(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032129
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】チューブ
(51)【国際特許分類】
F16L 11/04 20060101AFI20240305BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20240305BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F16L11/04
B32B1/08 B
B32B27/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135609
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000134534
【氏名又は名称】株式会社トヨックス
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】松本 香鶴
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA02
3H111CA08
3H111CB07
3H111CB09
3H111CB14
3H111CB29
3H111DB01
3H111EA15
3H111EA19
4F100AK18A
4F100AL09B
4F100BA08A
4F100BA08B
4F100DA11
4F100EJ37A
4F100YY00
(57)【要約】
【課題】肉厚が均一で使用時に負荷が特定箇所に集中せず、ピンチバルブ装置に使用した場合にも耐久性が高いチューブを提供する。
【解決手段】長手方向に一定形状の長尺物であり、内側を長手方向に貫通する流路12と、流路12の周囲を囲む樹脂部13とを有する。樹脂部13は、流路12の径方向に積層する複数の延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン層16と、ポリテトラフルオロエチレン層16の層間を接着するエラストマー層18が交互に積層された積層体から成る。エラストマー層18は少なくとも1種のエラストマーから成り、ポリテトラフルオロエチレン層16の空隙に、エラストマーの一部が含浸している。流路12の径方向で互いに交差する少なくとも4方向の樹脂部13の肉厚の平均値と、4方向の内の互いに対向する肉厚から算出した肉厚比率と、ポリテトラフルオロエチレン層16とエラストマー層18の積層数が所定の条件を満たしている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に一定形状の長尺物であり、内側を長手方向に貫通する流路と、前記流路の周囲を囲む樹脂部を備えているピンチバルブ装置用のチューブにおいて、
前記樹脂部は、前記流路の径方向に積層する複数の延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン層と、前記ポリテトラフルオロエチレン層の層間を接着するエラストマー層が交互に積層された積層体として構成され、前記エラストマー層は少なくとも1種のエラストマーから成り、前記ポリテトラフルオロエチレン層は空隙を有し、前記空隙には前記エラストマーの一部が含浸され、
前記樹脂部の、前記流路の径方向で互いに交差する少なくとも4方向の肉厚の平均値を算出し、4方向の内の互いに対向する前記肉厚から算出した肉厚比率と、前記ポリテトラフルオロエチレン層と前記エラストマー層の積層数について、
前記肉厚の平均値が0.5mm以上2.8mm未満の場合、前記肉厚比率は1.0~1.2であり、前記肉厚の平均値が2.8mm以上10.3mm未満の場合、前記肉厚比率は1.0~1.1であり、
さらに、前記積層数については、
前記肉厚の平均値が0.5mm以上1.4mm未満の場合、前記積層数は5以上35未満であり、
前記肉厚の平均値が1.4mm以上2.0mm未満の場合、前記積層数は14以上50未満であり、
前記肉厚の平均値が2.0mm以上2.8mm未満の場合、前記積層数は20以上70未満であり、
前記肉厚の平均値が2.8mm以上4.0mm未満の場合、前記積層数は28以上100未満であり、
前記肉厚の平均値が4.0mm以上6.2mm未満の場合、前記積層数は40以上155未満であり、
前記肉厚の平均値が6.2mm以上7.7mm未満の場合、前記積層数は62以上193未満であり、
前記肉厚の平均値が7.7mm以上10.3mm未満の場合、前記積層数は77以上258未満であることを特徴とするチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体等が流通する配管の開閉弁として機能するピンチバルブ装置に適用されるチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
ピンチバルブ装置は、シリコンゴム等の弾性力の強いチューブを外部から機械的に押しつぶす又は挟む等して当該チューブの内部の流路を閉ざすことにより、流路の閉弁操作を行うバルブである。このようなバルブは、例えば、食料品、乳飲料、医薬、化粧品等を生産するプラントの配管に取り付けられて使用される。
【0003】
一般的なピンチバルブ装置は、液体や粉体を流す配管を含むラインに装備されることから、当該ピンチバルブ装置の内部で目詰まりを生じないこと、装置内部の洗浄が容易であること、及び装置の分解組立が容易であること等の要件が求められる。
【0004】
これらの点に優れたピンチバルブ装置として、例えば、特許文献1に開示されているように、円盤形状のバルブハウジングと、バルブハウジングの内部に回転自在に配設されたローターと、ローターの内側に配設され弾性材料でつくられたチューブと、チューブの中央部の外側に揺動自在に配設された1対のピンチレバーと、1対のピンチレバーでチューブを挟み込む方向に駆動する挟持手段であるピンチレバーを備えたピンチバルブ装置が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているピンチバルブ装置においては、チューブをいったんバルブハウジングに取り付けると、当該チューブの取り付け位置が固定されるため、常にチューブの同一箇所が1対のピンチレバーによって挟み込まれる(ピンチされる)こととなる。このような使用状態で繰り返しのバルブの開閉動作を長時間にわたって実行すると、チューブ表面のピンチレバーが接触する部分のみが負荷を受けて消耗又は摩耗して、最終的には破断してしまうなどの耐久性の課題を有していた。
【0007】
また、チューブ内に高圧の流体等が流れる場合には、ピンチバルブ装置の構成要素の中ではチューブが最も柔らかい材料で形成されているため、当該流体等の圧力がチューブに作用するとチューブが膨らんで変形し、破断に至ることがあるという課題もあった。さらに、チューブ内が負圧又は真空になり、チューブ自体が内側に収縮した場合も、使用上の障害が発生する場合があった。
【0008】
このため、チューブに上記障害等が発生した場合にはチューブの交換が必要となり、チューブの交換頻度が高くなると、消耗品としてのチューブにかかるコストが高くなってしまうという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、肉厚が均一で使用時に負荷が特定箇所に集中せず、ピンチバルブ装置に使用した場合にも耐久性が高いチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、長手方向に一定形状の長尺物であり、内側を長手方向に貫通する流路と、前記流路の周囲を囲む樹脂部を備えているピンチバルブ装置用のチューブであって、前記樹脂部は、前記流路の径方向に積層する複数の延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン層と、前記ポリテトラフルオロエチレン層の層間を接着するエラストマー層が交互に積層された積層体として構成され、前記エラストマー層は少なくとも1種のエラストマーから成り、前記ポリテトラフルオロエチレン層は空隙を有し、前記空隙には前記エラストマーの一部が含浸され、前記樹脂部の、前記流路の径方向で互いに交差する少なくとも4方向の肉厚の平均値を算出し、4方向の内の互いに対向する前記肉厚から算出した肉厚比率と、前記ポリテトラフルオロエチレン層と前記エラストマー層の積層数が以下の条件を満たすチューブである。
前記肉厚の平均値が0.5mm以上2.8mm未満の場合、前記肉厚比率は1.0~1.2であり、前記肉厚の平均値が2.8mm以上10.3mm未満の場合、前記肉厚比率は1.0~1.1である。
さらに、前記積層数については、前記肉厚の平均値が0.5mm以上1.4mm未満の場合、前記積層数は5以上35未満であり、前記肉厚の平均値が1.4mm以上2.0mm未満の場合、前記積層数は14以上50未満であり、前記肉厚の平均値が2.0mm以上2.8mm未満の場合、前記積層数は20以上70未満であり、前記肉厚の平均値が2.8mm以上4.0mm未満の場合、前記積層数は28以上100未満であり、前記肉厚の平均値が4.0mm以上6.2mm未満の場合、前記積層数は40以上155未満であり、前記肉厚の平均値が6.2mm以上7.7mm未満の場合、前記積層数は62以上193未満であり、前記肉厚の平均値が7.7mm以上10.3mm未満の場合、前記積層数は77以上258未満である。
【0011】
前記各肉厚の平均値の範囲において、積層数の規定範囲を超えて過剰に積層すると、エラストマー同士の接着強度が不足することで、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン層とエラストマー層が容易に剥離し、耐久性が損なわれる。また、前記積層数の規定範囲に至らず少ない積層数で製作したチューブは、エラストマー層が分厚く偏肉の原因となり、前記肉厚比率の条件を満たせない。
【0012】
前記エラストマーは、シリコーン、ウレタン、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレン、ホスファゼン、フルオロエラストマー、ペルフルオロエラストマー、ペルフルオロポリエーテルエラストマー、メチルシリコーン、フェニルシリコーン、フルオロシリコーン、又はこれらの組み合わせであり、常温で液状でないものは溶剤に溶かして液状化して使用する。
【0013】
前記エラストマーで特に好ましいのは、シリコーン、メチルシリコーン、フェニルシリコーン、フルオロエラストマー、ペルフルオロエラストマー、またはこれらの組み合わせである。
【0014】
前記チューブの、前記流路の内周面は平滑であり、前記流路の内周面は、算術平均粗さRaが0.01~0.80、10点平均粗さRzが0.01~3.00の少なくとも一方を満たしている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のチューブをピンチバルブ装置に用いることで、内圧が高まった場合の破断やチューブ内の負圧による障害等を抑制し、かつ繰り返しのピンチ動作への耐久性を向上させることができる。その結果として、ピンチバルブ装置のチューブ、ピンチバルブ装置及びこれらを備えた流体供給システムのメンテナンスにかかる負担を軽減することができる。
【0016】
また、本発明のチューブは、肉厚が一定で、変形の部位によるバラツキがなく、使用時に負荷が特定箇所に集中せず耐久性が高い。更に、内面の表面粗さが小さく、平滑であることから、チューブを潰して内部空間を閉鎖する場合に、チューブ内壁が密着する際の摩擦が低減され、最内面の微細な離脱を防止することができる。これにより、吐出する流体への異物の混入を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のチューブが装着される代表的なピンチバルブ装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したピンチバルブ装置のバルブ本体の内部構造を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態のチューブの断面図である。
【
図4】この実施形態のチューブの製造工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本発明のチューブ10は、
図1及び
図2に示すように、ピンチバルブ装置1に適用されるもので、ピンチバルブ装置1については、後述する実施例において説明する。
【0019】
先ず、
図3に基づいて、本発明の一実施形態のチューブ10について説明する。この実施形態のチューブ10は、長手方向に一定形状の長尺物であり、内側を長手方向に貫通する断面が円形の流路12と、流路12の周囲を囲む円筒形の樹脂部13を備えている。
図3は、チューブ10の長手方向に対して略直角な断面構造を示すものである。
【0020】
樹脂部13は、流路12の径方向に積層する複数のポリテトラフルオロエチレン層16と、ポリテトラフルオロエチレン層16の層間を接着するエラストマー層18が、交互に積層された積層体として構成される。ポリテトラフルオロエチレン層16は、流路12の周囲を複数回巻き回されて筒体に形成されている。ポリテトラフルオロエチレン層16は空隙を有し、空隙にはエラストマー層18の一部が含浸されている。
【0021】
ここで、ポリテトラフルオロエチレン層16について説明する。ポリテトラフルオロエチレン層16は、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン製のポリテトラフルオロエチレンフィルム17からなり、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17は反応性潤滑剤を用いて調整されている。反応性潤滑剤は、未硬化シリコーンと、所望のケロシン、ナフサ、又はミネラルスピリットのような溶媒からなる。ポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーが、潤滑され、押し出され、そして延伸膨張されて製造されている。延伸膨張プロセスの際、シリコーンはその場で硬化し、ポリテトラフルオロエチレンとシリコーンエラストマーの相互に絡み合ったポリマーの網状構造(IPN)を形成する。この様な延伸膨張されたポリテトラフルオロエチレンフィルム17は、残留気孔、高強度、及び適度なレジリエンスを有する。ここでは、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17は、例えば厚みは30μm、孔径は0.1μmである。
【0022】
次に、エラストマー層18について説明する。エラストマー層18は、少なくとも1種のエラストマーから成り、エラストマーは例えば、塗工時には液状のシリコーンであり、硬度はデュロメータAで60、粘度が25Pa・S、引張り強さは7.3MPa、伸びが180%である。シリコーンの他に、フッ素系の樹脂でも良く、フッ素系の樹脂は耐薬品性に優れ、攻撃的化学物質(酸、アルカリ、トルエンやMEK等の溶剤)の存在下でも十分な耐屈曲性を有している。粘度が高く、塗工時にポリテトラフルオロエチレン層16の空隙に含浸しない場合は、溶剤で希釈して使用する。
【0023】
流路12の内周面は、平滑に形成されている。流路12の内周面の平滑度は、算術平均粗さRaが0.01~0.80、10点平均粗さRzが0.01~3.00の少なくとも一方を満たしている。
【0024】
チューブ10は、樹脂部13の肉厚tと肉厚比率、ポリテトラフルオロエチレン層16とエラストマー層18の積層数Iが、以下の表1に示す条件を満たしている。この条件を満たすことにより、耐久性能が良好となる。樹脂部13の肉厚tは、チューブ10の長手方向に対して略直角な面における断面の、
図3に示す中心0から、少なくとも互いに交差する4方向A,B,C,D、つまり流路12の径方向で、例えば少なくとも互いに直交する4方向A,B,C,Dの、樹脂部13の肉厚ta,tb,tc、tdの平均値である。肉厚比率は、4方向の内の互いに対向する肉厚同士の比の平均値である。この実施形態のチューブ10は、肉厚tの値に対応して、4方向の内の互いに対向する肉厚同士の比の最適な肉厚比率と、積層数Iが、高い耐久性能を得るための最適な条件を満たすように設定されて製造されている。肉厚tと、肉厚比率、積層数Iの最適な条件を、以下の表1に示す。
【表1】
【0025】
ここで、肉厚tと肉厚比率、積層数Iのうち、肉厚比率の表1の各値について、許容される誤差を考慮して、小数点以下2桁の数値を四捨五入する。これにより、高い耐久性を有する好適な肉厚と肉厚比率、積層数Iは以下の条件になる。肉厚tの平均値が0.5mm以上2.8mm未満の場合、肉厚比率は1.0~1.2であり、肉厚tの平均値が2.8mm以上10.3mm未満の場合、肉厚比率は1.0~1.1である。そして、積層数については、表1の通りである。
【0026】
次に、この実施形態のチューブ10の製造方法について
図4に基づいて説明する。この製造方法は、肉厚tと、肉厚比率、積層数Iの条件が、上記表1に示すように、高い耐久性能となる最適な範囲となるチューブ10を製造するものである。
【0027】
まず、ポリテトラフルオロエチレン層16となるポリテトラフルオロエチレンフィルム17の原反20から、複数本のフィルム支持ローラ22にガイドされてポリテトラフルオロエチレンフィルム17を引き出し、エラストマー層18を形成する液状エラストマー19を塗布する塗布工程24に送る。塗布工程24では、液状エラストマー19を含浸させて薄く塗布したポリテトラフルオロエチレンフィルム17を、巻取りシャフト26に巻き取る。
【0028】
巻取りシャフト26は、流路12の形状に対応する円形の断面形状を有している。巻取りシャフト26は、剥離しやすいようにフッ素樹脂でコーティングされている。また、シャフト26の表面状態がチューブ内面に転写されるため、シャフト26の表面を出来るだけ平滑に仕上げるか、もしくはフッ素樹脂製熱収縮チューブで被覆することにより平滑な内面のチューブを得ることが出来る。チューブ10の流路12の内周面の表面粗さとして好ましい範囲は、算術平均粗さRaが0.01~0.80、及び十点平均粗さRzが0.01~0.3の条件の少なくとも一方を満たしているものである。
【0029】
巻取りシャフト26で巻き取ったものを、加熱処理し、液状エラストマー19の架橋反応を進行させポリテトラフルオロエチレンフィルム17の層間を接着し、ポリテトラフルオロエチレン層16と、エラストマー層18の層が交互に積層された積層体として構成される。加熱処理は、例えばオーブンに入れて加熱する。その後、巻取りシャフト26を引き抜き、流路12が形成され、チューブ10が完成する。
【0030】
液状エラストマー19を塗布する塗布工程24は、巻取りシャフト26の直前のフィルム支持ローラ22a付近で行われる。ここで先ず、塗布工程24の装置について説明する。
【0031】
フィルム支持ローラ22aの上流には、上流に位置する次のフィルム支持ローラ22bとの間に、液状エラストマー19を掻き取って均一な厚みにするための第一刃28が設けられている。第一刃28は、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17の面の上方からほぼ垂直に、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17の上面に押し付けられている。ポリテトラフルオロエチレンフィルム17の上面に押し付けられた第一刃28の下端部28aは、フィルム支持ローラ22aよりも低い位置にあり、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17をフィルム支持ローラ22aよりも下方に押し下げている。フィルム支持ローラ22aの上流に位置するフィルム支持ローラ22bは、フィルム支持ローラ22aよりも下方で、第一刃28の下端部28aとほぼ同じ高さにある。フィルム支持ローラ22bと第一刃28の間では、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17がほぼ水平に流れる。
【0032】
第一刃28とフィルム支持ローラ22bの間には、図示しない液状エラストマー供給装置が設けられ、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17の上面に、液状エラストマー19を載せる。
【0033】
フィルム支持ローラ22aの下流には、巻取りシャフト26との間に、液状エラストマー19をさらに掻き取ってより均一な厚みにするための第二刃30が設けられ、第二刃30は、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17の面の上方から、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17の上面に押し付けられている。第二刃30は、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17に接する下端部30aが下流側に向くように傾斜している。第二刃30の下端部30aは、フィルム支持ローラ22aの上端部よりも少し低い位置にあり、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17をフィルム支持ローラ22aの上端部よりも少し下方に押し下げている。第二刃30の下流に位置する巻取りシャフト26は、下端部30aよりも少し下方に位置し、第二刃30と巻取りシャフト26の間ではポリテトラフルオロエチレンフィルム17は下流に向かって斜め下方に傾斜して流れている。
【0034】
次に、塗布工程24について説明する。フィルム支持ローラ22bに接して流れるポリテトラフルオロエチレンフィルム17の上面に、図示しない液状エラストマー供給装置から液状エラストマー19を供給して載せ、第一刃28に接触し余分を掻き取って均一な厚みにする。そしてフィルム支持ローラ22aを通過し、さらに第二刃30に接触し再度余分を掻き取って均一な厚みにする。第一刃28と第二刃30により、均一な厚みで液状エラストマー19を塗布すると同時に、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17の微孔に液状エラストマー19を確実に含浸させることができる。
【0035】
この実施形態のチューブ10によれば、樹脂部13の肉厚tと肉厚比率、積層数Iの条件について、肉厚tが2.8mmを境に、肉厚がそれより厚い場合は、相対的に肉厚比率の値を小さい範囲に抑えることにより、肉厚のバラツキの絶対値が抑えられて耐久性が向上する。さらに、積層数Iを上記好適な範囲に設定することにより、より高い耐久性能を得ることができる。即ち、上記条件により、チューブ10の肉厚を所定の範囲で比較的均一に設定し、チューブ10の変形時の、部位によるバラツキがなく、負荷が特定箇所に集中せず耐久性を高くすることができる。
【0036】
そして、この実施形態のチューブ10をピンチバルブ装置1に用いることで、装置内やチューブ10の内圧が高まった場合のチューブ10の破断や、チューブ10内の負圧による障害等を抑制し、かつ繰り返しのピンチ動作への耐久性を向上させることができる。その結果、チューブ10、ピンチバルブ装置1及びこれらを備えた流体供給システムのメンテナンスにかかる負担を軽減することができる。
【0037】
また、この実施形態のチューブ10によれば、内面の表面粗さが小さく、平滑であることから、チューブ10を潰して内部空間を閉鎖する場合に、チューブ10の内壁が密着する際の摩擦が低減され、最内面の微細な離脱を防止することができる。これにより吐出する液体等の流体への異物の混入を抑えることができる。チューブ10は、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17に液状エラストマー19を塗布することで容易に製造することができ、液状エラストマー19の塗布工程24では、第一刃28と第二刃30に、2回接触して余分な液状エラストマー19を掻き取って均一な厚みにすることができ、ポリテトラフルオロエチレンフィルム17の空隙に確実に含浸させることができ、高い耐久性能を得る最適な条件を満たすチューブ10を製造することができる。
【0038】
なお、本発明のチューブは、上記実施形態に限定されるものではなく、ポリテトラフルオロエチレン層となるポリテトラフルオロエチレンフィルムの製造方法は上記以外でも良い。エラストマー層の素材は、上記以外でも良い。製造工程のフィルム支持ローラ等の数や位置、塗布工程の位置等、適宜変更可能である。チューブの長手方向の長さは自由であり、チューブの用途も色々なものに使用することができる。
【実施例0039】
次に、本発明の実施例について
図1、
図2に基づいて説明する。
図1は、本発明のチューブ10を適用したピンチバルブ装置1の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1に示したピンチバルブ装置1のバルブ本体2の内部構造を示す斜視図である。ピンチバルブ装置1は円盤状の外観を有するバルブ本体2と、バルブ本体2の内部に設けられた機構を駆動させる駆動装置4とを備えている。
【0040】
図1に示したバルブ本体2は、
図2に示すように、第1のバルブハウジング40と、第1のバルブハウジング40に設けられた配管取付部42と、第2のバルブハウジング44と、第2のバルブハウジング44に設けられた配管取付部46を備えている。
【0041】
チューブ10は、第1のバルブハウジング40と第2のバルブハウジング44とに跨り貫通する態様で内部に取り付けられ、後述するフランジ部11が配管取付部42及び配管取付部46にそれぞれ接触するように取り付けられる。このため、フランジ部11は、ピンチバルブ用のチューブ10をピンチバルブ装置1に取り付ける際の位置決め部としても機能する。チューブ10の外周には、外周部材60が設けられチューブ10を覆っている。
【0042】
図2に示すように、バルブ本体2を構成する第1のバルブハウジング40と第2のバルブハウジング44との内部には、ローター50が回動自在に挿入される。ローター50の外周部の一部にはギヤ部52が形成され、ローター50の内部には第1のカム山54及び第2のカム山55が対向して1対設けられる。ギヤ部52には、駆動ギアが噛み合い図示しない駆動装置に連結されている。
【0043】
ローター50の内部には、本発明のピンチバルブ用のチューブ10が挿通されて配置される。チューブ10の両端部のフランジ部11は、第1のバルブハウジング40と第2のバルブハウジング44の配管取付部42,46に嵌合し堅固に把持される。
【0044】
また、ローター50の内側で、チューブ10の中央部の外側には、当該チューブ10を挟持して内部を流れる流体の流れを止める1対のピンチレバー56が一対の支柱58を中心に各々回動自在に設けられている。
【0045】
これにより、ローター50が回動すると、ローター50の内部に形成された第1のカム山54によりピンチレバー56は内側に押圧されて回動する。当該回動動作により1対のピンチレバー56の間隔が小さくなり、ピンチバルブ装置1のチューブ10の中央部を押し潰すようにピンチして、チューブ10の内部空間を閉じることができる。
【0046】
この実施例におけるチューブ10は、同一の肉厚で同一の内径を長手方向に有する筒状の部材である。チューブ10の長手方向両端には、フランジ部11が一体的に形成されているが、フランジ部11は、チューブ10の端部の一方のみに形成されてもよい。また、フランジ部11は、チューブ10をピンチバルブ装置1に装着したときに他の配管との接続部として機能するとともに、装着時の位置決め部としても機能させることもできる。
【0047】
外周部材60は、チューブ10の外径と同一寸法の内径で形成されて、チューブ10の外周面と密着するように配置されるか、又はチューブ10の外径よりやや大きい寸法の内径で形成されてチューブ10の外周面を回動自在となるように配置される。
【0048】
本発明のチューブ10は、ピンチバルブ装置1に用いるものであるから、ピンチレバー56が閉じたときには、即座に完全に流体の流れを遮断し、ピンチレバー56が開いたときには、即座に流体の流路を確保せねばならない。そのため本発明の実施例のチューブ10は、ピンチレバー56の開閉サイクル1回/秒の条件で繰り返し開閉試験をしたときに、チューブ10に亀裂発生および/または流量低下が生じるまでの開閉回数が、100万回以上であることが好ましい。本発明の実施例のチューブ10は、この条件を満たしたものであり、表2に評価結果を示す。
【0049】