(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032037
(43)【公開日】2024-03-11
(54)【発明の名称】移動する流体の移動エネルギーを回転エネルギーに変換する装置ならびに発電装置
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20240304BHJP
F03D 7/06 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
F03D3/06 G
F03D7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023192189
(22)【出願日】2023-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】316018030
【氏名又は名称】久米 英廣
(72)【発明者】
【氏名】久米 英廣
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC04
3H178CC05
3H178DD12X
3H178DD37X
(57)【要約】
【課題】設置による環境への影響を抑制可能で設置自由度が高く、移動する流体の移動方向が変動しても移動流体の移動エネルギーを高効率で安定的に回転エネルギーや電気エネルギーに変換することが可能なエネルギー変換装置並びに発電装置を提供する。
【解決手段】外部空間を移動する流体の移動経路中に設けられた回転可能な境界部で区画された内部空間を有する回転体において、回転エネルギーで生じる回転の回転軸と流体の移動方向で規定される平面を基準とし、回転していく領域と回転してくる領域において移動する流体の内部空間への流入に応じて揚力およびまたは抗力を有効に発生させて流体の移動エネルギーを同一の回転方向への回転エネルギーに変換する変換部を境界部の境界面に配置することで、流体の移動方向あるいは移動速度が頻繁に変化する場合においても変換効率を高め安定させることが可能な流体エネルギー変換装置並びに発電装置を実現する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間的に移動する流体の運動エネルギーを回転エネルギーに変換する装置において、少なくとも前記流体の移動する経路に設けられた、前記流体の移動する方向の少なくとも一つの成分に対し略直交する回転軸と、
前記回転軸を中心に回転するとともに前記移動する流体が外部空間から流入して前記外部空間に流出する内部空間を形成する境界部と、
前記境界部において前記移動する流体が前記外部空間から前記内部空間に流入することにより揚力およびまたは抗力を発生させることで、前記移動する流体の運動エネルギーを前記境界部の回転エネルギーに変換する少なくとも一つ以上の表面からなる少なくとも一つ以上のエネルギー変換部を有する回転体と、
前記エネルギー変換部が、前記外部空間から前記内部空間に流入する前記流体の移動方向と前記回転軸の回転中心によって定まる平面を基準面とし、変換された前記回転エネルギーによって回転する前記境界部が基準面から回転していく領域において主として抗力を発生し、前記境界部が基準面に回転してくる領域において主として揚力を発生するように設定された表面状態を有することにより、前記移動する流体の運動エネルギーが前記回転体の同一の回転方向への回転エネルギーに変換されることを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記エネルギー変換部の表面状態が、前記境界部において前記移動する流体が前記外部空間から前記内部空間に流入することにより揚力を発生する表面形状およびまたは抗力を発生する表面形状からなることを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記エネルギー変換部の表面形状およびまたは前記エネルギー変換部の前記境界部に対する取り付け角度が、前記移動する流体の前記外部空間からの流入量あるいは流入速度に応じて変化するように構成されたことを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項4】
請求項1乃至3において
前記エネルギー変換部が、主として抗力を発生する若しくは主として揚力を発生するそれぞれの表面において、前記それぞれの表面の面積およびまたは前記境界部に対する角度が単独に若しくは連動して変化する構造を有することを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項5】
請求項1乃至4において
前記エネルギー変換部の表面状態が、主として抗力を発生するもしくは主として揚力を発生するそれぞれの表面において異なる表面粗さを有することを特徴とする流体エネルギー変換装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の流体エネルギー変換装置によって前記移動する流体の移動エネルギーから変換した回転エネルギーを電気エネルギーに変換することを特徴とする発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動する方向が一定でない流体の移動エネルギーを回転力エネルギーに変換する装置、及び、その装置を用いた風力発電機および水力発電機等の発電装置に関し、移動エネルギーを回転力エネルギーに変換する羽根もしくはブレードの形状と配置および構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気や水のような流体の移動する運動エネルギーを回転力エネルギーに変換し、例えば風力による揚水や発電、波力や潮力による機械動力源や発電、などに用いることが広く行われている。特に地球温暖化に対する社会的な対応も踏まえ、環境低負荷エネルギーを生成できる風力発電あるいは波力発電や潮力発電は、さまざまな研究開発がなされ実用化も進められている。
【0003】
また、風力発電や波力発電や潮力発電は風や波や潮流があればエネルギー源として用いることができるので、電力消費地に隣接して発電設備を分散して設けることにより低損失遠距離送電の為の高電圧送電に伴う設備を用いる必要がなくなり、設備コストの削減と送電線の電気抵抗に起因する熱量ロスの抑制が可能となる。
【0004】
ここで、自然現象である風や潮流は一般的に移動する流体の移動速度や移動方向が常に一定とはならず、必要とする十分な流速が得られかつ流速変動が少ないことが求められる例えば水平軸プロペラ型の回転エネルギー変換装置においては、適切な風況を得られる地点が限られることに加え周囲の環境への配慮等が必要不可欠な課題となることから、その設置場所については厳しい制約を課されることが多い。
【0005】
この流体の移動速度や移動方向変動あるいは環境への配慮による制約に対応するために、例えば特開平6-137258、特開2015-21491、US2013/0309062A1において、異なる方向からの風に対しても回転力を発生可能な垂直軸型の風力発電装置が開示されている。さらに、エネルギー変換用の羽根もしくはブレードが揚力あるいは抗力により効率よく安定して回転エネルギーを得るために、例えば特開2014-20274、特開2014-20274において、揚力あるいは抗力の発生部材の外側に移動流体を導く構成を有する垂直軸型の風力発電装置が開示されている。また、垂直軸風車のブレードとして勾玉形状断面の使用を検討をしているものもある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-137258
【特許文献2】特開2014-20274
【特許文献3】特開2012-215148
【特許文献4】特開2015-21491
【特許文献5】US2013/0309062A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】二宮広樹,吉岡修哉 著、「遺伝的アルゴリズムによる勾玉形垂直軸風車ブレードの開発」、実験力学Vol.21、No.4、p.46-54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特開平6-137258においては、外部導入翼と内部導入翼を用いて異なる方向からの風でも回転翼に対して常に同一方向の回転力が生じるように風を導く風力発電装置が開示されているが、導入され回転翼に当たった風がどの様に風力発電装置の外部に出てゆくかは示されておらず、例えば方向が一定しない風の流出などが発生して回転翼に当たることで回転力を相殺してしまう可能性が高い。
また、特開2015-21491においては、複数の可動羽板と複数の固定羽板を組み合わせることにより異なる方向からの風でも常に同一方向の回転力が生じるようにした風力発電装置が開示されているが、羽板に当たる方向が限定されず高いエネルギー変換効率を得ることは困難である。
【0009】
また、US2013/0309062A1においては、中央空間を取り囲む回転エネルギー発生用ローターベーンを有する環状ローターアセンブリで、角度変えることが可能な内側ガイドアレイと外側ガイドベーンを用いて異なる方向で外部から流入した風が環状ローターアセンブリの中央空間内で同じ方向に循環するように案内する風力タービンが開示されているが、内側ガイドアレイと外側ガイドベーンの角度を流入方向が変化する風にタイミングよく適合させるには極めて複雑な構造が必要となる。
【0010】
さらに、特開2014-20274においては、風力回転機構に設けられた複数の回転羽に全方向からの風力を接収するための羽引導通路によって全方向からの風力を接収し、風力エネルギー変換効率を向上させる風力発電装置が開示されているが、羽引導通路の設置で装置全体の外形寸法が大きくなることに加え回転羽までの経路が長くなることで回転エネルギーへの変換効率が低下する可能性が高い。
また、特開2012-215148においては、回転軸と一体回転可能なブレード回転円周よりも外方に回転円周よりも大きな円周に沿って等間隔に遮風板を配設することで高い回転トルクを得る構成の揚力型垂直軸風車が開示されているが、遮風板の配設で装置全体の外形寸法が大きくなることに加え遮風板の配設により風流の一部が遮られることで回転エネルギーへの変換効率は低下する可能性が高い。
【0011】
このように従来開示された流体の移動エネルギーを回転エネルギに変換して利用する風力発電装置等では、流体の移動方向や移動速度の変化に対して簡便に効率よく安定した同一方向への回転エネルギーを発生させることが困難な構造となっていることに対し、本発明は移動する流体の移動方向あるいは移動速度が変動しても高効率で安定した流体移動エネルギーから回転エネルギーへの変換が可能なエネルギー変換装置ならびに発電装置に用いられる移動エネルギーを回転力エネルギーに変換するための羽根もしくはブレードの形状と配置および構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、外部空間を移動する流体の移動経路中に設けられた回転可能な境界部で区画された内部空間を有する回転体において、流体の移動エネルギーから変換された回転エネルギーで回転する境界部の回転軸と流体の移動方向で規定される平面を基準面とし、移動する流体が内部空間へ流入する境界部の基準面から回転していく領域では抗力を、境界部の基準面に回転してくる領域では揚力を発生させて流体の移動エネルギーを同一の回転方向への回転エネルギーに変換する変換部を境界部の境界面に配置することで、流体の移動方向あるいは移動速度が頻繁に変化する場合においても変換効率を高めて安定させることが可能な流体エネルギー変換装置並びに発電装置を実現する。また、移動する流体の外部空間からの流入量ないしは流入速度に応じて、境界部に設けられた回転エネルギー変換部の表面形状あるいは境界部に対する角度を適宜変化させることでより安定かつ効率的に流体の移動エネルギーを回転エネルギーに変換することを実現する。さらに、移動する流体の移動速度が予め設定された値を超える場合には境界部に対する回転エネルギー変換部の角度を外部空間から内部空間への流体の流入を抑止する発電装置を実現する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の流体エネルギー変換装置を用いることにより以下のような効果を得ることが出来る。
外部領域から内部領域へ流入する流体の移動方向が変化しても常に高い効率で安定した同一方向への回転エネルギーに変換することが実現できる。
さらに、常に流体の移動に対して主に揚力を発生するエネルギー変換部の表面と主に抗力を発生するエネルギー変換部の表面とが存在するので移動流体の移動流量の変化に対して安定したエネルギー変換を実現できる。
さらに、エネルギー変換部が配設された境界部の外側に移動流体を導入する部材を必要としないので装置の外形が大きくなることを防止でき、装置の設置場所に高い自由度が得られる。
さらに、移動流体の変化する移動方向や移動流量に対し装置形状に対する制約が少ないため、エネルギー変換用設備の設置場所や設置する間隔あるいは設置する周囲の環境に対して高い自由度が得られる。
さらに、エネルギー変換部の主に揚力を発生する表面と主に抗力を発生する表面の表面粗さを適宜設定することでさらなる効率の向上と安定した動作を容易に実現できる。
さらに、移動する流体の移動速度が予め設定された値を超える場合には境界部に対する回転エネルギー変換部の角度を外部空間から内部空間への流体の流入を抑止するように設定することで装置の損傷を迅速に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る実施例の斜視外形図
【
図2】第1実施形態に係る流体エネルギー変換装置の断面図
【
図3】第1実施形態に係る流体エネルギー変換装置の部分斜視図
【
図4】第1実施形態に係るエネルギー変換部の斜視説明図
【
図5】第1実施形態に係るエネルギー変換部に移動流体が流入する状態と作用
【
図6】第1実施形態のエネルギー変換部を用いた流体エネルギー変換装置の作用
【
図7】第2実施形態に係る流体エネルギー変換装置の部分斜視図
【
図8】第2実施形態に係るエネルギー変換部の斜視説明図
【
図9】第2実施形態に係るエネルギー変換部に移動流体が流入する状態と作用
【
図10】第2実施形態のエネルギー変換部を用いた流体エネルギー変換装置の作用
【
図11】第1実施形態のエネルギー変換部を用いた流体エネルギー変換装置の作用例
【
図12】第1実施形態のエネルギー変換部を用いた流体エネルギー変換装置の変形例
【
図13】流体移動速度が過剰になった際の第1実施形態のエネルギー変換部の動作
【
図14】流体移動速度が過剰になった際の第2実施形態のエネルギー変換部の動作
【
図15】本発明に係る複数の風力発電装置を海岸や湖畔などの陸上に密接させて配置した実用化例
【
図16】本発明に係る風力発電装置を渓谷内や橋脚などに配置した実用化例
【
図17】本発明に係る風力発電装置を従来からある構造物の上などに配置した実用化例
【
図18】本発明に係る風力発電装置を水上構造物あるいは船舶などに配置した実用化例
【
図19】本発明に係る風力発電装置を船舶用ローターセイルの回転源に用いた実用化例
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、空間的に移動する流体の運動エネルギーを回転エネルギーに変換する装置において、少なくとも流体の移動する経路に設けられた、流体の移動する方向の少なくとも一つの成分に対し略直交する回転軸と、回転軸を中心に回転するとともに移動する流体が外部空間から流入した後に再び外部空間に流出する内部空間を形成する境界部と、境界部において移動する流体が外部空間から内部空間に流入することによって揚力およびまたは抗力を発生させることで移動する流体の運動エネルギーを境界部の回転軸に対する回転エネルギーに変換する少なくとも一つ以上のエネルギー変換部を有する回転体と、移動する流体が外部空間から内部空間に流入する際にエネルギー変換部が回転体に略同一の回転方向に回転エネルギーを発生させるように構成された表面状態を有することで、移動する流体の運動エネルギーが回転体の同一の回転方向への回転エネルギーに変換される流体エネルギー変換装置である。
【0016】
境界部に設定されたエネルギー変換部の表面状態は、移動する流体の移動方向を基準として境界部の回転していく領域において移動する流体が外部空間から内部空間に流入する際に主として抗力を発生し、境界部の回転してくる領域において移動する流体が外部空間から内部空間に流入する際に主として揚力を発生する表面形状とを備え、複数のエネルギー変換部は例えば回転する境界部に回転対称に配置することができる。
【0017】
エネルギー変換部の揚力を発生する表面と抗力を発生する表面は移動する流体の外部空間からの流入量あるいは流入速度に応じて境界部に対する取り付け角度及びまたはその表面積が変化する構成とすることができる。
【0018】
エネルギー変換部の揚力を発生する表面と抗力を発生する表面において、移動する流体が流体エネルギー変換装置の内部空間から外部空間へ流出する際にも同一の回転方向への回転エネルギーを発生することができる。
【0019】
移動する流体は気体及びまたは液体であり、移動する流体エネルギーから変換した回転エネルギーを回転力若しくは電気エネルギーに変換することができる。
【実施例0020】
図1から
図6を用いて本発明に係るエネルギー変換装置および発電装置の実施例の構成と作用を説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る実施例の斜視外形図であり、例えば空気の移動エネルギーすなわち風エネルギーを用いて回転エネルギーを発生する流体エネルギー変換装置と、その回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機を備えた構成となっている。
図1において、1は外部空間2から内部空間3に流入する移動流体4の移動エネルギーから回転エネルギーを生成する流体エネルギー変換装置であり、11は移動流体4の移動エネルギーを回転エネルギーに変換するエネルギー変換部、8はエネルギー変換部を配置する端板、6は回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機である。
【0021】
図2は
図1の流体エネルギー変換装置1の一部を破断した一部断面斜視図であり、発電機6と連結され軸受け10で支持された回転軸9に取り付けられた端板8とで内部空間3を形成するように複数のエネルギー変換部11が配置されている。なお、端板8は回転軸9と複数のエネルギー変換部11が固着可能であれば通気性の有無で制限がなされることはないが、外部空間2と内部空間3での移動流体の流入または流出において回転エネルギーに与える悪影響は十分に抑制する必要がある。
【0022】
図3は第1実施形態に係る流体エネルギー変換装置の部分斜視図であり、複数のエネルギー変換部11で実質的に構成され回転可能な境界部5は軸受10に保持された回転軸9と平行に回転が可能な端板8に形成されている。具体的には内部空間3は複数のエネルギー変換部11からなる境界部5と上下の端板8によって円筒形の内部空間として形成されている。
【0023】
図4は第1実施形態に係る個別のエネルギー変換部11の斜視説明図であり、本実施例ではエネルギー変換部11の回転軸方向での断面を回転中心に向かい尖った形状の勾玉状とすることで移動流体4(本実施例においては風)の流れによって揚力を発生する表面形状と抗力を発生する表面形状とに形成されている。さらに、揚力発生表面12と抗力発生表面13の表面粗さは個別或いは同一に設定することは容易で、例えば装置の設置環境や移動流体の状況に応じて変化させることで最適なエネルギー変換効率の達成や安定した動作状態の実現などを容易に得ることもできる。
図4において、12はエネルギー変換部の揚力発生表面、13はエネルギー変換部の抗力発生表面、7はエネルギー変換部11の端板8への取付軸である。また、揚力発生表面12および抗力発生表面13の表面粗さは略同一とすることもあるいは機能性を考慮して異なる表面粗さにすることも任意に可能であり、エネルギー変換部11の表面の粗さが移動流体4の移動時接触等によって経時的に変化した場合は能動的に所定の値に復元させることが可能な構成としてもよい。
【0024】
図5は第1実施形態に係るエネルギー変換部11に移動流体4が流入する状態と作用を示した図であり、一部の境界部5に流入する移動流体4によって揚力と抗力が発生し同一方向の回転力を発生する作用の概要を示している。実際の移動流体4による揚力と抗力の発生は複雑な流体の挙動で一概には表現できないがおおよそは図示したような作用で同一方向への回転力が発生するものと考えられる。
図5で、流入する移動流体4の流入方向に対峙するエネルギー変換部11の表面は移動流体が直接的に当たる面がほぼ同一の曲面形状となることから移動流体4の移動エネルギーが回転円周上で平均化あるいは回転力としては相殺されて作用することから移動流体4の回転力への直接的な影響は軽微になると考えられる。
【0025】
図6は第1実施形態のエネルギー変換部11を用いた流体エネルギー変換装置の作用を示した図であり、移動流体4の流入による揚力と抗力の発生する作用は
図5と同様であるが、特に
図6では移動流体4の移動方向とエネルギー変換部11の表面形状および取付角度により主として揚力が発生する領域と主として抗力が発生する領域とが発現することを示している。すなわち境界部5に設定されたエネルギー変換部11の表面状態は、移動流体4の移動方向を基準として境界部5の回転していく領域においては移動流体4が外部空間2から内部空間3に流入する際に主として抗力を発生し、境界部5の回転してくる領域においては移動流体4が外部空間2から内部空間3に流入する際に主として揚力を発生する表面形状とを備えている。ここで、エネルギー変換部11は境界部5の円周上で回転対称に配置されているが対称性について限定されるものではない。さらに、外部空間2から内部空間3に流入した移動流体4が外部空間2に流出する過程(
図6の点線矢印)でも流出する動流体4が通過する任意のエネルギー変換部11の表面形状はおおむね同一方向への回転エネルギーを発生するものと考えられる。
【0026】
図7は第2実施形態に係る流体エネルギー変換装置の部分斜視図であり、複数のエネルギー変換部14で実質的に構成され回転可能な境界部5は回転が可能な端板8に形成されている。具体的には内部空間3は複数のエネルギー変換部14からなる境界部5と上下の端板8によって円筒形の内部空間として形成されている。
【0027】
図8は第2実施形態に係る個別のエネルギー変換部14の斜視説明図であり、本実施例ではエネルギー変換部14の回転軸方向での断面を回転外側に向かい尖った形状の勾玉状とすることで移動流体4(本実施例においては風)の流れによって揚力を発生する表面形状と抗力を発生する表面形状とに形成されている。さらに、揚力発生表面15と抗力発生表面16の表面粗さは第1実施形態と同様に任意に設定することが可能である。
【0028】
図9は第2実施形態に係るエネルギー変換部14に移動流体が流入する状態と作用を示した図であり、一部の境界部5に流入する移動流体4によって揚力と抗力が発生し同一方向の回転力を発生する作用の概要を示している。実際の移動流体4による揚力と抗力の発生は複雑な流体の挙動で一概には表現できないがおおよそは図示したような作用で同一方向への回転力が発生するものと考えられる。
【0029】
図10は第2実施形態のエネルギー変換部14を用いた流体エネルギー変換装置の作用を示した図であり、移動流体4の流入による揚力と抗力の発生する作用は
図9と同様であるが、特に
図10では移動流体4の移動方向とエネルギー変換部14の表面形状および取付角度により主として揚力が発生する領域と主として抗力が発生する領域とが発現することを示している。すなわち境界部5に設定されたエネルギー変換部14の表面状態は、移動流体4の移動方向を基準として境界部5の回転していく領域においては移動流体4が外部空間2から内部空間3に流入する際に主として抗力を発生し、境界部5の回転してくる領域においては移動流体4が外部空間2から内部空間3に流入する際に主として揚力を発生する表面形状とを備えている。ここで、エネルギー変換部14は境界部5の円周上で回転対称に配置されているが対称性について限定されるものではない。さらに、外部空間2から内部空間3に流入した移動流体4が外部空間2に流出する過程(
図10の点線矢印)でも流出する動流体4が通過する任意のエネルギー変換部14の表面形状はおおむね同一方向への回転エネルギーを発生するものと考えられる。
【0030】
図11は第1実施形態のエネルギー変換部11を用いた流体エネルギー変換装置の作用例を示した図であり、特にエネルギー変換部11の境界部5への取付角度が変更可能なことを示している。エネルギー変換部11の境界部5への取付角度を移動流体4の移動速度や移動量或いは気圧や気体密度に応じて変更することで安定した高効率な回転エネルギーへの変換が実現できる。
【0031】
ここで、第1実施形態のエネルギー変換部11と第2実施形態のエネルギー変換部14とを比較すると、エネルギー変換部11は慣性質量が大きく揚力発生に適した表面状態で比較的高い流速に対応させる方が効率的であるのに対し、エネルギー変換部14は慣性質量が小さく抗力発生に適した表面状態で比較的低い流速に対応させるのが効率的であると言える。
【0032】
図12は上記それぞれのエネルギー変換部の特性から考えられる第1実施形態のエネルギー変換部を用いた流体エネルギー変換装置の変形例を示した図であり、
図11のエネルギー変換部11の回転軸方向での断面を第2実施形態の回転外側に向かい尖った形状の勾玉状となるように回転させることで移動流体4の平均流速が時間や季節によって変化する場合において高流速時は第1実施形態だった表面形状を低流速時には第2実施形態の表面形状となるようにエネルギー変換部11を回転した状態を示している。
図12に示すようにエネルギー変換部11を回転した状態では回転エネルギーは逆方向に発生するるため発電装置に回転力を伝えて発電する場合は逆方向の回転に対応する必要があるが境界部の実質的な径は大きくなり抗力発生が優位となることから低速でも高トルクの回転力が得られることにもなる。
【0033】
図13は流体移動速度が過剰になった際の第1実施形態のエネルギー変換部の動作を示した図であり、エネルギー変換部11の境界部5への取付角度を移動流体4の移動速度が予め定められた値になった場合にエネルギー変換装置の破損防止のために移動流体4が外部空間2から内部空間3へ流入することを防止するように変化させた状態となっている。
【0034】
図14は流体移動速度が過剰になった際の第2実施形態のエネルギー変換部の動作を示した図であり、エネルギー変換部14の境界部5への取付角度を移動流体4の移動速度が予め定められた値になった場合にエネルギー変換装置の破損防止のために移動流体4が外部空間2から内部空間3へ流入することを防止するように変化させた状態となっている。
【0035】
なお図示及び詳細な説明は省略するが、各実施形態においてエネルギー変換部の揚力発生表面および抗力発生表面それぞれの表面積を移動流体の移動速度や移動量或いは気圧や気体密度に応じて適宜変化させることで、揚力発生もしくは抗力発生の効率が最適化される表面状態とすることも可能である。
本発明は移動流体の移動エネルギーを用いて回転エネルギーに変換する装置のおいて移動流体の移動方向が異なっても安定したエネルギー変換が可能であるため、特に風向きが頻繁に変わる場所における風力発電装置において有効である。また、複数のエネルギー変換装置を隣接して設置した場合に装置間で生じる移動流体の移動方向変化があってもエネルギー変換への影響が抑制されるため、設置スペースの効率化が実現できる。さらにエネルギー変換装置として様々な形状とすることが可能なため、今までは設置することが困難であった地域や場所への設置も可能となる。
さらに図示及び詳細な説明は省略するが、垂直軸型マグナス式風力発電機の縦型に配置した円筒を自転させる動力源として例えば円筒の上部に回転源として設置することも可能であり、装置の効率化や保守の簡便化などが実現できる。
なお、実施例として主に自然風を用いた風力発電等への応用を説明してきたが、波力発電や潮力発電などの移動方向が一定でない移動する液体の移動エネルギーを回転エネルギーに変換して発電する発電装置への応用は同様の構成によって容易に実現できることは明らかであり、さらに気体および液体を問わず移動流体の移動エネルギーから変換された回転エネルギーを例えば揚水機や推進機構あるいは工作機械や加工機械などの動力源として直接利用することも可能である。例えば移動する液体の利用例として、テトラポット(登録商標)などの波消しブロック或いは浮遊ブイなどと複合化させて、灯台や航路灯等の自立した光源や機器電源に用いるために小規模な発電をさせることなどが考えられる。
さらに図示及び詳細な説明は省略するが、回転体の境界部を縦長にして強風時での稼働を可能にしたり、回転体の境界部を扁平に構成して大きなトルクを発生させたりすることも可能であるなど、流体エネルギー変換装置として様々な用途に対応する様々な形態を実現することができる。
また基本的に突起のない円筒状の装置外形を有することから、例えばエネルギー変換部であるブレードの間から内部空間への異物や鳥獣類の流入や侵入に対して防護ネットや金網などで周囲を覆うことで容易に対策を施すことが可能であり、周囲環境の保全や景観の維持に関しても然るべき対応が可能である。
以上説明したように、本発明を用いることで移動方向や移動速度が頻繁に変動する移動流体の移動エネルギーを効率よく安定して回転エネルギーもしくは電気エネルギーに変換することが可能となり、複数の装置を密接して配置し効率よく運用することや今まで設置困難とされていた場所への設置を可能とし、さらに装置の設置に伴う環境あるいは景観の破壊や設置場所周辺での動植物への悪影響を抑制することができる。
1 第1実施形態に係る流体エネルギー変換装置2 外部空間3 内部空間4 移動流体5 境界部6 発電機7 エネルギー変換部の取付軸8 端板9 回転軸10 軸受11 第1実施形態に係るエネルギー変換部12 第1実施形態に係るエネルギー変換部の揚力発生表面13 第1実施形態に係るエネルギー変換部の抗力発生表面14 第2実施形態に係るエネルギー変換部15 第2実施形態に係るエネルギー変換部の揚力発生表面16 第2実施形態に係るエネルギー変換部の抗力発生表面17 海岸や湖畔に密接して配置した風力発電装置18 渓谷内や橋脚に配置した風力発電装置19 既存の建造物上に配置した風力発電装置20 海上構造物や船舶に配置した風力発電装置21 船舶用ローターセイル22 回転源として動作する流体エネルギー変換装置