(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032010
(43)【公開日】2024-03-08
(54)【発明の名称】共重合体組成物および架橋成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20240301BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240301BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20240301BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240301BHJP
C08F 210/18 20060101ALI20240301BHJP
C08G 77/442 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K5/14
C08K5/5415
C08L83/05
C08F210/18
C08G77/442
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023115653
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】有野 恭巨
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和輝
(72)【発明者】
【氏名】岸本 典久
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 武
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4J246
【Fターム(参考)】
4J002BB05W
4J002BB05X
4J002BB15W
4J002BB15X
4J002BB17W
4J002BB17X
4J002BK00W
4J002BK00X
4J002BL00W
4J002BL00X
4J002CP04Y
4J002DA119
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4J002EC037
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4J002EK058
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4J002EP017
4J002EP027
4J002ET007
4J002EX017
4J002EX036
4J002EX037
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4J002FD14Y
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4J002FD207
4J002GJ02
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4J246FD09
4J246GB12
4J246GC01
4J246GC12
4J246GD04
4J246HA02
4J246HA28
(57)【要約】
【課題】射出成形性や得られる架橋成形体の熱時強度に優れるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物の提供。
【解決手段】エチレン(A1)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B1)由来の構成単位と、特定の非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位とを有し、特定の要件(1-i)~要件(1-v)を満たす共重合体(S1)と、エチレン(A2)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B2)由来の構成単位と、特定の非共役ポリエン(C2)に由来する構成単位とを有し、特定の要件(2-i)および要件(2-ii)を満たす共重合体(S2)と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、反応抑制剤と、白金系触媒と、有機過酸化物(Z)とを含むことを特徴とする共重合体組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン(A1)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B1)由来の構成単位と、下記式(I)および下記式(II)から選ばれる少なくとも一種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位とを有し、下記要件(1-i)~要件(1-v)を満たす共重合体(S1)と、
エチレン(A2)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B2)由来の構成単位と、前記式(I)および前記式(II)から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(C2)に由来する構成単位とを有し、下記要件(2-i)および要件(2-ii)を満たす共重合体(S2)と、
下記式(a)で示され、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、
反応抑制剤と、
白金系触媒と、
有機過酸化物(Z)とを含むことを特徴とする共重合体組成物。
(1-i)エチレン(A1)由来の構成単位のモル数[A1]の炭素数3~20のα-オレフィン(B1)由来の構成単位のモル数[B1]に対する比である[A1]/[B1]が、40/60~99.9/0.1である。
(1-ii)非共役ポリエン(C1)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S1)を構成する全構成単位に対して0.07~10質量%である。
(1-iii)下記式(1)で求められる(n
C1)が4.5以上80以下である。
(n
C1)=(Mw)×{(C1)の質量分率/100}/(C1)の分子量 ・・・(1)
但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S1)の重量平均分子量であり、(C1)の質量分率は非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の質量分率であり、(C1)の分子量は非共役ポリエン(C1)の分子量である。
(1-iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η
*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η
*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η
*
(ω=0.1)/η
*
(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の質量分率((C1)の質量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]
2.9)≦(C)の質量分率×6 ・・・式(2)
(1-v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB
1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB
1000C≦1-0.07×Ln(Mw) ・・・式(3)
(2-i)エチレン(A2)由来の構成単位のモル数[A2]の炭素数3~20のα-オレフィン(B2)由来の構成単位のモル数[B2]に対する比である[A2]/[B2]が、40/60~99/10である。
(2-ii)非共役ポリエン(C2)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S2)を構成する全構成単位に対して0.07~20質量%である。
【化1】
【化2】
(式(a)中、nおよびpは、0または正の数であり、mは1~20の範囲の数であり、nとmとpの総和は5~50である。R
1、R
2は各々独立して一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよい。R
aはアラルキル基であり、RはR
1,R
2、水素原子、R
aから選ばれる基である。ただし、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子である。)
【請求項2】
前記有機過酸化物(Z)を、前記共重合体(S1)および前記共重合体(S2)の合計100質量部に対して0.1~8質量部含む、請求項1に記載の共重合体組成物。
【請求項3】
前記共重合体(S2)が、前記非共役ポリエン(C2)に由来する構成単位として、5-エチリデン-2-ノルボルネンに由来する構成単位を含む、請求項1に記載の共重合体組成物。
【請求項4】
前記共重合体(S1)と前記共重合体(S2)の合計質量に占める前記共重合体(S2)の質量割合が、0.1~50質量%である、請求項1に記載の共重合体組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の共重合体組成物を架橋して得られることを特徴とする架橋成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物および前記共重合体組成物を架橋して得られる架橋成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体をヒドロシリコーン架橋して得られる架橋成形体は、イオウ加硫や過酸化物架橋と比較して機械的強度、耐熱老化性、圧縮永久歪み、ブルーム性に優れ、連続架橋が可能であることなどの特徴を有し、パッキン、ガスケット等シール部品への応用が期待される。
特許文献1では、ヒドロシリル含有化合物と比較的低コストで入手しやすい有機過酸化物とを併用して架橋することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されるような、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体をヒドロシリコーン架橋して得られる架橋成形体は、高温時の強度(熱時強度)が充分ではなかった。また、特許文献1のようにヒドロシリル含有化合物と有機過酸化物とを併用した場合、耐スコーチ性が低下し、射出成形性が悪くなる問題が生じた。
本発明は、上記事情に鑑み、射出成形性に優れると共に、得られる架橋成形体の熱時強度に優れるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物、およびこの共重合体組成物から得られる架橋成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の構成を採用した。
[1]エチレン(A1)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B1)由来の構成単位と、下記式(I)および下記式(II)から選ばれる少なくとも一種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位とを有し、下記要件(1-i)~要件(1-v)を満たす共重合体(S1)と、
エチレン(A2)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B2)由来の構成単位と、前記式(I)および前記式(II)から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(C2)に由来する構成単位とを有し、下記要件(2-i)および要件(2-ii)を満たす共重合体(S2)と、
下記式(a)で示され、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、
反応抑制剤と、
白金系触媒と、
有機過酸化物(Z)とを含むことを特徴とする共重合体組成物。
【0006】
(1-i)エチレン(A1)由来の構成単位のモル数[A1]の炭素数3~20のα-オレフィン(B1)由来の構成単位のモル数[B1]に対する比である[A1]/[B1]が、40/60~99.9/0.1である。
(1-ii)非共役ポリエン(C1)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S1)を構成する全構成単位に対して0.07~10質量%である。
(1-iii)下記式(1)で求められる(nC1)が4.5以上80以下である。
(nC1)=(Mw)×{(C1)の質量分率/100}/(C1)の分子量 ・・・(1)
但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S1)の重量平均分子量であり、(C1)の質量分率は非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の質量分率であり、(C1)の分子量は非共役ポリエン(C1)の分子量である。
(1-iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の質量分率((C1)の質量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×6 ・・・式(2)
(1-v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw) ・・・式(3)
【0007】
(2-i)エチレン(A2)由来の構成単位のモル数[A2]の炭素数3~20のα-オレフィン(B2)由来の構成単位のモル数[B2]に対する比である[A2]/[B2]が、40/60~99/10である。
(2-ii)非共役ポリエン(C2)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S2)を構成する全構成単位に対して0.07~20質量%である。
【0008】
【0009】
【0010】
(式(a)中、nおよびpは、0または正の数であり、mは1~20の範囲の数であり、nとmとpの総和は5~50である。R1、R2は各々独立して一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよい。Raはアラルキル基であり、RはR1,R2、水素原子、Raから選ばれる基である。ただし、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子である。)
【0011】
[2]前記有機過酸化物(Z)を、前記共重合体(S1)および前記共重合体(S2)の合計100質量部に対して0.1~8質量部含む、[1]に記載の共重合体組成物。
[3]前記共重合体(S2)が、前記非共役ポリエン(C2)に由来する構成単位として、5-エチリデン-2-ノルボルネンに由来する構成単位を含む、[1]または[2]に記載の共重合体組成物。
[4]前記共重合体(S1)と前記共重合体(S2)の合計質量に占める前記共重合体(S2)の質量割合が、0.1~50質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の共重合体組成物。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の共重合体組成物を架橋して得られることを特徴とする架橋成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、射出成形性や得られる架橋成形体の熱時強度に優れるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物と、この共重合体組成物から得られる架橋成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<共重合体組成物>
本発明の1態様に係る共重合体組成物は、共重合体(S1)と、共重合体(S2)と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、白金系触媒と、反応抑制剤と、有機過酸化物(Z)を含む。
なお、本明細書および特許請求の範囲における「質量部」は、溶剤を含まない固形分換算の質量部である。
また、「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値および上限値とする数値範囲を意味する。
【0014】
[共重合体(S1)]
本態様における共重合体(S1)は、エチレン(A1)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B1)由来の構成単位と、非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位とを有する。
【0015】
共重合体(S1)は、前述したエチレン(A1)、炭素数3~20のα-オレフィン(B1)、非共役ポリエン(C1)、および後述する非共役ポリエン(CX)から選ばれる少なくとも1種のモノマーとして、バイオマス由来のモノマーを含んでいてもよい。
【0016】
共重合体(S1)を構成する全構成単位に対して、エチレン(A1)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B1)由来の構成単位と、非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の合計の質量分率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、92質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0017】
炭素原子数3~20のα-オレフィン(B1)(以下、単に「α-オレフィン(B1)」という場合がある。)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られる共重合体(S1)が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った成形体を得ることができるため好ましい。これらのα-オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0018】
非共役ポリエン(C1)は、下記式(I)および下記式(II)から選ばれる少なくとも一種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエンである。
【0019】
【0020】
非共役ポリエン(C1)としては、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、ヒドロシリコーン架橋性が良好で、共重合体組成物の耐熱性が向上しやすいことから、非共役ポリエン(C1)がVNBを含むことが好ましく、非共役ポリエン(C1)がVNBであることがより好ましい。非共役ポリエン(C1)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0021】
本態様における共重合体(S1)は、さらに、本態様の効果を損なわない範囲で、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(CX)に由来する構成単位(CX)をさらに含んでいてもよい。
このような非共役ポリエン(CX)としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
これらのうちでは、入手容易性が高く、ヒドロシリコーン架橋時の架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことからENBが好ましい。
非共役ポリエン(CX)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0022】
本態様における共重合体(S1)が、非共役ポリエン(CX)に由来する構成単位を含む場合、その質量分率は、共重合体(S1)を構成する全構成単位に対して、0~20質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましく、0.01~8質量%がさらに好ましい。
【0023】
本態様における共重合体(S1)は、下記要件(1-i)~要件(1-v)を満たす。
(1-i)エチレン(A1)由来の構成単位のモル数[A1]の炭素数3~20のα-オレフィン(B1)由来の構成単位のモル数[B1]に対する比である[A1]/[B1]が、40/60~99.9/0.1である。
(1-ii)非共役ポリエン(C1)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S1)を構成する全構成単位に対して0.07~10質量%である。
【0024】
(1-iii)下記式(1)で求められる(nC1)が4.5以上80以下である。
(nC1)=(Mw)×{(C1)の質量分率/100}/(C1)の分子量 ・・・(1)
但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S1)の重量平均分子量であり、(C1)の質量分率は非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の質量分率であり、(C1)の分子量は非共役ポリエン(C1)の分子量である。
【0025】
(1-iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の質量分率((C1)の質量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C1)の質量分率×6 ・・・式(2)
【0026】
(1-v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw) ・・・式(3)
【0027】
要件(1-i)は、本態様における共重合体(S1)中のエチレン(A1)由来の構成単位のモル数[A1]のα-オレフィン(B1)由来の構成単位のモル数[B1]に対する比である[A1]/[B1]が、40/60~99.9/0.1を満たすことを特定する。
【0028】
[A1]/[B1]は50/50~90/10が好ましく、55/45~85/15がより好ましく、55/45~78/22がさらに好ましい。共重合体(S1)が要件(1-i)を満たすことにより、共重合体(S1)をヒドロシリコーン架橋して得られる成形体が優れたゴム弾性を示し、機械的強度ならびに柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
なお、共重合体(S1)中のエチレン(A1)由来の構成単位のモル数[A1]とα-オレフィン(B1)由来の構成単位のモル数[B1]の比[A1]/[B1]は13C-NMRにより求めることができる。
【0029】
要件(1-ii)は、共重合体(S1)中において、非共役ポリエン(C1)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S1)を構成する全構成単位に対して0.07~10質量%であることを特定する。
この非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の質量分率は、0.1~8.0質量%が好ましく、0.5~5.0質量%であることがより好ましい。
【0030】
共重合体(S1)は、要件(1-ii)を満たすことにより、本態様に係る共重合体組成物から得られる架橋成形体が充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなるため好ましい。また、共重合体(S1)をヒドロシリコーン架橋した場合には、早い架橋速度を示すため、効率的に架橋成形体を製造できるので好ましい。
なお、共重合体(S1)中の非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の質量分率は、13C-NMRにより求めることができる。
【0031】
非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の質量分率は、共重合体(S1)の重量平均分子量(Mw)と、下記式(4)を満たすことが好ましい。
6-0.45×Ln(Mw)≦(C1)の質量分率≦10 ・・・式(4)
【0032】
要件(1-iii)は、下記式(1)で求められる(nC1)の範囲を4.5以上80以下に特定する。
(nC1)=(Mw)×{(C1)の質量分率/100}/(C1)の分子量 ・・・(1)
但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S1)の重量平均分子量であり、(C1)の質量分率は非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の質量分率であり、(C1)の分子量は非共役ポリエン(C1)の分子量である。
なお、(Mw)は、3D-GPCで測定される数値を意味する。
(nC1)は4.5以上78以下であることが好ましく、4.5以上75以下であることがより好ましい。
【0033】
上記式(1)で求められる(nC1)は、共重合体(S1)の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の数である。
(nC1)が下限値以上であることにより、ヒドロシリコーン架橋する際に充分な架橋速度を得やすい。また上限値以下であることにより、過度な架橋が生じにくく、得られる架橋成形体がより優れた機械特性を示す。
要件(1-iii)を満たす場合、共重合体(S1)の長鎖分岐含有量が適切な範囲となる。その結果、ヒドロシリコーン架橋速度が速く、得られる架橋成形体の機械的特性などの物性バランスに優れるとともに、後架橋を生じにくく特に耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0034】
共重合体(S1)が構成単位(CX)を含む場合は、下記式(1’)で求められる(nC1+cx)が4.5以上80以下であることが好ましく、4.5以上78以下であることがより好ましく、4.5以上75以下であることがさらに好ましい。
(nC1+cx)=(Mw)×[{(C1)の質量分率/100}/(C)の分子量
+{(CX)の質量分率/100}/(CX)の分子量] ・・・(1’)
上記式(1’)で求められる(nC1+cx)は、共重合体(S1)の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の数と非共役ポリエン(CX)に由来する構成単位の数の合計数である。
【0035】
要件(1-iv)は、共重合体(S1)の、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C1)に由来する構成単位の質量分率((C1)の質量分率:質量%)とが、下記式(2)を満たすことを特定する。
P/([η]2.9)≦(C1)の質量分率×6・・・式(2)
【0036】
レオメーターとしては、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%で、周波数を変化させて測定を行った。 極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定される値である。
【0037】
共重合体(S1)は、下記式(2')を満たすことがより好ましい。
P/([η]2.9)≦(C1)の質量分率×5.7・・・式(2')
比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))は、粘度の周波数依存性を表すものであって、式(2)および式(2')の左辺にあたるP/([η]2.9)は、短鎖分岐や分子量などの影響はあるものの、長鎖分岐が多い場合に高い値を示す傾向がある。
【0038】
一般に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体では、非共役ポリエンに由来する構成単位を多く含むほど、長鎖分岐を多く含む傾向があるが、本態様における共重合体(S1)は、従来公知のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体よりも長鎖分岐が少ないことにより上記式(2)を満たすことができると考えられる。
【0039】
要件(1-v)は、共重合体(S1)の、3D-GPCを用いて得られた1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たすことを特定する。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
【0040】
上記式(3)により、共重合体(S1)の単位炭素数当たりの長鎖分岐含量の上限値が特定される。すなわち、要件(1-v)をは、共重合体(S1)の長鎖分岐の割合が少ないことを意味する。
要件(1-v)を満たすことにより、共重合体(S1)は、ヒドロシリコーン架橋を行う場合の硬化特性に優れる。また、これを用いて得られる架橋成形体は、耐熱老化性に優れたものとなる。
共重合体(S1)は、下記式(3')を満たすことがより好ましい。
LCB1000C≦1-0.071×Ln(Mw)・・・式(3')
【0041】
上記式(3)および式(3’)におけるMwと(LCB1000C)は、3D-GPCを用いて構造解析法により求めた値である。具体的には、3D-高温GPC装置PL-GPC220型(Polymer Laboratories社製)を用い、絶対分子量分布を求め、同時に粘度計で極限粘度を求めた。主な測定条件は以下の通りである。
【0042】
検出器:示差屈折率計/GPC装置内蔵
2角度光散乱光度計PD2040型(Precison Detectors社製)
ブリッジ型粘度計PL-BV400型
(Polymer Laboratories社製)
【0043】
カラム:TSKgel GMHHR-H(S)HT×2本+TSKgel
GMHHR-M(S)×1本
(いずれも1本当たり内径7.8mmφ×長さ300mm)
温度:140℃
移動相:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
注入量:0.5mL
試料濃度:ca 1.0mg/mL
試料濾過:孔径1.0μm焼結フィルターにて濾過
【0044】
絶対分子量の決定に必要なdn/dc値は標準ポリスチレン(分子量190000)のdn/dc値0.053と単位注入質量あたりの示差屈折率計の応答強度より、試料ごとに決定した。
【0045】
粘度計より得られた極限粘度と光散乱光度計より得られた絶対分子量の関係より溶出成分毎の長鎖分岐パラメーターg’iを式(v-1)から算出した。
【0046】
【数1】
ここで、[η]=KM
v;v=0.726の関係式を適用した。
また、g’として各平均値を下記式(v-2)、(v-3)、(v-4)から算出した。なお、短鎖分岐のみを有すると仮定したTrendlineは試料ごとに決定した。
【0047】
【0048】
更にg'wを用いて、分子鎖あたりの分岐点数BrNo、炭素1000個あたりの長鎖分岐数LCB1000C、単位分子量あたりの分岐度λを算出した。BrNo算出はZimm-Stockmayerの式(v-5)、また、LCB1000Cとλの算出は式(v-6)、(v-7)を用いた。gは慣性半径Rgから求められる長鎖分岐パラメーターであり、極限粘度から求められるg'との間に次の単純な相関付けが行われている。式中のεは分子の形に応じて種々の値が提案されている。ここではε=1(すなわちg'=g)と仮定して計算を行った。
【0049】
【0050】
λ=BrNo/M …(V-6)
LCB1000C=λ×14000 …(V-7)
式(V-7)中、14000はメチレン(CH2)単位で1000個分の分子量を表す。
【0051】
共重合体(S1)の極限粘度[η](135℃デカリン中)は、0.1~5dL/gが好ましく、0.5~5.0dL/gがより好ましく、0.5~4.0dL/gがさらに好ましい。
共重合体(S1)の重量平均分子量(Mw)は、10,000~600,000が好ましく、30,000~500,000がより好ましく、50,000~400,000がさらに好ましい。
【0052】
本態様における共重合体(S1)は、下記式(5)で表される要件(1-vi)を満たすことも好ましい。
(1-vi) Log{η*(ω=0.01)}/Log{η*(ω=10)}≦0.0753×{非共役ポリエン(C1)に由来する見かけのヨウ素価}+1.42 … 式(5)
【0053】
式(5)において、η*(ω=0.01)は、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られる、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η*(Pa・sec)である。
また、η*(ω=10)は、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られる、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η*(Pa・sec)である。
ここで、η*(ω=0.01)およびη*(ω=10)は、要件(iv)における複素粘度η*
(ω=0.1)および複素粘度η*
(ω=100)と測定周波数以外は同様にして求められる。
【0054】
式(5)において、非共役ポリエン(C1)に由来する見かけのヨウ素価は、次式により求められる。
(C1)に由来する見かけのヨウ素価=(C1)の質量分率×253.81/(C1)の分子量
【0055】
上記式(5)において、左辺は長鎖分岐量の指標となる剪断速度依存性を表し、右辺は重合時に長鎖分岐として消費されていない非共役ポリエン(C1)の含有量の指標を表す。
要件(1-vi)を満たす場合には、長鎖分岐の程度が高すぎないため好ましい。要件(1-vi)を満たさないことは、共重合した非共役ポリエン(C1)のうち、長鎖分岐の形成に消費された割合が多いことを示す。
【0056】
本態様の共重合体組成物は、2種以上の共重合体(S1)を含んでいてもよい。例えば、(イ)エチレン/炭素数3~20のα-オレフィンのモル比、(ロ)ヨウ素価、または(ハ)極限粘度[η](135℃デカリン中)が異なる上記共重合体(S1)同士を2種以上混合して用いることもできる。特に、(ハ)においては、低極限粘度成分と高極限粘度成分との混合が挙げられる。
【0057】
共重合体(S1)は、エチレン(A1)、炭素数3~20のα-オレフィン(B1)、非共役ポリエン(C1)を含むモノマーを共重合して得られる。共重合体(S1)は、どのような製法で調製されてもよいが、メタロセン化合物の存在下に前記モノマーを共重合して得られたものであることが好ましく、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下に前記モノマーを共重合して得られたものであることがより好ましい。共重合体(S1)は、具体的には、例えば、国際公開第2015/122495号に記載のメタロセン触媒を用いる方法を採用することにより製造することができる。
【0058】
[共重合体(S2)]
本態様における共重合体(S2)は、エチレン(A2)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B2)由来の構成単位と、非共役ポリエン(C2)に由来する構成単位とを有する。
【0059】
共重合体(S2)は、前述したエチレン(A2)、炭素数3~20のα-オレフィン(B2)、非共役ポリエン(C2)、および後述する非共役ポリエン(CY)から選ばれる少なくとも1種のモノマーとして、バイオマス由来のモノマーを含んでいてもよい。
【0060】
共重合体(S2)を構成する全構成単位に対して、エチレン(A2)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B2)由来の構成単位と、非共役ポリエン(C2)に由来する構成単位の合計の質量分率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、92質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0061】
炭素原子数3~20のα-オレフィン(B2)(以下、単に「α-オレフィン(B2)」という場合がある。)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られる共重合体(S2)が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った成形体を得ることができるため好ましい。これらのα-オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0062】
非共役ポリエン(C2)は、前記式(I)および前記式(II)から選ばれる部分構造を合計で分子中に1つのみ含む非共役ポリエンである。
非共役ポリエン(C2)としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
【0063】
これらのうちでは、入手容易性が高く、ヒドロシリコーン架橋時の架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことから、非共役ポリエン(C2)がENBを含むことが好ましく、非共役ポリエン(C2)がENBであることがより好ましい。非共役ポリエン(C2)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0064】
本態様における共重合体(S2)は、さらに、本態様の効果を損なわない範囲で、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる少なくとも一種の部分構造を分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(CY)に由来する構成単位をさらに含んでいてもよい。
このような非共役ポリエン(CY)としては、上述の非共役ポリエン(C1)と同様のものが挙げられる。非共役ポリエン(CY)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0065】
共重合体(S2)中、非共役ポリエン(CY)に由来する構成単位の質量分率は、共重合体(S2)を構成する全構成単位に対して、0.07質量%未満が好ましく、0質量%が特に好ましい。すなわち、共重合体(S2)は非共役ポリエン(CY)に由来する構成単位を含まないことが特に好ましい。
【0066】
本態様における共重合体(S2)は、下記要件(2-i)および要件(2-ii)を満たす。
(2-i)エチレン(A2)由来の構成単位のモル数[A2]の炭素数3~20のα-オレフィン(B2)由来の構成単位のモル数[B2]に対する比である[A2]/[B2]が、40/60~90/10である。
(2-ii)非共役ポリエン(C2)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S2)を構成する全構成単位に対して0.07~20質量%である。
【0067】
要件(2-i)は、本態様における共重合体(S2)中のエチレン(A2)由来の構成単位のモル数[A2]のα-オレフィン(B2)由来の構成単位のモル数[B2]に対する比である[A2]/[B2]が、40/60~90/10を満たすことを特定する。
【0068】
[A2]/[B2]は50/50~90/10が好ましく、55/45~85/15がより好ましく、60/40~80/20がさらに好ましい。共重合体(S2)が要件(2-i)を満たすことにより、良好なゴム物性が得られるため好ましい。
なお、共重合体(S2)中のエチレン(A2)由来の構成単位のモル数[A2]とα-オレフィン(B2)由来の構成単位のモル数[B2]の比[A2]/[B2]は13C-NMRにより求めることができる。
【0069】
要件(2-ii)は、共重合体(S2)中において、非共役ポリエン(C2)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S2)を構成する全構成単位に対して0.07~20質量%であることを特定する。
この非共役ポリエン(C2)に由来する構成単位の質量分率は、0.5~30質量%が好ましく、1.0~25質量%がより好ましい。
【0070】
共重合体(S2)は、要件(2-ii)を満たすことにより、圧縮永久歪みが良好となるため好ましい。
なお、共重合体(S2)中の非共役ポリエン(C2)に由来する構成単位の質量分率は、13C-NMRにより求めることができる。
【0071】
共重合体(S2)の極限粘度[η](135℃デカリン中)は、0.1~5dL/gが好ましく、0.5~5.0dL/gがより好ましく、0.5~4.0dL/gがさらに好ましい。
共重合体(S2)の重量平均分子量(Mw)は、1,000~600,000が好ましく、30,000~500,000がより好ましく、50,000~400,000がさらに好ましい。
【0072】
本態様の共重合体組成物は、2種以上の共重合体(S2)を含んでいてもよい。例えば、(イ)エチレン/炭素数3~20のα-オレフィンのモル比、(ロ)ヨウ素価、または(ハ)極限粘度[η](135℃デカリン中)が異なる上記共重合体(S2)同士を2種以上混合して用いることもできる。特に、(ハ)においては、低極限粘度成分と高極限粘度成分との混合が挙げられる。
【0073】
本態様の共重合体組成物中、共重合体(S1)と共重合体(S2)の合計質量に占める共重合体(S2)の質量割合は、0.1~50質量%が好ましく、1~50質量%がより好ましく、5~45質量%がさらに好ましく、20~40質量%が特に好ましい。共重合体(S2)を上記の質量割合で用いることで、圧縮永久歪みが向上する。
【0074】
[ヒドロシリル基含有化合物(Y)]
本発明におけるヒドロシリル基含有化合物(Y)は、下記式(a)で示され、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
本態様の共重合体組成物は、2種以上のヒドロシリル基含有化合物(Y)を含んでいてもよい。
【0075】
【0076】
式(a)において、nおよびpは、0または正の数であり、mは1~20の範囲の数であり、nとmとpの総和は5~50である。R1、R2は各々独立して一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよい。Raはアラルキル基であり、RはR1,R2、水素原子、Raから選ばれる基である。ただし、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子である。
【0077】
このようなヒドロシリル基含有化合物(Y)は、そのシロキサン重合度が比較的小さく、かつ、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有する、直鎖構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0078】
ヒドロシリル基含有化合物(Y)を共重合体(S1)および共重合体(S2)と選択的に併用することで、得られる成型物の耐スコーチ性、成型性、破断時の伸び、圧縮成型ひずみ等の物理的性質に特に優れる成形体を得ることができ、特に、ウェザーストリップスポンジ材等への適用可能性が改善されるものである。
【0079】
式(a)において、mは、ケイ素原子結合アラルキル基を有するジオルガノシロキシ単位の数であり、1~20の範囲の数であり、2~10の範囲の数であってよく、3~6の範囲の数であることが特に好ましい。
【0080】
式(a)において、nは側鎖におけるケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキシ単位の数であり、0または1であってもよいが、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子であり、分子内に少なくとも2のケイ素原子結合水素原子を有する構造となる。
【0081】
なお、nが0または1以外の数であっても、分子鎖両末端のRの一方または両方がケイ素原子結合水素原子であることは妨げられない。さらに、nは0または1以外の数であることが好ましく、かつ、n≧mとなる数であることがより好ましい。より具体的には、nは3~10の範囲の数であってよく、3~9の範囲の数であることが特に好ましい。
【0082】
式(a)において、pは、アラルキル基またはケイ素原子結合水素原子を含まないジオルガノシロキシ単位の数であり、0であってよく、後述するnとmとpの総和の値で表されるジオルガノシロキサン単位の総重合度から、nおよびmの値を除した数の範囲であってよい。例えば、pは0~12の範囲の数でよく、0~10の範囲の数でよく、0~5の範囲の数でよく、0~2であってよく、かつ、好ましい。
【0083】
ヒドロシリル基含有化合物(Y)は、シロキサン重合度が比較的小さく、上記のnとmとpの値の総和が5~50であり、好ましくは5~20であってよく、5~15であってよい。
本発明の架橋剤であるヒドロシリル基含有化合物(Y)は、特に好適には、mが3~6の範囲の数であり、nが3~9の範囲の数であり、かつ、pが0~2の範囲の数である。
【0084】
式(a)において、RはR1,R2、水素原子、Raから選ばれる基のいずれであってよい。ただし、n=0または1の場合は、Rの両方または一方は水素原子である。
式中のR1,R2は一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよく、一部の炭素原子結合水素原子がハロゲン原子により置換されていてもよい。このようなアルキル基は、炭素数1~20のアルキル基であってよく、工業的には、メチル基であってよい。
【0085】
式(a)において、Raはアラルキル基であり、炭素数7~20のアラルキル基、好適には、炭素数7~15のアラルキル基であってよい。このようなアラルキル基として、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等を例示することができ、特に、フェニル基等のアリール基とケイ素原子間のアルキレン構造中に-CH(CH3)-で表される分岐単位を少なくとも一つ含むことが好ましい。本発明において、特に好適には、Raは-CH2-CH(CH3)-C6H5で表されるアラルキル基である。
【0086】
当該アラルキル基は、ヒドロシリル基含有化合物(Y)に架橋剤としての有用性を与える特徴的な官能基であり、特に、n、m、pが上記の範囲にある本成分中にアラルキル基がケイ素原子結合水素原子と共に存在することで、得られる成型物の物理的性質が著しく改善されるものである。
【0087】
本態様の共重合体組成物において、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対するヒドロシリル基含有化合物(Y)の配合量は、0.1~100質量部が好ましく、0.5~90質量部がより好ましく、1.0~80質量部がさらに好ましい。
【0088】
[白金系触媒]
白金系触媒は、付加反応触媒であり、共重合体(S1)や共重合体(S2)が有するアルケニル基と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)のヒドロシリル基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば、特に制限はなく使用することができる。白金系触媒としては、白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたものなどが挙げられる。
【0089】
具体的な白金系触媒は、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものでよく、例えば米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号公報明細書および米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物などが挙げられる。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の白金系触媒を含んでいてもよい。
【0090】
本態様の共重合体組成物において、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対する白金系触媒の配合量は、0.001~10質量部が好ましく、0.005~9質量部がより好ましく、0.01~8質量部がさらに好ましい。
【0091】
[反応抑制剤]
本態様の共重合体組成物は反応抑制剤を含むことが好ましい。反応抑制剤は、共重合体(S1)や共重合体(S2)が有するアルケニル基と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)のヒドロシリル基との架橋反応(アルケンへのヒドロシリル化付加反応)を抑制する機能を有する化合物である。反応抑制剤を配合した場合は、組成物の混練時および成形時での加工性を安定にする点で好ましい。
【0092】
反応抑制剤の具体例としては、例えば、ベンゾトリアゾール;1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、1-エチニルシクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレンアルコール類;、アクリロニトリル;N,N-ジアリルアセトアミド、N,N-ジアリルベンズアミド、N,N,N’,N’-テトラアリル-o-フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’-テトラアリル-m-フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’-テトラアリル-p-フタル酸ジアミドなどアミド化合物);その他、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
これら化合物の中でも3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールが特に好ましい。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の反応抑制剤を含んでいてもよい。
【0093】
本態様の共重合体組成物において、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対する反応抑制剤の配合量は、0.05~5質量部が好ましく、0.08~4質量部がより好ましく、0.1~3質量部がさらに好ましい。
【0094】
[有機過酸化物(Z)]
有機過酸化物(Z)としては、例えば、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシドが挙げられる。
【0095】
有機過酸化物(Z)は、架橋時に生成する分解生成物が低分子量化合物であり、それらの蒸気圧が十分に高いものが好ましい。そのような有機過酸化物(Z)を使用すれば、得られる架橋成形体に臭気が残りにくい。
【0096】
本態様の共重合体組成物において、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対する有機過酸化物(Z)の配合量は、0.1~8質量部が好ましく、0.2~7質量部がより好ましく、0.3~6質量部がさらに好ましい。有機過酸化物(Z)の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体表面へのブルームがなく、共重合体組成物が優れた架橋特性を示す。
【0097】
本態様の共重合体組成物において、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対するヒドロシリル基含有化合物(Y)と有機過酸化物(Z)の合計配合量は、0.2~108当量が好ましく、0.7~97当量がより好ましく、1.3~86当量がさらに好ましい。
【0098】
本態様の共重合体組成物において、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と有機過酸化物(Z)の配合量の当量比[Y/Z]は、23/77~99/1が好ましく、47/53~99/1がより好ましい。
【0099】
[酸化防止剤]
本態様の共重合体組成物は酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
本態様の共重合体組成物は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含むことにより、さらに、吸水率が高く、圧縮永久歪みが優れる架橋成形体を得ることができる。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0100】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,4,6-トリス(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシベンジル)メシチレン〔((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO-330、融点:243~245℃)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO-20、融点:220~222℃)、4,4'-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール) ((株ADEKA製、商品名:アデカスタブAO-40、融点:210~214℃)、N,N’-ビス{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン(BASF・ジャパン(株)製、商品名:Irganox MD1024、融点:224~229℃)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン(株)製、商品名:Irganox1010、融点:110~130℃)、ジブチルヒドロキシトルエン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン(大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックNS―7、融点:200℃以上)などが挙げられる。
【0101】
本態様の共重合体組成物が酸化防止剤を含む場合、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対する酸化防止剤の配合量は、0.001~10質量部が好ましく、0.005~10質量部がより好ましく、0.1~10質量部がさらに好ましく、0.5~8質量部が特に好ましい。
【0102】
[老化防止剤]
本態様の共重合体組成物は老化防止剤を含んでいてもよい。
共重合体組成物が老化防止剤(安定剤)を含むことにより、形成される成形体の寿命を長くすることができる。
老化防止剤としては、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤など、公知の老化防止剤を用いることができる。老化防止剤の具体例としては、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p―フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等が挙げられる。
老化防止剤は、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。高温下で、長時間の耐熱老化性を維持する点で、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0103】
老化防止剤の配合量は、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対して、0.3~10質量部が好ましく、0.5~7.0質量部がより好ましい。このような範囲内とすることにより、共重合体組成物から得られる架橋成形体表面のブルームを抑制でき、さらに架橋阻害の発生を抑制することができる。
【0104】
[補強剤]
本態様の共重合体組成物は、引張破断点応力、引張破断点伸びなどの物性を向上させるため、補強剤を含んでいてもよい。
補強剤は、ゴム組成物に配合される公知のゴム補強剤であり、具体的には、カーボンブラック、シランカップリング剤で表面処理したカーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微分ケイ酸などが挙げられる。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の補強剤を含んでいてもよい。
【0105】
本態様の共重合体組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックを含有すると、共重合体組成物の射出成形性、金型からの脱離性を向上させ、しかも引張強度、引裂強度、耐摩耗性などの機械的性質が向上した共重合体組成物を得ることができる。
カーボンブラックとしては、例えば、旭#50HG、旭#55G、旭#60G、旭#60UG、旭#70G(以上、旭カーボン(株)製)、シーストSVH、シーストV、シーストSO、シーストG-SO、シースト116、シースト3、シースト6、シースト9、シーストSP、シーストTA(以上、東海カーボン(株)製)、VULCAN3、STERLING(SO、V、VH、142等)(以上、キャボット コーポレーション製)などの公知のものを使用することができる。これらは、単独で使用することもできるし、併用することもできる。また、シランカップリング剤などで表面処理したものを使用することもできる。
【0106】
本態様の共重合体組成物がカーボンブラックを含む場合、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対するカーボンブラックの配合量は、10~300質量部が好ましく、30~200質量部がより好ましく、50~180質量部がさらに好ましい。カーボンブラックを上記範囲で含むことにより、射出成形性、金型からの脱離性が向上する。
【0107】
本態様の共重合体組成物は、シリカを含むことも好ましい。シリカを含有すると、共重合体組成物の伸びが向上し、それによって金型からの脱離性が向上する。
シリカとしては、親水性シリカおよび疎水性シリカが挙げられる。
親水性シリカとは、表面に疎水基を有さないシリカをいい、通常の場合、通常ゴム工業において用いられる公知の乾式シリカ、湿式シリカ等が挙げられる。親水性シリカの市販品の例としては、ニップシールER(登録商標)(東ソー・シリカ(株)製)などが挙げられる。
疎水性シリカは、疎水化剤で表面処理されたシリカ粒子である。疎水化剤の例としては、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の有機ケイ素化合物が挙げられる。疎水性シリカの市販品の例としては、日本アエロジル(株)製のAEROSILシリーズのRX50、RX200、RX300、R8200、NX90Sなどが挙げられる。
【0108】
本態様の共重合体組成物がシリカを含む場合、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対するシリカの配合量は、10~80質量部が好ましく、15~60質量部がより好ましい。シリカを上記範囲で含むことにより、金型からの脱離性が向上する。
【0109】
[軟化剤]
本態様の共重合体組成物は軟化剤を含んでいてもよい。
軟化剤は、ゴム組成物に配合される公知の軟化剤であってよい。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられる。これらのうちでは、石油系軟化剤が好ましく、パラフィン系プロセスオイルが特に好ましい。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の軟化剤を含んでいてもよい。
【0110】
本態様の共重合体組成物が軟化剤を含む場合、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対する軟化剤の配合量は、好ましくは5~150質量部、より好ましくは10~150質量部、特に好ましくは10~120質量部の範囲で用いられる。軟化剤の配合量が前記範囲内にあれば、タックが少なく、加工性、耐熱老化性、機械的性質等に優れた共重合体組成物を得ることができる。
【0111】
[吸湿剤]
本態様の共重合体組成物は吸湿剤を含んでいてもよい。
吸湿剤としては、例えば、酸化カルシウム、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、ホワイトカーボンなどが挙げられる。これらの中では酸化カルシウムが好ましい。
吸湿剤の配合量は、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.5~15質量部、より好ましくは1.0~12質量部、さらに好ましくは1.0~10質量部である。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の吸湿剤を含んでいてもよい。
【0112】
[架橋助剤]
本態様の共重合体組成物は架橋助剤を含んでいてもよい。
架橋助剤としては、例えば、イオウ;p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の(メタ)アクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物;マレイミド系化合物;ジビニルベンゼン;酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種(JIS規格(K-1410))、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)等の金属酸化物が挙げられる。
架橋助剤を用いる場合、共重合体組成物中の架橋助剤の配合量は、有機過酸化物(Z)1モルに対して、通常0.5~10モル、好ましくは0.5~7モル、より好ましくは1~6モルである。
【0113】
[充填剤]
本態様の共重合体組成物は、配合コストを下げるため、充填剤を含んでいてもよい。
充填剤としては、例えば、タルク、クレーなどが挙げられる。これらの充填剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
充填剤は、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対し、好ましくは1~500質量部、より好ましくは1~400質量部、さらに好ましくは1~300質量部の範囲で用いられる。充填剤の配合量が前記範囲内であると、得られる成形体の引張強度、引裂強度、耐摩耗性等の機械的性質を向上させることができる。
【0114】
[加工助剤]
本態様の共重合体組成物は加工助剤を含んでいてもよい。
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらの加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0115】
加工助剤は、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れる。
【0116】
[活性剤]
本態様の共重合体組成物は活性剤を含んでいてもよい。
活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;ジ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類などが挙げられる。これらの活性剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
活性剤は、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対して、好ましくは0.2~15質量部、好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部の範囲で適宜配合することができる。
【0117】
[発泡剤]
本態様の共重合体組成物は発泡剤を含んでいてもよい。
発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、空気、水等の物理型発泡剤;重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。中でも発泡成形体の低比重化、高架橋密度化が可能であることから、無機発泡剤が好ましく、重曹が特に好ましい。
【0118】
本態様の共重合体組成物が発泡剤を含む場合は、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対する発泡剤の配合量は、0.001~10質量部が好ましく、0.005~10質量部がより好ましく、0.1~10質量部がさらに好ましく、0.2~10質量部が特に好ましい。
【0119】
[その他の配合剤等]
本態様の共重合体組成物は、上記成分に加え、本態様の目的が損なわれない限り、それ自体公知のゴム配合剤、例えば、α,β-不飽和有機酸の金属塩、架橋促進剤、可塑剤、粘着付与剤等を適宜配合することができる。
【0120】
[その他の樹脂]
本態様の共重合体組成物は、本態様の効果を損なわない範囲で、共重合体(S1)および共重合体(S2)以外の樹脂ないしゴムを含んでいてもよい。
共重合体(S1)および共重合体(S2)以外の樹脂ないしゴムは、共重合体(S1)および共重合体(S2)の100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。
【0121】
共重合体(S1)および共重合体(S2)以外の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの汎用樹脂が挙げられる。
ゴムとしては、シリコーンゴム、エチレン・プロピレンランダム共重合体ゴム(EPR)、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが挙げられる。
【0122】
共重合体(S1)および共重合体(S2)以外の樹脂ないしゴムとしては、結晶性オレフィン重合体が好ましい。
結晶性オレフィン重合体は、炭素数2~20のα-オレフィンの単独重合体または共重合体で結晶性の重合体である。
本発明において結晶性の重合体とは、融点を有する重合体である。
結晶性オレフィン重合体を構成するα-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。
【0123】
結晶性オレフィン重合体の具体的な例としては、以下のような(共)重合体が挙げられる。これらの(共)重合体において「モル%」は、全モノマーの合計を100モル%とした割合である。
(1)エチレンの単独重合体、およびエチレンと10モル%以下の他のα-オレフィン又は酢酸ビニル、エチルアクリレート等のビニルモノマーとの共重合体などのエチレン系重合体。より具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸共重合体などが挙げられる。
(2)プロピレンの単独重合体、プロピレンと10モル%以下の他のα-オレフィンとのランダム共重合体、およびプロピレンと30モル%以下の他のα-オレフィンとのブロック共重合体などのプロピレン系重合体。これらのプロピレン系重合体は一般的に、ホモ、ランダム、あるいはブロックタイプのポリプロピレンとも呼称されている。
(3)1-ブテンの単独重合体、および1-ブテンと10モル%以下の他のα-オレフィンとのランダム共重合体などの1-ブテン系重合体。
(4)4-メチル-1-ペンテンの単独重合体、および4-メチル-1-ペンテンと20モル%以下の他のα-オレフィンとのランダム共重合体などの4-メチル-1-ペンテン系重合体。
結晶性オレフィン重合体は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
結晶性オレフィン重合体の中では、エチレン系重合体が好ましく、特に直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
エチレン系重合体は、通常、メルトマスフローレート(MFR)が0.1~100g/10分であることが好ましく、更に好ましくは0.5~80g/10分である。
エチレン系重合体のMFRは、JIS K7210-1999に規定される方法に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0125】
本態様の共重合体組成物が結晶性オレフィン重合体を含む場合、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対する結晶性オレフィン重合体の配合量は、5~30質量部が好ましく、7~20質量部がより好ましく、8~15質量部がさらに好ましい。結晶性オレフィン重合体を上記範囲で含むことにより、射出成形性、金型からの脱離性が向上する。
【0126】
本態様の共重合体組成物は、共重合体(S1)および共重合体(S2)の合計100質量部に対し、結晶性オレフィン重合体を5~30質量部、好ましくは7~20質量部、より好ましくは8~15質量部、カーボンブラックを10~300質量部、好ましくは30~200質量部、より好ましくは50~180質量部の範囲で含むことが好ましい。結晶性オレフィン重合体およびカーボンブラックを上記範囲で含むことにより、射出成形性、金型からの脱離性がさらに向上し、得られる成形体は形状が裂けることもなく良好な外観を有する。
【0127】
[共重合体組成物の製造]
本態様の共重合体組成物を得るには、公知の一般的なゴム組成物と同様の方法を採用し得る。具体的には、以下の通りである。
バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー類を用いて、例えば、共重合体(S1)および共重合体(S2)、ならびに必要に応じて他の成分を130~170℃の温度で3~10分間混練(第一混練)した後、ヒドロシリル基含有化合物(Y)、白金系触媒、必要に応じて、反応抑制剤、補強剤、軟化剤等の他の配合剤や他のゴムや樹脂などを加えて、オープンロールなどのロール類あるいはニーダーを用いて、ロール温度50~80℃で5~30分間混練(第二混練)した後、分出しすることにより調製することができる。このようにして通常リボン状またはシート状の共重合体組成物が得られる。
【0128】
本態様の共重合体組成物を得るには、共重合体(S1)と、共重合体(S2)と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、必要に応じてその他の成分を混練(第一混練)した後、得られた混練物に、白金系触媒と、反応抑制剤と、有機過酸化物と、必要に応じてその他の成分を加えて混練(第二混練)することも好ましい。
有機過酸化物は、第二混練時で加えることが好ましい。
【0129】
具体的には、共重合体(S1)と、共重合体(S2)と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、必要に応じてその他の成分を、130~170℃で1~10分間混練、好ましくは130~150℃の温度で3~8分間混練(第一混練)した後、得られた混練物に、白金系触媒および反応抑制剤と、必要に応じてその他の成分を加え、30~80℃で1~10分間混練、好ましくは50~80℃の温度で3~7分間混練(第二混練)する方法が採用できる。
【0130】
補強剤、軟化剤などを加える場合は、第一混練時と第二混練時のいずれで加えてもよいが、第一混練時に加えることが好ましい。
その他のゴム配合剤、例えば、α,β-不飽和有機酸の金属塩、吸湿剤、老化防止剤、充填剤、加工助剤、活性剤、可塑剤、粘着付与剤等の配合剤を加える場合は、第一混練時時に加えることが好ましく、架橋助剤、架橋促進剤および発泡剤は第二混練時に加えることが好ましい。
【0131】
第一混練に用いる混練装置は、高温で処理できる装置であれば、種々公知の混練装置を使用し得る。具体的には、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などが挙げられる。
第二混練に用いる混練装置は、温度制御が容易なロール、ニーダー、押出機が挙げられる。
【0132】
各成分の混練を、第一混練と第二混練に分けて混練すると、全成分を分けずに混練する場合と比べて混練時間の短縮が可能である。かつ、第一混練時に架橋が進行することを抑制できるため第一混練時の温度を上げることができ、より短時間で水分を除去することが可能である。
【0133】
<架橋成形体>
本発明の1態様に係る架橋成形体は、本発明の共重合体組成物を架橋して得られる架橋成形体である。
架橋成形体は、本発明の共重合体組成物を、例えば、押出成形機、カレンダーロール、プレス成形機、射出成形機、トランスファー成形機など種々の成形機を用いた成形法によって所望形状に予備成形後、あるは成形と同時に、成形物を架橋槽内に導入し、加熱して架橋することにより得ることができる。本発明の共重合体組成物が発泡剤を含む場合は、架橋と共に発泡も進行し、発泡した架橋成形体(発泡成形体)が得られる。
【0134】
加熱する方法としては、公知の方法が制限無く用いることができるが、特に、遠赤外線加熱炉、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチーム、LCM(熱溶融塩槽)などの加熱形態の加熱槽を用いて、150~200℃の温度で1~30分間加熱することが好ましい。成形、架橋に際しては、金型を用いてもよく、また金型を用いないでもよい。金型を用いない場合は、ゴム組成物は通常連続的に成形、架橋される。
【0135】
本発明の共重合体組成物をプレス成形して一次架橋を行い、金型から取り出すことにより一次成形体を得、得られた一次成形体を熱媒体中で二次架橋することも好ましい。
具体的には、本発明の共重合体組成物を、120~200℃で1~20分間、好ましくは150~200℃で10~18分間、プレス成形して一次架橋を行って金型から取り出すことにより一次成形体を得、得られた一次成形体を熱媒体中で120~160℃で10~24時間、好ましくは140~160℃で15~20分間、二次架橋する方法が採用できる。
二次架橋に用いる熱媒体は、空気、水蒸気、パラフィン系プロセスオイルや溶融塩等である。
【0136】
一次架橋をプレス成形で行うと、せん断発熱によって架橋体が高温になることがない。そのため、低分子シロキサンの発生およびポリマーの劣化を抑えることが可能である。
また、密閉状態で架橋するプレス成形では、ある程度発生した低分子シロキサンが架橋体内部に残存するが、その後、熱媒体中で二次架橋を行うことで低分子シロキサンを揮発させ、低分子シロキサン量の少ない架橋体を得ることが可能である。
【0137】
本態様の架橋成形体は、様々な用途に用いることができる。具体的には、タイヤ用ゴム、O-リング、工業用ロール、パッキン(例えばコンデンサーパッキン)、ガスケット、ベルト(例えば、断熱ベルト、複写機ベルト、搬送ベルト)、自動車用ホースなどのホース類(例えば、ウォーターホース、ブレーキリザーバーホース、ラジエターホース、エアーホース)、防振ゴム、防振材あるいは制振材(例えば、エンジンマウント、モーターマウント)、マフラーハンガー、スポンジ(例えば、ウェザーストリップスポンジ、断熱スポンジ、プロテクトスポンジ、微発泡スポンジ)、ケーブル(イグニッションケーブル、キャブタイヤケーブル、ハイテンションケーブル)、電線被覆材(高圧電線被覆材、低電圧電線被覆材、舶用電線被覆材)、グラスランチャネル、カラー表皮材、給紙ロール、ルーフィングシート等に好適に用いられる。
【実施例0138】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0139】
<測定方法・評価方法>
各例の共重合体、未架橋の共重合体組成物(第二段階の混練を終了した直後の共重合体組成物(後述の配合物2)、以下同じ)および架橋成形体の物性の測定や評価は以下の方法で行った。
【0140】
[共重合体の組成]
共重合体の、各構成単位の質量分率(質量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
【0141】
[共重合体の分子量]
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、3D-GPCで測定した。具体的には、上述の方法により求めた。
【0142】
[共重合体の極限粘度]
共重合体の極限粘度[η]は、(株)離合社製全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
【0143】
[共重合体のP値]
レオメーターとして、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%の条件で、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)、および周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(いずれも単位はPa・sec)を測定した。また、得られた結果より、η*
(ω=0.1)とη*
(ω=100)との複素粘度の比(η*比)である共重合体のP値(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))を算出した。
【0144】
[共重合体の長鎖分岐数]
1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)は、3D-GPCで測定した。具体的には、上述の方法により求めた。
【0145】
[共重合体組成物のムーニー粘度(ML(1+4)100℃)]
各例における未架橋の共重合体組成物の100℃におけるムーニー粘度(ML(1+4)100℃)は、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、JIS K 6300(1994)に準じて測定した。
【0146】
[共重合体組成物の加硫速度]
各例における未架橋の共重合体組成物を用いて、JIS K 6300-2に準じて、170℃で20分間加熱した際に測定される架橋曲線より、以下の値を求めた。測定には、MDR2000(アルファテクノロジーズ製)を用いた。
【0147】
「S'max」(dNm):170℃で20分間加熱した際に測定される最大トルク値S'maxである。
「S'min」(dNm):170℃で20分間加熱する際に測定される最小トルク値S'minである。
「S'max-S'min」(dNm):最大トルク値S'maxと最小トルク値S'minの差である。
「TS1」:測定開始時を基準として最小トルク値S’minからトルク値が1(dNm)上昇するまでの時間である。
「tc90」:測定開始時を基準として「S'max-S'min」の90%に相当するトルク値に到達するまでの時間である。
「MCR」(dNm/分):架橋曲線におけるトルクの最大変化率である。
【0148】
[硬さ試験(デュロ-A硬度)]
各例で得た厚さ2mmのシート状の架橋成形体6枚を積みかねて、厚さ12mmの試験片とし、JIS K 6253-3に従い、硬度(Duro-A)を測定した。なお、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0149】
[引張試験]
各例で得た厚さ2mmのシート状の架橋成形体を打抜いてJIS K 6251(1993年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いて同JIS K 6251第3項に規定される方法に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、100%伸張時のモジュラスM100(MPa)、引張破断点応力TB(MPa)、引張破断点伸びEB(%)を測定した。
【0150】
[高温引張試験]
測定温度を80℃または170℃とした以外は上記と同様にして引張試験を行い、引張破断点応力TB(MPa)、引張破断点伸びEB(%)、および100%伸張時のモジュラスM100(MPa)を測定した。
【0151】
[圧縮永久歪み(CS)]
各例で得た直径29mm、高さ(厚さ)12.7mmの架橋成形体を試験片とし、JIS K 6262に従い、100℃×22時間の熱処理後の圧縮永久歪みを測定した。具体的には、荷重をかける前の試験片高さ(12.7mm)に対して25%圧縮し、スペーサーごと100℃のギアオーブン中にセットして22時間熱処理した。次いで試験片を取出し、室温で30分間放置後、試験片の高さを測定し下記の計算式で圧縮永久歪み(%)を算出した。
圧縮永久歪み(%)={(t0-t1)/(t0-t2)}×100
t0:試験片の試験前の高さ。
t1:試験片を前記条件で熱処理した後、室温で30分間放置した後の高さ。
t2:試験片の測定金型に取り付けた状態での高さ。
【0152】
<共重合体(S1)>
各例で用いた共重合体(S1)は下記のとおりである。
共重合体(S1-1)混合物:後述する製造例1で製造した合成品。エチレンとプロピレンとVNBとの共重合体である共重合体(S1-1)と、プロセスオイルとの混合物。共重合体(S1-1)/プロセスオイル=100/15(質量比)。共重合体(S1-1)の要件(1-i)~要件(1-v)に関する数値を表1に示す。
【0153】
【0154】
[製造例1:共重合体(S1-1)の製造]
特開平2018-131527号公報の製造例1と同様にして、共重合体(S1-1)を製造した。
【0155】
<共重合体(S2)>
各例で用いた共重合体(S2)は下記のとおりである。
共重合体(S2-1)混合物:三井化学社製、3072EM、エチレンとプロピレンとENBとの共重合体である共重合体(S2-1)と、プロセスオイルとの混合物、共重合体(S2-1)/プロセスオイル=100/40(質量比)。共重合体(S2-1)の要件(2-i)、要件(2-ii)に関する数値を表2に示す。
【0156】
【0157】
<ヒドロシリル基含有化合物(Y)>
各例で用いたヒドロシリル基含有化合物(Y)は下記のとおりである。
ヒドロシリル基含有化合物(Y-1):後述する製造例2で製造した合成品。
【0158】
[製造例2:ヒドロシリル基含有化合物(Y-1)の製造]
反応器に下記式(a-1-1)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン536gを仕込み、窒素流通下で攪拌しながら40℃まで加温した。
白金-1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン錯体のトルエン溶液(Pt濃度0.3wt%)を0.4g添加し、α-メチルスチレン265gを反応温度40~90℃に保つように滴下した。
【0159】
【0160】
滴下終了後に85℃で攪拌を2時間継続した後、反応液を0.5g採取し、アルカリ分解ガス発生法(残存したSi-H基をKOHのエタノール/水溶液によって分解し、発生した水素ガスの体積からSi-H基の反応率を計算する)によりSi-H基の反応率が約36%であることを確認した。次に反応液を減圧下で135℃に加熱して2時間低沸分を溜去し、ヒドロシリル基含有化合物(Y-1)を673g得た。
【0161】
得られたヒドロシリル基含有化合物(Y-1)は、29Si-NMRにより、下記式(a-1)で示される化合物であることを確認した。
得られたヒドロシリル基含有化合物(Y-1)について、25℃においてウベローデ型粘度管を使用してJIS-Z-8803に沿って粘度を測定したところ、26mm2/sであった。
【0162】
【0163】
<有機過酸化物(Z)>
各例で用いた有機過酸化物(Z)は下記のとおりである。
有機過酸化物(Z-1):日油(株)製、パーヘキサ25B-40、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(純度40質量%)、1分間半減期温度179.8℃
【0164】
<その他の成分>
各例で用いたその他の成分は下記のとおりである。
白金系触媒:ダウ・東レ(株)製、SRX212Catalyst、塩化白金酸と1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯塩
反応抑制剤:日信化学工業(株)製、1-エチニル-1-シクロヘキサノール
活性亜鉛華:井上石灰工業(株)製、META-Z102
カーボンブラック:旭カーボン(株)製、旭#60UG、FEFカーボンブラック
シリカ:東ソー・シリカ(株)製、ニップシールER
プロセスオイル:出光興産(株)製、ダイアナ(登録商標)プロセスPW-380、パラフィン系プロセスオイル
フェノール系酸化防止剤:BASFジャパン(株)製、イルガノックス1010
2-メルカプトベンゾイミダゾール:三新化学工業(株)製、サンダントMB
エチレン系重合体:(株)プライムポリマー社製、エボリュー(登録商標)SP2320、直鎖低密度ポリエチレン、MFR1.9g/10分
【0165】
<実施例1>
MIXTRON BB MIXER(神戸製鋼所社製、BB-4型、容積2.95L、ローター4WH)を用いて、共重合体(S1-1)の80.5質量部、共重合体(S2-1)混合物の42質量部、エチレン系重合体の10質量部、架橋助剤として活性亜鉛華の5質量部、カーボンブラックの130質量部、シリカの20質量部、軟化剤としてプロセスオイルの70.5質量部、フェノール系酸化防止剤の1質量部、老化防止剤として2-メルカプトベンゾイミダゾールの2質量部を配合した後混練し、配合物1を得た。配合物1調製時の混練条件は、ローター回転数が50rpm、フローティングウェイト圧力が3kg/cm2、混練時間が5分間で行い、混練排出温度を150℃とした。配合物1のムーニー粘度ML(1+4)100℃を表3に示す。
【0166】
次いで、配合物1が温度40℃となったことを確認した後、6インチロールを用いて、配合物1に、有機過酸化物(Z-1)のを12.5質量部、およびヒドロシリル基含有化合物(Y-1)の6.5質量部、白金系触媒の0.2質量部、反応抑制剤の0.2質量部を添加して混練し、配合物2(未架橋の共重合体組成物)を得た。配合物2調製時の混練条件は、ロール温度を前ロール/後ロール=50℃/50℃、ロール周速さを前ロール/後ロール=18rpm/15rpm、ロール間隙を2mmとして、混練時間8分間で分出した。
【0167】
配合物2を、プレス成形機を用いて、金型内にて170℃で15分間プレス処理し、厚さ2mmのシート状の架橋成形体を得た。得られたシート状の架橋成形体について、上記の方法で硬さ試験、引張試験、高温引張試験を行った。結果を表3に示す。
また、配合物2を、円柱状の金型がセットされたプレス成形機を用いて、170℃で20分間プレス処理し、直径29mm、高さ(厚さ)12.7mmの架橋成形体を得た。得られた架橋成形体について、上記の方法で圧縮永久歪みを評価した。結果を表3に示す。
なお、架橋時間は、基本的にtc90の値+5分で設定した。圧縮永久歪みの場合のみtc90の値+10分で設定した。表3には前者の架橋時間を示した。
【0168】
<比較例1>
共重合体(S1-2)混合物、ヒドロシリル基含有化合物(Y-1)、白金系触媒および反応抑制剤を配合せず、共重合体(S1-1)の配合量を115質量部、プロセスオイルの配合量を78質量部とした以外は実施例1と同様にして配合物2を調製した。得られた配合物2について、プレス処理時間を10分間とした以外は実施例1と同様にして架橋成形体を作製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0169】
<比較例2>
比較例1と同様にして配合物2を調製した。得られた配合物2について、プレス処理時間を20分間とした以外は実施例1と同様にして架橋成形体を作製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0170】
<比較例3>
共重合体(S1-2)混合物および有機過酸化物を配合せず、共重合体(S1-1)の配合量を115質量部、プロセスオイルの配合量を78質量部とした以外は実施例1と同様にして配合物2を調製した。得られた配合物2について、プレス処理時間を10分間とした以外は実施例1と同様にして架橋成形体を作製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0171】
<比較例4>
有機過酸化物を配合しなかった以外は実施例1と同様にして配合物2を調製した。得られた配合物2について、プレス処理時間を10分間とした以外は実施例1と同様にして架橋成形体を作製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0172】
<比較例5>
共重合体(S1-2)混合物を配合せず、共重合体(S1-1)の配合量を115質量部、プロセスオイルの配合量を78質量部とした以外は実施例1と同様にして配合物2を調製した。得られた配合物2について、プレス処理時間を10分間とした以外は実施例1と同様にして架橋成形体を作製し、評価を行った。結果を表3に示す。
【0173】
【0174】
表3に示すように、実施例1では、架橋成形体の熱時強度(80℃でのTB、170℃でのTB)、100℃×22時間での圧縮永久歪みに優れていた。また、TS1が比較例3~5よりも長く、耐スコーチ性に優れていた。耐スコーチ性に優れることから、射出成形性に優れると判断できる。
一方、共重合体(S2)、ヒドロシリル基含有化合物(Y)、反応抑制剤および白金系触媒を含まない比較例1では、架橋成形体の熱時強度、100℃×22時間での圧縮永久歪みに劣っていた。架橋時間を長くした比較例2も同様であった。
共重合体(S2)および有機過酸化物を含まない比較例3では、架橋成形体の熱時強度、100℃×22時間での圧縮永久歪みに劣っていた。
有機過酸化物を含まない比較例4、共重合体(S2)を含まない比較例5では、架橋成形体の熱時強度、100℃×22時間での圧縮永久歪みに劣っていた。また、TS1が短く、耐スコーチ性に劣っていた。