(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032096
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20240305BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61K8/86
A61Q19/00
A61K8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135552
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】原 優介
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝治
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC582
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD051
4C083AD052
4C083AD092
4C083AD352
4C083CC02
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE11
(57)【要約】
【課題】塗布時にさっぱりとした感触であり、マスクを長時間着用後外した後のしっとり感に優れ、マスク着用後の脂性肌の人のテカリおよびべたつき感を長時間抑える皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】皮膚化粧料は、成分(a)を0.1~25質量%、成分(b)を0.01~3質量%、成分(c)を0.1~25質量%および成分(d)を含有し、成分(b)の成分(a)に対する質量比((b)/(a))が1/100~1/5である。
(a)式(1)で示されるポリアルキレンオキシド誘導体
Z-[O(AO)l(EO)m(BO)n-H]p・・・(1)
(b)式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体
R-[(PO)x(EO)y]q-H ・・・ (2)
(c) 炭素数が2~6である多価アルコール
(d) 水
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(a)を0.1~25質量%、成分(b)を0.01~3質量%、成分(c)を0.1~25質量%および成分(d)を含有し、前記成分(b)の前記成分(a)に対する質量比((b)/(a))が1/100~1/5であることを特徴とする、皮膚化粧料。
(a) 下記式(1)で示されるポリアルキレンオキシド誘導体
Z-[O(AO)l(EO)m(BO)n-H]p・・・(1)
(式(1)中、
Zは炭素数3~9のアルコールからすべての水酸基を除いた残基であり、
pは前記アルコールの価数であって、3以上、9以下であり、
AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、BOはオキシブチレン基であり、前記オキシアルキレン基AOと前記オキシエチレン基EOと前記オキシブチレン基BOとはブロック状またはランダム状に付加していてよい。ただし、少なくとも前記オキシアルキレン基AOと前記オキシブチレン基BOがランダム状に付加している場合、AOはオキシプロピレン基である。
前記誘導体における前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数p×lが1≦p×l≦50を満足しており、前記誘導体における前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数p×mが1≦p×m≦50を満足しており、前記誘導体における前記オキシブチレン基BOの平均付加モル数p×nが1≦p×n≦10を満足しており、前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計に対する前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数の割合m/(l+m)が0.15~0.75である。)
(b) 下記の式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体
R-[(PO)x(EO)y]q-H ・・・ (2)
(式(2)中、
Rは炭素数2~3のアルコールからすべての水酸基を除いた残基であり、
qは前記アルコールの価数であって、2以上、3以下であり、
POはオキシプロピレン基であり、
EOはオキシエチレン基であり、
前記誘導体における前記オキシプロピレン基POの平均付加モル数x×qが1≦x×q≦30を満足しており、
前記誘導体における前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数y×qが1≦y×q≦40を満足しており、
前記オキシプロピレン基POの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計に対する前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数の割合y/(x+y)が0.45~0.75であり、
前記オキシプロピレン基POと前記オキシエチレン基EOとがランダム状に付加している。)
(c) 炭素数が2~6である多価アルコール
(d) 水
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布時にさっぱりとした感触であり、マスクを長時間着用後外した後のしっとり感に優れ、脂性肌の人のテカリおよびべたつき感を長時間抑える、皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
肌を健やかに保つためには、肌のモイスチャーバランスを保つことが重要であるといわれている。モイスチャーバランスとは、肌の角質層の水分、皮脂、自然保湿因子(NMF)のバランスである。化粧料を皮膚に塗布することにより、これら三成分に相当する水-保湿剤-油分を補給することがモイスチャーバランスを保つ上で重要である。
【0003】
これまで肌の乾燥を防ぐために、様々な保湿成分や数種類の保湿成分を配合した化粧料が開発されてきた。特許文献1では、特定のアルキレンオキシド誘導体を配合した化粧料が保湿効果に優れ、べたつき感がないことが報告されている。
【0004】
特許文献2によれば、セラミド類とブチルアルコール等の特定の化合物、特定のアルキレンオキシド誘導体とを配合した化粧料が肌の皮膜感が低減され、さっぱりとした使用感で、保湿効果の持続感に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/038724 A1
【特許文献2】特開2021-80234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モイスチャーバランスを保つには、外部環境に応じて最適な化粧料を選択することが必要になる。近年、感染症の拡大によるマスク着用が必要となり、肌の外部環境が一日の中で大きく変化する状況となっている。特に、マスクを長時間着用するとマスク内の湿度が高くなるが、マスクを外した際にマスク内側の水分が蒸発すると、急速に肌内部の水分が蒸発して乾燥が進んでしまう。このような急速な水分蒸散が起きる状況においても、モイスチャーバランスを保つためには、保湿剤や油分を高配合することが必要となる。しかし、これによって、塗布時にべたつき感が生じる、塗布時のさっぱり感が損なわれてしまう、また脂性肌の人においてはテカリが生じてしまうという問題が生ずる。
【0007】
これに対して、特許文献1記載の化粧料では、べたつき感を長時間抑えることができず、またマスクを外した際の急激な水分蒸散における保湿効果についても十分なものでなかった。
【0008】
また、特許文献2の化粧料においても、マスクを外した際の急激な水分蒸散における保湿効果についても十分ではなく、また脂性肌の人においてはテカリが生じてしまうという問題があった。
【0009】
本発明の課題は、塗布時にさっぱりとした感触であり、マスクを長時間着用後に外した後のしっとり感に優れ、マスク着用後の脂性肌の人のテカリおよびべたつき感を長時間抑える皮膚化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明者は、前記した特定の二種類のアルキレンオキシド誘導体と多価アルコールを特定比率で組み合わせた皮膚化粧料が上記課題を余すことなく解決することを見出した。
【0011】
すなわち本発明は、以下に示されるものである。
(1) 下記の成分(a)を0.1~25質量%、成分(b)を0.01~3質量%、成分(c)を0.1~25質量%および成分(d)を含有し、前記成分(b)の前記成分(a)に対する質量比((b)/(a))が1/100~1/5であることを特徴とする、皮膚化粧料。
(a) 下記式(1)で示されるポリアルキレンオキシド誘導体
Z-[O(AO)l(EO)m(BO)n-H]p・・・(1)
(式(1)中、
Zは炭素数3~9のアルコールからすべての水酸基を除いた残基であり、
pは前記アルコールの価数であって、3以上、9以下であり、
AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、BOはオキシブチレン基であり、前記オキシアルキレン基AOと前記オキシエチレン基EOと前記オキシブチレン基BOとはブロック状またはランダム状に付加していてよい。ただし、少なくとも前記オキシアルキレン基AOと前記オキシブチレン基BOがランダム状に付加している場合、AOはオキシプロピレン基である。
前記誘導体における前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数p×lが1≦p×l≦50を満足しており、前記誘導体における前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数p×mが1≦p×m≦50を満足しており、前記誘導体における前記オキシブチレン基BOの平均付加モル数p×nが1≦p×n≦10を満足しており、前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計に対する前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数の割合m/(l+m)が0.15~0.75である。)
(b) 下記の式(2)で示されるアルキレンオキシド誘導体
R-[(PO)x(EO)y]q-H ・・・ (2)
(式(2)中、
Rは炭素数2~3のアルコールからすべての水酸基を除いた残基であり、
qは前記アルコールの価数であって、2以上、3以下であり、
POはオキシプロピレン基であり、
EOはオキシエチレン基であり、
前記誘導体における前記オキシプロピレン基POの平均付加モル数x×qが1≦x×q≦30を満足しており、
前記誘導体における前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数y×qが1≦y×q≦40を満足しており、
前記オキシプロピレン基POの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計に対する前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数の割合y/(x+y)が0.45~0.75であり、
前記オキシプロピレン基POと前記オキシエチレン基EOとがランダム状に付加している。)
(c) 炭素数が2~6である多価アルコール
(d) 水
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮膚化粧料によれば、塗布時にさっぱりとした感触であり、マスクを長時間着用後外した後のしっとり感に優れ、マスク着用後の脂性肌の人のテカリおよびべたつき感を長時間抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
[成分(a)]
成分(a)は、式(1)で表されるアルキレンオキシド誘導体であり、Zは炭素数3~9のアルコール(Z(OH)p)からすべての水酸基を除いた残基であり、pはアルコールの価数を示し、3~9である。
前記アルコール(Z(OH)p)の炭素数が9を超える場合、べたつき感が生じてしまうため、9以下とするが、8以下が好ましく、更に好ましくは6以下である。
また、アルコール(Z(OH)p)の炭素数が3未満の場合には、しっかり感が低下してしまうので、3以上とする。
【0014】
前記アルコール(Z(OH)p)は、具体的にはグリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、アルキルグルコシド、ジグリセリン、キシリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトール、ショ糖、トレハロース、マルチトールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0015】
AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基であり、具体的にはプロピレンオキシド由来のオキシプロピレン基、1,2-ブチレンオキシド由来のオキシブチレン基、オキシトリメチレン基などが挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基であり、より好ましくはオキシプロピレン基である。
【0016】
lは、前記アルキレンオキシド誘導体の一水酸基あたりのAOの平均付加モル数である。ゆえに、前記アルキレンオキシド誘導体におけるAOの平均付加モル数はp×lとなる。p×lが50を超える場合には、塗布時のさっぱり感が損なわれるので、50以下とするが、20以下とすることが好ましい。また、p×lが1未満の場合には、肌のテカリが生じてしまうので、1以上とするが、2以上とすることが好ましい。
【0017】
mは、前記アルキレンオキシド誘導体の一水酸基あたりのエチレンオキシド(EO)の平均付加モル数である。ゆえに、前記アルキレンオキシド誘導体におけるAOの平均付加モル数はp×mとなる。p×mが50を超えると、べたつき感が生じるので、p×mを50以下とするが、20以下とすることが好ましい。また、p×mが1未満の場合はマスクを外した後のしっとり感が損なわれるので、1以上とするが、2以上とすることが好ましい。
【0018】
nは、前記アルキレンオキシド誘導体の一水酸基あたりのオキシブチレン基(BO)の平均付加モル数である。
オキシブチレン基(BO)は、1,2-ブチレンオキシド由来のオキシブチレン基である。前記アルキレンオキシド誘導体におけるBOの平均付加モル数p×nが1より少ないと、さっぱり感に劣るので、1以上とする。また、p×nが10を超えると、べたつき感が生じてしまうので、10以下とするが、5以下とすることが好ましい。
前記オキシアルキレン基AOの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計(l+m)に対する前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数mの割合「m/(l+m)」は、0.15~0.75とする。この割合「m/(l+m)」が0.75を超える場合はべたつき感が生じるので、0.75以下とするが、0.72以下が好ましく、0.70以下が更に好ましい。また、割合「m/(l+m)」が0.15未満ではマスクを外した後のしっとり感が損なわれるので、0.15以上とするが、0.30以上が好ましく、0.45以上が更に好ましい。
【0019】
AOとEOとBOの付加する順序は特に指定はなく、ブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。すなわち、AOとEOとBOとがすべてランダム状に付加していてよく、また、AOがブロック状に付加していてよく、EOがブロック状に付加していてよく、BOがブロック状に付加していてもよい。またブロック状に付加している部分とランダム状に付加している部分が混在していてもよい。ただし、少なくとも(AO)と(BO)がランダム状に付加している場合、AOはオキシプロピレン基である。ここで、(AO)と(BO)がランダム状に付加している場合、(EO)も(AO)および(BO)とともにランダム状に付加していてもよいが、(EO)がブロック状に付加していてもよい。
特に好適な実施形態においては、(BO)がブロック状に付加している。また、特に好適な実施形態においては、AOとEOとがランダム状に付加している。
式(1)においては、AOが末端水素原子に結合していてよく、EOが末端水素原子に結合していてよく、BOが末端水素原子に結合していてよい。好適な実施形態においては、BOが末端水素原子に結合している。
【0020】
本発明の式(1)アルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。
【0021】
すなわち、水酸基を有している化合物に対して、炭素数3~4のアルキレンオキシド(AO)、エチレンオキシド(EO)、ブチレンオキシド(BO)を適宜付加重合させる。付加重合時の各モノマーの添加順序は、目的とする構造によって決定する。
好適な実施形態においては、水酸基を有している化合物に炭素数3~4のアルキレンオキシド(AO)およびエチレンオキシド(EO)を付加重合させる。この際には、AOとEOとをランダム重合してよく、また、AOをブロック重合してよく、EOをブロック重合してよい。次いで、AOとEOとの付加重合後に、BOを付加重合させることによって、末端水素原子に結合したBOブロックを生成させることができる。
【0022】
成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の合計質量を100質量%としたとき、成分(a)の含有量は0.1~25質量%とする。成分(a)の含有量が0.1質量%未満の場合、さっぱり感が十分でなく、マスクを外した後のしっとり感が損なわれるので、0.1質量%以上とするが、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上が更に好ましく、2質量%以上が特に好ましい。また、成分(a)の含有量が25質量%を超える場合は、べたつきが長時間生じるので、25質量%以下とするが、20質量%以下が好ましく、15質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0023】
[成分b]
本発明において、式(2)で表されるアルキレンオキシド誘導体において、Rは、炭素数1~3のアルコール(R(OH)q)からすべての水酸基を除いた残基であり、qはアルコールの価数を示し、2以上、3以下である。
前記アルコール(R(OH)q)の炭素数が3を超える場合、べたつき感が生じてしまう。
【0024】
POは、オキシプロピレン基である。
xは前記アルキレンオキシド誘導体の一水酸基あたりのPOの平均付加モル数である。前記アルキレンオキシド誘導体におけるPOの平均付加モル数はq×xとなる。q×xが1未満の場合は、肌のテカリが生じてしまうので、1以上とするが、3以上とすることが更に好ましい。また、q×xが30を超える場合、塗布時のさっぱり感が損なわれるので、30以下とするが、10以下が更に好ましい。
【0025】
yは、前記アルキレンオキシド誘導体の一水酸基あたりのEOの平均付加モル数である。前記アルキレンオキシド誘導体におけるEOの平均付加モル数はq×yとなる。q×yが40を超える場合、べたつき感が生じるので、40以下とするが、10以下が更に好ましい。また、q×yが1未満の場合はマスクを外した後のしっとり感が損なわれるので、1以上とするが、3以上とすることが更に好ましい。
【0026】
前記オキシプロピレン基POの平均付加モル数と前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数との合計に対する前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数の割合「y/(x+y)」は、0.45~0.75とする。「y/(x+y)」が0.75を超える場合はべたつき感が生じるので、0.75以下とするが,0.70以下が好ましく、0.65以下が更に好ましい。また、「y/(x+y)」が0.15未満であると、マスクを外した後のしっとり感が損なわれるので、0.15以上とするが、0.30以上が好ましく、0.45以上が更に好ましい。
【0027】
オキシプロピレン基POとオキシエチレン基EOは、さっぱり感の観点から、ランダム状に付加させる。
【0028】
本発明の式(2)アルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物に対して、プロピレンオキシド(PO)およびエチレンオキシド(EO)を反応させることによって得られる。
【0029】
成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の合計質量を100質量%としたとき、成分(b)の含有量は0.01~3質量%とする。成分(b)の含有量が0.01質量%未満の場合、さっぱり感が十分でなく、マスクを外した後のしっとり感が損なわれるので,0.01質量%以上とする。また、成分(b)の含有量が3質量%を超える場合はべたつきが長時間生じるので、3質量%以下とするが、2質量%以下が好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
【0030】
[成分(c)]
本発明の成分(c)である炭素数2~6の多価アルコールとは、分子内に水酸基を二個以上有する水溶性の化合物であり、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリンなどが挙げられる。好ましくは、炭素数が2~3の水溶性多価アルコールであり、具体的にはグリセリン、1,3-ブチレングリコールが特に好ましい。
【0031】
成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の合計質量を100質量%としたとき、成分(c)の含有量は0.01~25質量%とする。成分(c)の含有量が0.01質量%未満の場合、さっぱり感が十分でなく、マスクを外した後のしっとり感が損なわれるので,0.01質量%以上とするが、3.0質量%以上が好ましい。また、成分(c)の含有量が25質量%を超える場合はべたつきが長時間生じるので、25質量%以下とするが、10質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
[成分(d)]
本発明の成分(d)は水であり、化粧品や医薬品等で一般に使用されている水を使用することができる。例えば、イオン交換水や精製水などを使用することができる。
成分(d)の含有量は、100質量%から、成分(a)、成分(b)および成分(c)の合計含有量を引いた残部である。
【0033】
[各成分の比率]
本発明において成分(b)の成分(a)に対する質量比((b)/(a))は1/100~1/5とする。((b)/(a))が1/100未満の場合には、肌のテカリが生じてしまうので、1/100以上とする。また、((b)/(a))が1/5より大きい場合はさっぱり感に劣り、べたつきが長時間生じるので、1/5以下とするが、1/10が好ましく、1/50が更に好ましい。
【0034】
本発明の化粧料は、上記の成分(a)~(d)に加えて、好ましくは、さらに下記成分(e)を含有してもよい。それにより本発明の効果がさらに顕著なものとなる。
[成分(e)]
成分(e)は、水溶性増粘剤であり、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、デキストリン、メチルセルロース、ヒアルロン酸、キトサン等の天然多糖類;エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の半合成多糖類;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(炭素数10~30)コポリマー等の合成高分子が挙げられる。これらのうち、化粧持ちやべたつきのなさの観点から、キタンサンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(炭素数10~30)コポリマーが好ましい。
【0035】
本発明の皮膚化粧料に成分(e)を含有させる場合、成分(e)の含有量は、化粧料の全量に対し、0.01~5質量%とするのが好ましく、0.05~4質量%とするのがより好ましく、0.1~3質量%とするのがさらに好ましい。
【0036】
本発明の皮膚化粧料には、発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を添加することができる。その他任意成分としては、アルコール類、糖類、多糖類、アミノ酸、各種界面活性剤、有機塩、無機塩、p
H 調整剤、キレート剤、抗酸化剤、殺菌剤、血流促進剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン類、色素、香料などを適宜配合することができる。
【実施例0037】
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0038】
(合成例a1、a2、a3、a’1、a’2、a’3、a’4)
表1に示すアルコール1モルと触媒として水酸化カリウムをアルキレンオキシド誘導体最終重量に対して0.1質量%をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら110℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、滴下装置からプロピレンオキシドp×lモルとエチレンオキシドp×mモルの混合液を滴下した。滴下終了後110℃で3時間反応させた。その後、滴下装置より1,2-ブチレンオキシドp×nモルをオートクレーブ内に滴下した。滴下終了後110℃で2時間反応させた。その後オートクレーブより反応生成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するために、-0.095MPa(50mmHg)、100℃
で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した中和塩を除去するためろ過を行い、合成例a1、a2、a3、a’1、a’2、a’3、a’4の化合物を得た。
【0039】
(合成例a4)
グリセリン1モルと触媒として水酸化カリウムをアルキレンオキシド誘導体最終重量に対して0.1質量%をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら110℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、滴下装置から1,2-ブチレンオキシド3モルとエチレンオキシド3モルの混合液を滴下した。滴下終了後110℃で3時間反応させた。その後、滴下装置より1,2-ブチレンオキシド1.5モルをオートクレーブ内に滴下した。滴下終了後110℃で2時間反応させた。その後オートクレーブより反応生成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するために-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した中和塩を除去するためろ過を行い、合成例a4の化合物を得た。
【0040】
(合成例a5)
ショ糖1モルと触媒として水酸化カリウムをアルキレンオキシド誘導体最終重量に対して0.1質量%をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら110℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、滴下装置からプロピレンオキシド48モルを滴下した。滴下終了後2時間反応させた。その後、滴下装置よりエチレンオキシド10モルを滴下した。滴下終了後110℃で1時間反応させた。その後、滴下装置より1,2-ブチレンオキシド8モルをオートクレーブ内に滴下した。滴下終了後110℃で2時間反応させた。その後オートクレーブより反応生成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するために-0.095
MPa(50mmHg)、100℃で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した中和塩を除去するためろ過を行い、合成例a5の化合物を得た。
【0041】
(合成例b1、b2、b3)
表2に示すアルコール1モルと触媒として水酸化カリウムをアルキレンオキシド誘導体最終重量に対して0.1質量%をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら110℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、滴下装置からプロピレンオキシドq×xモルとエチレンオキシドq×yモルの混合液を滴下した。滴下終了後110℃で3時間反応させた。その後オートクレーブより反応生成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するために-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した中和塩を除去するためろ過を行い、合成例b1、b2、b3の化合物を得た。
【0042】
(合成例b’1)
ソルビトール1モルと触媒として水酸化カリウムをアルキレンオキシド誘導体最終重量に対して0.1質量%をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら110℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、滴下装置からプロピレンオキシド12モルを滴下した。滴下終了後2時間反応させた。その後オートクレーブより反応生成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するために-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した中和塩を除去するため、ろ過を行い、合成例b’1の化合物を得た。
【0043】
(合成例b’2)
グリセリン1モルと触媒として水酸化カリウムをエチレンオキシド誘導体最終重量に対して0.1質量%をオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら110℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、滴下装置からエチレンオキシド12モルを滴下した。滴下終了後2時間反応させた。その後オートクレーブより反応生成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するために-0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間脱水した。さらに、脱水により生成した中和塩を除去するためろ過を行い、合成例b’2の化合物を得た。
【0044】
<評価用化粧料の調整方法>
(1) アルギニンを使用する場合は、予め10%水溶液を調製しておく。
(2) 成分(d)(イオン交換水)をディスパーミキサーで混合しながら、成分(c)を少しずつ添加して溶解する。
(3) 続いて成分(a)または(a’)、成分(b)または(b’)、およびその他成分を加え、均一になるまで攪拌する。
【0045】
<評価方法>
脂性肌の自覚のある男性20名による使用感テストを行った。調製した化粧料1.0gを手に取って顔全体に塗付してもらい、以下の4項目について、パネラー各人が下記絶対評価にて0点~3点の4段階に評価した。
(1)塗付時のさっぱり感
(2)塗布後マスクを6時間着用し、マスクを外してから5分後のしっとり感
(3)塗布後マスクを6時間着用した後の肌のテカリ
(4)塗布後マスクを6時間着用した後のべたつきのなさ
そして、各項目について、評点の合計からAA~Dの5段階に分類し、AA
、AおよびBを合格とした。
また(2)、(3)、(4)のマスク着用後の評価については、プリーツ型の不織布マスク(材質:ポリプロピレン、プリーツ型、玉川衛材株式会社製)を使用し、25℃、湿度70%RHの室内で6時間着用した後、評価を行った
【0046】
<絶対評点の合計による最終評価>
AA: 評点の合計が50~60点
A: 評点の合計が40~49点
B:
評点の合計が30~39点
C:
評点の合計が20~29点
D:
評点の合計が20点未満
【0047】
(1)塗付時のさっぱり感
(絶対評価基準)
(評点):(評価)
3 : 塗布時のさっぱり感が極めて良好
2 : 塗布時のさっぱり感が良好
1 : 塗布時のさっぱり感があまり感じられない
0 : 塗布時のさっぱり感が全く感じられない
(2)塗布後マスクを6時間着用し、マスクを外したあと5分後のしっとり感
(絶対評価基準)
(評点):(評価)
3 : しっとり感が極めて良好
2 : しっとり感が良好
1 : しっとり感があまり感じられない
0 : しっとり感が全く感じられない
(3)塗布後マスクを6時間着用した後の肌のテカリ
(評点):(評価)
3 : テカリを全く感じない
2 : テカリをほとんど感じない
1 : テカリを多少感じる
0 : テカリを感じる
(4)塗布後マスクを6時間着用した後のべたつきのなさ
(評点):(評価)
3 : べたつきを全く感じない
2 : べたつきをほとんど感じない
1 : べたつきを多少感じる
0 : べたつきを感じる
【0048】
<実施例1~6および比較例1~11>
上記の方法により化粧料を調製し、評価した。表3、表4、表5に処方および結果を示す。尚、全ての処方において100gスケールで調製した。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
表3に示すように、実施例1~6においては、塗布時にさっぱりとした感触であり、マスクを長時間着用後外した後のしっとり感に優れ、マスク着用後の脂性肌の人のテカリおよびべたつき感を長時間抑えることができた。
【0055】
一方、比較例1~11においては、十分な効果が得られなかった。
すなわち、比較例1~4では、本発明の成分(a)の範囲から外れた構造を有する比較成分(a´)を含有しているため、本発明の効果を同時に満たすことができなかった。
比較例5、6では、本発明の成分(b)の範囲から外れた構造を有する比較成分(b´)を有しているため、本発明の効果を同時に満たすことはできなかった。
比較例7では、成分(b)を含まないため、塗布時のさっぱり感、マスクを外した際のしっとり感、マスク着用後のべたつき感のなさが劣っていた。
比較例8では、b/aが1/5を超えているため、塗布時のさっぱり感、マスクを外した際のしっとり感、マスク着用後のべたつき感のなさが劣っていた。
比較例9では、成分(a)と成分(b)の含有量がそれぞれ25質量%、3質量%を超えているため、全ての効果において不十分であった。
比較例10では、成分(a)が含有されていないので、塗布時のさっぱり感、マスクを外した際のしっとり感およびマスク着用後のべたつき感が劣っていた。
比較例11では、成分(c)をふくまないため、塗布時のさっぱり感、マスクを外した際のしっとり感、マスク着用後のテカリのなさが劣っていた。