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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032146
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】形状付け装置および形状付けシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240305BHJP
   B21F 3/10 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61M25/09
B21F3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135641
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】美本 和彦
【テーマコード(参考)】
4C267
4E070
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB07
4C267CC08
4C267EE03
4E070AA00
4E070AC01
4E070AC03
4E070BC11
(57)【要約】
【課題】ガイドワイヤに狙いの先端形状を付与できる形状付け装置を提供する。
【解決手段】形状付け装置5は、ガイドワイヤGの先端部を形状付けする形状付け装置であって、位置が固定され、中心軸に直交する断面が円形状である基準部材40と、中心軸に直交する断面が円形状である従動部材50と、を有し、従動部材が基準部材との距離を一定に保ちつつ基準部材の外周に沿って回転することによって、ガイドワイヤの先端部を形状付けする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤの先端部を形状付けする形状付け装置であって、
位置が固定され、中心軸に直交する断面が円形状である基準部材と、
中心軸に直交する断面が円形状である従動部材と、を有し、
前記従動部材が前記基準部材との距離を一定に保ちつつ前記基準部材の外周に沿って回転することによって、前記ガイドワイヤの前記先端部を形状付けする、形状付け装置。
【請求項2】
前記基準部材および前記従動部材は、それぞれの前記中心軸が鉛直方向に沿って延在し、
前記中心軸に直交する断面の外周の曲率半径の異なる箇所を、前記中心軸に沿って少なくとも2箇所備える、請求項1に記載の形状付け装置。
【請求項3】
前記基準部材および前記従動部材は、円錐形状であって、互いに上下反転するように配置される、請求項2に記載の形状付け装置。
【請求項4】
前記ガイドワイヤが挿入される内腔を有し、前記ガイドワイヤを前記基準部材の近傍に位置するように保持するガイドパイプを備える、請求項1または請求項2に記載の形状付け装置。
【請求項5】
前記ガイドパイプが、近位側ガイドパイプと、前記近位側ガイドパイプと離間し、鉛直方向から視て前記基準部材および前記従動部材を挟んで対向するように配置される遠位側ガイドパイプと、を有し、
前記遠位側ガイドパイプの遠位側から挿入可能な前記ガイドワイヤの長さを調整可能なストッパーをさらに有する、請求項4に記載の形状付け装置。
【請求項6】
ガイドワイヤの先端部を形状付けする形状付けシステムであって、
位置が固定され、中心軸に直交する断面が円形状である基準部材と、
中心軸に直交する断面が円形状である従動部材と、を有し、
前記従動部材が前記基準部材との距離を一定に保ちつつ前記基準部材の外周に沿って回転することによって、前記ガイドワイヤの前記先端部を形状付けする形状付け装置と、
病変部までの血管経路情報を取得する情報取得部を有し、前記情報取得部が取得した前記血管経路情報を解析することによって得られた情報に基づいて前記形状付け装置を制御する制御部と、を備える形状付けシステム。
【請求項7】
前記ガイドワイヤの前記先端部を撮像可能な撮像部をさらに有し、
前記従動部材が前記基準部材の前記外周に沿って回転して形状付けを行った後に、前記撮像部によって前記ガイドワイヤの前記先端部を撮像して、
前記ガイドワイヤの前記先端部が狙いの形状になっていない場合、前記制御部が前記形状付け装置を制御して、追加の形状付けを行わせる、請求項6に記載の形状付けシステム。
【請求項8】
前記形状付け装置は、
前記ガイドワイヤが挿入される内腔を有し、前記ガイドワイヤを前記基準部材の近傍に位置するように保持するガイドパイプと、
前記従動部材を前記基準部材の前記外周に沿って回転させる第1モーターと、
前記従動部材を前記従動部材の回転中心に対して接近または離間する第2モーターと、
前記ガイドパイプを前記鉛直方向から視て前記左右方向に移動させる第3モーターと、
前記ガイドパイプを上下方向に移動させる第4モーターと、をさらに有し、
前記制御部は、前記第1モーター、前記第2モーター、前記第3モーター、前記第4モーターの動きを制御して、前記ガイドワイヤの前記先端に形状付けを行う、請求項6または7に記載の形状付けシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤの先端部を形状付けする形状付け装置および形状付けシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管内の治療等を行うためにカテーテルデバイスが用いられており、当該カテーテルデバイスを血管の目的部位へ導くために、ガイドワイヤが使用される。
【0003】
術者は、血管内の目的部位にガイドワイヤを進めるにあたり、ガイドワイヤの先端部を変形させ、所望の形状を付与する形状付けを行うことがある。ガイドワイヤの先端部の形状付けは、術者が自らの手でガイドワイヤを折り曲げるなどして行っているが、細径のガイドワイヤを所定の形状に折り曲げる作業は容易ではなく、手間が掛かる。
【0004】
これに関連して、例えば下記の特許文献1には、ガイドワイヤの先端部の形状付けを補助するためのシェイピングデバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-039610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した先行技術文献に係るシェイピングデバイスの場合、術者の加減によって、ガイドワイヤの先端部に付与された形状にばらつきが生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ガイドワイヤに狙いの先端形状を付与できる形状付け装置および形状付けシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)
ガイドワイヤの先端部を形状付けする形状付け装置であって、
位置が固定され、中心軸に直交する断面が円形状である基準部材と、
中心軸に直交する断面が円形状である従動部材と、を有し、
前記従動部材が前記基準部材との距離を一定に保ちつつ前記基準部材の外周に沿って回転することによって、前記ガイドワイヤの前記先端部を形状付けする、形状付け装置。
【0010】
(2)
前記基準部材および前記従動部材は、それぞれの前記中心軸が鉛直方向に沿って延在し、
前記中心軸に直交する断面の外周の曲率半径の異なる箇所を、前記中心軸に沿って少なくとも2か所備える、(1)に記載の形状付け装置。
【0011】
(3)
前記基準部材および前記従動部材は、円錐形状であって、互いに上下反転するように配置される、(2)に記載の形状付け装置。
【0012】
(4)
前記ガイドワイヤが挿入される内腔を有し、前記ガイドワイヤを前記基準部材の近傍に位置するように保持するガイドパイプを備える、(1)~(3)のいずれか1つに記載の形状付け装置。
【0013】
(5)
前記ガイドパイプが、近位側ガイドパイプと、前記近位側ガイドパイプと離間し、鉛直方向から視て前記基準部材および前記従動部材を挟んで対向するように配置される遠位側ガイドパイプと、を有し、
前記遠位側ガイドパイプの遠位側から挿入可能な前記ガイドワイヤの長さを調整可能なストッパーをさらに有する、(4)に記載の形状付け装置。
【0014】
(6)
ガイドワイヤの先端部を形状付けする形状付けシステムであって、
位置が固定され、中心軸に直交する断面が円形状である基準部材と、
中心軸に直交する断面が円形状である従動部材と、を有し、
前記従動部材が前記基準部材との距離を一定に保ちつつ前記基準部材の外周に沿って回転することによって、前記ガイドワイヤの前記先端部を形状付けする形状付け装置と、
病変部までの血管経路情報を取得する情報取得部を有し、前記情報取得部が取得した前記血管経路情報を解析することによって得られた情報に基づいて前記形状付け装置を制御する制御部と、を備える形状付けシステム。
【0015】
(7)
前記ガイドワイヤの前記先端部を撮像可能な撮像部をさらに有し、
前記従動部材が前記基準部材の前記外周に沿って回転して形状付けを行った後に、前記撮像部によって前記ガイドワイヤの前記先端部を撮像して、
前記ガイドワイヤの前記先端部が狙いの形状になっていない場合、前記制御部が前記形状付け装置を制御して、追加の形状付けを行わせる、(6)に記載の形状付けシステム。
【0016】
(8)
前記形状付け装置は、
前記ガイドワイヤが挿入される内腔を有し、前記ガイドワイヤを前記基準部材の近傍に位置するように保持するガイドパイプと、
前記従動部材を前記基準部材の前記外周に沿って回転させる第1モーターと、
前記従動部材を前記従動部材の回転中心に対して接近または離間する移動させる第2モーターと、
前記ガイドパイプを前記鉛直方向から視て前記左右方向に移動させる第3モーターと、
前記ガイドパイプを上下方向に移動させる第4モーターと、をさらに有し、
前記制御部は、前記第1モーター、前記第2モーター、前記第3モーター、前記第4モーターの動きを制御して、前記ガイドワイヤの前記先端に形状付けを行う、(6)または(7)に記載の形状付けシステム。
【発明の効果】
【0017】
上述した形状付け装置および形状付けシステムによれば、従動部材が基準部材の周囲を回転することによって、ガイドワイヤの先端を形状付けするため、狙いの形状を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る形状付けシステムを示す正面図である。
図2】本実施形態に係る形状付けシステムのA-A線に沿う矢視図である。
図3】ガイドワイヤのR寸法およびH寸法を説明するための概略図である。
図4A】本実施形態に係る形状付けシステムの制御部の構成を示すブロック図である。
図4B】本実施形態に係る形状付けシステムの制御部のCPUの構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態に係る形状付けシステムの形状付け方法を示す図である。
図6】本実施形態に係る形状付けシステムの形状付け方法を示す図であって、図5に続く図である。
図7】本実施形態に係る形状付けシステムの形状付け方法を示す図であって、図6に続く図である。
図8】本実施形態に係る形状付けシステムの形状付け方法を示す図であって、図7に続く図である。
図9】本実施形態に係る形状付けシステムの形状付け方法を示す図であって、図8に続く図である。
図10】本実施形態に係る形状付けシステムの形状付け方法を示す図であって、図9に続く図である。
図11】本実施形態に係る形状付けシステムの形状付け方法を示す図であって、図10に続く図である。
図12】本実施形態に係る形状付けシステムの形状付け方法を示す図であって、図11に続く図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は、特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0020】
以下、図1図4Bを参照して、本実施形態に係る形状付けシステム1を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る形状付けシステム1を示す正面図である。図2は、本実施形態に係る形状付けシステム1のA-A線に沿う矢視図である。図3は、ガイドワイヤGのR寸法およびH寸法を説明するための概略図である。図4Aは、本実施形態に係る形状付けシステム1の制御部90の構成を示すブロック図である。図4Bは、本実施形態に係る形状付けシステム1の制御部90のCPU91の構成を示すブロック図である。
【0021】
本実施形態に係る形状付けシステム1は、ガイドワイヤGの先端部を形状付けするためのシステムである。形状付けシステム1は、図1に示すように、形状付け装置5と、制御部90と、撮像部100と、を有する。
【0022】
<形状付け装置5>
まず、形状付け装置5の構成について説明する。形状付け装置5は、図1図2に示すように、筐体10と、筐体10内で上下動可能に設けられる第1ベース部20および第2ベース部30と、筐体10に対して固定して設けられる基準部材40と、基準部材40の外周を移動する従動部材50と、ガイドワイヤGが挿入可能なガイドパイプ60と、ガイドワイヤGのガイドパイプ60への挿入する長さを調整可能なストッパー70と、を有する。
【0023】
形状付け装置5は、図3に示すR(半径)寸法およびH(円弧長)寸法の情報より算出されたモーターに教示する動作パラメータを、図1に示すように、制御部90から、第1モーターM1~第4モーターM4に送信されることによって、ガイドワイヤGの先端部を形状付けする。
【0024】
以下、形状付け装置5の各構成について説明する。
【0025】
第1ベース部20は、図1に示すように、第4モーターM4に連結される軸部材81に上下方向に移動可能に固定されている。第1ベース部20の上方には、第2ベース部30およびガイドパイプ60が配置されている。このため、第1ベース部20が第4モーターM4によって上下方向に移動すると第2ベース部30およびガイドパイプ60も第1ベース部20に追従して上下方向に移動する。第1ベース部20は、基準部材40および従動部材50が貫通する開口部を有する。
【0026】
第2ベース部30は、図1図2に示すように、第1ベース部20の上方に配置される。第2ベース部30は、図2に示すように、基準部材40および従動部材50が貫通する開口部30Hを有する。
【0027】
第2ベース部30は、図1図2に示すように、第3モーターM3に連結される軸部材82に鉛直方向から視て左右方向に移動可能に固定されている。第2ベース部30が、第3モーターM3によって左右方向に移動すると、ガイドパイプ60も第2ベース部30に追従して左右方向に移動する。
【0028】
基準部材40は、筐体10の上面から下方に延在する軸部材83に固定される。基準部材40は、位置が固定されており、いずれの方向にも移動および回転することはない。基準部材40は、鉛直方向に沿って延在する中心軸を有し、中心軸に直交する断面が円形状である。基準部材40は、図1に示すように、鉛直方向の上から下に向かうにつれて中心軸に直交する断面の直径が小さくなる円錐形状である。すなわち、基準部材40は、中心軸に直交する断面の外周の曲率半径が異なる箇所を、中心軸に沿って少なくとも2箇所備える。基準部材40が円錐形状である場合には、基準部材40の外周の曲率半径は、円錐の頂点から底面にかけて連続的に変化する。
【0029】
基準部材40には、図1に示すように、外周の周方向に沿って、溝41が設けられる。溝41は、鉛直方向に沿って所定のピッチで複数設けられる。溝41の深さは、ガイドワイヤGの直径の1/2~2/3程度であることが好ましい。形状付け装置5は、ガイドワイヤGの形状付けの際、ガイドワイヤGを溝41に配置することにより、基準部材40の鉛直方向に沿う位置ずれを抑制できる。これにより、形状付け装置5は、形状付け後のガイドワイヤGの先端形状のばらつきを抑制できる。
【0030】
基準部材40は、図1に示すように、第1ベース部20の開口部および第2ベース部30の開口部30Hを貫通するように配置される。
【0031】
基準部材40を形成する材料は、特に限定されないが、例えばステンレス等、金属を用いることができる。
【0032】
従動部材50は、第1ステージ84から鉛直方向の上方に延在する軸部材85に固定されている。第1ステージ84は、第2モーターM2によって、第2ステージ86を介して、従動部材50の回転中心に対して接近または離間する方向に移動可能に構成されている。このため、従動部材50は、第2モーターM2によって従動部材50の回転中心に対して接近または離間する方向に移動可能に構成されている。
【0033】
第2ステージ86は、第1モーターM1によって回転可能に構成されている。第1モーターM1による第2ステージ86の回転中心は、基準部材40の真下(中心軸の延長線上)となる。このため、従動部材50は、図1図2に示すように、基準部材40との距離を一定に保ちながら基準部材40の外周に沿って回転する。
【0034】
従動部材50は、鉛直方向に沿って延在する中心軸を有し、中心軸に直交する断面が円形状である。従動部材50は、図1に示すように、鉛直方向の下から上に向かうにつれて中心軸に直交する断面の直径が小さくなる円錐形状である。従動部材50の中心軸は、基準部材40の中心軸と平行に配置される。すなわち、基準部材40および従動部材50は、互いに上下反転するように配置される。従動部材50は、中心軸に直交する断面の外周の曲率半径が異なる箇所を、中心軸に沿って少なくとも2箇所備える。従動部材50が円錐形状である場合には、従動部材50の外周の曲率半径は、円錐の頂点から底面にかけて連続的に変化する。
【0035】
なお、従動部材50の外周には、ガイドワイヤGを基準部材40に対して圧接する力を調整できるように、弾性ゴムが被覆されていることが好ましい。
【0036】
従動部材50を形成する材料は、特に限定されないが、基準部材40と同一の材料を用いることができる。
【0037】
ガイドパイプ60は、ガイドワイヤGが挿入される内腔を有する中空体である。ガイドワイヤGの形状付け開始前、ガイドパイプ60は、図1図2に示すように、基準部材40と従動部材50との間に配置され、ガイドワイヤGの先端部を基準部材40と従動部材50との間に誘導する。そして、ガイドワイヤGの先端部を形状付けする際、ガイドパイプ60は、ガイドワイヤGの先端部が第2ベース部30の開口部30H内の基準部材40の近傍に位置するように保持する。
【0038】
上述したように、ガイドパイプ60は、第4モーターM4によって上下方向に移動可能に構成されるとともに、第3モーターM3によって鉛直方向から視て左右方向に移動可能に構成される。
【0039】
ガイドパイプ60は、図2に示すように、近位側(図2の下側)に設けられる近位側ガイドパイプ61と、近位側ガイドパイプ61と離間するように、近位側ガイドパイプ61の遠位側(図2の上側)に設けられる遠位側ガイドパイプ62と、を有する。近位側ガイドパイプ61と遠位側ガイドパイプ62とは、鉛直方向から視て、基準部材40および従動部材50を挟んで対向するように配置される。また、近位側ガイドパイプ61と遠位側ガイドパイプ62とは、互いの中心軸が一致するように配置される。
【0040】
遠位側ガイドパイプ62は、図8に示すように、ガイドワイヤGの形状付け開始時または開始後に、遠位側に退避するように構成されている。
【0041】
ガイドパイプ60を形成する材料は、特に限定されないが、ステンレス等、金属を用いることができる。
【0042】
ストッパー70は、遠位側ガイドパイプ62の内腔に遠位側ガイドパイプ62の遠位側から挿入される棒状体である。ストッパー70は、遠位側ガイドパイプ62に挿入可能なガイドワイヤGの長さを調整する。ストッパー70の外径は、遠位側ガイドパイプ62の内腔をスムーズに移動可能な程度に設定される。ストッパー70は、遠位側ガイドパイプ62と同様に、図8に示すように、ガイドワイヤGの形状付け開始後に、遠位側に退避するように構成されている。
【0043】
ストッパー70を形成する材料は、特に限定されないが、例えばステンレス等、金属を用いることができる。
【0044】
<制御部90>
次に、図4A図4Bを参照して、制御部90の構成について説明する。制御部90は、形状付け装置5および撮像部100にネットワークを介して接続している。
【0045】
ネットワークは、例えば、Wifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の通信機能による無線通信方式、その他の非接触式の無線通信、有線通信を採用することができる。
【0046】
制御部90は、特に限定されないが、例えば、メインフレームやコンピュータ・クラスタ等によって構成できる。制御部90は、図4Aに示すように、CPU(Central Processing Unit)91、記憶部92、入出力I/F93、および通信部94を備えている。CPU91、記憶部92、入出力I/F93、および通信部94は、バス95に接続されており、バス95を介して相互にデータ等を送受信する。
【0047】
CPU91は、記憶部92に記憶されている各種プログラムに従って、各部の制御や各種の演算処理などを実行する。
【0048】
記憶部92は、各種プログラムや各種データを記憶するROM(Read Only Memory)、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM(Randam Access Memory)、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや各種データを記憶するハードディスク等によって構成している。
【0049】
記憶部92は、過去症例データ、シミュレーションデータ等の各種データを記憶する。また、記憶部92は、本実施形態に係る形状付けシステム1を提供するための形状付けプログラムを記憶する。
【0050】
入出力I/F93は、キーボード、マウス、スキャナ、マイク等の入力装置およびディスプレイ、スピーカ、プリンタ等の出力装置を接続するためのインターフェースである。
【0051】
通信部94は、形状付け装置5と通信するためのインターフェースである。
【0052】
CPU91は、図4Bに示すように、記憶部92に記憶されている形状付けプログラムを実行することによって、情報取得部911、情報解析部912、学習部913、教示部914、および判定部915として機能する。
【0053】
情報取得部911は、X線CT画像のような3次元血管情報に基づいて、病変部までの血管経路情報を取得する。
【0054】
情報解析部912は、情報取得部911より得られた3次元血管経路情報と使用するガイドワイヤの物理特性情報から、シミュレーションにより、ガイドワイヤGが血管内を目的部位に向かって進む経路を解析する。ガイドワイヤGの先端形状は、血管の屈曲部、分岐部、合流部等において、ガイドワイヤGを血管内で進ませる効率に影響を与える。そのため、情報解析部912は、経路解析過程において、血管の屈曲部、分岐部、合流部等でガイドワイヤGの各種先端形状をシミュレーション上で試行することで、ガイドワイヤGの狙いの先端形状を決定する。また、情報解析部912は、経路解析過程において、血管の屈曲部、分岐部、合流部等の血管情報とガイドワイヤG先端部の血管内位置データを機械学習済モデルへインプットし、モデルによりガイドワイヤGの狙いの先端形状を決定してもよい。
【0055】
学習部913は、過去症例データを用いて機械学習を行う。なお、本明細書において、「機械学習」とは、入力データをアルゴリズムを使用して解析し、その解析結果から有用な規則や判断基準等を抽出し、アルゴリズムを発展させることを言う。
【0056】
教示部914は、情報解析部912で決定した狙いの先端形状であるR形状およびH寸法を形状付け装置5で形成するために、形状付け装置5の各種モーターM1~M4等に教示する動作制御パラメータを確定させる。
【0057】
判定部915は、撮像部100によって撮像された、形状付け装置5によって形状付けされた後のガイドワイヤGの先端形状と教示部914で教示される狙いのガイドワイヤGの先端形状とを比較して、形状付け後のガイドワイヤGの先端形状が狙いの形状になっているか否かを判定する。
【0058】
<撮像部100>
撮像部100は、カメラである。撮像部100は、図1に示すように、筐体10の下面に配置されて、筐体10の下面から鉛直方向の上方を撮影可能に配置されている。撮像部100は、形状付け装置5によって形状付けされたガイドワイヤGの先端部を撮像することができる。
【0059】
撮像部100は、撮像した撮像データを制御部90に送信可能である。
【0060】
<形状付け方法>
次に、図5図12を参照して、本実施形態に係る形状付けシステム1の形状付け方法について説明する。図5図12は、本実施形態に係る形状付けシステム1の形状付け方法を説明するための図であって、図1のA-A線に沿う矢視図である。
【0061】
まず、制御部90の教示部914によって、ガイドワイヤGの先端部の狙いの形状であるR寸法およびH寸法を形成する動作制御パラメータが、形状付け装置5の各モーターM1~M4に教示される。
【0062】
初期状態において、従動部材50およびガイドパイプ60は、図5に示すように、第2モーターM2および第3モーターM3によって、右側に退避させている。このため、基準部材40および従動部材50の間には、所定の隙間Sが形成されている。
【0063】
次に、制御部90は、第4モーターM4を制御して、基準部材40および従動部材50の外周の曲率半径がガイドワイヤGの先端部の狙いの形状であるR寸法の付与に対応する位置まで、ガイドパイプ60を鉛直方向の上方向または下方向に移動させる。さらに、制御部90は、第3モーターM3を制御して、図6に示すように、第2ベース部30およびガイドパイプ60を左方向に移動させるとともに、第2モーターM2を制御して、従動部材50を従動部材の回転中心に対して接近する方向に移動させる。この結果、基準部材40と従動部材50との間の隙間Sは、ガイドワイヤGの直径より少し大きくなるとともに、左右方向において、ガイドパイプ60の内腔の位置が、基準部材40と従動部材50との間の隙間Sの位置と略一致する。また、制御部90は、ガイドワイヤGの先端部の狙いの形状であるH寸法に合わせてストッパー70の位置(図6の上下方向の位置)を調整し、遠位側ガイドパイプ62の遠位側からストッパー70を遠位側ガイドパイプ62の内腔に挿入する。
【0064】
次に、術者は、図7に示すように、近位側ガイドパイプ61からガイドワイヤGを挿入し、基準部材40と従動部材50との間の隙間Sを通って、遠位側ガイドパイプ62内のストッパー70に接するまで、ガイドワイヤGを挿入する。挿入後、制御部90は第2モーターM2を制御して、基準部材40と従動部材50との間の隙間SをガイドワイヤGの直径と略一致するまで、従動部材50を移動させる。
【0065】
次に、制御部90は、図8に示すように、ストッパー70および遠位側ガイドパイプ62を遠位側に退避させ、第1モーターM1を制御して、従動部材50を、基準部材40との距離を一定に保ちつつ、基準部材40の外周に沿って反時計回りに回転させる。そして、制御部90は、図9に示すように、第1モーターM1を制御して、所定の角度(図9の場合は180度)まで従動部材50を回転させる。この結果、ガイドワイヤGは、略真円形状の一部となるように形状付けされる。このように、形状付け装置5は、従動部材50が基準部材40の外周に沿って回転することによってガイドワイヤGの先端部を形状付けするため、ガイドワイヤGに局所的な強い曲げを生じさせることがない。そのため、形状付け装置5は、形状付けに伴うガイドワイヤGの外表面の損傷や局所的な折れの発生を抑制できる。
【0066】
なお、制御部90は、従動部材50が基準部材40の外周に沿って回転する際、第3モーターM3を制御することにより、ガイドパイプ60を鉛直方向から視て左右方向に移動させてもよい。これにより、ガイドワイヤGは、楕円形状の一部となるように形状付けすることができる。このように、形状付け装置5は、従動部材50が基準部材40の外周に沿って回転する際に、各モーターM1~M4の動きを任意に制御することにより、ガイドワイヤGの先端形状のバリエーションを増加することができる。
【0067】
次に、制御部90は、第2モーターM2を制御して、図10に示すように、従動部材50を従動部材の回転中心に対して離間する方向に退避させる。そして、撮像部100によって、形状付けされたガイドワイヤGの先端部を撮像する。撮像部100が撮像した撮像情報は、制御部90に送信されて、制御部90の判定部915において、撮像部100によって撮像された、形状付け装置5によって形状付けされた後のガイドワイヤGの先端形状と情報解析部912で決定した狙いの形状を比較して、形状付け後のガイドワイヤGの先端形状が狙いの形状になっているか否かを判定する。ガイドワイヤGの先端形状が狙いの形状に対して許容範囲に入っている場合は、形状付けを終了する。
【0068】
一方、ガイドワイヤGの先端部が狙いの形状に対し許容範囲に入っていない場合は、制御部90は、第1モーターM1を制御して、図11に示すように、従動部材50を基準部材40の外周に沿って時計回りに回転させ、初期状態における位置に戻す。そして、制御部90は、第2モーターM2を制御して、図12に示すように、従動部材50を基準部材40に近づけた後、再度、第1モーターM1を制御して、従動部材50を基準部材40の外周に沿って反時計回りに回転させて、ガイドワイヤGの先端部の形状付けを行う。制御部90は、ガイドワイヤGの先端形状が許容範囲内となるまで、上記の工程を繰り返す。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る形状付け装置5は、ガイドワイヤGの先端部を形状付けする形状付け装置5である。形状付け装置5は、位置が固定され、中心軸に直交する断面が円形状である基準部材40と、中心軸に直交する断面が円形状である従動部材50と、を有する。形状付け装置5は、従動部材50が基準部材40との距離を一定に保ちつつ基準部材40の外周を回転することによって、ガイドワイヤGの先端を形状付けする。このように構成された形状付け装置5によれば、従動部材50が基準部材40の外周に沿って、一定の曲率で一定の力をかけガイドワイヤGを曲げるため、略狙い通りの形状を付けることができる。また、形状付け装置5は、ガイドワイヤGに局所的な強い曲げを生じさせることがないため、形状付けに伴うガイドワイヤGの外表面の損傷や局所的な折れの発生を抑制できる。
【0070】
また、基準部材40および従動部材50は、それぞれの中心軸が鉛直方向に沿って延在し、中心軸に直交する断面の外周の曲率半径が異なる箇所を、中心軸に沿って少なくとも2箇所備える。このように構成された形状付け装置5によれば、先端部のR形状が異なるガイドワイヤGを製造することができる。
【0071】
また、基準部材40および従動部材50は、円錐形状であって、互いに上下反転するように配置される。このように構成された形状付け装置5によれば、基準部材40および従動部材50の外周が連続的に変化する曲率半径を有するため、先端部が任意のR形状を備えるガイドワイヤGを製造することができる。
【0072】
また、形状付け装置5は、ガイドワイヤGが挿入される内腔を有し、ガイドワイヤGを基準部材40の近傍に位置するように保持するガイドパイプ60を備える。このように構成された形状付け装置5によれば、基準部材40および従動部材50に対するガイドワイヤGの位置を維持できるため、狙った形状に形状を付けることができる。
【0073】
また、形状付け装置5は、ガイドパイプ60が、近位側ガイドパイプ61と、近位側ガイドパイプ61と離間し、鉛直方向から視て基準部材40および従動部材50を挟んで対向するように配置される遠位側ガイドパイプ62と、を有し、遠位側ガイドパイプ62の遠位側から挿入可能なガイドワイヤGの長さを調整可能なストッパー70をさらに有する。このように構成された形状付け装置5によれば、ガイドワイヤGに形状付けを行う位置や長さを容易に調整できる。
【0074】
また、以上説明したように、本実施形態に係る形状付けシステム1は、ガイドワイヤGの先端部を形状付けする形状付けシステム1であって、位置が固定され、中心軸に直交する断面が円形状である基準部材40と、中心軸に直交する断面が円形状である従動部材50と、を有し、従動部材50が基準部材40との距離を一定に保ちつつ基準部材40の外周に沿って回転することによってガイドワイヤGの先端部を形状付けする形状付け装置5と、病変部までの血管経路情報を取得する情報取得部911を有し、情報取得部911が取得した血管経路情報を解析することによって得られた情報に基づいて形状付け装置を制御する制御部90と、を有する。このように構成された形状付けシステム1によれば、事前に血管経路情報からシミュレーションあるいは機械学習によって、狙いの先端形状を決定できる。また、形状付けシステム1は、事前に決定した狙いの先端形状を、従動部材50が基準部材40の外周に沿って周囲を回転することによって、ガイドワイヤGに付与できる。
【0075】
また、形状付けシステム1は、ガイドワイヤGの先端部を撮像可能な撮像部100をさらに有し、従動部材50が基準部材40の外周に沿って回転して形状付けを行った後に、撮像部100によってガイドワイヤGの先端部を撮像して、ガイドワイヤGの先端部が狙いの形状になっていない場合、制御部90が形状付け装置5を制御して、追加の形状付けを行わせる。このように構成された形状付けシステム1によれば、より確実にガイドワイヤGの先端部に狙いの形状付けを行うことができる。
【0076】
また、形状付け装置5は、ガイドワイヤGが挿入される内腔を有し、ガイドワイヤGを基準部材40の近傍に位置するように保持するガイドパイプ60と、従動部材50を基準部材の外周に沿って回転させる第1モーターM1と、従動部材50を従動部材の回転中心に対して接近または離間する方向に移動させる第2モーターM2と、ガイドパイプ60を鉛直方向から視て左右方向に移動させる第3モーターM3と、ガイドパイプ60を上下方向に移動させる第4モーターM4と、をさらに有し、制御部90は、第1モーターM1、第2モーターM2、第3モーターM3、第4モーターM4の動きを制御して、ガイドワイヤGの先端部に形状付けを行う。このように構成された形状付けシステム1によれば、各モーターM1~M4を用いることで、ガイドワイヤGの先端部を曲げるための力を正確に再現性よくかけられるため、ガイドワイヤGの先端部を好適に形状付けすることができる。
【0077】
以上、実施形態を通じて本発明に係る形状付けシステム1および形状付け装置5を説明したが、本発明は実施形態において説明した構成に限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0078】
例えば、上述した実施形態では、基準部材40および従動部材50は円錐形状を備えたが、円柱形状であってもよい。また、基準部材および従動部材は、外周に曲率半径の異なる箇所を2つ以上有するような構成であってもよい。
【0079】
また、上述した実施形態では、形状付け装置5は、ガイドパイプ60を有したが、ガイドパイプ60を有しない構成であってもよい。さらにストッパー70を有しない構成であってもよい。
【0080】
また、上述した実施形態では、ガイドパイプ60は、鉛直方向および左右方向に移動可能であったが、移動できない構成であってもよい。
【0081】
また、上述した実施形態では、従動部材50は、鉛直方向から視て左右方向に移動可能であったが、移動できない構成であってもよい。
【0082】
また、上述した実施形態では、制御部90の教示部914によって、手技に最適なガイドワイヤGの先端部のR寸法およびH寸法の情報が、形状付け装置5の各モーターM1~M4に対して教示されることによって、形状付けを行った。しかしながら、術者が、R寸法およびH寸法の数値を形状付け装置5に入力して、形状付けを行ってもよい。
【0083】
また、上述した実施形態では、基準部材40に溝41が設けられたが、従動部材50に溝が設けられてもよい。また、基準部材40および従動部材50は、溝が設けられなくてもよい。
【0084】
また、上述した実施形態では、形状付けシステム1は、ガイドワイヤGの先端部が狙いの形状に対し許容範囲に入っていない場合、教示部914によって教示されたR寸法およびH寸法となるように、ガイドワイヤGの先端形状が許容範囲内となるまで、従動部材50を基準部材40の外周に沿って繰り返し回転させて、形状付けした。しかしながら、形状付けシステム1は、ガイドワイヤGの先端部が狙いの形状に対し許容範囲に入っていない場合、撮影部100によって撮影された形状付け後のガイドワイヤGの先端形状の撮像データに基づいて、ガイドワイヤGの先端部に狙いの形状を付与するために必要なR寸法およびH寸法を再度計算して、その寸法となるように、制御部90によって形状付け装置5の動作を制御してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 形状付けシステム、
5 形状付け装置、
40 基準部材、
50 従動部材、
60 ガイドパイプ、
61 近位側ガイドパイプ、
62 遠位側ガイドパイプ、
70 ストッパー、
90 制御部、
100 撮像部、
911 情報取得部、
G ガイドワイヤ、
M1 第1モーター、
M2 第2モーター、
M3 第3モーター、
M4 第4モーター。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12