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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032060
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】露光装置および露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135496
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】石田 一将
(72)【発明者】
【氏名】岸脇 大介
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA28
2H197BA05
2H197BA10
2H197CC05
2H197CC11
2H197CE01
2H197DA04
2H197DB06
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA10
(57)【要約】
【課題】光源の出力の変更も、露光の走査と同期した光変調素子の制御も不要としつつ、露光光の強度を段階的に調整すること。
【解決手段】感光性の基板を露光する装置であって、露光に用いられる光を供給する光源と、光源と基板との間において光が進む光路に対して挿入可能であって、基板が露光される位置の移動と同期して、光路に介在する位置における透過率を異ならせるフィルタとを備える露光装置。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性の基板を露光する装置であって、
前記露光に用いられる光を供給する光源と、
前記光源と前記基板との間において前記光が進む光路に対して挿入可能であって、前記基板が露光される位置の移動と同期して、前記光路に介在する位置における透過率が異なるフィルタと
を備える露光装置。
【請求項2】
前記光路に介在するときの前記フィルタと、前記光源との間に設けられ、前記光源から出射された光の空間的な分布の均一性を高めるロッドインテグレータ
を更に備える、請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記フィルタは透過率が異なる複数の領域を有し、
前記基板が露光される位置の移動と同期して前記フィルタを移動させ、前記複数の領域を順次に前記光路に介在させる移動機構
を更に備える、請求項1または請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記フィルタを前記光路に介在させない位置に移動させ得る、請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
上記複数の領域は前記フィルタにおいて一方向に並んで配置され、
前記一方向に沿って前記フィルタが移動する、請求項3に記載の露光装置。
【請求項6】
上記複数の領域は、前記フィルタにおいて相互に離隔して配置される、請求項3に記載の露光装置。
【請求項7】
感光性の基板の露光に用いられる光を供給する光源と、
前記光源と前記基板との間において前記光が進む光路に対して挿入可能なフィルタと
を備える露光装置において、
前記基板が露光される位置の移動と同期して、前記光路に介在する位置の透過率を異ならせる、露光方法。
【請求項8】
前記フィルタは透過率が異なる複数の領域を有し、
前記基板が露光される位置の移動と同期して前記フィルタを移動させ、前記複数の領域を順次に前記光路に介在させる、請求項7に記載の露光方法。
【請求項9】
上記複数の領域は前記フィルタにおいて一方向に並んで配置され、
前記一方向に沿って前記フィルタを移動させる、請求項8に記載の露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、感光性の基板に対してパターンに基づいた露光を行う技術に関する。当該基板は、例えば感光材料が用いられた層(以下「感光層」とも称される)を有する。例えば半導体基板、プリント基板、液晶表示装置等に具備されるカラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置等に具備されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、磁気ディスク用基板、光ディスク用基板、太陽電池用パネルなどの各種基板は、感光層を有する。
【背景技術】
【0002】
感光性の基板が有する感光層を、所望のパターンで露光する露光装置が知られている。当該露光装置として、いわゆる描画装置が知られている。描画装置は露光を選択的に遮蔽するマスク(以下「フォトマスク」と称される)を用いず、所望のパターンを記述したデータに応じて空間的に変調した光(以下「描画光」とも称される)を感光層へ照射する。かかる照射によって、描画装置は感光層に所望のパターンを直接に露光する。露光した感光層は現像処理により、所望のパターンまたはその反転したパターンが基板上に残置する。描画光は、フォトマスクを用いた露光に利用される光と同様に、露光光として考えられる。
【0003】
現像処理された感光層が精度良くパターニングされるためには、感光層が適切に露光されることが望まれる。適切な露光を行うためには描画光の強度が適切であることが望まれる。感光層の露光感度は感光層の種類毎に相違する。よって感光層毎に描画光の強度を制御し、感光層の露光感度を検出する技術が提案される。
【0004】
例えば特許文献1では空間的な光変調(以下、単に「光変調」とも称される)を行う光変調素子を用い、露光に寄与する描画光の強度を段階的に調整する技術が提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6279833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
露光に寄与する描画光の強度が光変調素子を用いて段階的に調整される場合、その強度の段階的な変化についての自由度は小さい。例えば光変調素子として1920×1080のアレイ状に配列されたマイクロミラーが採用されて描画光の強度が段階的に調整される場合については、以下のように説明される。
【0007】
感光層に対して露光を走査するとき、光変調素子においては当該走査の方向に沿って1080個のマイクロミラーが並ぶ。露光が走査されることによって感光層の異なる位置が感光されるので、走査の方向に沿って並ぶ1080個のミラーのうち、描画光を与えるミラーの個数を異ならせて、描画光の強度として1080段階が選択され得る。描画光を与えるミラーの個数が少なくなるほど、描画光の強度を細かく調節しにくくなる。
【0008】
特許文献1では露光を部分的に重複しつつ走査させ、露光の総量を漸次的に変化させる技術が紹介される。しかし特許文献1が紹介する技術においても、光変調素子を露光の走査と同期して制御することが要求される。なるほど、特許文献1ではマスクパターンを切り替える露光制御に代えて、全てのマイクロミラーをON状態にする技術も紹介される。しかし当該技術においてもミラーON時間を調整することが採用され、当該「ミラーON時間」とは光変調素子をON状態にする時間であると理解される。よってこのミラーON時間も露光の走査と同期して制御される、と理解される。
【0009】
本開示はこのような点に鑑みてなされたもので、光源の出力の変更も、露光の走査と同期した光変調素子の制御も不要としつつ、露光光の強度を段階的に調整する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様に係る露光装置は、感光性の基板を露光する装置であって、前記露光に用いられる光を供給する光源と、前記光源と前記基板との間において前記光が進む光路に対して挿入可能であって、前記基板が露光される位置の移動と同期して、前記光路に介在する位置における透過率が異なるフィルタとを備える。
【0011】
本開示の第2の態様に係る露光装置は、第1の態様に係る露光装置であって、前記光路に介在するときの前記フィルタと、前記光源との間に設けられ、前記光源から出射された光の空間的な分布の均一性を高めるロッドインテグレータを更に備える。
【0012】
本開示の第3の態様に係る露光装置は、第1の態様または第2の態様に係る露光装置であって、前記フィルタは透過率が異なる複数の領域を有し、前記基板が露光される位置の移動と同期して前記フィルタを移動させ、前記複数の領域を順次に前記光路に介在させる移動機構を更に備える。
【0013】
本開示の第4の態様に係る露光装置は、第3の態様に係る露光装置であって、前記移動機構は、前記フィルタを前記光路に介在させない位置に移動させ得る。
【0014】
本開示の第5の態様に係る露光装置は、第3の態様または第4の態様に係る露光装置であって、上記複数の領域は前記フィルタにおいて一方向に並んで配置され、前記一方向に沿って前記フィルタが移動する。
【0015】
本開示の第6の態様に係る露光装置は、第3の態様から第5の態様のいずれかに係る露光装置であって、上記複数の領域は、前記フィルタにおいて相互に離隔して配置される。
【0016】
本開示の第7の態様に係る露光方法は、感光性の基板の露光に用いられる光を供給する光源と、前記光源と前記基板との間において前記光が進む光路に対して挿入可能なフィルタとを備える露光装置において、前記基板が露光される位置の移動と同期して、前記光路に介在する位置の透過率を異ならせる。
【0017】
本開示の第8の態様に係る露光方法は、第7の態様に係る露光方法であって、前記フィルタは透過率が異なる複数の領域を有し、前記基板が露光される位置の移動と同期して前記フィルタを移動させ、前記複数の領域を順次に前記光路に介在させる。
【0018】
本開示の第9の態様に係る露光方法は、第8の態様に係る露光方法であって、上記複数の領域は前記フィルタにおいて一方向に並んで配置され、前記一方向に沿って前記フィルタを移動させる。
【発明の効果】
【0019】
第1の態様に係る露光装置は、光源の出力の変更も、露光の走査と同期した光変調素子の制御も不要としつつ、露光光の強度を段階的に調整する。
【0020】
第2の態様に係る露光装置は、フィルタの小型化に資する。
【0021】
第3の態様に係る露光装置は、光路に介在する位置におけるフィルタの透過率を、基板が露光される位置の移動と同期して異ならせる。
【0022】
第4の態様に係る露光装置は、フィルタを介在させずに通常の露光を行い得る。
【0023】
第5の態様に係る露光装置は、複数の領域を順次に光路に介在させることに資する。
【0024】
第6の態様に係る露光装置によれば、露光に用いられる光の適切な強度が容易に判断される。
【0025】
第7の態様に係る露光方法は、光源の出力の変更も、露光の走査と同期した光変調素子の制御も不要としつつ、露光光の強度を段階的に調整する。
【0026】
第8の態様に係る露光方法は、光路に介在する位置におけるフィルタの透過率を、基板が露光される位置の移動と同期して異ならせる。
【0027】
第9の態様に係る露光方法は、複数の領域を順次に光路に介在させることに資する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本開示にかかる露光装置たる描画装置の概略斜視図である。
図2】描画装置の平面図である。
図3】光学ユニットの概略を示す斜視図である。
図4】光変調部の構成を例示する側面図である。
図5】減光部の構成を例示する斜視図である。
図6】描画ヘッドの概略を示す側面図である。
図7】制御部と、描画装置を構成するその他の構成要素との接続関係を概念的に示すバス配線図である。
図8】フィルタの構成を例示する平面図である。
図9】レジスト群を例示する平面図である。
図10】適切な露光量を設定する処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施の形態が説明される。なお、図面においては、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0030】
<1.装置構成の例示>
図1は、本開示にかかる露光装置たる描画装置100の概略斜視図である。図2は、描画装置100の概略平面図である。
【0031】
描画装置100は、感光性の基板90を露光し、より具体的には基板90に所望のパターンを描画する装置である。例えば描画装置100がプリント基板を製造する工程の一部を担当するとき、感光層、金属箔、絶縁性の基板がこの順に積層された基板90に対し、感光層側から描画光を所望のパターンで照射し、感光層を選択的に露光する。露光された感光層は感光により、露光後の現像処理において所望のパターンもしくはその反転したパターンで選択的に除去される。当該現像処理で残置した感光層は、金属箔のエッチングにおいてマスクとして機能する。
【0032】
図1および図2において、図示および説明の都合上、Z軸方向を鉛直上向き方向に採用し、X軸方向およびY軸方向のいずれもがZ軸方向と直交する方向に採用される。X軸方向及びY軸方向は互いに直交し、X軸、Y軸,Z軸はこの順でいわゆる左手座標系を決定する。以下、X軸に沿った方向は単にX方向あるいは+X方向と称され、Y軸に沿った方向は単にY方向あるいは+Y方向と称され、Z軸に沿った方向は単にZ方向あるいは+Z方向と称される。
【0033】
但しこれらは位置関係を把握するために便宜上設定され、以下に説明される各方向を限定するものではない。他の図についても同様である。
【0034】
描画装置100は、架台1、移動プレート群2、露光部3、および制御部5を備える。
【0035】
<1-1.架台1>
架台1は、略直方体状の外形を有しており、そのZ方向側の面(以下「上面」とも称される)1aの略水平な領域には、架橋構造11および移動プレート群2が固定される。架橋構造11は、移動プレート群2の上方において移動プレート群2を跨いで略水平に掛け渡される。例えば架台1は、移動プレート群2と架橋構造11とを一体的に支持する。図2においては、視認性を高めるため、架橋構造11が二点鎖線によって図示されている。
【0036】
<1-2.移動プレート群2>
移動プレート群2は、保持プレート21と、支持プレート22と、ベースプレート23と、基台24と、回動機構211と、副走査機構221と、主走査機構231とを備える。
【0037】
保持プレート21は略水平な上面21aを有し、上面21aは基板90をZ方向とは反対側から(下方から)保持する。支持プレート22は略水平な上面22aを有し、上面22aは保持プレート21を下方から支持する。ベースプレート23は、略水平な上面23aを有し、上面23aは支持プレート22を下方から支持する。基台24は略水平な上面24aを有し、上面24aは、ベースプレート23を下方から支持する。回動機構211は、保持プレート21をZ軸回りに回動させる機能を有する。副走査機構221は、支持プレート22をX方向およびその反対方向(-X方向)に移動させる機能を有する。主走査機構231は、ベースプレート23をY方向およびその反対方向(-Y方向)に移動させる機能を有する。
【0038】
例えば保持プレート21は、基板90を上面21aに吸着して保持する。例えば上面21aにおいて複数の孔(図示省略)が分散して設けられる。これらの孔は、例えば真空ポンプに接続され、当該真空ポンプが動作することによって、基板90と上面21aとの間の気圧が低下する。当該気圧の低下により、基板90が上面21aに吸着され、保持される。
【0039】
回動機構211はリニアモータ211aと回動軸211bとを有する(図2参照)。リニアモータ211aは移動子と固定子とを含む。移動子は保持プレート21に対してY方向とは反対側(-Y方向側)の端部に取り付けられる。固定子は上面22aに設けられる。回動軸211bは、保持プレート21の中央部と支持プレート22との間でZ軸に平行に位置し、図2においては隠れ線を示す破線で描かれる。リニアモータ211aを動作させることによって、固定子に沿って移動子がX方向あるいは-X方向に移動する。当該移動により保持プレート21が回動軸211bを中心として、ある角度の範囲内で、Z軸回りに回動する。
【0040】
副走査機構221はリニアモータ221aと一対のガイド221bとを有する(図2参照)。リニアモータ221aは移動子221cと固定子221dとを含む。移動子221cは支持プレート22の下面に取り付けられる。固定子221dは上面23aに設けられる。一対のガイド221bは、支持プレート22とベースプレート23との間においてX軸に沿って延び、上面23aに固定される。リニアモータ221aを動作させることによって、固定子221dに沿って移動子221cがX方向あるいは-X方向に移動する。当該移動によって支持プレート22がガイド221bに沿ってベースプレート23上でX方向あるいは-X方向に移動する。
【0041】
主走査機構231はリニアモータ231aと一対のガイド231bとを有する(図2参照)。リニアモータ231aは移動子(不図示)と固定子231dとを含む。当該移動子はベースプレート23の下面に取り付けられる。固定子231dは上面24aに設けられる。一対のガイド231bは、ベースプレート23と基台24との間においてY軸に沿って延び、上面24aに固定される。リニアモータ231aを動作させることによって、リニアモータ231aの移動子が固定子231dに沿ってY方向あるいは-Y方向に移動する。当該移動によってベースプレート23がガイド231bに沿って基台24上でY方向あるいは-Y方向に移動する。
【0042】
したがって、保持プレート21に基板90を保持した状態で主走査機構231を動作させることによって、基板90をY方向あるいは-Y方向に沿って移動させることができる。
【0043】
上述された、回動機構211、副走査機構221、および主走査機構231のいずれの動作も、制御部5によって制御される。
【0044】
回動機構211、副走査機構221および主走査機構231の駆動について、上述のリニアモータ211a,221a,231aを利用することに限定はされない。例えば、回動機構211および副走査機構221において、サーボモータおよびボールネジ駆動が利用されてもよい。基板90を移動させる代わりに、露光部3を移動させる移動機構が設けられてもよい。基板90および露光部3の双方を移動させる移動機構が設けられてもよい。保持プレート21をZ軸に沿って昇降させる昇降機構が設けられて、基板90が上下に昇降してもよい。
【0045】
<1-3.露光部3>
露光部3は、光学ユニット30を複数台、例えば5台備える。光学ユニット30の各々は、光源31、照明光学系32、および描画ヘッド33を有する。図1では、図示が省略されているが、各描画ヘッド33に対して、光源31および照明光学系32がそれぞれ設けられる。図2においては、視認性を高めるため、描画ヘッド33が二点鎖線によって図示されている。
【0046】
光源31は、制御部5から送られる所要の駆動信号に基づいて、所要の波長を有する光35を供給する。例えば光源31にはレーザダイオードが採用される。図1において、光源31から光35が出射され、その経路は、光35が伝達される相手先へ向けた矢印で模式的に描かれている。
【0047】
光35は、照明光学系32を介して描画ヘッド33へ導かれる。光源31から出射された光35は、照明光学系32にて、例えば光軸に垂直な面において矩形状に成形される。
【0048】
各描画ヘッド33は、照明光学系32から出射された光35を、光変調して基板90の上面に照射する機能を有する。各描画ヘッド33は、例えばX軸に沿って架橋構造11の側面上部に等ピッチで配置されている。
【0049】
図3は、光学ユニット30の概略を示す斜視図である。描画ヘッド33は、光変調部4、投影光学系330、オートフォーカス機構6を有する。光変調部4、投影光学系330、オートフォーカス機構6は固定材112に固定される。固定材112は後述される固定材111と共に架橋構造11に固定される。あるいは固定材112は架橋構造11の一部、たとえばY方向とは反対側(-Y方向側)の側面であってもよい。
【0050】
照明光学系32は光源31側に配置されたロッドインテグレータ321と、描画ヘッド33側に配置された鏡筒322とを含む。ロッドインテグレータ321は、光源31から出射された光35の空間的な分布の均一性を高める。例えば鏡筒322は両側テレセントリック光学系を実現するレンズを有する。
【0051】
光35は、ロッドインテグレータ321と光変調部4との間において、二点鎖線で示される光路Lを進む。
【0052】
少なくとも一つの光学ユニット30は減光部7を有する。減光部7は例えば、ロッドインテグレータ321と、鏡筒322との間に減光部7を有する。図3は減光部7を含む光学ユニット30を示す。減光部7は、図3においてはその概略的な形状のみが一点鎖線で示され、具体的な構成は後述される。
【0053】
照明光学系32を通過した光35は光変調部4へ照射され、制御部5の制御に基づいて光変調を受けて描画光351(図4参照:後述)となる。描画光351は投影光学系330へ入射する。投影光学系330は、入射した描画光351を所要の倍率で拡大して、主走査方向へ移動する基板90上へ導く。
【0054】
投影光学系330は鏡筒331,332を有する。鏡筒331は鏡筒332よりも光変調部4寄りに配置される。鏡筒331,332は両側テレセントリック光学系を実現する。
【0055】
<1-4.光変調部4>
図4は光変調部4の構成を例示する側面図である。光変調部4はミラー41,42と空間光変調素子43を有する。照明光学系32を通過した光35はミラー41,42によって順次に反射され、空間光変調素子43に至る。空間光変調素子43に光35が入射して空間光変調素子43が光35を光変調して描画光351が得られる。空間光変調素子43は描画光351を出射する。描画光351は投影光学系330へ、より具体的には鏡筒331へ入射する。
【0056】
空間光変調素子43には例えばデジタルミラーデバイスが採用される。デジタルミラーデバイスは、例えば1920×1080のマトリクス状に配列された、1辺が約10μmの正方形の微小ミラーを有する。各々のミラーはメモリセルに書き込まれたデータに従って、当該正方形の対角を軸として、所要角度で傾く。制御部5からのリセット信号によって、各々のミラーは、一斉に駆動される。デジタルミラーデバイスは、自身への入射光を、例えば二方向に反射する。
【0057】
空間光変調素子43にデジタルミラーデバイスが採用された場合、各々のミラーは、描画光351として採用される光と、パターンの描画に寄与しない光とを異なる方向に反射させる。空間光変調素子43における光変調に採用されるパターンは、投影光学系330によって、基板90に投影される。
【0058】
当該パターンはリセットパルスによって連続的に書き換えられる。当該リセットパルスは、後述されるように、主走査機構231による保持プレート21の移動に伴って、主走査機構231のエンコーダー信号を元に作られる。当該パターンの連続的な書き換えと保持プレート21との移動により、基板90へ入射する描画光351は、当該パターンを反映した像を基板90に形成する。
【0059】
描画光351は、図3において光変調部4から投影光学系330および後述されるオートフォーカス機構6を経由して基板90に至る光路Lを進む。
【0060】
光35が光変調部4によって光変調されて描画光351が得られ、描画光351が基板90に照射される。描画光351は基板90の露光に採用され、光35は描画光351の生成に利用される。光35および描画光351のいずれも、基板90の露光に用いられるといえる。光源31と基板90との間で光35または描画光351が光路Lを進む。
【0061】
<1-5.基板90と露光部3との相対的な移動>
描画処理は、制御部5の制御下で主走査機構231および副走査機構221が保持プレート21に載置された基板90を、複数台の描画ヘッド33に対して相対的に移動させつつ、複数の描画ヘッド33のそれぞれから基板90の露光面(露光部3側の面:ここでは基板90の上面の一部または全部)に描画光351を照射することによって行われる。
【0062】
主走査機構231によって基板90が移動したときの、基板90から見た描画ヘッド33の移動方向が主走査方向に採用される。副走査機構221によって、基板90が移動したときの、基板90から見た描画ヘッド33の移動方向が副走査方向に採用される。
【0063】
主走査機構231によって保持プレート21が-Y方向に移動する。これにより、描画ヘッド33は基板90に対して相対的にY方向に移動し、主走査が実現される。主走査が行われる間、描画ヘッド33は描画光351を、基板90の露光面に連続的に照射する。これにより、所望のパターンが基板90の露光面に投影される。各描画ヘッド33がY方向に沿って基板90を1回横断すると、描画光351に対応したパターンがY方向に延びた帯状に描画される。複数の描画ヘッド33が、基板90上を並行して横断することにより、1回の主走査によって複数の帯状のパターンが描画される。
【0064】
上述の主走査が終了したのち、副走査機構221によって、保持プレート21が+X方向に移動する。これにより描画ヘッド33は基板90に対して相対的に-X方向へ移動し、副走査が実現される。副走査における描画ヘッド33の基板90に対する相対的な移動量は、例えば1回の主走査によって得られた帯状パターンの幅以上である。
【0065】
上述の副走査が終了したのち、主走査機構231によって保持プレート21がY方向に移動する。これにより、描画ヘッド33は基板90に対して相対的に-Y方向に移動し、主走査が実現される。主走査が行われる間、各描画ヘッド33は描画光351を、基板90に連続的に照射する。
【0066】
このような、副走査を挟んで主走査方向が反対(上述の例では主走査方向には-Y方向とY方向の二種が採用される)となる複数の主走査が行われ、基板90の露光面において描画の対象となる領域の全域にパターンが描画されると、描画処理が終了する。
【0067】
<1-6.減光部7>
図5は減光部7の構成を例示する斜視図である。減光部7は、移動ステージ71、フィルタ72、ねじ軸73、モータ74、固定ステージ75を有する。
【0068】
固定ステージ75は照明光学系32と共に固定材111に固定される。固定材111は光源31と共に架橋構造11に固定される。あるいは固定材111は架橋構造11の一部、たとえばZ方向側の頂面であってもよい。
【0069】
固定ステージ75はX方向およびZ方向のいずれにも平行な面75aを有する主部と、モータ74が固定される端部75bとを有する。主部が固定材111と接触し、端部75bが固定材111から離れて位置する。例えば主部はY方向に厚みを有する板状の部材である。
【0070】
移動ステージ71は、面75aと摺動する面71aを有する。あるいは面71aは不図示の案内機構により面75aに対してZ方向および-Z方向に可動である。
【0071】
移動ステージ71は、そのZ方向側の端にねじ軸73が貫入するねじ溝(不図示)が形成される。モータ74はたとえばサーボモータであり、その回転シャフト(不図示)にはねじ軸73が取り付けられる。モータ74の回転によりねじ軸73は回転し、ねじ軸73が移動ステージ71に貫入する深さが変わる。移動ステージ71は面75aに対してZ方向および-Z方向に可動である。モータ74は端部75bにおいて固定ステージ75に固定されるので、ねじ軸73が移動ステージ71に貫入する深さに依存して移動ステージ71はZ方向および-Z方向に移動する。このような移動ステージ71の移動は、ボールねじを用いた機構によって実現されてもよい。
【0072】
フィルタ72は移動ステージ71に支持される。フィルタ72に対する光の入出は、移動ステージ71および固定ステージ75のいずれによっても阻害されない。例えば移動ステージ71はY方向に貫通する穴71bを有する。穴71bの縁は、フィルタ72のY方向に沿って見た周縁のみを保持する。
【0073】
図5において実線で示された移動ステージ71、フィルタ72、ねじ軸73の位置は、これらのいずれもが光路Lから外れた状態を例示する。上述された描画処理は、このような状態(以下「不在状態」と仮称される)において行われる。図5において二点鎖線で示された移動ステージ71、フィルタ72、ねじ軸73の位置は、フィルタ72が減光部7における光35の光路Lに介在する(但し移動ステージ71それ自体は光35の光路Lに介在しない)状態(以下「介在状態」と仮称される)を示す。後述されるテストパターン処理は、介在状態において実行される。
【0074】
介在状態において、モータ74の駆動によって、フィルタ72の複数の異なる位置が光路Lに介在する。これら複数の位置は、光35に対して互いに異なる減光率を有する。介在状態においてモータ74の駆動に伴って、光35が異なる減光率で減光されて、テストパターン処理が実行される。
【0075】
モータ74の駆動によって介在状態と不在状態との間を移動ステージ71が移動する。不在状態では光35はロッドインテグレータ321と鏡筒322との間では減光されない。フィルタ72は光源31と基板90との間の光路Lに対して挿入可能である。
【0076】
図5では、介在状態よりも不在状態の方が、移動ステージ71がZ方向側に位置する場合が例示される。例えば図示されない他の機構により、移動ステージ71をX方向と-X方向とに移動させて介在状体と不在状態との間を移動ステージ71が移動してもよい。
【0077】
ロッドインテグレータ321は、光路Lに介在するときのフィルタ72と、光源31との間に設けられる。このようにロッドインテグレータ321がフィルタ72の前に配置されることにより、ロッドインテグレータ321から出射された光35は、その広がりが小さいままフィルタ72を透過する。広がりが小さな光35がフィルタ72を通過することは、領域701~741に必要な領域を小さくすることに寄与し、ひいてはフィルタ72の小型化に資する。
【0078】
<1-7.投影光学系330およびオートフォーカス機構6>
図6は、描画ヘッド33の概略を示す側面図である。図6に示されるように、描画ヘッド33の各々には、オートフォーカス機構6が設けられる。オートフォーカス機構6は、検出器61を有する。検出器61は、描画ヘッド33と基板90(詳細には、露光面)との間の距離L1の変動を検出する。オートフォーカス機構6は、検出器61によって検出された距離L1の変動に合わせて、描画光351の焦点を調整する。
【0079】
検出器61は、レーザ光を基板90に照射する照射部611と、基板90を反射したレーザ光を受光する受光部613とを有する。
【0080】
照射部611は、基板90の露光面に対する法線方向(ここでは、Z方向)に対して鋭角θで傾斜した軸に沿って、レーザ光を基板90の上面に入射させる。当該レーザ光は位置91をスポット状に照射し、反射して受光部613に入射する。
【0081】
受光部613は、例えばラインセンサ(不図示)を有する。位置91から反射したレーザ光の、当該ラインセンサ上における入射位置によって、基板90の露光面の変動が検出される。検出器61は取付機構62を有する。取付機構62は鏡筒332の外周面に設けられる。検出器61は取付機構62によって、描画ヘッド33に対して、具体的には鏡筒332へ、固定される。
【0082】
オートフォーカス機構6は昇降機構63を有する。検出器61によって検出された変動量に応じて、鏡筒332を、または鏡筒331、332の両方を、昇降機構63がZ方向または-Z方向に移動させる。当該移動により、描画光351の焦点が調整される。
【0083】
検出器61が検出した変動量は、制御部5または不図示の専用の演算回路に伝達され、所期のプログラムに従った演算処理が行われる。この演算処理によって、昇降機構63による鏡筒332、または鏡筒331,332の昇降量が決定される。
【0084】
<1-8.制御部5>
図7は制御部5と、描画装置100を構成するその他の構成要素との接続関係を概念的に示すバス配線図である。
【0085】
制御部5は、表示部56、操作部57、回動機構211、副走査機構221、主走査機構231、光源31(より具体的には光源31を駆動するドライバ)、光変調部4(より具体的には空間光変調素子43)およびオートフォーカス機構6、減光部7(より具体的にはモータ74を駆動するドライバ)との間で、例えばバス配線、ネットワーク回線またはシリアル通信回線より接続されており、これら各構成要素の動作を制御する。
【0086】
制御部5は、中央演算部(Central Processing Unit:図において「CPU」と表記)51、読み出し専用のメモリ(Read Only Memory:図において「ROM」と表記)52、揮発性のメモリ(例えばRandom Access Memory:図において「RAM」と表記)53、不揮発性のメモリ54を有する。メモリ53は主に中央演算部51の一時的なワーキングエリアとして使用される。メモリ54に代えてハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、あるいはソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)が採用されてもよい。
【0087】
メモリ52はプログラム55を格納する。中央演算部51は、メモリ52からプログラム55を読み取り、プログラム55を実行することにより、メモリ53またはメモリ54に記憶されている各種データについての演算を行う。制御部5は、中央演算部51、メモリ52、メモリ53およびメモリ54を備えることにより、一般的なコンピュータとしての構成を備えている。
【0088】
中央演算部51は回動機構211、副走査機構221、主走査機構231、オートフォーカス機構6、減光部7の機構の動作を制御する。例えば中央演算部51はリニアモータ211a,221a,231a、昇降機構63、モータ74の動作を制御する。かかる制御機能は、中央演算部51がプログラム55に従って動作することにより実現される機能ブロックたる機構制御部511として描かれる。機構制御部511の一部または全部は、論理回路などによって実現されてもよい。
【0089】
メモリ54は、パターンデータ541と描画位置情報545とを格納する。パターンデータ541を反映したパターンが基板90上に描画される。パターンデータ541は、例えば、CADソフトなどによって作成されたベクトル形式のデータを、ラスター形式のデータに展開した画像データである。
【0090】
パターンデータ541は、例えば一つのパターンデータから、描画ヘッド33のそれぞれが描画を担当する部分についてのデータとして、描画ヘッド33毎に個別に生成される。
【0091】
制御部5は、パターンデータ541に基づき、光変調部4を制御することによって、描画光351を描画ヘッド33から出射させる。
【0092】
中央演算部51は主走査によって移動する描画光351の位置に同期してパターンデータ541を修正し、光変調部4、より具体的には空間光変調素子43における光変調を制御する。かかる制御機能は、中央演算部51がプログラム55に従って動作することにより実現される機能ブロックたる描画制御部513として描かれる。描画制御部513の一部または全部は、論理回路などによって実現されてもよい。
【0093】
描画位置情報545は主走査によって移動する描画光351の位置を反映する。あるいは描画位置情報545を反映して、描画光351の位置が主走査によって移動する。例えば描画制御部513は、主走査機構231のリニアモータ231aから送られてくるリニアスケール信号に基づいて、光変調のリセットパルスおよび描画位置情報545を生成する。描画位置情報545はメモリ54に格納される。
【0094】
このリセットパルスに基づいて動作する光変調部4によって、基板90の位置に応じて変調された描画光351が、各描画ヘッド33から出射される。
【0095】
表示部56には、例えば一般的なモニタや液晶ディスプレイが利用される。表示部56は、制御部5の制御によりオペレータに対して各種データを表示する。操作部57には、例えばボタンやキー、マウス、タッチパネルが利用される。操作部57はオペレータにより操作され、描画装置100に対する指示が入力される。
【0096】
<2.テストパターン処理の例示>
図8はフィルタ72の構成を例示する平面図である。当該平面図はフィルタ72が移動ステージ71に支持された状態においてY方向に沿って見た図である。フィルタ72はテストパターン72pを有する。テストパターン72pは互いに透過率が異なる複数の領域701~741を有する。領域701~741は互いに減光率が異なるということもできる。領域701~741は一方向に並んで配置される。ここでは当該一方向とZ方向が一致してフィルタ72が移動ステージ71に支持される場合が例示される。
【0097】
領域701~741は、この順に進むにつれて透過率が小さい(減光率が大きい)。例えば領域702の透過率は領域701の透過率よりも小さい。図8において領域707~734は図示が省略され、それらの配置は記号「・」の連続によって模式的に示される。
【0098】
図8において、領域701~706の透過率の多寡はハッチングに用いられるドットの密度によって模式的に示される。ハッチングに用いられるドットの密度が大きいほど、透過率が低く、従って減光率が高いことが示される。領域735~741はそのような模式的なハッチングは視認できないが、これらの間には上述された透過率の相違がある。
【0099】
領域701~741同士はこれらと顕著に透過率が異なる領域を挟んで離隔される。例えばフィルタ72は、領域701~741以外においてこれらに対して顕著に高い透過率を有する。
【0100】
テストパターン処理は、テストパターン72pを用いて基板90を露光する処理である。テストパターン処理は、介在状態において移動ステージ71が-Z方向に移動しつつ行われる。介在状態においては光路Lに対してフィルタ72が挿入され、移動ステージ71が-Z方向に移動することにより領域701~741が順次に、より具体的には領域701~741がこの順とは逆に、光路Lに介在する。領域701~741が光路Lに介在すると、光35はそれぞれ領域701~741を透過する。
【0101】
フィルタ72のこのような移動は、基板90が露光される位置の移動と同期して行われる。具体的には移動ステージ71の移動に同期した主走査機構231の動作により、保持プレート21が、ひいては基板90が-Y方向へ移動し、光35が領域701~741をこの順とは逆に順次に透過することと同期して、基板90が露光される位置がY方向へ移動する。
【0102】
このような同期により、基板90は異なる位置で、強度が異なる描画光351によって露光される。領域701~741がこの順とは逆に一方向に並んで配置され、この方向に沿ってフィルタ72が移動することは、基板90が露光される位置の移動と同期して、領域701~741をこの順とは逆に順次に光路Lに介在させることに資する。
【0103】
移動ステージ71は、基板90が露光される位置の移動と同期してフィルタ72を移動させ、領域701~741をこの順とは逆に順次に光路Lに介在させる移動機構といえる。このように互いに同期した二つの移動は、制御部5の制御の下、主走査機構231と減光部7との協働によって実現される。
【0104】
以下、基板90がネガ型の感光性を有する場合が例となって説明される。例えば露光される側において基板90にはネガ型の露光層、例えばネガ型のフォトレジストが設けられる。
【0105】
図9は、テストパターン処理の後、現像処理によって残置するレジスト群92を例示する平面図である。当該平面図は基板90が保持プレート21に保持された状態において-Z方向に沿って見た図である。レジスト群92はレジスト913~941を有する。レジスト913~941は、それぞれ領域713~741を透過した光35を用いて露光された領域に残置するレジストである。
【0106】
図9において、レジスト913~917の残量の多寡はハッチングに用いられるドットの密度によって模式的に示される。ハッチングに用いられるドットの密度が高いほど、当該残量が多いことが示される。図9において領域918~934は図示が省略され、それらの配置は記号「・」の連続によって模式的に示される。
【0107】
レジスト913~917は、この順に進むにつれて描画光351の強度が小さく、レジストの残量が多い。例えばレジスト914の残量はレジスト913の残量よりも多い。レジスト917~941の残量の相違は小さい。例えばレジストの残量はレジスト群92を光学的に検査して得られる。
【0108】
上述の例示では、領域701~712を透過した光35、ひいては描画光351を用いた露光を受けたレジストは、現像により除去されている。つまり当該レジストに対する露光光の強度(以下「露光量」とも称される)としては、領域713~741で減光された光35の強度は不足であると判断できる。レジスト群92から、当該レジストに対する露光量としては領域712で低減された光35が適切であると判断できる。
【0109】
領域701~741同士がこれらと顕著に透過率が異なる領域を挟んで離隔されることは、現像後に残置するレジストの残量を確認しやすくし、もって露光量の容易な判断に寄与する。
【0110】
上述のように、基板90が露光される位置の移動と同期してフィルタ72を移動させ、領域701~741を順次に光路Lに介在させることにより、光源31から出射される光35の出力を変更することなく、露光光の強度を段階的に調整することができる。
【0111】
この際、光変調部4は露光される位置の移動に対して同期する光変調はもとより、光変調それ自体が制御される必要は無い。描画光351の光量はテストパターン72pによって制御されるからである。テストパターン処理の間、例えば空間光変調素子43は光35を変調することなく単に反射して、光35が描画光351として光変調部4から出射される。
【0112】
もちろん、基板90が露光される位置の移動に対して同期して光変調部4が光変調を行ってもよい。その場合にはレジストの露光条件をより細かく設定することができる可能性がある。
【0113】
テストパターン処理が介在状態において行われ、不在状態において通常の露光が行われることは、通常の露光においてフィルタ72が介在せず、描画光351に対してフィルタ72が影響しない観点で望ましい。この観点で、移動ステージ71がフィルタ72を光路Lに介在しない位置へ移動させることは望ましい。
【0114】
電気信号を受けて透過率が可変になる素子、例えば液晶を用いた調光素子がフィルタ72に代替されてもよい。当該透過率が、基板90が露光される位置の移動に同期して、変更される。かかる調光素子が採用される場合、例えば当該調光素子の透過率を制御する電気信号が、基板90が露光される位置の移動に同期して、変更される。このような調光素子の制御も移動ステージ71の制御と類似して行うことができる。
【0115】
上述の開示は、描画装置100の構成という観点では以下のように説明され得る。描画装置100は感光性の基板90を露光する装置である。描画装置100は光源31とフィルタとを備える。光源31は露光に用いられる光35を供給する。フィルタは光源31と基板90との間において光35または描画光351が進む光路Lに対して挿入可能であって、基板90が露光される位置の移動と同期して、光路Lに介在する位置における透過率が異なる。
【0116】
例えば、当該フィルタは透過率が異なる領域701~741を有するフィルタ72であって、描画装置100は移動ステージ71を更に備える。移動ステージ71は、基板90が露光される位置の移動と同期してフィルタ72を移動させ、領域701~741を順次に光路Lに介在させる移動機構である。
【0117】
移動ステージ71は、光路Lに介在する位置におけるフィルタ72の透過率を、基板90が露光される位置の移動と同期して異ならせる。
【0118】
当該フィルタは、例えば、基板90が露光される位置の移動と同期して透過率が制御される調光素子であってもよい。
【0119】
上述の開示は、露光方法という観点では以下のように説明され得る。感光性の基板90の露光に用いられる光35を供給する光源31と、光源31と基板90との間において光35または描画光351が進む光路Lに対して挿入可能なフィルタとを備える露光装置たる描画装置100において;当該露光方法は、基板90が露光される位置の移動と同期して、光路Lに介在するフィルタの位置の透過率を異ならせる。
【0120】
例えば、当該フィルタは透過率が異なる領域701~741を有するフィルタ72であって、当該露光方法は、基板90が露光される位置の移動と同期してフィルタ72を移動させ、領域701~741を順次に光路Lに介在させる。
【0121】
このような移動は、光路Lに介在する位置におけるフィルタ72の透過率を、基板90が露光される位置の移動と同期して異ならせる。
【0122】
当該フィルタは、例えば、基板90が露光される位置の移動と同期して透過率が制御される調光素子であってもよい。
【0123】
図10は適切な露光量を設定する処理を例示するフローチャートである。当該処理においてはまずテストパターン処理が実行される。ステップS11はテストパターン処理に相当し、露光走査およびこれに同期したフィルタ72の移動が行われる。ここにいう露光走査とは、描画光351によって基板90を露光しつつ、基板90を移動させることによって、基板90が露光される位置を移動させる処理を指す。
【0124】
ステップS11が実行された後、ステップS12において基板90の現像が行われる。ステップS12にいう基板90は、ステップS11によって露光された基板90である。ステップS12の実行によりレジスト群92が得られる。
【0125】
ステップS12が実行された後、ステップS13においてレジスト群92の確認が行われる。上述されたネガ型レジストが採用された場合には、レジスト913~941が残置するが、それ以外には残置したレジストは無いことが確認される。
【0126】
ステップS13が実行された後、ステップS14において、当該レジストについての適切な露光量の設定が行われる。上述の例では領域712の有する透過率(あるいは減光率)に基づいて、例えば光源31が供給する光35の強度が設定される。
【0127】
<3.変形>
<3-1.テストパターン72pの変形>
例えば、テストパターン72pにおける減光率には、いわゆるOD(Optical Density)値が採用されてもよい。例えばいわゆるステップタブレットパターンに準拠した減光率が採用される。かかる減光率が採用されることは、レジストに対する露光量を決定するときに、ステップタブレットパターンを用いた周知の判断手法を採用しやすい点で有利である。
【0128】
テストパターン72pにおける複数の透過率が互いに相違する量は、等間隔でなくてもよい。領域701~741は、透過率の順に並んで配置されなくてもよい。
【0129】
基板90がポジ型の感光性を有する場合、例えば基板90にポジ型のフォトレジストが設けられる場合に対しても、同様の判断が可能である。但しこの場合には、領域701~741のうち、現像の後に鮮明に残置するレジストに対応するもので低減された光35が適切であると判断できる。この場合、領域701~741同士を離隔する領域の透過率は、これらに対して顕著に低い透過率を有することが、適切な露光量の判断を行うことに資する。
【0130】
<3-2.光変調による描画を行わない場合への適用>
本開示では上述の通り、光変調の有無に拘わらずに露光光の強度が段階的に調整される。よって光変調を伴わない、例えば光変調による描画を行わずにフォトマスクを用いた露光にも、本開示は適用され得る。
【0131】
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、本開示がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0132】
7 減光部
31 光源
35 光
71 移動ステージ
72 フィルタ
90 基板
321 ロッドインテグレータ
351 描画光
701~741 領域
L 光路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10