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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032110
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
H01L21/304 643Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
H01L21/304 651M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135572
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】根本 脩平
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA12
5F157AB02
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AC01
5F157AC13
5F157BB22
5F157BB24
5F157BB42
5F157BH18
5F157CC11
5F157CE28
5F157CF34
5F157CF40
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF50
5F157CF70
5F157CF74
5F157DB41
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】カップリンス処理に要するカップリンス液の使用量を削減することによって環境負荷を低減する。
【解決手段】この発明は、回転する基板保持部に保持された基板に処理液を供給することで基板に所定の基板処理を施すとともに、その基板処理中に基板から振り切られた処理液の液滴を捕集する基板処理技術に関するものである。この装置では、回転カップ部が回転軸まわりに回転しながら当該回転カップ部の内側からカップリンス液が回転カップ部に直接供給される。これによって、カップリンス液の使用量を削減しながら回転カップ部から処理液を除去して回転カップ部を清浄に保つことができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持しながら鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転可能に設けられる基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の外周を囲みながら前記回転軸まわりに回転可能に設けられる回転カップ部と、
前記基板保持部および前記回転カップ部を回転させる回転機構と、
回転する前記基板保持部に保持された前記基板に処理液を処理液吐出ノズルから供給することで、前記基板に所定の基板処理を施す処理機構と、
前記基板から飛散した前記処理液を捕集した前記回転カップ部にカップリンス液を前記回転軸側から直接供給することで、前記回転カップ部から前記処理液を除去するカップリンス処理を行うカップリンス機構と、
前記基板処理が行われた後で前記回転カップ部を回転させながら前記カップリンス液を前記回転カップ部に供給するように、前記回転機構および前記カップリンス機構を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記回転カップ部は、前記回転機構から与えられる回転駆動力を受けて前記回転軸まわりに回転される下カップと、前記下カップに連結されることにより前記下カップと一体的に前記回転軸まわりに回転しながら前記基板から飛散してくる前記処理液の液滴を捕集する上カップとを有し、
前記上カップは、前記下カップの上方に位置して前記下カップと連結された連結部位と、前記連結部位から前記基板の周縁部の上方に向かって傾斜する傾斜部位とを有し、前記傾斜部位で前記液滴を捕集する、基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記カップリンス機構は、前記傾斜部位に向かって前記カップリンス液を吐出するリンス液吐出ノズルを有し、前記リンス液吐出ノズルからの前記カップリンス液の吐出先が鉛直方向において前記基板保持部に保持された前記基板の上面の高さ位置よりも高いカップリンス位置である、基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置であって、
前記処理液が供給された前記基板の上面のうち前記周縁部を除く中央部を加熱するヒータを内蔵する円板部を有し、前記円板部を前記基板の上方に配置することで、前記基板を加熱する加熱機構をさらに備え、
前記カップリンス位置は鉛直方向において前記円板部の上面よりも低い、基板処理装置。
【請求項5】
請求項3に記載の基板処理装置であって、
前記リンス液吐出ノズルからの前記カップリンス液の吐出方向が、水平面内で前記回転軸から前記リンス液吐出ノズルに向う径方向に対して前記回転カップ部に回転方向に傾いている、基板処理装置。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記処理機構は、前記処理液吐出ノズルとして、前記基板保持部に保持された前記基板の上方から前記基板の上面の周縁部に向けて前記処理液を吐出する上面処理ノズルを有し、
前記カップリンス機構は、前記リンス液吐出ノズルとして、鉛直方向において前記基板保持部により前記基板を保持する基板保持高さよりも上方から前記回転カップ部の内周面に向けて前記カップリンス液を吐出する上面リンスノズルを有する、基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
互いに近接して配置された前記上面処理ノズルおよび前記上面リンスノズルを一括して保持するノズルホルダと、
前記基板処理を行うための基板処理位置または前記カップリンス処理を行うためのカップリンス位置に前記ノズルホルダを移動させるノズル移動部を備え、
前記制御部は、
前記基板処理位置に前記ノズルホルダが移動したときに、前記上面リンスノズルからの前記カップリンス液の吐出を停止しながら前記上面処理ノズルから前記処理液を吐出させ、
前記カップリンス位置に前記ノズルホルダが移動したときに、前記上面処理ノズルからの前記処理液の吐出を停止しながら前記上面リンスノズルから前記カップリンス液を吐出させるように、前記処理液吐出ノズルおよび前記リンス液吐出ノズルを制御する、基板処理装置。
【請求項8】
請求項3ないし5のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記処理機構は、前記処理液吐出ノズルとして、前記基板保持部に保持された前記基板の下方から前記基板の下面の周縁部に向けて前記処理液を吐出する下面処理ノズルを有し、
前記カップリンス機構は、前記リンス液吐出ノズルとして、鉛直方向において前記基板保持部により前記基板を保持する基板保持高さよりも下方から前記回転カップ部の内周面に向けて前記カップリンス液を吐出する下面リンスノズルを有する、基板処理装置。
【請求項9】
請求項3ないし5のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記処理機構は、前記処理液吐出ノズルとして、前記基板保持部に保持された前記基板の上方から前記基板の上面の周縁部に向けて前記処理液を吐出する上面処理ノズルと、前記基板保持部に保持された前記基板の下方から前記基板の下面の周縁部に向けて前記処理液を吐出する下面処理ノズルと、を有し、
前記カップリンス機構は、前記リンス液吐出ノズルとして、鉛直方向において前記基板保持部により前記基板を保持する基板保持高さよりも上方から前記回転カップ部の内周面に向けて前記カップリンス液を吐出することで、前記内周面への前記カップリンス液の供給を行う上面リンスノズルと、前記基板保持高さよりも下方から前記回転カップ部の内周面に向けて前記カップリンス液を吐出することで、前記内周面への前記カップリンス液の供給を行う下面リンスノズルと、を有する、基板処理装置。
【請求項10】
鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転する基板の外周を回転カップ部で囲んだ状態で前記基板に処理液を供給することで、前記基板に対して前記処理液により所定の基板処理を施すとともに、前記基板から飛散してくる前記処理液を前記回転カップ部で捕集する工程と、
前記処理液を捕集した前記回転カップ部を前記回転軸まわりに回転させながら、前記回転軸側から前記回転カップ部にカップリンス液を直接供給することで、前記回転カップ部から前記処理液を除去するカップリンスと、
を備えることを特徴とする、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理液により所定の基板処理を基板に施す基板処理装置および基板処理方法に関するものである。ここで、基板には、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用ガラス基板、太陽電池用基板、等(以下、単に「基板」という)が含まれる。また、処理には、ベベル処理が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板を回転させつつ当該基板に処理液を供給して薬液処理や洗浄処理などの基板処理を施す基板処理装置として、例えば特許文献1に記載の装置が知れられている。この基板処理装置では、基板処理中に回転される基板から飛散する処理液などを受け止めるために、飛散防止部材として外カップが設けられている。外カップは、その内周面が基板の外周と対向しながら回転される基板の外周を取り囲むように配置されている。このため、外カップが回転される基板から振り切られた処理液の液滴を捕集する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-92244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来装置では、外カップの内周面を洗浄するために複数のカップ洗浄ノズルがベース部に設けられている。また、ベース部の上方にカップ洗浄部材が配置されている。カップ洗浄を行う際には、カップ洗浄ノズルから洗浄液(本発明の「カップリンス液」の一例に相当)がカップ洗浄部材に設けられた案内部を通して外カップの内周面に供給される。したがって、外カップの内周面全体を洗浄するためには、多数のカップ洗浄ノズルを設ける必要がある。しかも、各カップ洗浄ノズルから案内部に向けて吐出された洗浄液の全部を外カップに供給させることは難しく、洗浄液の一部が案内部から溢れてしまうことがある。これらのことから、外カップの洗浄(本発明の「カップリンス処理」の一例に相当)に比較的多量の洗浄液が必要であった。つまり、従来の基板処理装置では、多量の洗浄液を使用することで環境に多大な負荷を与えており、環境負荷の低減について改善の余地があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、カップリンス処理に要するカップリンス液の使用量を削減することによって環境負荷を低減することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一の態様は、基板処理装置であって、基板を保持しながら鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転可能に設けられる基板保持部と、基板保持部に保持された基板の外周を囲みながら回転軸まわりに回転可能に設けられる回転カップ部と、基板保持部および回転カップ部を回転させる回転機構と、回転する基板保持部に保持された基板に処理液を供給することで、基板に所定の基板処理を施す処理機構と、基板から飛散した処理液を捕集した回転カップ部にカップリンス液を回転軸側から直接供給することで、回転カップ部から処理液を除去するカップリンス処理を行うカップリンス機構と、基板処理が行われた後で回転カップ部を回転させながらカップリンス液を回転カップ部に供給するように、回転機構およびリンス液供給部を制御する制御部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
また、この発明の他の態様は、基板処理方法であって、鉛直方向に延びる回転軸まわりに回転する基板の外周を回転カップ部で囲んだ状態で基板に処理液を供給することで、基板に対して処理液により所定の基板処理を施すとともに、基板から飛散してくる処理液を回転カップ部で捕集する工程と、処理液を捕集した回転カップ部を回転軸まわりに回転させながら、回転軸側から回転カップ部にカップリンス液を直接供給することで、回転カップ部から処理液を除去する工程と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、処理液を捕集した回転カップ部が回転軸まわりに回転しながら当該回転カップ部の内側からカップリンス液が回転カップ部に直接供給される。したがって、カップリンス液の使用量は、特許文献1に記載の基板処理装置での使用量に比べて格段に削減することができる。
【発明の効果】
【0009】
上記のように、本発明によれば、基板から飛散した処理液を捕集する回転カップ部のカップリンスに要するカップリンス液の使用量を削減することによって環境負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
図2】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の構成を示す図である。
図3】チャンバの構成およびチャンバに装着される構成を模式的に示す図である。
図4】ベース部材上に設置された基板処理部の構成を模式的に示す平面図である。
図5】スピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。
図6】回転カップ部および固定カップ部の一部を示す図である。
図7】上面保護加熱機構の構成を示す外観斜視図である。
図8図7に示す上面保護加熱機構の断面図である。
図9】処理機構に装備される上面側の処理液吐出ノズルと、カップリンス機構に装備される上面側のカップリンス液吐出ノズルと、を示す斜視図である。
図10】ノズル移動部の構成を模式的に示す図である。
図11A】ベベル処理を行うときのノズル位置を示す模式図である。
図11B】カップリンス処理を行うときのノズル位置を示す模式図である。
図12】処理機構に装備される下面側の処理液吐出ノズルおよび同ノズルを支持するノズル支持部を示す斜視図である。
図13図2に示す基板処理装置により基板処理動作の一例として実行されるベベル処理を示すフローチャートである。
図14】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態の構成および動作を示す模式的に図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。これは基板処理システム100の外観を示すものではなく、基板処理システム100の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理システム100は、例えばクリーンルーム内に設置され、一方主面のみに回路パターン等(以下「パターン」と称する)が形成された基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。そして、基板処理システム100に装備される処理ユニット1において、処理液による基板処理が実行される。本明細書では、基板の両主面のうちパターンが形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターン形成されている面を意味する。
【0012】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0013】
図1に示すように、基板処理システム100は、基板Wに対して処理を施す基板処理エリア110を有している。この基板処理エリア110に対し、インデクサ部120が隣接して設けられている。インデクサ部120は、基板Wを収容するための容器C(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121を有している。また、インデクサ部120は、容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Wを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Wを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Wがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0014】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Wを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0015】
基板処理エリア110では、載置台112がインデクサロボット122からの基板Wを載置可能に設けられている。また、平面視において、基板処理エリア110のほぼ中央に基板搬送ロボット111が配置される。さらに、この基板搬送ロボット111を取り囲むように、複数の処理ユニット1が配置される。具体的には、基板搬送ロボット111が配置された空間に面して複数の処理ユニット1が配置される。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット111は載置台112にランダムにアクセスし、載置台112との間で基板Wを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Wに対して所定の処理を実行するものであり、本発明に係る基板処理装置に相当するものである。本実施形態では、これらの処理ユニット(基板処理装置)1は同一の機能を有している。このため、複数基板Wの並列処理が可能となっている。なお、基板搬送ロボット111はインデクサロボット122から基板Wを直接受け渡すことが可能であれば、必ずしも載置台112は必要ない。
【0016】
図2は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の構成を示す図である。また、図3はチャンバの構成およびチャンバに装着される構成を模式的に示す図である。図2図3および以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示される場合がある。基板処理装置(処理ユニット)1で用いられるチャンバ11は、図3に示すように、鉛直上方からの平面視で矩形形状の底壁11aと、底壁11aの周囲から立設される4枚の側壁11b~11eと、側壁11b~11eの上端部を覆う天井壁11fと、を有している。これら底壁11a、側壁11b~11eおよび天井壁11fを組み合わせることで、略直方体形状の内部空間12が形成される。
【0017】
底壁11aの上面に、ベース支持部材16、16が互いに離間しながらボルトなどの締結部品により固定される。つまり、底壁11aからベース支持部材16が立設される。これらベース支持部材16、16の上端部に、ベース部材17がボルトなどの締結部品により固定される。このベース部材17は、底壁11aよりも小さな平面サイズを有するとともに、底壁11aよりも厚肉で高い剛性を有する板材で構成される。図2に示すように、ベース部材17は、ベース支持部材16、16により底壁11aから鉛直上方に持ち上げられている。つまり、チャンバ11の内部空間12の底部において、いわゆる高床構造が形成されている。このベース部材17の上面は、後で詳述するように、基板Wに対して基板処理を施す基板処理部SPを設置可能に仕上げられ、当該上面に基板処理部SPが設置される。この基板処理部SPを構成する各部は装置全体を制御する制御ユニット10と電気的に接続され、制御ユニット10からの指示に応じて動作する。なお、ベース部材17の形状、基板処理部SPの構成や動作については、後で詳述する。
【0018】
図2および図3に示すように、チャンバ11の天井壁11fには、ファンフィルタユニット(FFU)13が取り付けられている。このファンフィルタユニット13は、基板処理装置1が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバ11内の内部空間12に供給する。ファンフィルタユニット13は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバ11内に送り出すためのファンおよびフィルタ(例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ)を備えており、天井壁11fに設けられた開口11f1を介して清浄空気を送り込む。これにより、チャンバ11内の内部空間12に清浄空気のダウンフローが形成される。また、ファンフィルタユニット13から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレート14が天井壁11fの直下に設けられている。
【0019】
図3に示すように、基板処理装置1では、4枚の側壁11b~11eのうち基板搬送ロボット111と対向する側壁11bには、搬送用開口11b1が設けられており、内部空間12とチャンバ11の外部とが連通される。このため、基板搬送ロボット111のハンド(図示省略)が搬送用開口11b1を介して基板処理部SPにアクセス可能となっている。つまり、搬送用開口11b1を設けたことで、内部空間12に対する基板Wの搬入出が可能となっている。また、この搬送用開口11b1を開閉するためのシャッター15が側壁11bに取り付けられている。
【0020】
シャッター15にはシャッター開閉機構(図示省略)が接続されており、制御ユニット10からの開閉指令に応じてシャッター15を開閉させる。より具体的には、基板処理装置1では、未処理の基板Wをチャンバ11に搬入する際にシャッター開閉機構はシャッター15を開き、基板搬送ロボット111のハンドによって未処理の基板Wがフェースアップ姿勢で基板処理部SPに搬入される。つまり、基板Wは上面Wfを上方に向けた状態で基板処理部SPのスピンチャック21上に載置される。そして、当該基板搬入後に基板搬送ロボット111のハンドがチャンバ11から退避すると、シャッター開閉機構はシャッター15を閉じる。そして、チャンバ11の処理空間(後で詳述する密閉空間12aに相当)内で基板Wの周縁部Wsに対するベベル処理が基板処理部SPにより本発明の「基板処理」の一例として実行される。また、ベベル処理の終了後においては、シャッター開閉機構がシャッター15を再び開き、基板搬送ロボット111のハンドが処理済の基板Wを基板処理部SPから搬出する。このように、本実施形態では、チャンバ11の内部空間12が常温環境に保たれる。なお、本明細書において「常温」とは、5℃~35℃の温度範囲にあることを意味する。
【0021】
図3に示すように、側壁11dは、ベース部材17に設置された基板処理部SP(図2)を挟んで側壁11bの反対側に位置している。この側壁11dには、メンテナンス用開口11d1が設けられている。メンテナンス時には、同図に示すように、メンテナンス用開口11d1は開放される。このため、オペレータは装置の外部からメンテナンス用開口11d1を介して基板処理部SPにアクセス可能となっている。一方、基板処理時には、蓋部材19がメンテナンス用開口11d1を塞ぐように取り付けられる。このように、本実施形態では、蓋部材19は側壁11dに対して着脱自在となっている。
【0022】
また、側壁11eの外側面には、基板処理部SPに対して加熱した不活性ガス(本実施形態では、窒素ガス)を供給するための加熱ガス供給部47が取り付けられている。この加熱ガス供給部47は、ヒータ471を内蔵している。
【0023】
このように、チャンバ11の外壁側には、シャッター15、蓋部材19および加熱ガス供給部47が配置される。これに対し、チャンバ11の内側、つまり内部空間12には、高床構造のベース部材17の上面に基板処理部SPが設置される。以下、図2ないし図13を参照しつつ、基板処理部SPの構成について説明する。
【0024】
図4はベース部材上に設置された基板処理部の構成を模式的に示す平面図である。以下、装置各部の配置関係や動作などを明確にするために、Z方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とする座標系を適宜付している。図4における座標系において、基板Wの搬送経路TPと平行な水平方向を「X方向」とし、それと直交する水平方向を「Y方向」としている。さらに詳しくは、チャンバ11の内部空間12から搬送用開口11b1およびメンテナンス用開口11d1に向かう方向をそれぞれ「+X方向」および「-X方向」と称し、チャンバ11の内部空間12から側壁11c、11eに向かう方向をそれぞれ「-Y方向」および「+Y方向」と称し、鉛直上方および鉛直下方に向かう方向をそれぞれ「+Z方向」および「-Z方向」と称する。また、同図中の「CR液」はカップリンス液を意味している。
【0025】
基板処理部SPは、保持回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8、基板観察機構9およびカップリンス機構200を備えている。これらの機構は、ベース部材17上に設けられている。つまり、チャンバ11よりも高い剛性を有するベース部材17を基準とし、保持回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8、基板観察機構9およびカップリンス機構200が相互に予め決められた位置関係で配置される。
【0026】
保持回転機構2は、図2に示すように、基板Wの表面を上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持する基板保持部2Aと、基板Wを保持した基板保持部2Aおよび飛散防止機構3の一部を同期して回転させる回転機構2Bと、を備えている。このため、制御ユニット10からの回転指令に応じて回転機構2Bが作動すると、基板Wおよび飛散防止機構3の回転カップ部31は、鉛直方向Zと平行に延びる回転軸AXまわりに回転される。
【0027】
基板保持部2Aは、基板Wより小さい円板状の部材であるスピンチャック21を備えている。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸AXに一致するように設けられている。特に、本実施形態では、図4に示すように、基板保持部2Aの中心(スピンチャック21の中心軸に相当)がチャンバ11の中心11gよりも(+X)方向にオフセットされる。つまり、チャンバ11の上方からの平面視で、スピンチャック21の中心軸(回転軸AX)が内部空間12の中心11gから搬送用開口11b1側に距離Lofだけずれた処理位置に位置するように、基板保持部2Aは配置される。なお、後述する装置各部の配置関係を明確にするため、本明細書では、オフセットされた基板保持部2Aの中心(回転軸AX)を通過するとともに、搬送経路TPと直交する仮想線および搬送経路TPと平行な仮想線をそれぞれ「第1仮想水平線VL1」および「第2仮想水平線VL2」と称する。
【0028】
スピンチャック21の下面には、円筒状の回転軸部22が連結される。回転軸部22は、その軸線を回転軸AXと一致させた状態で、鉛直方向Zに延設される。また、回転軸部22には、回転機構2Bが接続される。
【0029】
回転機構2Bは、基板保持部2Aおよび飛散防止機構3の回転カップ部31を回転させるための回転駆動力を発生するモータ23と、当該回転駆動力を伝達するための動力伝達部24とを有している。モータ23は、回転駆動力の発生に伴い回転する回転シャフト231を有している。回転シャフト231を鉛直下方に延設させた姿勢でベース部材17のモータ取付部位171に設けられている。より詳しくは、モータ取付部位171は、図3に示すように、メンテナンス用開口11d1と対向しながら(+X)方向に切り欠かれた部位である。このモータ取付部位171の切欠幅(Y方向サイズ)はモータ23のY方向幅とほぼ同一である。このため、モータ23は、その側面をモータ取付部位171と係合させながらX方向に移動自在となっている。
【0030】
モータ取付部位171で、モータ23がX方向に位置決めされながらベース部材17に固定される。ベース部材17から下方に突出した回転シャフト231の先端部には、第1プーリ241が取り付けられている。また、基板保持部2Aの下方端部には、第2プーリ242が取り付けられている。より詳しくは、基板保持部2Aの下方端部は、ベース部材17のスピンチャック取付部位172に設けられた貫通孔に挿通され、ベース部材17の下方に突出している。この突出部分に第2プーリ242が設けられている。そして、第1プーリ241および第2プーリ242の間に無端ベルト243が架け渡される。このように、本実施形態では、第1プーリ241、第2プーリ242および無端ベルト243により、動力伝達部24が構成される。
【0031】
スピンチャック21の中央部には、貫通孔(図示省略)が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、バルブ(図示省略)が介装された配管25を介してポンプ26が接続される。当該ポンプ26およびバルブは、制御ユニット10に電気的に接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて動作する。これによって、負圧と正圧とが選択的にスピンチャック21に付与される。例えば基板Wがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプ26が負圧をスピンチャック21に付与すると、スピンチャック21は基板Wを下方から吸着保持する。一方、ポンプ26が正圧をスピンチャック21に付与すると、基板Wはスピンチャック21の上面から取り外し可能となる。また、ポンプ26の吸引を停止すると、スピンチャック21の上面上で基板Wは水平移動可能となる。
【0032】
スピンチャック21には、回転軸部22の中央部に設けられた配管28を介して窒素ガス供給部29が接続される。窒素ガス供給部29は、基板処理システム100が設置される工場のユティリティーなどから供給される常温の窒素ガスを制御ユニット10からのガス供給指令に応じた流量およびタイミングでスピンチャック21に送給し、基板Wの下面Wb側で窒素ガスを中央部から径方向外側に流通させる。なお、本実施形態では、窒素ガスを用いているが、その他の不活性ガスを用いてもよい。この点については、後で説明する中央ノズルから吐出される加熱ガスについても同様である。また、「流量」とは、窒素ガスなどの流体が単位時間当たりに移動する量を意味している。
【0033】
回転機構2Bは、基板Wと一体的にスピンチャック21を回転させるのみならず、当該回転に同期して回転カップ部31を回転させるために、動力伝達部27(図2)を有している。動力伝達部27は、非磁性材料または樹脂で構成される円環部材27a(図2)と、円環部材に内蔵されるスピンチャック側磁石(図示省略)と、回転カップ部31の一構成である下カップ32に内蔵されるカップ側磁石(図示省略)とを有している。円環部材27aは、図2に示すように回転軸部22に取り付けられ、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能となっている。より詳しくは、回転軸部22は、図2に示すように、スピンチャック21の直下位置において、径方向外側に張出したフランジ部位(図示省略)を有している。そして、フランジ部位に対して円環部材27aが同心状に配置されるとともに、図示省略するボルトなどによって連結固定される。
【0034】
円環部材27aの外周縁部では、複数のスピンチャック側磁石が回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。本実施形態では、互いに隣り合う2つのスピンチャック側磁石の一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置される。
【0035】
これらのスピンチャック側磁石と同様に、複数のカップ側磁石が回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。これらのカップ側カップ側磁石は下カップ32に内蔵される。下カップ32は次に説明する飛散防止機構3の構成部品であり、円環形状を有している。つまり、下カップ32は、円環部材27aの外周面と対向可能な内周面を有している。この内周面の内径は円環部材27aの外径よりも大きい。そして、当該内周面を円環部材27aの外周面から所定間隔(=(上記内径-上記外径)/2)だけ離間対向させながら下カップ32が回転軸部22および円環部材27aと同心状に配置される。この下カップ32の外周縁上面には、係合ピンおよび連結用マグネットが設けられており、これらにより上カップ33が下カップ32と連結され、この連結体が回転カップ部31として機能する。
【0036】
下カップ32は、ベース部材17の上面上において、図面への図示を省略したベアリングによって、上記配置状態のまま、回転軸AXまわりに回転可能に支持される。この下カップ32の内周縁部において、上記したようにカップ側磁石が回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔で配置される。また、互いに隣り合う2つのカップ側磁石の配置についてもスピンチャック側磁石と同様である。つまり、一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置される。
【0037】
このように構成された動力伝達部27では、モータ23により回転軸部22とともに円環部材27aが回転すると、スピンチャック側磁石とカップ側磁石との間での磁力作用によって、下カップ32がエアギャップ(円環部材27aと下カップ32との隙間)を維持しつつ円環部材27aと同じ方向に回転する。これにより、回転カップ部31が回転軸AXまわりに回転する。つまり、回転カップ部31は基板Wと同一方向でしかも同期して回転する。
【0038】
飛散防止機構3は、スピンチャック21に保持された基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能な回転カップ部31と、回転カップ部31を囲むように固定的に設けられる固定カップ部34と、を有している。回転カップ部31は、下カップ32に上カップ33が連結されることで、回転する基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能に設けられている。
【0039】
図5はスピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。図6は回転カップ部および固定カップ部の一部を示す図である。下カップ32は円環形状を有している。その外径は基板Wの外径よりも大きく、鉛直上方からの平面視においてスピンチャック21で保持された基板Wから径方向にはみ出た状態で下カップ32は回転軸AXまわりに回転自在に配置される。当該はみ出た領域、つまり下カップ32の上面周縁部では、周方向に沿って鉛直上方に立設する係合ピン(図示省略)と平板状の下マグネット(図示省略)とが交互に取り付けられている。
【0040】
一方、上カップ33は、図2図3および図5に示すように、下円環部位331と、上円環部位332と、これらを連結する傾斜部位333とを有している。下円環部位331の外径D331は下カップ32の外径D32と同一であり、下円環部位331は下カップ32の周縁部321の鉛直上方に位置している。下円環部位331の下面では、係合ピンの鉛直上方に相当する領域において、下方に開口した凹部が係合ピンの先端部と嵌合可能に設けられている。また、下マグネットの鉛直上方に相当する領域において、上マグネットが取り付けられている。このため、凹部および上マグネットがそれぞれ係合ピンおよび下マグネットと対向した状態で、上カップ33は下カップ32に対して係脱可能となっている。
【0041】
上カップ33は、昇降機構7により鉛直方向において昇降可能となっている。上カップ33が昇降機構7により上方に移動されると、鉛直方向において上カップ33と下カップ32との間に基板Wの搬入出用の搬送空間が形成される。一方、昇降機構7により上カップ33が下方に移動されると、凹部が係合ピンの先端部を被るように嵌合し、下カップ32に対して上カップ33が水平方向に位置決めされる。また、上マグネットが下マグネットに近接し、両者間で生じる引力によって、上記位置決めさた上カップ33および下カップ32が互いに結合される。これによって、図4の部分拡大図および図6に示すように、水平方向に延びる隙間GPcを形成した状態で、上カップ33および下カップ32が鉛直方向に一体化される。そして、回転カップ部31は隙間GPcを形成したまま回転軸AXまわりに回転自在となっている。
【0042】
回転カップ部31では、図5に示すように、上円環部位332の外径D332は下円環部位331の外径D331よりも若干小さい。また、下円環部位331および上円環部位332の内周面の径d331、d332を比較すると、下円環部位331の方が上円環部位332よりも大きく、鉛直上方からの平面視で、上円環部位332の内周面が下円環部位331の内周面の内側に位置する。そして、上円環部位332の内周面と下円環部位331の内周面とが上カップ33の全周にわたって傾斜部位333により連結される。このため、傾斜部位333の内周面、つまり基板Wを取り囲む面は、傾斜面334となっている。すなわち、図6に示すように、傾斜部位333は回転する基板Wの外周を囲んで基板Wから飛散する液滴を捕集可能となっており、上カップ33および下カップ32で囲まれた空間が捕集空間SPcとして機能する。なお、本実施形態では、鉛直方向Zにおける各部の高さ位置を次のように称する。つまり、図6に示すように、スピンチャック21に保持された基板Wの上面(表面)の位置を「高さ位置Zw」と称し、後で詳述する上面保護加熱機構4の円板部42の上面の位置を「高さ位置Z42」と称する。
【0043】
しかも、捕集空間SPcを臨む傾斜部位333は、下カップ32と連結されて連結部位を構成する下円環部位331から基板Wの周縁部の上方に向かって傾斜している。このため、図6に示すように、回転する基板Wから飛散した処理液の液滴は高さ位置Zwで傾斜部位333の傾斜面334に捕集される。そして、当該液滴は傾斜面334に沿って上カップ33の下端部、つまり下円環部位331に流動し、さらに隙間GPcを介して回転カップ部31の外側に排出可能となっている。
【0044】
固定カップ部34は回転カップ部31を取り囲むように設けられ、排出空間SPeを形成する。固定カップ部34は、液受け部位341と、液受け部位341の内側に設けられた排気部位342とを有している。液受け部位341は、隙間GPcの反基板側開口(図6の左手側開口)を臨むように開口したカップ構造を有している。つまり、液受け部位341の内部空間が排出空間SPeとして機能しており、隙間GPcを介して捕集空間SPcと連通される。したがって、回転カップ部31により捕集された液滴は気体成分とともに隙間GPcを介して排出空間SPeに案内される。そして、液滴は液受け部位341の底部に集められ、固定カップ部34から排液される。
【0045】
一方、気体成分は排気部位342に集められる。この排気部位342は区画壁343を介して液受け部位341と区画される。また、区画壁343の上方に気体案内部344が配置される。気体案内部344は、区画壁343の直上位置から排出空間SPeと排気部位342の内部にそれぞれ延設されることで、区画壁343を上方から覆ってラビリンス構造を有する気体成分の流通経路を形成している。したがって、液受け部位341に流入した流体のうち気体成分が上記流通経路を経由して排気部位342に集められる。この排気部位342は排気部38と接続される。このため、制御ユニット10からの指令に応じて排気部38が作動することで固定カップ部34の圧力が調整され、排気部位342内の気体成分が効率的に排気される。また、排気部38の精密制御により、排出空間SPeの圧力や流量が調整される。例えば排出空間SPeの圧力が捕集空間SPcの圧力よりも下がる。その結果、捕集空間SPc内の液滴を効率的に排出空間SPeに引き込み、捕集空間SPcからの液滴の移動を促進することができる。
【0046】
図7は上面保護加熱機構の構成を示す外観斜視図である。図8図7に示す上面保護加熱機構の断面図である。上面保護加熱機構4は、スピンチャック21に保持される基板Wの上面Wfの上方に配置された遮断板41を有している。この遮断板41は水平な姿勢で保持された円板部42を有している。円板部42はヒータ駆動部422により駆動制御されるヒータ421を内蔵している。この円板部42は基板Wよりも若干短い直径を有している。そして、円板部42の下面が基板Wの上面Wfのうち周縁部Wsを除く表面領域を上方から覆うように、円板部42は支持部材43により支持される。なお、図7中の符号44は円板部42の周縁部に設けられた切欠部であり、これは処理機構5に含まれる処理液吐出ノズルとの干渉を防止するために設けられている。切欠部44は、径方向外側に向かって開口している。
【0047】
支持部材43の下端部は円板部42の中央部に取り付けられている。支持部材43と円板部42とを上下に貫通するように、円筒状の貫通孔が形成される。また、当該貫通孔に対し、中央ノズル45が上下に挿通している。この中央ノズル45には、図2に示すように、配管46を介して加熱ガス供給部47と接続される。加熱ガス供給部47は、基板処理システム100が設置される工場の用力などから供給される常温の窒素ガスをヒータ471により加熱して制御ユニット10からの加熱ガス供給指令に応じた流量およびタイミングで基板処理部SPに供給する。
【0048】
ここで、ヒータ471をチャンバ11の内部空間12に配置すると、ヒータ471から放射される熱が基板処理部SP、特に後述するように処理機構5や基板観察機構9に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、本実施形態では、ヒータ471を有する加熱ガス供給部47が、図4に示すように、チャンバ11の外側に配置される。また、本実施形態では、配管46の一部にリボンヒータ48が取り付けられている。リボンヒータ48は制御ユニット10からの加熱指令に応じて発熱して配管46内を流れる窒素ガスを加熱する。
【0049】
こうして加熱された窒素ガス(以下「加熱ガス」という)が中央ノズル45に向けて圧送され、中央ノズル45から吐出される。例えば図8に示すように、円板部42がスピンチャック21に保持された基板Wに近接した処理位置に位置決めされた状態で加熱ガスが供給されることによって、加熱ガスは基板Wの上面Wfとヒータ内蔵の円板部42とに挟まれた空間SPaの中央部から周縁部に向って流れる。これによって、基板Wの周囲の雰囲気が基板Wの上面Wfに入り込むのを抑制することができる。その結果、上記雰囲気に含まれる液滴が基板Wと円板部42とで挟まれた空間SPaに巻き込まれるのを効果的に防止することができる。また、ヒータ421による加熱と加熱ガスによって上面Wfが全体的に加熱され、基板Wの面内温度を均一化することができる。これによって、基板Wが反るのを抑制し、処理液の着液位置を安定化させることができる。
【0050】
図2に示すように、支持部材43の上端部は、第1仮想水平線VL1に沿って延びる梁部材49に固定される。この梁部材49は、ベース部材17の上面に取り付けられた昇降機構7と接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて昇降機構7により昇降される。例えば図2では梁部材49が下方に位置決めされることで、支持部材43を介して梁部材49に連結された円板部42が処理位置に位置している。一方、制御ユニット10からの上昇指令を受けて昇降機構7が梁部材49を上昇させると、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的に上昇するとともに、上カップ33も連動して下カップ32から分離して上昇する。これによって、スピンチャック21と、上カップ33および円板部42との間が広がり、スピンチャック21に対する基板Wの搬出入を行うことが可能となる。
【0051】
処理機構5は、基板Wの上面側に配置される処理液吐出ノズル51F(図4)と、基板Wの下面側に配置される処理液吐出ノズル51B(図2)と、処理液吐出ノズル51F、51Bに処理液を供給する処理液供給部52とを有している。以下においては、上面側の処理液吐出ノズル51Fと下面側の処理液吐出ノズル51Bとを区別するために、それぞれ「上面処理ノズル51F」および「下面処理ノズル51B」と称する。また、図2において、処理液供給部52が2つ図示されるが、これらは同一である。
【0052】
図9は、処理機構に装備される上面側の処理液吐出ノズルと、カップリンス機構に装備される上面側のカップリンス液吐出ノズルと、を示す斜視図であり、各ノズルを斜め下方向から見た図である。本実施形態では、3本の上面処理ノズル51Fがスピンチャック21に保持された基板Wの上方から基板Wの上面Wfの周縁部Wsに向けて処理液を吐出する上面側の処理液吐出ノズルとして設けられるとともに、それらに対して処理液供給部52が接続される。また、処理液供給部52はSC1、DHF、機能水(CO2水など)を処理液として供給可能に構成されており、3本の上面処理ノズル51FからSC1、DHFおよび機能水がそれぞれ独立して吐出可能となっている。
【0053】
各上面処理ノズル51Fでは、図9の(a)欄に示すように、先端下面に処理液を吐出する吐出口511が設けられている。そして、図4中の拡大図に示すように、各吐出口を基板Wの上面Wfの周縁部に向けた姿勢で複数(本実施形態では3個)の上面処理ノズル51Fの下方部が図7の部分拡大平面図に示すリンス液吐出ノズル201と一緒に円板部42の切欠部44に配置されるとともに、上面処理ノズル51Fの上方部がリンス液吐出ノズル201と一体的にノズルホルダ53に対して径方向D1(第1仮想水平線VL1に対してノズル吐出仰角度が45゜、旋回角度が65°程度傾いた方向)に移動自在に取り付けられている。このノズルホルダ53はノズル移動部54に接続される。
【0054】
図10はノズル移動部の構成を模式的に示す図である。図11Aはベベル処理を行うときのノズル位置を示す模式図であり、図11Bはカップリンス処理を行うときのノズル位置を示す模式図である。なお、図11Aおよび図11Bにおいて、(a)欄は処理液またはカップリンス液を吐出するノズルの側面図であり、(b)欄はノズルを上方から見た平面図である。また、符号ARは、回転軸AXから処理液またはカップリンス液を吐出しているノズルに向う径方向を示している。
【0055】
ノズル移動部54は、図10に示すように、ノズルヘッド56(=上面処理ノズル51F+リンス液吐出ノズル201+ノズルホルダ53)を保持したまま、後で説明する昇降部713のリフター713aの上端部に取り付けられている。このため、制御ユニット10からの昇降指令に応じてリフター713aが鉛直方向に伸縮すると、それに応じてノズル移動部54およびノズルヘッド56が鉛直方向Zに移動する。
【0056】
また、ノズル移動部54では、ベース部材541がリフター713aの上端部に固着されている。このベース部材541には、直動アクチュエータ542が取り付けられている。直動アクチュエータ542は、径方向Xにおけるノズル移動の駆動源として機能するモータ(以下「ノズル駆動モータ」という)543と、ノズル駆動モータ543の回転軸に連結されたボールねじなどの回転体の回転運動を直線運動に変換してスライダー544を径方向D1に往復移動させる運動変換機構545とを有している。また、運動変換機構545では、スライダー544の径方向D1への移動を安定化させるために、例えばLMガイド(登録商標)などのガイドが用いられている。
【0057】
こうして径方向Xに往復駆動されるスライダー544には、連結部材546を介してヘッド支持部材547が連結されている。このヘッド支持部材547は、径方向Xに延びる棒形状を有している。ヘッド支持部材547の(+D1)方向端部はスライダー544に固着される。一方、ヘッド支持部材547の(-D1)方向端部はスピンチャック21に向かって水平に延設され、その先端部にノズルヘッド56が取り付けられている。このため、制御ユニット10からのノズル移動指令に応じてノズル駆動モータ543が回転すると、その回転方向に対応して(+D1)方向または(-D1)方向に、しかも回転量に対応した距離だけ、スライダー544、ヘッド支持部材547およびノズルヘッド56が一体的に移動する。その結果、ノズルヘッド56に装着されている上面処理ノズル51Fが径方向D1に位置決めされる。例えば、図10に示すように、上面処理ノズル51Fが予め設定されたホーム位置に位置決めされたとき、運動変換機構545に設けられたバネ部材548がスライダー544により圧縮され、スライダー544に対して(-D1)方向に付勢力を与える。これにより、運動変換機構545に含まれるバックラッシを制御することができる。つまり、運動変換機構545はガイドなどの機械部品を有しているため、径方向D1に沿ったバックラッシをゼロとすることは事実上困難であり、これについて十分な考慮を払わないと、径方向D1における上面処理ノズル51Fの位置決め精度が低下してしまう。そこで、本実施形態では、バネ部材548を設けたことで、上面処理ノズル51Fをホーム位置に静止させた際には、常時、バックラッシを(-D1)方向に片寄らせている。これにより、次のような作用効果が得られる。
【0058】
制御ユニット10からのノズル移動指令に応じてノズル移動部54は3本の上面処理ノズル51Fおよびリンス液吐出ノズル201を一括して径方向D1に駆動させる。このノズル移動指令には、ノズル移動距離に関する情報が含まれている。この情報に基づき上面処理ノズル51Fおよびリンス液吐出ノズル201が径方向D1に指定されたノズル移動距離だけ移動される。ここで、上記情報がベベル処理位置に対応するものであるとき、図11Aに示すように、上面処理ノズル51Fがベベル処理位置(本発明の「基板処理位置」の一例に相当)に正確に位置決めされる。一方、上記情報がカップリンス処理位置に対応するものであるとき、図11Bに示すように、リンス液吐出ノズル201がカップリンス位置に正確に位置決めされる。
【0059】
ベベル処理位置に位置決めされた上面処理ノズル51Fの吐出口511は基板Wの上面Wfの周縁部に向いている。そして、制御ユニット10からの供給指令に応じて処理液供給部52が3種類の処理液のうち供給指令に対応する処理液を当該処理液用の上面処理ノズル51Fに供給すると、上面処理ノズル51Fから処理液が基板Wの端面から予め設定された位置に供給される。なお、ベベル処理を実行している間、リンス液吐出ノズル201へのカップリンス液の供給は停止されている。
【0060】
一方、カップリンス位置に位置決めたリンス液吐出ノズル201の吐出口202は、上カップ33の傾斜部位333に向いている。この吐出口202は、その口径が上面処理ノズル51Fの吐出口511の口径よりも大きくなるように、リンス液吐出ノズル201に設けられている。そして、制御ユニット10からの供給指令に応じてカップリンス液供給部203(図2)が常温DIW(脱イオン水)などのカップリンス液をリンス液吐出ノズル201に供給すると、図11Bに示すように、リンス液吐出ノズル201からカップリンス液が傾斜部位333に供給される。本実施形態では、図11Bに示すように、カップリンス液の吐出方向D33が水平面(XY平面)内で回転軸AXからリンス液吐出ノズル201に向う径方向ARに対して上カップ33の回転方向Drに角度θだけ傾いている。このため、カップリンス液の傾斜部位333への衝突時に発生するカップリンス液の跳ね返りがリンス液吐出ノズル201に戻るのを効果的に防止することができる。なお、本実施形態では、図11Aに示すように、処理液の吐出についても径方向ARに対して上カップ33に回転方向Drに角度θだけ傾いているが、角度θについては任意であり、例えばθ=ゼロに設定してもよい。また、カップリンス処理を実行している間、上面処理ノズル51Fへの処理液の供給は停止されている。
【0061】
また、ノズル移動部54の構成部品の一部に対し、雰囲気分離機構6の下密閉カップ部材61が着脱自在に固定される。つまり、ベベル処理を実行する際には、上面処理ノズル51Fおよびノズルホルダ53は、ノズル移動部54を介して下密閉カップ部材61と一体化されており、昇降機構7によって下密閉カップ部材61とともに鉛直方向Zに昇降される。
【0062】
図12は処理機構に装備される下面側の処理液吐出ノズルおよび同ノズルを支持するノズル支持部を示す斜視図である。本実施形態では、基板Wの下面Wbの周縁部に向けて処理液を吐出するために、下面処理ノズル51Bおよびノズル支持部57がスピンチャック21に保持された基板Wの下方に設けられている。ノズル支持部57は、鉛直方向に延設された薄肉の円筒部位571と、円筒部位571の上端部において径方向外側に折り広げられた円環形状を有するフランジ部位572とを有している。円筒部位571は、円環部材27aと下カップ32との間に形成されたエアギャップに遊挿自在な形状を有している。そして、図2に示すように、円筒部位571がエアギャップに遊挿されるとともにフランジ部位572がスピンチャック21に保持された基板Wと下カップ32との間に位置するように、ノズル支持部57は固定配置される。フランジ部位572の上面周縁部に対し、3つの下面処理ノズル51Bが取り付けられている。各下面処理ノズル51Bは、基板Wの下面Wbの周縁部に向けて開口した吐出口(図示省略)を有しており、配管58を介して処理液供給部52から供給される処理液を吐出可能となっている。
【0063】
これら上面処理ノズル51Fおよび下面処理ノズル51Bから吐出される処理液により、基板Wの周縁部に対するベベル処理が実行される。また、基板Wの下面側では、周縁部Wsの近傍までフランジ部位572が延設される。このため、配管28を介して下面側に供給された窒素ガスが、フランジ部位572に沿って捕集空間SPcに流れる。その結果、捕集空間SPcから液滴が基板Wに逆流するのを効果的に抑制する。
【0064】
雰囲気分離機構6は、下密閉カップ部材61と、上密閉カップ部材62とを有している。下密閉カップ部材61および上密閉カップ部材62はともに上下に開口した筒形状を有している。そして、それらの内径は回転カップ部31の外径よりも大きく、雰囲気分離機構6は、スピンチャック21、スピンチャック21に保持された基板W、回転カップ部31および上面保護加熱機構4を上方からすっぽりと囲むように配置される、より詳しくは、図2に示すように、上密閉カップ部材62は、その上方開口が天井壁11fの開口11f1を下方から覆うように、パンチングプレート14の直下位置に固定配置される。このため、チャンバ11内に導入された清浄空気のダウンフローは、上密閉カップ部材62の内部を通過するものと、上密閉カップ部材62の外側を通過するものとに分けられる。
【0065】
また、上密閉カップ部材62の下端部は、内側に折り込まれた円環形状を有するフランジ部621を有している。このフランジ部621の上面にオーリング63が取り付けられている。上密閉カップ部材62の内側において、下密閉カップ部材61が鉛直方向に移動自在に配置される。
【0066】
下密閉カップ部材61の上端部は、外側に折り広げられた円環形状を有するフランジ部611を有している。このフランジ部611は、鉛直上方からの平面視で、フランジ部621と重なり合っている。このため、下密閉カップ部材61が下降すると、図4中の部分拡大図に示すように、下密閉カップ部材61のフランジ部611がオーリング63を介して上密閉カップ部材62のフランジ部621で係止される。これにより、下密閉カップ部材61は下限位置に位置決めされる。この下限位置では、鉛直方向において上密閉カップ部材62と下密閉カップ部材61とが繋がり、上密閉カップ部材62の内部に導入されたダウンフローがスピンチャック21に保持された基板Wに向けて案内される。
【0067】
下密閉カップ部材61の下端部は、外側に折り込まれた円環形状を有するフランジ部612を有している。このフランジ部612は、鉛直上方からの平面視で、固定カップ部34の上端部(液受け部位341の上端部)と重なり合っている。したがって、上記下限位置では、図3中の部分拡大図に示すように、下密閉カップ部材61のフランジ部612がオーリング64を介して固定カップ部34で係止される。これにより、鉛直方向において下密閉カップ部材61と固定カップ部34が繋がり、上密閉カップ部材62、下密閉カップ部材61および固定カップ部34により密閉空間12aが形成される。この密閉空間12a内において、基板Wに対するベベル処理が実行可能となっている。つまり、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされることで、密閉空間12aが密閉空間12aの外側空間12bから分離される(雰囲気分離)。したがって、外側雰囲気の影響を受けることなく、ベベル処理を安定して行うことができる。また、ベベル処理を行うために処理液を用いるが、処理液が密閉空間12aから外側空間12bに漏れるのを確実に防止することができる。よって、外側空間12bに配置する部品の選定・設計の自由度が高くなる。
【0068】
下密閉カップ部材61は鉛直上方にも移動可能に構成される。また、鉛直方向における下密閉カップ部材61の中間部には、上記したように、ノズル移動部54のヘッド支持部材547を介してノズルヘッド56(=上面処理ノズル51F+リンス液吐出ノズル201+ノズルホルダ53)が固定される。また、これ以外にも、図2および図4に示すように、梁部材49を介して上面保護加熱機構4が下密閉カップ部材61の中間部に固定される。つまり、図4に示すように、下密閉カップ部材61は、周方向において互いに異なる3箇所で梁部材49の一方端部、梁部材49の他方端部およびヘッド支持部材547とそれぞれ接続される。そして、昇降機構7が梁部材49の一方端部、梁部材49の他方端部およびヘッド支持部材547を昇降させることで、それに伴って下密閉カップ部材61も昇降する。
【0069】
この下密閉カップ部材61の内周面では、図2および図4に示すように、内側に向けて突起部613が上カップ33と係合可能な係合部位として複数本(4本)突設される。各突起部613は上カップ33の上円環部位332の下方空間まで延設される。また、各突起部613は、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされた状態で上カップ33の上円環部位332から下方に離れるように取り付けられている。そして、下密閉カップ部材61の上昇によって各突起部613が下方から上円環部位332に係合可能となっている。この係合後においても、下密閉カップ部材61がさらに上昇することで上カップ33を下カップ32から離脱させることが可能となっている。
【0070】
本実施形態では、昇降機構7により下密閉カップ部材61が上面保護加熱機構4およびノズルヘッド56とともに上昇し始めた後で、上カップ33も一緒に上昇する。これによって、上カップ33、上面保護加熱機構4およびノズルヘッド56がスピンチャック21から上方に離れる。下密閉カップ部材61の退避位置への移動によって、基板搬送ロボット111のハンドがスピンチャック21にアクセスするための搬送空間が形成される。そして、当該搬送空間を介してスピンチャック21への基板Wのローディングおよびスピンチャック21からの基板Wのアンローディングが実行可能となっている。このように、本実施形態では、昇降機構7による下密閉カップ部材61の最小限の上昇によってスピンチャック21に対する基板Wのアクセスを行うことが可能となっている。
【0071】
昇降機構7は2つの昇降駆動部71、72を有している。昇降駆動部71では、第1昇降モータ(図示省略)がベース部材17の第1昇降取付部位173(図3)に取り付けられている。第1昇降モータは、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生する。この第1昇降モータに対し、2つの昇降部712、713が連結される。昇降部712、713は、第1昇降モータから上記回転力を同時に受ける。そして、昇降部712は、第1昇降モータの回転量に応じて梁部材49の一方端部を支持する支持部材491を鉛直方向Zに昇降させる。また、昇降部713は、第1昇降モータの回転量に応じてノズルヘッド56を支持するヘッド支持部材547を鉛直方向Zに昇降させる。
【0072】
昇降駆動部72では、第2昇降モータ(図示省略)がベース部材17の第2昇降取付部位174(図3)に取り付けられている。第2昇降モータに対し、昇降部722が連結される。第2昇降モータは、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生し、昇降部722に与える。昇降部722は、第2昇降モータの回転量に応じて梁部材49の他方端部を支持する支持部材492を鉛直方向に昇降させる。
【0073】
昇降駆動部71、72は、下密閉カップ部材61の側面に対し、その周方向において互いに異なる3箇所にそれぞれ固定される支持部材491、492、54を同期して鉛直方向に移動させる。したがって、上面保護加熱機構4、ノズルヘッド56および下密閉カップ部材61の昇降を安定して行うことができる。また、下密閉カップ部材61の昇降に伴って上カップ33も安定して昇降させることができる。
【0074】
センタリング機構8は、ポンプ26による吸引を停止している間(つまりスピンベース21の上面上で基板Wが水平移動可能となっている間)に、センタリング処理を実行する。このセンタリング処理により回転軸AXに対する基板W偏心が解消され、基板Wの中心が回転軸AXと一致する。センタリング機構8は、図4に示すように、第1仮想水平線VL1に対して40゜程度傾いた当接移動方向D2において、回転軸AXに対し、搬送用開口11b1側に配置されたシングル当接部81と、メンテナンス用開口11d1側に配置されたマルチ当接部82と、シングル当接部81およびマルチ当接部82を当接移動方向D2に移動させるセンタリング駆動部83と、を有している。
【0075】
シングル当接部81は、当接移動方向D2と平行に延設された形状を有し、スピンチャック21側の先端部でスピンチャック21上の基板Wの端面と当接可能に仕上げられている。一方、マルチ当接部82は、鉛直上方からの平面視で略Y字形状を有し、スピンチャック21側の二股部位の各先端部でスピンチャック21上の基板Wの端面と当接可能に仕上げられている。これらシングル当接部81およびマルチ当接部82は、当接移動方向D2に移動自在となっている。
【0076】
センタリング駆動部83は、シングル当接部81を当接移動方向D2に移動させるためのシングル移動部831と、マルチ当接部82を当接移動方向D2に移動させるためのマルチ移動部832と、を有している。シングル移動部831はベース部材17のシングル移動取付部位175(図3)に取り付けられ、マルチ移動部832はベース部材17のマルチ移動取付部位176(図3)に取り付けられている。基板Wのセンタリング処理を実行しない間、センタリング駆動部83は、図4に示すように、シングル当接部81およびマルチ当接部82をスピンチャック21から離間して位置決めする。このため、シングル当接部81およびマルチ当接部82は搬送経路TPから離れ、チャンバ11に対して搬入出される基板Wに対してシングル当接部81およびマルチ当接部82が干渉するのを効果的に防止することができる。
【0077】
一方、基板Wのセンタリング処理を実行する際には、制御ユニット10からのセンタリング指令に応じて、シングル移動部831がシングル当接部81を回転軸AXに向けて移動させるとともに、マルチ移動部832がマルチ当接部82を回転軸AXに向けて移動させる。これにより、基板Wの中心が回転軸AXと一致する。
【0078】
基板観察機構9は、光源部91と、撮像部92と、観察ヘッド93と、観察ヘッド駆動部94と、有している。光源部91および撮像部92は、ベース部材17の光学部品取付位置177(図3)において並設される。光源部91は、制御ユニット10からの照明指令に応じて照明光を観察位置に向けて照射する。この観察位置は、基板Wの周縁部Wsに対応する位置であり、観察ヘッド93が位置決めされる位置(図示省略)に相当する。
【0079】
観察位置と、観察位置から基板Wの径方向外側に離れた離間位置との間を、観察ヘッド93は往復移動可能となっている。当該観察ヘッド93に対し、観察ヘッド駆動部94が接続される。観察ヘッド駆動部94はベース部材17のヘッド駆動位置178(図3)でベース部材17に取り付けられている。そして、制御ユニット10からのヘッド移動指令に応じて観察ヘッド駆動部94は、第1仮想水平線VL1に対して10゜程度傾いたヘッド移動方向D3に観察ヘッド93を往復移動させる。より具体的には、基板Wの観察処理を実行しない間、観察ヘッド駆動部94は観察ヘッド93を退避位置に移動して位置決めしている。このため、観察ヘッド93は搬送経路TPから離れ、チャンバ11に対して搬入出される基板Wに対して観察ヘッド93が干渉するのを効果的に防止することができる。一方、基板Wの観察処理を実行する際には、制御ユニット10からの基板観察指令に応じて、観察ヘッド駆動部94が観察ヘッド93を観察位置に移動させる。
【0080】
このように構成された観察ヘッド93が観察位置に位置決めされるとともに、位置決め状態で制御ユニット10からの照明指令に光源部91が点灯すると、照明光が観察ヘッド93の照明領域に照射される。これより、観察ヘッド93からの拡散照明光によって、基板Wの周縁部Wsおよびその隣接領域が照明される。また、周縁部Wsおよびその隣接領域で反射された反射光が観察ヘッド93を介して撮像部92に導光される。
【0081】
撮像部92は、物体側テレセントリックレンズで構成される観察レンズ系と、CMOSカメラとを有している。したがって、観察ヘッド93から導光される反射光のうち観察レンズ系の光軸に平行な光線のみがCMOSカメラのセンサ面に入射され、基板Wの周縁部Wsおよび隣接領域の像がセンサ面上に結像される。こうして撮像部92は基板Wの周縁部Wsおよび隣接領域を撮像し、基板Wの上面画像、側面画像および下面画像を取得する。そして、その画像を示す画像データを撮像部92は制御ユニット10に送信する。
【0082】
制御ユニット10は、演算処理部10A、記憶部10B、読取部10C、画像処理部10D、駆動制御部10E、通信部10Fおよび排気制御部10Gを有している。記憶部10Bは、ハードディスクドライブなどで構成されており、上記基板処理装置1によりベベル処理を実行するためのプログラムを記憶している。当該プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能な記録媒体RM(例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等)に記憶されており、読取部10Cにより記録媒体RMから読み出され、記憶部10Bに保存される。また、当該プログラムの提供は、記録媒体RMに限定されるものではなく、例えば当該プログラムが電気通信回線を介して提供されるように構成してもよい。画像処理部10Dは、基板観察機構9により撮像された画像に種々の処理を施す。駆動制御部10Eは、基板処理装置1の各駆動部を制御する。通信部10Fは、基板処理システム100の各部を統合して制御する制御部などと通信を行う。排気制御部10Gは排気部38を制御する。
【0083】
また、制御ユニット10には、各種情報を表示する表示部10H(例えばディスプレイなど)や操作者からの入力を受け付ける入力部10J(例えば、キーボードおよびマウスなど)が接続される。
【0084】
演算処理部10Aは、CPU(= Central Processing Unit)やRAM(=Random
Access Memory)等を有するコンピュータにより構成されており、記憶部10Bに記憶されるプログラムにしたがって基板処理装置1の各部を以下のように制御し、ベベル処理を実行する。以下、図13を参照しつつ基板処理装置1によるベベル処理およびカップリンス処理について説明する。
【0085】
図13図2に示す基板処理装置により基板処理動作の一例として実行されるベベル処理を示すフローチャートである。基板処理装置1により基板Wにベベル処理を施す際には、演算処理部10Aは、昇降駆動部71、72により下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42を一体的に上昇させる。この下密閉カップ部材61の上昇途中で、突起部613が上カップ33の上円環部位332と係合し、それ以降、下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42と一緒に上カップ33が上昇して退避位置に位置決めされる。これにより、スピンチャック21の上方に基板搬送ロボット111のハンド(図示省略)が進入するのに十分な搬送空間が形成される。また、演算処理部10Aは、センタリング駆動部83によりシングル移動部831およびマルチ当接部82をスピンチャック21から離れた退避位置に移動させるとともに、観察ヘッド駆動部94により観察ヘッド93をスピンチャック21から離れた待機位置に移動させる。これにより、図4に示すように、スピンチャック21の周囲に配置される構成要素のうちノズルヘッド56、光源部91、撮像部92、モータ23およびマルチ当接部82は、第1仮想水平線VL1よりもメンテナンス用開口11d1側(同図の下側)に位置する。また、シングル移動部831および観察ヘッド93は、第1仮想水平線VL1よりも搬送用開口11b1側に位置しているが、搬送経路TPに沿った基板Wの移動領域から外れている。本実施形態では、このようなレイアウト構造を採用しているため、チャンバ11に対する基板Wの搬入出時に、スピンチャック21の周囲に配置される構成要素が基板Wと干渉するのを効果的に防止することができる。
【0086】
このように搬送空間の形成完了と基板Wとの干渉防止とを確認すると、演算処理部10Aは、通信部10Fを介して基板搬送ロボット111に基板Wのローディングリスエストを行い、図4に示す搬送経路TPに沿って未処理の基板Wが基板処理装置1に搬入されてスピンチャック21の上面に載置されるのを待つ。そして、スピンチャック21上に基板Wが載置される(ステップS1)。なお、この時点では、ポンプ26は停止しており、スピンチャック21の上面上で基板Wは水平移動可能となっている。
【0087】
基板Wのローディングが完了すると、基板搬送ロボット111が搬送経路TPに沿って基板処理装置1から退避する。それに続いて、演算処理部10Aは、シングル移動部831およびマルチ当接部82をスピンチャック21上の基板Wに近接するように、センタリング駆動部83を制御する。これによりスピンチャック21に対する基板Wの偏心が解消され、基板Wの中心がスピンチャック21の中心と一致する(ステップS2)。こうしてセンタリング処理が完了すると、演算処理部10Aは、シングル移動部831およびマルチ当接部82が基板Wから離間するようにセンタリング駆動部83を制御するとともに、ポンプ26を作動させて負圧をスピンチャック21に付与する。これにより、スピンチャック21は基板Wを下方から吸着保持する。
【0088】
次に、演算処理部10Aは、昇降駆動部71、72に下降指令を与える。これに応じて、昇降駆動部71、72が下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42を一体的に下降させる。この下降途中で、下密閉カップ部材61の突起部613により下方から支持される上カップ33が下カップ32に連結される。これによって、回転カップ部31(=上カップ33と下カップ32の連結体)が形成される。
【0089】
回転カップ部31の形成後に、下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的にさらに下降し、下密閉カップ部材61のフランジ部611、612がそれぞれ上密閉カップ部材62のフランジ部621および固定カップ部34で係止される。これにより、下密閉カップ部材61が下限位置(図2の位置)に位置決めされる(ステップS3)。上記係止後においては、図4の部分拡大図に示すように、上密閉カップ部材62のフランジ部621とおよび下密閉カップ部材61のフランジ部611がオーリング63を介して密着されるとともに、下密閉カップ部材61のフランジ部612および固定カップ部34がオーリング63を介して密着される。その結果、図2に示すように、鉛直方向において下密閉カップ部材61と固定カップ部34が繋がり、上密閉カップ部材62、下密閉カップ部材61および固定カップ部34により密閉空間12aが形成され、密閉空間12aが外側雰囲気(外側空間12b)から分離される(雰囲気分離)。
【0090】
この雰囲気分離状態で、円板部42の下面が基板Wの上面Wfのうち周縁部Wsを除く表面領域を上方から覆っている。また、上面処理ノズル51Fが、円板部42の切欠部44内で吐出口511を基板Wの上面Wfの周縁部に向けた姿勢で位置決めされる。こうして基板Wへの処理液の供給準備が完了すると、演算処理部10Aは、モータ23に回転指令を与え、基板Wを保持するスピンチャック21および回転カップ部31の回転を開始する(ステップS4)。基板Wおよび回転カップ部31の回転速度は、例えば1800回転/分に設定される。また、演算処理部10Aはヒータ駆動部422を駆動制御してヒータ421を所望温度、例えば185℃まで昇温させる。
【0091】
次に、演算処理部10Aは、加熱ガス供給部47に加熱ガス供給指令を与える。これにより、ヒータ471により加熱された窒素ガス、つまり加熱ガスが加熱ガス供給部47から中央ノズル45に向けて圧送される(ステップS5)。この加熱ガスは、配管46を通過する間、リボンヒータ48により加熱される。これにより、加熱ガスは、配管46を介したガス供給中における温度低下を防止しながら、中央ノズル45から基板Wと円板部42とで挟まれた空間SPa(図8)に向けて吐出される。これにより、基板Wの上面Wfが全面的に加熱される。また、基板Wの加熱はヒータ421によっても行われる。このため、時間の経過によって基板Wの周縁部Wsの温度が上昇し、ベベル処理に適した温度、例えば90℃に達する。また、周縁部Ws以外の温度も、ほぼ等しい温度にまで上昇する。すなわち、本実施形態では、基板Wの上面Wfの面内温度は、ほぼ均一である。したがって、基板Wが反るのを効果的に抑制することができる。
【0092】
これに続いて、演算処理部10Aは、処理液供給部52を制御して上面処理ノズル51Fおよび下面処理ノズル51Bに処理液を供給する。つまり、上面処理ノズル51Fから基板Wの上面周縁部に当たるように処理液の液流が吐出されるとともに、下面処理ノズル51Bから基板Wの下面周縁部に当たるように処理液の液流が吐出される。これによって、基板Wの周縁部Wsに対するベベル処理が実行される(ステップS6)。そして、演算処理部10Aは、基板Wのベベル処理に要する処理時間の経過などを検出すると、処理液供給部52に供給停止指令を与え、処理液の吐出を停止する。
【0093】
それに続いて、演算処理部10Aは、加熱ガス供給部47に供給停止指令を与え、加熱ガス供給部47から中央ノズル45に向けて窒素ガスの供給を停止する(ステップS7)。また、演算処理部10Aは、モータ23に回転停止指令を与え、スピンチャック21および回転カップ部31の回転を停止させる(ステップS8)。
【0094】
次のステップS9で、演算処理部10Aは基板Wの周縁部Wsを観察してベベル処理の結果を検査する。より具体的には、演算処理部10Aは、基板Wのローディング時と同様にして、上カップ33を退避位置に位置決めし、搬送空間を形成する。そして、演算処理部10Aは、観察ヘッド駆動部94を制御して観察ヘッド93を基板Wに近接させる。そして、演算処理部10Aは、光源部91を点灯させることで観察ヘッド93を介して基板Wの周縁部Wsを照明する。また、周縁部Wsおよび隣接領域で反射された反射光を撮像部92が受光して周縁部Wsおよび隣接領域を撮像する。つまり、基板Wが回転軸AXまわりに回転している間に撮像部92が取得した複数の周縁部Wsの像から基板Wの回転方向に沿った周縁部Wsの周縁部画像を取得する。すると、演算処理部10Aは、観察ヘッド駆動部94を制御して観察ヘッド93を基板Wから退避させる。これと並行して、演算処理部10Aは、撮像された周縁部Wsおよび隣接領域の画像、つまり周縁部画像に基づき、演算処理部10Aは、ベベル処理が良好に行われたか否かを検査する。なお、本実施形態では、その検査の一例として、周縁部画像から基板Wの端面から基板Wの中央部に向かって処理液により処理された処理幅を検査している(処理後検査)。
【0095】
検査後、演算処理部10Aは、通信部10Fを介して基板搬送ロボット111に基板Wのアンローディングリスエストを行い、処理済の基板Wが基板処理装置1から搬出される(ステップS10)。それに続いて、演算処理部10Aは、回転カップ部31に対するカップリンス処理を実行すべきタイミングに到達しているか否かを判定する(ステップS11)。ここで、上記タイミングとしては、例えば回転カップ部31の交換または前回メンテナンスからのベベル処理の累積回数や累積時間が所定値に到達したことなどが該当する。オペレータからのカップリンス要求があったタイミングも含まれる。
【0096】
演算処理部10Aは、カップリンス処理は不要であると判定する(ステップS11で「NO」)と、カップリンス処理を行うことなく、一連の処理を終了する。一方、演算処理部10Aは、カップリンス処理が必要であると判定する(ステップS11で「YES」)と、カップリンス処理を実行する(ステップS12)。
【0097】
カップリンス処理(ステップS12)では、演算処理部10Aは、以下のように装置各部を制御する(ステップS12a~S12e)。すなわち、演算処理部10Aは、昇降駆動部71、72に下降指令を与える。これに応じて、昇降駆動部71、72が下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42を一体的に下降させる。この下降途中で、下密閉カップ部材61の突起部613により下方から支持される上カップ33が下カップ32に連結される。これによって、スピンチャック21に基板Wが存在しない状態のまま、回転カップ部31(=上カップ33と下カップ32の連結体)が形成される。
【0098】
回転カップ部31の形成後に、下密閉カップ部材61、ノズルヘッド56、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的にさらに下降し、下密閉カップ部材61のフランジ部611、612がそれぞれ上密閉カップ部材62のフランジ部621および固定カップ部34で係止される。これにより、下密閉カップ部材61が下限位置(図2の位置)に位置決めされる(ステップS12a)。
【0099】
この雰囲気分離状態で、図11Bに示すように、円板部42の下面が基板Wの上面Wfのうち周縁部Wsを除く表面領域を上方から覆っている。また、演算処理部10Aは、ノズル駆動モータ543に駆動指令を与える。この駆動指令に含まれる回転量に対応した距離だけ、スライダー544、ヘッド支持部材547およびノズルヘッド56が一体的に移動する。その結果、リンス液吐出ノズル201が、円板部42の切欠部44内で吐出口202を上カップ33の傾斜部位333に向けた姿勢でカップリンス処理に適したカップリンス位置(図11Bで図示された位置)に位置決めされる(ステップS12b)。
【0100】
こうして回転カップ部31へのカップリンス液の供給準備が完了すると、演算処理部10Aは、モータ23に回転指令を与え、基板Wを保持するスピンチャック21および回転カップ部31の回転を開始する(ステップS12c)。なお、カップリンス処理においては、基板Wおよび回転カップ部31の回転速度は、ベベル処理時の回転速度よりも低速、例えば100~500回転/分に設定される。
【0101】
次に、演算処理部10Aは、カップリンス液供給部203を制御してリンス液吐出ノズル201にカップリンス液を供給する。つまり、上カップ33の傾斜部位333の一部、より詳しくは図11Bに示すように、鉛直方向Zにおいてカップリンス位置Zcrに対し、リンス液吐出ノズル201からカップリンス液が吐出される。これによって、カップリンス液が傾斜部位333の傾斜面334に沿って流下してカップリンス処理が実行される(ステップS12d)。そして、演算処理部10Aは、回転カップ部31のカップリンス処理に要する処理時間の経過などを検出すると、カップリンス液供給部203に供給停止指令を与え、カップリンス液の吐出を停止する。
【0102】
それに続いて、演算処理部10Aは、モータ23に回転停止指令を与え、回転カップ部31の回転を停止させる(ステップS12e)。そして、カップリンス処理を終了するとともに、一連の処理を終了する。なお、これら一連の工程(ステップS1~S12)は繰り返して実行される。
【0103】
以上のように、本実施形態では、回転軸AXまわりに回転する回転カップ部31に対し、回転軸AX側からカップリンス液が直接的に供給され、これによってカップリンス処理が実行される。したがって、回転カップ部31を清浄に保ち、回転カップ部31に付着する処理液の液滴を原因とするパーティクルの発生を効果的に防止することができる。また、処理液、特に薬液によるカップ汚染を放置しておくと、樹脂材料などにより製作された回転カップ部31が変形することがあるが、適切なタイミングでカップリンス処理が実行されることで、回転カップ部31の変形が抑えられる。つまり、回転カップ部31の長寿命化を図ることができる。その結果、ラングコストを抑えることができる。しかも、このような作用効果を奏するために用いられるカップリンス液の使用量は、特許文献1に記載の基板処理装置よりも少なく、環境負荷の低減を図ることができる。
【0104】
また、回転カップ部31では、上カップ33の傾斜部位333の傾斜面334で処理液を捕集する。このとき、回転カップ部31の傾斜部位333の傾斜面334に付着した液滴に対し、カップ回転に伴い発生する遠心力が作用する。また、ベベル処理中に供給されて基板Wの上面Wfおよび下面Wbに沿って径方向外側に流れる窒素ガス等により形成される気流の影響を受ける。これらにより、液滴に対して傾斜部位333の傾斜面334に沿った下向きベクトル応力が作用する。しかも、傾斜部位333に対してカップリンス液が供給され、傾斜部位333に沿って下方に流れる。したがって、回転カップ部31から処理液を効率的に除去することができる。
【0105】
また、鉛直方向Zにおいて、傾斜部位333でのカップリンス液の着液位置、つまりカップリンス位置Zcrは、回転する基板Wから飛散した処理液の液滴が捕集される高さ位置Zwよりも高く設定されている。このため、傾斜部位333で捕集された処理液の液滴全部を傾斜部位333の傾斜面334に沿って流下するカップリンス液でリンス除去することができ、優れたカップリンス効果が得られる。
【0106】
また、本実施形態では、図11Bに示すように、上面保護加熱機構4の円板部42が上カップ33の傾斜部位333に近接した状態で、カップリンス処理が実行される。したがって、傾斜部位333に着液したカップリンス液の一部が跳ね返ることがある。この点を考慮し、本実施形態では、カップリンス位置Zcrが上面保護加熱機構4の円板部42の上面の位置、つまり高さ位置Z42よりも低く設定されている。このため、カップリンス位置Zcrで跳ね返ったカップリンス液の液滴が円板部42の上面に付着するのを、効果的に防止することができる。
【0107】
また、上面保護加熱機構4からの放熱によって基板Wのみならず上カップ33も熱せられるが、常温のカップリンス液が上カップ33に供給され、これによって上カップ33の温度は低下する。その結果、上カップ33の耐熱性を向上させるとともに、上カップ33の変形を抑制することができる。
【0108】
また、本実施形態では、吐出口202の口径が上面処理ノズル51Fの吐出口511の口径よりも大きいため、次の作用効果が得られる。カップリンス位置Zcrでのカップリンス液の跳ね返りを抑制するために、本実施形態では、カップリンス液の吐出速度を処理液の吐出速度よりも小さくなるように設定している。その一方で、上記したように吐出口202の口径を比較的大きく設定している。したがって、カップリンス液の吐出速度を抑えているにもかかわらず、単位時間当たりにカップリンス位置Zcrに供給されるカップリンス液の供給量を稼ぐことができる。つまり、カップリンス位置Zcrでのカップリンス液の跳ね返りを抑制しつつ、カップリンス処理に十分なカップリンス液を供給することができる。その結果、カップリンス液の跳ね返りによる悪影響を抑えつつカップリンス処理を良好に行うことができる。
【0109】
また、図11Bに示すように、カップリンス液の吐出方向D33を径方向ARに対して上カップ33の回転方向Drに傾けているため、上記したようにカップリンス位置Zcrで跳ね返ったカップリンス液の液滴がリンス液吐出ノズル201に戻って付着するのを効果的に防止することができる。その結果、リンス液吐出ノズル201を用いたカップリンス処理を継続して行うことができ、リンス液吐出ノズル201や回転カップ部31のメンテナンス頻度を抑え、装置の稼働効率を高めることができる。
【0110】
また、本実施形態では、リンス液吐出ノズル201がノズルホルダ53により上面処理ノズル51Fと一括して保持され、ノズルヘッド56が構成されている。そして、ノズルヘッド56がノズル移動部54によってカップリンス位置(図11B参照)に移動される。これによって、リンス液吐出ノズル201がカップリンス処理に適した位置に高精度に位置決めされる。したがって、上カップ33の所望位置にカップリンス液を供給することができ、カップリンス処理を良好に行うことができる。
【0111】
上記したように、本実施形態では、制御ユニット10が本発明の「制御部」の一例に相当している。カップリンス位置Zcrが本発明の「カップリンス液の吐出先」の一例に相当している。高さ位置Zwが本発明の「基板の上面の高さ位置」の一例に相当している。リンス液吐出ノズル201が本発明の「上面リンスノズル」の一例に相当している。傾斜面334が本発明の「回転カップ部の内周面」の一例に相当している。
【0112】
ところで、上記第1実施形態では、鉛直方向Zにおいてスピンチャック21により基板Wを保持する基板保持高さよりも上方から傾斜面334のカップリンス位置Zcrに向けてカップリンス液を吐出しているが、これと同時に、基板保持高さよりも下方から傾斜面334に向けてカップリンス液を吐出するようにカップリンス位置Zcrに向けてカップリンス液を吐出してもよい(第2実施形態)。
【0113】
図14は本発明に係る基板処理装置の第2実施形態の構成および動作を示す模式的に図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、下面処理ノズル51Bを支持しているノズル支持部57の上面(フランジ部位572)にリンス液吐出ノズル204が設けられている。このリンス液吐出ノズル204は、カップリンス液を吐出する吐出口205をカップリンス位置Zcrに向けた状態でノズル支持部57に固定されている。なお、その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0114】
第2実施形態では、カップリンス処理時(ステップS12d)において、演算処理部10Aが、カップリンス液供給部203を制御してリンス液吐出ノズル204にもカップリンス液を供給すると、カップリンス位置Zcrにはリンス液吐出ノズル201、204からのカップリンス液が同時に供給される。したがって、斜め上方および斜め下方の両方からカップリンス液が上カップ33の傾斜部位333に供給される。その結果、第1実施形態よりも優れたカップリンス性能が得られる。
【0115】
このように、第2実施形態では、リンス液吐出ノズル204が本発明の「下面リンスノズル」の一例に相当している。
【0116】
また、本発明のリンス液吐出ノズルとして、第1実施形態では上面リンスノズル201を有し、第2実施形態では上面リンスノズル201および下面リンスノズル204を有しているが、下面リンスノズル204のみを設けるように構成してもよい(第3実施形態)。この第3実施形態では、上面リンスノズルを使用しないため、カップリンス処理時においてノズルヘッド56(=上面処理ノズル51F+ノズルホルダ53)を傾斜部位333から離間させておくことが可能となっている。したがって、傾斜部位333で反射されたカップリンス液が上面処理ノズル51Fに付着するのを抑制することができる。また、吐出口205がカップリンス位置Zcrに向いた姿勢でリンス液吐出ノズル204をノズル支持部57に固定すればよく、リンス液吐出ノズル204の調整が簡易である。しかも、固定配置されたリンス液吐出ノズル204を用いているため、第1実施形態や第2実施形態におけるリンス液吐出ノズル201のカップリンス位置への位置決め工程(ステップS12b)が不要となる。その結果、処理時間の短縮を図ることができる。
【0117】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、1つもモータ23によりスピンチャック21と回転カップ部31とを回転駆動しているが、スピンチャック21と回転カップ部31とをそれぞれ異なるモータにより駆動してもよい。このような基板処理装置に対しても本発明を適用することができる。しかも、この基板処理装置では、カップリンス処理において、回転カップ部31のみを回転させながらカップリンス液を供給することができる。その結果、カップリンス処理時における消費電力を低減することができ、環境負荷の低減を図ることができる。
【0118】
また、上記実施形態では、ベース部材17の上面に基板処理部SPが設置されるという高床構造を有する基板処理装置に対して本発明を適用している。また、上記実施形態では、回転カップ部31を有する基板処理装置に対して本発明を適用している。また、上記実施形態では、上面保護加熱機構4、雰囲気分離機構6、センタリング機構8および基板観察機構9を有する基板処理装置に対して本発明を適用している。しかしながら、例えば特許文献1に記載されているように、これらの構成を有さない基板処理装置、つまりチャンバ11の内部空間12で基板Wの周縁部に処理液を供給して上記周縁部を処理する基板処理装置に対して本発明を適用することができる。
【0119】
また、「基板処理」の一例としてベベル処理を実行する基板処理装置に対して本発明を適用しているが、回転する基板に処理液を供給することで基板に対して基板処理を施す基板処理装置全般に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
この発明は、基板を処理液により処理する基板処理全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1…基板処理装置(基板処理ユニット)
2A…基板保持部
2B…回転機構
3…飛散防止機構
4…上面保護加熱機構
5…処理機構
10…制御ユニット(制御部)
10A…演算処理部
21…スピンチャック
31…回転カップ部
32…下カップ
33…上カップ
42…円板部
51B…下面処理ノズル(処理液吐出ノズル)
51F…上面処理ノズル(処理液吐出ノズル)
52…処理液供給部
53…ノズルホルダ
54…ノズル移動部
56…ノズルヘッド
201…(上面)リンス液吐出ノズル
202…(上面リンス液吐出ノズルの)吐出口
203…カップリンス液供給部
204…(下面)リンス液吐出ノズル
205…(下面リンス液吐出ノズルの)吐出口
333…(上カップの)傾斜部位
334…傾斜面
AR…径方向
AX…回転軸
D33…吐出方向
Dr…回転方向
Ws…(基板の)周縁部
Z…鉛直方向
Zcr…カップリンス位置
Zw…(基板の上面の)高さ位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14