(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032147
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20240305BHJP
【FI】
B23K26/21 G
B23K26/21 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135643
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 伸紀
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA21
4E168FC07
(57)【要約】
【課題】シールドガスを排出する上記導出管を用いずに、スパッタの被溶接部材への付着を抑制する。
【解決手段】圧力センサ20のフランジ21Eと、ブラケット40の張り出し部42とが重なった部分にレーザ光Lを照射して両者をレーザ溶接する際に、第1スパッタ除け部材92及び第2スパッタ除け部材93により圧力センサ20及びブラケット40を覆う。これにより、レーザ溶接時に発生するスパッタが圧力センサ20及びブラケット40に付着することを、シールドガスを排出する上記導出管を用いずに抑制できる。その結果、ブラケット40の外観不良、圧力センサ20とヒータ30との接合不良などが発生難くなる。第1スパッタ除け部材92は、上側部材92A及び下側部材92Bを備える。これにより、スパッタの付着量の多い下側部材92Bを単独で交換することができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジを備える第1部材と、前記第1部材の前記フランジよりも上側の部位を囲む筒状部、及び、当該筒状部の下端部から前記第1部材側に張り出し、上方から見て前記フランジと重なる張り出し部を備える第2部材と、を溶接する溶接方法であって、
カップ状又は筒状の第1スパッタ除け部材で前記第1部材の前記部位を覆い、筒状の第2スパッタ除け部材で前記第2部材の前記筒状部を内側から覆う第1ステップと、
前記第1ステップのあと、前記フランジと前記張り出し部とが重なった部分にレーザ光を上方から照射して前記フランジと前記張り出し部とをレーザ溶接する第2ステップと、
を備える溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接方法を第1部材と第2部材との複数の組合せそれぞれに対して行う溶接方法であり、
前記第1スパッタ除け部材は、前記第1部材の前記部位の上側部分を覆う上側部材と、前記第1部材の前記部位の下側部分を覆う下側部材と、を備え、
前記下側部材は、前記上側部材よりも交換頻度が高い、
溶接方法。
【請求項3】
前記上側部材は、上側に向かって先細り形状となっている、
請求項2に記載の溶接方法。
【請求項4】
前記張り出し部は、前記フランジよりも上側に配置され、
前記第2ステップでは、前記第2スパッタ除け部材を下方に押圧することで前記張り出し部を前記フランジに押し付けながら前記レーザ光を照射する、
請求項1に記載の溶接方法。
【請求項5】
前記第1部材は、真空計の圧力センサであり、
前記第2部材は、前記真空計のブラケットである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項6】
フランジを備える第1部材と、前記第1部材の前記フランジよりも上側の部位を囲む筒状部、及び、当該筒状部の下端部から前記第1部材側に張り出し、上方から見て前記フランジと重なる張り出し部を備える第2部材と、を溶接する溶接方法であって、
カップ状又は筒状の第1スパッタ除け部材で前記第1部材の前記部位を覆う第1ステップと、
前記第1ステップのあと、前記フランジと前記張り出し部とが重なった部分にレーザ光を上方から照射して前記フランジと前記張り出し部とをレーザ溶接する第2ステップと、
を備える溶接方法。
【請求項7】
フランジを備える第1部材と、前記第1部材の前記フランジよりも上側の部位を囲む筒状部、及び、当該筒状部の下端部から前記第1部材側に張り出し、上方から見て前記フランジと重なる張り出し部を備える第2部材と、を溶接する溶接方法であって、
筒状の第2スパッタ除け部材で前記第2部材の前記筒状部を内側から覆う第1ステップと、
前記第1ステップのあと、前記フランジと前記張り出し部とが重なった部分にレーザ光を上方から照射して前記フランジと前記張り出し部とをレーザ溶接する第2ステップと、
を備える溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接で生じるスパッタが溶接対象の部材に付着することを抑制するため、溶接部位に吹き付けるシールドガスを溶接部位の側方に配置した導出管から排出する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術は、フランジを備える第1部材(例えば、下記の圧力センサ20)と、第1部材のフランジよりも上側の部位を囲む筒状部、及び、この筒状部の下端から内側に張り出して前記フランジと重なる張り出し部を備える第2部材(例えば、下記のブラケット40)とを、フランジ及び張り出し部が重なった部位への上方からのレーザ照射により溶接する際には適用できない。筒状部があることで、前記の導出管を配置できないからである。また、上記技術は、シールドガスの吹き付けを前提としているので、シールドガスを吹き付けずに溶接を行う場合にも、上記技術の適用はできない。
【0005】
本発明は、第1部材と第2部材との少なくとも一方へのスパッタの付着を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る溶接方法は、フランジを備える第1部材と、前記第1部材の前記フランジよりも上側の部位を囲む筒状部、及び、当該筒状部の下端部から前記第1部材側に張り出し、上方から見て前記フランジと重なる張り出し部を備える第2部材と、を溶接する溶接方法であって、カップ状又は筒状の第1スパッタ除け部材で前記第1部材の前記部位を覆い、筒状の第2スパッタ除け部材で前記第2部材の前記筒状部を内側から覆う第1ステップと、前記第1ステップのあと、前記フランジと前記張り出し部とが重なった部分にレーザ光を上方から照射して前記フランジと前記張り出し部とをレーザ溶接する第2ステップと、を備える。
【0007】
一例として、上記溶接方法を第1部材と第2部材との複数の組合せそれぞれに対して行ってもよく、前記第1スパッタ除け部材は、前記第1部材の前記部位の上側部分を覆う上側部材と、前記第1部材の前記部位の下側部分を覆う下側部材と、を備え、前記下側部材は、前記上側部材よりも交換頻度が高い。
【0008】
一例として、前記上側部材は、上側に向かって先細り形状となっている。
【0009】
一例として、前記張り出し部は、前記フランジよりも上側に配置され、前記第2ステップでは、前記第2スパッタ除け部材を下方に押圧することで前記張り出し部を前記フランジに押し付けながら前記レーザ光を照射する。
【0010】
一例として、前記第1部材は、真空計の圧力センサであり、前記第2部材は、前記真空計のブラケットである。
【0011】
本発明に係る溶接方法は、フランジを備える第1部材と、前記第1部材の前記フランジよりも上側の部位を囲む筒状部、及び、当該筒状部の下端部から前記第1部材側に張り出し、上方から見て前記フランジと重なる張り出し部を備える第2部材と、を溶接する溶接方法であって、カップ状又は筒状の第1スパッタ除け部材で前記第1部材の前記部位を覆う第1ステップと、前記第1ステップのあと、前記フランジと前記張り出し部とが重なった部分にレーザ光を上方から照射して前記フランジと前記張り出し部とをレーザ溶接する第2ステップと、を備える。
【0012】
本発明に係る残り溶接方法は、フランジを備える第1部材と、前記第1部材の前記フランジよりも上側の部位を囲む筒状部、及び、当該筒状部の下端部から前記第1部材側に張り出し、上方から見て前記フランジと重なる張り出し部を備える第2部材と、を溶接する溶接方法であって、筒状の第2スパッタ除け部材で前記第2部材の前記筒状部を内側から覆う第1ステップと、前記第1ステップのあと、前記フランジと前記張り出し部とが重なった部分にレーザ光を上方から照射して前記フランジと前記張り出し部とをレーザ溶接する第2ステップと、を備える。
【0013】
上記各溶接方法での上下は方向を規定するための便宜上のものであり、実際の天地方向と一致しなくてもよい。つまり、「上」は、第1の方向、「下」は、第1の方向とは反対の第2の方向であればよく、「上」は、天井ないし空側でなくてもよく、「下」は、地面側でなくてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1部材と第2部材との少なくとも一方へのスパッタの付着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る溶接方法に使用する各部材を描いた斜視図である。
【
図4】
図4は、溶接方法のステップの態様を示す図である。
【
図5】
図5は、溶接方法の
図4のステップの次のステップの態様を示す図である。
【
図6】
図6は、溶接方法の
図5のステップの次のステップの態様を示す図である。
【
図7】
図7は、溶接方法の
図6のステップの次のステップの態様を示す図である。
【
図8】
図8は、溶接方法の
図7のステップの次のステップの態様を示す図である。
【
図9】
図9は、溶接方法の
図8のステップの次のステップの態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る溶接方法を、
図1に示す真空計10の製造工程に適用した実施形態例について図面を参照して説明する。まず、真空計10の概略構成を説明し、その後、本実施形態に係る溶接方法を説明する。なお、本明細書における上下は便宜上のものであり、実際の天地方向と一致しなくてもよい。つまり、「上」は、天井ないし空側でなくてもよく、「下」は、地面側でなくてもよい。
【0017】
図1及び
図2に示すように、真空計10は、計測対象空間のガスGの圧力を電気信号に変換する圧力センサ20と、圧力センサ20を加熱するヒータ30と、圧力センサ20に固定されるブラケット40と、を備える。ガスGは、例えば、計測対象空間としての真空チャンバ内の空間の真空引き後の残留ガス、又は、真空チャンバ内の空間で発生するプロセスガスである。
【0018】
図1に示すように、真空計10は、圧力センサ20及びヒータ30を制御する制御装置50、及び、圧力センサ20又はヒータ30と制御装置50とを電気的に接続する複数の配線H1及びH2なども備える。制御装置50は、コンピュータなどの処理回路を含んで構成され、圧力センサ20により変換された電気信号を、配線H1を介して取り出し、取り出した電気信号に基づいてガスGの圧力を計測対象空間の真空度として真空計10の外部に出力する。制御装置50は、不図示の固定具によりブラケット40に固定され、このブラケット40により支持される。
【0019】
圧力センサ20は、筐体21と、センサ素子22と、センサ支持部23と、複数(ここでは3つ)の導電ピン24と、を備える。
【0020】
筐体21は、センサ素子22と、このセンサ素子22を支持するセンサ支持部23と、を収容する。筐体21は、計測対象空間のガスが流入する円筒状の第1筒状部材21Aと、第1筒状部材21Aの上端に接合された円筒状の第2筒状部材21Bと、第2筒状部材21Bの上端開口を覆う円板状の蓋部材21Cと、を備える。筐体21は、第1筒状部材21Aから横方向外側に張り出した円環状のフランジ21D及び21Eも備える。
【0021】
第1筒状部材21Aと第2筒状部材21Bとは、センサ支持部23の外周縁を挟んで接合される。これにより、センサ支持部23は、その外周縁が第1筒状部材21Aと第2筒状部材21Bに挟まれた状態で筐体21に支持かつ収容されている。センサ支持部23は、前記の外周縁を含む薄板(支持ダイアフラム)と、薄板の中央部を上下方向から挟む上下一対の台座と、を備える。台座の上面にセンサ素子22が固定されることで、センサ素子22がセンサ支持部23により支持される。
【0022】
筐体21内の空間は、センサ素子22及びセンサ支持部23により、真空室R1と、計測対象空間のガスが流入する流入空間R2と、に区画されている。センサ支持部23の中央には、ガスGをセンサ素子22に導入するための貫通孔23Aが設けられている。
【0023】
センサ素子22は、真空室R1の真空度が導入される容量室と、容量室の底を構成し、容量室に導入された真空度と計測対象空間のガスとの圧力差に応じて変形するダイアフラムと、容量室内に設けられ、ダイアフラムの変形により距離が変化する一対の対向電極と、を備える。センサ素子22は、対向電極の間の距離つまり静電容量の変化を電気信号として出力することにより、真空室R1の真空度を基準とした計測対象空間のガスGの圧力(計測対象空間の真空度)を電気信号に変換して出力する。センサ素子22は、ダイアフラムの変形を圧電素子により電気信号に変換するタイプであってもよい。
【0024】
センサ素子22により変換された後の電気信号は、複数の導電ピン24及び配線H1を介して制御装置50に出力され、制御装置50による、計測対象空間のガスGの圧力(真空度)の導出に使用される。複数の導電ピン24は、筐体21の蓋部材21Cに設けられた複数の貫通孔をそれぞれ通り、かつ、ハーメチックシールにより蓋部材21Cに固定されている。各導電ピン24は、円筒状のシールドに囲まれた状態で、ハーメチックシールにより蓋部材21Cに固定されてもよい。導電ピン24の数は、ここでは3つであるが、他の数であってもよい。
【0025】
図1及び
図2に示すように、ヒータ30は、円筒形状であり(
図1では、内部構造などを省略している)、その内面から内側に張り出した固定部31を備える。固定部31が、筐体21のフランジ21Dに溶接などにより固定されることで、ヒータ30は、筐体21に固定される。ヒータ30は、配線H2により制御装置50と接続される。ヒータ30は、制御装置50により配線H2を介して駆動されて発熱する。この発熱により圧力センサ20が加熱され、圧力センサ20の筐体21内に導入されたガスGに含まれる物質がセンサ素子22のダイアフラムに析出することが抑制される。前記ガスが直接ダイアフラムに当たらないよう、筐体21の第1筒状部材21A内にバッフルが設けられてもよい。
【0026】
ブラケット40は、圧力センサ20に固定された状態で制御装置50を支持するとともに真空計10の外観を構成する意匠部材である。ブラケット40は、圧力センサ20のフランジ21Eよりも上側の部位S及びヒータ30を囲んでいる。ブラケット40は、ここでは断面八角形の多角筒状の筒状部41と、筒状部41の下端部から内側つまり圧力センサ20側に張り出した張り出し部42と、を備える。張り出し部42の中央部には、圧力センサ20(特に部位S)が挿入された貫通孔43が形成されている。張り出し部42は、上方から見てフランジ21Eと重なっている。ここでは、張り出し部42の貫通孔43の縁を構成している環状部位42Aの下面が、筐体21のフランジ21Eの外周縁部21EAの上面に接触して重なる。この重なった部分が溶接されることで、張り出し部42とフランジ21Eとが溶接される。
【0027】
上記張り出し部42とフランジ21Eとの溶接に、本実施形態に係る溶接方法が使用される。本溶接方法では、
図3に示す、治具91と、上側部材92A及び下側部材92Bからなる第1スパッタ除け部材92と、及び、第2スパッタ除け部材93と、が用いられる。治具91、第1スパッタ除け部材92、第2スパッタ除け部材93は、ステンレスなどの金属により形成されている。これら部材については後で詳述する。
【0028】
本実施形態に係る溶接方法では、まず、圧力センサ20を、板状の治具91上に配置する(
図4参照)。圧力センサ20は、フランジ21Eが治具91の凹部91A内に位置するように配置され位置決めされる。
【0029】
その後、圧力センサ20に、ブラケット40をセットする(
図5参照)。ブラケット40の貫通孔に、圧力センサ20のフランジ21Eよりも上側の部位Sを通す。これにより、ブラケット40は、フランジ21E上に配置され、ブラケット40と圧力センサ20とは溶接位置にセットされる。この溶接位置において、ブラケット40の筒状部41は、部位Sを囲む。張り出し部42(より具体的には環状部位42A)は、上方から見てフランジ21E(より具体的には外周縁部21EA)と上から重なり、ブラケット40は、フランジ21Eにより支持される。ブラケット40は、任意の方法により位置決めされ、位置ずれが防止される。
【0030】
その後、圧力センサ20のフランジ21Eとブラケット40の張り出し部42とが重なった環状部分、つまり、環状部位42Aと外周縁部21EAとからなる部位に、レーザ光Lを上から照射しつつ一周走査することで両者をレーザ溶接する(
図9など、詳細は後述する)。しかし、このようなレーザ溶接では、スパッタが発生し、圧力センサ20及びブラケット40に付着する。ブラケット40へのスパッタの付着は、例えば、ブラケット40の外観不良を引き起こす。また、圧力センサ20へのスパッタの付着は、例えば、圧力センサ20とヒータ30との接合不良を引き起こす。
【0031】
この実施の形態では、上記スパッタの付着を抑制するため、レーザ溶接時に、
図3に示す第1スパッタ除け部材92及び第2スパッタ除け部材93を用いて、圧力センサ20及びブラケット40をスパッタからそれぞれ保護する。
【0032】
図6に示すように、筒状の第2スパッタ除け部材93をブラケット40の筒状部41の内側かつ張り出し部42上に配置する。第2スパッタ除け部材93は、その内部にレーザ光Lの照射領域が入る形状に設計されている。第2スパッタ除け部材93が、ブラケット40の筒状部41の内面を覆うことで、スパッタからブラケット40を保護する。第2スパッタ除け部材93の外周面は、ブラケット40の内周面に合せて八角筒形状に形成されている。他方、第2スパッタ除け部材93の内周面は、レーザ光Lの円形の走査軌跡に合せて円筒形状に形成されている。この円筒形状により、ブラケット40の張り出し部42のうち、スパッタから第2スパッタ除け部材93により保護されない部分を小さくすることができる。
【0033】
その後、
図7に示すように、第1スパッタ除け部材92のカップ状の上側部材92Aにより、圧力センサ20の部位Sの上側部分を覆う。上側部材92Aは、圧力センサ20のフランジ21D上に配置され、前記上側部分として、圧力センサ20のフランジ21Dよりも上側の部分を覆う。その後、
図8に示すように、筒状の下側部材92Bを、ブラケット40の張り出し部42上に配置し、上側部材92Aの下部と、圧力センサ20のフランジ21Dを含む、部位Sの下側部分と、ブラケット40の貫通孔43と、を覆う。第1スパッタ除け部材92は、全体として、カップ状で、圧力センサ20のフランジ21Eよりも上の部位Sを覆い、これにより、スパッタから圧力センサ20を保護する。
【0034】
その後、
図9に示すように、圧力センサ20のフランジ21Eとブラケット40の張り出し部42とが重なった環状部分、つまり、環状部位42Aと外周縁部21EAとからなる部位に、レーザ光Lを上から照射しつつ一周走査することで両者をレーザ溶接する。これにより、フランジ21Eと張り出し部42とが接合される。溶接時、酸化などの防止のため、必要に応じてシールドガス(不活性ガスなど)をレーザ照射箇所(溶接個所)に供給してもよい。
【0035】
その後、ヒータ30を、圧力センサ20のフランジ21Dにレーザ溶接などにより固定し、制御装置50などを設けることで、真空計10が完成する。
【0036】
以上のように、本実施形態では、圧力センサ20のフランジ21Eとブラケット40の張り出し部42とが重なった部分にレーザ光Lを照射して両者をレーザ溶接する際に、第1スパッタ除け部材92及び第2スパッタ除け部材93により圧力センサ20及びブラケット40を覆う。これにより、レーザ溶接時に発生するスパッタが圧力センサ20及びブラケット40に付着することを、シールドガスを排出する上記導出管を用いずに抑制できる。その結果、ブラケット40の外観不良、圧力センサ20とヒータ30との接合不良などが発生難くなる。
【0037】
複数の真空計10を順次製造する場合、本実施形態の溶接方法が、複数の真空計10のそれぞれについて実施される。この際、第1スパッタ除け部材92及び第2スパッタ除け部材93を繰り返し使用してもよい。この場合、第1スパッタ除け部材92及び第2スパッタ除け部材93に付着つまり堆積するスパッタの堆積量が多くなると、堆積したスパッタがレーザ光Lに干渉することがある。この干渉を防止するため、スパッタ除け部材は、任意のタイミングで新しいスパッタ除け部材に交換するとよい。ここで、第1スパッタ除け部材92は、上側部材92A及び下側部材92Bを備えるので、よりスパッタの付着量の多い下側部材92Bを単独で交換することができる。これにより、下側部材92Bの交換頻度を上側部材92Aよりも多くすることもできる。例えば、下側部材92Bのみを一回の溶接ごとに交換することができる。下側部材92Bの交換頻度を上側部材92Aよりも多くすることにより、その都度第1スパッタ除け部材92全体を交換しなければならない場合に比べて、圧力センサ20のスパッタからの保護に必要なコストが低減される。下側部材92Bは、円筒状なので、ステンレス箔などにより形成可能で、これにより、コストがより低減される。
【0038】
なお、第1スパッタ除け部材92及び第2スパッタ除け部材93は、圧力センサ20又はブラケット40を覆うことで、溶接時に発生するスパッタ以外の他の汚染物質、例えば、ヒューム、煤などからの保護機能も発揮することができる。上記スパッタの堆積物には、他の汚染物質が含まれることもある。
【0039】
図9から分かるように、第1スパッタ除け部材92の外周面は、レーザ光Lに干渉しないように上方つまりレーザ光の照射方向の反対方向に向かって先細り形状となっている。特に、この外周面の中ほどには、テーパ面92AAが形成されている。このテーパ面92AAによりレーザ光Lへの干渉が効果的に抑制される。このような先細り形状により、レーザ光Lの照射位置を圧力センサ20に近付けることができる。
図9のように、第2スパッタ除け部材93内面は、上方つまりレーザ光の照射方向の反対方向に向かって末広がりの形状とするとよい。これにより、第2スパッタ除け部材93によるレーザ光Lへの干渉も抑制される。このような構成より、第1スパッタ除け部材92と、第2スパッタ除け部材93との間の幅を狭くすることができる。これにより、張り出し部42の、各スパッタ除け部材92及び93により覆われて保護される領域の面積を大きくすることができ、張り出し部42の、レーザ光Lの照射領域の周囲の領域つまりスパッタが付着し得る領域の面積を小さくすることができる。
【0040】
レーザ溶接時、所定の押圧部材により第1スパッタ除け部材92を下方に押圧することで、ブラケット40の張り出し部42を筐体21のフランジ21Eに押し付けるとよい。このような押圧により、レーザ溶接される張り出し部42とフランジ21Eとの密着度を高くし、レーザ溶接の溶接歩留りを向上させることができる。このようなことを実現するため、溶接時、
図9などに示すようにブラケット40は、その下面が治具91の上面(ここでは、凹部91Aの周囲の、ブラケット40の下部が入り込む凹部91Bの底面)と離れた状態で配置されるとよい。
【0041】
上記実施形態に対して種々の変形を適用してもよい。例えば、スパッタ除け部材などの形状は、任意に変更可能である。例えば、円筒形状を断面多角形の多角筒形状に変更してもよいし、その逆も可能である。各部材は、一体的に形成された単一の部品からなってもよいし、複数の部品を組み合わせたものであってもよい。例えば、第1スパッタ除け部材92は、単一の部材から構成されてもよい。第1スパッタ除け部材92は、上記実施形態では上端閉口のカップ形状を有するが、上端開口の筒状であってもよい。ブラケット40の張り出し部42、圧力センサ20のフランジ21D及び又は21Eは、周方向に連続した環状部材でなく、例えば、周方向に離散的に配置された複数の板状部材からなってもよい。張り出し部42は、フランジ21Eの下側に位置してもよい。第1スパッタ除け部材92と第2スパッタ除け部材93との配置順序は任意であり、上記に限定されない。
【0042】
第1スパッタ除け部材92及び第2スパッタ除け部材93の一方を使用しなくてもよい。例えば、圧力センサ20へのスパッタの付着の防止を考慮する必要がない場合、第1スパッタ除け部材92は不要である。ブラケット40へのスパッタの付着の防止を考慮する必要がない場合、第2スパッタ除け部材93は不要である。
【0043】
本発明は、フランジを備える第1部材と、この第1部材のこのフランジよりも上側の部位を囲む筒状部、及び、筒状部の下端部から第1部材側に張り出し、上方から見てフランジと重なる張り出し部を備える第2部材と、を溶接する技術一般に適用できる。
【0044】
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…真空計、20…圧力センサ、21…筐体、21A…第1筒状部材、21B…第2筒状部材、21C…蓋部材、21D…フランジ、21E…フランジ、21EA…外周縁部、22…センサ素子、23…センサ支持部、23A…貫通孔、24…導電ピン、30…ヒータ、31…固定部、40…ブラケット、41…筒状部、42…張り出し部、42A…環状部位、43…貫通孔、50…制御装置、91…治具、91A…凹部、92…第1スパッタ除け部材、92A…上側部材、92AA…テーパ面、92B…下側部材、93…第2スパッタ除け部材、G…ガス、H1…配線、H2…配線、L…レーザ光、R1…真空室、R2…流入空間、S…部位。