(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032029
(43)【公開日】2024-03-11
(54)【発明の名称】カップ用蓋および飲食用蓋つきカップ
(51)【国際特許分類】
B65D 43/06 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
B65D43/06 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135460
(22)【出願日】2022-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】390001339
【氏名又は名称】光洋産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120581
【弁理士】
【氏名又は名称】市原 政喜
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良訓
(72)【発明者】
【氏名】名和 充緒
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084DA01
3E084DB13
3E084DB18
3E084FA09
3E084FC07
3E084GA08
3E084GB12
3E084HA03
3E084HA10
3E084HD01
(57)【要約】
【課題】 カップの上部内壁と蓋嵌合部との接触部分から漏れた液体を一時的に貯めて、外部への液漏れを減少させること。
【解決手段】 蓋102の周縁204は上部が頂壁203の一部となっており、緩衝空間402および内側内壁403を備え、嵌合時内部空間にカップの周縁301の円環部が嵌合するようになっている。蓋102の周縁204の内側内面403と、カップ本体103の内壁302との密着部の、上方の外部との間に緩衝空間402を設けることにより、漏出圧力によりカップ本体103の内壁302との密着部から漏洩した内容物を一時的に収容することが可能となり、これ以上外部に漏洩することを防止することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食用カップの上部を被覆するカップ用蓋であって、
前記飲食用カップの上部開口部の周縁部と嵌合する周縁凹部を備え、
前記周縁凹部は、前記飲食用カップの上方内面に密着する内壁部と、
前記内壁部の、前記飲食用カップの上方内面との密着部の上方に形成される緩衝空間と
を備えることを特徴とするカップ用蓋。
【請求項2】
前記周縁凹部の内壁の緩衝用空間の断面は、矩形であることを特徴とする請求項1に記載のカップ用蓋。
【請求項3】
前記周縁凹部の内壁の緩衝用空間の断面は、円弧であることを特徴とする請求項1に記載のカップ用蓋。
【請求項4】
前記周縁凹部は、環状であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ用蓋。
【請求項5】
前記周縁凹部と嵌合する前記飲食用カップの上部開口部の断面は、円環状または楕円環状であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ用蓋。
【請求項6】
前記緩衝空間の断面の幅は、1mm~5mmであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ用蓋。
【請求項7】
前記飲食用カップの口径は、30mm~300mmであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ用蓋。
【請求項8】
蓋つき飲食用カップであって、
上部開口部の周縁部に周縁凸部を含む本体と、
前記本体の上部を被覆するカップ用蓋であって、
前記飲食用カップの上部開口部の周縁部と嵌合する、前記飲食用カップの上方内面に密着する内壁部を有する含む周縁凹部を含むカップ用蓋と
を備え、前記周縁凹部は、前記内壁部の、前記飲食用カップの上方内面との密着部の上方に形成される緩衝空間を有することを特徴とする蓋つき飲食用カップ。
【請求項9】
前記開口部と前期周縁凹部との間にラップシートを配置することを特徴とする請求項8に記載の飲食用カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ用蓋および飲食用蓋つきカップに関し、より具体的には、液体などの流動性のある飲食物を喫食、保存または運搬のために封入することができるカップ用蓋および飲食用蓋つきカップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スープやコーヒーなどの流動性のある飲食物を喫食したり、運搬したりするために飲食物を充填したカップなどの容器の上部に蓋を被せることにより、運搬時や保管時に内容物がこぼれないようにされている。ここで、例えば紙のカップにコーヒーを入れている場合、通常はカップと樹脂製の蓋によりある程度密閉性が確保できるものの、場合によってはカップを多少動かすだけでこぼれ、あるいはある程度密封ができていたとしてもカップを激しくゆすったり、倒したりした場合内容物の漏出により周りの物品を汚染することがあるため、様々な密封方法が提案されている。例えば、内容物の液漏れを抑制できる成形蓋、特に、成型蓋と容器口縁部を嵌合した時の密着部において、貼り合せ段差の空隙から内容物が漏れることを抑制できる成形蓋及び紙カップの提供を目的とし、紙製容器の開口部と嵌合するための成形蓋嵌合部を備えた成形蓋Aであって、前記成形蓋嵌合部の天部内側8aに緩衝材料8を配置し、前記緩衝材料の硬度を8以上10以下、前記緩衝剤の厚みを1.0mm以上2.5mm以下とする紙カップが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、紙カップを製造上の加工精度や使用者の扱い方に依らず確実に密閉することができる密閉部材を提供することを目的とし、紙カップ10の上端カール部12を上下方向から挟み、互いに係止できるキャップ2と本体3からなり、本体は、紙カップの側面11の外側に沿う側壁部32と、側壁部の上端で上端カール部を載置する段部33と、キャップと係止するための本体係止部31と、を有し、キャップは、紙カップの開口部13を覆う天面部21と、天面部から紙カップの側面の内側近傍に周壁状に下垂するインナーリング24と、本体と係止するためのキャップ係止部22と、を有し、インナーリングは、外周側の面が紙カップの側面よりも大きな角度で傾斜した斜面25である密閉部材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-077475号公報
【特許文献2】特開2020-147307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の紙カップまたは密閉部材では、一定の液漏れ性能を有していたり、簡易に密封したりすることができるものの、蓋とカップのほかに緩衝部材やインナーリングなど、追加部材を設ける必要があることから、構造が複雑になり、また部材が増加して、コストを上昇させるという問題がある。
【0006】
本発明は上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、蓋のカップ上部との嵌合部分に緩衝空間を設けることによりカップの上部内壁と蓋嵌合部との接触部分から漏れた液体を一時的に貯めて、外部への液漏れを減少させる密閉機構を備えたカップ用蓋および飲食用蓋つきカップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、飲食用カップの上部を被覆するカップ用蓋であって、飲食用カップの上部開口部の周縁部と嵌合する周縁凹部を備え、周縁凹部は、飲食用カップの上方内面に密着する内壁部と、内壁部の、飲食用カップの上方内面との密着部の上方に形成される緩衝空間とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカップ用蓋において、周縁凹部の内壁の緩衝用空間の断面は、矩形であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のカップ用蓋において、周縁凹部の内壁の緩衝用空間の断面は、円弧であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ用蓋において、周縁凹部は、環状であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ用蓋において、周縁凹部と嵌合する飲食用カップの上部開口部の断面は、円環状または楕円環状であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ用蓋において、緩衝空間の断面の幅は、1mm~5mmであることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のカップ用蓋において、飲食用カップの口径は、30mm~300mmであることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、蓋つき飲食用カップであって、上部開口部の周縁部に周縁凸部を含む本体と、本体の上部を被覆するであって、飲食用カップの上部開口部の周縁部と嵌合する、飲食用カップの上方内面に密着する内壁部を有する含む周縁凹部を含むカップ用蓋とを備え、周縁凹部は、内壁部の、飲食用カップの上方内面との密着部の上方に形成される緩衝空間を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、飲食用カップの上部開口部の周縁部と嵌合する周縁凹部を備え、周縁凹部は、飲食用カップの上方内面に密着する内壁部と、内壁部の、飲食用カップの上方内面との密着部の上方に形成される緩衝空間とを備えることにより、カップの上部内壁と蓋嵌合部との接触部分から漏れた液体を一時的に貯めて、外部への液漏れを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の蓋つきカップの正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の蓋の正面図および上面図である。
【
図3】本発明の一実施形態のカップの正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の蓋とカップの嵌合部における緩衝空間の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態の蓋とカップの嵌合部における緩衝空間の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の加熱用袋について図面を参照して実施形態を説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態の蓋つきカップの正面図である。本実施形態の蓋つきカップは、コーヒーやスープなどの液体状の、または液体を含む飲食物の、飲食用あるいは保存用の容器であり、本実施形態の説明や図面では、逆円錐台の形状を有するものとするが、本願発明はこれに限られることなく、カップと蓋とが周縁嵌合部により密封する構造を有していれば、本技術分野で知られたいずれの形状を有する蓋つきカップに適用することもできる。また、本実施形態では本技術分野で知られたいずれの紙製のカップに樹脂製の蓋を嵌合することができるが、これに限られず、本技術分野で知られたいずれの材質のものを使用することもできる。カップの寸法としては、一般に紙カップの口径は80mm、90mm、98mmが主流であるが、これに限られず、例えば、コーヒー用のデミカップからパスタや穀類が液状のスープなどと混入されている飲食物用のカップまで想定されることから、口径でいうと30mm~250あるいは300mmとすることができる。この場合カップの内壁の傾斜は口径により変化するが、それぞれの傾斜に合わせ蓋の嵌合部の形状を本技術分野で知られたいずれかの寸法や形状に合わせることもできる。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の蓋つきカップ101は、蓋を閉めた際は、蓋102およびカップ本体103が周縁嵌合部104で密閉されてる。周縁嵌合部104は後述するように、蓋102の周縁部と、カップ本体103の上部周縁部とを同一形状の、例えば
図2および
図3に示すように、環状の凹凸条とすることによりぴったり嵌合できるようになっており、本構造により内容物が液体状のものであっても一定のこぼれ防止の効果を有する。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態の蓋の上面
図201および正面
図202であり、
図3は、本実施形態のカップの正面図である。
図2を参照すると、蓋102の周縁204は、頂壁203を最上部とする環状の凹条構造になっており、一方、
図3を参照すると、カップ本体103の上部の周縁301は上部を丸めた円環状になっており、この円環部分が蓋102の周縁204の凹条構造内に嵌合されるようになっている。一般的には、蓋を嵌合する際、紙カップ103の円環は適度に押しつぶされ、蓋102の周縁204の凹条部が広げられ挿入することができるが、挿入後は円環が元の寸法に復元するとともに凹条部の引っ張り力により適度に固定される。
【0021】
本実施形態では、このような嵌合構造に比べ、
図4に示すようにこのような嵌合状態においては、蓋102の周縁204の内側内面403と、カップ本体103の内壁302とが一定以上の範囲で密着することにより、蓋をした状態では内容物はこの密着部に遮られ通常は嵌合部の外に漏れることはない。しかし、強い振動が与えられたり、カップ自体が倒れたりした場合には、本密封部のみでは漏出の圧力に耐えられず、内容物が漏洩する可能性がある。本願発明は、一定の緩衝空間を設けることにより強い圧力がかかった場合でも高い漏洩防止効果を奏することを可能とした。
【0022】
図4は、本発明の一実施形態の蓋とカップの嵌合部における緩衝空間の一例を示す図である。
図4に示すように、蓋102の周縁204は上部が頂壁203の一部となっており、緩衝空間402および内側内壁403を備え、嵌合時内部空間にカップの周縁301の円環部が嵌合するようになっている。本実施形態では、上述した蓋102の周縁204の内側内面403と、カップ本体103の内壁302との密着部の、上方の外部との間に緩衝空間402を設けることにより、漏出圧力によりカップ本体103の内壁302との密着部から漏洩した内容物を一時的に収容することが可能となり、これ以上外部に漏洩することを防止することができる。ここで、緩衝空間部分における、周縁204の内側内面403と、カップ本体103の内壁302との間隙は通常約2mm程度とすることにより漏洩防止の効果が認められるが、3mm程度とすることもできる。また、この間隙はカップの口径や形状に応じて1mm~5mmとすることもできるが、これに限られず適切な値とすることができる。
【0023】
図4に示す例では、蓋102の周縁204の内側上部を内側に折り曲げることにより緩衝空間を形成するので、緩衝空間の断面は矩形上になっているがこれに限られることなく、
図5に示すように円弧上の断面となるような緩衝空間とすることもできる。
【0024】
(第2実施形態)
本実施形態は、上述の第1実施形態と基本的には同様であり、カップ上部と蓋との嵌合部分に緩衝空間を設ける機構は同じであるが、本実施形態では、カップと蓋の間に食品用ラップフィルムを挟み込む点で異なる。本実施形態では食品用ラップフィルムを内側から蓋の形状により固定することで食品用ラップフィルムをより動かなく、かつ、漏れ難くすることができる。すなわち、食品用ラップフィルムを上手く内側嵌合部で止めることにより漏れ防止効果を向上させ、より漏れ難くすることができる。つまり、食品用ラップフィルム自体の密着性と密閉部分の厚みが増加することによる付加的効果が期待できる。本実施形態で用いる食品用ラップフィルムとして、本技術分野で知られたいずれかの厚さ、柔軟さ、表面接着性などを有する素材を用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
101 蓋つきカップ
102 蓋
103 カップ本体
203 蓋の環状部頂壁
204 周縁環状部
301 カップ周縁の円環部
302 カップ内壁
401 嵌合部構造
402 緩衝空間
403 蓋周縁の内側内面