(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032075
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】導波管フィルタ、送信機、及びレーダー
(51)【国際特許分類】
H01P 1/207 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
H01P1/207 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135514
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 憲一
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006JB00
5J006LA02
5J006LA06
5J006NA06
5J006NA09
(57)【要約】
【課題】耐電力性能の向上を図ることが可能な導波管フィルタを提供する。
【解決手段】導波管フィルタは、電波をTEモードで共振させる少なくとも1つの導波管型共振器を備え、導波管型共振器には、入力用又は出力用の導波管型線路が接続される結合窓が形成され、結合窓は、長手方向に伸び、短手方向に向かい合う2つの長辺のうち、少なくとも一方の長辺の中央部が両側部よりも他方の長辺から離れた形状を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波をTEモードで共振させる少なくとも1つの導波管型共振器を備え、
前記導波管型共振器には、入力用又は出力用の導波管型線路が接続される結合窓が形成され、
前記結合窓は、長手方向に伸び、短手方向に向かい合う2つの長辺のうち、少なくとも一方の長辺の中央部が両側部よりも他方の長辺から離れた形状を有する、
導波管フィルタ。
【請求項2】
前記結合窓は、前記導波管型共振器のE面の、中心から離れた位置に形成される、
請求項1に記載の導波管フィルタ。
【請求項3】
前記結合窓は、前記2つの長辺のうち、前記E面の中心に近い側の長辺の中央部が前記E面の中心に向かって突出した形状を有する、
請求項2に記載の導波管フィルタ。
【請求項4】
前記結合窓は、前記導波管型共振器のE面の、一辺に沿った方向の端から前記一辺の長さの3分の1までの範囲に形成される、
請求項1に記載の導波管フィルタ。
【請求項5】
前記導波管型共振器における電界の向きは、前記導波管型線路における電界の向きと異なる、
請求項2に記載の導波管フィルタ。
【請求項6】
前記結合窓の短手方向の最大幅は、前記導波管型共振器のH面の深さよりも大きい、
請求項2に記載の導波管フィルタ。
【請求項7】
前記結合窓は、T字形状又は+字形状に形成される、
請求項1に記載の導波管フィルタ。
【請求項8】
前記結合窓は、前記中央部から前記両側部まで直線状に形成される、
請求項1に記載の導波管フィルタ。
【請求項9】
前記結合窓は、三角形状又は菱形形状に形成される、
請求項1に記載の導波管フィルタ。
【請求項10】
請求項1に記載の導波管フィルタを備える送信機。
【請求項11】
請求項1に記載の導波管フィルタを備えるレーダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管フィルタ、送信機、及びレーダーに関する。
【背景技術】
【0002】
導波管フィルタの耐電力性能を向上させる技術として、特許文献1には、導波管内部を気密封止して真空状態にする技術が開示されている。また、特許文献2には、電界が集中する箇所にスタブを設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-195903号公報
【特許文献2】特開2006-157792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、船舶用レーダーの分野では、電波資源有効利用の観点から電波法規制が厳しくなりつつある。フィルタの高性能化には帯域幅の狭帯域化が考えられ、導波管フィルタにおいては結合窓を狭くする必要がある。しかしながら、結合窓を狭くすると電極間距離が短くなり、耐電力性能が低下するという課題が生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、耐電力性能の向上を図ることが可能な導波管フィルタ並びにそれを備える送信機及びレーダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の導波管フィルタは、電波をTEモードで共振させる少なくとも1つの導波管型共振器を備え、前記導波管型共振器には、入力用又は出力用の導波管型線路が接続される結合窓が形成され、前記結合窓は、長手方向に伸び、短手方向に向かい合う2つの長辺のうち、少なくとも一方の長辺の中央部が両側部よりも他方の長辺から離れた形状を有する。これによれば、耐電力性能の向上を図ることが可能となる。
【0007】
上記態様において、前記結合窓は、前記導波管型共振器のE面の、中心から離れた位置に形成されてもよい。これによれば、電界が集中するE面の中心から離れた位置に結合窓を形成することで、耐電力性能の向上を図ることが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記結合窓は、前記2つの長辺のうち、前記E面の中心に近い側の長辺の中央部が前記E面の中心に向かって突出した形状を有してもよい。これによれば、電界が集中するE面の中心からに向かって突出した形状にすることで、耐電力性能の向上を図ることが可能となる。
【0009】
上記態様において、前記結合窓は、前記導波管型共振器のE面の、一辺に沿った方向の端から前記一辺の長さの3分の1までの範囲に形成されてもよい。これによれば、電界が集中するE面の中心から離れた位置に結合窓を形成することで、耐電力性能の向上を図ることが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記導波管型共振器における電界の向きは、前記導波管型線路における電界の向きと異なってもよい。電界の向きが異なることで結合窓の近傍において電界が乱れ、放電が生じやすくなるが、上記態様の結合窓によって、耐電力性能の向上を図ることが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記結合窓の短手方向の最大幅は、前記導波管型共振器のH面の深さよりも大きくてもよい。これによれば、結合窓の近傍において電界の向きが変化しやすくなるため、耐電力性能の向上を図ることが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記結合窓は、T字形状又は+字形状に形成されてもよい。これによれば、T字形状又は+字形状によって、耐電力性能の向上を図ることが可能となる。
【0013】
上記態様において、前記結合窓は、前記中央部から前記両側部まで直線状に形成されてもよい。これによれば、電界が集中しやすい角部を無くして、耐電力性能のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0014】
上記態様において、前記結合窓は、三角形状又は菱形形状に形成されてもよい。これによれば、三角形状又は菱形形状によって、耐電力性能の向上を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の態様の送信機は、上記の導波管フィルタを備える。これによれば、耐電力性能の向上を実現した導波管フィルタを備えることが可能となる。
【0016】
また、本発明の他の態様のレーダーは、上記の導波管フィルタを備える。これによれば、耐電力性能の向上を実現した導波管フィルタを備えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、実施形態に係るレーダー100の構成例を示すブロック図である。レーダー100は、マイクロ波を送受信するマイクロ波送受信機である。レーダー100は、実施形態に係る送信機の一例であり、実施形態に係る導波管フィルタ1を備えている。
【0020】
レーダー100は、導波管フィルタ1に加え、マグネトロン91、パルス駆動回路92、サーキュレータ93、終端器94、サーキュレータ95、ロータリジョイント96、アンテナ97、リミッタ回路98、及び受信回路99を備えている。
【0021】
マグネトロン91は、例えば9.4GHzのマイクロ波を基本波として発振するマイクロ波発生器である。パルス駆動回路92は、マグネトロン91を所定周期で間欠駆動してパルス状の送信信号を生成する。サーキュレータ93は、マグネトロン91からのパルス状の送信信号の出力先を切り替える。
【0022】
導波管フィルタ1は、マグネトロン91とアンテナ97との間に介在している。本実施形態において、導波管フィルタ1は帯域通過フィルタとして構成され、基本波の通過を許容し、基本波に対する高調波の通過を抑制する。抑制された高調波は、サーキュレータ93に接続された終端器94で消費される。
【0023】
サーキュレータ95は、導波管フィルタ1からの送信信号をアンテナ97へ出力し、アンテナ97からの受信信号を受信回路99に出力する。ロータリジョイント96は、アンテナ97とサーキュレータ95との間に介在しており、回転系と静止系とを電気的に接続する。
【0024】
アンテナ97は、不図示のモータにより回転しながら、送信信号を電波パルスとして送信するとともに、受信した反射波を受信信号に変換する。リミッタ回路98は、受信開始直後の高レベルの受信信号を抑制する。受信回路99は、アンテナ97からの受信信号を取得する。
【0025】
マグネトロン91からアンテナ97までの経路は導波管で構成されている。また、アンテナ97からリミッタ回路98までの経路も導波管で構成されている。
【0026】
導波管フィルタ1が適用されるレーダー100は、本実施形態では、マイクロ波を送受信する船舶用レーダーであるが、これに限らず、例えばミリ波を送受信する障害物検知又は衝突防止用の車載レーダー等であってもよい。
【0027】
図2は、導波管フィルタ1の構成例を示す分解斜視図である。導波管フィルタ1は、2つのブロック2,3と、それらに挟まれる仕切り板4とを備えている。
【0028】
図3は、ブロック2の構成例を示す図であり、ブロック2を仕切り板4側から見た図である。
図4は、ブロック3の構成例を示す図であり、ブロック3を仕切り板4側から見た図である。
【0029】
図5は、仕切り板4の構成例を示す図であり、仕切り板4をブロック3側から見た図である。
図6は、
図3に示すVI-VI線でブロック2を切断したときの断面を示す図である。
【0030】
図中のZ方向は、ブロック2,3及び仕切り板4の厚さ方向ないし積層方向を表す。X方向及びY方向は、Z方向と直交する平面におけるブロック2,3及び仕切り板4の短手方向及び長手方向をそれぞれ表す。
【0031】
ブロック2,3及び仕切り板4は、金属製である。具体的には、ブロック2,3は、例えばアルミニウム等の導電性を有する金属材料で形成されている。仕切り板4も、例えばアルミニウム合金等の導電性を有する金属材料で形成されている。
【0032】
ブロック2,3は仕切り板4を挟み、ブロック2の対向面29が仕切り板4の一方の主面と接触し、ブロック3の対向面39が仕切り板4の他方の主面と接触する。ブロック2,3及び仕切り板4は、不図示のネジ等の締結部材によって締結される。
【0033】
図3に示すように、ブロック2の対向面29には、電波伝播用の凹部20が形成されている。凹部20は、Y方向に並んだ2つの共振領域21,22と、それらの間に介在する結合窓23とを含んでいる。共振領域22は、高調波を調整するための付加領域221,222を有している。
【0034】
ブロック2の共振領域21の底部には、共振領域21と外部を連通させる結合窓25が形成されている。結合窓25には、入力用の導波管型線路82(
図2参照)が接続され、導波管型線路82から結合窓25を通じて共振領域21に電波が入力される。
【0035】
図4に示すように、ブロック3の対向面39には、電波伝播用の凹部30が形成されている。凹部30は、Y方向に並んだ2つの共振領域31,32と、それらの間に介在する結合窓33とを含んでいる。共振領域31は、高調波を調整するための付加領域311,312を有している。
【0036】
ブロック3の共振領域32の底部には、共振領域32と外部を連通させる結合窓35が形成されている。結合窓35には、出力用の導波管型線路83(
図2参照)が接続され、共振領域32から結合窓35を通じて導波管型線路83に電波が出力される。
【0037】
図5に示すように、仕切り板4には、複数の結合窓41-45が形成されている。仕切り板4はブロック2,3に挟まれ、凹部20,30の間に介在する。すなわち、仕切り板4は、凹部20と凹部30の両方を覆う。本実施形態では、凹部20,30が鏡面対称の関係にある。
【0038】
結合窓41-44は、ブロック2の共振領域22とブロック3の共振領域31とを連通させる。結合窓45は、ブロック2の共振領域21とブロック3の共振領域32とを連通させる。
【0039】
ブロック2,3及び仕切り板4が組み立てられ、締結されることで、各共振領域21,22,31,32は、導波管型共振器として機能する。本実施形態では、導波管型フィルタ1は、計4つの導波管型共振器を含んでいる。各共振領域21,22,31,32は、使用される電波(電磁波)の周波数に基づいて定まる所定の寸法を有している。
【0040】
入力用の導波管型線路82からの電波は、結合窓25を通じて共振領域21に伝播し、共振領域21から結合窓23を通じて共振領域22に伝播し、共振領域22から結合窓41-44を通じて共振領域31に伝播し、共振領域31から結合窓33を通じて共振領域32に伝播し、共振領域32から結合窓35を通じて出力用の導波管型線路83へ最終的に出力される。また、一部の電波は、共振領域21から結合窓45を通じて共振領域32にも伝播する。
【0041】
各共振領域21,22,31,32は、X方向及びY方向の寸法に対してZ方向の寸法が短い扁平形状を有しており、受け入れた電波をTEモードで共振させる。共振する電波の電界ベクトルは、Z方向を向く。なお、各共振領域21,22,31,32は、単一モードの電波を伝播する。
【0042】
図7及び
図8は、1段目の導波管型共振器となる共振領域21と電波の入口となる結合窓25に着目した拡大模式図である。なお、以下の説明は、最終段の導波管型共振器となる共振領域32と電波の出口となる結合窓35についても同様に成立する。
【0043】
共振領域21は、E面211とH面212を有している。E面211は、共振領域21で共振する電波の電界ベクトル(Z方向)と直交する面であり、H面212は、E面211と直交する面である。
【0044】
図7に示すように、本実施形態では、結合窓25は、共振領域21のE面211の、中心Cから離れた位置に形成されている。言い換えると、E面211の中心Cが結合窓25の内側に存在しない。
【0045】
結合窓25は、共振領域21のE面211の、長辺に沿った方向(X方向)の端から長辺の長さLxの3分の1、好ましくは4分の1までの範囲に形成される。なお、短辺に沿った方向(Y方向)の端から短辺の長さの3分の1までの範囲に形成されてもよい。
【0046】
結合窓25がE面211に形成される場合、
図8に示すように、導波管型線路82における電界の向きと、共振領域21における電界の向きとが互いに異なることになる。すなわち、導波管型線路82における電界の向きと、共振領域21における電界の向きとが概ね直交する。導波管型線路82における電界の向きはX方向であるのに対し、結合窓25を通過すると電界の向きが変化して、共振領域21では電界の向きがZ方向となる。
【0047】
ここで、本実施形態の結合窓25の詳細について説明する前に、
図9に示す従来の結合窓75について説明する。
【0048】
従来の結合窓75は、略長方形形状を有しており、2つの長辺76と2つの短辺78とを有している。図示の例では、従来の結合窓75は、長手方向の端部が半円状の角丸長方形である。このような細長い従来の結合窓75では、長手方向の中央部において電界が集中しやすく、放電が発生しやすい。
【0049】
特に、E面に結合窓を形成する場合、H面に結合窓を形成する場合と比べて、電界強度が高いE面の中心に結合窓が近づくため、結合窓で放電が発生しやすくなる。また、入力線路と共振器とで電界の向きが異なるため、結合窓付近で電界が乱れやすく、結合窓で放電が発生しやすくなる。
【0050】
そこで、本実施形態では、以下に説明するように、結合窓25の長辺26,27の中央部の距離を遠ざけてT字形状若しくは+字形状又は三角形状又は菱形形状とすることで、長手方向の中央部における電界の集中を緩和し、耐電力性能の向上を実現している。
【0051】
図7に示すように、結合窓25は、略長方形形状を有しており、長手方向に伸び、短手方向に向かい合う2つの長辺26,27と、短手方向に伸び、長辺方向に向かい合う2つの短辺28とを有している。本実施形態では、結合窓25の長手方向がY方向であり、短手方向がX方向である。また、短辺28は半円状であるが、これに限らず、直線状であってもよい。
【0052】
結合窓25は、2つの長辺26,27のうち、一方の長辺26の中央部261が両側部262よりも他方の長辺27から離れた形状を有している。中央部261は、長辺26のうちの中央を含む部分であって、例えば長辺26の5分の1ないし2分の1の範囲を占める部分である。両側部262は、中央部261の両側に位置する部分であり、詳しくは、中央部261に隣接する部分又は長辺26から中央部261を除いた部分である。
【0053】
図10及び
図11に示す例では、結合窓25は、長辺26の中央部261が両側部262よりも他方の長辺27から離れたT字形状を有している。長辺26の両側部262は他方の長辺27と平行であり、長辺26の中央部261が他方の長辺27から離れる方向に突出している。中央部261は、円弧状ないし半円状に突出している。
【0054】
本例では、2つの長辺26,27のうち、E面221の中心Cに近い側の長辺26の中央部261がE面221の中心Cに向かって突出している。これにより、電界強度が高いE面221の中心Cに近い側の長辺26において電界の集中を緩和し、耐電力性能の向上を実現することができる。
【0055】
また、結合窓25の短手方向(X方向)の最大幅は、共振領域21のH面212の深さLz(
図8参照)よりも大きいことが好ましい。結合窓25の短手方向の最大幅は、長辺26の中央部261の頂点から他方の長辺27までの距離である。
【0056】
上記のように、導波管型線路82における電界の向きと共振領域21における電界の向きとが概ね直交する場合、結合窓25付近で電界が乱れやすくなるが、結合窓25の短手方向の最大幅をH面212の深さLzよりも大きくすることで、結合窓25から共振領域21の内部へ電界が逃げやすくなり、耐電力性能を向上させることができる。
【0057】
図12に示す例では、結合窓25は、長辺26の中央部261が両側部262よりも長辺27から離れ、長辺27の中央部271も両側部272よりも長辺26から離れた+字形状を有している。すなわち、長辺26の両側部262と長辺27の両側部272は平行であり、長辺26の中央部261と長辺27の中央部271は互いに離れる方向に突出している。中央部261,271は、円弧状ないし半円状に突出している。
【0058】
また、結合窓25の短手方向(X方向)の最大幅は、結合窓25の長手方向(Y方向)の最大幅よりも小さいこと、特には、結合窓25の長手方向の最大幅の半分以下であることが好ましい。結合窓25の短手方向の最大幅は、長辺26の中央部261の頂点から長辺27の中央部271の頂点までの距離である。
【0059】
図13及び
図14に示すように、結合窓25は、長辺26の中央部261が両側部262よりも他方の長辺27から離れた形状を有し、且つ中央部261から両側部262まで直線状に形成されてもよい。このように中央部261から両側部262まで直線状に形成することで、角部を無くして、電界の集中をさらに緩和させることが可能となる。
【0060】
図13に示す例では、結合窓25は、長辺26の中央部261が両側部262よりも他方の長辺27から離れ、且つ中央部261から両側部262まで直線状である略三角形状を有している。中央部261は、円弧状ないし半円状になっている。
【0061】
図14に示す例では、結合窓25は、長辺26の中央部261が両側部262よりも長辺27から離れ、且つ中央部261から両側部262まで直線状であり、同様に、長辺27の中央部271が両側部272よりも長辺26から離れ、且つ中央部271から両側部272まで直線状である略菱形形状を有している。
【0062】
中央部261,271は、円弧状ないし半円状になっている。なお、結合窓25は、略菱形形状に限らず、例えば中央部261,271の一方の突出量が他方より大きい四角形状であってもよい。
【0063】
以上の説明では、1段目の導波管型共振器となる共振領域21に形成された結合窓25の形状について説明したが、最終段の導波管型共振器となる共振領域32に形成された結合窓35も同形状を有する。結合窓25,35のうちの少なくとも一方が同形状を有すればよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【0065】
上記実施形態では、導波管型フィルタ1は、計4つの導波管型共振器(共振領域21,22,31,32)を備えるが、共振器の数はこれに限られず、例えば1ないし3の何れかであってもよいし、又は5以上であってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、結合窓25が共振領域21のE面211に形成されたが、これに限らず、結合窓25は共振領域21のH面212に形成されてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、導波管型共振器は空洞共振器であったが、内部が空気である必要はなく、例えば固体の誘電体が充填されてもよい。また、誘電体ブロックの外面に電極膜を形成してもよい。
【0068】
以下、本発明の代表的な実施形態を列挙する。
【0069】
(1)
電波をTEモードで共振させる少なくとも1つの導波管型共振器を備え、
前記導波管型共振器には、入力用又は出力用の導波管型線路が接続される結合窓が形成され、
前記結合窓は、長手方向に伸び、短手方向に向かい合う2つの長辺のうち、少なくとも一方の長辺の中央部が両側部よりも他方の長辺から離れた形状を有する、
導波管フィルタ。
【0070】
(2)
前記結合窓は、前記導波管型共振器のE面の、中心から離れた位置に形成される、
(1)に記載の導波管フィルタ。
【0071】
(3)
前記結合窓は、前記2つの長辺のうち、前記E面の中心に近い側の長辺の中央部が前記E面の中心に向かって突出した形状を有する、
(2)に記載の導波管フィルタ。
【0072】
(4)
前記結合窓は、前記導波管型共振器のE面の、一辺に沿った方向の端から前記一辺の長さの4分の1までの範囲に形成される、
(1)ないし(3)の何れかに記載の導波管フィルタ。
【0073】
(5)
前記導波管型共振器における電界の向きは、前記導波管型線路における電界の向きと異なる、
(1)ないし(4)の何れかに記載の導波管フィルタ。
【0074】
(6)
前記結合窓の短手方向の最大幅は、前記導波管型共振器のH面の深さよりも大きい、
(1)ないし(5)の何れかに記載の導波管フィルタ。
【0075】
(7)
前記結合窓は、T字形状又は+字形状に形成される、
(1)ないし(6)の何れかに記載の導波管フィルタ。
【0076】
(8)
前記結合窓は、前記中央部から前記両側部まで直線状に形成される、
(1)ないし(6)の何れかに記載の導波管フィルタ。
【0077】
(9)
前記結合窓は、三角形状又は菱形形状に形成される、
(1)ないし(6)、(8)の何れかに記載の導波管フィルタ。
【0078】
(10)
(1)ないし(9)の何れかに記載の導波管フィルタを備える送信機。
【0079】
(11)
(1)ないし(9)の何れかに記載の導波管フィルタを備えるレーダー。
【符号の説明】
【0080】
1 導波管フィルタ、2 ブロック、20 凹部、21,22 共振領域、211 E面、212 H面、221,222 付加領域、23,25 結合窓、26,27 長辺、261,271 中央部、262,272 両側部、28 短辺、29 対向面、3 ブロック、30 凹部、31,32 共振領域、311,312 付加領域、33,35 結合窓、39 対向面、4 仕切り板、41-45 結合窓、82,83 導波管型線路、91 マグネトロン、92 パルス駆動回路、93 サーキュレータ、94 終端器、95 サーキュレータ、96 ロータリジョイント、97 アンテナ、98 リミッタ回路、99 受信回路、100 レーダー