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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032108
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】工作機械のワーク自動搬送機
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20240305BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B25J15/00 C
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135569
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS05
3C707DS02
3C707DS05
3C707ES03
3C707ET08
3C707EW14
3C707KS27
3C707LV06
3C707MS30
(57)【要約】
【課題】動力を停止させたときのロボットハンドで把持したワークの落下を防止する工作機械のワーク自動搬送機を提供すること。
【解決手段】ワークを把持する表裏一対のチャックを備えたロボットハンドと、前記ロボットハンドを所定の位置に移動させる搬送装置と、前記ロボットハンドおよび前記搬送装置の駆動を制御するものであって、動力停止時に前記チャックによるワークの把持状態に応じて前記ロボットハンドの向きを変更する制御装置と、を有する工作機械のワーク自動搬送機。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する表裏一対のチャックを備えたロボットハンドと、
前記ロボットハンドを所定の位置に移動させる搬送装置と、
前記ロボットハンドおよび前記搬送装置の駆動を制御するものであって、動力停止時に前記チャックによるワークの把持状態に応じて前記ロボットハンドの向きを変更する制御装置と、
を有する工作機械のワーク自動搬送機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記表裏一対のチャックのうち一方にワークが把持されていた場合には、動力停止時に当該チャックを上向きの配置に変更する請求項1に記載する工作機械のワーク自動搬送機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記表裏一対のチャックの両方にワークが把持されていた場合には、動力停止時に当該両チャックを横向きの配置に変更する請求項1または請求項2に記載する工作機械のワーク自動搬送機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記表裏一対のチャックの両方にワークが把持されていた場合には、動力停止時に当該両チャックを横向きの配置に変更するとともに、注意情報を発出する請求項1または請求項2に記載する工作機械のワーク自動搬送機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表裏一対のチャックを備えたロボットハンドを有し、動力を停止させたときのロボットハンドで把持したワークの落下防止機能を備えた工作機械のワーク自動搬送機に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、搬送したワークを対応チャックなどとの間で受け渡しを可能にするワーク自動搬送機が用いられている。ワーク自動搬送機は、ワークを把持するためのロボットハンドを有し、油圧などを利用したチャックの把持動作によってワークを把持することができるようになっている。そうしたワークを把持することができるロボットハンドには落下防止機構が設けられ、下記特許文献1にもワークの脱落防止機能に関する発明が開示されている。そのワーク脱落防止手段は、エアポンプが停止した時にコイルスプリングの付勢力によって突出した突出棒が可動芯の伸長動作を制限し、リンク手段を介して連動する指状体の開放動作を停止させることによりワークの把持状態を維持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-276166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工作機械に設けられているワーク自動搬送機は、ワーク加工のサイクルタイムの短縮のため高速移動させる必要から、ロボットハンドが軽量であることが望まれる。しかし、前記従来例のようなロボットハンドは、リンク手段などによって指状体の開放動作を機械的に停止させるようにした構成である。そのため、部品点数が多くなってしまい、ロボットハンドが大きくなるだけではなく重量も増えてしまい高速化が困難になる。また、コイルスプリングの付勢力などによってワークの把持力を維持することは、ある程度の効果を発揮するものの、ワークの落下を確実に防止することはできない。そして、把持したワークがロボットハンドから落ちてしまうようなことがあれば、ワーク自体を傷つけるだけではなく、工作機械を破損させてしまうことにもなる。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、動力を停止させたときのロボットハンドで把持したワークの落下を防止する工作機械のワーク自動搬送機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る工作機械のワーク自動搬送機は、ワークを把持する表裏一対のチャックを備えたロボットハンドと、前記ロボットハンドを所定の位置に移動させる搬送装置と、前記ロボットハンドおよび前記搬送装置の駆動を制御するものであって、動力停止時に前記チャックによるワークの把持状態に応じて前記ロボットハンドの向きを変更する制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、表裏一対のチャックを備えたロボットハンドによってワークを把持し、そのワークを搬送装置を駆動させることにより所定の位置に移動させることができるほか、動力停止時には、チャックによるワークの把持状態に応じてロボットハンドの向きを変更することにより、ワークの把持力が低下してしまったとしてもワークの落下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】工作機械におけるワーク自動搬送機の一実施形態を示した斜視図である。
図2】ワーク自動搬送機の一実施形態を示した側面図である。
図3】工作機械を制御する制御システムを示したブロック図である。
図4】ロボットハンドにおける落下防止動作を簡易的に示した図である。
図5】ロボットハンドにおける落下防止動作を簡易的に示した図である。
図6】ワーク落下防止プログラムによる処理工程を示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る工作機械のワーク自動搬送機について、その一実施形態を以下に図面を参照しながら説明する。図1は、工作機械におけるワーク自動搬送機の一実施形態を示した斜視図であり、図2は、そのワーク自動搬送機を示した側面図である。また、図3は、ワーク自動搬送機を含む工作機械全体を制御する制御システムを示したブロック図である。先ず、工作機械について具体的構成の説明は省略するが、図示するワーク自動搬送機8が組み付けられる工作機械1は、各種加工装置を有することによりNC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を持つようにした複合加工機である。
【0010】
工作機械1は、ワークWを把持する一対のワーク主軸装置3,5と、それぞれに複数の工具を有するタレット装置4,6が左右対称に配置された対向2軸旋盤であり、機体中央にはタレット工具では困難な加工を行う工具主軸装置2が設けられている。そして、その工具主軸装置2には、加工に応じた工具の自動交換を行うための自動工具交換装置7が設けられている。さらに工作機械1には、左右のワーク主軸装置にそれぞれワークWを自動搬送するためのワーク自動搬送機8が設けられている。
【0011】
ワーク自動搬送機8は、工作機械1のベッドに固定されたフレーム構体10に組付けられたガントリーローダである。櫓のように組まれたフレーム構体10は、前側上部に横梁となるレール台11が架設され、その上面には2本の走行レール12と1本の走行用ラック13とが固定されている。そして、走行レール12には走行テーブル14が摺動可能に組付けられている。走行テーブル14は、Z軸サーボモータ15が設けられ、その回転軸に固定されたピニオン16が走行用ラック13と噛合することにより機体幅方向の移動が可能になっている。
【0012】
走行テーブル14の上面にはスライド部材が固定され、そのスライド部材を摺動するスライドレールを備え、機体前後方向に移動するスライド台17が設けられている。スライド台17には側面に前後移動用ラック18が固定され、走行テーブル14にはブラケットを介してY軸サーボモータ19が固定されている。従って、Y軸サーボモータ19の回転軸に固定したピニオンを前後移動用ラック18に噛合させることにより、スライド台17の前後方向の移動が可能になっている。そして、そのスライド台17は、フレーム構体10から前方へと突き出しており、その先端部分には上下動する昇降アーム21が設けられている。
【0013】
スライド台17には昇降用レールを備えた支持柱22が鉛直な姿勢で固定され、スライド部材を備えた昇降アーム21が昇降用レールに沿って移動するよう構成されている。支持柱22の頂部にはX軸サーボモータ23が固定され、その回転軸に固定されたプーリと、支持柱22の下部に軸支されたプーリとの間にベルトが掛け渡されている。そのベルトに昇降アーム21が連結され、X軸サーボモータ23の駆動によって上下方向の移動が可能になっている。
【0014】
昇降アーム21の下端部にはワークWを把持するためのロボットハンド25が組み付けられている。ワーク自動搬送機8は、走行テーブル14、スライド台17および昇降アーム21がそれぞれZ軸、Y軸あるいはX軸の加工方向に移動するようにして搬送装置が構成されており、ロボットハンド25は、その先端部に取付けられて各軸方向に移動可能になっている。そのロボットハンド25は、表裏一対のチャック28を備え、昇降アーム21に直交するY軸方向の回転軸Oを中心に回転し、各チャック28を上下左右の方向に配置できるよう構成されている。
【0015】
工作機械1の制御装置9は、マイクロプロセッサ(CPU)31、ROM32、RAM33、不揮発性メモリ34がバスラインを介して接続されている。CPU31は、制御装置全体を統括制御するものであり、ROM32にはCPU31が実行するシステムプログラムや制御パラメータ等が格納され、RAM33には一時的な計算データや表示データ等が格納される。不揮発性メモリ34にはCPU31が行う処理に必要な情報が記憶され、工作機械1のシーケンスプログラムなどが格納されている。特に、本実施形態には動力を停止させたときのロボットハンドに関するワーク落下防止プログラムが格納されている。そして、制御装置9にはI/Oポート35が設けられ、主軸装置3,5、タレット装置4,6、自動工具交換装置7およびワーク自動搬送機2など、各装置の駆動モータが各々ドライバを介して接続されている。
【0016】
続いて、以上のような構成の工作機械1では、加工プログラムなどに従いワークWに対する所定の加工が実行される。加工対象となるワークWは、入口側ストッカからワーク自動搬送機8によって加工位置へと運び込まれる。すなわち、ロボットハンド25に把持されたワークWは、ワーク主軸装置3,5へとそれぞれ搬送されてその主軸側チャックとの間でワークの受け渡しが行われる。そして、タレット装置4,6では所定の工具が旋回割り出しされ、その工具がワークWに当てられることで旋削など所定の加工が行われる。また、工作機械1では、工具主軸装置2が加工内容に従って自動工具交換装置7との間で工具交換が行われ、ワークWに対する所定の加工が実行される。
【0017】
ワーク自動搬送機8におけるワークWの搬送は、ワーク搬送プログラムに従いZ軸サーボモータ15、Y軸サーボモータ19およびX軸サーボモータ13の駆動が制御され、走行テーブル14、スライド台17および昇降アーム21がZ軸、Y軸あるいはX軸の各方向に移動し、ロボットハンド25に把持されたワークWが所定の位置へと搬送される。
【0018】
そのロボットハンド25は、一対のチャック28を備えているため、ワーク自動搬送機8は、ワーク主軸装置3,5に対して加工済みワークの受け取りと、加工前ワークの受渡しを行うことができる。従って、ワーク自動搬送機8は、ロボットハンド25がワークWを把持している時間帯が多く、工作機械1の動力停止が行われると、ロボットハンド25はワークWを把持したまま停止する可能性が高い。そのロボットハンド25を構成するチャック28は、三つ爪チャックを油圧の力で作動させるものであり、工作機械1の動力が停止する場合には逆止弁においてその油圧を維持することで把持力が保たれる。
【0019】
ところで、工作機械1の動力を停止させる場合には、1日の業務時間内における複数の休憩時間のほか、その日の終業後から次の日あるいは翌週における始業までの時間などがある。こうした動力停止時間では、前述したように逆止弁による流路内の油圧維持が行われるものの、油漏れによるチャック爪のワークに対する把持力低下は避けられない。そこで、本実施形態ではワーク落下防止プログラムに従い、工作機械1の動力を停止させたときのロボットハンドにおける落下防止動作が実行される。
【0020】
図4および図5は、ロボットハンド25における落下防止動作を簡易的に示した図である。また、図6は、ワーク落下防止プログラムおける処理工程を示したフローチャート図である。このワーク落下防止プログラムは、工作機械1における動作停止信号に従って実行される。すなわち、作業者による停止ボタン操作によって動作停止信号を受けた制御装置9では、工作機械1の動作停止の際にロボットハンド25が図1に一点鎖線で示す原点位置である待機位置Pへと移動する(S101)。
【0021】
そして、ロボットハンド25におけるワーク把持状態が確認され、その把持状態に従った所定の動作制御が行われる。ワーク把持状態の判断に当たって、図6に示すフローチャートでは、ワークWを把持する一対のチャック28のうち、一方を第1チャックC1とし、他方を第2チャックC2として説明することとする。そこで先ず、第1チャックC1と第2チャックC2が両方ともワークWを把持していないことについて確認が行われる(S102)。なお、ワークWの把持状態および非把持状態は、チャック爪の位置を検出スイッチで検出することによって確認することができる。
【0022】
第1および第2チャックC1,C2にワークが把持されていなければ(S102:YES)、ロボットハンド25の状態はそのまま維持され(S013)、ワーク自動搬送機8の動作停止処理が終了し(S104)、ワーク落下防止プログラムが終了する。一方で、ロボットハンド25がワークを把持している場合には(S102:NO)、そのワークWが第1チャックC1だけであるか否かの判断が行われる(S105)。第1チャックC1だけの把持であることが確認できた場合には(S105:YES)、図4に示すように、ロボットハンド25は回転軸Oを中心に回転して、ワークWを把持している第1チャックC1を上向きにする配置に切り換えられる(S106)。その後、ワーク自動搬送機8の動作停止処理が終了し(S104)、ワーク落下防止プログラムが終了する。
【0023】
次に、第1チャックC1にワークWが把持されていない場合には(S105:NO)、第2チャックC2にワークWが把持されているか否かの判断が行われる(S107)。そこで、第2チャックC2にだけワークWが把持されていることが確認できた場合には(S107:YES)、図4に示す動作とは逆に、ロボットハンド25は回転軸Oを中心に逆回転して、ワークWを把持している第2チャックC2を上向きにする配置に切り換えられる(S108)。その後、ワーク自動搬送機8の動作停止処理が終了し(S104)、ワーク落下防止プログラムが終了する。
【0024】
さらに、ステップS102,S105,S107のいずれにも該当していなければ(S107:NO)、図5に示すように、ロボットハンド25の第1および第2チャックC1,C2にワークWが把持されている。そこで、このような場合には図示するように第1チャックC1と第2チャックC2とが左右を向くようにロボットハンド25の回転が行われる(S109)。ロボットハンド25がワークWを把持している場合には、ステップ106,S108のように上向きに配置することが好ましい。しかし、第1および第2チャックC1,C2の両方でワークWを把持している場合には、落下の可能性を低くするため図5に示すように横向き配置が行われる。
【0025】
そして、このような横向き配置が行われた場合には、そのことを知らせる注意メッセージが機体前面に設けられたモニタに表示される(S110)。その後、ワーク自動搬送機8の動作停止処理が終了し(S104)、ワーク落下防止プログラムが終了する。注意メッセージは、前述したように油漏れによってチャック爪の把持力が低下してしまい、ワークが落下してしまう可能性があることを知らせるためのものである。従って、工作機械1の動力停止に際してモニタに注意メッセージが表示された場合には、短時間の休憩であればそのままでもよいが、例えば3時間以上停止状態が続く場合には、作業者によりロボットハンド25からワークWが取り外される。
【0026】
よって、本実施形態のワーク自動搬送機は、動力停止時に一対のチャック28(C1,C2)を備えたロボットハンド25がワークWの把持状態に応じて所定の向きに切り換えられるため、把持力低下に伴うワークWの落下を防止することができる。すなわち、図4に示すようにワークWを上向きにした待機状態にすることで、チャック爪からワークWが滑ったとしても下側に支えがあるため落下してしまうことはない。また、図5に示すように横向きになったワークWはチャック爪によって下側が支えられるため、落下し難い状態になっている。ただし動力停止時間が長くなって落下の可能性が高まる場合には、作業者は注意メッセージに従ってロボットハンド25からワークWの取り外しを行うことができる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、工作機械1の一例として複合加工機を示して説明したが、その他の工作機械であってもよい。
また、前記実施形態では、ワーク自動搬送機の一例としてガントリーローダを説明したが多関節ロボットによって構成されたものなどであってもよい。
また、前記実施形態では、注意情報の発出として注意メッセージをモニタに表示するようにしたが(S110)、音声などほかの手段で知らせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…工作機械 8…ワーク自動搬送機 9…制御装置 10…フレーム構体 14…走行テーブル 17…スライド台 21…昇降アーム 25…ロボットハンド 28…チャック

図1
図2
図3
図4
図5
図6