(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032077
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】フィルタ装置、送信機、及びレーダー
(51)【国際特許分類】
H01P 1/208 20060101AFI20240305BHJP
H01P 1/212 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01P1/208 Z
H01P1/212
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135516
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 憲一
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006JA01
5J006JA31
(57)【要約】
【課題】高調波を抑制することが可能なフィルタ装置を提供する。
【解決手段】フィルタ装置は、基本波及び基本波の高調波を伝播し、高調波の位相を逆相に調整する調整部が設けられた調整部付き共振器を備え、調整部付き共振器を経由する第1伝播経路と、調整部付き共振器を経由しない第2伝播経路と、が形成され、第1伝播経路を伝播する逆相に調整された高調波と、第2伝播経路を伝播する高調波とが合成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波及び前記基本波の高調波を伝播し、前記高調波の位相を逆相に調整する調整部が設けられた調整部付き共振器を備え、
前記調整部付き共振器を経由する第1伝播経路と、
前記調整部付き共振器を経由しない第2伝播経路と、
が形成され、
前記第1伝播経路を伝播する前記逆相に調整された高調波と、前記第2伝播経路を伝播する前記高調波とが合成される、
フィルタ装置。
【請求項2】
前記調整部付き共振器の上流に配置された上流共振器と、
前記調整部付き共振器の下流に配置された下流共振器と、
をさらに備え、
前記第2伝播経路は、前記上流共振器と前記下流共振器を結合する結合路を含む、
請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記調整部付き共振器、前記上流共振器、及び前記下流共振器は、前記基本波をTEモードで共振させる導波管型共振器である、
請求項2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
E面となる隔壁で隔てられた2つの前記調整部付き共振器を備え、
前記隔壁に形成された結合窓は、前記逆相に調整された高調波の一部を伝播する、
請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記上流共振器と前記下流共振器がE面となる隔壁で隔てられ、
前記隔壁に形成された前記結合路としての結合窓は、前記高調波の一部を伝播する、
請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記調整部付き共振器の上流又は下流に配置された他の共振器をさらに備え、
前記第2伝播経路は、前記調整部付き共振器及び前記他の共振器を含むフィルタ部とは独立して形成される、
請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記第2伝播経路は、前記基本波及び前記高調波のうち、前記高調波のみを伝播する、
請求項6に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
請求項1に記載のフィルタ装置を備える送信機。
【請求項9】
請求項1に記載のフィルタ装置を備えるレーダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ装置、送信機、及びレーダーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フィルタ装置では、基本波だけでなく、その高調波も共振することから、高調波を抑制するために、基本波より高い周波数の成分を減衰させる低域通過フィルタを併用することが多い(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低域通過フィルタを併用する手法では、経路が長くなることによる損失の増大や機器の大型化の課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、高調波を抑制することが可能なフィルタ装置並びにそれを備える送信機及びレーダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様のフィルタ装置は、基本波及び前記基本波の高調波を伝播し、前記高調波の位相を逆相に調整する調整部が設けられた調整部付き共振器を備え、前記調整部付き共振器を経由する第1伝播経路と、前記調整部付き共振器を経由しない第2伝播経路と、が形成され、前記第1伝播経路を伝播する前記逆相に調整された高調波と、前記第2伝播経路を伝播する前記高調波とが合成される。これによれば、高調波を抑制することが可能となる。
【0007】
上記態様において、前記調整部付き共振器の上流に配置された上流共振器と、前記調整部付き共振器の下流に配置された下流共振器と、をさらに備え、前記第2伝播経路は、前記上流共振器と前記下流共振器を結合する結合路を含んでもよい。これによれば、共振器間の飛び結合により基本波について急峻な通過特性を得つつ、高調波を抑制することが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記調整部付き共振器、前記上流共振器、及び前記下流共振器は、前記基本波をTEモードで共振させる導波管型共振器であってもよい。これによれば、導波管型共振器において、基本波について急峻な通過特性を得つつ、高調波を抑制することが可能となる。
【0009】
上記態様において、E面となる隔壁で隔てられた2つの前記調整部付き共振器を備え、前記隔壁に形成された結合窓は、前記逆相に調整された高調波の一部を伝播してもよい。これによれば、第1伝播経路における逆相に調整された高調波の伝播量を調整することが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記上流共振器と前記下流共振器がE面となる隔壁で隔てられ、前記隔壁に形成された前記結合路としての結合窓は、前記高調波の一部を伝播してもよい。これによれば、第2伝播経路における高調波の伝播量を調整することが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記調整部付き共振器の上流又は下流に配置された他の共振器をさらに備え、前記第2伝播経路は、前記調整部付き共振器及び前記他の共振器を含むフィルタ部とは独立して形成されてもよい。これによれば、フィルタ部とは独立した第2伝播経路によって、高調波を抑制することが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記第2伝播経路は、前記基本波及び前記高調波のうち、前記高調波のみを伝播してもよい。これによれば、高調波のみを伝播させることで、高調波を抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明の他の態様の送信機は、上記のフィルタ装置を備える。これによれば、高調波の抑制を実現したフィルタ装置を備えることが可能となる。
【0014】
また、本発明の他の態様のレーダーは、上記のフィルタ装置を備える。これによれば、高調波の抑制を実現したフィルタ装置を備えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、実施形態に係るレーダー100の構成例を示すブロック図である。レーダー100は、実施形態に係る送信機の一例であり、マイクロ波を送受信するマイクロ波送受信機である。レーダー100は、実施形態に係るフィルタ装置の一例としての導波管フィルタ1を備えている。
【0018】
レーダー100は、導波管フィルタ1に加え、マグネトロン91、パルス駆動回路92、サーキュレータ93、終端器94、サーキュレータ95、ロータリジョイント96、アンテナ97、リミッタ回路98、及び受信回路99を備えている。
【0019】
マグネトロン91は、例えば9.4GHzのマイクロ波を基本波として発振するマイクロ波発生器である。パルス駆動回路92は、マグネトロン91を所定周期で間欠駆動してパルス状の送信信号を生成する。サーキュレータ93は、マグネトロン91からのパルス状の送信信号の出力先を切り替える。
【0020】
導波管フィルタ1は、マグネトロン91とアンテナ97との間に介在している。本実施形態において、導波管フィルタ1は帯域通過フィルタとして構成され、基本波の通過を許容し、基本波に対する高調波の通過を抑制する。抑制された高調波は、サーキュレータ93に接続された終端器94で消費される。
【0021】
サーキュレータ95は、導波管フィルタ1からの送信信号をアンテナ97へ出力し、アンテナ97からの受信信号を受信回路99に出力する。ロータリジョイント96は、アンテナ97とサーキュレータ95との間に介在しており、回転系と静止系とを電気的に接続する。
【0022】
アンテナ97は、不図示のモータにより回転しながら、送信信号を電波パルスとして送信するとともに、受信した反射波を受信信号に変換する。リミッタ回路98は、受信開始直後の高レベルの受信信号を抑制する。受信回路99は、アンテナ97からの受信信号を取得する。
【0023】
マグネトロン91からアンテナ97までの経路は導波管で構成されている。また、アンテナ97からリミッタ回路98までの経路も導波管で構成されている。
【0024】
導波管フィルタ1が適用されるレーダー100は、本実施形態では、マイクロ波を送受信する船舶用レーダーであるが、これに限らず、例えばミリ波を送受信する障害物検知又は衝突防止用の車載レーダー等であってもよい。
【0025】
図2は、導波管フィルタ1の構成例を示す分解斜視図である。導波管フィルタ1は、2つのブロック2,3と、それらに挟まれる仕切り板4とを備えている。
【0026】
図3は、ブロック2の構成例を示す図であり、ブロック2を仕切り板4側から見た図である。
図4は、ブロック3の構成例を示す図であり、ブロック3を仕切り板4側から見た図である。
【0027】
図5は、仕切り板4の構成例を示す図であり、仕切り板4をブロック3側から見た図である。
図6は、
図3に示すVI-VI線でブロック2を切断したときの断面を示す図である。
【0028】
図中のZ方向は、ブロック2,3及び仕切り板4の厚さ方向ないし積層方向を表す。X方向及びY方向は、Z方向と直交する平面におけるブロック2,3及び仕切り板4の短手方向及び長手方向をそれぞれ表す。
【0029】
ブロック2,3及び仕切り板4は、金属製である。具体的には、ブロック2,3は、例えばアルミニウム等の導電性を有する金属材料で形成されている。仕切り板4も、例えばアルミニウム合金等の導電性を有する金属材料で形成されている。
【0030】
ブロック2,3は仕切り板4を挟み、ブロック2の対向面29が仕切り板4の一方の主面と接触し、ブロック3の対向面39が仕切り板4の他方の主面と接触する。ブロック2,3及び仕切り板4は、不図示のネジ等の締結部材によって締結される。
【0031】
図3に示すように、ブロック2の対向面29には、電波伝播用の凹部20が形成されている。凹部20は、Y方向に並んだ2つの共振領域21,22と、それらの間に介在する結合窓23とを含んでいる。共振領域22は、高調波を調整するための調整部221,222を有している。
【0032】
ブロック2の共振領域21の底部には、共振領域21と外部を連通させる結合窓25が形成されている。結合窓25には、入力用の導波管型線路82(
図2参照)が接続され、導波管型線路82から結合窓25を通じて共振領域21に電波が入力される。
【0033】
図4に示すように、ブロック3の対向面39には、電波伝播用の凹部30が形成されている。凹部30は、Y方向に並んだ2つの共振領域31,32と、それらの間に介在する結合窓33とを含んでいる。共振領域31は、高調波を調整するための調整部311,312を有している。
【0034】
ブロック3の共振領域32の底部には、共振領域32と外部を連通させる結合窓35が形成されている。結合窓35には、出力用の導波管型線路83(
図2参照)が接続され、共振領域32から結合窓35を通じて導波管型線路83に電波が出力される。
【0035】
図5に示すように、仕切り板4には、複数の結合窓41-45が形成されている。仕切り板4はブロック2,3に挟まれ、凹部20,30の間に介在する。すなわち、仕切り板4は、凹部20と凹部30の両方を覆う。本実施形態では、凹部20,30が鏡面対称の関係にある。
【0036】
結合窓41-44は、ブロック2の共振領域22とブロック3の共振領域31とを連通させる。結合窓45は、ブロック2の共振領域21とブロック3の共振領域32とを連通させる。
【0037】
ブロック2,3及び仕切り板4が組み立てられ、締結されることで、各共振領域21,22,31,32は、導波管型共振器として機能する。本実施形態では、導波管型フィルタ1は、計4つの導波管型共振器を含んでいる。各共振領域21,22,31,32は、使用される電波(電磁波)の周波数に基づいて定まる所定の寸法を有している。
【0038】
各共振領域21,22,31,32は、X方向及びY方向の寸法に対してZ方向の寸法が短い扁平形状を有しており、電波をTEモードで共振させる。共振する電波の電界ベクトルは、Z方向を向く。各共振領域21,22,31,32のX方向(電波の伝播方向)の寸法は、例えば基本波の波長の1/2程度である。
【0039】
図7は、導波管型フィルタ1の構成例を模式的に示す図である。同図に示すように、導波管型フィルタ1には、調整部221,222,311,312が設けられた共振領域22,31を経由する第1伝播経路P1と、当該共振領域22,31を経由しない第2伝播経路P2とが形成されている。
【0040】
共振領域22,31は、調整部付き共振器の例である。共振領域22,31の上流に配置された共振領域21は、上流共振器の例である。共振領域22,31の下流に配置された共振領域32は、下流共振器の例である。
【0041】
共振領域22,31は仕切り板4で隔てられ、共振領域22,31も仕切り板4で隔てられている(
図2参照)。仕切り板4は隔壁の例であり、共振領域21,22,31,32のE面となる。E面は、共振する基本波の電界ベクトル(Z方向)と直交する面である。
【0042】
第1伝播経路P1は、共振領域21,22,31,32を順に経由する経路である。具体的には、第1伝播経路P1において、電波は、結合窓25、共振領域21、結合窓23、共振領域22、結合窓41-44、共振領域31、結合窓33、共振領域32、及び結合窓35の順に伝播する。
【0043】
第2伝播経路P2は、共振領域21,32を順に経由する経路であり、共振領域22,31は経由しない。具体的には、第2伝播経路P2において、電波は、結合窓25、共振領域21、結合窓45、共振領域32、及び結合窓35の順に伝播する。結合窓45は、結合路の例である。
【0044】
第1伝播経路P1及び第2伝播経路P2には、基本波及びその高調波(逓倍波)が伝播するが、第1伝播経路P1では、共振領域22,31に設けられた調整部221,222,311,312によって高調波の位相が逆相に調整される。
【0045】
このため、第1伝播経路P1を伝播する逆相に調整された高調波と、第2伝播経路P2を伝播する高調波とが共振領域32で合成され、これにより、高調波の通過が抑制される。つまり、導波管フィルタ1は、基本波の通過を許容するとともに、高調波の通過を抑制する帯域通過フィルタとなる。
【0046】
第1伝播経路P1の共振領域22,31に設けられた調整部221,222,311,312は、基本波は侵入不能であるが、高調波は侵入可能な空間であり(
図3及び
図4参照)、基本波はそのままで、高調波の位相を調整することが可能である。
【0047】
調整部221,222,311,312の幅(X方向の長さ)は、例えば基本波の波長の1/2以下かつ高調波(2次高調波)の波長の1/2以上であることが好ましい。
【0048】
また、調整部221,222,311,312の奥行き(Y方向の長さ)は、高調波の位相のシフト量を決める要素であるため、高調波の位相が逆相となるように調整される。整部221,222,311,312の奥行きは、例えば高調波(2次高調波)の波長の1/5以上1/3以下の範囲で調整されることが好ましい。
【0049】
共振領域22,31の間に形成された結合窓41-44は、逆相に調整された高調波の一部を伝播する。すなわち、結合窓41-44が、共振領域22の高調波モードと共振領域31の高調波モードの結合量を調整する。
【0050】
結合窓41,42は、高調波モード同士が主に電界結合する位置に形成されており、結合窓43,44は、高調波モード同士が主に磁界結合する位置に形成されている。結合窓41-44の位置を調整して電界結合量と磁界結合量に差を設けることで、高調波の伝播量が調整される。
【0051】
第2伝播経路P2では、共振領域21,32が結合窓45により直接的に結合されており、これにより、フィルタ特性の改善が図られている。本実施形態では、共振器間の飛び結合を利用した楕円関数フィルタが構成されている。楕円関数フィルタは、入出力間を結合させることで極若しくはポールと呼ばれる急峻な通過特性を示す。
【0052】
共振領域21,32の間に形成された結合窓45は、高調波の一部を伝播する。結合窓45は、共振領域21,32のE面の中心部に形成されている。すなわち、結合窓45の内側にE面の中心が存在する。
【0053】
すなわち、E面の中心部は、基本波の電界が集中するが、高調波の電界はあまり集中しない位置であるため、E面の中心部に結合窓45を形成することで、基本波のほぼ全部が伝播する一方で、高調波の一部のみが伝播することになる。
【0054】
共振領域22,31の間に形成される結合窓41-44と、共振領域21,32の間に形成される結合窓45は、第1伝播経路P1の逆相に調整された高調波の伝播量と、第2伝播経路P2の高調波の伝播量がほぼ等しくなるように、位置及び大きさが調整される。
【0055】
以上に説明した実施形態によれば、導波管フィルタ1に、高調波の位相を逆相に調整する調整部221,222,311,312を設けた共振領域22,31を経由する第1伝播経路P1と、当該共振領域22,31を経由しない第2伝播経路P2とを形成することで、基本波の通過を許容しつつ、高調波を抑制することが可能となる。
【0056】
さらに、第2伝達経路P2において、共振領域21,32が結合窓45により直接的に結合されることで、共振器間の飛び結合を利用した楕円関数フィルタを構成し、基本波について急峻な通過特性を得ることが可能となる。
【0057】
なお、
図9の参考例に示すように、結合窓41-44によって共振領域22の高調波モードと共振領域31の高調波モードとを結合させないことで、高調波を全て抑制する手法もあるが、この場合、共振領域21,32を結合すると高調波が通過してしまうため、そこを結合することはできない。
【0058】
これに対して、
図7に示す本実施形態では、第1伝播経路P1において高調波を全て抑制するのではなく、高調波の位相を逆相に調整しているので、共振領域21,32を結合して第2伝播経路P2を形成することができ、これにより、高調波の通過を抑制しつつ、基本波について急峻な通過特性を得ることが可能となる。
【0059】
次に、
図8に示す変形例について説明する。上記実施形態と重複する構成は、同番号を付すことで詳細な説明を省略することがある。変形例に係るフィルタ装置10は、共振領域21,22,31,32を含む導波管フィルタ1F(フィルタ部の例)を備えるとともに、導波管フィルタ1Fとは独立した導波管7を備えている。
【0060】
導波管フィルタ1Fは、共振領域21,32を直接的に結合する結合窓45を備えないこと以外は、上記実施形態の導波管フィルタ1と同様の構成を有している。導波管フィルタ1Fには、第1伝播経路P1が形成されている。
【0061】
導波管7は、入力用の導波管型線路82と出力用の導波管型線路83を直接的に結合しており、第2伝播経路P2として設けられている。導波管7は、入力用の導波管型線路82から供給される基本波及び高調波のうち、高調波のみを伝播する。
【0062】
これによれば、第1伝播経路P1を伝播する逆相に調整された高調波と、第2伝播経路P2を伝播する高調波とが、出力用の導波管型線路83において合成され、これにより、高調波が抑制される。
【0063】
導波管7は、幅の調整により高調波のみを伝播する線路とすることが容易であるため、第2伝播経路P2として好適である。これに限らず、第2伝播経路P2が例えばマイクロストリップ線路等で構成されてもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【0065】
上記実施形態では、フィルタ装置の例として導波管フィルタ1を挙げたが、これに限らず、フィルタ装置は例えばマイクロストリップ線路等で構成されたフィルタであってもよい。
【0066】
以下、本発明の代表的な実施形態を列挙する。
【0067】
(1)
基本波及び前記基本波の高調波を伝播し、前記高調波の位相を逆相に調整する調整部が設けられた調整部付き共振器を備え、
前記調整部付き共振器を経由する第1伝播経路と、
前記調整部付き共振器を経由しない第2伝播経路と、
が形成され、
前記第1伝播経路を伝播する前記逆相に調整された高調波と、前記第2伝播経路を伝播する前記高調波とが合成される、
フィルタ装置。
【0068】
(2)
前記調整部付き共振器の上流に配置された上流共振器と、
前記調整部付き共振器の下流に配置された下流共振器と、
をさらに備え、
前記第2伝播経路は、前記上流共振器と前記下流共振器を結合する結合路を含む、
(1)に記載のフィルタ装置。
【0069】
(3)
前記調整部付き共振器、前記上流共振器、及び前記下流共振器は、前記基本波をTEモードで共振させる導波管型共振器である、
(2)に記載のフィルタ装置。
【0070】
(4)
E面となる隔壁で隔てられた2つの前記調整部付き共振器を備え、
前記隔壁に形成された結合窓は、前記逆相に調整された高調波の一部を伝播する、
(3)に記載のフィルタ装置。
【0071】
(5)
前記上流共振器と前記下流共振器がE面となる隔壁で隔てられ、
前記隔壁に形成された前記結合路としての結合窓は、前記高調波の一部を伝播する、
(3)または(4)に記載のフィルタ装置。
【0072】
(6)
前記調整部付き共振器の上流又は下流に配置された他の共振器をさらに備え、
前記第2伝播経路は、前記調整部付き共振器及び前記他の共振器を含むフィルタ部とは独立して形成される、
(1)に記載のフィルタ装置。
【0073】
(7)
前記第2伝播経路は、前記基本波及び前記高調波のうち、前記高調波のみを伝播する、
(6)に記載のフィルタ装置。
【0074】
(8)
(1)ないし(7)の何れかに記載のフィルタ装置を備える送信機。
【0075】
(9)
(1)ないし(7)の何れかに記載のフィルタ装置を備えるレーダー。
【符号の説明】
【0076】
1 導波管フィルタ(フィルタ装置の例)、2 ブロック、20 凹部、21 共振領域(上流共振器の例)、22 共振領域(調整部付き共振器の例)、221,222 調整部、23,25 結合窓、29 対向面、3 ブロック、30 凹部、31 共振領域(調整部付き共振器の例)、32 共振領域(下流共振器の例)、311,312 調整部、33,35 結合窓、39 対向面、4 仕切り板、41-45 結合窓、82,83 導波管型線路、91 マグネトロン、92 パルス駆動回路、93 サーキュレータ、94 終端器、95 サーキュレータ、96 ロータリジョイント、97 アンテナ、98 リミッタ回路、99 受信回路、100 レーダー