(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032011
(43)【公開日】2024-03-08
(54)【発明の名称】共重合体組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20240301BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240301BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20240301BHJP
C08F 210/18 20060101ALI20240301BHJP
C08G 77/442 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L83/05
C08K5/5415
C08F210/18
C08G77/442
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023115654
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】有野 恭巨
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】岸本 典久
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 武
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4J246
【Fターム(参考)】
4J002BB05W
4J002BB15W
4J002BB17W
4J002BK00W
4J002BL00W
4J002CP04X
4J002DA117
4J002DD047
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4J002EZ007
4J002FD146
4J002FD14X
4J002FD157
4J002GC00
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4J100AA02P
4J100AA03Q
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4J100AA07Q
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4J100AR21R
4J100AR22R
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4J100AS15R
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4J100HA37
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4J246CA39X
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4J246FD08
4J246GB12
4J246GD10
4J246HA70
(57)【要約】
【課題】手で造型が可能であり、しかも室温で架橋させることが可能なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を提供する。
【解決手段】エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、特定の非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有する特定の共重合体(S)と、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、白金系触媒とを含み、架橋温度を25℃、架橋時間を60分とした際に測定される差[S'max-S'min]が3dNm以上であり、tc50が3分以上であることを特徴とする共重合体組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、下記式(I)および下記式(II)から選ばれる少なくとも一種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有し、下記要件(i)及び要件(ii)を満たす共重合体(S)と、
下記式(a)で示され、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、
白金系触媒とを含み、
架橋温度を25℃、架橋時間を60分とした際に測定される最大トルク値S'maxと最小トルク値S'minとの差[S'max-S'min]が3dNm以上であり、前記最小トルク値S'minから、前記差[S'max-S'min]の50%に相当するトルク値と前記最小トルク値S'
minとの和に相当するトルク値に到達するまでの時間であるtc50が3分以上であることを特徴とする共重合体組成物。
(i)エチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]の炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]に対する比である[A]/[B]が、40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して0.07~10質量%である。
【化1】
【化2】
(式(a)中、nおよびpは、0または正の数であり、mは1~20の範囲の数であり、nとmとpの総和は5~50である。R
1、R
2は各々独立して一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよい。R
aはアラルキル基であり、RはR
1,R
2、水素原子、R
aから選ばれる基である。ただし、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子である。)
【請求項2】
エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、下記式(I)および下記式(II)から選ばれる少なくとも一種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有し、下記要件(i)及び要件(ii)を満たす共重合体(S)と、
下記式(a)で示され、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、
白金錯体を3質量%以上の濃度で含有する白金系触媒とを含み、
前記共重合体(S)の100質量部に対して、前記白金系触媒を0.8~1.2質量部含むことを特徴とする共重合体組成物。
(i)エチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]の炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]に対する比である[A]/[B]が、40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して0.07~10質量%である。
【化3】
【化4】
(式(a)中、nおよびpは、0または正の数であり、mは1~20の範囲の数であり、nとmとpの総和は5~50である。R
1、R
2は各々独立して一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよい。R
aはアラルキル基であり、RはR
1,R
2、水素原子、R
aから選ばれる基である。ただし、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子である。)
【請求項3】
前記共重合体(S)の3D-GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、10,000~600,000である、請求項1または2に記載の共重合体組成物。
【請求項4】
前記共重合体(S)が下記要件(iii)及び要件(iv)を満たす、請求項1または2に記載の共重合体組成物。
(iii)下記式(1)で求められる(nC)が4.5以上80以下である。
(nC)=(Mw)×{(C)の質量分率/100}/(C)の分子量 ・・・(1)
但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S)の重量平均分子量であり、(C)の質量分率は非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率であり、(C)の分子量は非共役ポリエン(C)の分子量である。
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η](135℃デカリン中)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×6 ・・・式(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の大量生産、大量消費、大量廃棄のリニアな経済に代わり、製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持し廃棄物の発生を最小化した循環経済への転換はESGの重要テーマとなりつつある。また、個人の価値観に合う生き方の追求が進展し、多様な暮らし方を実現させるためにも、モノ・サービスづくりの一体化が求められる未来像が予測される。
【0003】
例えば、粘土組成物は、優れた可塑性を有し、立体造形を容易に行えることから、工作材料として、あるいは子どもや幼児向けの教材や玩具などの材料として広く用いられており、多様な暮らしを豊かにするツールとして活用されている。
【0004】
特許文献1では、手作業での加工が容易な程度の充分な加工性を備え、かつべとつきが抑制された粘土組成物として、エチレン・α-オレフィン共重合体と、プロピレン由来の単量体単位を含む重合体を含有するポリマーワックスと、ポリ・α-オレフィンと、を含有する粘土組成物が提案されている。
しかし、特許文献1の粘土組成物は、加工後に固化させることができず、加工後の形状を長期間に亘って維持することが難しい。
【0005】
加工後の形状を長期間に亘って維持するためには、粘度組成物に架橋剤を配合して、架橋させればよい。例えば、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体をヒドロシリコーン架橋して得られる共重合体組成物が知られている(特許文献2)。
しかし、特許文献2の共重合体組成物は、高温で架橋させなければならず、加熱のための設備が必要である。そのため、粘土細工のように手軽に造型して硬化した造形物を得たいという要望に応えることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-39888号公報
【特許文献2】特開2018-131527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、手で造型が可能であり、しかも室温で架橋させることが可能なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を採用した。
[1]エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、下記式(I)および下記式(II)から選ばれる少なくとも一種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有し、下記要件(i)及び要件(ii)を満たす共重合体(S)と、
下記式(a)で示され、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、
白金系触媒とを含み、
架橋温度を25℃、架橋時間を60分とした際に測定される最大トルク値S'maxと最小トルク値S'minとの差[S'max-S'min]が3dNm以上であり、前記最小トルク値S'minから、前記差[S'max-S'min]の50%に相当するトルク値と前記最小トルク値S'minとの和に相当するトルク値に到達するまでの時間であるtc50が3分以上であることを特徴とする共重合体組成物。
(i)エチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]の炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]に対する比である[A]/[B]が、40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して0.07~10質量%である。
【0009】
【0010】
【0011】
(式(a)中、nおよびpは、0または正の数であり、mは1~20の範囲の数であり、nとmとpの総和は5~50である。R1、R2は各々独立して一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよい。Raはアラルキル基であり、RはR1,R2、水素原子、Raから選ばれる基である。ただし、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子である。)
【0012】
[2]エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、下記式(I)および下記式(II)から選ばれる少なくとも一種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有し、下記要件(i)及び要件(ii)を満たす共重合体(S)と、
下記式(a)で示され、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、
白金錯体を3質量%以上の濃度で含有する白金系触媒とを含み、
前記共重合体(S)の100質量部に対して、前記白金系触媒を0.8~1.2質量部含むことを特徴とする共重合体組成物。
(i)エチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]の炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]に対する比である[A]/[B]が、40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して0.07~10質量%である。
【0013】
【0014】
【0015】
(式(a)中、nおよびpは、0または正の数であり、mは1~20の範囲の数であり、nとmとpの総和は5~50である。R1、R2は各々独立して一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよい。Raはアラルキル基であり、RはR1,R2、水素原子、Raから選ばれる基である。ただし、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子である。)
【0016】
[3]前記共重合体(S)の3D-GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、10,000~600,000である、[1]または[2]に記載の共重合体組成物。
【0017】
[4]前記共重合体(S)が下記要件(iii)及び要件(iv)を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の共重合体組成物。
(iii)下記式(1)で求められる(nC)が4.5以上80以下である。
(nC)=(Mw)×{(C)の質量分率/100}/(C)の分子量 ・・・(1)
但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S)の重量平均分子量であり、(C)の質量分率は非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率であり、(C)の分子量は非共役ポリエン(C)の分子量である。
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η](135℃デカリン中)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×6 ・・・式(2)
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、手で造型が可能であり、しかも室温で架橋させることが可能なエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<共重合体組成物>
本発明の1態様に係る共重合体組成物は、共重合体(S)とヒドロシリル基含有化合物(Y)と、白金系触媒とを含む。
なお、本明細書および特許請求の範囲における「質量部」は、溶剤を含まない固形分換算の質量部である。
また、「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値および上限値とする数値範囲を意味する。
【0020】
[共重合体(S)]
本態様における共重合体(S)は、エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有する。
【0021】
共重合体(S)を構成する全構成単位に対して、エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の合計の質量分率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、92質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0022】
炭素数3~20のα-オレフィン(B)(以下、単に「α-オレフィン(B)」という場合がある。)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られる共重合体(S)が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った成形体を得ることができるため好ましい。これらのα-オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0023】
非共役ポリエン(C)は、下記式(I)および下記式(II)から選ばれる少なくとも一種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエンである。
【0024】
【0025】
非共役ポリエン(C)としては、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、ヒドロシリコーン架橋が良好で、重合体組成物の耐熱性が向上しやすいことから非共役ポリエン(C)がVNBを含むことが好ましく、非共役ポリエン(C)がVNBであることがより好ましい。非共役ポリエン(C)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0026】
本態様における共重合体(S)は、さらに、本態様の効果を損なわない範囲で、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(CX)に由来する構成単位(CX)を含んでいてもよい。
このような非共役ポリエン(CX)としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
【0027】
これらのうちでは、入手容易性が高く、ヒドロシリコーン架橋時の架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことからENBが好ましい。非共役ポリエン(CX)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
本態様における共重合体(S)が、非共役ポリエン(CX)に由来する構成単位を含む場合、その質量分率は、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して、0~20質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましく、0.01~8.0質量%がさらに好ましい。
【0028】
本態様における共重合体(S)は、前述したエチレン(A)、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)、非共役ポリエン(C)、および非共役ポリエン(CX)から選ばれる少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位として、バイオマス由来のモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0029】
本態様における共重合体(S)は、下記要件(i)、要件(ii)を満たす。また、下記要件(i)、要件(ii)に加えて、下記要件(iii)及び要件(iv)を満たすことが好ましい。また、下記要件(v)も満たすことがさらに好ましい。要件(iii)~要件(v)は、いずれも共重合体における長鎖分岐含有量に関係する指標である。
【0030】
(i)エチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]の炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]に対する比である[A]/[B]が、40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して0.07~10質量%である。
【0031】
(iii)下記式(1)で求められる(nC)が4.5以上80以下である。
(nC)=(Mw)×{(C)の質量分率/100}/(C)の分子量 ・・・(1)
但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S)の重量平均分子量であり、(C)の質量分率は非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率であり、(C)の分子量は非共役ポリエン(C)の分子量である。
【0032】
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η](135℃デカリン中)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×6 ・・・式(2)
【0033】
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw) ・・・式(3)
【0034】
要件(i)は、本態様における共重合体(S)中の(i)エチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]のα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]に対する比である[A]/[B]が、40/60~99.9/0.1を満たすことを特定する。
【0035】
[A]/[B]は50/50~90/10が好ましく、55/45~85/15がより好ましく、55/45~78/22がさらに好ましい。共重合体(S)が要件(i)を満たすことにより、共重合体(S)をヒドロシリコーン架橋して得られる成形体が優れたゴム弾性を示し、機械的強度ならびに柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
なお、共重合体(S)中のエチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]とα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]の比[A]/[B]は13C-NMRにより求めることができる。
【0036】
要件(ii)は、共重合体(S)中において、非共役ポリエン(C)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して0.07~10質量%であることを特定する。
この非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率は、0.1~8.0質量%が好ましく、0.5~5.0質量%であることがより好ましい。
【0037】
共重合体(S)は、要件(ii)を満たすことにより、本態様に係る共重合体組成物から得られる架橋成形体が充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなるため好ましい。また、共重合体(S)をヒドロシリコーン架橋した場合には、早い架橋速度を示すため、効率的に架橋成形体を製造できるので好ましい。
なお、共重合体(S)中の非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率は、13C-NMRにより求めることができる。
【0038】
共重合体(S)における非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の割合をヨウ素価で示す場合、0.14~20であることが好ましく、0.2~16であることがより好ましく、1.0~10であることが更に好ましい。非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の割合が好ましいヨウ素価の範囲内であれば、良好なゴム弾性が得られる。
【0039】
非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率は、共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)と、下記式(4)を満たすことが好ましい。
6-0.45×Ln(Mw)≦(C)の質量分率≦10 ・・・式(4)
【0040】
要件(iii)は、下記式(1)で求められる(nC)の範囲を4.5以上80以下に特定する。
(nC)=(Mw)×{(C)の質量分率/100}/(C)の分子量 ・・・(1)
但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S)の重量平均分子量であり、(C)の質量分率は非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率であり、(C)の分子量は非共役ポリエン(C)の分子量である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、3D-GPCで測定される重量平均分子量を意味する。
(nC)は4.5以上78以下であることが好ましく、4.5以上75以下であることがより好ましい。
【0041】
上記式(1)で求められる(nC)は、共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数である。
(nC)が下限値以上であることにより、ヒドロシリコーン架橋する際に充分な架橋速度を得やすい。また上限値以下であることにより、過度な架橋が生じにくく、得られる架橋成形体がより優れた機械特性を示す。
要件(iii)を満たす場合、各共重合体の長鎖分岐含有量が適切な範囲となる。その結果、ヒドロシリコーン架橋速度が速く、得られる架橋成形体の機械的特性などの物性バランスに優れるとともに、後架橋を生じにくく特に耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0042】
共重合体(S)が構成単位(CX)を含む場合は、下記式(1’)で求められる(nC+cx)が4.5以上80以下であることが好ましく、4.5以上78以下であることがより好ましく、4.5以上75以下であることがさらに好ましい。
(nC+cx)=(Mw)×[{(C)の質量分率/100}/(C)の分子量
+{(CX)の質量分率/100}/(CX)の分子量] ・・・(1’)
上記式(1’)で求められる(nC+cx)は、共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数と非共役ポリエン(CX)に由来する構成単位の数の合計数である。
【0043】
要件(iv)は、共重合体(S)の、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η](135℃デカリン中)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率:質量%)とが、下記式(2)を満たすことを特定する。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×6・・・式(2)
【0044】
レオメーターとしては、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%で、周波数を変化させて測定を行った。 極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定される値である。
【0045】
共重合体(S)は、下記式(2')を満たすことがより好ましい。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×5.7・・・式(2')
比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))は、粘度の周波数依存性を表すものであって、式(2)および式(2')の左辺にあたるP/([η]2.9)は、短鎖分岐や分子量などの影響はあるものの、長鎖分岐が多い場合に高い値を示す傾向がある。
【0046】
一般に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体では、非共役ポリエンに由来する構成単位を多く含むほど、長鎖分岐を多く含む傾向があるが、本態様における共重合体(S)は、従来公知のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体よりも長鎖分岐が少ないことにより上記式(2)を満たすことができると考えられる。
【0047】
要件(v)は、共重合体(S)の、3D-GPCを用いて得られた1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たすことを特定する。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
【0048】
上記式(3)により、共重合体(S)の単位炭素数当たりの長鎖分岐含量の上限値が特定される。すなわち、要件(v)をは、共重合体(S)の長鎖分岐の割合が少ないことを意味する。
要件(v)を満たすことにより、共重合体(S)は、ヒドロシリコーン架橋を行う場合の硬化特性に優れる。また、これを用いて得られる架橋成形体は、耐熱老化性に優れたものとなる。
共重合体(S)は、下記式(3')を満たすことがより好ましい。
LCB1000C≦1-0.071×Ln(Mw)・・・式(3')
【0049】
上記式(3)および式(3’)におけるMwと(LCB1000C)は、3D-GPCを用いて構造解析法により求めた値である。具体的には、後述の実施例に記載した方法で求めた値である。
【0050】
粘度計より得られた極限粘度と光散乱光度計より得られた絶対分子量の関係より溶出成分毎の長鎖分岐パラメーターg’iを式(v-1)から算出した。
【0051】
【数1】
ここで、[η]=KM
v;v=0.726の関係式を適用した。
また、g’として各平均値を下記式(v-2)、(v-3)、(v-4)から算出した。なお、短鎖分岐のみを有すると仮定したTrendlineは試料ごとに決定した。
【0052】
【0053】
更にg'wを用いて、分子鎖あたりの分岐点数BrNo、炭素1000個あたりの長鎖分岐数LCB1000C、単位分子量あたりの分岐度λを算出した。BrNo算出はZimm-Stockmayerの式(v-5)、また、LCB1000Cとλの算出は式(v-6)、(v-7)を用いた。gは慣性半径Rgから求められる長鎖分岐パラメーターであり、極限粘度から求められるg'との間に次の単純な相関付けが行われている。式中のεは分子の形に応じて種々の値が提案されている。ここではε=1(すなわちg'=g)と仮定して計算を行った。
【0054】
【0055】
λ=BrNo/M …(V-6)
LCB1000C=λ×14000 …(V-7)
式(V-7)中、14000はメチレン(CH2)単位で1000個分の分子量を表す。
【0056】
共重合体(S)の極限粘度[η](135℃デカリン中)は、0.1~5dL/gが好ましく、0.5~5.0dL/gがより好ましく、0.5~4.0dL/gがさらに好ましい。
【0057】
本態様における共重合体(S)は、下記式(5)で表される要件(vi)を満たすことも好ましい。
(vi) Log{η*(ω=0.01)}/Log{η*(ω=10)}≦0.0753×{非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価}+1.42 … 式(5)
【0058】
式(5)において、η*(ω=0.01)は、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られる、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η*(Pa・sec)である。
また、η*(ω=10)は、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られる、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η*(Pa・sec)である。
ここで、η*(ω=0.01)およびη*(ω=10)は、要件(iv)における複素粘度η*
(ω=0.1)および複素粘度η*
(ω=100)と測定周波数以外は同様にして求められる。
【0059】
式(5)において、非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価は、次式により求められる。
(C)に由来する見かけのヨウ素価=(C)の質量分率×253.81/(C)の分子量
【0060】
上記式(5)において、左辺は長鎖分岐量の指標となる剪断速度依存性を表し、右辺は重合時に長鎖分岐として消費されていない非共役ポリエン(C)の含有量の指標を表す。
要件(vi)を満たす場合には、長鎖分岐の程度が高すぎないため好ましい。要件(vi)を満たさないことは、共重合した非共役ポリエン(C)のうち、長鎖分岐の形成に消費された割合が多いことを示す。
【0061】
共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)は、10,000~600,000が好ましく、30,000~500,000がより好ましく、50,000~400,000がさらに好ましい。
共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)が好ましい範囲の下限値以上であれば、より優れた物性を得やすい。好ましい範囲の上限値以下であることにより手などで任意の形状に整えることがより容易になる。
【0062】
共重合体(S)の3D-GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比[Mw/Mn]で表される分子量分布は、4~80であることがより好ましく、5~70であることがさらに好ましい。
共重合体(S)の比[Mw/Mn]が好ましい範囲にある場合、低分子量成分を適切な量で含有するため、共重合体組成物の加工性がより良好となる。
【0063】
共重合体(S)は、JIS K 6300-1:2013に記載の方法で求められるムーニー粘度「ML(1+4)100℃」が1~170であることが好ましく、2~110であることがより好ましく、4~45であることがさらに好ましい。
共重合体(S)の「ML(1+4)100℃」が好ましい下限値以上であれば形状ダレが少ない共重合体組成物となる。好ましい範囲の上限値以下であれば、共重合体組成物を手などで任意の形に成形することがより容易となる。
【0064】
本態様の共重合体組成物は、2種以上の共重合体(S)を含んでいてもよい。例えば、(イ)エチレン/炭素数3~20のα-オレフィンのモル比、(ロ)ヨウ素価、または(ハ)極限粘度[η]が異なる上記共重合体(S)同士を2種以上混合して用いることもできる。特に、(ハ)においては、低極限粘度成分と高極限粘度成分との混合が挙げられる。
【0065】
本態様において、共重合体(S)の製造方法に特に限定はないが、メタロセン化合物の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることが好ましく、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることがより好ましい。
具体的には、例えば、国際公開第2015/122495号パンフレット記載の方法で製造することができる。
【0066】
[ヒドロシリル基含有化合物(Y)]
本発明におけるヒドロシリル基含有化合物(Y)は、下記式(a)で示され、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
本態様の共重合体組成物は、2種以上のヒドロシリル基含有化合物(Y)を含んでいてもよい。
【0067】
【0068】
式(a)において、nおよびpは、0または正の数であり、mは1~20の範囲の数であり、nとmとpの総和は5~50である。R1、R2は各々独立して一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよい。Raはアラルキル基であり、RはR1,R2、水素原子、Raから選ばれる基である。ただし、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子である。
【0069】
このようなヒドロシリル基含有化合物(Y)は、そのシロキサン重合度が比較的小さく、かつ、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有する、直鎖構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0070】
ヒドロシリル基含有化合物(Y)を共重合体(S)と選択的に併用することで、得られる成型物の耐スコーチ性、成型性、破断時の伸び、圧縮成型ひずみ等の物理的性質に特に優れる成形体を得ることができ、特に、ウェザーストリップスポンジ材等への適用可能性が改善されるものである。
【0071】
式(a)において、mは、ケイ素原子結合アラルキル基を有するジオルガノシロキシ単位の数であり、1~20の範囲の数であり、2~10の範囲の数であってよく、3~6の範囲の数であることが特に好ましい。
【0072】
式(a)において、nは側鎖におけるケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキシ単位の数であり、0または1であってもよいが、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子であり、分子内に少なくとも2のケイ素原子結合水素原子を有する構造となる。
【0073】
なお、nが0または1以外の数であっても、分子鎖両末端のRの一方または両方がケイ素原子結合水素原子であることは妨げられない。さらに、nは0または1以外の数であることが好ましく、かつ、n≧mとなる数であることがより好ましい。より具体的には、nは3~10の範囲の数であってよく、3~9の範囲の数であることが特に好ましい。
【0074】
式(a)において、pは、アラルキル基またはケイ素原子結合水素原子を含まないジオルガノシロキシ単位の数であり、0であってよく、後述するnとmとpの総和の値で表されるジオルガノシロキサン単位の総重合度から、nおよびmの値を除した数の範囲であってよい。例えば、pは0~12の範囲の数でよく、0~10の範囲の数でよく、0~5の範囲の数でよく、0~2であってよく、かつ、好ましい。
【0075】
ヒドロシリル基含有化合物(Y)は、シロキサン重合度が比較的小さく、上記のnとmとpの値の総和が5~50であり、好ましくは5~20であってよく、5~15であってよい。
本発明の架橋剤であるヒドロシリル基含有化合物(Y)は、特に好適には、mが3~6の範囲の数であり、nが3~9の範囲の数であり、かつ、pが0~2の範囲の数である。
【0076】
式(a)において、RはR1,R2、水素原子、Raから選ばれる基のいずれであってよい。ただし、n=0または1の場合は、Rの両方または一方は水素原子である。
式中のR1,R2は一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよく、一部の炭素原子結合水素原子がハロゲン原子により置換されていてもよい。このようなアルキル基は、炭素数1~20のアルキル基であってよく、工業的には、メチル基であってよい。
【0077】
式(a)において、Raはアラルキル基であり、炭素数7~20のアラルキル基、好適には、炭素数7~15のアラルキル基であってよい。このようなアラルキル基として、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等を例示することができ、特に、フェニル基等のアリール基とケイ素原子間のアルキレン構造中に-CH(CH3)-で表される分岐単位を少なくとも一つ含むことが好ましい。本発明において、特に好適には、Raは-CH2-CH(CH3)-C6H5で表されるアラルキル基である。
【0078】
当該アラルキル基は、ヒドロシリル基含有化合物(Y)に架橋剤としての有用性を与える特徴的な官能基であり、特に、n、m、pが上記の範囲にある本成分中にアラルキル基がケイ素原子結合水素原子と共に存在することで、得られる成型物の物理的性質が著しく改善されるものである。
【0079】
本態様の共重合体組成物において、共重合体(S)の100質量部に対するヒドロシリル基含有化合物(Y)の配合量は、0.1~100質量部が好ましく、0.5~90質量部がより好ましく、1.0~80質量部がさらに好ましい。
【0080】
[白金系触媒]
白金系触媒は、付加反応触媒であり、共重合体(S)が有するアルケニル基と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)のヒドロシリル基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば、特に制限はなく使用することができる。白金系触媒としては、白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたものなどが挙げられる。
【0081】
具体的な白金系触媒は、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものでよく、例えば米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号公報明細書および米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物などが挙げられる。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の白金系触媒を含んでいてもよい。
【0082】
中でも白金とビニルシロキサンとの錯化合物が触媒活性が高いので好ましい。白金とビニルシロキサンとの錯化合物としては、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン白金錯体などが挙げられる。
【0083】
白金系触媒は、白金錯体を3質量%以上の濃度で含有することが好ましく、5質量%以上の濃度で含有することがより好ましく、7質量%以上の濃度で含有することがさらに好ましく、9質量%以上の濃度で含有することが特に好ましい。
白金錯体の含有量が高い白金系触媒を用いることにより、室温での架橋が促進される。
【0084】
本態様の共重合体組成物において、共重合体(S)の100質量部に対する白金系触媒の配合量は、0.001~10質量部が好ましく、0.005~9質量部がより好ましく、0.01~8質量部がさらに好ましい。
白金系触媒の配合量が下限値以上であることにより、室温での架橋が促進される。白金系触媒の配合量が上限値以下であることにより、得られる成形体の物性が良好となりやすい。白金系触媒の配合量が多すぎると、任意の形状に成形する前に硬化してしまう場合がある。
【0085】
なお、市販の白金系触媒の白金錯体の含有量は、ロットなどによるばらつきもあるので、具体的な配合量は、後述する共重合体組成物の差[S'max-S'min]及びtc50が適切な範囲となるように調整することが好ましい。
【0086】
[反応抑制剤]
本態様の共重合体組成物は反応抑制剤を含まないことが好ましい。反応抑制剤は、共重合体(S)が有するアルケニル基と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)のヒドロシリル基との架橋反応(アルケンへのヒドロシリル化付加反応)を抑制する機能を有する化合物である。反応抑制剤を配合する場合は、室温での架橋を妨げないよう、共重合体(S)の100質量部に対して1.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。
【0087】
反応抑制剤の具体例としては、例えば、ベンゾトリアゾール;1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、1-エチニルシクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレンアルコール類;、アクリロニトリル;N,N-ジアリルアセトアミド、N,N-ジアリルベンズアミド、N,N,N’,N’-テトラアリル-o-フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’-テトラアリル-m-フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’-テトラアリル-p-フタル酸ジアミドなどアミド化合物);その他、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0088】
[酸化防止剤]
本態様の共重合体組成物は酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
本態様の共重合体組成物は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含むことにより、さらに、吸水率が高く、圧縮永久歪みが優れる架橋成形体を得ることができる。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0089】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,4,6-トリス(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシベンジル)メシチレン〔((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO-330、融点:243~245℃)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO-20、融点:220~222℃)、4,4'-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール) ((株ADEKA製、商品名:アデカスタブAO-40、融点:210~214℃)、N,N’-ビス{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン(BASF・ジャパン(株)製、商品名:Irganox MD1024、融点:224~229℃)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン(株)製、商品名:Irganox1010、融点:110~130℃)、ジブチルヒドロキシトルエン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン(大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックNS―7、融点:200℃以上)などが挙げられる。
【0090】
本態様の共重合体組成物が酸化防止剤を含む場合は、共重合体(S)の100質量部に対する酸化防止剤の配合量は、0.001~10質量部が好ましく、0.005~10質量部がより好ましく、0.1~10質量部がさらに好ましく、0.5~8質量部が特に好ましい。
【0091】
[着色剤]
本態様の共重合体組成物は、意匠性を高める等の目的で、通常、ゴムに着色剤と使用されている顔料、および染料を使用することも好ましい。
顔料は、有機顔料、無機顔料のいずれも使用することができる。また、通常ゴムの補強剤として使用される無機顔料を配合してもよい。
【0092】
有機顔料としては、例えば、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなどの染料キレート、例えば、ニトロ顔料、例えば、ニトロソ顔料などが挙げられる。
【0093】
有機顔料の具体例としては、例えば、ピグメント・イエロー1(カラーインデックス(以下、C.I.という)11680)、ピグメント・イエロー3(C.I.11710)、ピグメント・イエロー14(C.I.21095)、ピグメント・イエロー17(C.I.21105)、ピグメント・イエロー42(C.I.77492)、ピグメント・イエロー74(C.I.11741)、ピグメント・イエロー83(C.I.21108)、ピグメント・イエロー93(C.I.20710)、ピグメント・イエロー98(C.I.11727)、ピグメント・イエロー109(C.I.56284)、ピグメント・イエロー110(C.I.56280)、ピグメント・イエロー128(C.I.20037)、ピグメント・イエロー138(C.I.56300)、ピグメント・イエロー139(C.I.56298)、ピグメント・イエロー147(C.I.6064
5)、ピグメント・イエロー154(C.I.11781)、ピグメント・イエロー155(C.I.-)、ピグメント・イエロー180(C.I.21290)、ピグメント・イエロー185(C.I.56290)、ピグメント・オレンジ5(C.I.12075)、ピグメント・オレンジ13(C.I.21110)、ピグメント・オレンジ16(C.I.21160)、ピグメント・オレンジ34(C.I.21160)、ピグメント・オレンジ43(C.I.71105)、ピグメント・オレンジ61(C.I.11265)、ピグメント・オレンジ71(C.I.56120)、ピグメント・レッド5
(C.I.12490)、ピグメント・レッド8(C.I.12335)、ピグメント・レッド17(C.I.12390)、ピグメント・レッド22(C.I.12315)、ピグメント・レッド48:2(C.I.15865:2)、ピグメント・レッド112
(C.I.12370)、ピグメント・レッド122(C.I.73915)、ピグメント・レッド177(C.I.65300)、ピグメント・レッド202(C.I.73907)、ピグメント・レッド254(C.I.56110)、ピグメント・バイオレット19(C.I.46500)、ピグメント・バイオレット23(C.I.51319)、ピグメント・ブルー15:1(C.I.74160)、ピグメント・ブルー15:3(C.I.74160)、ピグメント・ブルー15:4(C.I.74160)、ピグメント・ブルー60(C.I.69800)、ピグメントグリーン7(C.I.74260)、ピグメントグリーン36(C.I.74265)などが挙げられる。
【0094】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄イエロー、酸化鉄ブラウン、酸化クロム、紺青、群青、モリブデン赤、酸化鉄ブラック、黄鉛、複合酸化物顔料、カーボンブラックに加えて、シリカ、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー等の通常無機補強剤と呼称される顔料が挙げられる。
【0095】
カーボンブラックは、黒色の着色剤としても補強剤としても機能する。
カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラックや、これらをシランカップリング剤等で表面処理したのものなどが挙げられる。
【0096】
カーボンブラックの具体例としては、「カーボンブラック#990」、「#970」、「#960」、「#950」、「#650」、「#750」、「MA600」、「#4000」、「MA100」、「#40」、「#32」、「#30」、「MA230」、「#3230」、「♯3350」(以上、三菱化学社製)、「MONARCH880」、「-1000」、「-1300」、「-1400」、「-460」、「-480」、「VULCAN-P」、「-XC-72」、「-9A32」、「ELFTEX-8」(以上、キャボット社製)、「ColorBlackFW1」、「-2」、「-200」、「-18」、「-S160」、「-S170」、「SpecialBlack-5」、「-6」、「-4」、「-4A」、「Printex-90」、「-80」、「-60」、「-40」、「-30」、「-3」、「-140U」、「-140V」、「-150T」、「-P」、「-L6」、「-L」、「-U」、「-V」(以上、デグッサ社製)「Raven-5000ULTRAIII」、「-7000」、「-5750」、「-5250」、「-890H」、「-790URTRA」、「-C ULTRA」、「Conductex-SC ULTRA」、「-975ULTRA」(以上、コロンビアン製)、旭#55G、旭#60UG(以上、旭カーボン社製)、シースト(V、SO、116、3、6、9、SP、TA等)のカーボンブラック(東海カーボン社製)、などが挙げられる。
【0097】
カーボンブラック以外の無機顔料の具体例としては、ピグメント・イエロー42(C.I.77492)、ピグメント・イエロー74(C.I.11741)、ピグメント・イエロー109(C.I.56284)、ピグメント・イエロー110(C.I.56280)、ピグメント・イエロー128(C.I.20037)、ピグメント・イエロー155(C.I.-)、ピグメント・イエロー180(C.I.21290)、ピグメント・レッド122(C.I.73915)、ピグメント・レッド202(C.I.73907)、ピグメント・バイオレット19(C.I.46500)、ピグメント・ブルー15:1(C.I.74160)、ピグメント・ブルー15:3(C.I.74160)、ピグメント・ブルー15:4(C.I.74160)、ピグメント・ブルー60(C.I.69800)、ピグメント・ブルー27(C.I.77510)、ピグメント・ブルー29(C.I.77007)、ピグメント・ホワイト6(C.I.77891)、ピグメント・ブラック7(C.I.77266)などが挙げられる。
【0098】
着色剤の中でも、イソインドリノン系顔料、キナクリドン系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、カーボンブラックは、遮光性に優れる点で好ましい。
【0099】
[軟化剤]
本態様の共重合体組成物は軟化剤を含んでいてもよい。
軟化剤は、ゴム組成物に配合される公知の軟化剤である。具体的には、パラフィン系プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられ、これらのうちでは、石油系軟化剤が好ましく、パラフィン系プロセスオイルが特に好ましい。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の軟化剤を含んでいてもよい。
【0100】
本態様の共重合体組成物が軟化剤を含む場合は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは2~100質量部、より好ましくは10~100質量部の範囲で用いられる。軟化剤の配合量が前記範囲内にあれば、タックが少なく、加工性、耐熱老化性、機械的性質等に優れた共重合体組成物を得ることができる。
【0101】
[老化防止剤]
本態様の共重合体組成物は老化防止剤を含んでいてもよい。
老化防止剤としては、一般的なゴム組成物に用いられる公知の老化防止剤を用いることができる。具体的には、フェノール系老化防止剤、およびアミン系老化防止剤などが挙げられる。
老化防止剤は、単独で用いてもよいが、高温下で、長時間の耐熱老化性を維持する点で、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0102】
本態様の共重合体組成物がフェノール系老化防止剤を含む場合は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.5~4質量部、特に好ましくは0.5~3質量部の範囲で用いることができる。前記範囲でフェノール系老化防止剤を用いると、耐熱老化性の向上効果が大きい。
【0103】
本態様の共重合体組成物がアミン系老化防止剤を含む場合は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.1~4質量部、特に好ましくは0.2~3質量部の範囲で用いられる。前記範囲でアミン系老化防止剤を用いると、耐熱老化性の向上効果が大きい。
【0104】
[加工助剤]
本態様の共重合体組成物は加工助剤を含んでいてもよい。
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。中でもステアリン酸が好ましい。
【0105】
加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
本態様の共重合体組成物が加工助剤を含む場合は、共重合体(S)100質量部に対して、1~3質量部配合することが好ましい。加工助剤の配合量が前記範囲内であるとブルームによる架橋成形体表面の汚染が少ない。
【0106】
[活性剤]
本態様の共重合体組成物は活性剤を含んでいてもよい。
活性剤としては、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0107】
活性剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
本態様の共重合体組成物が活性剤を含む場合は、共重合体(S)100質量部に対して、0.2~10質量部配合することが好ましく、0.3~5質量部配合することがより好ましい。活性剤の配合量が前記範囲内であると良好な物性が得られる。
【0108】
[吸湿剤]
本態様の共重合体組成物は吸湿剤を含んでいてもよい。
吸湿剤としては、例えば、酸化カルシウム、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、ホワイトカーボンなどが挙げられる。これらの中では酸化カルシウムが好ましい。吸湿剤の配合量は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.5~15質量部、より好ましくは1.0~12質量部、さらに好ましくは1.0~10質量部である。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の吸湿剤を含んでいてもよい。
【0109】
[有機過酸化物]
本態様の共重合体組成物は有機過酸化物を含んでいてもよい。
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシドが挙げられる。
【0110】
本態様の共重合体組成物が有機過酸化物を含む場合、共重合体(S)の100質量部に対する有機過酸化物の配合量は、0.2~6質量部が好ましく、0.2~4.8質量部がより好ましく、0.2~4質量部がさらに好ましい。
また、共重合体(S)の100質量部に対するヒドロシリル基含有化合物(Y)と有機過酸化物の合計配合量は、0.01~0.15当量が好ましく、0.01~0.1当量がより好ましく、0.02~0.1がさらに好ましい。
また、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と有機過酸化物(Z)の配合量の当量比[Y/Z]は、23/77~99/1が好ましく、47/53~99/1がより好ましい。
【0111】
[架橋助剤]
本態様の共重合体組成物は架橋助剤を含んでいてもよい。
架橋助剤としては、具体的には、イオウ;p- キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物;ポリエチレングリコールジメタクリレート等のメタクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物;マレイミド系化合物;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。このような架橋助剤は、使用するヒドロシリル基含有化合物(Y)1モルに対して好ましくは0.5~2モル、より好ましくは約等モルの量で用いられる。
【0112】
[その他の配合剤等]
本態様の共重合体組成物は、上記成分に加え、本態様の目的が損なわれない限り、それ自体公知のゴム配合剤、例えば、α,β-不飽和有機酸の金属塩、架橋促進剤、可塑剤、粘着付与剤等を適宜配合することができる。
【0113】
[その他の樹脂]
本態様の共重合体組成物は、本態様の効果を損なわない範囲で、共重合体(S)以外の樹脂ないしゴムを含んでいてもよい。共重合体(S)以外の樹脂ないしゴムは、共重合体(S)の100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、配合しないことが好ましい。
【0114】
共重合体(S)以外の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの汎用樹脂が挙げられる。
ゴムとしては、シリコーンゴム、エチレン・プロピレンランダム共重合体ゴム(EPR)、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが挙げられる。
【0115】
[共重合体組成物の物性]
本態様の共重合体組成物は、架橋温度を25℃、架橋時間を60分とした際に測定される最大トルク値S'maxと最小トルク値S'minとの差[S'max-S'min]が3dNm以上であることが好ましい。
差[S'max-S'min]は、3~20dNmであることが好ましく、3~15dNmであることがより好ましく、3~10dNmであることがさらに好ましい。
【0116】
差[S'max-S'min]が好ましい下限値以上であることにより、室温で、充分に架橋させることができる。差[S'max-S'min]が好ましい上限値以下であることにより、造型時に形状を保持しやすい。
差[S'max-S'min]は、ヒドロシリル基含有化合物(Y)の使用量により調整できる。
【0117】
本態様の共重合体組成物は、架橋温度を25℃、架橋時間を60分とした際に、前記最小トルク値S'minから、前記差[S'max-S'min]の50%に相当するトルク値と前記最小トルク値S'minとの和に相当するトルク値に到達するまでの時間であるtc50が3分以上であることが好ましい。
上記条件におけるtc50は、20~60分であることが好ましく、25~50分であることがより好ましく、30~40分であることがさらに好ましい。
【0118】
tc50が好ましい下限値以上であることにより、造型のための時間を確保しやすい。
また、tc50が好ましい上限値以下であることにより、造型後に充分に架橋するまでの時間を短縮できる。
tc50は、白金系触媒に含まれる白金錯体の含有量及び共重合体組成物における白金系触媒の使用量により調整できる。
【0119】
[共重合体組成物の製造]
本態様の共重合体組成物を得るには、公知の一般的なゴム組成物と同様の方法を採用し得る。具体的には、以下の通りである。
バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー類を用いて、例えば、共重合体(S)ならびに他の成分を80~170℃の温度で3~10分間混練(第一混練)した後、ヒドロシリル基含有化合物(Y)、白金系触媒、必要に応じて、反応抑制剤、補強剤、軟化剤等の他の配合剤や他のゴムや樹脂などを加えて、オープンロールなどのロール類あるいはニーダーを用いて、ロール温度50~80℃で5~30分間混練(第二混練)した後、分出しすることにより調製することができる。このようにして通常リボン状またはシート状の共重合体組成物が得られる。
【0120】
本態様の共重合体組成物を得るには、共重合体(S)と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、カーボンブラックと、必要に応じてその他の成分を混練(第一混練)した後、得られた混練物に、白金系触媒と、必要に応じてその他の成分を加えて混練(第二混練)することも好ましい。
有機過酸化物を加える場合は、第二混練時に加えてもよい。
【0121】
具体的には、共重合体(S)と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、必要に応じてその他の成分を、80~150℃で1~10分間混練、好ましくは110~150℃の温度で3~8分間混練(第一混練)した後、得られた混練物に、白金系触媒と、必要に応じてその他の成分を加え、10~100℃で1~10分間混練、好ましくは20~80℃の温度で3~7分間混練(第二混練)する方法が採用できる。
【0122】
カーボンブラック等の着色剤は、第一混練時と第二混練時のいずれで加えてもよいが、第一混練時に加えることが好ましい。カーボンブラック以外の補強剤、軟化剤などを加える場合も同様である。
その他のゴム配合剤、例えば、α,β-不飽和有機酸の金属塩、吸湿剤、老化防止剤、充填剤、加工助剤、活性剤、可塑剤、粘着付与剤等の配合剤を加える場合は、第一混練時に加えることが好ましく、架橋助剤、架橋促進剤および発泡剤は第二混練時に加えることが好ましい。
【0123】
第一混練に用いる混練装置は、高温で処理できる装置であれば、種々公知の混練装置を使用し得る。具体的には、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などが挙げられる。
第二混練に用いる混練装置は、温度制御が容易なロール、ニーダー、押出機が挙げられる。
【実施例0124】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0125】
<測定方法・評価方法>
各例の共重合体、未架橋の共重合体組成物(後述の第二段階の混練を終了した直後の共重合体組成物、以下同じ)および架橋成形体の物性の測定や評価は以下の方法で行った。
【0126】
[共重合体の組成]
共重合体の、各構成単位の質量分率(質量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
【0127】
[共重合体のヨウ素価]
共重合体のヨウ素価は、滴定法により求めた。具体的には、以下の方法で測定した。
共重合体0.5gを四塩化炭素60mlに溶解し、少量のウィス試薬および20%ヨウ化カリウム溶液を加え、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で適定した。終点付近では澱粉指示薬を加え、よく攪拌しながら薄紫色が消えるところまで適定し、試料100gに対する消費されるハロゲンの量としてヨウ素のg数を算出した。
【0128】
[3D-GPCの条件]
共重合体の重量平均分子量(Mw)と1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)は、3D-GPCを用いて構造解析法により求めた値である。具体的には、3D-高温GPC装置PL-GPC220型(Polymer Laboratories社製)を用い、絶対分子量分布を求め、同時に粘度計で極限粘度を求めた。主な測定条件は以下の通りである。
【0129】
検出器:示差屈折率計/GPC装置内蔵
2角度光散乱光度計PD2040型(Precison Detectors社製)
ブリッジ型粘度計PL-BV400型
(Polymer Laboratories社製)
【0130】
カラム:TSKgel GMHHR-H(S)HT×2本+TSKgel
GMHHR-M(S)×1本
(いずれも1本当たり内径7.8mmφ×長さ300mm)
温度:140℃
移動相:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
注入量:0.5mL
試料濃度:ca 1.0mg/mL
試料濾過:孔径1.0μm焼結フィルターにて濾過
【0131】
絶対分子量の決定に必要なdn/dc値は標準ポリスチレン(分子量190000)のdn/dc値0.053と単位注入質量あたりの示差屈折率計の応答強度より、試料ごとに決定した。
1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)は、上述の方法により算出した。
【0132】
[共重合体の極限粘度]
共重合体の極限粘度[η]は、(株)離合社製全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
【0133】
[共重合体のP値]
レオメーターとして、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%の条件で、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)、および周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(いずれも単位はPa・sec)を測定した。また、得られた結果より、η*
(ω=0.1)とη*
(ω=100)との複素粘度の比(η*比)である共重合体のP値(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))を算出した。
【0134】
[共重合体の長鎖分岐数]
1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)は、上述の方法により求めた。
【0135】
[共重合体のムーニー粘度]
共重合体のムーニー粘度ML(1+4)100℃は、ムーニー粘度計「SMV-202」((株)島津製作所製)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて100℃で測定した。
【0136】
[共重合体組成物の架橋挙動]
各例における未架橋の共重合体組成物を用いて、JIS K6300-2に準じて、25℃で放置した際に測定される架橋曲線より、以下の値を求めた。測定には、RPA2000(アルファテクノロジーズ製)を用いた。
【0137】
「S'max」(dNm):25℃で60分間放置した際に測定される最大トルク値S'maxである。
「S'min」(dNm):25℃で60分間放置する前に測定される最小トルク値S'minである。
「S'max-S'min」(dNm):最大トルク値S'maxと最小トルク値S'minの差である。
「tcx1」(分):最小トルク値S’minから、「S'max-S'min」のx1%に相当するトルク値と、最小トルク値S'minとの和に相当するトルク値に到達するまでの時間。例えば「tc10」は、最小トルク値S’minから、「S'max-S'min」の10%に相当するトルク値と、最小トルク値S'minとの和に相当するトルク値に到達するまでの時間である。
「ts1」(分):最小トルク値S’minからトルク値が1dNm上昇するまでの時間である。
「MCR」(dNm/分):架橋曲線におけるトルクの最大変化率である。
【0138】
[有効網目鎖密度]
各例における未架橋の共重合体組成物を、25℃で60分間プレス成形し、厚さ2mmのシート状の架橋成形体を得た。得られた各例のシート状の架橋成形体を20mm×20mmのサイズに切り取った後、JIS K 6258(1993)に従い、トルエンに37℃×72時間浸漬して膨潤させ、Flory-Rehnerの式(B)により、有効網目鎖密度(架橋密度)を算出した。
【0139】
【0140】
式(B)中、ν(個/cm3)は有効網目鎖密度(架橋密度)であり、純ゴム(架橋成形体)1cm3中の有効網目鎖の数であり、VRは膨潤した架橋成形体中の純ゴムの容積分率であり、V0は溶剤の分子容であり、μはゴム(架橋成形体)-溶剤間の相互作用定数=0.49であり、Aはアボガドロ数である。
【0141】
[硬さ試験(デュロ-A硬度)]
各例における未架橋の共重合体組成物を、25℃で60分間プレス成形し、厚さ2mmのシート状の架橋成形体を得た。得られた各例の架橋成形体6枚の平らな部分を積みかねて、厚さ12mmの試験片とし、JIS K 6253-3に従い、Duro-A硬度(HA)を測定した。なお、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0142】
[引張試験]
各例における未架橋の共重合体組成物を、25℃で60分間プレス成形し、厚さ2mmのシート状の架橋成形体を得た。得られた各例の架橋成形体を打抜いてJIS K 6251(1993年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いて同JIS K 6251第3項に規定される方法に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、引張破断点応力TB(MPa)および引張破断点伸びEB(%)を測定した。
【0143】
[圧縮永久歪み(CS)]
各例における未架橋の共重合体組成物を、円柱状の金型がセットされたプレス成形機を用いて25℃で60分間架橋して、JIS K 6262に従い、直径29mm、高さ(厚さ)12.5mmの架橋成形体を得、この架橋成形体を試験片とした。荷重をかける前の試験片高さ(12.5mm)に対して25%圧縮し、スペーサーごとギアオーブン中にセットして熱処理した。熱処理は、70℃197時間と150℃72時間の二つの処理条件で行った。次いで試験片を取出し、室温で30分間放置後、試験片の高さを測定し下記の計算式で圧縮永久歪み(%)を算出した。
圧縮永久歪み(%)={(t0-t1)/(t0-t2)}×100
t0:試験片の試験前の高さ。
t1:試験片を前記条件で熱処理した後、室温で30分間放置した後の高さ。
t2:試験片の測定金型に取り付けた状態での高さ。
【0144】
[手での造形性]
室温(23℃)雰囲気下のステンレス製作業台の上で、球状(直径2cm)、サイコロ状(2cm角)、平板状(2cm×2cm×2mm厚)の各形状を手で造形して、以下の基準で造形性を評価した。
【0145】
(評価基準)
容易:造型時に共重合体組成物が手に付着せず、その形状を造型して維持することが容易である。
困難:造型時に共重合体組成物が手に付着するなどして各形状を造型することが困難。または造型してもその形状を維持できない。
【0146】
また、各例における未架橋の共重合体組成物が造形できなくなるまでの時間を造形可能時間とした。造形可能時間の測定にあたり、架橋が進行して固まり、任意の形状に成形できなくなったときを、造型可能な状態が終了し、造形できなくなったときとした。
【0147】
<共重合体の製造>
各例で用いた共重合体は以下の製造例の方法で製造した。各製造例で得られた共重合体の要件(i)~要件(v)に関する数値を表1に示す。
容積300リットルの重合反応器に、ライン1より脱水精製したヘキサン溶媒を25.4L/hr、ライン2よりトリイソブチルアルミニウム(TiBA)を20mmol/hr、(C6H5)3CB(C6F5)4を0.075mmol/hr、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.015mmol/hrで連続的に供給した。同時に前記重合反応器内に、エチレンを4.7kg/hr、プロピレンを4.3kg/hr、水素を220リットル/hr、VNBを240g/hrで、各々別ラインより連続供給し、重合温度110℃、全圧1.7MPaG、滞留時間40分の条件下で共重合を行なった。
【0148】
【0149】
<ヒドロシリル基含有化合物の調製>
[架橋剤(Y-1)]
各例で用いた架橋剤(Y-1)は以下のようにして調製した。
反応器に下記式(a-1-1)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン536gを仕込み、窒素流通下で攪拌しながら40℃まで加温した。
白金-1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン錯体のトルエン溶液(Pt濃度0.3wt%)を0.4g添加し、α-メチルスチレン265gを反応温度40~90℃に保つように滴下した。
【0150】
【0151】
滴下終了後に85℃で攪拌を2時間継続した後、反応液を0.5g採取し、アルカリ分解ガス発生法(残存したSi-H基をKOHのエタノール/水溶液によって分解し、発生した水素ガスの体積からSi-H基の反応率を計算する)によりSi-H基の反応率が約36%であることを確認した。次に反応液を減圧下で135℃に加熱して2時間低沸分を溜去し、ヒドロシリル基含有化合物である架橋剤(Y-1)を673g得た。
【0152】
得られた架橋剤(Y-1)は、29Si-NMRにより、下記式(a-1)で示される化合物であることを確認した。
得られた架橋剤(Y-1)について、25℃においてウベローデ型粘度管を使用してJIS-Z-8803に沿って粘度を測定したところ、26mm2/sであった。
【0153】
【0154】
<触媒>
各例で用いた触媒は下記のとおりである。
触媒1:エヌ・イーケムキャット製、3%Pt-VTS-IPA溶液、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン白金錯体を3質量%以上、約10質量%含有する白金系触媒。
触媒2:ダウ・東レ製、SRX212Catalyst、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン白金錯体を1質量%以上3質量%未満含有する白金系触媒。
【0155】
<その他の成分>
各例で用いたその他の成分は下記のとおりである。
酸化チタン:石原産業(株)製、R-820。
青色複合酸化物系顔料:大日精化(株)製、ダイピロキサイドブルー。
赤色顔料:山陽色素(株)製、PIGMOTEX RED 102 E-T。
黄色顔料:山陽色素(株)製、PIGMOTEX YELLOW 83 E-T。
焼成カオリン:BASFジャパン(株)製、TRANSLINK-37。
炭酸カルシウム:白石工業(株)製、白艶華CC。
軟化剤:出光興産(株)製、ダイアナプロセスPW-32、パラフィン系プロセスオイル。
【0156】
<実施例1>
各例の共重合体組成物は、以下のように調製した。
第一段階として、BB-4型ミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、表2の原料1に示す原料を混練した。混練条件は、ローター回転数が50rpm、フローティングウェイト圧力が3kg/cm2、混練時間を5分間で行い、排出温度を130℃として配合物1を得た。
【0157】
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物1に、表2の原料2に示す原料を、共重合体(S-1)100質量部に対して、表2に示す配合となるように混練した。原料2の混練は、具体的には、以下に示すように、予め配合物2と配合物3を調製し、得られた配合物2と配合物3とを混練することにより行った。
【0158】
配合物2は、配合物1を、8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度25℃、後ロールの表面温度25℃、前ロールの回転数18rpm、後ロールの回転数15rpm)に巻き付けて、これに、表2の原料2に示す架橋剤(Y-1)を、配合物100質量部に対して、13.0質量部加え、10分間混練することにより調製した。
【0159】
配合物3は、配合物1を、8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度25℃、後ロールの表面温度25℃、前ロールの回転数18rpm、後ロールの回転数15rpm)に巻き付けて、これに、表2の原料2に示す触媒1を、配合物100質量部に対して、1.6質量部加え、10分間混練することにより調製した。
【0160】
次いで配合物2と配合物3とを1:1で8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度25℃、後ロールの表面温度25℃、前ロールの回転数18rpm、後ロールの回転数15rpm)、ロール間隙1mmで丸目通しを10回行うことにより混練し、実施例1の共重合体組成物を得た。
【0161】
<実施例2>
実施例1で用いた配合物2と配合物3とを1:2で混練した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の共重合体組成物を得た。
【0162】
<実施例3>
実施例1で用いた配合物2と配合物3とを1:3で混練した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の共重合体組成物を得た。
【0163】
<比較例1>
第一段階として、実施例1と同様にして配合物1を得た。次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物1に、表2の原料2に示す原料を、共重合体(S-1)100質量部に対して、表2に示す配合となるように混練した。原料2の混練は、具体的には、以下に示すように、予め配合物2と配合物4を調製し、得られた配合物2と配合物4とを混練することにより行った。
【0164】
配合物2は、実施例1と同様にして調製した。配合物4は、配合物1を、8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度25℃、後ロールの表面温度25℃、前ロールの回転数18rpm、後ロールの回転数15rpm)に巻き付けて、これに、表2の原料2に示す触媒2を、配合物100質量部に対して、1.6質量部加え、10分間混練することにより調製した。
【0165】
次いで配合物2と配合物4とを1:1で8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度25℃、後ロールの表面温度25℃、前ロールの回転数18rpm、後ロールの回転数15rpm)、ロール間隙1mmで丸目通しを10回行うことにより混練し、比較例1の共重合体組成物を得た。
【0166】
<比較例2>
第一段階として、実施例1と同様にして配合物1を得た。次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物1に、表2の原料2に示す原料を、共重合体(S-1)100質量部に対して、表2に示す配合となるように混練した。原料2の混練は、具体的には、以下に示すように、予め配合物2と配合物4を調製し、得られた配合物2と配合物5とを混練することにより行った。
【0167】
配合物2は、実施例1と同様にして調製した。配合物5は、配合物1を、8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度25℃、後ロールの表面温度25℃、前ロールの回転数18rpm、後ロールの回転数15rpm)に巻き付けて、これに、表2の原料2に示す触媒2を、配合物100質量部に対して、2.4質量部加え、10分間混練することにより調製した。
【0168】
次いで配合物2と配合物4とを1:1で8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度25℃、後ロールの表面温度25℃、前ロールの回転数18rpm、後ロールの回転数15rpm)、ロール間隙1mmで丸目通しを10回行うことにより混練し、比較例2の共重合体組成物を得た。
【0169】
<評価>
各例の未架橋の共重合体組成物、架橋成形体の測定値と評価結果を表2に示す。表2に示すように、触媒1を共重合体(S)100質量部に対して0.80~1.20使用した実施例1~3では、差[S'max-S'min]が3dNm以上であり、充分に硬化した架橋成形体が得られた。これに対して、触媒2を共重合体(S)100質量部に対して0.80~1.20使用した比較例1、2では、差[S'max-S'min]は非常に小さく、架橋成形体が得られなかった。
【0170】
また、実施例1~3では、tc50が3分以上であり、架橋前に、造型可能な時間を十分確保できるものであった。一方、比較例1、2では、tc50は3分以上であったものの、架橋の進行は緩慢で、殆ど架橋していない状態であった。
【0171】
その結果、手での造型性は、総ての実施例、比較例で容易であったものの、比較例1、2では、架橋が進行せず、いつまでも柔らかい造型可能な状態のままであった。実施例1~3では、造型可能時間が20~30分であり、造型するための充分な時間が確保できると共に、造型終了後は適度なタイミングで、架橋し、硬化することが確認できた。
【0172】
架橋剤(Y-1)と触媒1の配合量を変えた実施例1~3を比較すると、触媒の使用量が多いほど、tc50が短くなり、架橋の進行が早まることが確認できた。しかし、架橋剤(Y-1)の使用量が少ないほど、差[S'max-S'min]が小さくなり、有効網目鎖密度が低下し、デュローA硬度とTBが低下し、EBが大きくなり、CSが大きくなる傾向が見られた。
このことから、架橋の進行が早すぎると、最終的な架橋が不充分となり、硬度不足となる懸念があることがわかった。したがって、触媒の使用量は、tc50が20分以上となる量に留めることが好ましいことがわかった。
【0173】