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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032086
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】スターリング冷凍機モジュール
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/14 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
F25B9/14 520Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135534
(22)【出願日】2022-08-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000109325
【氏名又は名称】株式会社ツインバード
(72)【発明者】
【氏名】井上 峰幸
(57)【要約】
【課題】単純な構造で排気方向を自由に設定することができるスターリング冷凍機モジュールを提供すること。
【解決手段】スターリング冷凍機11を収容するケース21内に冷却気流Fを形成する送風機41を有するスターリング冷凍機モジュール1において、前記ケース21が、内部に前記スターリング冷凍機11が取り付けられる固定ケース22と、前記スターリング冷凍機11との位置関係が可変である可変ケース23とを有して構成され、前記可変ケース23の側面に設けられた通気孔29に前記送風機41が設けられると共に、前記固定ケース22に対し前記送風機41の向きが異なる位置関係となるように前記可変ケース23の姿勢が変更可能に構成されるので、前記冷却気流Fの排気方向を変更することができる。これによって、前記スターリング冷凍機モジュール1を組み込む冷却製品から冷却気流Fを排出するための排気口の制限が緩和される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スターリング冷凍機と、このスターリング冷凍機を収容するケースと、このケース内に冷却気流を形成するための送風機とを有するスターリング冷凍機モジュールにおいて、
前記ケースが、内部に前記スターリング冷凍機が取り付けられる固定ケースと、前記スターリング冷凍機との位置関係が可変である可変ケースとを有して構成され、前記可変ケースの側面に通風孔が設けられ、この通気孔に前記送風機が設けられると共に、前記固定ケースに対し送風機の向きが異なる位置関係となるように前記可変ケースの姿勢が変更可能に構成されることを特徴とするスターリング冷凍機モジュール。
【請求項2】
前記スターリング冷凍機及び送風機の動作を制御するための制御回路基板が前記固定ケースに取り付けられることを特徴とする請求項1記載のスターリング冷凍機モジュール。
【請求項3】
前記固定ケースに対し可変ケースが回動可能に構成されることを特徴とする請求項1記載のスターリング冷凍機モジュール。
【請求項4】
前記固定ケースに対し前記可変ケースが無段階に回動可能に構成されることを特徴とする請求項3記載のスターリング冷凍機モジュール。
【請求項5】
前記固定ケースに対し可変ケースが着脱可能に構成されることを特徴とする請求項1記載のスターリング冷凍機モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却製品等に組み込んで使用するためのスターリング冷凍機モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスターリング冷凍機モジュールとしては、スターリング冷凍機と、このスターリング冷凍機を収容する第一のケース及び第二のケース(それぞれ、本発明のケースに相当する)と、これらのケース内に冷却気流を形成するための送風機と、この送風機及び前記スターリング冷凍機の動作を制御するためのプリント基板(本発明の制御回路基板に相当する)とを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようなスターリング冷凍機モジュールは、例えば携帯型貯蔵庫に組み込んで使用される。そして、このように前記スターリング冷凍機をモジュール化しておくことで、前記スターリング冷凍機を製品に組み込む際に前記スターリング冷凍機が破損するのを抑制することができるばかりでなく、前記ケースが前記スターリング冷凍機の冷却気流経路を構成することで、製品の内部構造が前記スターリング冷凍機の冷却に与える影響を最小限にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4352459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなスターリング冷凍機モジュールでは、送風機の位置が限定されているので、このモジュールを組み込む冷却製品の構造が制限されてしまうという問題があった。具体的には、スターリング冷凍機を冷却するための冷却器流経路を冷却製品の外部に排出するための排気口の位置が制限される。このように、冷却製品の排気口の位置が制限されると、冷却製品のデザインが制限されるばかりでなく、構造上その位置に排気口があると都合が悪い場合、製品の内部で排気を転向させるための構造が必要となり、冷却製品の構造を複雑化させてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、単純な構造で排気方向を自由に設定することができるスターリング冷凍機モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のスターリング冷凍機モジュールは、スターリング冷凍機と、このスターリング冷凍機を収容するケースと、このケース内に冷却気流を形成するための送風機とを有するスターリング冷凍機モジュールにおいて、前記ケースが、内部に前記スターリング冷凍機が取り付けられる固定ケースと、前記スターリング冷凍機との位置関係が可変である可変ケースとを有して構成され、前記可変ケースの側面に通風孔が設けられ、この通気孔に前記送風機が設けられると共に、前記固定ケースに対し送風機の向きが異なる位置関係となるように前記可変ケースの姿勢が変更可能に構成されるものである。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載のスターリング冷凍機モジュールは、請求項1において、前記スターリング冷凍機及び送風機の動作を制御するための制御回路基板が前記固定ケースに取り付けられるものである。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載のスターリング冷凍機モジュールは、請求項1において、前記固定ケースに対し可変ケースが回動可能に構成されるものである。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載のスターリング冷凍機モジュールは、請求項3において、前記固定ケースに対し前記可変ケースが無段階に回動可能に構成されるものである。
【0010】
更に、本発明の請求項5に記載のスターリング冷凍機モジュールは、請求項1において、前記固定ケースに対し可変ケースが着脱可能に構成されるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載のスターリング冷凍機モジュールは、以上のように構成することにより、前記可変ケースに設けられた送風機の向き、即ち排気方向を前記固定ケースに対し変更することができるので、このモジュールを組み込む冷却製品における冷却気流を排出するための排気口の位置の制限が緩和される。従って、冷却製品のデザインの制限を緩和することができる。
【0012】
なお、前記スターリング冷凍機及び送風機の動作を制御するための制御回路基板が前記固定ケースに取り付けられることで、前記通気孔の向きの変更に連動して前記制御回路基板の位置が変更されることがないため、前記スターリング冷凍機モジュールが収容される冷却製品の設計の自由度を高めることができる。
【0013】
また、前記固定ケースに対し可変ケースが回動可能に構成されることにより、前記可変ケースに設けられた送風機の向き、即ち排気方向を前記固定ケースに対し容易に変更することができる。
【0014】
また、前記固定ケースに対し前記可変ケースが無段階に回動可能に構成されることにより、前記冷却製品の構造の制限を更に緩和することができる。
【0015】
更に、前記固定ケースに対し可変ケースが着脱可能に構成されることで、前記固定ケース及び可変ケースが円筒状以外の形状、例えば正多角形筒状であっても、前記可変ケースを前記固定ケースから取り外し、前記送風機の向きを変えた後、前記可変ケースを前記固定ケースに取り付けることで、前記送風機の向きを容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一の実施形態を示すスターリング冷凍機モジュールの正面図である。
図2】同、左側面図である。
図3】同、A-A断面図である。
図4】同、可変ケースを平面視で左回りに90度回動させた状態における正面図である。
図5】同、スターリング冷凍機を冷却製品に組み込んだ状態を示す説明図である。
図6】同、スターリング冷凍機の吸熱部を示す拡大正面図である。
図7】同、伝熱ブロックの平面図である。
図8】同、締付体の平面 図である。
図9】同、伝熱ブロックのスターリング冷凍機の吸熱部への取り付けを説明する説明図であり、固定前の状態を示すものである。
図10】同、伝熱ブロックのスターリング冷凍機の吸熱部への取り付けを説明する説明図であり、固定後の状態を示すものである。
図11】本発明の第二の実施形態を示すスターリング冷凍機モジュールの正面図である。
図12】同、平面図である。
図13】同、B-B断面図である。
図14】同、可変ケースの向きを平面視で左回りに90度変更した状態における正面図である。
図15】同、可変ケースの向きを平面視で左回りに90度変更した状態における平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第一の実施形態について、図1乃至図10に基づいて説明する。1は本発明のスターリング冷凍機モジュールである。このスターリング冷凍機モジュール1は、スターリング冷凍機11と、このスターリング冷凍機11を収容するケース21と、このケース21内に冷却気流を形成するための送風機41と、この送風機41及び前記スターリング冷凍機11の動作を制御するための制御回路基板51とを有して構成される。
【0018】
前記スターリング冷凍機11は、円筒部12と胴部13とを有する。前記円筒部12の先端側は吸熱部14である。また、前記円筒部12の前記胴部13側は排熱部15である。そして、この排熱部15には、排熱フィン16が伝熱的に取り付けられる。更に、前記胴部13における前記円筒部12の反対側には、振動吸収ユニット17が取り付けられる。なお、前記円筒部12と胴部13と振動吸収ユニット17は、中心軸線Xを基準として同軸に形成される。
【0019】
前記ケース21は、固定ケース22と可変ケース23とを有して構成される。前記固定ケース22のケース本体24は、円筒状に形成されると共に、上部に開口部25が形成される。また、前記ケース本体24の側面には保護突部26及び複数の取付ボス27が形成される。そして、前記固定ケース22の内部に、前記スターリング冷凍機11が取り付けられる。なお、前記スターリング冷凍機11は、特許第4352459号に示されるような公知の構造によって前記固定ケース22に取り付けられる。このため、前記スターリング冷凍機11の取付構造についての説明は省略する。このスターリング冷凍機11と前記固定ケース22は、前記中心軸線Xを基準として同軸に配置される。そして、前記スターリング冷凍機11の排熱フィン16は、前記開口部25において露出する。一方、前記可変ケース23は、有底円筒状に形成されるケース本体28の側面に通気孔29が形成される。なお、前記可変ケース23のケース本体28の直径は、前記固定ケース22のケース本体24の直径と同じである。また、前記固定ケース22のケース本体24と前記可変ケース23のケース本体28は、前記中心軸線Xを基準として同軸に配置される。即ち、前記固定ケース22のケース本体24と前記可変ケース23のケース本体28は、全体として一つの円筒状に形成される。そして、前記固定ケース22と可変ケース23の内部空間は連通する。これによって、前記固定ケース22の開口部25から前記可変ケース23の通気孔29に至る通気経路30が形成される。また、前記可変ケース23は前記固定ケース22に対し、前記中心軸線X回りに回動可能とされる。即ち、これにより、前記固定ケース22及びスターリング冷凍機11に対し、前記通気孔29の向きを容易に変更することができる。また、前記可変ケース23が前記固定ケース22に対し無段階に回動可能であることから、前記通気孔29の向きを任意に変更することができる。そして、前記通気孔29には、前記送風機41が取り付けられる。この送風機41は、前記通気孔29において前記ケース21の内部から外部へ冷却気流Fが流れるように、前記通気孔29に取り付けられる。
【0020】
前記固定ケース22の取付ボス27には、前記制御回路基板51がビス止めされる。そして、この制御回路基板51の幅は、図1に示すように、前記保護突部26の幅以下にするのが望ましい。また、図2では省略したが、前記取付ボス27に前記制御回路基板51を取り付けた状態において、この制御回路基板51上に実装される回路素子が前記保護突部26よりも前方に突出しないことが望ましい。このような条件を満たすように前記保護突部26を構成することにより、前記制御回路基板51上に実装される回路素子の破損が抑制される。そして、前記制御回路基板51は、図示しない電源に接続される。また、前記制御回路基板51は、前記スターリング冷凍機11、送風機41、及び図示しないセンサー類と電気的に接続される。なお、これらの電気的な接続のための電線については、記載を省略する。但し、前記送風機41が取り付けられた可変ケース23が、前記制御回路基板51が取り付けられた固定ケース22に対し可変であるので、前記制御回路基板51と送風機41とを接続する電線は、十分な余裕を持たせることが望ましい。
【0021】
なお、前記保護突部26及び取付ボス27は前記固定ケース22に形成され、前記制御回路基板51は前記固定ケース22に取り付けられるのが望ましい。これは、仮に前記保護突部26及び取付ボス27を可変ケース23に形成し、前記制御回路基板51を可変ケース23に取り付ける構造とした場合、冷却気流Fの排気方向を変更するために前記可変ケース23を回動させて前記通気孔29の位置を変更すると、前記保護突部26及び制御回路基板51の位置も変更されてしまうためである。即ち、前記保護突部26及び制御回路基板51の位置を考慮して、後述する冷却製品71を設計する必要が生じ、この冷却製品71の設計の自由度を低下させることになるためである。前記保護突部26及び取付ボス27が前記固定ケース22に形成され、前記制御回路基板51が前記固定ケース22に取り付けられることで、前記スターリング冷凍機モジュール1が収容される冷却製品71の設計の自由度を高めることができる。
【0022】
前記スターリング冷凍機11の円筒部12の吸熱部14には、伝熱部61が取り付けられる。この伝熱部61は、伝熱ブロック62と締付体63とを有して構成される。前記伝熱ブロック62は、アルミニウム合金等の熱伝導性の良好な金属によって形成される。この伝熱ブロック62は、上方に設けられた伝熱ブロック本体64と、下方に設けられた環状部65とを有する。そして、前記伝熱ブロック本体64の下面64A及び前記環状部65の内面65Aは、前記吸熱部14との接触面であり、前記吸熱部14の外面とほぼ同じ形状とされる。また、前記環状部65の外面65Bには、雄螺子66が形成される。この雄螺子66はテーパー螺子であり、先端側(図9,10における下方)が狭部、基端側(図9,10における上方)が広部である。更に、前記伝熱ブロック62の外周部には、上下方向に8箇所の切欠部67(67A~67H)が形成される。これらの切欠部67(67A~67H)によって、前記環状部65は8分割される。なお、前記各切欠部67(67A~67H)は、前記伝熱ブロック62の周方向に等間隔で形成されるのが望ましい。また、前記各切欠部67の数、即ち前記環状部65の分割数は任意である。
【0023】
前記締付体63は環状であり、この締付体63には雌螺子68が形成される。そして、この雌螺子68は、前記雄螺子66と螺合可能に構成される。なお、前記雌螺子68はテーパー螺子であり、狭部と広部を有する。従って、前記環状部65が周方向に複数に分割されていることと相まって、前記締付体63の雌螺子68を広部側から前記伝熱ブロック62の雄螺子66と螺合させることで、前記環状部65が内側へ移動する。即ち、前記伝熱ブロック62を前記吸熱部14に被せた状態で前記雄螺子66と前記締付体63の雌螺子68とを螺合させることで、前記伝熱ブロック62の環状部65の内面65A(即ち接触面)が、前記吸熱部14に密着する。なお、前記伝熱ブロック本体64の上面69は平面状に形成されると共に、前記中心軸線Xに対し傾斜する。
【0024】
前記スターリング冷凍機11の吸熱部14へ前記伝熱部61を取り付ける手順について説明する。まず、前記スターリング冷凍機11の円筒部12が前記締付体63に差し込まれるように、この締付体63を前記円筒部12に遊嵌させる。この際、前記雌螺子68の広部が上方で狭部が下方になるように遊嵌させる。次に、前記伝熱ブロック62を前記円筒部12の吸熱部14に被せる。この状態では、前記伝熱ブロック62の接触面である前記環状部65の内面65Aは、前記吸熱部14との間に僅かな隙間を有する。更に、前記締付体63の雌螺子68を前記伝熱ブロック62の雄螺子66と螺合させる。前記雄螺子66と雌螺子68とが共にテーパー螺子であると共に、前記環状部65が周方向に複数に分割されているため、両者を螺合させると、前記環状部65が内側に押されて動き、前記内面65Aが前記吸熱部14の外面に圧接する。これによって、前記伝熱部61が前記吸熱部14に固定されると共に、両者が伝熱的に接続される。
【0025】
なお、71は冷却製品である。この冷却製品71内に前記スターリング冷凍機モジュール1が収容されると共に、このスターリング冷凍機モジュール1の通気孔29が前記冷却製品71の排気口72と連通するようにされる。
【0026】
次に、本実施形態の作用について説明する。冷却製品71を操作することで、これに収容された前記スターリング冷凍機モジュール1のスターリング冷凍機11及び送風機41が前記制御回路基板51によって作動させられる。前記スターリング冷凍機11は、その吸熱部14が低温になると共に、その排熱部15が高温になる。即ち、前記吸熱部14に伝熱的に接続された前記伝熱部61、及びこの伝熱部61に伝熱的に接続された図示しない伝熱要素も低温となる。一方、前記排熱部15に伝熱的に接続された排熱フィン16は高温となる。また、前記スターリング冷凍機11の胴部13に収容された図示しない電動機が発生する熱によって、前記胴部13も高温になる。これら排熱フィン16及び胴部13は、前記送風機41が作動することで発生する冷却気流Fにより冷却される。即ち、前記送風機41が発生させた冷却気流Fは、前記固定ケース22の開口部25から通気経路30に入り、前記通気孔29から排出される。この際、前記冷却気流Fは前記排熱フィン16及び胴部13から熱を奪うことになる。これによって、前記スターリング冷凍機11の高温になる部位は冷却される。そして、前記冷却気流Fは、前記冷却製品71の排気口72から排出される。
【0027】
なお、前記冷却製品71に収容されるのは前記スターリング冷凍機モジュール1ばかりでなく、他にも様々な機械要素73が収容される可能性がある。そして、とある機械要素73が前記スターリング冷凍機モジュール1の排気を妨げる位置に配置せざるを得ない場合もあり得る。また、機能上の要求又はデザイン上の要求で、排気口72の位置を変更したい場合もあり得る。これらのような場合であっても、前記スターリング冷凍機ユニット1のケース21の可変ケース23が、前記固定ケース22及びスターリング冷凍機11に対し回動可能であるため、前記通気孔29及び送風機41の向きを、例えば図1の向きから図4の向きに変更することができる。このように、前記通気孔29及び送風機41の向きを変更することで、前記冷却製品71の設計の自由度を向上させることができる。
【0028】
また、前述したように、前記可変ケース23が前記固定ケース22に対し前記中心軸線X回りに無段階に回動可能であることから、前記通気孔29及び送風機41の向きを任意に変更することができる。これにより、前記冷却製品71の内部における前記機械要素73の配置に制限があったとしても、前記排気口72から冷却気流Fの排出が妨げられるのを抑制することができる。これは特に、前記冷却製品71の小型化を図る際に有効である。即ち、前記冷却製品71を小型化する場合、前記スターリング冷凍機モジュール1が収容される空間Sも狭くなることが考えられる。ここで、前記機械要素73が小型化できなければ、この機械要素73の前記空間S内での配置が更に制限を受けることになる。このような場合であっても、前記通気孔29及び送風機41の向きを調整することで、前記機械要素73を避けて冷却気流Fを前記排気口72から排出することが可能となる。
【0029】
更に、前述したように、前記伝熱部61が前記伝熱ブロック62と締付体63とに分割され、前記伝熱ブロック62の雄螺子66と前記締付体63の雌螺子68とを螺合させることで、前記伝熱ブロック62の環状部65の内面65Aが前記吸熱部14の外面に押し付けられて伝熱的に接続される。これによって、前記伝熱ブロック62と前記冷却製品71の冷却対象部74とを図示しない伝熱要素で伝熱的に接続した状態で、前記伝熱ブロック62と冷却対象部74と伝熱要素とを共通の断熱材75によって一体に覆った後、前記スターリング冷凍機11の吸熱部14と伝熱ブロック62とを伝熱的に接続することができる。この場合、前記伝熱ブロック62から冷却対象部74までの前記断熱材75による断熱性を高めることができる。また、前記伝熱要素が、寸法誤差が大きくなりがちなもの、例えばサーモサイフォンであった場合、このサーモサイフォンのパイプを前記伝熱部61に接続する際に、前記伝熱ブロック62を前記中心軸線X回りに回動させて調整することで、前記サーモサイフォンと伝熱部61との接続を容易にすることができる。
【0030】
以上のように本発明は、スターリング冷凍機11と、このスターリング冷凍機11を収容するケース21と、このケース21内に冷却気流Fを形成するための送風機41とを有するスターリング冷凍機モジュール1において、前記ケース21が、内部に前記スターリング冷凍機11が取り付けられる円筒状の固定ケース22と、前記スターリング冷凍機11との位置関係が可変である円筒状の可変ケース23とを有して構成され、これら固定ケース22と可変ケース23が同軸に設けられ、この可変ケース23の側面に通気孔29が設けられ、この通気孔29に前記送風機41が設けられると共に、前記固定ケース22に対し送風機41の向きが異なる位置関係となるように前記可変ケース23の姿勢が変更可能に構成されるので、前記冷却気流Fの排気方向を前記固定ケース22に対し変更することができる。これによって、前記スターリング冷凍機モジュール1を組み込む冷却製品71における冷却気流Fを排出するための排気口72の位置の制限が緩和されるので、前記冷却製品71のデザインの制限を緩和することができる。
【0031】
また、本発明は、前記スターリング冷凍機11及び送風機41の動作を制御するための制御回路基板51を前記固定ケース22に取り付けられることで、前記通気孔29の向きの変更に連動して前記制御回路基板51の位置が変更されることがないため、前記スターリング冷凍機モジュール1が収容される冷却製品71の設計の自由度を高めることができるものである。
【0032】
また、本発明は、前記スターリング冷凍機11及び送風機41の動作を制御するための制御回路基板51が前記固定ケース22に取り付けられることで、前記スターリング冷凍機モジュール1が収容される冷却製品71の設計の自由度を高めることができる。
【0033】
また、本発明は、前記固定ケース22に対し可変ケース23が回動可能に構成されることにより、前記可変ケース23に設けられた送風機41の向き、即ち排気方向を前記固定ケース22に対し容易に変更することができる。
【0034】
更に、本発明は、前記固定ケース22に対し前記可変ケース23が無段階に回動可能に構成されることにより、前記冷却製品71の構造の制限を更に緩和することができる。
【0035】
次に、本発明の第二の実施形態について、図11乃至図15に基づいて説明する。なお、第一の実施形態と共通する部分については、共通の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0036】
101は本発明のスターリング冷凍機モジュールである。このスターリング冷凍機モジュール101は、スターリング冷凍機11と、このスターリング冷凍機11を収容するケース121と、このケース121内に冷却気流を形成するための送風機41と、この送風機41及び前記スターリング冷凍機11の動作を制御するための制御回路基板51とを有して構成される。
【0037】
前記ケース121は、固定ケース122と可変ケース123とを有して構成される。前記固定ケース122のケース本体124は、正八角筒状に形成されると共に、上部に開口部125が形成される。また、前記ケース本体124の側面には保護突部126及び複数の取付ボスが形成される。そして、前記固定ケース122の内部に、前記スターリング冷凍機11が取り付けられる。なお、前記スターリング冷凍機11は、特許第4352459号に示されるような公知の構造によって前記固定ケース122に取り付けられる。このため、前記スターリング冷凍機11の取付構造についての説明は省略する。このスターリング冷凍機11と前記固定ケース122は、中心軸線Xを基準として同軸に配置される。そして、前記スターリング冷凍機11の排熱フィン16は、前記開口部125において露出する。一方、前記可変ケース123は、有底正八角筒状に形成されるケース本体128の側面に通気孔129が形成される。なお、前記可変ケース123のケース本体129の外寸は、前記固定ケース122のケース本体124の外寸と同じである。また、前記固定ケース122のケース本体124と前記可変ケース123のケース本体128は、前記中心軸線Xを基準として同軸に配置される。即ち、前記固定ケース122のケース本体124と前記可変ケース123のケース本体128は、全体として一つの正八角筒状に形成される。そして、前記固定ケース122と可変ケース123の内部空間は連通する。これによって、前記固定ケース122の開口部125から前記可変ケース123の通気孔129に至る通気経路130が形成される。また、前記可変ケース123は前記固定ケース122から取り外しが可能であると共に、前記ケース本体124,128の平面視形状である正八角形が重なる位置関係で取り付けが可能である。即ち、これにより、前記固定ケース122及びスターリング冷凍機11に対し、前記通気孔129の向きを容易に8通りに変更することができる。そして、前記通気孔129には、前記送風機41が取り付けられる。この送風機41は、前記通気孔129において前記ケース121の内部から外部へ冷却気流Fが流れるように、前記通気孔129に取り付けられる。
【0038】
前記固定ケース122の取付ボスには、前記制御回路基板51がビス止めされる。そして、この制御回路基板51の幅は、図11に示すように、前記保護突部126の幅以下にするのが望ましい。また、前記取付ボスに前記制御回路基板51を取り付けた状態において、この制御回路基板51上に実装される回路素子が前記保護突部126よりも前方に突出しないことが望ましい。このような条件を満たすように前記保護突部126を構成することにより、前記制御回路基板51上に実装される回路素子の破損が抑制される。そして、前記制御回路基板51は、図示しない電源に接続される。また、前記制御回路基板51は、前記スターリング冷凍機11、送風機41、及び図示しないセンサー類と電気的に接続される。なお、これらの電気的な接続のための電線については、記載を省略する。但し、前記送風機41が取り付けられた可変ケース123が、前記制御回路基板51が取り付けられた固定ケース122に対し可変であるので、前記制御回路基板51と送風機41とを接続する電線は、十分な余裕を持たせることが望ましい。
【0039】
なお、前記保護突部126及び取付ボスは前記固定ケース122に形成され、前記制御回路基板51は前記固定ケース122に取り付けられるのが望ましい。これは、仮に前記保護突部126及び取付ボスを可変ケース123に形成し、前記制御回路基板51を可変ケース123に取り付ける構造とした場合、冷却気流Fの排気方向を変更するために前記可変ケース123を固定ケース122から取り外した後で位置関係を変更して取り付けると、前記保護突部126及び制御回路基板51の位置も変更されてしまうためである。即ち、前記保護突部126及び制御回路基板51の位置を考慮して、後述する冷却製品を設計する必要が生じ、この冷却製品の設計の自由度を低下させることになるためである。前記保護突部126及び取付ボスが前記固定ケース122に形成され、前記制御回路基板51が前記固定ケース122に取り付けられることで、前記スターリング冷凍機モジュール101が収容される冷却製品の設計の自由度を高めることができる。
【0040】
次に、本実施形態の作用について説明する。冷却製品を操作することで、これに収容された前記スターリング冷凍機モジュール101のスターリング冷凍機11及び送風機41が前記制御回路基板51によって作動させられる。前記スターリング冷凍機11は、その吸熱部14が低温になると共に、その排熱部15が高温になる。即ち、前記吸熱部14に伝熱的に接続された前記伝熱部61、及びこの伝熱部61に伝熱的に接続された図示しない伝熱要素も低温となる。一方、前記排熱部15に伝熱的に接続された排熱フィン16は高温となる。また、前記スターリング冷凍機11の胴部13に収容された図示しない電動機が発生する熱によって、前記胴部13も高温になる。これら排熱フィン16及び胴部13は、前記送風機41が作動することで発生する冷却気流Fにより冷却される。即ち、前記送風機41が発生させた冷却気流Fは、前記固定ケース122の開口部125から通気経路130に入り、前記通気孔129から排出される。この際、前記冷却気流Fは前記排熱フィン16及び胴部13から熱を奪うことになる。これによって、前記スターリング冷凍機11の高温になる部位は冷却される。そして、前記冷却気流Fは、前記冷却製品の排気口から排出される。
【0041】
なお、前記冷却製品に収容されるのは前記スターリング冷凍機モジュール101ばかりでなく、他にも様々な機械要素が収容される可能性がある。そして、とある機械要素が前記スターリング冷凍機モジュール101の排気を妨げる位置に配置せざるを得ない場合もあり得る。また、機能上の要求又はデザイン上の要求で、前記冷却製品の排気口の位置を変更したい場合もあり得る。これらのような場合であっても、前記スターリング冷凍機ユニット101のケース121の可変ケース123が、前記固定ケース122及びスターリング冷凍機11に対し回動可能であるため、前記通気孔129及び送風機41の向きを、例えば図11の向きから図14の向きに変更することができる。このように、前記通気孔129及び送風機41の向きを変更することで、前記冷却製品の設計の自由度を向上させることができる。
【0042】
また、前述したように、前記可変ケース123が前記固定ケース122に対し位置関係を変更した状態で着脱可能であることから、前記通気孔129及び送風機41の向きを45度刻みで8通りに変更することができる。これにより、前記冷却製品の内部における前記機械要素の配置に制限があったとしても、前記冷却製品の排気口から冷却気流Fの排出が妨げられるのを抑制することができる。なお、このような構成にすることにより、前記通気孔29の向きを無段階に調整可能な第一の実施形態の構造に対し、前記通気孔129の向きを8段階に調整可能な第二の実施形態の構造では、前記冷却製品の構造の自由度は低下する。しかしながら、前記ケース本体124,128の形状が円筒状に限定されないので、前記ケース121自体の形状の自由度は向上する。また、本実施形態では、前記ケース本体124,128の形状を正八角筒状(正n角筒状であってn=8)としたが、nの値を大きくすることで、前記冷却製品の構造の自由度を十分高めることができる。また、前記ケース本体124,128の形状は必ずしも正n角筒状でなくても良く、n回対称形筒状に一般化することができる。この場合、前記通気孔129及び送風機41の向きを360/n度刻みでn通りに変更することができる。この場合も、nの値が十分に大きければ、前記冷却製品の構造の自由度を十分高めることができる。このように、nの値を大きくすれば、前記冷却製品の小型化を図る際に有効である。即ち、前記冷却製品を小型化する場合、前記スターリング冷凍機モジュール101が収容される空間も狭くなることが考えられる。ここで、前記機械要素が小型化できなければ、この機械要素の前記空間内での配置が更に制限を受けることになる。このような場合であっても、前記通気孔129及び送風機41の向きを調整することで、前記機械要素を避けて冷却気流Fを排気口から排出することが可能となる。
【0043】
以上のように本発明は、スターリング冷凍機11と、このスターリング冷凍機11を収容するケース121と、このケース121内に冷却気流Fを形成するための送風機41とを有するスターリング冷凍機モジュール1において、前記ケース21が、内部に前記スターリング冷凍機11が取り付けられる正八角筒状の固定ケース22と、前記スターリング冷凍機11との位置関係が可変である正八角筒状の可変ケース23とを有して構成され、これら固定ケース22と可変ケース23が同軸に設けられ、この可変ケース23の側面に通気孔29が設けられ、この通気孔29に前記送風機41が設けられると共に、前記固定ケース22に対し送風機41の向きが異なる位置関係となるように前記可変ケース23の姿勢が変更可能に構成されるので、前記冷却気流Fの排気方向を前記固定ケース22に対し変更することができる。これによって、前記スターリング冷凍機モジュール1を組み込む冷却製品71における冷却気流Fを排出するための排気口72の位置の制限が緩和されるので、前記冷却製品71のデザインの制限を緩和することができる。
【0044】
また、本発明は、前記スターリング冷凍機11及び送風機41の動作を制御するための制御回路基板51が前記固定ケース122に取り付けられることで、前記通気孔129の向きの変更に連動して前記制御回路基板51の位置が変更されることがないため、前記スターリング冷凍機モジュール101が収容される冷却製品の設計の自由度を高めることができる。
【0045】
更に、前記固定ケースに対し可変ケースが着脱可能に構成されることで、前記固定ケース及び可変ケースが円筒状以外の形状、例えば正多角形筒状等のn回対称形筒状であっても、前記可変ケースを前記固定ケースから取り外し、前記送風機の向きを変えた後、前記可変ケースを前記固定ケースに取り付けることで、前記送風機の向きを容易に変更することができる。
【0046】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、第一の実施形態において、固定ケースと可変ケースの間にゴム等からなる摩擦ストッパー機構を設けても良い。このように構成することで、通気孔の向きを調整した後、冷却製品に組み込む際に通気孔の向きがずれてしまうのを抑制することができる。また、第一の実施形態において、固定ケースと可変ケースの間にクリック機構を設けても良い。この場合、無段階調整はできなくなるが、クリックのピッチを小さくすることで、前記通気孔の向きを十分な自由度で調整することができるばかりでなく、通気孔の向きを調整した後、冷却製品に組み込む際に通気孔の向きがずれてしまうのを抑制することができる。また、第一の実施形態において、固定ケースと可変ケースとの間に、前記通気孔の向きを調整した後で固定ケースと可変ケースの位置関係を固定する固定機構を設けても良い。このように構成することで、通気孔の向きを調整した後、冷却製品に組み込む際に通気孔の向きがずれてしまうのを抑制することができる。更に、第二の実施形態において、ケース本体の形状を正八角形筒状としたが、これ以外の正n角形筒状、又はn回対称形筒状としても良い。この場合、nの値が大きければ、調整の段階を細かくすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1,101 スターリング冷凍機モジュール
11 スターリング冷凍機
21,121 ケース
22,122 固定ケース
23,123 可変ケース
29,129 通気孔
41 送風機
51 制御回路基板
X 中心軸線
F 冷却気流
図1
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