導入遺伝子をコードする異種DNAとして定義される。宿主細胞内に入ると、ベクターは、宿主染色体DNAと独立して又はそれと同時に複製され得て、ベクター及びその挿入されたDNAの幾つかのコピーが生成され得る。さらに、ベクターはまた、挿入されたDNAのmRNA分子への転写を可能にするか、又はその他に挿入されたDNAのRNAの複数のコピーへの複製を引き起こす必要なエレメントも含み得る。ベクターは、対象となる遺伝子の発現を調節する「発現制御配列」を更に含み得る。典型的には、発現制御配列は、限定されるものではないが、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、又はリプレッサー等のポリペプチド又はポリヌクレオチドである。対象となる1つ以上の遺伝子産物をコードする2つ以上のポリヌクレオチドを含むベクターにおいて、発現は、1つ以上の発現制御配列によって一緒に又は別個に制御され得る。より具体的には、ベクター上に含まれる各ポリヌクレオチドは、別個の発現制御配列によって制御され得るか、又はベクター上に含まれる全てのポリヌクレオチドは、単一の発現制御配列によって制御され得る。単一の発現制御配列によって制御される単一のベクター上に含まれるポリヌクレオチドは、オープンリーディングフレームを形成し得る。幾つかの発現ベクターは、発現されるmRNAの半減期を高める、及び/又はmRNAのタンパク質分子への翻訳を可能にする挿入されたDNAに隣接する配列エレメントを更に含む。多くのmRNAの分子及び挿入されたDNAによってコードされるポリペプチドは、したがって迅速に合成され得る。
【0098】
「宿主細胞」という用語は、ベクター(例えば、プラスミド又はウイルス)を収容する細胞を指す。このような宿主細胞は、原核細胞(例えば、細菌細胞)又は真核細胞(例えば、真菌細胞、植物細胞又は動物細胞)のいずれかであり得る。宿主細胞には、単細胞原核生物及び真核生物(例えば、細菌、酵母及び放線菌)の両者だけでなく、細胞培養で成長する場合に高次の植物又は動物からの単一細胞も含まれる。本明細書で使用される「組換え宿主細胞」は、対象となるポリペプチド断片、すなわち、本発明によるウイルス性PAサブユニット又はその変異体の断片をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を指す。このポリヌクレオチドは、(i)そのまま遊離分散されて、(ii)組換えベクターに組み込まれて、又は(iii)宿主細胞ゲノム若しくはミトコンドリアDNAに組み込まれて、宿主細胞内に見出すことができる。組換え細胞は、対象となるポリヌクレオチドの発現のために、又は本発明のポリヌクレオチド若しくは組換えベクターの増幅のために使用することができる。「組換え宿主細胞」という用語は、本発明のポリヌクレオチド又は組換えベクターで形質転換、トランスフェクション又は感染された元の細胞の子孫を含む。組換え宿主細胞は、E.コリ(E. coli)細胞等の細菌細胞、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)若しくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母細胞、植物細胞、SF9細胞若しくはHigh Five細胞等の昆虫細胞、又は哺乳動物細胞であり得る。哺乳動物細胞の好ましい例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、アフリカミドリザル腎臓(COS)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK293)細胞、HELA細胞等である。
【0099】
本明細書で使用される「活性作用物質」という用語は、作用物質が示し得る任意の治療活性に関連している。
【0100】
「薬学的に許容可能な」は、連邦政府若しくは州政府の監督官庁により承認されていること、又は米国薬局方、若しくは動物における、より具体的にはヒトにおける使用のための他の一般的に認められた薬局方にリストされていることを意味する。
【0101】
「担体」という用語は、本明細書中で使用する場合、治療剤とともに投与される希釈剤、補助剤、賦形剤又はビヒクルを指す。かかる薬学的担体は、無菌の液体、例えば水、及び石油起源、動物起源、植物起源又は合成起源の油、例えばラッカセイ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等を含む油中の生理食塩溶液であってもよい。生理食塩溶液は、医薬組成物を静脈内投与する場合、好ましい担体である。生理食塩溶液並びにデキストロース及びグリセロールの水溶液を、特に注射用溶液のために、液体担体として利用することもできる。好適な薬学的賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米粉、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等を含む。必要に応じて、組成物は、微量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有していてもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続放出製剤等の形態をとり得る。組成物を、伝統的な結合剤及び担体、例えばトリグリセリドを用いて、坐剤として配合することができる。本発明の化合物を、中性形態又は塩形態として配合することができる。薬学的に許容可能な塩は、遊離のアミノ基とともに形成されるもの、例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等由来のもの、及び遊離のカルボキシル基とともに形成されるもの、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等由来のものを含む。好適な薬学的担体の例は、E. W. Martinによる"Remington's Pharmaceutical Sciences"に記載されている。かかる組成物は、患者への適切な投与のための形態をもたらすための好適な量の担体とともに、好ましくは精製形態の、治療的有効量の化合物を含有する。製剤は、投与様式に適合しているものとする。
【0102】
分子生物学、細胞生物学、タンパク質化学及び抗体技法の分野において一般的に知られており実施されている方法は、継続的に更新されている以下の刊行物に十分に記載されている:"Molecular Cloning: A Laboratory Manual",(Sambrook et al., Cold Spring Harbor)、Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al. Eds., Wiley & Sons)、Current Protocols in Protein Science (J. E. Colligan et al. eds., Wiley & Sons)、Current Protocols in Cell Biology (J. S. Bonifacino et al., Wiley & Sons)及びCurrent Protocols in Immunology (J. E. Colligan et al., Eds., Wiley & Sons)。細胞培養及び培地に関する既知の技法は、"Large Scale Mammalian Cell Culture" (Hu et al., Curr. Opin., Biotechnol. 8: 148, 1997)、"Serum free Media" (K. Kitano, Biotechnol. 17:73, 1991)及び"Suspension Culture of Mammalian Cells" (Birch et al. Bioprocess Technol. 19: 251, 1990)に記載されている。
【0103】
実施形態
以下の本発明の種々の態様をより詳細に規定する。そのように規定する各態様は、反対の内容が明示されない限り、任意の他の態様(単数又は複数)と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であるとして示した任意の特徴を、好ましい又は有利であるとして示した任意の他の特徴(単数又は複数)と組み合わせることができる。
【0104】
第1の態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、PD-1への結合について、
(i)配列番号2におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号3におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(ii)配列番号11におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号12におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
と競合する、拮抗的抗原結合タンパク質を提供する。
【0105】
好ましくは、本発明は、PD-1への結合について、配列番号2におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号3におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体と競合する、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質を提供する。
【0106】
第1の態様の好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、抗体、抗体様タンパク質又はそれらの断片である。好ましくは、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、組換え抗体、抗原結合性抗体断片、一本鎖抗体、一本鎖可変断片抗体、ダイアボディ、Fab断片、F(ab)2断片、抗体ミメティック、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される。
【0107】
第1の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、100 nM未満、50 nM未満、10 nM未満、1 nM未満、100 pM未満、10 pM未満又は5 pM未満のKdでPD-1に結合する。例えば、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、5 pMから100 nMの間、5 pMから50 nMの間、5 pMから10 nMの間、5 pMから1 nMの間、5 pMから100 pMの間、例えば5 pMから10 pMの間のKdでPD-1に結合する。
【0108】
第1の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、10 nM未満、1 nM未満、又は200 pM未満のIC50で、PD-1へのリガンドの結合を遮断し得る。例えば、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、200 pMから10 nMの間、例えば200 pMから1 nMの間のIC50で、PD-1へのリガンドの結合を遮断し得る。
【0109】
第1の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、T細胞増殖を刺激する。
【0110】
第1の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、リンパ球の増殖を誘導する。
【0111】
第1の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、IL-2及び/又はIFNγの分泌を誘導する。
【0112】
第1の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、ベースライン値と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%腫瘍体積を減少させる。
【0113】
第2の態様では、本発明は、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、PD-L1への結合について、
(i)配列番号20におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号21におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(ii)配列番号29におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号30におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(iii)配列番号83におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号84におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(iv)配列番号92におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号93におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(v)配列番号101におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号102におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
と競合する、拮抗的抗原結合タンパク質を提供する。
【0114】
好ましくは、本発明は、PD-L1への結合について、配列番号29におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号30におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体と競合する、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質を提供する。
【0115】
第2の態様の好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、抗体、抗体様タンパク質又はそれらの断片である。好ましくは、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、組換え抗体、抗原結合性抗体断片、一本鎖抗体、一本鎖可変断片抗体、ダイアボディ、Fab断片、F(ab)2断片、抗体ミメティック、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される。
【0116】
第2の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、100 nM未満、50 nM未満、10 nM未満、1 nM未満、100 pM未満、10 pM未満又は5 pM未満のKdでPD-L1に結合する。例えば、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、5 pMから100 nMの間、5 pMから50 nMの間、5 pMから10 nMの間、5 pMから1 nMの間、5 pMから100 pMの間、例えば5 pMから10 pMの間のKdでPD-L1に結合する。
【0117】
第2の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、10 nM未満、1 nM未満、又は200 pM未満のIC50で、PD-L1へのリガンドの結合を遮断し得る。
【0118】
例えば、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、200 pMから10 nMの間、例えば200 pMから1 nMの間のIC50で、PD-L1へのリガンドの結合を遮断し得る。
【0119】
第2の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、T細胞増殖を刺激する。
【0120】
第2の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、リンパ球の増殖を誘導する。
【0121】
第2の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、IL-2及び/又はIFNγの分泌を誘導する。
【0122】
第2の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、ベースライン値と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%腫瘍体積を減少させる。
【0123】
第3の態様では、本発明は、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、LAG-3への結合について、
(i)配列番号38におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号39におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
(ii)配列番号47におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号48におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
(iii)配列番号56におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号57におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
(iv)配列番号65におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号66におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、又は、
(v)配列番号74におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号75におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体、
と競合する、拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0124】
好ましくは、本発明は、LAG-3への結合について、配列番号38におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号39におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体と競合する、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質を提供する。
【0125】
別の好ましい実施形態において、本発明は、LAG-3への結合について、配列番号47におけるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号48におけるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含む抗体と競合する、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質を提供する。
【0126】
第3の態様の好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、抗体、抗体様タンパク質又はそれらの断片である。好ましくは、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、組換え抗体、抗原結合性抗体断片、一本鎖抗体、一本鎖可変断片抗体、ダイアボディ、Fab断片、F(ab)2断片、抗体ミメティック、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される。
【0127】
第3の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、100 nM未満、50 nM未満、10 nM未満、1 nM未満、100 pM未満、10 pM未満又は5 pM未満のKdでLAG-3に結合する。例えば、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、5 pMから100 nMの間、5 pMから50 nMの間、5 pMから10 nMの間、5 pMから1 nMの間、5 pMから100 pMの間、例えば5 pMから10 pMの間のKdでLAG-3に結合する。
【0128】
第3の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、10 nM未満、1 nM未満、又は200 pM未満のIC50で、LAG-3へのリガンドの結合を遮断し得る。例えば、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、200 pMから10 nMの間、例えば200 pMから1 nMの間のIC50で、LAG-3へのリガンドの結合を遮断し得る。
【0129】
第3の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、T細胞増殖を刺激する。
【0130】
第3の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、リンパ球の増殖を誘導する。
【0131】
第3の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、IL-2及び/又はIFNγの分泌を誘導する。
【0132】
第3の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、ベースライン値と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%腫瘍体積を減少させる。
【0133】
第4の態様では、本発明は、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、
(i)以下の組み合わせ:
配列番号3に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号12に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号11に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせ、
(ii)以下の組み合わせ:
配列番号8のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号9のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号17のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号18のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせ、
のいずれかを含む、拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0134】
好ましい実施形態では、本発明は、配列番号3に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0135】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号8のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号9のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3の組み合わせを含む、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0136】
本発明の第4の態様の好ましい実施形態では、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号3に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号2に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号12に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号11に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせを含む。
【0137】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号3に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号2に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0138】
本発明の第4の態様の更なる好ましい実施形態では、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号3に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号2に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号12に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号11に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせを含む。
【0139】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号3に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号2に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0140】
本発明の第4の態様の更なる好ましい実施形態では、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号8のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号9のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号17のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号18のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせを含む。
【0141】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号8のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号9のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3の組み合わせを含む、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。好ましくは、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、配列番号4又は配列番号13のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号6又は配列番号15のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2、配列番号5又は配列番号14のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、及び配列番号7又は配列番号16のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2からなる群から選択される1つ以上を更に含む。
【0142】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号8のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号9のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号4のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号5のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号6のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号7のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0143】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号17のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号18のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号13のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号14のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号15のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号16のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0144】
第4の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、抗体、抗体様タンパク質又はそれらの断片である。好ましくは、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、組換え抗体、抗原結合性抗体断片、一本鎖抗体、一本鎖可変断片抗体、ダイアボディ、Fab断片、F(ab)2断片、抗体ミメティック、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される。
【0145】
第4の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、100 nM未満、50 nM未満、10 nM未満、1 nM未満、100 pM未満、10 pM未満又は5 pM未満のKdでPD-1に結合する。例えば、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、5 pMから100 nMの間、5 pMから50 nMの間、5 pMから10 nMの間、5 pMから1 nMの間、5 pMから100 pMの間、例えば5 pMから10 pMの間のKdでPD-1に結合する。
【0146】
第4の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、10 nM未満、1 nM未満、又は200 pM未満のIC50で、PD-1へのリガンドの結合を遮断し得る。例えば、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、200 pMから10 nMの間、例えば200 pMから1 nMの間のIC50で、PD-1へのリガンドの結合を遮断し得る。
【0147】
第4の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、T細胞増殖を刺激する。
【0148】
第4の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、リンパ球の増殖を誘導する。
【0149】
第4の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、IL-2及び/又はIFNγの分泌を誘導する。
【0150】
第4の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、ベースライン値と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%腫瘍体積を減少させる。
【0151】
第5の態様では、本発明は、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、
(i)以下の組み合わせ:
配列番号21に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号20に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号30に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号29に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号84に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号83に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号93に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号92に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号102に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号101に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせ、
(ii)以下の組み合わせ:
配列番号26のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号27のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号35のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号36のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号89のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号90のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号98のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号99のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号107のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号108のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせ、
のいずれかを含む、拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0152】
好ましい実施形態では、本発明は、配列番号30に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号29に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0153】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号35のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号36のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3の組み合わせを含む、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0154】
本発明の第5の態様の好ましい実施形態では、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-L1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号21に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号20に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号30に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号29に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号84に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号83に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号93に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号92に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号102に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号101に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせを含む。
【0155】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号30に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号29に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0156】
本発明の第5の態様の更なる好ましい実施形態では、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-L1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号21に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号20に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号30に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号29に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号84に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号83に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号93に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号92に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号102に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号101に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせを含む。
【0157】
好ましい実施形態では、本発明は、配列番号30に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号29に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0158】
本発明の第5の態様の更なる好ましい実施形態では、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-L1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号26のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号27のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号35のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号36のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号89のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号90のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号98のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号99のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号107のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号108のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせを含む。
【0159】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号35のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号36のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3の組み合わせを含む、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0160】
好ましくは、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-L1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、配列番号22又は配列番号31のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号24又は配列番号33のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2、配列番号23又は配列番号32のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、及び配列番号25又は配列番号34のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2からなる群から選択される1つ以上を更に含む。
【0161】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-L1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号26のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号27のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号22のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号23のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号24のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号25のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0162】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-L1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号35のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号36のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号31のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号32のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号33のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号34のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0163】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-L1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号89のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号90のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号85のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号86のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号87のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号88のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0164】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-L1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号98のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号99のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号94のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号95のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号96のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号97のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0165】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、PD-L1に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号107のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号108のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号103のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号104のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号105のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号106のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0166】
第5の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、抗体、抗体様タンパク質又はそれらの断片である。好ましくは、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、組換え抗体、抗原結合性抗体断片、一本鎖抗体、一本鎖可変断片抗体、ダイアボディ、Fab断片、F(ab)2断片、抗体ミメティック、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される。
【0167】
第5の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、100 nM未満、50 nM未満、10 nM未満、1 nM未満、100 pM未満、10 pM未満又は5 pM未満のKdでPD-L1に結合する。例えば、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、5 pMから100 nMの間、5 pMから50 nMの間、5 pMから10 nMの間、5 pMから1 nMの間、5 pMから100 pMの間、例えば5 pMから10 pMの間のKdでPD-L1に結合する。
【0168】
第5の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、10 nM未満、1 nM未満、又は200 pM未満のIC50で、PD-L1へのリガンドの結合を遮断し得る。例えば、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、200 pMから10 nMの間、例えば200 pMから1 nMの間のIC50で、PD-L1へのリガンドの結合を遮断し得る。
【0169】
第5の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、T細胞増殖を刺激する。
【0170】
第5の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、リンパ球の増殖を誘導する。
【0171】
第5の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、IL-2及び/又はIFNγの分泌を誘導する。
【0172】
第5の態様の更なる好ましい実施形態では、PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、ベースライン値と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%腫瘍体積を減少させる。
【0173】
第6の態様では、本発明は、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、
(i)以下の組み合わせ:
配列番号39に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号38に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号48に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号47に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号57に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号56に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号66に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号65に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号75に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号74に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせ、
(ii)以下の組み合わせ:
配列番号44のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号45のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号53のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号54のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号62のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号63のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号71のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号72のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号80のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号81のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせ、
のいずれかを含む、拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0174】
好ましい実施形態では、本発明は、配列番号39に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号38に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0175】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号44のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号45のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3の組み合わせを含む、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0176】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号48に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号47に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0177】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号53のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号54のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3の組み合わせを含む、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0178】
本発明の第6の態様の好ましい実施形態では、拮抗的抗原結合タンパク質は、LAG-3に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号39に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号38に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号48に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号47に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号57に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号56に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号66に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号65に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号75に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号74に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせを含む。
【0179】
更に好ましい実施形態では、本発明は、配列番号39に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号38に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0180】
更に好ましい実施形態では、本発明は、配列番号48に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号47に対して少なくとも95%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0181】
本発明の第6の態様の更に好ましい実施形態では、拮抗的抗原結合タンパク質は、LAG-3に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号39に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号38に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号48に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号47に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号57に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号56に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号66に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号65に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
配列番号75に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号74に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインからなる組み合わせ、
の群から選択される軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの組み合わせを含む。
【0182】
更に好ましい実施形態では、本発明は、配列番号39に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号38に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0183】
更に好ましい実施形態では、本発明は、配列番号48に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号47に対して少なくとも99%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメインの組み合わせを含む、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0184】
本発明の第6の態様の更なる好ましい実施形態では、拮抗的抗原結合タンパク質は、LAG-3に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号44のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号45のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号53のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号54のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号62のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号63のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号71のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号72のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
配列番号80のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号81のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3からなる組み合わせ、
の群から選択される重鎖の相補性決定領域3(CDRH3)及び軽鎖の相補性決定領域3(CDRL3)の組み合わせを含む。
【0185】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号44のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号45のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3の組み合わせを含む、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0186】
更なる好ましい実施形態では、本発明は、配列番号53のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号54のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3の組み合わせを含む、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0187】
好ましくは、拮抗的抗原結合タンパク質は、LAG-3に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、配列番号40、配列番号49、配列番号58、配列番号67又は配列番号76のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号42、配列番号51、配列番号60、配列番号69又は配列番号78のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2、配列番号41、配列番号50、配列番号59、配列番号68又は配列番号77のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、及び配列番号43、配列番号52、配列番号61、配列番号70又は配列番号79のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2からなる群から選択される1つ以上を更に含む。
【0188】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、LAG-3に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号44のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号45のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号40のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号41のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号42のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号43のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0189】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、LAG-3に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号53のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号54のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号49のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号50のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号51のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号52のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0190】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、LAG-3に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号62のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号63のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号58のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号59のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号60のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号61のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0191】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、LAG-3に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号71のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号72のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号67のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号68のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号69のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号70のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0192】
例えば、拮抗的抗原結合タンパク質は、LAG-3に特異的に結合し、ここで、上記抗原結合タンパク質は、
配列番号80のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3及び配列番号81のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
配列番号76のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1及び配列番号77のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号78のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号79のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
を含む。好ましくは、CDRH1、CDRL1、CDRH2又はCDRL2において1つのアミノ酸交換を含む、先で特定された拮抗的抗原結合タンパク質も本発明の範囲内である。
【0193】
第6の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、抗体、抗体様タンパク質又はそれらの断片である。好ましくは、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、組換え抗体、抗原結合性抗体断片、一本鎖抗体、一本鎖可変断片抗体、ダイアボディ、Fab断片、F(ab)2断片、抗体ミメティック、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択される。
【0194】
第6の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、100 nM未満、50 nM未満、10 nM未満、1 nM未満、100 pM未満、10 pM未満又は5 pM未満のKdでLAG-3に結合する。例えば、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、5 pMから100 nMの間、5 pMから50 nMの間、5 pMから10 nMの間、5 pMから1 nMの間、5 pMから100 pMの間、例えば5 pMから10 pMの間のKdでLAG-3に結合する。
【0195】
第6の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、10 nM未満、1 nM未満、又は200 pM未満のIC50で、LAG-3へのリガンドの結合を遮断し得る。例えば、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、200 pMから10 nMの間、例えば200 pMから1 nMの間のIC50で、LAG-3へのリガンドの結合を遮断し得る。
【0196】
第6の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、T細胞増殖を刺激する。
【0197】
第6の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、リンパ球の増殖を誘導する。
【0198】
第6の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、IL-2及び/又はIFNγの分泌を誘導する。
【0199】
第6の態様の更なる好ましい実施形態では、LAG-3に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質は、ベースライン値と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%腫瘍体積を減少させる。
【0200】
第7の態様では、本発明は、本発明の態様1~態様6のいずれか1つの拮抗的抗原結合タンパク質をコードする核酸に関する。
【0201】
第8の態様では、本発明は、第7の態様の核酸分子を含む組換え発現ベクターに関する。
【0202】
第9の態様では、本発明は、本発明の第8の態様のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0203】
第10の態様では、本発明は、上記抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞から上記抗原結合タンパク質を調製する工程を含む、本発明の態様1~態様6のいずれか1つの拮抗的抗原結合タンパク質を作製する方法に関する。
【0204】
第11の態様では、本発明は、本発明の第9の態様の宿主細胞における組換えDNAの発現により産生される拮抗的抗原結合タンパク質に関する。
【0205】
第12の態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明の態様1~態様6のいずれか1つによる拮抗的抗原結合タンパク質、本発明の第7の態様による核酸、又は本発明の第8の態様によるベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物に関する。
【0206】
第12の態様の好ましい実施形態では、医薬組成物は非経口投与に適合されている。非経口投与に適合された医薬組成物は、酸化防止剤、緩衝液、静菌薬及び該組成物を意図されるレシピエントの血液と実質的に等張にする溶質を含み得る、水性及び非水性の無菌の注射可能な溶液又は懸濁液を含む。そのような組成物中に存在し得る他の成分には、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセリン及び植物油が含まれる。非経口投与に適合された組成物は、単位投与用容器又は多回投与用容器、例えば密封アンプル及び密封バイアルで提供することができ、使用直前に無菌液体担体、例えば注射用の無菌生理食塩溶液を添加することだけを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。即席注射溶液及び懸濁液は、無菌粉剤、顆粒剤及び錠剤から調製され得る。
【0207】
好ましい実施形態では、上記組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合された医薬組成物として、定型的な手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、無菌の等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、上記組成物はまた、可溶化剤及び注射部位の痛みを和らげるためのリドカイン等の局所麻酔薬を含んでもよい。一般に、これらの成分は、別々に又は一緒に混合されて単位投与形で、例えば、活性作用物質の量を指示するアンプル又はサッシェ等の気密封止された容器内の乾燥した凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として供給される。上記組成物が注入によって投与される場合に、無菌の医薬品グレードの水又は生理食塩水を収容する輸液ボトルを用いて該組成物を投薬することができる。上記組成物が注射により投与される場合に、これらの成分が投与前に混合され得るように、無菌生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0208】
本発明の第12の態様の好ましい実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1種の更なる活性作用物質を含む。好ましくは、少なくとも1種の更なる活性作用物質は、本発明の態様1~態様6のいずれか1つによる別の拮抗的抗原結合タンパク質、チェックポイント阻害剤、化学療法薬、放射線治療薬、血管新生抑制剤、癌ワクチン及び腫瘍溶解性ウイルスからなる群から選択される。例えば、少なくとも1種の更なる活性作用物質は、カルボプラチン-パクリタキセル、トラスツズマブ、ペルツズマブ、エルロチニブ、ラパチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、ベバシズマブ、スニチニブ及びパゾパニブからなる群から選択される。
【0209】
第13の態様では、本発明は、本発明の第12の態様による医薬組成物と、任意に少なくとも1種の更なる活性作用物質とを含むキットに関する。好ましくは、少なくとも1種の更なる活性作用物質は、本発明の態様1~態様6のいずれか1つによる別の拮抗的抗原結合タンパク質、チェックポイント阻害剤、化学療法薬、放射線治療薬、血管新生抑制剤、癌ワクチン及び腫瘍溶解性ウイルスからなる群から選択される。例えば、少なくとも1種の更なる活性作用物質は、カルボプラチン-パクリタキセル、トラスツズマブ、ペルツズマブ、エルロチニブ、ラパチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、ベバシズマブ、スニチニブ及びパゾパニブからなる群から選択される。
【0210】
第14の態様では、本発明は、癌及び/又は慢性感染症の治療に使用される、本発明の態様1~態様6のいずれか1つによる拮抗的抗原結合タンパク質、本発明の第7の態様の核酸、本発明の第8の態様のベクター、又は本発明の第12の態様の医薬組成物に関する。
【0211】
本発明の第14の態様の好ましい実施形態では、癌は、
(a)口唇、口腔及び咽頭の悪性新生物、及び/又は、
(b)消化器の悪性新生物、及び/又は、
(c)呼吸器及び胸腔内臓器の悪性新生物、及び/又は、
(d)骨及び関節軟骨の悪性新生物、及び/又は、
(e)黒色腫及び他の皮膚の悪性新生物、及び/又は、
(f)中皮組織及び軟部組織の悪性新生物、及び/又は、
(g)乳房の悪性新生物、及び/又は、
(h)女性生殖器の悪性新生物、及び/又は、
(i)男性生殖器の悪性新生物、及び/又は、
(j)尿路の悪性新生物、及び/又は、
(k)目、脳及び他の中枢神経系の部分の悪性新生物、及び/又は、
(l)甲状腺及び他の内分泌腺の悪性新生物、及び/又は、
(m)リンパ系、造血系及び関連組織の悪性新生物、
からなる群から選択される。
【0212】
好ましくは、癌は、NSCLC(非小細胞肺癌)、黒色腫、MSI(マイクロサテライト不安定性関連癌)、膀胱癌、腎臓癌、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、肝細胞癌(HCC)及び胃癌からなる群から選択される。
【0213】
本発明の第14の態様の更なる好ましい実施形態では、慢性感染症は、HBV、HCV、HIV、HSV、HPV、EBV、CMV及びクラミジアからなる群から選択される。好ましくは、慢性感染症は、HBV、HCV、HIV及びHPVによって引き起こされる。
【0214】
本発明の第14の態様の更なる好ましい実施形態では、少なくとも1種の更なる活性作用物質は、それを必要とする被験体に投与される。好ましくは、少なくとも1種の更なる活性作用物質と本発明の態様1~態様6のいずれかの拮抗的結合タンパク質、本発明の第7の態様の核酸、本発明の第8の態様のベクター又は本発明の第12の態様の医薬組成物とは、同時に又は順次に又はその組み合わせで投与される。
【0215】
以下の実施例は、本発明の例証に過ぎず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を何ら制限するものではないと解釈されるべきである。
【実施例0216】
材料及び方法
抗体及びヒト組換えタンパク質
以下の抗体を使用した:西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗Hisマウスモノクローナル抗体(Qiagen社、ドイツ、ヒルデン)、(HRP)結合抗M13マウスモノクローナル抗体(GE Healthcare社、英国、チャルフォント・セント・ジャイルズ)、抗ヒトLAG-3マウスモノクローナル抗体(R&D Systems社、米国、ミネアポリス)、抗ヒトPD-1ヒトモノクローナル抗体のニボルマブ(Opdivo(商標)、Bristol-Myers Squibb社、米国、ニュージャージー州、プリンストン)、抗ヒトPD-L1ヒトモノクローナル抗体(G&P Biosciences社、米国、カリフォルニア州、サンタクララ)、(HRP)結合抗ヒトIgG(Promega社、米国、ウィスコンシン州、マディソン)、PE/抗ヒトCD2マウスモノクローナル抗体(BioLegend Inc.社、米国、カリフォルニア州、サンディエゴ)、APC/抗ヒトCD3マウス抗体、PE/抗ヒトCD4マウスモノクローナル抗体、PerCP/抗ヒトCD8マウスモノクローナル抗体(全てBD Biosciences社製、米国、カリフォルニア州、サンノゼ)、(HRP)結合抗ヒトIgG(Fab')2ヤギモノクローナル抗体(Abcam社、英国、ケンブリッジ)、APC/抗ヒトIgG Fcマウス抗体、APC/Cy7抗ヒトCD366(TIM3)マウス抗体、APC/抗ヒトCD272(BTLA)マウス抗体、APC/抗ヒトCD137(4-1BB)マウス抗体、PE/抗ヒトCD134(OX40)マウス抗体、Brilliant Violet 510(商標)/抗マウス/ラット/ヒトCD27ハムスター抗体、APC/抗ヒト/マウス/ラットCD278(ICOS)ハムスター抗体(全てBioLegend社製)、FITC/抗ヒトTIGITマウス抗体(Thermo Fisher Scientific社、米国、マサチューセッツ州、ウォルサム)。以下の組換えキメラタンパク質を使用した:ヒトLAG-3/Fc、ヒトPD-1/Fc、ヒトPD-L1/Fc、TIM3/Fc、BTLA/Fc、TIGIT/Fc、OX40/Fc、4-1BB/Fc、CD27/Fc及びICOS/Fc、ヒトIgG1-Fc(全てR&D Systems社製)。
【0217】
細胞培養
MDA-MB-231細胞は、ダルベッコの改変イーグル培地(Gibco(商標)DMEM、Thermo Fisher Scientific社)中で培養した。MCF7細胞は、改変イーグル培地(Gibco(商標)MEM、Thermo Fisher Scientific社)中で培養した。10%(容量/容量)の熱不活化ウシ胎児血清(FBS、Sigma-Aldrich社、米国、ミズーリ州、セントルイス)、50 IU ml-1のペニシリン、50 μg ml-1のストレプトマイシン、2 nMのL-グルタミン(全てGibco(商標)、Thermo Fisher Scientific社)を培地に補充した。細胞系統は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から購入し、5%のCO2を含む加湿雰囲気中にて37℃で培養した。
【0218】
ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)の分離
ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を、ACCUSPIN(商標)System-Histopaque(商標)-1077(Sigma-Aldrich社)を使用することによって製造業者の指示に従って、健康なドナーの血液から分離し、使用するまで90%のFBS及び10%のDMSOを含む溶液中で凍結させた。1%のL-グルタミン、1%のCTL-Wash(商標)(Cellular Technology Limited社、米国、オハイオ州、クリーブランド)及び100 U/mlのベンゾナーゼ(Merck Millipore社、米国、マサチューセッツ州、ビレリカ)を補充したRPMI 1640培地(Gibco(商標)、Thermo Fisher Scientific社)を使用することによって、凍結保存された細胞バイアルを静かに解凍した。次いで、収集したhPBMCを遠心分離により洗浄し、プレーティングし、10%の不活化ウシ胎児血清(FBS、Sigma-Aldrich社)、1%のL-グルタミン、50 U ml-1のペニシリン、50 μg ml-1のストレプトマイシン及び1%のHEPES(全てGibco(商標)、Thermo Fisher Scientific社)を補充したRPMI 1640(Gibco(商標)、Thermo Fisher Scientific社)からなるR10培地中にて37℃で一晩インキュベートした。一晩静置した後に、hPBMCをPBS中で収集し、Muse(商標)セルアナライザー(Merck Millipore社)を使用することによってカウントし、1×106個の細胞/mlの密度で再懸濁した。
【0219】
hPBMCでの免疫チェックポイントの発現レベルのFACS分析
レスキューされ、カウントされたヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を、Dynabeads(商標)Human T-Activator CD3/CD28を用いて1×103個のビーズ/mlの濃度で活性化させた(Gibco(商標)、Thermo Fisher Scientific社)。活性化の24時間~96時間後に、細胞を丸底の96ウェルプレートに播種し(1×106個の細胞/ウェル)、その後に1200 rpmで5分間遠心分離して、上清を除去した。非標識の抗LAG-3一次抗体、抗PD-1一次抗体(ニボルマブ)又は抗PD-L1一次抗体を10 μg/mlの濃度で各ウェルに加え、穏やかに振盪することによって室温で90分間インキュベートした。徹底的に洗浄した後に、穏やかに振盪することによって、FACS緩衝液(PBS、1%のFBS)中の100 μlのAPC/抗ヒトIgG Fc抗体及び10 μg/mlのPE/抗ヒトCD2抗体(BioLegend社)で細胞を室温で45分間染色した。標識された抗体APC/Cy7抗ヒトCD366(TIM3)、APC/抗ヒトCD272(BTLA)、APC/抗ヒトCD137(4-1BB)、PE/抗ヒトCD134(OX40)、Brilliant Violet 510(商標)/抗マウス/ラット/ヒトCD27、APC/抗ヒト/マウス/ラットCD278(ICOS)、FITC/抗ヒトTIGIT抗体を、各ウェルに10 μg/mlの濃度で加え、穏やかに振盪することによって室温で90分間インキュベートした。FACS緩衝液で2回洗浄した後に、細胞をPBS中に再懸濁し、5 ml容のポリスチレン製丸底チューブ(BD Biosciences社)に移して、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter社、米国、カリフォルニア州、ブレア)で分析した。
【0220】
hPBMCに対するモノクローナル抗体のフローサイトメトリー結合アッセイ
健康なドナーから分離されたヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を、2 mMのL-グルタミン、10%(容量/容量)のCTL washサプリメント(CTL、米国、オハイオ州、シェーカーハイツ)、100 U/mlのベンゾナーゼ(Merck Millipore社、米国、マサチューセッツ州、バーリントン)を補充したRPMI 1640培地(Gibco社)中で解凍した。1200 rpmで10分間遠心分離した後に、これらを10%(容量/容量)の熱不活化ウシ胎児血清(FBS、Sigma社)、2 mMのL-グルタミン、100 U/mlのペニシリン及び100 μg/mlのストレプトマイシン(Gibco社)、HEPES(10 mM)(Gibco社)を補充した完全RPMI培地中に再懸濁した。5%のCO2を含む加湿雰囲気中にて37℃で16時間静置した後に、hPBMCをカウントし、完全RPMI培地(上記)中で106個の生細胞/mlの濃度で再懸濁し、Dynabeads Human T-Activator CD3/CD28(Gibco社)を用いて25 μlのビーズ/106個の生細胞で活性化した。活性化の24時間後に、細胞を遠心分離し、丸底を有する96ウェルプレートにおいてPBS中で4×105個の細胞/ウェルでプレーティングした。PBS中で1回洗浄した後に、これらを50 μlのLIVE/DEAD(商標)Fixable Violet Dead Cell Stain(Invitrogen社)と一緒に+4℃で30分間インキュベートし、もう一度洗浄した。48 pM及び9.6 pMの濃度で100 μlのPBS中に希釈したモノクローナル抗体を細胞に加え、穏やかに振盪しながら暗所にて室温で1時間30分インキュベートした。細胞を前述のように2回洗浄した後に、5 μlのPE結合抗ヒトCD2(BD Biosciences社)及びAPC結合抗ヒトIgG, Fcγ特異的抗体(Jackson immunoresearch社)(100 μlのFACS緩衝液(PBS(1×) 1%(容量/容量)FBS)中で1:2000希釈される)と一緒にインキュベートした。前述と同じ条件で45分インキュベートした後に、FACS緩衝液による2回の洗浄を行い、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter社)での取得のために、細胞を150 μlのPBS(1×)中に再懸濁した。
【0221】
scFv-ファージクローンの選択
以前に記載されたように(De Lorenzo C, Clinical Cancer Research, 2002)、M13-K07ヘルパーファージ(Invitrogen、Thermo Fisher Scientific社)を使用することにより、ファージミド粒子をライブラリーから回収した。各選択ラウンドで、ファージ(1013 cfu)をPBS中の5%(重量/容量)のスキムミルク粉末(Fluka Analytical、Sigma-Aldrich社)でブロッキングした。最初の選択ラウンドでは、ブロッキングされたファージを活性化リンパ球(1×106個)と一緒に4℃で一晩回転させてインキュベートすることにより行われる1ラウンドの選択にかけた。PBSで徹底的に洗浄した後に、結合されたファージをPBS中の76 mMのクエン酸(pH 2.5)により活性化リンパ球から5分間溶出させ、その後に1 MのTris・HCl(pH 8.0)で中和した。E.コリTG1細胞に感染させることによって、回収されたファージを増幅して、精製キメラタンパク質に対する次の選択ラウンドのためのファージを調製した。このために、Nunc(商標)ポリプロピレンチューブ(Fisher Scientific、Thermo Fisher Scientific社)に、0.05 MのNaHCO3溶液中20 μg/mlの濃度の選択された組換えキメラタンパク質を4℃で72時間コーティングした。ブロッキングされたファージを、rhIgG1-Fcタンパク質でコーティングされたチューブ内にて4℃で2時間回転させてインキュベートすることによる後続の2ラウンドの負の選択にかけた。次いで、上清中に回収された未結合のファージを、正の選択のために上記のように作製されたコーティングされたチューブ内にて4℃で一晩回転させてインキュベートし、上記のように溶出させた。あるいは、溶出のためにトリプシンを使用した。簡潔には、PBSで徹底的に洗浄した後に、結合されたファージを1 mMのCaCl2を含む50 mMのTris・HCl(pH 8.0)緩衝液と一緒に4℃で1時間回転させてインキュベートし、その後にトリプシン(1 μg/ml)を用いて穏やかに振盪することによって25℃で更に15分間インキュベートしてキメラタンパク質から溶出させた。次いで、プロテアーゼ阻害剤(cOmplete(商標)EDTA不含のプロテアーゼ阻害剤カクテル、Sigma-Aldrich社)を使用することによって、反応を遮断した。その後に、ファージを収集して、使用するまで4℃で貯蔵した。
【0222】
DNA断片の調製及びハイスループットシーケンシング
各サブライブラリーについて、Endo free Plasmid Maxi Kit(Qiagen社)を使用して、重複感染されたE.コリTG1細胞の培養物から、scFvを含むファージミド二本鎖DNAを精製した。全長scFvを制限酵素BamHI及びHindIII(New England Biolabs社)で切り出し、Wizard(商標)SV Gel及びPCR Clean-Up System(Promega社)を用いて1.2%アガロースゲルから精製した。NcoI及びXhoI(New England Biolabs社)を用いて2回目の酵素的切り出しを行い、以前に精製された材料からVHを単離した後に、1.4%アガロースゲルから抽出した。NGSのためのライブラリーの準備、シーケンシング及びデータの予備的なバイオインフォマティクス分析は、イタリア、ミラノのサン・ラッファエーレ病院のトランスレーショナルゲノミクス・バイオインフォマティクスセンター(Center for Translational Genomics and Bioinformatics)で行われた。サブライブラリーから抽出されたVHをTruSeq ChIPサンプル調製キット(Illumina社)によってバーコード化した。幾つかのサブサイクルのVH混合物の深く適切なシーケンシングを達成するために、バーコード化のための補完的なスキームを実行した。専用の実行で各標的のサブサイクル2及びサブサイクル3を混ぜた。より大きな複雑性を補うために、最初のユニバーサルサイクル1を個別にシーケンシングした。バーコード化された試料を最終濃度10 pMに希釈し、Illumina MiSeq装置で2×300 nt SBSキットv3を用いてシーケンシングした。
【0223】
scFvの回収
対象となるクローンを、対応する標的のサイクル3でサブライブラリーから分離した。高ランクのクローンには、QuickChange II XL Site-Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies社)を使用して、以前に記載された手順(26)に従って、対応するHCDR3領域内で設計された重複するプライマーを用いてクローンのコピーを行った。簡潔には、伸長反応を次のように組成した:50 ng~250 ngのテンプレート、2/5 μLのQuickSolution試薬、1 μLのPfu Ultra High Fidelity DNAポリメラーゼ(2.5 U/μL)、5 μLの10×反応バッファー、1 μLのdNTPmix、125 ngのフォワードプライマー、125 ngのリバースプライマー、H2Oで最終容量50 μLまで。テンプレートDNAは、キット供給元の提案の通りに、1 μLのDpnI酵素を用いた制限によって除去した。適切な量の反応を使用して、XL10-GOLDウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies社)を形質転換した後に、100 μg/mlのアンピシリンを含むLB/寒天上にプレーティングした。幾つかのコロニーを採取し、二重消化及びシーケンシングによって評価した。低ランクのクローンでは、DNA試料を重複PCRによってサイクル3から分離した。簡潔には、Phusion High-Fidelity DNAポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific社)を使用して、対応するHCDR3領域内とVH及びVLの上流及び下流のプラスミドの定常領域とにおいて設計されたプライマーを使用して2つのPCR反応を実施して、VH断片及びVL断片を個別に得た。第2工程では、各クローンに対応するPCR断片を混合して伸長させることで、完全なscFvを取得した。この反応は以下のように組成した:VH断片及びVL断片の増幅用の150 ngのテンプレート並びに完全なscFvの増幅用の10 ngのテンプレート(VH断片及びVL断片)、0.5 μLのPhusion DNAポリメラーゼ(0.02 U/μl)、10 μLの5×Phusion HFバッファー、1 μLのdNTPミックス、0.5 μMのフォワードプライマー、0.5 μMのリバースプライマー、1.5 μlのDMSO、H2Oで最終容量50μlまで。
【0224】
抗体の産生及び精製
対応するVH及びVLのcDNAをそれぞれ抗体の定常重鎖及び定常軽鎖を発現するpEUベクター8.2VH及び4.2VL(Paciello R, J Gen Virol., 2016)にクローニングすることによって、対象となるscFvを全IgG4抗体に変換した。簡潔には、CloneAmp HiFi PCR Premixによって標準的な条件で特定のプライマーを用いて、VH及びVLを増幅し、Wizard(商標)SV Gel及びPCR Clean-Up System(Promega社)を用いて1.3%のアガロースゲルから精製した。In-Fusion HDクローニングキット(Clontech Laboratories社、米国、カリフォルニア州、マウンテンビュー)を使用して、BamHI及びBssHII(New England Biolabs社)で線状化されたpEU8.2VHベクターにVHをクローニングし、ApaLI及びAvrII(New England Biolabs社)で線状化されたpEU4.2VLベクターにVLをクローニングした。Stellarコンピテントセル(Clontech Laboratories, Inc社、米国、カリフォルニア州、マウンテンビュー)を、取得したベクターで形質転換し、コロニーを消化及び配列分析によりスクリーニングした。Lipofectamineトランスフェクション試薬(Life Technologies, Inc.社)を使用することによって、正しい調製物をHEK293-EBNAに同時トランスフェクションし、5 mlのL-グルタミン(L-glutamine)(200 mM)(Gibco、Life Technologies社)、5 mlのペニシリン-ストレプトマイシン(Streptomycin)(10000 U/mL-10 mg/mL)(Sigma-Aldirch社)を補充した既知組成のCD CHO培地(Gibco、Life Technologies, Inc.社)中で6ウェルプレート又は150mmのCorning(商標)組織培養処理培養ディッシュにおいて37℃で約10日間成長させた。馴化培地を収集し、Protein A HP SpinTrap(GE Healthcare Life Sciences社、米国、ニューヨーク州)を使用することによって抗体を精製した。SDS-PAGE NuPAGE(商標)4%~12%のBis-Trisタンパク質ゲル、1.0 mm、10ウェル(Thermo Fisher Scientific社)によって、最終産物の純度を評価した後に、クーマシーブルー溶液(Biorad社)で20分間染色し、7%のCH3COOH及び20%のEt-OHで脱色した。
【0225】
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
精製モノクローナル抗体の結合特異性を確認するために、キメラタンパク質(5 μg/mlでコーティング)、腫瘍細胞(PD-L1陽性乳癌MDA-MB-231細胞又はPD-L1陰性乳癌MCF7)及び未処理のhPBMC又は活性化hPBMCに対してELISAアッセイを実施した。Nunc(商標)平底96ウェルプレート(Fisher Scientific、Thermo Fisher Scientific社)を0.05 MのNaHCO3の溶液中の5 μg/mlのrhPD-1組換えタンパク質、rhPD-1組換えタンパク質及びrhLAG-3組換えタンパク質により37℃で72時間コーティングすることによって、コーティングされたキメラタンパク質に対するELISAアッセイを行った。コーティングされた96ウェルプレートを5%の脱脂粉乳を含むPBSにより37℃で1時間ブロッキングした後に、精製モノクローナル抗体を、2.5%の脱脂粉乳を含むPBS中にて漸増濃度(10 nM~200 nM)で上記プレートに加え、穏やかに振盪することによって、室温で2時間インキュベートした。PBSで徹底的に洗浄した後に、該プレートを(HRP)結合抗ヒトIgG(Fab')2ヤギモノクローナル抗体(Abcam社、英国、ケンブリッジ)と一緒に1時間インキュベートし、再度洗浄し、TMB試薬と一緒に10分間インキュベートした後に、等容量の1 NのHClでクエンチした。
【0226】
細胞ELISAアッセイは、丸底96ウェルプレート(各ウェルにつき2×105個の細胞又は2×105個のリンパ球)に細胞をプレーティングし、これらを2.5%の脱脂粉乳中で漸増濃度(0.5 nM~200 nM)のモノクローナル抗体と一緒に穏やかに撹拌しながら室温で2時間インキュベートすることによって実施した。次いで、プレートを遠心分離し、細胞ペレットをPBSで洗浄し、HRP結合抗ヒトIgGヤギポリクローナル抗体と一緒に室温で1時間インキュベートした。PBS(1X)中で更に洗浄するのに続き、TMB試薬を10分間加えた後に、等容量の1NのHClでクエンチした。Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer社、米国、マサチューセッツ州、ウォルサム)によって、450 nmでの吸光度を測定した。
【0227】
競合ELISAアッセイ
新規の抗PD-1モノクローナル抗体がニボルマブと異なるエピトープを認識するかどうかを確かめるために、コーティングされたPD-1/Fcキメラタンパク質(5 μg/ml)に対して競合ELISAアッセイを実施した。5%の脱脂粉乳を含むPBSでブロッキングした後に、コーティングされた96ウェルプレートを、2.5%の脱脂粉乳を含むPBS中の飽和濃度の各非標識モノクローナル抗体(400 nM)と一緒に撹拌しながら室温で2時間プレインキュベートした。PBSで徹底的に洗浄した後に、漸増濃度のビオチン化ニボルマブモノクローナル抗体を添加した。結合を検出するために、プレートをHRP結合ストレプトアビジン(Biorad社)と一緒に室温で撹拌しながら30分間インキュベートし、再度洗浄して、上記のように分析した。
【0228】
FACSによるhPBMCへの抗体の結合の分析
ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を解凍の翌日にレスキューし、カウントした後に、Dynabeads(商標)Human T-Activator CD3/CD28を用いて1×103個のビーズ/mlの濃度で活性化させた(Gibco(商標)、Thermo Fisher Scientific社)。活性化の24時間~96時間後に、細胞を丸底の96ウェルプレートに播種し(4×105個の細胞/ウェル)、その後に1200 rpm/分で5分間遠心分離して、上清を除去した。抗PD-L1モノクローナル抗体のPD-L1_A及びPD-L1_Cを10 μg/mlの濃度で加え、穏やかに振盪することによって室温で90分間インキュベートした。徹底的に洗浄した後に、穏やかに振盪することによって、FACS緩衝液(PBS、1%のFBS)中の100 μlのAPC/抗ヒトIgG Fc抗体及び10 μg/mlのPE/抗ヒトCD2抗体(BioLegend社)で細胞を室温で45分間染色した。FACS緩衝液で2回洗浄した後に、細胞をPBS中に再懸濁し、ポリスチレン製丸底チューブ(BD Biosciences社)へと移して、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter社)で分析した。
【0229】
リンパ球増殖アッセイ
リンパ球増殖アッセイを、hPBMCを使用することにより実施し、上記のようにカウントし、予め温められた0.1%のBSA/PBS溶液中で2×106個の細胞/mlの密度で再懸濁した。染色のために、CFDA-SE(Vybrant(商標)Cell Tracer Kit、Invitrogen(商標)、Thermo Fisher Scientific社)を10 μMの濃度で含む予め温められた0.1%のBSA/PBS溶液を使用して、hPBMCを1×106個の細胞/mlの密度で再懸濁し、37℃で10分間インキュベートした。次いで、氷冷されたR10培地を使用して、氷上で更に5分間インキュベートすることによって細胞を透過処理した。次に、細胞をPBSで3回洗浄した。2回目の洗浄と3回目の洗浄との間に、細胞を37℃で5分間インキュベートして、過剰なCFDA-SEを完全に除去した。最後の洗浄及び1200 rpmでの10分間の遠心分離の後に、細胞をR10中に1×106個の細胞/mlの密度で再懸濁し、48ウェルプレートにプレーティングした(1×106個の細胞/ウェル)。選択された抗LAG-3モノクローナル抗体(10 μg/ml)の不存在下又は存在下で、プレーティングされたリンパ球を2.5 μg/mlのフィトヘマグルチニン-L(PHA-L、Roche社)と一緒にインキュベートすることによって、リンパ球増殖アッセイを実施した。次いで、プレートを37℃で5日間インキュベートした。処理が終わったら、各試料を回収し、100 μlのPBSに再懸濁し、丸底の96ウェルプレートに移した。最初に、細胞をバイオレットのLIVE/DEAD溶液(Thermo Fisher Scientific社)と一緒に4℃で30分間インキュベートした。数回洗浄した後に、試料を更に抗ヒトCD3(APC)抗体、抗CD4(PE)抗体及び抗CD8(PerCP)抗体(10 μl/試料)と一緒に4℃で1時間インキュベートした。最後に、細胞を徹底的に洗浄し、200 μlのPBS中に再懸濁させ、5 ml容のポリスチレン製丸底チューブ(BD Biosciences社)へと移して、CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman Coulter社)でサイトメトリー取得を行った。
【0230】
実施例1:活性化ヒトTリンパ球でのscFvの選択
本発明者らの目標は、免疫チェックポイント(IC)に対するヒト抗体レパートリーの作製であった。多くのICはTリンパ球の表面に発現し、それらの発現はT細胞が抗原依存的又は抗原非依存的な刺激に曝されると増加するため、本発明者らは、未分画のヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を使用してヒト一本鎖抗体断片(scFv)のライブラリーをスクリーニングすることを試みた。選択プロセスを最適化するために、抗CD3/CD28ビーズを用いたin vitro活性化後に、最初に10種の異なるIC(表1に示される)の動態及び発現レベルを評価した。表1に示されるように、フローサイトメトリー分析によって測定されたピーク発現は、種々の免疫モジュレーターの間で異なっていたが、それらの大部分は96時間の刺激後に最大レベルの提示に達した(表1を参照)。96時間の刺激後に、未処理のhPBMCと活性化hPBMCとの間で同じレベルの表面提示を維持したBTLA及びその発現レベルをわずかに増加させたTIGITを除いて、全てのICは、ゲーティングされた集団の50%超で十分に発現した。この分析に基づいて、ヒトscFvライブラリーの選択に使用されるべきリンパ球の活性化の時点として96時間を選択した。
【0231】
表1-未処理又は種々の時間間隔で活性化されたヒトリンパ球での各標的の発現のパーセンテージ
【表1】
【0232】
実験手順のセクションに記載されるように、活性化hPBMCに対してライブラリーをパニングすることにより、約100万個のファージ粒子を選択した(選択サイクル1)。このファージのプールは、多くの種々のICに対するバインダーの大規模なコレクションに相当する可能性があり、以降、「イムノームライブラリー」と呼称する。特定のICに対するバインダーの特定を容易にするために、連続的パニングにおいてFc融合組換えタンパク質を使用して、イムノームライブラリーの10回の異なる並列選択を実施することで、IC特異的なレパートリーがもたらされた。
【0233】
実施例2:次世代シーケンシングによるscFvバインダーの特定
ex vivo/in vitroを組み合わせたアプローチにより選択された個々のファージクローンを特定するために、MiSeq Illuminaプラットフォームでの大規模並列シーケンシング(詳細については、材料及び方法のセクションを参照)により、IC特異的なレパートリーのVH領域をシーケンシングした。イムノームライブラリー(サイクル1)から出発して、標的特異的なファージを効率的に濃縮するために、Fc融合組換えタンパク質に対する後続の2サイクルの選択(サイクル2及びサイクル3)を実施した。全体の選択のセットの配列分析により、サイクル2の後で既に濃縮が起こっていたが、3番目のサイクルの後に、より大幅に高いレベルの濃縮(すなわち、少なくとも10倍)が得られたことが判明した(図1)。並列シーケンシングデータの分析により、おそらく10種の生化学的ベイトに共通するFcバインダーの濃縮のため、全ての選択に共通するVH配列を除去することができた。同様に、scFvをコードする配列内に停止コドンを有する非特異的な生物学的に濃縮されたクローンを、潜在的なバインダーのリストから取り出した。各標的に最も関連性の高い特定のクローンを得るために、最終的に、種々の選択サイクル3のリストに100万あたり85カウントの閾値を設定した。このようにして、10種の標的のうち9種の標的に最良の潜在的なバインダーの詳細なスナップショットが取得された(図1に示される)。TIGITの選択は実際には分析から除外された。それというのも、TIGITの選択は、おそらく活性化hPBMCでのその発現が低いため、あまり配列の濃縮を示さなかったからである(表1を参照)。
【0234】
3個の標的、すなわちLAG-3、PD-1及びPD-L1に特異的なバインダーは、更なる研究のために、抗PD-1のニボルマブ等のそれらに特異的な抗体として選択され、これらは以前に開発され、治療効果の実証により臨床で広く使用されているため、これらは生物学的アッセイで比較のために使用することができる。完全ヒト型IgG4への変換のために、更なる特性評価のために3個の標的のそれぞれに有効な少なくとも5個の抗体について説明する目的で、LAG-3、PD-1及びPD-L1のIC特異的なレパートリーから最良のscFvをレスキューした。
【0235】
実施例3:選択されたバインダーから作製されたヒトIgGは、高い結合親和性及び受容体/リガンド競合活性を示す
最高ランクのLAG-3、PD-1及びPD-L1バインダーから作製されたヒトIgG4抗体は、活性化PBMC及び低ナノモル又はナノモル未満の親和性を有する組換えタンパク質を認識することが確認された(図2及びその中の表)。特に、幾つかの抗PD-1モノクローナル抗体(すなわち、PD-1_A及びPD-1_B)は、臨床的に検証されたニボルマブと比較して同等又はより良好な見かけの親和性を示した。ニボルマブを含むほとんどの抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体は、活性化hPBMCと比べて組換えタンパク質へのより強い結合を示したが、抗LAG3抗体では逆のことが当てはまった。抗PD-L1抗体は、癌細胞で発現されるPD-L1とT細胞によって提示されるPD-1との間の相互作用を遮断することによって臨床的便益をもたらすことが分かっているため、更に抗PD-L1抗体が癌細胞の表面上にあるそれらの標的を認識するかどうかを試験した。全ての抗PD-L1抗体は、乳房MDA-MB-231腫瘍細胞等のPD-L1を発現する腫瘍細胞にも高い親和性を示したが、腫瘍細胞への結合活性の階層は、活性化hPBMCで観察されたものとは異なっていた(図2中の表)。さらに、モノクローナル抗体のPD-L1_A及びPD-L1_Bは、競合ELISAアッセイにおいて、その2つの受容体PD-1及びB7.1によるPD-L1の認識を妨げることができることが示された。
【0236】
さらに、選択された抗体を、マウスオーソログへの結合についても試験した。ニボルマブとは異なり、抗PD-1抗体の1個は、マウスPD-L1と交差反応性であることが判明した。したがって、PD-1_Aは、ニボルマブとは異なるエピトープを認識する可能性があり、それはまた飽和濃度の非標識のPD-1_Aモノクローナル抗体の不存在下又は存在下でビオチン化ニボルマブのPD-1への結合を測定することによって実施される競合ELISAアッセイからも裏付けられる。PD-1_A及びニボルマブの同時の結合により、2個のモノクローナル抗体が、それらの受容体との相互作用を妨げないことが明らかになった。
【0237】
実施例4:免疫チェックポイント分子に対する高親和性IgGは、T細胞免疫刺激活性及びエフェクター機能を示す
以前の報告で、未分画のhPBMCにおけるCD3陽性初代休止細胞はブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)又はフィトヘマグルチニン(PHA)を使用することによってin vitroで増殖するように誘導することができること、そしてこの活性はCIによって調節されることが示された(Macon-Lemaitre L, Immunology, 2005、Wang C, Cancer Immunol Res., 2014、Selby MJ, Plos One, 2016)。したがって、上記のリンパ球増殖アッセイを使用して、LAG-3、PD-1又はPD-L1に対する選択された抗体が細胞分裂を増加させることができるかどうかを試験した。CFDA-SE染色されたリンパ球をPHAで刺激し、抗体の不存在下又は存在下でインキュベートして、抗原特異的なT細胞増殖を誘導した。このアッセイでは、ニボルマブは一貫して増殖活性の50%の増加をもたらし、抗PD-1抗体のPD-1_A及びPD-1_BはT細胞増殖を効果的に刺激することもでき、その際、PD-1_Aは、臨床的に活性なニボルマブよりも高い活性を示した(図3)。同様に、PD-L1に対する全ての3個の抗体及び3個のLAG-3抗体のうちの1個も様々な増殖の程度を誘導した。増殖を刺激する能力は結合力と常に相関するとは限らず、異なる抗体がそれらの標的との異なる相互作用様式を有し得ることを示唆している。
【0238】
興味深いことに、ヒトリンパ球に対して最も活性の高い抗体である抗体PD-1_A及びPD-L1_Aでは、マウスのリンパ球に対してもこの能力が確認されたため、これらがマウスPD-1及びPD-L1と交差反応性であることを示唆している。本発明者らは、2つの細胞型を共培養する場合に抗PD-L1抗体及び抗PD-1抗体がリンパ球増殖に対するPD-1/PD-L1相互作用の阻害作用を抑制する能力を試験するために、表面に高レベルのPD-L1を発現するMDA-MB-231乳房腫瘍細胞を利用した。図4に示されるように、モノクローナル抗体のPD-L1_A及びPD-1_Aは用量依存的にリンパ球の増殖を誘導したのに対して、モノクローナル抗体のPD-L1_B及びPD-1_Bで処理されたリンパ球では、わずかな効果しか検出されなかった。このアッセイでも、モノクローナル抗体のPD-L1_A及びPD-1_Aはニボルマブよりも高い活性を示したのに対して、PD-L1陰性MCF7腫瘍細胞を使用した場合に、リンパ球の増殖に対する効果は観察されなかった。興味深いことに、モノクローナル抗体のLAG3_A及びLAG3_Cの場合(図2及び図2の表)のように、幾つかの場合に、増殖を刺激する能力は、最高の見かけの親和性と相関していなかった。
【0239】
3個の追加の抗PD-L1抗体が特定され、PD-L1_Aに対して特徴付けられた。3個の抗体PD-L1_C、PD-L1_D及びPD-L1_Eを、PD-L1表面発現を誘導するように事前に活性化されたヒトPBMCへのそれらの結合について評価した。PD-L1_Aに対して、3個の抗体によってより高いパーセンテージのリンパ球が染色された(図7を参照)。
【0240】
実施例5:刺激されたhPBMCによるサイトカインの産生に対する新規の抗体の効果
hPBMC(1×106個の細胞)を培養し、抗体の不存在下又は選択された抗LAG-3モノクローナル抗体、抗PD-L1モノクローナル抗体及び抗PD-1モノクローナル抗体(20 μg/mL)若しくはネガティブコントロールとして使用されるアイソタイプコントロール抗体の存在下で、2.5 μg/mLのPHA-L又は50 ng/mLのブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB、Sigma-Aldrich社)で18時間、42時間及び66時間刺激した。ニボルマブを、同じ条件で並行アッセイでのポジティブコントロールとして試験した。細胞培養上清中のIL-2又はIFNγのレベルを、ELISAアッセイ(DuoSet ELISA、R&D Systems社)によって製造業者の推奨に従って測定した。
【0241】
ニボルマブ及びイピリムマブ等の免疫調節抗体は、T細胞のエフェクター機能を改善することが示されたことから、この特性はそれらの臨床的便益を高める可能性がある(Macon-Lemaitre L, Immunology, 2005、Wang C, Cancer Immunol Res., 2014、Selby MJ, Plos One, 2016)。したがって、ニボルマブの特性評価のために以前に報告されたサイトカイン分泌アッセイ(Wang C, Cancer Immunol Res., 2014)において、T細胞増殖を誘導する能力が最も高い抗体の中で5個の抗体(LAG-3_A、PD-1_A、PD-1_B、PD-L1_A及びPD-L1_B)を試験した。図5に示されるように、試験された全ての抗体は、PHA又はSEBのいずれかで刺激されたhPBMCによるIL-2及びIFNγの両方の分泌を増加させることができた。種々の抗体を細胞培養混合物に加えると、サイトカイン分泌は時間と共に増加した。PD-1_1モノクローナル抗体は、両方のサイトカインの分泌を刺激する能力に関して、他の全ての試験された抗体よりも一貫して強力であるように見えた。このアッセイでも、新たに特定された抗体はニボルマブと遜色なかったことから、本発明者らが作製したイムノームライブラリーには、臨床用に開発するために大きな可能性を持ったバインダーが豊富であるという結論が更に裏付けられる。
【0242】
特定されてPD-L1_Aに対して特性評価された追加の抗PD-L1抗体の2個(PD-L1_C及びPD-L1_D)も、記載されたサイトカイン分泌アッセイでニボルマブと比較して評価した。図8に示されるように、試験された全ての抗体は、PHA又はSEBのいずれかで刺激されたhPBMCによるIL-2及びIFNγの両方の分泌を増加させることができた。
【0243】
実施例6:in vivo抗腫瘍活性
6週齢の雌のBalBCマウス(Envigo社)をin vivo研究で使用した。マウスの右脇腹に2×105個の細胞を皮下移植し(0日目)、3日目、6日目、10日目に、200 μgのα-mPD-L1(BioXcell社、クローン10F.9G2)、α-mPD-1(BioXcell社、クローンRMP114)、PD-1_A又はPD-L1_Aで腹腔内処理した。腫瘍成長を、3日~4日ごとにキャリパーにより式L×W2/2(Lは腫瘍の最大直径であり、Wは腫瘍の最小直径である)を使用して測定した。苦痛の兆候又は2000 mm3を超える腫瘍体積が生じたらすぐに動物を屠殺した。
【0244】
2個の抗体PD-1_A及びPD-L1_Aも、マウスPD-1及びPD-L1との交差反応性を考慮して、CT26結腸癌モデルにおいてin vivoで試験した。マウスにCT-26細胞を移植し(0日目)、その後にPD-1_A抗体及びPD-L1抗体で処理した(3日目、6日目、10日目)。マウスPD-1及びPD-L1(α-mPD-1及びα-mPD-L1)に対して反応する2個の市販の抗体並びに事前にin vivoで検証された抗体(参照)をポジティブコントロールとして使用した。未処理のマウスにおける腫瘍の成長速度は非常に速く、制御不能であり、腫瘍の大部分は21日目に650 mm3を超えるサイズに達したが、PD-1_Aで処理されたマウスでは腫瘍体積の減少が見られた(p=0.03)。交差反応性の抗PD-1抗体の活性は、マウスPD-1に対する市販の抗体の活性に匹敵する。匹敵する活性の傾向は、2個の抗PD-L1抗体でも観察された(図6)。処置されたマウスは一貫して、PD-1及びPD-L1の遮断に対する応答において2つの異なる処理結果を伴う二分、すなわち、この癌モデル及び他の癌モデルについて十分に説明されているレスポンダーマウス及びノンレスポンダーマウスを示す。したがって、2つの新規のモノクローナル抗体の生物学的活性及び機能的活性も、関連するin vivoモデルにおいて確認した。
【0245】
実験のまとめ
本発明者らは、幾つかの異なるICを認識する抗体の多数のセットの迅速な特定が可能となるようにファージディスプレイ技術を調整した。このために、所与の受容体を特異的に認識するscFvを、組換えタンパク質又はペプチド又は他の標的特異的ベイトを使用する後続の親和性選択サイクルによって引き出すことができるICバインダーのバイアスのないライブラリー、すなわちイムノームライブラリーの作製のためのセレクターとして、生きた活性化hPBMCを選択した。選択プロセスの開始点としてhPBMCを使用する根拠は、生きたヒト細胞によって提示される正しい翻訳後修飾を有するネイティブな受容体を認識することができる抗体の選択を保証するためでもあった。この作業仮説と一致して、選択されたscFvを使用して作製されたヒトIgG4は、0.1 nMまでの低ナノモル範囲における見かけの親和性で細胞が提示する受容体を認識することができた。この結合親和性は、臨床的に有効なチェックポイント特異的抗体で示される結合親和性と同等又はそれ以上であり、多くの種類の癌の治療用に承認された抗PD-1モノクローナル抗体のニボルマブの親和性(Wang C, Cancer Immunol Res., 2014)より優れている。hPBMCでの選択の効率を改善するために、T細胞の抗CD3架橋によって標的ICの発現レベルを増加させた。
【0246】
特定の受容体を認識するバインダーの特定を容易にするために、10個の組換えタンパク質のパネルを使用して、イムノームライブラリーを更に親和性選択した。細胞表面に提示されたタンパク質に対する抗体の選択のための汎用的なプロトコルを開発する目的で、組換えFc融合タンパク質に対して後続の2サイクルの選択を行った。この方略は、選択の効率と大きな多様性を有するIC特異的なレパートリーの作製との間の折衷案に相当し、こうして、標的ICの異なる領域に異なる生物学的活性で結合する抗体の特定が可能となった。
【0247】
全ての選択で100倍~1000倍の濃縮レベルが達成され、そのうち4個(PD-1、4-1BB、CD27及びOX40)は更に高い濃縮に達した。異なる選択サイクルの比較配列分析により、ほとんどの選択(すなわち、9つのうち7つ)では、2番目のサイクル後にクローンの濃縮に大幅な改善(すなわち、少なくとも10倍)が見られることが確認されたのに対して、LAG3及びOX40での選択は、2番目のサイクル以上に改善するよう見えなかった。
【0248】
本発明者らの結果は、本発明の文脈で使用されるex vivo/in vitroを組み合わせた選択アプローチが、生細胞での選択と本発明者らが以前に採用した選ばれた標的に対する直接的なスクリーニング(Monaci P, Plos One, 2008)による特異的バインダーの特定とを組み合わせたアプローチよりも迅速かつ効率的であるという結論を裏付けている。16個のIgGの全体で結合が確認され(5個の抗LAG3、5個の抗PD-L1及び6個の抗PD-1)、11個はhPBMCで発現されるそれらの同族受容体に対して低ナノモルの見かけの親和性を示し、そのうち3個(PD-L1_2、PD-1_1及びPD-1_2)はナノモル未満の見かけの親和性を有し、ニボルマブの親和性と遜色なかった。中でも、各標的に対する5個の変換された抗体のうち少なくとも2個~3個は、未処理のリンパ球又はFcには顕著な結合を伴わずに、組換えの精製標的及び活性化リンパ球の両方に高度に特異的であることが分かったため、これらを更なる生物学的アッセイ及び機能的アッセイのために選択した。
【0249】
上記抗体がT細胞増殖を刺激する能力を試験したところ、8個の抗体のうち6個(LAG-3_A、PD-L1_A、PD-L1_B、PD-1_A及びPD-1_B)は、ニボルマブと比較して改善された生物学的活性を示した。PD-1_Aはまた、PD-L1を高発現する腫瘍細胞系統MDA-MB-231との共培養においてT細胞増殖の促進に顕著な活性を示した。このアッセイでは、PD-L1_Aモノクローナル抗体によっても、PD-L1/PD-1相互作用を妨げる能力と一致してT細胞増殖がほぼ3倍となった。最も高活性な抗体が必ずしもより強い結合性を有する抗体に対応するわけではなく、例えばモノクローナル抗体LAG-3_Aは、hPBMCへの結合においてモノクローナル抗体LAG-3_Cよりも見かけの親和性が低いが、LAG-3_AはT細胞増殖を刺激することができたのに対して、LAG-3_Cはできなかった。これらの結果は、選択された抗体が標的タンパク質上の異なるエピトープを認識することも間接的に示唆している。この研究で特定された抗体の幾つかがT細胞を刺激してIL2及びIFNγを分泌させることができることを実証することができた。PD-1_1モノクローナル抗体は一貫して、サイトカイン分泌の刺激において最高の活性を示し、この研究で特定された抗体の幾つかが臨床的に検証されたニボルマブと同様の結合親和性及び生物学的特性を示すという観察を拡張した。実際、リンパ球とAPC又は腫瘍細胞との共培養による細胞ベースアッセイで試験した場合に、新しい抗体の幾つかはニボルマブと比較して更に高い活性を示した。これらのアッセイは、これらの抗体が受容体とそのリガンド(すなわち、PD-1/PD-L1)との間の相互作用の悪影響だけでなく、新規の抗体が拮抗し得る可能性のある他の潜在的な生物学的効果も再現するため、in vivo条件をより適切に表すことができる。これにより、新規の抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体が、T細胞増殖及びサイトカイン分泌の刺激に対して、活性が主にPD-1及びPD-L1相互作用の阻害に依存し得るニボルマブによって発揮される効果よりも強い効果を示す理由が説明され得る。この仮説は、新規の抗PD-1抗体がニボルマブとは異なるエピトープを認識するため、異なる作用機序で作用する可能性があるという興味深い所見によっても裏付けられる。実際、PD-1_Aは、PD-1_Aとニボルマブとを区別するPD-L1_Aと同様の様式でマウスリンパ球と交差反応することができた。この特性のため、これらの2個の新規の抗体を、CT26結腸癌を有するマウスでin vivoでも試験したところ、腫瘍成長を効果的に抑えることが分かった。
【0250】
全体的に、この研究で示されたデータは、使用された選択手順により、標的受容体をその天然の立体構造で特異的に、かつ従来技術の抗体よりも優れた特性を有するチェックポイント阻害剤に特異的に結合する抗体をもたらす更なる親和性成熟の必要なく高親和性で認識する抗体を作製することが可能となるという結論を裏付けている。
【符号の説明】
【0251】
図面訳
図1
Immunome universal cycle 1 イムノームユニバーサルサイクル1
Cycle 2 サイクル2
Cycle 3 サイクル3

図2
Absorbance 吸光度
Activated hPBMCs 活性化hPBMC
Untreated hPBMCs 未処理のhPBMC
MDA-MB-231 cells MDA-MB-231細胞
Nivolumab ニボルマブ

図3
Fold increase of CD3-T cell proliferation CD3-T細胞増殖の増加倍率
hIgG4 control hIgG4コントロール
Nivolumab ニボルマブ

図4
Fold increase 増加倍率
Nivolumab ニボルマブ

図5
hIgG4 control hIgG4コントロール
Nivolumab ニボルマブ
Time (hours) 時間(時)

図6
Tumor volume (mm3) 腫瘍体積(mm3)
untreated 未処理

図7
Binding to activated hPBMC 活性化hPBMCへの結合
IgG concentration IgG濃度

図8
hIgG4 control hIgG4コントロール
Nivolumab ニボルマブ
Time (hours) 時間(時)
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2024031993000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-12-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は
(i)
配列番号22のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1、および
配列番号23のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号24のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2、および
配列番号25のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
配列番号26のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3、および
配列番号27のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
又は、
(ii)
配列番号31のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1、および
配列番号32のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号33のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2、および
配列番号34のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
配列番号35のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3、および
配列番号36のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
又は、
(iii)
配列番号22のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1、および
配列番号23のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号24のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2、および
配列番号25のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
配列番号89のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3、および
配列番号27のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
又は、
(iv)
配列番号22のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1、および
配列番号23のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号24のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2、および
配列番号25のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
配列番号98のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3、および
配列番号27のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
又は、
(v)
配列番号22のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH1、および
配列番号23のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
配列番号24のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH2、および
配列番号25のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、
配列番号107のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3、および
配列番号27のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3、
を含む、拮抗的抗原結合タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、
(i)配列番号21に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号20に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメイン
(ii)配列番号30に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号29に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメイン
(iii)配列番号21に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号83に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメイン
(iv)配列番号21に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号92に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメイン、または
(v)配列番号21に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメイン及び配列番号101に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する重鎖可変ドメイン
含む、拮抗的抗原結合タンパク質。
【請求項3】
PD-L1に特異的に結合する拮抗的抗原結合タンパク質であって、該抗原結合タンパク質は、
(i) 配列番号21に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を有する軽鎖可変ドメインが、
(a) 配列番号23のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL1、
(b) 配列番号25のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL2、および
(c) 配列番号27のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRL3;
を含む、および
(ii) 重鎖可変ドメインが、配列番号26のアミノ酸配列を含む又は該アミノ酸配列からなるCDRH3を含む、
を含む、抗原結合タンパク質。
【請求項4】
(a)前記抗原結合タンパク質は、抗体、抗体様タンパク質又はそれらの断片、または、前記抗原結合タンパク質は、抗体、抗体様タンパク質又はそれらの断片であり、好ましくは、前記抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、組換え抗体、抗原結合性抗体断片、一本鎖抗体、一本鎖可変断片抗体、ダイアボディ、Fab断片、F(ab)2断片、抗体ミメティック、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体及びIgG4抗体からなる群から選択され、及び/又は、
(b)前記抗原結合タンパク質は、以下の特性:
(i)ELISAによる評価で100 nM未満、50 nM未満、10nM未満、1 nM未満、100 pM未満、10 pM未満又は5 pM未満のKdPD-L1結合する特性、
(ii)ELISAによる評価で10 nM未満、1 nM未満又は200pM未満のIC50 PD-L1へのリガンドの結合を遮断することができる特性、
(iii)T細胞増殖を刺激する特性、
(iv)リンパ球の増殖を誘導する特性、
(v)IL-2及び/又はIFNγの分泌を誘導する特性、及び/又は、
(vi)ベースライン値と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%腫瘍体積を減少させる特性、
の少なくとも1つを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質をコードする核酸。
【請求項6】
請求項に記載の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
【請求項7】
請求項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質を作製する方法であって、前記抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞から前記抗原結合タンパク質を調製する工程を含む、方法。
【請求項9】
少なくとも1つの請求項1~4のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質、請求項5に記載の核酸、又は請求項6に記載のベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物、または、
少なくとも1つの請求項1~のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質、請求項に記載の核酸、又は請求項に記載のベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物であって少なくとも1種の更なる活性作用物質を含む、医薬組成物。
【請求項10】
請求項に記載の医薬組成物と、任意に少なくとも1種の更なる活性作用物質とを含むキット。
【請求項11】
癌及び/又は慢性感染症の治療において使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質、請求項5に記載の核酸、請求項6に記載のベクター、又は請求項9に記載の医薬組成物、または
癌及び/又は慢性感染症の治療において使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質、請求項に記載の核酸、請求項に記載のベクター、又は請求項に記載の医薬組成物であって
(i)前記癌は、
(a)口唇、口腔及び咽頭の悪性新生物、及び/又は、
(b)消化器の悪性新生物、及び/又は、
(c)呼吸器及び胸腔内臓器の悪性新生物、及び/又は、
(d)骨及び関節軟骨の悪性新生物、及び/又は、
(e)黒色腫及び他の皮膚の悪性新生物、及び/又は、
(f)中皮組織及び軟部組織の悪性新生物、及び/又は、
(g)乳房の悪性新生物、及び/又は、
(h)女性生殖器の悪性新生物、及び/又は、
(i)男性生殖器の悪性新生物、及び/又は、
(j)尿路の悪性新生物、及び/又は、
(k)目、脳及び他の中枢神経系の部分の悪性新生物、及び/又は、
(l)甲状腺及び他の内分泌腺の悪性新生物、及び/又は、
(m)リンパ系、造血系及び関連組織の悪性新生物、
からなる群から選択され、及び/又は、
(ii)前記慢性感染症は、HBV、HCV、HIV、HSV、HPV、EBV、CMV及びクラミジアからなる群から選択され、及び/又は、
(iii)少なくとも1種の更なる活性作用物質は、それを必要とする被験体に投与され、または、
少なくとも1種の更なる活性作用物質は、それを必要とする被験体に投与され前記少なくとも1種の更なる活性作用物質と、請求項1~のいずれか一項に記載の拮抗的抗原結合タンパク質、請求項に記載の核酸、請求項に記載のベクター、又は請求項に記載の医薬組成物とは、同時若しくは順次のいずれかで又はそれらの組み合わせで投与される、
拮抗的抗原結合タンパク質、核酸、ベクター、又は医薬組成物。