(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032007
(43)【公開日】2024-03-08
(54)【発明の名称】跨座式モノレール車両
(51)【国際特許分類】
B61B 13/06 20060101AFI20240301BHJP
E01B 25/08 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
B61B13/06 A
E01B25/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135455
(22)【出願日】2022-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】306037229
【氏名又は名称】株式会社 空スペース
(72)【発明者】
【氏名】河島 壯介
【テーマコード(参考)】
2D056
【Fターム(参考)】
2D056EA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】赤字ローカル線の代替路線として、既存の鉄道軌道を改修せずに運行可能な跨座式モノレール車両を提供する。
【解決手段】鉄道軌道の対のレールの片側のみを使用するモノレール車両。従来、モノレールはレール側面に案内輪を押当てることにより転倒を防止していたが、これをジャイロ機構に置き換えることにより実現させる。鉄道路線は、2本のレール間の寸法管理等の保線コストが掛ったが、これを大幅に簡略化できる。また、従来の単線路線のレール2本を利用し複線とすることができる。単線は車両のすれ違いポイントの到着時刻合わせが必用であるが、複線化によりこの制約が無くなり、無人運行も容易になる。また混雑時間帯のみモノレール車両を止めて従来の鉄道車両を運行させることもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の軌道レール上に回転可能に配列可能な複数の車輪と、前期車輪の回転/支持/制動機能を含む駆動装置、及び前期駆動装置への動力供給手段を有する跨座式モノレール車両において、脱輪防止機構とジャイロ機構を含む横転防止機構を備えたことを特徴とする跨座式モノレール車両。
【請求項2】
キャビン幅が鉄道の狭軌スパン未満であって、狭軌鉄道軌道の2本のレールに各々に配置したときに、互いに干渉せずにすれ違い走行が可能な請求項1に記載の跨座式モノレール車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1本のレール上を走行する跨座式モノレール車両に関する。
【背景技術】
【0002】
モノレールは、鉄道とバスの中間的な輸送能力を有すること、また路線の施工費用が鉄道と比べて廉価であることより、鉄道路線やバス路線の代替となり得る交通手段である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら過疎化等で収益が悪化した鉄道路線の代替はもっぱらバス路線であり、モノレールへの転換例を聞かない。理由は、バス路線は道路の無償使用が前提であることに対し、モノレールは鉄道路線を利用できず、軌道設置費用が多額な事であった。
【0005】
従来の跨座式モノレール車両は車体のローリング方向負荷を、案内車輪を介して専らレールで支持するので丈夫なレールが必要で、鉄道軌道は利用できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明は、既存の鉄道軌道、既存のレールを利用した跨座式モノレール車両を提供することにある。
より詳しくは、1本の鉄道軌道レール上に配列可能な複数の車輪と、車輪の回転/支持/制動機能を含む駆動装置、及び駆動装置への動力供給手段を有する跨座式モノレール車両において、脱輪防止機構とジャイロ機構を含む横転防止機構を備えたことを特徴とする跨座式モノレール車両を提供することにある。
さらに、キャビン幅が鉄道の狭軌スパン未満であって、狭軌鉄道軌道の2本のレールに各々に配置したときに、互いに干渉せずにすれ違い走行が可能な跨座式モノレール車両を提供することにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の跨座式モノレール車両は、既存鉄道の軌道を運行させることより、鉄道路線からの移行費用を最小限に抑えることができる。
また車両姿勢は、既存鉄道の2本のレールの相対位置に依存しないので、レールの保線作業(レール間隔や高さ相互差の維持管理)が簡略化できる。
【0008】
また、バスに対して操舵が不要なモノレールは、無人化が容易であるので運行費用の低減も図れる。
さらに、車両のすれ違いによる車両数や運行時刻の制限がある単線鉄道軌道を複線にできるので車両運行の自由度が高まる。
さらに、既設の単線路線設備を利用するので、混雑時は輸送能力の大きい従来車両を走らせる、鉄道とモノレールの併用運行も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】本発明の係る別の実施例、横転防止機構の断面図。
【
図5】本発明の係る別の実施例、車輪偏り検出機構の実施例断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。ただし、図面はもっぱら解説のためであって、本発明の記述範囲を限定するものではない。
【実施例0011】
図1は、本発明の係る跨座式モノレール車両実施例の複線分の断面図、
図2はその脱輪防止機構と横転防止機構、動力供給機構の断面図、
図3は脱輪防止機構の細部断面図である。 この跨座式モノレール車両は、既存鉄道軌道をそのまま利用することを想定している。
【0012】
即ち既存の軌道、例えば砕石道床に枕木によってスパン1120mm(狭軌)に固定された1対の50N型レールR1、R2、の一方R1レール上を走行させる車両である。
車両1は、進行方向に複数個の車輪2が、回転自在に固定されている。少なくとも1個の車輪2に駆動力を発生伝達する駆動装置3と、車輪の回転を減速停止される図中不記の制動装置(駆動装置3により電力回生される電磁ブレーキ、機械ブレーキ)が設けられ、全体をキャビン4で囲っている。またキャビン4内には乗客乗員用の椅子5を、進行方向に1~5列備えることを想定、キャビンの外幅は1000mm程度としている。
【0013】
車輪2は脱輪防止機構として、両側にフランジ2a、2bを備えると共に、横転防止機構として、ジャイロ効果を発生させるジャイロ機構6(特許国際公開番号WO-A-2011/115699、再公表特許WO-A-2002/077369 などで公知のもの)、及び動力遮断時等の長期停止中の横転防止機構としての油圧シリンダー7a、7bを備える。
図2(A)は油圧シリンダーを同量突き出した状態、
図2(B)は右側の突き出し量を減らした状態をしめす。
【0014】
図3に車輪2のレール接触部の詳細を示す。脱輪防止機構としての両側のフランジ2a、2bが常時レールと接触することは、摩擦抵抗が増大し、摩耗、損傷を引き起こす可能性があるので好ましくない。これより通常走行時にレールと接する踏面について、車輪2の偏りを防止するものである。
【0015】
具体的には踏面の振分け中心を最大径とした緩やかな凸形状として、走行中のレールに分力FRを発生せしめ、その反力FLにより車輪をレール中央にセンタリングせしめる構成である。凸形状の半径WRは、踏面直径の2倍から5倍を目安とすることが望ましい。
【0016】
なおレール上面の半径はWRより若干大きい半径の凹形状が最良であるが、車輪の接触点廻りは車輪に倣った凹面に弾性変形することより、既存レール形状の平面や半径の大きな凸形状でも構わない。
【0017】
次に本実施例の作用について説明する。
本モノレール車両は、既存鉄道の狭軌軌道のレール2本の各々のレール上に、車輪を乗せて静置させること、及び、モノレール車両同士が干渉なくすれ違える配置としている。
両フランジ付き車輪2により車体1がレールRより外れることは無いが、さらに
図3のセンタリング効果によって走行中の摩擦、摩耗は低減される。
【0018】
通常停止時、車両1は、ジャイロ機構6が発生させるジャイロモーメントにより
図1の状態で静止している。駆動装置3の起動により車輪2がレールR1上で回転し、車両1は走行する。ジャイロ機構6によるジャイロ効果は、内部の回転体が高速で回転している限り有効に働き、車両1をほぼ垂直に維持、その姿勢において走行する限り、反対側のレールR2上を走行、または停止する車両や、ホーム9と接触することはない。
【0019】
しかしながらバッテリーが無くった場合や、ジャイロ機構の故障時など異常時の横転防止機構として、車体両側面に設置された対の油圧シリンダー7a、7bのヘッドを伸ばして枕木やバラストに押し当てる。またこの油圧シリンダー7a、7bの突き出し量を個別に制御することで以下の作用が得られる。
【0020】
1)給電時、車両を傾斜させて動力供給機構8の接点を接続し、バッテリーを充電する。
2)ホーム9への停車中に車両を傾斜させて、車体とホームの間隔を狭め、乗降を容易にする。
これによって、本実施例の跨座式モノレール車両は、狭軌軌道の既存単線の路線構造を変更せずに使用し、操舵不要な複線モノレール路線とすることができる。
【0021】
その際、単線終端のレール2本を半径数10m程度の円弧(モノレール車両の最低回転半径の制約に依る)で、Ω状に接続することとなる。よりコンパクトには単線終端にトラバーサーを設置することにより実現できる。
【0022】
図4は本発明の係る跨座式モノレール車両の異常時の横転防止機構の別の実施例断面である。本例はレールの腹部から頭部に掛けて左右からブレーキシューがレールを挟み込み、横転を防止するものである。車両1に固定されたピン11に回転自在に固定された2個のブレーキシュー12a、12b、レールを把握する方向の力を発生する皿ばね13と皿ばねのガイドピン14、及びレールを把握する方向の力を発生するプルシリンダー15により構成されている。
【0023】
次に本実施例の作用について説明する。
通常時は、プルシリンダー15が発生する引張り力が皿ばねを圧縮せしめ、ブレーキシュー12とレールRの間は隙間を保つ。
異常時にプルシリンダー15の引張り力を開放することにより、皿ばねの押力によってブレーキシュー12がレールRを抱き込み、車両1の横転を防ぐ。
【0024】
この横転防止機構は、
図2に示す油圧シリンダー方式よりも応答性に優れるが、発生トルクを高め難いことより、両者を併用することも有効である。
【0025】
図5は本発明の係る跨座式モノレール車両の車輪偏り検出機構の実施例断面図。
車体に固定された受光素子16がレールRからの反射光の偏りを検出する構造である。車輪を僅かに(例えば±1deg)操舵する機構を、車輪2の固定軸20の、車両1への固定部に介在させることにより、検出した偏りを解消することができる。