(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032008
(43)【公開日】2024-03-08
(54)【発明の名称】避難者用敷物
(51)【国際特許分類】
A47G 9/02 20060101AFI20240301BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20240301BHJP
A47G 9/08 20060101ALI20240301BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A47G9/02 P
A47C27/00 Z
A47G9/08 A
A47G27/02 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135456
(22)【出願日】2022-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】319005523
【氏名又は名称】松本 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆
【テーマコード(参考)】
3B096
3B102
3B120
【Fターム(参考)】
3B096AC08
3B102BA07
3B102BA11
3B102BA13
3B120AA14
3B120AB01
3B120AC09
3B120BA04
3B120BA35
3B120BA37
3B120BA39
3B120BB04
3B120CA11
3B120EA11
3B120EA20
3B120EB30
(57)【要約】
【課題】避難所に十分な数を常時備蓄でき、誰でも簡単に使用でき、しかも低コストに用意できる避難者用敷物を提供する。
【解決手段】おもてシート体と、うらシート体と、クッション性を有するおもてクッションシート体と、クッション性を有するうらクッションシート体と、を備え、一つの敷物は複数の人が横になって休息するのに必要な面積を有しており、おもてシート体の表面には一人ずつのスペースを区分けする区分線が設けられている。区分線に対応するラインに沿っておもてシート体、うらシート体、おもてクッションシート体およびうらクッションシート体が結合されることにより、おもてクッションシート体とうらクッションシート体との間に人が入って休息できるように一人ずつの寝袋になっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難者用敷物であって、
避難所の床に敷くシート体のおもて面に一人ずつの区画を区分けする区分線が設けられている
ことを特徴とする避難者用敷物。
【請求項2】
請求項1に記載の避難者用敷物において、
区分けされた各区画には、敷物番号と、区画番号と、が付されている
ことを特徴とする避難者用敷物。
【請求項3】
請求項1に記載の避難者用敷物において、
前記シート体の縁には連結手段が設けられ、隣り合う敷物のシート体同士が当該連結手段によって係脱可能に連結される
ことを特徴とする避難者用敷物。
【請求項4】
請求項1に記載の避難者用敷物において、
おもて側の外表面となるおもてシート体と、
うら側の外表面となるうらシート体と、を備える
ことを特徴とする避難者用敷物。
【請求項5】
請求項4に記載の避難者用敷物において、
前記おもてシート体の内側面と前記うらシート体の内側面との少なくともいずれか一方に、クッション性を有するクッションシート体を有する
ことを特徴とする避難者用敷物。
【請求項6】
請求項4に記載の避難者用敷物において、
前記おもてシート体と前記うらシート体との間に人が出入りするための開口用の辺を残し、それ以外の辺においては前記おもてシート体と前記うらシート体とが結合されており、
当該避難者用敷物は、前記おもてシート体と前記うらシート体との間に人が入って休息できるように寝袋になっている
ことを特徴とする避難者用敷物。
【請求項7】
請求項6に記載の避難者用敷物において、
人が出入りできるように、クッションシート体によって形成され袋が、前記おもてシート体と前記うらシート体との間の寝袋スペースに固定的に設けられているか、または、挿脱可能に設けられている
ことを特徴とする避難者用敷物。
【請求項8】
請求項1に記載の避難者用敷物において、
前記シート体のおもて面に畳み目がプリントされている
ことを特徴とする避難者用敷物。
【請求項9】
請求項1に記載の避難者用敷物において、
前記シート体の縁に畳縁が設けられている
ことを特徴とする避難者用敷物。
【請求項10】
請求項1に記載の避難者用敷物において、
前記区分線は、蛍光材または蓄光材を含有する材料によって形成されている
ことを特徴とする避難者用敷物。
【請求項11】
避難者用敷物であって、
おもて側の外表面となるおもてシート体と、
うら側の外表面となるうらシート体と、
前記おもてシート体の内側面に設けられ、クッション性を有するおもてクッションシート体と、
前記うらシート体の内側面に設けられ、クッション性を有するうらクッションシート体と、を備え、
一つの敷物は4人以上の人が横になって休息するのに必要な面積を有しており、
前記おもてシート体の表面には一人ずつのスペースを区分けする区分線が設けられている
ことを特徴とする避難者用敷物。
【請求項12】
請求項11に記載の避難者用敷物であって、
前記区分線に対応するラインに沿って前記おもてシート体、前記うらシート体、前記おもてクッションシート体および前記うらクッションシート体が結合されることにより、前記おもてクッションシート体と前記うらクッションシート体との間に人が入って休息できるように一人ずつの寝袋になっている
ことを特徴とする避難者用敷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難者用敷物に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や台風などの災害時、住民は避難所に避難する。各自治体は、災害に備え、避難所となる場所を何カ所か確保してある。避難所となるのは、多くの場合、公共の体育館であることが多い、すなわち、小、中学校や高校、大学の体育館や、公共のスポーツ施設に併設された体育館が避難所に指定されていることが多い。もちろん、公民館などのホールが避難所として利用されることもある。
【0003】
体育館や公民館のホールというのは床がいわゆるフローリングになっており、すなわち、木材やリノリウム、石板が施工されている。体育館や公民館というのは、元来、人が直接床に座ったり寝転んだりすることを想定していない。したがって、災害時に住民が体育館や公民館に避難する場合には、座ったり寝転んだりしてくつろげるように何か敷物を敷かなければならない。現状、避難所で使用されている敷物としては、ビニールシートやダンボールといった簡素なものから、ダンボールベッドやテントのような人が休むのにしっかり作られたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3138551
【特許文献2】特開平9-224983
【特許文献3】特開2010-154913
【特許文献4】実登3199411
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビニールシートやダンボールといったものは、長時間人が座ったり横になったりするためのものではないから、余計に疲れてしまって、ひどい場合は病気になってしまう。ダンボールベッドやテントは、避難者が休むには優れているかもしれないが、すべての避難所に備蓄できるものではないし、届くまでの数日や数週間はビニールシートやダンボールでしのぐしかない。(最悪の場合、結局避難所に届かない恐れもある。)
【0006】
本発明の目的は、避難所に十分な数を常時備蓄でき、誰でも簡単に使用でき、しかも低コストに用意できる避難者用敷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の避難者用敷物は、
避難者用敷物であって、
避難所の床に敷くシート体のおもて面に一人ずつの区画を区分けする区分線が設けられている
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一実施形態では、
区分けされた各区画には、敷物番号と、区画番号と、が付されている
ことが好ましい。
【0009】
本発明の一実施形態では、
前記シート体の縁には連結手段が設けられ、隣り合う敷物のシート体同士が当該連結手段によって係脱可能に連結される
ことが好ましい。
【0010】
本発明の一実施形態では、
おもて側の外表面となるおもてシート体と、
うら側の外表面となるうらシート体と、を備える
ことが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態では、
前記おもてシート体の内側面と前記うらシート体の内側面との少なくともいずれか一方に、クッション性を有するクッションシート体を有する
ことが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態では、
前記おもてシート体と前記うらシート体との間に人が出入りするための開口用の辺を残し、それ以外の辺においては前記おもてシート体と前記うらシート体とが結合されており、
当該避難者用敷物は、前記おもてシート体と前記うらシート体との間に人が入って休息できるように寝袋になっている
ことが好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態では、
人が出入りできるように、クッションシート体によって形成され袋が、前記おもてシート体と前記うらシート体との間の寝袋スペースに固定的に設けられているか、または、挿脱可能に設けられている
ことが好ましい。
【0014】
本発明の一実施形態では、
前記シート体のおもて面に畳み目がプリントされている
ことが好ましい。
【0015】
本発明の一実施形態では、
前記シート体の縁に畳縁が設けられている
ことが好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態では、
前記区分線は、蛍光材または蓄光材を含有する材料によって形成されている
ことが好ましい。
【0017】
本発明の避難者用敷物は、
避難者用敷物であって、
おもて側の外表面となるおもてシート体と、
うら側の外表面となるうらシート体と、
前記おもてシート体の内側面に設けられ、クッション性を有するおもてクッションシート体と、
前記うらシート体の内側面に設けられ、クッション性を有するうらクッションシート体と、を備え、
一つの敷物は4人以上の人が横になって休息するのに必要な面積を有しており、
前記おもてシート体の表面には一人ずつのスペースを区分けする区分線が設けられている
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の一実施形態では、
前記区分線に対応するラインに沿って前記おもてシート体、前記うらシート体、前記おもてクッションシート体および前記うらクッションシート体が結合されることにより、前記おもてクッションシート体と前記うらクッションシート体との間に人が入って休息できるように一人ずつの寝袋になっている
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】避難者用敷物の試作品を広げた状態を例示する図である。
【
図3】避難者用敷物の試作品を広げた状態を例示する図である。
【
図4】避難者用敷物の構成を説明するための分解図である。
【
図5】区分線あるいは縁止めに畳縁を用いた例を示す図である。
【
図6】避難者用敷物を畳み込んだ状態を例示する図である。
【
図7】クッションシート体の袋を寝袋としておもてシート体とうらシート体との間に挿入した状態を例示した図(写真)である。
【
図8】一枚のクッション性のシートを区画ごとの袋に差し込む形態を例示した図である。
【
図9】一枚のクッション性のシートを区画ごとの袋に差し込む形態を例示した図である。
【
図10】一枚のクッション性のシートを区画ごとの袋に差し込む形態を例示した図である。
【
図11】寝袋の出入り口を縁側ではなく中央区分線側に設けた避難者用敷物の例を示す図である。
【
図12】マチを設けた場合の変形例を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る避難者用敷物の外観を示す図である。
本実施形態の避難者用敷物は、平時には体育館や公民館等の収納庫に保管されていて、災害時にはすぐに取り出されて床一面に即座に広げられ、避難者用の敷物兼寝袋になるものである。
図2、
図3は、避難者用敷物の試作品を広げた状態を例示する図である。
【0021】
本実施形態では、一つの敷物を12人で共有する12人用敷物を例示しているが、2人用、4人用、6人用、8人用など種々のサイズを用意しておくのがよい。
【0022】
避難者用敷物100は、四層からなっている。
図4は、避難者用敷物100の分解図である。
避難者用敷物100は、上から順に、おもてシート体210と、おもてクッションシート体220と、うらクッションシート体230と、うらシート体240と、を有する。
【0023】
これらの4枚のシート(おもてシート体210、おもてクッションシート体220、うらクッションシート体230、うらシート体240)は、重ねられて一つの避難者用敷物100を構成するので、ほぼ同じ矩形(長方形)の形状である。
説明の都合上、
図1において、一つの長辺を一辺101とし、前記一辺101の対向辺を他辺102とする。
前記一辺101と他辺102とを繋ぐ短辺のうちの一つを一縁103とし、前記一縁103の対向辺を他縁104とする。
【0024】
おもてシート体210およびうらシート体240は、樹脂(例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル)のフィラメントで織った織物であることが好ましい。ただし、織らずに、樹脂を延伸や圧延したシート体であってもよい。あるいは、カラーシートやアルミ箔であってもよい。
【0025】
おもてクッションシート体220およびうらクッションシート体230は、例えば、発泡性樹脂(例えば発泡ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)のシートである。あるいは、クッションシート体としては、いわゆるプチプチ(登録商標)やエアーキャップ(登録商標)、エアセルマットと称されるような気泡緩衝材でもよい。気泡緩衝材であれば断熱保温効果を期待できる。
なお、クッションシート体220、230が複数の層で構成されてもよいし、クッションシート体220、230に表面材が設けられてもよい。
表面材は、防炎、抗菌、抗ウイルス、静電気予防のうちの一つ以上の作用をもつものとしてもよい。
また、表面材は、滑りがよいものでるとよい。(寝袋になったときの内側面は滑りがよい方が望ましい。これは、出入りのときに滑り込み易くなるし、寝返りも打ちやすいからである。)
表面材は、例えばアルミ箔としてもよく、アルミ箔であれば輻射熱が期待できる。
【0026】
最終的には、おもてシート体210とうらシート体240とを部分的に結合して(区画に区分けされた)袋状にする。
おもてシート体210のおもて面211に対し、その反対の面は袋の内側にくるので、おもてシート体210の内側面212と称することにする。
うらシート体240のうら面に対し、その反対の面は袋の内側にくるので、うらシート体240の内側面242と称することにする。
【0027】
おもてクッションシート体220は、おもてシート体210の内側面212に設けられている。
おもてクッションシート体220とおもてシート体210とは貼り合わされていることが好ましい。
うらクッションシート体230は、うらシート体240の内側面242に設けられている。
うらクッションシート体230とうらシート体240とは貼り合わされていることが好ましい。
【0028】
おもてシート体210のおもて面側には、区分線105と、番号ラベル108と、が設けられている。
区分線105として、中央区分線106と、サブ区分線107と、が設けられている。中央区分線106は、一辺101と他辺102との中間を区切るように、一辺101および他辺102に平行な方向に設けられている。サブ区分線107は、一縁103と他縁104との間をほぼ六等分するように、一縁103および他縁104に平行な方向に5本設けられている。
【0029】
区分線105は、夜間でも見やすいように、蛍光材(蛍光顔料)または蓄光材(蓄光顔料)を含んだ塗料あるいはテープで引かれていることが好ましい。(区分線105はプリントされてもよいし、テープを縫い付けてもよい。)
【0030】
図1の例では、区分線105によって敷物に12の区画ができる。12の区画に1番から12番まで区画番号を付す。そして、各区画を特定できるように番号ラベル108付しておく。
【0031】
ここで、避難所に配備される避難者用敷物100は多数あるから、まず、各避難者用敷物100に通し番号で順に1、2、3・・のように敷物番号を付けておく。
図1の例は、第1番の避難者用敷物100とする。
第1番の避難者用敷物100の各区画に区画番号1~12のラベルを付すにあたり、「敷物番号」と「区画番号」とをハイフン「-」で繋いでおく。「敷物番号」と「区画番号」とを合わせたものを区画識別番号とする。区画識別番号により、どの敷物のどの区画であるかは唯一に特定される。
【0032】
避難者用敷物100を区画に区分するにあたって、一つの区画は一人の人間(大人)が横になれる程度のサイズがあることが好ましい。例えば、おおよそ、一区画は2000mm~2400mm×1200mm程度である。これは、この区画にダンボールベッド(およそ800mm)を置いたり、個人の私物や物資を置いたりするスペースも勘案してのことである。
【0033】
また、おもてシート体210のおもて面211には、畳目がプリントされていてもよい。
また、区分線105を引くにあたっては、畳縁を用いてもよい。このとき、既存の畳縁として織られた細幅織物を区分線105としておもてシート体210のおもて面211に貼り付けてもよい。あるいは、おもてシート体210のおもて面211の区分線105に相当する位置に畳縁としてよく知られた模様(例えば幾何学的模様の繰り返し)をプリントしてもよい。
図5は、区分線105あるいは縁止めに畳縁を用いた例を示す図である。
【0034】
区画ごとに色分けしたり、区分線のラインの色を分けたり、色が付いたシールを貼ったりして、女性用、高齢者用、障害者用の区画を予め用意して確保しておくことが望ましい。これらの人が遅れて避難所に来られた場合でも適切な場所(避難所の出入口付近、壁側)に災害弱者用の区画が確保されていることが望ましい。
【0035】
次に、避難者用敷物100は、区画ごとに寝袋としても機能するもので、この点を説明する。
まず、一縁103と他縁104とにおいて、4枚のシート(おもてシート体210、おもてクッションシート体220、うらクッションシート体230、うらシート体240)は結合されている。さらに、区分線105(中央区分線106およびサブ区分線107)において、4枚のシート(おもてシート体210、おもてクッションシート体220、うらクッションシート体230、うらシート体240)は結合されている。
【0036】
4枚のシート(おもてシート体210、おもてクッションシート体220、うらクッションシート体230、うらシート体240)を表裏方向に結合するにあたっては、表裏方向に糸(フィラメント、ファイバー)で縫うように縫着してもよい。あるいは、熱融着させてもよい。もちろん、接着材、接着テープ、を使用して4枚のシートを結合してもよい。
【0037】
この状態で、各区画は、一辺101側あるいは他辺102側を出入りの開口として一人ずつの寝袋になっている。
【0038】
一つの避難者用敷物100は、隣りの避難者用敷物100と連結できるようになっていることが好ましい。
例えば、避難者用敷物100の一縁103と他縁104に面ファスナーを設けてもよい。例えば、一縁103には雄型の面ファスナーを設け、他縁104には雌型の面ファスナーを設けるとする。床に複数の避難者用敷物100を敷くときは、隣りの避難者用敷物100同士を面ファスナーで繋いでおけば、全体としてズレにくくなる。この他、孔と紐、孔とリング、ボタンとボタンホール、ホック、クリップで連結してもよいのであり、使い捨てとする場合はガムテープや両面テープでとめてもよい。
【0039】
(使用方法)
通常の平時においては、この避難者用敷物100は、例えば避難所となる体育館や公民館の倉庫に収納されている。避難者用敷物100はシート体であるから、折り畳んだうえで重ねて収納しておけば、保管場所はそれほどとらない。
図6は、避難者用敷物100を畳み込んだ状態を例示する図である。
【0040】
災害等が発生した場合、係員が避難者用敷物100を倉庫から出して、避難者用敷物100を広げ、避難所の床に敷く。避難者用敷物100の敷物番号が1番から順に振られているのであれば、1番、2番、3番・・のように番号順に並べておくのがよい。また、隣接し合う避難者用敷物100同士を連結しておくとよい。避難者が避難所に避難してこられたときには、係員は、名前をメモしつつ、空いている区画識別番号の区画をその避難者が占有できる区画として割り当てる。
【0041】
係員は行政の担当者でなくてもよい。
誰でも避難所に到着した者が避難所の設営をすればよい。
本実施形態の避難者用敷物100は、倉庫から出して、広げて敷くだけでよいから誰でもできるのであり、行政担当の到着を待つ必要はない。拡げて番号順に並べれば、誰でも整然とした避難所の設営がすぐにできる。また、敷物の区画番号と名前のリストは後からでもできるのだから、最悪の場合は、受け付けは後回しにして、とりあえず避難者は敷物に腰を落ち着ければよい。
【0042】
避難者は、自分の区画に移動して、腰を下ろしてくつろぐことができる。
避難者用敷物100は、各区画に避難者が座ったり横になったりできる敷物であり、4枚のシートが重なっているし、そのうちの内側の二枚はクッションシート体220、230であるから、避難者の体重を緩衝する緩衝材ともなるし、床からの低い温度を断熱する断熱材ともなる。一般論として、発災初期は人手不足となり、救急対応ができず、避難所で体調を崩すと結果的に災害関連死が増える恐れがある。この点、本発明によれば、冷たくて硬い床で寒さと痛さで睡眠もままならず、体調を崩して持病が悪化するといったような災害関連死に繋がる事態の発生を極力抑えることができる。
【0043】
避難者が横になりたいときは、おもてシート体210とうらシート体240との間に入ると、避難者用敷物100の各区画が寝袋となる。たとえ簡易だとしても、敷物が区分けされた袋状(寝袋)になっていることにより、袋に入ればかなりの保温効果が期待できる。また、袋(寝袋)に入れば、周囲からの視線を遮り、プライベートをかなり確保して安心して寝ることもできる。場合によっては、母子が袋に入って授乳することもできるだろう。また、個人の私物などを袋の奥にしまうようにすれば、外からは見えなくなるし、多少なりとも盗難防止に役立つ。
【0044】
なお、このあと、ダンボールベッドや救援の物資が届いたときには、避難者用敷物100を撤去しないで、ダンボールベッドや救援の物資を避難者用敷物100の自分の区画に置いていくなど、希望に合わせて個別に対応が可能である。
また、段ボールベッドの備蓄も、初動時に絶対必要な(高齢者や障害者など)人数分を確保する方法もあり、個別対応が更に充実出来る。
【0045】
再度、本発明が解決したい課題と、本発明による作用効果を補足説明しておく。
(1)本発明は、大きな災害が起きる度に1世紀も繰り返されて来た課題を解決するものである
(2)本発明は、発災後30分から3日間(72時間)に特化した敷物である。(物資が届くと更に良い環境に出来る)
(3)直後から人に優しい環境を整え、支援物資が届くまでの期間、体調の悪化を防ぎ、関連死を減らす。
(4)被災者が施設の中に入る前に、行政職員、防災に詳しい人がいなくても誰でも設営出来る。
【0046】
これまで100年間気づかなかった盲点がある。専門家や学者、新聞記者さえも、直後は仕方がないとあきらめていた。発災直後に解決出来る商品が「存在していなかった」為に、100年間にわたり解決方法が思いつかなかった。「雑魚寝」はいけないとの先入観から、ベッド設置の発想になっている。しかし、ベッド設置に偏ると、これまでと同じ繰り返しになる。実際にベッドの設置は課題山積であり、災害発生直後の状況は何も解決出来ない事が明らかになっている。100年間気づかなかった盲点を解決するには、「雑魚寝」を解消するのではなく、先ずは冷たくて硬い床に何も敷かれていない状況を改善すべきと考える。そして、「人の居場所」(ゾーニング)を素早く作る事である。「敷物」の備蓄の優先順位は低いと考えられている。しかし、例えば、厳冬期の災害で、毛布も十分に行き渡らない状況で寒さに凍えて、睡眠もままならず体調を崩すと持病が悪化。せっかく助かった命が多く失われている。(関連死は発災から一週間以内がとても多いデータがある。持病悪化は3日以内が多いとの報告もある)
という事は、「敷物」は水や食料と同様に「命に関わる重要な課題で」あり、助かるはずの命を守るためには真っ先に解決すべき課題であり備蓄の優先順位も高いと考える。
【0047】
「盲点」とは、「殺到した」被災者が避難所の「中」に入ってしまった「後から何とかしようとしても遅い」ということである。被災者が中に入った後で、何とかしようとするには「荷物も持って一旦、どいて下さい」と言わねばならない。「その際」場所取りが始まるので再配置は困難である。これまでに流通している商品は、開設直後ではなく被災者が避難所の「中に入った後から」届くものばかりである。「避難者があふれている」状況では(段ボールベッド、間仕切り、テント、畳など)を設置することは困難である。なぜなら、設置スペースが無いからである。また、希望者だけに配布しても自分一人だけ大きなスペースを使うとの思いから、遠慮するからである。
【0048】
物資を早く届けるための手段の現状としては、自治体と協定を結び要請があってから届ける仕組みになっている。しかし、自治体の備蓄場所は離れたところにある。施設内備蓄であっても十分な数量は無い。設営に人手と時間を要する、という問題があった。
【0049】
本発明によれば、被災者が避難所の中に入る前に、サッと敷ける敷物(避難者用敷物)を提供できる。避難所の床(居場所)は、「最初に作ってしまわねば」雑魚寝の繰り返しになる。本発明によれば、被災者が着の身着のままで避難所に駆け込んでも、支援物資が届くまでは「誰も死なせない」最低限の機能をもつ。物資が届くまでに数日間を要するとしても、その間に体調を崩し持病の悪化等で関連死が増えるのを防ぐ機能がある。
【0050】
盲点を克服し、人の命を守るには、「敷くと同時にいくつもの課題を克服」する必要がある。いくら単品の(マット、毛布など)性能を上げても解決出来ないコトがある。(ゾーニングや備蓄場所など)
その為、本発明により、避難所に十分な数を常備備蓄でき、誰でも簡単に使用でき、しかも低コストに用意出来る避難者用敷物を提供する。
【0051】
(第二実施形態)
上記第一実施形態では4枚のシートを重ねて避難者用敷物100とした。
第二実施形態としては、おもてシート体210とうらシート体240とを重ねて二層の敷物とし、区画ごとに袋とした上で、各区画の袋にクッションシート体で作成した袋250を挿入するとしてもよい。例えば、
図7に例示するように、人が入れる袋250をクッションシート体で別途作成し、避難者用敷物100を広げて床に敷いた後、各自がクッションシート体の袋250を区画の袋に挿入する。これにより、避難者用敷物100は四層となり、避難者の体重を緩衝するとともに、寝袋ともなる。クッションシート体の袋250は、消耗品として適宜交換するようにするとよい。
【0052】
あるいは、
図8、
図9、10に例示のように、袋250でなくても、一枚のクッション性のシートを区画ごとの袋に差し込むようにしてもよい。(例えば、前述のおもてクッションシート体220やうらクッションシート体230を結合しないで、一枚のクッション性のシートと使用するとしてもよい。)なお、
図8-
図10は、小さなモデルで試作したものであり、実施品のサイズは、上記に例示のように例えば一区画を2000mm~2400mm×1200mm程度とする。
【0053】
(第三実施形態)
二層または四層の避難者用敷物100を部分的に表裏方向に結合することで区画ごとに袋(寝袋)とできるのであるが、出入り口を周縁側にするのみならず、例えば、
図11に例示のように、中央区分線106の側に出入口を設けるようにしてもよい。
また、二層または四層の避難者用敷物100を部分的に表裏方向に結合することで区画ごとに袋(寝袋)とするにあたって、端まで全部結合してしまわないで、
図11に例示のように、口の部分を少し折り返せるように、端部から数センチは結合しないままにしておくとよい。これにより、出入り口を広く開くようにできるし、端を折り返せば、顔を広くだすようにもできる。また、区画ごとを仕切るようにパーティション300を立ててもよい。パーティション300は、一つ一つの区画を個別に仕切るように立ててもよいし、二つ以上の区画を家族の一ユニットとする場合はユニットごとに仕切るようにしてもよい。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
上記実施形態では、一枚の避難者用敷物100を複数人で共有するように区画に区分する場合を説明したが、一つの敷物が一人分になっていてもよい。
例えば、2000mm~2400mm×1200mm程度の敷物(袋)を避難者用敷物100としてもよい。この場合でも、一人ずつの敷物(袋)を連結したときに各個を見分けやすいように、一人ずつの敷物(袋)の周縁部に区分線105を設けておくとよい。
【0055】
また、
図12に例示のように、おもてシート体とうらシート体との結合部にマチを設け、寝袋としておもてシート体とうらシート体の間に人が入ったときに、厚み方向に広がり易くしておくとさらによい。
図12では、連結されていない開口部となる辺に隣接する二辺にマチを設けているが、さらに、連結されていない開口部となる辺の対向辺にもマチを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
100 避難者用敷物
101 一辺
102 他辺
103 一縁
104 他縁
105 区分線
106 中央区分線
107 サブ区分線
108 番号ラベル
210 おもてシート体
211 おもてシート体のおもて面
212 おもてシート体の内側面
220 おもてクッションシート体
230 うらクッションシート体
240 うらシート体
241 うらシート体のうら面
242 うらシート体の内側面
250 袋
300 パーティション