(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032076
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】導波管、送信機、及び導波管の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01P 3/12 20060101AFI20240305BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20240305BHJP
H01P 1/04 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01P3/12
H01P11/00 101
H01P1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135515
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】松谷 賢児
(72)【発明者】
【氏名】木村 篤
(72)【発明者】
【氏名】日高 均
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 伸幸
【テーマコード(参考)】
5J011
5J014
【Fターム(参考)】
5J011DA04
5J014DA05
(57)【要約】
【課題】電波漏洩を効果的に抑制することが可能な導波管を提供する。
【解決手段】導波管は、電波伝播用の凹部が一の面に形成された金属製のブロックと、ブロックの一の面と接触して凹部を覆う金属製のカバーと、を備え、ブロックの一の面に、凹部の縁に沿って一の面から盛り上がった凸条が形成され、カバーの硬さは、ブロックと同じ又はブロックより軟らかく、カバーにブロックの凸条が食い込む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波伝播用の凹部が一の面に形成された金属製のブロックと、
前記ブロックの前記一の面と接触して前記凹部を覆う金属製のカバーと、
を備え、
前記ブロックの前記一の面に、前記凹部の縁に沿って前記一の面から盛り上がった凸条が形成され、
前記カバーの硬さは、前記ブロックと同じ又は前記ブロックより軟らかく、前記カバーに前記ブロックの前記凸条が食い込む、
導波管。
【請求項2】
前記ブロックの前記一の面に、前記凹部の縁に沿って溝が形成され、
前記凸条は、前記溝の片側又は両側の縁に形成される、
請求項1に記載の導波管。
【請求項3】
前記凸条は、前記凹部を囲む無端状に形成される、
請求項1に記載の導波管。
【請求項4】
電波伝播用の第1凹部が第1面に形成された金属製の第1ブロックと、
電波伝播用の第2凹部が第2面に形成された金属製の第2ブロックと、
前記第1ブロックと前記第2ブロックに挟まれ、前記第1ブロックの前記第1面と接触し、前記第2ブロックの前記第2面と接触し、前記第1凹部と前記第2凹部の間に介在する金属製のカバーと、
を備え、
前記第1ブロックの前記第1面に、前記第1凹部の縁に沿って前記第1面から盛り上がった第1凸条が形成され、
前記第2ブロックの前記第2面に、前記第2凹部の縁に沿って前記第2面から盛り上がった第2凸条が形成され、
前記カバーの硬さは、前記第1及び前記第2ブロックと同じ又は前記第1及び前記第2ブロックより軟らかく、前記カバーに前記第1ブロックの前記第1凸条及び前記第2ブロックの前記第2凸条が食い込む、
導波管。
【請求項5】
前記第1ブロックの前記第1面に、前記第1凹部の縁に沿って第1溝が形成され、前記第1凸条は、前記第1溝の片側又は両側の縁に形成され、
前記第2ブロックの前記第2面に、前記第2凹部の縁に沿って第2溝が形成され、前記第2凸条は、前記第2溝の片側又は両側の縁に形成され、
前記第1溝と前記第2溝は、前記カバーを挟んで向かい合う、
請求項4に記載の導波管。
【請求項6】
前記第1凸条は、前記第1溝に対して前記第1凹部の縁に近い側に形成され、
前記第2凸条も、前記第2溝に対して前記第2凹部の縁に近い側に形成される、
請求項5に記載の導波管。
【請求項7】
前記第1凸条は、前記第1溝に対して前記第1凹部の縁に近い側に形成され、
前記第2凸条は、前記第2溝に対して前記第2凹部の縁から遠い側に形成される、
請求項5に記載の導波管。
【請求項8】
前記第1凸条は、前記第1溝の両側に形成され、
前記第2凸条も、前記第2溝の両側に形成される、
請求項5に記載の導波管。
【請求項9】
請求項1に記載の導波管を備える送信機。
【請求項10】
電波伝播用の凹部が一の面に形成された金属製のブロックの、前記一の面に、前記凹部の縁に沿って前記一の面から盛り上がった凸条を形成し、
硬さが前記ブロックと同じ又は前記ブロックより軟らかい金属製のカバーを、前記ブロックの前記一の面と接触させて、前記ブロックの前記凸条を前記カバーに食い込ませる、
導波管の製造方法。
【請求項11】
前記凸条は、機械加工により、前記ブロックの前記一の面に前記凹部の縁に沿って溝を形成するときに、前記溝の片側又は両側の縁に形成される、
請求項10に記載の導波管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管、送信機、及び導波管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縦断面で分割された金属ブロックを結合して導波管を構成する技術が知られている。この種の導波管は製造面で有利である一方、組み付けされた両金属ブロックの対向面の隙間からの電波漏洩(電気的損失)に対する対策が必要となる。
【0003】
特許文献1には、一方の金属ブロックの対向面であって溝近傍に、銀めっきを塗布したり、あるいは金属ブロックや他部材を利用したりして、突起条を形成し、両ブロックの対向面の隙間をなくす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、形成された突起条の表面の平面性が新たに問題となり、隙間を完全になくすことには限界がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、電波漏洩を効果的に抑制することが可能な導波管、送信機、及び導波管の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の導波管は、電波伝播用の凹部が一の面に形成された金属製のブロックと、前記ブロックの前記一の面と接触して前記凹部を覆う金属製のカバーと、を備え、前記ブロックの前記一の面に、前記凹部の縁に沿って前記一の面から盛り上がった凸条が形成され、前記カバーの硬さは、前記ブロックと同じ又は前記ブロックより軟らかく、前記カバーに前記ブロックの前記凸条が食い込む。これによれば、電波漏洩を効果的に抑制することが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記ブロックの前記一の面に、前記凹部の縁に沿って溝が形成され、前記凸条は、前記溝の片側又は両側の縁に形成されてもよい。これによれば、溝とともに凸条を形成することが可能となる。
【0009】
上記態様において、前記凸条は、前記凹部を囲む無端状に形成されてもよい。これによれば、電波漏洩をより効果的に抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明の他の態様の導波管は、電波伝播用の第1凹部が第1面に形成された金属製の第1ブロックと、電波伝播用の第2凹部が第2面に形成された金属製の第2ブロックと、前記第1ブロックと前記第2ブロックに挟まれ、前記第1ブロックの前記第1面と接触し、前記第2ブロックの前記第2面と接触し、前記第1凹部と前記第2凹部の間に介在する金属製のカバーと、を備え、前記第1ブロックの前記第1面に、前記第1凹部の縁に沿って前記第1面から盛り上がった第1凸条が形成され、前記第2ブロックの前記第2面に、前記第2凹部の縁に沿って前記第2面から盛り上がった第2凸条が形成され、前記カバーの硬さは、前記第1及び前記第2ブロックと同じ又は前記第1及び前記第2ブロックより軟らかく、前記カバーに前記第1ブロックの前記第1凸条及び前記第2ブロックの前記第2凸条が食い込む。これによれば、電波漏洩を効果的に抑制することが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記第1ブロックの前記第1面に、前記第1凹部の縁に沿って第1溝が形成され、前記第1凸条は、前記第1溝の片側又は両側の縁に形成され、前記第2ブロックの前記第2面に、前記第2凹部の縁に沿って第2溝が形成され、前記第2凸条は、前記第2溝の片側又は両側の縁に形成され、前記第1溝と前記第2溝は、前記カバーを挟んで向かい合ってもよい。これによれば、溝とともに凸条を形成することが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記第1凸条は、前記第1溝に対して前記第1凹部の縁に近い側に形成され、前記第2凸条も、前記第2溝に対して前記第2凹部の縁に近い側に形成されてもよい。これによれば、第1及び第2凹部に近い側で第1及び第2凸条が噛み合うことで、強固な接触部が形成でき、電波漏洩をより効果的に抑制することが可能となる。
【0013】
上記態様において、前記第1凸条は、前記第1溝に対して前記第1凹部の縁に近い側に形成され、前記第2凸条は、前記第2溝に対して前記第2凹部の縁から遠い側に形成されてもよい。これによれば、第1及び第2凹部に近い側と遠い側とで第1又は第2凸条により二重に接触部が形成でき、電波漏洩をより効果的に抑制することが可能となる。
【0014】
上記態様において、前記第1凸条は、前記第1溝の両側に形成され、前記第2凸条も、前記第2溝の両側に形成されてもよい。これによれば、第1及び第2凹部に近い側でも遠い側でも第1及び第2凸条が噛み合うことで、強固な接触部が二重に形成でき、電波漏洩をより効果的に抑制することが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の態様の送信機は、上記の導波管を備える。これによれば、電波漏洩を効果的に抑制した導波管を備えることが可能となる。
【0016】
また、本発明の他の態様の導波管の製造方法は、電波伝播用の凹部が一の面に形成された金属製のブロックの、前記一の面に、前記凹部の縁に沿って前記一の面から盛り上がった凸条を形成し、硬さが前記ブロックと同じ又は前記ブロックより軟らかい金属製のカバーを、前記ブロックの前記一の面と接触させて、前記ブロックの前記凸条を前記カバーに食い込ませる。これによれば、電波漏洩を効果的に抑制することが可能となる。
【0017】
上記態様において、前記凸条は、機械加工により、前記ブロックの前記一の面に前記凹部の縁に沿って溝を形成するときに、前記溝の片側又は両側の縁に形成されてもよい。これによれば、溝とともに凸条を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図10】ブロックと仕切り板の接合例を示す図である。
【
図11】ブロックと仕切り板の接合例を示す図である。
【
図12】ブロックと仕切り板の接合例を示す図である。
【
図13】ブロックと仕切り板の接合例を示す図である。
【
図14】導波管フィルタの製造方法の手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、レーダー100の構成例を示すブロック図である。レーダー100は、マイクロ波を送受信するマイクロ波送受信機である。レーダー100は、導波管フィルタ1を備えている。レーダー100は、実施形態に係る送信機の一例であり、導波管フィルタ1は、実施形態に係る導波管の一例である。
【0021】
レーダー100は、導波管フィルタ1に加え、マグネトロン91、パルス駆動回路92、サーキュレータ93、終端器94、サーキュレータ95、ロータリジョイント96、アンテナ97、リミッタ回路98、及び受信回路99を備えている。
【0022】
マグネトロン91は、例えば9.4GHzのマイクロ波を基本波として発振するマイクロ波発生器である。パルス駆動回路92は、マグネトロン91を所定周期で間欠駆動してパルス状の送信信号を生成する。サーキュレータ93は、マグネトロン91からのパルス状の送信信号の出力先を切り替える。
【0023】
導波管フィルタ1は、マグネトロン91とアンテナ97との間に介在している。本実施形態において、導波管フィルタ1は帯域通過フィルタとして構成され、基本波の通過を許容し、基本波に対する高調波の通過を抑制する。抑制された高調波は、サーキュレータ93に接続された終端器94で消費される。
【0024】
サーキュレータ95は、導波管フィルタ1からの送信信号をアンテナ97へ出力し、アンテナ97からの受信信号を受信回路99に出力する。ロータリジョイント96は、アンテナ97とサーキュレータ95との間に介在しており、回転系と静止系とを電気的に接続する。
【0025】
アンテナ97は、不図示のモータにより回転しながら、送信信号を電波パルスとして送信するとともに、受信した反射波を受信信号に変換する。リミッタ回路98は、受信開始直後の高レベルの受信信号を抑制する。受信回路99は、アンテナ97からの受信信号を取得する。
【0026】
マグネトロン91からアンテナ97までの経路は導波管で構成されている。また、アンテナ97からリミッタ回路98までの経路も導波管で構成されている。
【0027】
導波管フィルタ1が適用されるレーダー100は、本実施形態では、マイクロ波を送受信する船舶用レーダーであるが、これに限らず、例えばミリ波を送受信する障害物検知又は衝突防止用の車載レーダー等であってもよい。
【0028】
図2は、導波管フィルタ1の構成例を示す分解斜視図である。導波管フィルタ1は、2つのブロック2,3と、それらに挟まれる仕切り板4とを備えている。
【0029】
図3は、ブロック2の構成例を示す図であり、ブロック2を仕切り板4側から見た図である。
図4は、ブロック3の構成例を示す図であり、ブロック3を仕切り板4側から見た図である。
【0030】
図5は、仕切り板4の構成例を示す図であり、仕切り板4をブロック3側から見た図である。
図6は、
図3に示すVI-VI線でブロック2を切断したときの断面を示す図である。
【0031】
図中のZ方向は、ブロック2,3及び仕切り板4の厚さ方向ないし積層方向を表す。X方向及びY方向は、Z方向と直交する平面におけるブロック2,3及び仕切り板4の短手方向及び長手方向をそれぞれ表す。
【0032】
ブロック2,3及び仕切り板4は、金属製である。具体的には、ブロック2,3は、例えばアルミニウム等の導電性を有する金属材料で形成されている。仕切り板4も、例えばアルミニウム合金等の導電性を有する金属材料で形成されている。
【0033】
ブロック2,3は仕切り板4を挟み、ブロック2の対向面29が仕切り板4の一方の主面と接触し、ブロック3の対向面39が仕切り板4の他方の主面と接触する。ブロック2,3及び仕切り板4は、不図示のネジ等の締結部材によって締結される。
【0034】
図3に示すように、ブロック2の対向面29には、電波伝播用の凹部20が形成されている。凹部20は、Y方向に並んだ2つの共振領域21,22と、それらの間に介在する結合窓23とを含んでいる。共振領域22は、高調波を調整するための付加領域221,222を有している。
【0035】
ブロック2の共振領域21の底部には、共振領域21と外部を連通させる結合窓25が形成されている。結合窓25には、入力用の導波管型線路82(
図2参照)が接続され、導波管型線路82から結合窓25を通じて共振領域21に電波が入力される。
【0036】
図4に示すように、ブロック3の対向面39には、電波伝播用の凹部30が形成されている。凹部30は、Y方向に並んだ2つの共振領域31,32と、それらの間に介在する結合窓33とを含んでいる。共振領域31は、高調波を調整するための付加領域311,312を有している。
【0037】
ブロック3の共振領域32の底部には、共振領域32と外部を連通させる結合窓35が形成されている。結合窓35には、出力用の導波管型線路83(
図2参照)が接続され、共振領域32から結合窓35を通じて導波管型線路83に電波が出力される。
【0038】
図5に示すように、仕切り板4には、複数の結合窓41-45が形成されている。仕切り板4はブロック2,3に挟まれ、凹部20,30の間に介在する。すなわち、仕切り板4は、凹部20と凹部30の両方を覆う。本実施形態では、凹部20,30が鏡面対称の関係にある。
【0039】
結合窓41-44は、ブロック2の共振領域22とブロック3の共振領域31とを連通させる。結合窓45は、ブロック2の共振領域21とブロック3の共振領域32とを連通させる。
【0040】
ブロック2,3及び仕切り板4が組み立てられ、締結されることで、各共振領域21,22,31,32は、導波管型共振器として機能する。本実施形態では、導波管型フィルタ1は、計4つの導波管型共振器を含んでいる。各共振領域21,22,31,32は、使用される電波(電磁波)の周波数に基づいて定まる所定の寸法を有している。
【0041】
入力用の導波管型線路82からの電波は、結合窓25を通じて共振領域21に伝播し、共振領域21から結合窓23を通じて共振領域22に伝播し、共振領域22から結合窓41-44を通じて共振領域31に伝播し、共振領域31から結合窓33を通じて共振領域32に伝播し、共振領域32から結合窓35を通じて出力用の導波管型線路83へ最終的に出力される。また、一部の電波は、共振領域21から結合窓45を通じて共振領域32にも伝播する。
【0042】
各共振領域21,22,31,32は、X方向及びY方向の寸法に対してZ方向の寸法が短い扁平形状を有しており、受け入れた電波をTEモードで共振させる。共振する電波の電界ベクトルは、Z方向を向く。なお、各共振領域21,22,31,32は、単一モードの電波を伝播する。
【0043】
ところで、一般に、複数の部材が組み合わさって電波伝播用の空洞を形成する導波管構造においては、部材同士を合わせた部分に微細な隙間ができるため、その隙間から電波が漏洩し、性能の劣化やばらつきが生じやすいという課題がある。
【0044】
そこで、本実施形態では、ブロック2,3の対向面29,39を下記の形状とすることによって微細な隙間を抑制し、電波漏洩を効果的に抑制することを可能としている。
【0045】
図3に示すように、ブロック2(第1ブロック)の凹部20(第1凹部)が形成された対向面29(第1面)には、凹部20の縁に沿って溝24(第1溝)が形成されている。溝24は、凹部20を囲む無端状に形成されている。具体的には、溝24は、凹部20の縁から一定の距離離れて、凹部20の縁と平行に形成されている。凹部20の縁から溝24までの距離は、例えば0.1mm以上1mm以下程度である。
【0046】
同様に、
図4に示すように、ブロック3(第2ブロック)の凹部30(第2凹部)が形成された対向面39(第2面)には、凹部30の縁に沿って溝34(第2溝)が形成されている。溝34は、凹部30を囲む無端状に形成されている。具体的には、溝34は、凹部30の縁から一定の距離離れて、凹部30の縁と平行に形成されている。凹部30の縁から溝34までの距離は、例えば0.1mm以上1mm以下程度である。
【0047】
本実施形態では、凹部20,30の周囲に形成された溝24,34も、凹部20,30と同様に鏡面対称の関係にある。このため、ブロック2,3及び仕切り板4が組み立てられると、溝24,34は仕切り板4を挟んで向かい合う、すなわちZ方向に並ぶ。
【0048】
図7ないし
図9は、ブロック2の凹部20の周囲に形成された溝24及びその近傍を部分的に拡大した部分拡大図である。
【0049】
溝24は、機械加工によって形成される。すなわち、溝24は、工具を用いた溝加工によって形成される。機械加工によって溝24を形成する際、対向面29から凹んだ溝24とともに、溝24の片側又は両側の縁に対向面29から盛り上がった凸条241,242(第1凸条)が形成される。
【0050】
凸条241,242は、連続する盛り上がり部分であり、対向面29に対して隆起した細長く延びる部分である。凸条241,242は、溝24と同様に、凹部20の縁に沿って形成されている。すなわち、凸条241,242は、凹部20を囲む無端状に形成されている。
【0051】
図7の例は、溝24に対して凹部20の縁に近い側に凸条241が形成され、溝24に対して凹部20の縁から遠い側には凸条が形成されていない例である。
【0052】
図8の例は、溝24に対して凹部20の縁に近い側に凸条241が形成され、溝24に対して凹部20の縁から遠い側にも凸条242が形成された例、すなわち二重の凸条241,242が形成された例である。
【0053】
図9の例は、溝24に対して凹部20の縁から遠い側に凸条242が形成され、溝24に対して凹部20の縁に近い側には凸条が形成されていない例である。
【0054】
溝24に対して凸条241,242が形成される側は、例えば工具を当てる角度等によって調整可能である。凸条241,242の高さは、溝24の深さと同程度であり、例えば0.05mm以上0.2mm以下程度である。
【0055】
なお、ブロック2の凹部20の周囲に形成された溝24と同様に、ブロック3の凹部30の周囲に形成された溝34についても、溝34の片側又は両側に凸条341,342(第2凸条)が形成される。
【0056】
図10ないし
図13は、ブロック2,3及び仕切り板4の接合例を示す図である。これらの図は、ブロック2,3の凹部20,30の周囲に形成された溝24,34及びその近傍を部分的に拡大した部分拡大図である。
【0057】
仕切り板4(カバー)の硬さは、ブロック2,3と同じ又はブロック2,3より軟らかい。このため、仕切り板4には、ブロック2の凸条241,242及びブロック3の凸条341,342が食い込む。これにより、ブロック2,3と仕切り板4との間の微細な隙間を抑制し、電波漏洩を効果的に抑制することが可能となる。
【0058】
図10の例は、ブロック2の溝24に対して凹部20の縁に近い側に形成された凸条241と、ブロック3の溝34に対して凹部30の縁に近い側に形成された凸条341とが仕切り板4に食い込んだ例である。このように凸条241,341が凹部20,30により近い位置で積層方向(Z方向)に揃って噛み合うことで、強固な食い込み部が形成されるので、電波漏洩を効果的に抑制することができる。
【0059】
図11の例は、ブロック2の溝24に対して凹部20の縁に近い側に形成された凸条241と、ブロック3の溝34に対して凹部30の縁から遠い側に形成された凸条342とが仕切り板4に食い込んだ例である。これとは逆に、凸条242と凸条341とが仕切り板4に食い込んでもよい。このように凸条241,341が互い違いに仕切り板4に噛み合うことで、仕切り板4の過度の変形を抑えつつ食い込み部が二重に形成されるので、電波漏洩を効果的に抑制することができる。
【0060】
図12の例は、ブロック2の溝24に対して凹部20の縁から遠い側に形成された凸条242と、ブロック3の溝34に対して凹部30の縁から遠い側に形成された凸条342とが仕切り板4に食い込んだ例である。この構成によっても、電波漏洩を抑制することができる。
【0061】
図13の例は、ブロック2の溝24に対して凹部20の縁に近い側に形成された凸条241と、凹部20の縁から遠い側に形成された凸条242と、ブロック3の溝34に対して凹部30の縁に近い側に形成された凸条341と、凹部30の縁から遠い側に形成された凸条342とが仕切り板4に食い込んだ例である。このように溝24,34の両側で凸条241,242,341,342が仕切り板4に噛み合うことで、強固な食い込み部が二重に形成されるので、電波漏洩を効果的に抑制することができる。
【0062】
図14は、導波管フィルタ1の製造方法の手順例を示す図である。同製造方法は、実施形態に係る導波管の製造方法の一例である。
【0063】
まず、ブロック2,3の対向面29,39に凹部20,30を機械加工により形成する(S1)。
【0064】
次に、ブロック2,3の対向面29,39に、凹部20,30の縁に沿って対向面29,39から盛り上がった凸条241-342を形成する(S2)。具体的には、ブロック2,3の対向面29,39に凹部20,30の縁に沿って溝24,34を機械加工により形成するときに、溝24,34の片側又は両側の縁に凸条241-342が形成される(
図7-
図9参照)。
【0065】
次に、ブロック2,3で仕切り板4を挟んで、ブロック2,3の対向面29,39を仕切り板4に接触させる(S3)。具体的には、硬さがブロック2,3と同じ又はブロック2,3より軟らかい仕切り板4を、ブロック2,3の対向面29,39と接触させることで、ブロック2,3の凸条241-342を仕切り板4に食い込ませる(
図10-
図13参照)。
【0066】
次に、ブロック2,3及び仕切り板4をネジ等の締結部材により締結する(S4)。これにより、導波管フィルタ1が得られる。
【0067】
なお、締結後、ブロック2,3をプレス機で加圧して、ネジを増し締めすることが好ましい。これにより、凸条241-342の全体を仕切り板4に食い込ませることが可能になる。プレス機による加圧で凸条241-342が仕切り板4に食込むと、食い込んだ分だけ厚さ方向の寸法が減少するため、ネジを増し締めする。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【0069】
上記実施形態では、機械加工によって溝24,34を形成するときに、溝24,34とともに凸条241-342を形成する例について説明したが、これに限らず、例えば対向面29,39上に金属材料を盛ることで凸条241-342を形成してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、導波管の一例としての導波管フィルタ1の特徴について説明したが、当該特徴は、ブロックに形成された凹部をカバーで覆う導波管構造を有する、例えば通常の導波管、サーキュレータ等の他の種類の導波管に適用されてもよい。
【0071】
以下、本発明の代表的な実施形態を列挙する。
【0072】
(1)
電波伝播用の凹部が一の面に形成された金属製のブロックと、
前記ブロックの前記一の面と接触して前記凹部を覆う金属製のカバーと、
を備え、
前記ブロックの前記一の面に、前記凹部の縁に沿って前記一の面から盛り上がった凸条が形成され、
前記カバーの硬さは、前記ブロックと同じ又は前記ブロックより軟らかく、前記カバーに前記ブロックの前記凸条が食い込む、
導波管。
【0073】
(2)
前記ブロックの前記一の面に、前記凹部の縁に沿って溝が形成され、
前記凸条は、前記溝の片側又は両側の縁に形成される、
(1)に記載の導波管。
【0074】
(3)
前記凸条は、前記凹部を囲む無端状に形成される、
(1)または(2)に記載の導波管。
【0075】
(4)
電波伝播用の第1凹部が第1面に形成された金属製の第1ブロックと、
電波伝播用の第2凹部が第2面に形成された金属製の第2ブロックと、
前記第1ブロックと前記第2ブロックに挟まれ、前記第1ブロックの前記第1面と接触し、前記第2ブロックの前記第2面と接触し、前記第1凹部と前記第2凹部の間に介在する金属製のカバーと、
を備え、
前記第1ブロックの前記第1面に、前記第1凹部の縁に沿って前記第1面から盛り上がった第1凸条が形成され、
前記第2ブロックの前記第2面に、前記第2凹部の縁に沿って前記第2面から盛り上がった第2凸条が形成され、
前記カバーの硬さは、前記第1及び前記第2ブロックと同じ又は前記第1及び前記第2ブロックより軟らかく、前記カバーに前記第1ブロックの前記第1凸条及び前記第2ブロックの前記第2凸条が食い込む、
導波管。
【0076】
(5)
前記第1ブロックの前記第1面に、前記第1凹部の縁に沿って第1溝が形成され、前記第1凸条は、前記第1溝の片側又は両側の縁に形成され、
前記第2ブロックの前記第2面に、前記第2凹部の縁に沿って第2溝が形成され、前記第2凸条は、前記第2溝の片側又は両側の縁に形成され、
前記第1溝と前記第2溝は、前記カバーを挟んで向かい合う、
(4)に記載の導波管。
【0077】
(6)
前記第1凸条は、前記第1溝に対して前記第1凹部の縁に近い側に形成され、
前記第2凸条も、前記第2溝に対して前記第2凹部の縁に近い側に形成される、
(5)に記載の導波管。
【0078】
(7)
前記第1凸条は、前記第1溝に対して前記第1凹部の縁に近い側に形成され、
前記第2凸条は、前記第2溝に対して前記第2凹部の縁から遠い側に形成される、
(5)に記載の導波管。
【0079】
(8)
前記第1凸条は、前記第1溝の両側に形成され、
前記第2凸条も、前記第2溝の両側に形成される、
(5)に記載の導波管。
【0080】
(9)
(1)ないし(8)の何れかに記載の導波管を備える送信機。
【0081】
(10)
電波伝播用の凹部が一の面に形成された金属製のブロックの、前記一の面に、前記凹部の縁に沿って前記一の面から盛り上がった凸条を形成し、
硬さが前記ブロックと同じ又は前記ブロックより軟らかい金属製のカバーを、前記ブロックの前記一の面と接触させて、前記ブロックの前記凸条を前記カバーに食い込ませる、
導波管の製造方法。
【0082】
(11)
前記凸条は、機械加工により、前記ブロックの前記一の面に前記凹部の縁に沿って溝を形成するときに、前記溝の片側又は両側の縁に形成される、
(10)に記載の導波管の製造方法。
【符号の説明】
【0083】
1 導波管フィルタ、2 ブロック、20 凹部、21,22 共振領域、221,222 付加領域、23 結合窓、24 溝、241,242 凸条、25 結合窓、29 対向面、3 ブロック、30 凹部、31,32 共振領域、311,312 付加領域、33 結合窓、34 溝、341,342 凸条、35 結合窓、39 対向面、4 仕切り板、41-45 結合窓、82,83 導波管型線路、91 マグネトロン、92 パルス駆動回路、93 サーキュレータ、94 終端器、95 サーキュレータ、96 ロータリジョイント、97 アンテナ、98 リミッタ回路、99 受信回路、100 レーダー