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特開2024-32152画像処理装置、印刷システム、及び、画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032152
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】画像処理装置、印刷システム、及び、画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 3/4007 20240101AFI20240305BHJP
   H04N 1/409 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G06T3/40 700
H04N1/409
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135650
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】奥村 嘉夫
(72)【発明者】
【氏名】萱原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中塚 翼
(72)【発明者】
【氏名】天狗石 悠斗
【テーマコード(参考)】
5B057
5C077
【Fターム(参考)】
5B057AA11
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CC01
5B057CD05
5B057CE04
5B057CE06
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5C077LL08
5C077LL09
5C077PP02
5C077PP20
5C077PQ08
(57)【要約】
【課題】解像度の変換倍率が向きに応じて異なる場合に細線が適切に繋がった変換後画像を取得可能な技術を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、S1×S2のフィルターサイズを有する2次元のガウシアンフィルターを入力画像に適用することによりぼかし画像を生成可能なぼかし処理部と、第一方向の第一変換倍率R1及び第二方向の第二変換倍率R2で解像度が変換された変換後画像を前記ぼかし画像から生成可能な解像度変換部と、を備える。前記ぼかし処理部がS1>S2にする場合はR2>R1であり、前記ぼかし処理部がS2>S1にする場合はR1>R2である。ここで、前記第一方向及び前記第二方向における前記ガウシアンフィルターの標準偏差σをそれぞれ標準偏差σ1,σ2とする。前記ぼかし処理部は、S2がS1とは異なる場合にσ2=σ1であるフィルター係数を有する前記ガウシアンフィルターを前記入力画像に適用する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向及び該第一方向と交差する第二方向へ並んでいる複数の画素を有する入力画像に基づいて解像度が変換された変換後画像を取得する画像処理を実行可能な画像処理装置であって、
前記第一方向において第一フィルターサイズであって前記第二方向において第二フィルターサイズである2次元のガウシアンフィルターを前記入力画像に適用することによりぼかし画像を生成可能なぼかし処理部と、
前記第一方向における前記解像度の変換倍率である第一変換倍率、及び、前記第二方向における前記解像度の変換倍率である第二変換倍率で前記解像度が変換された前記変換後画像を前記ぼかし画像から生成可能な解像度変換部と、を備え、
前記ぼかし処理部が前記第一フィルターサイズを前記第二フィルターサイズよりも大きくする場合は前記第二変換倍率が前記第一変換倍率よりも大きく、
前記ぼかし処理部が前記第二フィルターサイズを前記第一フィルターサイズよりも大きくする場合は前記第一変換倍率が前記第二変換倍率よりも大きく、
前記第一方向における前記ガウシアンフィルターの標準偏差σを標準偏差σ1とし、
前記第二方向における前記ガウシアンフィルターの標準偏差σを標準偏差σ2として、
前記ぼかし処理部は、前記第二フィルターサイズが前記第一フィルターサイズとは異なる場合に前記標準偏差σ2が前記標準偏差σ1に一致したフィルター係数を有する前記ガウシアンフィルターを前記入力画像に適用する、画像処理装置。
【請求項2】
前記ぼかし処理部は、前記第一変換倍率と前記第二変換倍率の少なくとも一方が1よりも小さい場合において前記ぼかし画像を生成し、
前記解像度変換部は、前記第一変換倍率及び前記第二変換倍率が1以上である場合において、前記第一方向における前記第一変換倍率、及び、前記第二方向における第二変換倍率で前記解像度が変換された前記変換後画像を前記入力画像から生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ぼかし処理部は、前記第一変換倍率が1よりも小さい場合に前記ガウシアンフィルターの前記第一フィルターサイズを前記第一変換倍率の逆数よりも大きい奇数にし、前記第二変換倍率が1よりも小さい場合に前記ガウシアンフィルターの前記第二フィルターサイズを前記第二変換倍率の逆数よりも大きい奇数にする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置と、
媒体に対して液体を吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記媒体に前記変換後画像に基づいた印刷画像が形成されるように前記印刷ヘッドからの前記液体の吐出を制御する制御部と、を備える、印刷システム。
【請求項5】
前記変換後画像の前記解像度を異なる複数の出力解像度に設定可能な印刷条件において前記複数の出力解像度の中から前記変換後画像の前記解像度の設定を受け付ける解像度受付部をさらに備え、
前記出力解像度は、第一出力解像度、及び、該第一出力解像度とは異なる第二出力解像度を含み、
前記ぼかし処理部は、前記解像度受付部で前記第二出力解像度が受け付けられた場合に前記入力画像に適用する前記ガウシアンフィルターの前記標準偏差σ1,σ2を、前記解像度受付部で前記第一出力解像度が受け付けられた場合に前記入力画像に適用する前記ガウシアンフィルターの前記標準偏差σ1,σ2に一致させる、請求項4に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記印刷条件の設定を複数の候補の中から受け付ける印刷条件受付部をさらに備え、
前記ぼかし処理部は、前記複数の候補のそれぞれに紐付けられた標準偏差σiのうち前記印刷条件に紐付けられた標準偏差を前記標準偏差σ1,σ2として前記ガウシアンフィルターを前記入力画像に適用可能である、請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記媒体は、第一媒体、及び、該第一媒体よりも前記液体が滲み難い第二媒体を含み、
前記印刷条件となり得る前記複数の候補は、前記第一媒体に前記印刷画像を形成する第一の媒体候補、及び、前記第二媒体に前記印刷画像を形成する第二の媒体候補を含み、
前記ぼかし処理部は、前記印刷条件として前記第二の媒体候補が受け付けられた場合に前記入力画像に適用する前記ガウシアンフィルターの前記標準偏差σ1,σ2を、前記印刷条件として前記第一の媒体候補が受け付けられた場合に前記入力画像に適用する前記ガウシアンフィルターの前記標準偏差σ1,σ2よりも大きくする、請求項6に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記印刷条件となり得る前記複数の候補は、前記入力画像に含まれる線画のシャープさを優先する第一の画像候補、及び、前記入力画像の階調性を優先する第二の画像候補を含み、
前記ぼかし処理部は、前記印刷条件として前記第二の画像候補が受け付けられた場合に前記入力画像に適用する前記ガウシアンフィルターの前記標準偏差σ1,σ2を、前記印刷条件として前記第一の画像候補が受け付けられた場合に前記入力画像に適用する前記ガウシアンフィルターの前記標準偏差σ1,σ2よりも大きくする、請求項6に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記ぼかし処理部は、前記入力画像に適用する前記ガウシアンフィルターの標準偏差σを設定する操作をユーザーインターフェイス画面において受け付け、受け付けた標準偏差σを前記標準偏差σ1,σ2とした前記フィルター係数を有する前記ガウシアンフィルターを前記入力画像に適用する、請求項4に記載の印刷システム。
【請求項10】
第一方向及び該第一方向と交差する第二方向へ並んでいる複数の画素を有する入力画像に基づいて解像度が変換された変換後画像を取得する画像処理方法であって、
前記第一方向において第一フィルターサイズであって前記第二方向において第二フィルターサイズである2次元のガウシアンフィルターを前記入力画像に適用することによりぼかし画像を生成するぼかし処理工程と、
前記第一方向における前記解像度の変換倍率である第一変換倍率、及び、前記第二方向における前記解像度の変換倍率である第二変換倍率で前記解像度が変換された前記変換後画像を前記ぼかし画像から生成する解像度変換工程と、を含み、
前記ぼかし処理工程において前記第一フィルターサイズを前記第二フィルターサイズよりも大きくする場合は前記第二変換倍率が前記第一変換倍率よりも大きく、
前記ぼかし処理工程において前記第二フィルターサイズを前記第一フィルターサイズよりも大きくする場合は前記第一変換倍率が前記第二変換倍率よりも大きく、
前記第一方向における前記ガウシアンフィルターの標準偏差σを標準偏差σ1とし、
前記第二方向における前記ガウシアンフィルターの標準偏差σを標準偏差σ2として、
前記ぼかし処理工程において、前記第二フィルターサイズが前記第一フィルターサイズとは異なる場合に前記標準偏差σ2が前記標準偏差σ1に一致したフィルター係数を有する前記ガウシアンフィルターを前記入力画像に適用する、画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の解像度を変換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに直交する2方向へ並んでいる複数の画素を有する画像の解像度を変換するため、バイキュービック法等による補間演算により画像の画素数を変換することが行われている。画像の解像度を高くする変換は画像の画素数を増やすことになり、画像の解像度を低くする変換は画像の画素数を減らすことになる。ここで、互いに直交する2方向をX方向及びY方向とする。特に、画像の解像度が低くなる場合、画像に含まれる複数の画素の内、解像度変換に使用されない画素や、補間演算時の重みが小さい画素が生じる。そこで、解像度変換前にガウシアンフィルターを画像に適用するぼかし処理が行われている。
【0003】
特許文献1に開示された印刷物検査装置は、解像度変換前のRIP(Raster Image Processor)画像にガウシアンフィルターを用いて平滑化を施す。使用されるガウシアンフィルターのフィルターサイズは、3×3等、X方向とY方向とで同じサイズである。ガウシアンフィルターの平滑化係数σすなわち標準偏差は、印刷物の印刷線数が低いほど大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-53561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
X方向とY方向とで解像度の変換倍率が異なる場合、細線を含む画像の解像度変換が行われると、変換後画像において、各方向の変換倍率に応じて細線の太さが不適切に変化したり、細線が途切れたりすることがある。例えば、X方向とY方向とで同じフィルターサイズのガウシアンフィルターが画像に適用される場合であって解像度が低くなるほど平滑化係数σが大きくなる場合、Y方向の変換倍率がX方向の変換倍率よりも小さくなるとY方向に沿った細線が薄くなって太くなる。X方向よりもY方向に近い向きの細線は、途切れることがある。そこで、X方向とY方向とで解像度の変換倍率が異なっていても、適度なぼかし効果を得ながら細線を適切に変換することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、第一方向及び該第一方向と交差する第二方向へ並んでいる複数の画素を有する入力画像に基づいて解像度が変換された変換後画像を取得する画像処理を実行可能な画像処理装置であって、
前記第一方向において第一フィルターサイズであって前記第二方向において第二フィルターサイズである2次元のガウシアンフィルターを前記入力画像に適用することによりぼかし画像を生成可能なぼかし処理部と、
前記第一方向における前記解像度の変換倍率である第一変換倍率、及び、前記第二方向における前記解像度の変換倍率である第二変換倍率で前記解像度が変換された前記変換後画像を前記ぼかし画像から生成可能な解像度変換部と、を備え、
前記ぼかし処理部が前記第一フィルターサイズを前記第二フィルターサイズよりも大きくする場合は前記第二変換倍率が前記第一変換倍率よりも大きく、
前記ぼかし処理部が前記第二フィルターサイズを前記第一フィルターサイズよりも大きくする場合は前記第一変換倍率が前記第二変換倍率よりも大きく、
前記第一方向における前記ガウシアンフィルターの標準偏差σを標準偏差σ1とし、
前記第二方向における前記ガウシアンフィルターの標準偏差σを標準偏差σ2として、
前記ぼかし処理部は、前記第二フィルターサイズが前記第一フィルターサイズとは異なる場合に前記標準偏差σ2が前記標準偏差σ1に一致したフィルター係数を有する前記ガウシアンフィルターを前記入力画像に適用する、態様を有する。
【0007】
また、本発明の印刷システムは、
前記画像処理装置と、
媒体に対して液体を吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記媒体に前記変換後画像に基づいた印刷画像が形成されるように前記印刷ヘッドからの前記液体の吐出を制御する制御部と、を備える、態様を有する。
【0008】
さらに、本発明の画像処理方法は、第一方向及び該第一方向と交差する第二方向へ並んでいる複数の画素を有する入力画像に基づいて解像度が変換された変換後画像を取得する画像処理方法であって、
前記第一方向において第一フィルターサイズであって前記第二方向において第二フィルターサイズである2次元のガウシアンフィルターを前記入力画像に適用することによりぼかし画像を生成するぼかし処理工程と、
前記第一方向における前記解像度の変換倍率である第一変換倍率、及び、前記第二方向における前記解像度の変換倍率である第二変換倍率で前記解像度が変換された前記変換後画像を前記ぼかし画像から生成する解像度変換工程と、を含み、
前記ぼかし処理工程において前記第一フィルターサイズを前記第二フィルターサイズよりも大きくする場合は前記第二変換倍率が前記第一変換倍率よりも大きく、
前記ぼかし処理工程において前記第二フィルターサイズを前記第一フィルターサイズよりも大きくする場合は前記第一変換倍率が前記第二変換倍率よりも大きく、
前記第一方向における前記ガウシアンフィルターの標準偏差σを標準偏差σ1とし、
前記第二方向における前記ガウシアンフィルターの標準偏差σを標準偏差σ2として、
前記ぼかし処理工程において、前記第二フィルターサイズが前記第一フィルターサイズとは異なる場合に前記標準偏差σ2が前記標準偏差σ1に一致したフィルター係数を有する前記ガウシアンフィルターを前記入力画像に適用する、態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像処理装置を含む印刷システムの構成例を模式的に示すブロック図。
図2】横長のガウシアンフィルターを用いたぼかし処理を行ってから縦の変換倍率が横の変換倍率よりも大きい変換後画像を生成する例を模式的に示す図。
図3】縦長のガウシアンフィルターを用いたぼかし処理を行ってから横の変換倍率が縦の変換倍率よりも大きい変換後画像を生成する例を模式的に示す図。
図4】解像度の変換倍率とガウシアンフィルターのフィルターサイズとの関係の例を模式的に示す図。
図5】横長のガウシアンフィルターを用いたぼかし処理を行ってから縦の変換倍率が横の変換倍率よりも大きい変換後画像を生成する場合における各画像の例を模式的に示す図。
図6】解像度変換後の斜め線の例を模式的に示す図。
図7】Y方向の解像度を変えて縦の細線を含む入力画像から得られる変換後画像の例を模式的に示す図。
図8】各印刷条件に紐付けられた標準偏差σiの例を模式的に示す図。
図9】印刷制御処理の例を模式的に示すフローチャート。
図10】ユーザーインターフェイス画面の例を模式的に示す図。
図11】ぼかし画像生成処理の例を模式的に示すフローチャート。
図12】ガウシアンフィルターのフィルター係数の例を模式的に示す図。
図13】Y方向の解像度を変えて縦の細線を含む入力画像から得られる変換後画像の比較例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0011】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~13に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。「本発明に含まれる技術の概要」において、括弧内は直前の語の補足説明を意味する。
【0012】
[態様1]
本技術の一態様に係る画像処理装置U0は、図2,3等に例示するように、第一方向D1及び該第一方向D1と交差する第二方向D2へ並んでいる複数の画素PX1を有する入力画像IM1に基づいて解像度が変換された変換後画像IM2を取得する画像処理を実行可能な画像処理装置U0である。本画像処理装置U0は、ぼかし処理部U1と解像度変換部U2を備える。前記ぼかし処理部U1は、前記第一方向D1において第一フィルターサイズS1であって前記第二方向D2において第二フィルターサイズS2である2次元のガウシアンフィルターF0を前記入力画像IM1に適用することによりぼかし画像IM11を生成可能である。前記解像度変換部U2は、前記第一方向D1における前記解像度の変換倍率である第一変換倍率R1、及び、前記第二方向D2における前記解像度の変換倍率である第二変換倍率R2で前記解像度が変換された前記変換後画像IM2を前記ぼかし画像IM11から生成可能である。図2に例示するように、前記ぼかし処理部U1が前記第一フィルターサイズS1を前記第二フィルターサイズS2よりも大きくする場合、前記第二変換倍率R2が前記第一変換倍率R1よりも大きい。図3に例示するように、前記ぼかし処理部U1が前記第二フィルターサイズS2を前記第一フィルターサイズS1よりも大きくする場合、前記第一変換倍率R1が前記第二変換倍率R2よりも大きい。ここで、前記第一方向D1における前記ガウシアンフィルターF0の標準偏差σを標準偏差σ1とし、前記第二方向D2における前記ガウシアンフィルターF0の標準偏差σを標準偏差σ2とする。前記ぼかし処理部U1は、前記第二フィルターサイズS2が前記第一フィルターサイズS1とは異なる場合に前記標準偏差σ2が前記標準偏差σ1に一致したフィルター係数KEを有する前記ガウシアンフィルターF0を前記入力画像IM1に適用する。
【0013】
上記態様のぼかし処理部U1は、第二フィルターサイズS2が第一フィルターサイズS1とは異なるガウシアンフィルターF0を入力画像IM1に適用可能である。一方、第二フィルターサイズS2が第一フィルターサイズS1とは異なっていても、第二方向D2におけるガウシアンフィルターF0の標準偏差σ2は第一方向D1におけるガウシアンフィルターF0の標準偏差σ1と一致している。
【0014】
図2に例示するように第二方向D2の解像度の第二変換倍率R2が第一方向D1の解像度の第一変換倍率R1よりも大きい場合に第一フィルターサイズS1が第二フィルターサイズS2よりも大きいガウシアンフィルターF0が入力画像IM1に適用されると、以下の効果が得られる。
第一方向D1のぼかし範囲が第二方向D2のぼかし範囲よりも広いため、第二方向D2よりも第一方向D1に近い向きの細線L0の繋がりが確保される。また、第二方向D2のぼかし範囲が第一方向D1のぼかし範囲よりも狭いため、第二方向D2においてぼけ過ぎない。さらに、ガウシアンフィルターF0において第二方向D2の標準偏差σ2が第一方向D1の標準偏差σ1と一致しているので、第一方向D1と第二方向D2におけるぼかし効果が適度であるうえ、第一方向D1と第二方向D2との間の斜め方向におけるぼかし効果も適度である。
【0015】
図3に例示するように第一方向D1の解像度の第一変換倍率R1が第二方向D2の解像度の第二変換倍率R2よりも大きい場合に第二フィルターサイズS2が第一フィルターサイズS1よりも大きいガウシアンフィルターF0が入力画像IM1に適用されると、以下の効果が得られる。
第二方向D2のぼかし範囲が第一方向D1のぼかし範囲よりも広いため、図6に例示するように、第一方向D1よりも第二方向D2に近い向きの細線L0の繋がりが確保される。また、第一方向D1のぼかし範囲が第二方向D2のぼかし範囲よりも狭いため、第一方向D1においてぼけ過ぎない。さらに、ガウシアンフィルターF0において第一方向D1の標準偏差σ1が第二方向D2の標準偏差σ2と一致しているので、第二方向D2と第一方向D1におけるぼかし効果が適度であるうえ、第二方向D2と第一方向D1との間の斜め方向におけるぼかし効果も適度である。
【0016】
以上より、上記態様は、解像度の変換倍率が向きに応じて異なる場合に細線が適切に繋がった変換後画像を取得可能な画像処理装置を提供することができる。
【0017】
ここで、入力画像の解像度の変換は、第一方向と第二方向の少なくとも一方において、画素数を増やす拡大と画素数を減らす縮小の少なくとも一方を行う変換を意味する。従って、入力画像の解像度の変換は、例えば、第一方向において画素数を変えて第二方向において画素数を変えない変換、第一方向において画素数を増やして第二方向において画素数を減らす変換、等を含む。
本願における「第一」、「第二」、…は、類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。複数の構成要素のうちどの構成要素が「第一」、「第二」、…に当てはまるのかは、相対的に決まる。例えば、入力画像の複数の第一画素がX方向及びY方向に並んでいる場合、X方向が第一方向に当て嵌められるとY方向が第二方向に当て嵌まり、Y方向が第一方向に当て嵌められるとX方向が第二方向に当て嵌まる。
第一変換倍率は、入力画像の第一方向における画素数に対する変換後画像の第一方向における画素数の比を意味する。第一変換倍率が1よりも小さい場合は第一方向において画素数が減る解像度変換が行われ、第一変換倍率が1よりも大きい場合は第一方向において画素数が増える解像度変換が行われる。
第二変換倍率は、入力画像の第二方向における画素数に対する変換後画像の第二方向における画素数の比を意味する。第二変換倍率が1よりも小さい場合は第二方向において画素数が減る解像度変換が行われ、第二変換倍率が1よりも大きい場合は第二方向において画素数が増える解像度変換が行われる。
第一フィルターサイズは、ガウシアンフィルターの第一方向におけるフィルター係数の数を意味する。
第二フィルターサイズは、ガウシアンフィルターの第二方向におけるフィルター係数の数を意味する。
標準偏差σ2が標準偏差σ1に一致していることには、フィルター係数から求められる標準偏差σ1,σ2が完全に同一であることに限定されず、フィルター係数から求められる標準偏差σ1,σ2が略同一であることが含まれる。例えば、σ1=σ2である標準偏差σ1,σ2から求められるフィルター係数は、フィルターサイズ等に応じて異なる誤差が生じる。従って、フィルター係数から求められる標準偏差σ1,σ2は、略同一であればよい。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0018】
[態様2]
図9に例示するように、前記ぼかし処理部U1は、前記第一変換倍率R1と前記第二変換倍率R2の少なくとも一方が1よりも小さい場合において前記ぼかし画像IM11を生成してもよい。前記解像度変換部U2は、前記第一変換倍率R1及び前記第二変換倍率R2が1以上である場合において、前記第一方向D1における前記第一変換倍率R1、及び、前記第二方向D2における第二変換倍率R2で前記解像度が変換された前記変換後画像IM2を前記入力画像IM1から生成してもよい。
画素数が増える解像度変換が行われる場合、ぼかし処理が行われなくても変換後画像IM2への画質の影響は少ない。従って、上記態様は、画像拡大時の処理時間を短縮させることができる。
【0019】
[態様3]
図11に例示するように、前記ぼかし処理部U1は、前記第一変換倍率R1が1よりも小さい場合に前記ガウシアンフィルターF0の前記第一フィルターサイズS1を前記第一変換倍率R1の逆数よりも大きい奇数にしてもよい。当該ぼかし処理部U1は、前記第二変換倍率R2が1よりも小さい場合に前記ガウシアンフィルターF0の前記第二フィルターサイズS2を前記第二変換倍率R2の逆数よりも大きい奇数にしてもよい。本態様は、画像縮小時に入力画像IM1の画素PX1の情報が欠落しないので、高画質の変換後画像を得ることができる。
【0020】
[態様4]
ところで、本技術の一態様に係る印刷システムSY1は、図1に例示するように、上述した画像処理装置U0と、媒体ME0に対して液体を吐出可能な複数のノズルを有する印刷ヘッド220と、前記媒体ME0に前記変換後画像IM2に基づいた印刷画像IM3が形成されるように前記印刷ヘッド220からの前記液体の吐出を制御する制御部U10と、を備える。本態様は、第一方向と第二方向とで解像度の変換倍率が異なる場合に細線が適切に繋がった変換後画像を取得可能な印刷システムを提供することができる。
【0021】
[態様5]
図1,10に例示するように、本印刷システムSY1は、前記変換後画像IM2の前記解像度を異なる複数の出力解像度REに設定可能な印刷条件C0において前記複数の出力解像度REの中から前記変換後画像IM2の前記解像度の設定を受け付ける解像度受付部U12をさらに備えていてもよい。図8に例示するように、前記出力解像度REは、第一出力解像度RE1、及び、該第一出力解像度RE1とは異なる第二出力解像度RE2を含んでいてもよい。前記ぼかし処理部U1は、前記解像度受付部U12で前記第二出力解像度RE2が受け付けられた場合に前記入力画像IM1に適用する前記ガウシアンフィルターF0の前記標準偏差σ1,σ2を、前記解像度受付部U12で前記第一出力解像度RE1が受け付けられた場合に前記入力画像IM1に適用する前記ガウシアンフィルターF0の前記標準偏差σ1,σ2に一致させてもよい。
【0022】
変換後画像IM2の解像度を異なる複数の出力解像度REに設定可能な印刷条件C0において、第一出力解像度RE1であっても第二出力解像度RE2であっても、ガウシアンフィルターF0の標準偏差σ1,σ2は変わらない。
【0023】
上記印刷条件C0において、第一方向D1における解像度が変わらない場合に第二方向D2における解像度が変わることを想定する。
図2に例示するように第二方向D2の解像度の第二変換倍率R2が第一方向D1の解像度の第一変換倍率R1よりも大きい場合に第一フィルターサイズS1が第二フィルターサイズS2よりも大きいガウシアンフィルターF0が入力画像IM1に適用されると、以下の効果が得られる。
第一方向D1のぼかし範囲が第二方向D2のぼかし範囲よりも広いため、図7に例示するように、第二方向D2に沿った細線L2の太さが確保される。また、第二方向D2のぼかし範囲が第一方向D1のぼかし範囲よりも狭いため、変換倍率が比較的大きい第二方向D2においてぼけ過ぎない。さらに、ガウシアンフィルターF0において第二方向D2の標準偏差σ2が第一方向D1の標準偏差σ1と一致しているので、第一方向D1と第二方向D2におけるぼかし効果が適度であるうえ、第一方向D1と第二方向D2との間の斜め方向におけるぼかし効果も適度である。
【0024】
図3に例示するように第二方向D2の解像度の第二変換倍率R2が第一方向D1の解像度の第一変換倍率R1よりも小さい場合に第一フィルターサイズS1が第二フィルターサイズS2よりも小さいガウシアンフィルターF0が入力画像IM1に適用されると、以下の効果が得られる。
第一方向D1のぼかし範囲が第二方向D2のぼかし範囲よりも狭いため、第二方向D2に沿った細線L2が太くなり過ぎず、変換倍率が比較的大きい第一方向D1においてぼけ過ぎない。これにより、第二方向D2に沿った細線L2が薄くなり過ぎない。また、ガウシアンフィルターF0において第二方向D2の標準偏差σ2が第一方向D1の標準偏差σ1と一致しているので、第一方向D1と第二方向D2におけるぼかし効果が適度であるうえ、第一方向D1と第二方向D2との間の斜め方向におけるぼかし効果も適度である。
【0025】
以上より、上記態様は、設定された印刷条件において出力解像度が変わっても適度なぼかし効果を得ながら印刷画像中の線の幅を揃えることができる。
【0026】
[態様6]
図10に例示するように、本印刷システムSY1は、前記印刷条件C0の設定を複数の候補の中から受け付ける印刷条件受付部U11をさらに備えていてもよい。前記ぼかし処理部U1は、図8に例示するように前記複数の候補のそれぞれに紐付けられた標準偏差σiのうち前記印刷条件C0に紐付けられた標準偏差を前記標準偏差σ1,σ2として前記ガウシアンフィルターF0を前記入力画像IM1に適用可能でもよい。本態様は、複数の候補の中から設定された印刷条件に応じた高画質の印刷画像を得ることができる。
【0027】
[態様7]
図8に例示するように、前記媒体ME0は、第一媒体ME1、及び、該第一媒体ME1よりも前記液体が滲み難い第二媒体ME2を含んでいてもよい。前記印刷条件C0となり得る前記複数の候補は、前記第一媒体ME1に前記印刷画像IM3を形成する第一の媒体候補CM1、及び、前記第二媒体ME2に前記印刷画像IM3を形成する第二の媒体候補CM2を含んでいてもよい。前記ぼかし処理部U1は、前記印刷条件C0として前記第二の媒体候補CM2が受け付けられた場合に前記入力画像IM1に適用する前記ガウシアンフィルターF0の前記標準偏差σ1,σ2を、前記印刷条件C0として前記第一の媒体候補CM1が受け付けられた場合に前記入力画像IM1に適用する前記ガウシアンフィルターF0の前記標準偏差σ1,σ2よりも大きくしてもよい。本態様は、媒体の種類に応じた高画質の印刷画像を得ることができる。
【0028】
[態様8]
図8に例示するように、前記印刷条件C0となり得る前記複数の候補は、前記入力画像IM1に含まれる線画のシャープさを優先する第一の画像候補C11、及び、前記入力画像IM1の階調性を優先する第二の画像候補C12を含んでいてもよい。前記ぼかし処理部U1は、前記印刷条件C0として前記第二の画像候補C12が受け付けられた場合に前記入力画像IM1に適用する前記ガウシアンフィルターF0の前記標準偏差σ1,σ2を、前記印刷条件C0として前記第一の画像候補C11が受け付けられた場合に前記入力画像IM1に適用する前記ガウシアンフィルターF0の前記標準偏差σ1,σ2よりも大きくしてもよい。本態様は、入力画像の種類に応じた高画質の印刷画像を得ることができる。
【0029】
[態様9]
図10に例示するように、前記ぼかし処理部U1は、前記入力画像IM1に適用する前記ガウシアンフィルターF0の標準偏差σを設定する操作をユーザーインターフェイス画面500において受け付けてもよい。当該ぼかし処理部U1は、受け付けた標準偏差σを前記標準偏差σ1,σ2とした前記フィルター係数KEを有する前記ガウシアンフィルターF0を前記入力画像IM1に適用してもよい。本態様は、よりユーザー好みの印刷画像を得ることができる。
【0030】
[態様10]
さらに、本技術の一態様に係る画像処理方法は、第一方向D1及び該第一方向D1と交差する第二方向D2へ並んでいる複数の画素PX1を有する入力画像IM1に基づいて解像度が変換された変換後画像IM2を取得する画像処理方法であって、以下の工程(A),(B)を含んでいる。
(A)前記第一方向D1において第一フィルターサイズS1であって前記第二方向D2において第二フィルターサイズS2である2次元のガウシアンフィルターF0を前記入力画像IM1に適用することによりぼかし画像IM11を生成するぼかし処理工程ST1。
(B)前記第一方向D1における前記解像度の変換倍率である第一変換倍率R1、及び、前記第二方向D2における前記解像度の変換倍率である第二変換倍率R2で前記解像度が変換された前記変換後画像IM2を前記ぼかし画像IM11から生成する解像度変換工程ST2。
ここで、前記ぼかし処理工程ST1において前記第一フィルターサイズS1を前記第二フィルターサイズS2よりも大きくする場合、前記第二変換倍率R2が前記第一変換倍率R1よりも大きい。前記ぼかし処理工程ST1において前記第二フィルターサイズS2を前記第一フィルターサイズS1よりも大きくする場合、前記第一変換倍率R1が前記第二変換倍率R2よりも大きい。また、前記第一方向D1における前記ガウシアンフィルターF0の標準偏差σを標準偏差σ1とし、前記第二方向D2における前記ガウシアンフィルターF0の標準偏差σを標準偏差σ2とする。本画像処理方法は、前記ぼかし処理工程ST1において、前記第二フィルターサイズS2が前記第一フィルターサイズS1とは異なる場合に前記標準偏差σ2が前記標準偏差σ1に一致したフィルター係数KEを有する前記ガウシアンフィルターF0を前記入力画像IM1に適用する。
上記態様は、解像度の変換倍率が向きに応じて異なる場合に細線が適切に繋がった変換後画像を取得可能な画像処理方法を提供することができる。
【0031】
さらに、本技術は、上述した画像処理装置を含む複合装置、上述した印刷システムのための印刷方法、コンピューターにおいて上述した画像処理方法を実現させる画像処理プログラム、上述した印刷システムのための印刷制御プログラム、前述のいずれかの制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体、等に適用可能である。前述のいずれかの装置は、分散した複数の部分で構成されてもよい。
【0032】
(2)画像処理装置を含む印刷システムの構成の具体例:
図1は、画像処理装置を含む印刷システムの構成例を模式的に示している。図2,3は、ガウシアンフィルターを用いたぼかし処理を行ってから変換後画像を生成する例を模式的に示している。
図1に示す印刷システムSY1は、ホスト装置100とプリンター200を含み、変換後画像IM2に基づいた印刷画像IM3を媒体ME0に形成可能である。ホスト装置100は、プロセッサーであるCPU111、ROM112、RAM113、記憶装置114、入力装置115、表示装置116、通信I/F117、等を備える。ここで、CPUはCentral Processing Unitの略称であり、ROMはRead Only Memoryの略称であり、RAMはRandom Access Memoryの略称であり、I/Fはインターフェイスの略称である。前述の要素(111~117)は、電気的に接続され、互いに情報を入出力可能とされている。尚、ROM112とRAM113と記憶装置114はメモリーであり、少なくともROM112とRAM113は半導体メモリーである。
【0033】
記憶装置114は、不図示のOS、画像処理プログラムPR0、図2,3に示すぼかし処理に使用されるガウシアンフィルターF0、印刷制御プログラムPR1、等を記憶している。ここで、OSはオペレーティングシステムの略称である。記憶装置114には、フラッシュメモリー等の不揮発性半導体メモリー、ハードディスク等の磁気記憶装置、等を用いることができる。入力装置115には、ポインティングデバイス、キーボードを含むハードキー、表示パネルの表面に貼り付けられたタッチパネル、等を用いることができる。表示装置116は、表示情報に基づいて該表示情報に対応する画面を表示する。表示装置116には、液晶表示パネル等を用いることができる。通信I/F117は、プリンター200の通信I/F230に接続され、プリンター200に対して印刷データ等といった情報を入出力する。通信I/F117,230の通信は、有線でもよいし、無線でもよく、LANやインターネット等といったネットワーク通信でもよい。ここで、LANはLocal Area Networkの略称である。
【0034】
図1に示す画像処理プログラムPR0は、ぼかし処理機能FU1と解像度変換機能FU2をホスト装置100に実現させる。図1に示す印刷制御プログラムPR1は、印刷条件受付機能FU11、解像度受付機能FU12、色変換機能FU3、及び、ハーフトーン処理機能FU4をホスト装置100に実現させる。
ホスト装置100のCPU111は、記憶装置114に記憶されている情報を適宜、RAM113に読み出し、読み出したプログラムを実行することにより各種処理を行う。CPU111は、RAM113に読み出されたプログラム(PR0,PR1)を実行することにより、上述した機能(FU1~FU4,FU11,FU12)に対応する処理を行う。画像処理プログラムPR0は、コンピューターであるホスト装置100を、ぼかし処理部U1と解像度変換部U2を備える画像処理装置U0として機能させる。印刷制御プログラムPR1は、ホスト装置100を、印刷条件受付部U11、解像度受付部U12、色変換部U3、及び、ハーフトーン処理部U4として機能させる。また、画像処理プログラムPR0を実行するホスト装置100は、図9,11に例示するように、ぼかし処理工程ST1と解像度変換工程ST2を実施する。印刷制御プログラムPR1を実行するホスト装置100は、図9に例示するように、印刷条件受付工程ST11、解像度受付工程ST12、色変換工程ST3、及び、ハーフトーン処理工程ST4を実施する。上述した機能(FU1~FU4,FU11,FU12)をコンピューターに実現させるプログラム(PR0,PR1)を記憶したコンピューター読み取り可能な記録媒体は、ホスト装置の内部の記憶装置に限定されず、ホスト装置の外部の記録媒体でもよい。
【0035】
尚、ホスト装置100には、パーソナルコンピューターといったコンピューター、スマートフォンといった携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、等が含まれる。ホスト装置100は、一つの筐体内に全構成要素(111~117)を有してもよいが、互いに通信可能に分割された複数の装置で構成されてもよい。また、プリンター200の少なくとも一部がホスト装置100にあっても、本技術を実施可能である。
【0036】
図1に示すプリンター200は、色材としてCインク、Mインク、Yインク、及び、Kインクを印刷ヘッド220から噴射して印刷データに対応する印刷画像IM3を形成するインクジェットプリンターであるものとする。ここで、インクは液体の例であり、Cはシアンを意味し、Mはマゼンタを意味し、Yはイエローを意味し、Kはブラックを意味する。むろん、プリンター200は、トナーを使用するレーザープリンターといった電子写真方式のプリンター、3次元プリンター、等でもよい。印刷ヘッド220は、媒体ME0に対してCインク滴を吐出可能な複数のノズルNc、媒体ME0に対してMインク滴を吐出可能な複数のノズルNm、媒体ME0に対してYインク滴を吐出可能な複数のノズルNy、及び、媒体ME0に対してKインク滴を吐出可能な複数のノズルNkを有している。印刷ヘッド220には、インクカートリッジCc,Cm,Cy,CkからそれぞれC、M、Y、及び、Kのインクが供給される。これにより、印刷ヘッド220は、ノズルNc,Nm,Ny,NkからそれぞれC、M、Y、及び、Kのインク滴280を吐出する。インク滴280が媒体ME0に着弾すると、インクドットが媒体ME0に形成される。その結果、媒体ME0上に印刷画像IM3を有する印刷物が得られる。
媒体ME0は、特に限定されず、紙、布帛、樹脂、金属、等を含む。媒体ME0の形状は、ロール状でもよいし、カットされた2次元形状でもよいし、3次元形状でもよい。
【0037】
プリンター200は、印刷ヘッド220からのインクの吐出を制御するコントローラー210を備えている。コントローラー210は、印刷制御プログラムPR1を実行するホスト装置100とともに、変換後画像IM2に基づいた印刷画像IM3が媒体ME0に形成されるように印刷ヘッド220からのインクの吐出を制御する制御部U10を構成する。
【0038】
図2,3に示すように、入力画像IM1は、X方向及びY方向へ並んでいる複数の画素PX1を有している。X方向とY方向とは直交しているものとするが、X方向とY方向とは交差していれば直交していなくてもよい。図2,3に示す例において、X方向は第一方向D1に当て嵌められ、Y方向は第二方向D2に当て嵌められている。尚、Y方向を第一方向D1に当て嵌めてX方向を第二方向D2に当て嵌めることも可能である。図2,3には、模式的な例としての入力画像IM1において、X方向へX1個の画素PX1が並べられ、Y方向へY1個の画素PX1が並べられていることが示されている。入力画像IM1の表色系がRGBである場合、各画素PX1の画素値は、R値、G値、及び、B値の組合せとなる。ここで、Rは赤を意味し、Gは緑を意味し、Bは青を意味する。R値、G値、及び、B値は、例えば、0~255の階調値で表される。
【0039】
画像処理装置U0に含まれるぼかし処理部U1は、S1×S2の2次元のガウシアンフィルターF0を入力画像IM1に適用することによりぼかし画像IM11を生成可能である。S1×S2のガウシアンフィルターF0は、X方向において第一フィルターサイズS1を有し、Y方向において第二フィルターサイズS2を有することを意味する。第一フィルターサイズS1はX方向におけるフィルター係数KEの数を意味し、第二フィルターサイズS2はY方向におけるフィルター係数KEの数を意味する。フィルター係数KEは、カーネルとも呼ばれる。尚、ガウシアンフィルターF0が2次元であることは、第一フィルターサイズS1と第二フィルターサイズS2が共に複数であることを意味する。ぼかし処理部U1は、複数の画素PX1の中から順次、注目画素PX1tを設定し、注目画素PX1tを中心として入力画像IM1にガウシアンフィルターF0を適用することにより、ぼかし画像IM11を生成する。
ここで、ガウシアンフィルターF0のX方向における標準偏差σを標準偏差σ1とし、ガウシアンフィルターF0のY方向における標準偏差σを標準偏差σ2とする。図2,3に示すガウシアンフィルターF0は、X方向とY方向とでフィルターサイズ(S1,S2)が異なるにも関わらず、σ1=σ2であるという特徴を有する。
【0040】
画像処理装置U0に含まれる解像度変換部U2は、R1×R2の変換倍率で解像度が変換された変換後画像IM2をぼかし画像IM11から生成可能である。R1×R2の変換倍率は、X方向における解像度の変換倍率が第一変換倍率R1であり、Y方向における解像度の変換倍率が第二変換倍率R2であることを意味する。ここで、入力画像IM1の解像度がRX1×RY1dpiであり、変換後画像IM2の解像度がRX2×RY2dpiであるとする。ぼかし画像IM11の解像度は、RX1×RY1dpiである。第一変換倍率R1は、入力画像IM1及びぼかし画像IM11のX方向における解像度RX1に対する変換後画像IM2のX方向における解像度RX2の比RX2/RX1であり、0よりも大きい。第二変換倍率R2は、入力画像IM1及びぼかし画像IM11のY方向における解像度RY1に対する変換後画像IM2のY方向における解像度RY2の比RY2/RY1であり、0よりも大きい。
図2,3に示す模式的な例において、変換後画像IM2に含まれる各画素を第二画素PX2と呼ぶことにする。変換後画像IM2において、X方向へX2個の第二画素PX2が並べられ、Y方向へY2個の第二画素PX2が並べられているものとする。X方向における第一変換倍率R1はX2/X1でもあり、Y方向における第二変換倍率R2はY2/Y1でもある。
【0041】
一般に、解像度変換前のぼかし処理に用いられるガウシアンフィルターの標準偏差σは、変換倍率が小さくなるほど大きくされる。エイリアシング(モアレ)を低減するための標準偏差σの推奨値は、1/(変換倍率×π)から3/(変換倍率×π)までの範囲である。以下に例を示す。
変換倍率0.75の場合、標準偏差σの推奨値は0.42~1.27
変換倍率0.50の場合、標準偏差σの推奨値は0.64~1.91
変換倍率0.25の場合、標準偏差σの推奨値は1.27~3.82
本具体例のガウシアンフィルターF0は、変換後画像IM2における細線の繋がりや細線の太さの維持を重視し、フィルターサイズ(S1,S2)をX方向とY方向とで別々に設定することを前提として、変換倍率(R1,R2)によらず標準偏差がσ1=σ2であるという特徴を有する。また、本具体例のガウシアンフィルターF0は、変換後画像IM2の解像度を異なる複数の出力解像度REに設定可能な印刷条件C0において出力解像度REが変わることにより変換倍率(R1,R2)が変わっても標準偏差がσ1=σ2であるという特徴を有する。
【0042】
ぼかし処理部U1は、R1<1又はR1<2である場合に限定して入力画像IM1にガウシアンフィルターF0を適用してもよい。R1<1はX方向において画像が縮小されることを意味し、R2<1はY方向において画像が縮小されることを意味する。X方向とY方向の少なくとも一方において画像が縮小される前にぼかし処理が行われないと、解像度変換において反映される情報が少ない画素PX1が生じる。解像度変換時に複数の画素PX1を参照する補間演算が行われる場合でも、変換後画像IM2に含まれる第二画素PX2に対応する基準点から遠い画素PX1の画素値の重みが小さい。そこで、ぼかし処理部U1は、X方向とY方向の少なくとも一方において画像が縮小される場合にぼかし処理を行う。一方、X方向とY方向の両方において画像が縮小されない場合、解像度変換前にぼかし処理が行われなくても、解像度変換において全画素PX1の情報が反映される。そこで、ぼかし処理部U1は、R1≧1且つR2≧1である場合にぼかし処理を行わなくてもよい。解像度変換部U2は、R1≧1且つR2≧1である場合において、解像度が変換された変換後画像IM2を入力画像IM1から生成してもよい。
【0043】
解像度変換部U2は、変換後画像IM2となる複数の第二画素PX2の中から順次、注目画素PX2tを設定し、注目画素PX2tに対応する基準点を基準として複数の画素PX1を参照することにより注目画素PX2tの画素値を決定する。例えば、解像度変換部U2は、ぼかし画像IM11又は入力画像IM1において基準点を基準とした所定範囲にある複数の画素PX1の画素値を用いる補間演算を行うことにより第二画素PX2の画素値を決定する。基準点は、各第二画素PX2の画素値を決定するために、ぼかし画像IM11又は入力画像IM1に合わせられたX-Y座標平面に設定される。補間演算には、基準点を基準として最大4×4個の画素PX1を参照するバイキュービック法による補間演算を用いることができる。基準点を基準とする4×4個の参照点のうちぼかし画像IM11等の外になる参照点については、ぼかし画像IM11等の縁部にある画素PX1の画素値を有する画素がぼかし画像IM11等の外側に存在すると仮定して当該画素値を適用することにする。むろん、補間演算は、バイキュービック法による補間演算に限定されず、基準点を基準として最大2×2個の画素PX1を参照するバイリニア法による補間演算等でもよい。
【0044】
プリンター200で形成される印刷画像IM3の解像度は、X方向とY方向とで異なることがある。そこで、印刷画像IM3を形成するための変換後画像IM2の解像度は、X方向とY方向とで異なることがある。X方向とY方向とで解像度の変換倍率(R1,R2)が異なる場合、ぼかし処理が適切に行われなければ、入力画像IM1に含まれる細線が解像度変換後に途切れることがある。解像度が段階的に変わる場合、ぼかし処理が適切に行われなければ、入力画像IM1に含まれる細線の太さが解像度に応じて変わることがある。
そこで、ぼかし処理部U1は、ガウシアンフィルターF0のフィルターサイズをS1=S2に限定せず、且つ、X方向とY方向とでフィルターサイズ(S1,S2)が異なっていてもガウシアンフィルターF0の標準偏差をσ1=σ2にしている。
【0045】
図2は、横長のガウシアンフィルターF0を用いたぼかし処理を行ってから縦の変換倍率(R2)が横の変換倍率(R1)よりも大きい変換後画像IM2を生成する様子を模式的に例示している。図3は、縦長のガウシアンフィルターF0を用いたぼかし処理を行ってから横の変換倍率(R1)が縦の変換倍率(R2)よりも大きい変換後画像IM2を生成する様子を模式的に例示している。
図2に示すように、ぼかし処理部U1がフィルターサイズをS1>S2にする場合、第二変換倍率R2が第一変換倍率R1よりも大きい。このように表現するのは、R2>R1である場合に変換倍率によってはS1=S2になることがあるためである。むろん、R2>R1である場合、S1<S2とはならず、S1>S2となり得る。図3に示すように、ぼかし処理部U1がフィルターサイズをS2>S1にする場合、第一変換倍率R1が第二変換倍率R2よりも大きい。このように表現するのは、R1>R2である場合に変換倍率によってはS2=S1になることがあるためである。むろん、R1>R2である場合、S2<S1とはならず、S2>S1となり得る。いずれの場合も、ぼかし処理部U1は、第二フィルターサイズS2が第一フィルターサイズS1とは異なる場合に標準偏差σ2が標準偏差σ1に一致したフィルター係数KEを有するガウシアンフィルターF0を入力画像IM1に適用する。
【0046】
図4は、解像度の変換倍率(R1,R2)とガウシアンフィルターF0のフィルターサイズ(S1,S2)との関係の例を模式的に示している。図4に示すガウシアンフィルターF11~F15は、ガウシアンフィルターF0の具体例である。ガウシアンフィルターF13内には各フィルター係数KEとしてフィルター係数a,b,cが示され、ガウシアンフィルターF11,F15内には各フィルター係数KEとしてフィルター係数d,e,f,g,h,i,jが示されている。
ガウシアンフィルターF0において、各フィルター係数KEは、X方向(D1)とY方向(D2)の両方向に等間隔で並んでいるものとする。各フィルター係数KEの座標(x,y)は、ガウシアンフィルターF0の中心を(0,0)として、X方向において1ずつ変化し、Y方向において1ずつ変化する。例えば、7×3のガウシアンフィルターF15は座標(-3,-1)~(3,1)の範囲でフィルター係数KEを有し、3×7のガウシアンフィルターF11は座標(-1,-3)~(1,3)の範囲でフィルター係数KEを有する。
【0047】
ガウシアンフィルターF0において、X方向の標準偏差σ1とY方向の標準偏差σ2とが共に標準偏差σである場合、各フィルター係数KEの重みを示すガウス分布関数は、以下の式により表される。
【数1】

標準偏差σは、詳しくは後述するが、図8に例示するように変換後画像IM2の解像度を異なる複数の出力解像度REに設定可能な印刷条件C0に応じて設定される。設定された印刷条件C0に設定された標準偏差σがσiであるとすると、設定された印刷条件C0におけるガウス分布関数は、以下の式により表される。
【数2】

設定された印刷条件C0において出力解像度REが変わっても、ガウス分布関数に標準偏差σiが適用される。
【0048】
ガウス分布関数に従うと、3×3のガウシアンフィルターF13のフィルター係数a,b,cは、0<c<b<aとなる。7×3のガウシアンフィルターF15及び3×7のガウシアンフィルターF11のフィルター係数d,e,f,g,h,i,jは、0<j<i<h<g<f<e<dとなる。ガウシアンフィルターF11とガウシアンフィルターF15とで標準偏差σが同じである場合、ガウシアンフィルターF11,F15において太線で囲った部分のフィルター係数f,e,dの比は、ガウシアンフィルターF13のフィルター係数c,b,aの比にほぼ一致する。
f:e:d≒c:b:a
「ほぼ一致する」と表現したのは、フィルター係数KEを決定するための標準偏差σはガウシアンフィルターF11~F15で同じであっても、ガウス分布関数から正規化や整数化等といった計算によりフィルター係数KEを決定することにより誤差が生じるためである。従って、或るガウシアンフィルターの標準偏差σがフィルターサイズの異なる別のガウシアンフィルターの標準偏差σに一致していることには、フィルター係数KEから求められる標準偏差σが完全に同一であることに限定されず、フィルター係数KEから求められる標準偏差σが略同一であることが含まれる。例えば、或る標準偏差σからガウシアンフィルターF13のフィルター係数a,b,cとガウシアンフィルターF11,F15のフィルター係数d,e,f,g,h,i,jが求められる場合、これらのガウシアンフィルターの標準偏差σが同一であるといえる。
【0049】
また、ガウシアンフィルターF11~F15は、いずれも、X方向の標準偏差σ1とY方向の標準偏差σ2とが同じである。σ1=σ2であることは、ガウシアンフィルターF0の中心を通ってX方向へ並べられたフィルター係数KEと、ガウシアンフィルターF0の中心を通ってY方向へ並べられたフィルター係数KEと、が標準偏差σ=σ1=σ2から求められることを意味する。従って、標準偏差σ2が標準偏差σ1に一致していることには、フィルター係数KEから求められる標準偏差σ1,σ2が完全に同一であることに限定されず、フィルター係数KEから求められる標準偏差σ1,σ2が略同一であることが含まれる。これは、標準偏差σをσ1=σ2にしてガウス分布関数から正規化や整数化等といった計算によりフィルター係数KEを決定することにより誤差が生じるためである。例えば、7×3のガウシアンフィルターF15において或る標準偏差σ=σ1=σ2からX方向へ並んだフィルター係数i,g,e,d,e,g,iとY方向へ並んだフィルター係数e,d,eが求められる場合、標準偏差σ2が標準偏差σ1に一致するといえる。
【0050】
図4に示すガウシアンフィルターF0のフィルターサイズ(S1,S2)は、以下のように設定されている。
X方向の第一変換倍率R1が1よりも小さい場合、X方向の第一フィルターサイズS1は、第一変換倍率の逆数1/R1よりも大きい最小の奇数に設定される。Y方向の第二変換倍率R2が1よりも小さい場合、Y方向の第二フィルターサイズS2は、第二変換倍率の逆数1/R2よりも大きい最小の奇数に設定される。
【0051】
例えば、R1=0.5である場合、1/R1=2であるので、S1=3となる。R1=0.3である場合、1/R1=3.3であるので、S1=5となる。R1=0.15である場合、1/R1=6.7であるので、S1=7となる。同様に、R2=0.5である場合はS2=3となり、R2=0.3である場合はS2=5となり、R2=0.15である場合はS2=7となる。
【0052】
図12は、参考として、σ=1であるときのガウシアンフィルターF11~F14のフィルター係数KEを模式的に例示している。各ガウシアンフィルターF0において全フィルター係数KEの総和は100%であり、各フィルター係数KEは小数点以下1桁の百分率で示されている。図示していないが、7×3のガウシアンフィルターF15の各フィルター係数KEは、3×7のガウシアンフィルターF11の各フィルター係数KEを90°回転させた値となる。
例えば、3×7のガウシアンフィルターF11のフィルター係数f:e:d=6.6%:10.9%:18.0%は、3×3のガウシアンフィルターF13のフィルター係数c:b:a=7.5%:12.4%:20.4%にほぼ一致する。
【0053】
図5は、横長のガウシアンフィルターF0を用いたぼかし処理を行ってから縦の変換倍率(R2)が横の変換倍率(R1)よりも大きい変換後画像IM2を生成する場合における各画像の様子を模式的に例示している。入力画像IM1には、X方向(D1)に沿った細い線L1、及び、Y方向(D2)に沿った細い線L2が含まれている。これらの線L1,L2は、黒のように周囲よりも濃い色であり、十字状に交差している。
ガウシアンフィルターF0のフィルターサイズがS1>S2である場合、X方向のぼかし範囲がY方向のぼかし範囲よりも広い。横長のガウシアンフィルターF0を入力画像IM1に適用することにより得られるぼかし画像IM11において、Y方向に沿った線L2は、X方向に沿った線L1と比べて、より薄く、より広がった線となる。このぼかし画像IM11の解像度がR2>R1である変換倍率で変換されると、X方向に沿った線L1の太さとY方向に沿った線L2の太さとが揃う。
【0054】
図示していないが、縦長のガウシアンフィルターF0を用いたぼかし処理を行ってから横の変換倍率(R1)が縦の変換倍率(R2)よりも大きい変換後画像IM2を生成する場合も、同様のことがいえる。ガウシアンフィルターF0のフィルターサイズがS2>S1である場合、Y方向のぼかし範囲がX方向のぼかし範囲よりも広い。縦長のガウシアンフィルターF0を入力画像IM1に適用することにより得られるぼかし画像IM11において、X方向に沿った線L1は、Y方向に沿った線L2と比べて、より薄く、より広がった線となる。このぼかし画像IM11の解像度がR1>R2である変換倍率で変換されると、X方向に沿った線L1の太さとY方向に沿った線L2の太さとが揃う。
【0055】
図6は、X方向(D1)よりもY方向(D2)に近い向きの細線を有する入力画像IM1に縦長のガウシアンフィルターF0を用いたぼかし処理を行ってから解像度が変換された変換後画像IM2を模式的に例示している。入力画像IM1に含まれる細線は、黒のように周囲よりも濃い色である。解像度の変換倍率は、縦の変換倍率(R2)が横の変換倍率(R1)よりも小さい。図6の左側には、前述の入力画像IM1に3×3のガウシアンフィルターを適用してから0<R1<1/3(例えばR1=0.25)の解像度変換により得られる変換後画像IM92が例示されている。
変換後画像IM92に含まれる斜めの線L90は、破線状に途切れている。これは、解像度変換時にY方向において入力画像IM1に含まれる一部の画素PX1の情報がほとんど欠落するためである。尚、3×3のガウシアンフィルターの代わりに7×7といった大きいフィルターサイズのガウシアンフィルターを入力画像IM1に適用すると、X方向においてぼかし範囲が広くなり過ぎてぼけ過ぎ、変換後画像IM2の画質が低下する。
【0056】
一方、3×7のガウシアンフィルターF0を用いたぼかし処理を行ってから解像度が変換された変換後画像IM2に含まれる斜めの線L0は、繋がっている。これは、解像度変換時にY方向において入力画像IM1に含まれる画素PX1の情報の欠落が抑制されるためである。
図示していないが、Y方向(D2)よりもX方向(D1)に近い向きの細線を有する入力画像IM1に横長のガウシアンフィルターF0を用いたぼかし処理を行ってからR1<R2の解像度変換が行われる場合も、同様のことがいえる。得られる変換後画像IM2に含まれる斜めの線L0は、繋がりが確保される。これは、解像度変換時にX方向において入力画像IM1に含まれる画素PX1の情報の欠落が抑制されるためである。
【0057】
図7は、Y方向の解像度を変えても標準偏差σ1=σ2が変わらないS1×S2のガウシアンフィルターF0を入力画像IM1に適用するぼかし処理を行ってから得られる変換後画像IM2を模式的に例示している。図13は、比較例として、一般的な推奨値に従って解像度が低いほど標準偏差σが大きくなる正方形状のガウシアンフィルターを入力画像IM1に適用するぼかし処理を行ってから得られる変換後画像IM2を模式的に例示している。尚、入力画像IM1には、Y方向(D2)に沿った細線が含まれている。入力画像IM1に含まれる縦の細線は、黒のように周囲よりも濃い色である。
図13に示す比較例では、Y方向の解像度がX方向の解像度以下となると、Y方向の解像度が低くなるほど縦の線L92が薄くなって太くなっている。一方、図7に示すようにY方向の解像度を変えても標準偏差σ1=σ2が変わらないS1×S2のガウシアンフィルターF0が用いられると、Y方向の解像度が変わっても線L2の太さはほぼ変わらず、線L2の濃さもほぼ変わらない。図示していないが、X方向の解像度を変えても標準偏差σ1=σ2が変わらないS1×S2のガウシアンフィルターF0が用いられると、X方向に沿った線の太さはほぼ変わらず、線の濃さもほぼ変わらない。
【0058】
尚、平滑化フィルターとしては、フィルター係数が全て同じ移動平均フィルターが知られている。フィルター係数が全て同じということは、移動平均フィルターの中心からX方向及びY方向に1ずれた座標のフィルター係数のみならず、例えば、移動平均フィルターの中心から斜めに21/2≒1.4の距離ずれた座標のフィルター係数等も同じ値ということを意味する。このため、移動平均フィルターが入力画像IM1に適用されると、斜めの成分が強調され過ぎ、変換後画像IM2の画質が低下することになる。
上述したガウシアンフィルターF0はY方向(D2)の標準偏差σ2がX方向(D1)の標準偏差σ1と一致しているので、X方向とY方向におけるぼかし効果が適度であるうえ、X方向とY方向との間の斜め方向におけるぼかし効果も適度である。
【0059】
ガウシアンフィルターF0の標準偏差σ1,σ2は、図8に例示するように変換後画像IM2の解像度を異なる複数の出力解像度REに設定可能な印刷条件C0に応じて設定される。図8は、各印刷条件C0に紐付けられた標準偏差σiを模式的に例示している。図8に示す標準偏差σiはあくまでも例であり、各印刷条件C0に紐付けられる標準偏差σiは適宜変更可能である。
印刷条件C0が設定されると、印刷条件C0に紐付けられた標準偏差σi、又は、σiから調整された標準偏差を標準偏差σ1,σ2としてガウシアンフィルターF0が入力画像IM1に適用される。
【0060】
図8に示す標準偏差σiは、媒体ME0又は入力画像IM1の種類に応じて設けられている。図8は、印刷条件C0となり得る複数の候補を示しているともいえる。
【0061】
媒体ME0の観点において、図8に示す複数の候補は、布、普通紙、及び、写真用紙を含んでいる。布には標準偏差σiとして0.5が紐付けられ、普通紙には標準偏差σiとして1.5が紐付けられ、写真用紙には標準偏差σiとして2.0が紐付けられている。写真用紙の標準偏差σi=2.0をデフォルトとすると、普通紙は、写真用紙よりも滲み易く、少しシャープな絵作りが求められるため、標準偏差σiが1.5と少し小さくされている。布は、普通紙よりも滲み易く、よりシャープな絵作りが求められるため、標準偏差σiが0.5とさらに小さくされている。
例えば、普通紙が第一媒体ME1に当て嵌められると、普通紙よりもインクが滲み難いのは写真用紙であるため、写真用紙が第二媒体ME2に当て嵌まる。この場合、第一媒体ME1に印刷画像IM3を形成する第一の媒体候補CM1に普通紙が当て嵌まり、第二媒体ME2に印刷画像IM3を形成する第二の媒体候補CM2に写真用紙が当て嵌まる。尚、布が第一媒体ME1に当て嵌められると、普通紙又は写真用紙が第二媒体ME2に当て嵌まる。
【0062】
入力画像IM1の観点において、図8に示す複数の候補は、「線画」並びに「自然画像及びグラフィック」を含んでいる。「線画」には標準偏差σiとして1.0が紐付けられ、「自然画像及びグラフィック」には標準偏差σiとして2.0が紐付けられている。「線画」は、「自然画像及びグラフィック」よりも線画のシャープさを優先するため、標準偏差σiが1.0と小さくされている。「自然画像及びグラフィック」は、階調の滑らかさとシャープさとのバランスをとるため、標準偏差σiが2.0と大きくされている。
以上より、入力画像IM1に含まれる線画のシャープさを優先する第一の画像候補C11に「線画」が当て嵌まり、入力画像IM1の階調性を優先する第二の画像候補C12に「自然画像及びグラフィック」が当て嵌まる。
【0063】
図8に示すいずれの印刷条件C0も、出力解像度REを600×300dpi、600×600dpi、600×900dpi、…と変更可能である。出力解像度REが変更されても、ガウシアンフィルターF0に適用される標準偏差σ1=σ2=σiは、変わらない。例えば、印刷条件C0として「線画」が設定されてガウシアンフィルターF0に標準偏差σi=1.0が適用される場合、出力解像度REを600×300dpi、600×600dpi、600×900dpi、…と変わっても、適用される標準偏差σi=1.0は変わらない。ここで、600×300dpi、600×600dpi、600×900dpi、…の内、互いに異なる複数の出力解像度を第一出力解像度RE1及び第二出力解像度RE2とする。図8に示すように、600×300dpiが第一出力解像度RE1が当て嵌められると、600×600dpi、600×900dpi、…のいずれかが第二出力解像度RE2に当て嵌められる。図8では、600×900dpiが第二出力解像度RE2に当て嵌められていることが示されている。
【0064】
(3)印刷制御処理の具体例:
図9は、入力画像IM1に基づいて解像度が変換された変換後画像IM2に対応する印刷画像IM3をプリンター200に形成される印刷制御処理を模式的に例示している。図10は、印刷制御処理のステップS102において表示されるUI画面500を模式的に例示している。ここで、UIは、ユーザーインターフェイスの略称である。図11は、印刷制御処理のステップS110において行われるぼかし画像生成処理を模式的に例示している。以下、図1~8も参照して、印刷制御処理を説明する。
本具体例の印刷制御処理は、図1に示すホスト装置100で行われる。印刷制御処理は、印刷画像IM3をプリンター200に形成させるためのユーザー操作をホスト装置100が入力装置115において受け付けた時に開始する。ここで、ステップS102~S104は、印刷条件受付工程ST11、解像度受付工程ST12、印刷条件受付部U11、解像度受付部U12、印刷条件受付機能FU12、及び、解像度受付機能FU12に対応している。ステップS104,S108~S110は、ぼかし処理工程ST1、ぼかし処理部U1、及び、ぼかし処理機能FU1に対応している。ステップS106,S112は、解像度変換工程ST2、解像度変換部U2、及び、解像度変換機能FU2に対応している。ステップS114は、色変換工程ST3、色変換部U3、及び、色変換機能FU3に対応している。ステップS116は、ハーフトーン処理工程ST4、ハーフトーン処理部U4、及び、ハーフトーン処理機能FU4に対応している。以下、「ステップ」の記載を省略し、括弧内にステップの符号を示すことがある。
【0065】
印刷制御処理が開始すると、ホスト装置100は、図10に示すUI画面500を表示装置116において表示する(S102)。UI画面500は、媒体種類選択欄501、画像種類選択欄502、推奨標準偏差表示欄503、標準偏差調整領域504、標準偏差入力欄505、解像度選択欄506、OKボタン507、等を有している。
【0066】
「メディアの種類」と示されている媒体種類選択欄501において、ホスト装置100は、布、普通紙、写真用紙、等の媒体候補の中からいずれか一つの種類の設定を受け付ける。ユーザーは、媒体種類選択欄501を入力装置115で操作することにより、複数の媒体候補の中からいずれか一つの種類を選択可能である。「画像の種類」と示されている画像種類選択欄502において、ホスト装置100は、線画、自然画像、等の画像候補の中からいずれか一つの種類の設定を受け付ける。ユーザーは、画像種類選択欄502を入力装置115で操作することにより、複数の画像候補の中からいずれか一つの種類を選択可能である。媒体種類選択欄501と画像種類選択欄502は、印刷条件C0の設定を複数の候補の中から受け付ける印刷条件受付部U11に対応している。選択された媒体候補と選択された画像候補との組合せは、設定された印刷条件C0に当て嵌まる。ホスト装置100は、例えば、選択された媒体候補に紐付けられている標準偏差σiと、選択された画像候補に紐付けられている標準偏差σiと、のうち小さい方の標準偏差σiを推奨標準偏差表示欄503と標準偏差入力欄505に表示させる。UI画面500において、標準偏差σは「ぼかし量」と示されている。図8に示す例において、普通紙に標準偏差σi=1.5が紐付けられ、線画に標準偏差σi=1.0が紐付けられているので、普通紙と線画が選択されると推奨標準偏差表示欄503と標準偏差入力欄505に標準偏差σi=1.0が表示される。
【0067】
図10に示す標準偏差調整領域504は、横向きのスライダーバーとスライダーとで構成されるスライダーコントロールを有している。標準偏差調整領域504において、ホスト装置100は、入力装置115によるスライダーの操作を受け付けることにより、ガウシアンフィルターF0に適用される標準偏差σを推奨の標準偏差σiから増減させる。ホスト装置100は、スライダーの位置に応じた標準偏差σを標準偏差入力欄505に表示させる。この標準偏差入力欄505において、ホスト装置100は、ガウシアンフィルターF0に適用される標準偏差σの入力を入力装置115により受け付ける。
以上のようにして、ホスト装置100は、入力画像IM1に適用するガウシアンフィルターF0の標準偏差σを設定する操作をUI画面500において受け付ける。
【0068】
「印刷解像度」と示されている解像度選択欄506において、ホスト装置100は、600×300dpi、600×600dpi、600×900dpi、等の出力解像度REの中から出力解像度の設定を受け付ける。ユーザーは、解像度選択欄506を入力装置115で操作することにより、複数の出力解像度REの中からいずれか一つの出力解像度を選択可能である。解像度選択欄506は、変換後画像IM2の解像度を異なる複数の出力解像度REに設定可能な印刷条件C0において複数の出力解像度REの中から変換後画像IM2の解像度の設定を受け付ける解像度受付部U12に対応している。
【0069】
ホスト装置100は、OKボタン507の操作を入力装置115により受け付けると、設定された印刷条件C0、設定された出力解像度、及び、設定された標準偏差σを取得してRAM113と記憶装置114の少なくとも一方に保持する(図9のS104)。印刷条件C0は、媒体種類選択欄501において設定された媒体ME0と、画像種類選択欄502において設定された画像と、の組合せである。
【0070】
次いで、ホスト装置100は、解像度変換前後の解像度RX1,RY1,RX2,RY2(図2,3参照)に基づいて、X方向の第一変換倍率R1=RX2/RX1とY方向の第二変換倍率R2=RY2/RY1を算出する(S106)。
変換倍率(R1,R2)の算出後、ホスト装置100は、R1<1又はR2<1であるか否かを判断する(S108)。ホスト装置100は、R1<1又はR2<1である場合、図11に示すぼかし画像生成処理を行い(S110)、その後、処理をS112に進める。従って、ぼかし処理部U1は、変換倍率(R1,R2)の少なくとも一方が1よりも小さい場合においてぼかし画像IM11を生成することになる。ホスト装置100は、R1≧1且つR2≧1である場合、ぼかし画像生成処理を行わずに処理をS112に進める。従って、解像度変換部U2は、変換倍率(R1,R2)が共に1以上である場合において、当該変換倍率(R1,R2)で解像度が変換された変換後画像IM2を入力画像IM1から生成することになる。
【0071】
図11に示すぼかし画像生成処理が開始すると、ホスト装置100は、X方向の第一フィルターサイズS1とY方向の第二フィルターサイズS2(図2,3参照)を算出する(S202)。R1<1である場合、ホスト装置100は、第一フィルターサイズS1を第一変換倍率の逆数1/R1よりも大きい最小の奇数に設定する。R2<1である場合、ホスト装置100は、第二フィルターサイズS2を第二変換倍率の逆数1/R2よりも大きい最小の奇数に設定する。フィルターサイズ(S1,S2)は、図4に示すように、X方向とY方向とで別々に設定される。
ここで、図2に示すようにフィルターサイズがS1>S2である場合、ぼかし画像IM11から変換後画像IM2への変換倍率がR2>R1となる入力画像IM1にガウシアンフィルターF0が適用される。図3に示すようにフィルターサイズがS2>S1である場合、ぼかし画像IM11から変換後画像IM2への変換倍率がR1>R2となる入力画像IM1にガウシアンフィルターF0が適用される。
【0072】
フィルターサイズ(S1,S2)の算出後、ホスト装置100は、UI画面500において受け付けた標準偏差σを標準偏差σ1,σ2(σ1=σ2)としたフィルター係数KEを有するガウシアンフィルターF0を設定する(S204)。ホスト装置100は、ガウシアンフィルターF0を生成する場合、フィルターサイズ(S1,S2)に応じたガウス分布関数f(x,y)の値を上記式(1)に従って算出し、得られた各値を正規化することにより各フィルター係数KEを算出する。図8に示すように印刷条件C0に紐付けられている標準偏差σiが設定されている場合、ホスト装置100は、フィルターサイズ(S1,S2)に応じたガウス分布関数f(x,y)の値を上記式(2)に従って算出すればよい。
また、ホスト装置100は、標準偏差σ=σ1=σ2に応じて異なる複数のガウシアンフィルターF0を予め記憶装置114に記憶しておき、UI画面500において受け付けた標準偏差σが適用されているガウシアンフィルターを複数のガウシアンフィルターF0の中から選択してもよい。
【0073】
その後、ホスト装置100は、ぼかし画像IM11となる複数の画素PX1の中から注目画素PX1tを設定する(S206)。この処理は、ぼかし画像IM11に合わせられたX-Y座標平面において注目画素PX1tの座標を設定する処理とすることができる。
【0074】
次いで、ホスト装置100は、注目画素PX1tを中心として入力画像IM1にガウシアンフィルターF0を適用するフィルター演算を行う(S208)。尚、入力画像IM1の表色系がRGBである場合、各画素PX1の画素値はR値、G値、及び、B値の組合せである。
ここで、ガウシアンフィルターF0に含まれるS1×S2個のフィルター係数KEをKtとし、入力画像IM1においてフィルター係数Ktに合わせられる画素PX1の画素値をPtとする。ぼかし画像IM11における画素PX1の画素値をQとすると、フィルター演算は、以下の式に従って行われる。
【数3】

注目画素PX1tを中心とするS1×S2個のフィルター係数Ktのうち入力画像IM1の外になるフィルター係数については、入力画像IM1の縁部にある画素PX1の画素値を有する画素が入力画像IM1の外側に存在すると仮定して当該画素値を適用することにする。入力画像IM1の表色系がRGBである場合、ホスト装置100は、R値、G値、及び、B値のそれぞれについて画素値Qを算出する。
【0075】
画素値Qの算出後、ホスト装置100は、画素値Qを算出していない未処理の画素PX1が有るか否かに応じて処理を分岐させる(S210)。未処理の画素PX1が有る場合、ホスト装置100は、S206~S210の処理を繰り返す。これにより、ぼかし画像IM11となる全ての画素PX1に画素値Qが算出される。全ての画素PX1に画素値Qを有するぼかし画像IM11が生成されると、ホスト装置100は、ぼかし画像生成処理を終了させる。
以上のようにして、ぼかし処理部U1は、X方向とY方向とでフィルターサイズ(S1,S2)が異なっていても標準偏差σ2が標準偏差σ1に一致したフィルター係数KEを有するガウシアンフィルターF0を入力画像IM1に適用する。ガウシアンフィルターF0の標準偏差σ=σ1=σ2は、図10に示すUI画面500において設定された標準偏差である。図8に示すように印刷条件C0に紐付けられている標準偏差σiが設定されている場合、ぼかし処理部U1は、印刷条件C0に紐付けられた標準偏差σiを標準偏差σ1,σ2としてガウシアンフィルターF0を入力画像IM1に適用する。
【0076】
また、図10に示すUI画面500において、印刷条件C0が変わらなければ、解像度選択欄506において出力解像度が変更されても、ガウシアンフィルターF0に適用される標準偏差σは変わらない。図8を参照して説明すると、ぼかし処理部U1は、第二出力解像度RE2が受け付けられた場合に入力画像IM1に適用するガウシアンフィルターF0の標準偏差σ1,σ2を、第一出力解像度RE1が受け付けられた場合に入力画像IM1に適用するガウシアンフィルターF0の標準偏差σ1,σ2に一致させることになる。図8に示すように媒体ME0の種類に紐付けられている標準偏差σiが設定される場合、ぼかし処理部U1は、第二の媒体候補CM2が受け付けられた場合に入力画像IM1に適用するガウシアンフィルターF0の標準偏差σ1,σ2を、第一の媒体候補CM1が受け付けられた場合に入力画像IM1に適用するガウシアンフィルターF0の標準偏差σ1,σ2よりも大きくする。図8に示すように入力画像IM1の種類に紐付けられている標準偏差σiが設定される場合、ぼかし処理部U1は、第二の画像候補C12が受け付けられた場合に入力画像IM1に適用するガウシアンフィルターF0の標準偏差σ1,σ2を、第一の画像候補C11が受け付けられた場合に入力画像IM1に適用するガウシアンフィルターF0の標準偏差σ1,σ2よりも大きくする。
【0077】
ぼかし画像生成処理の終了後、ホスト装置100は、図9のS106で算出された変換倍率(R1,R2)となるように解像度が変換された変換後画像IM2をぼかし画像IM11から生成する解像度変換処理を行う(図9のS112)。尚、入力画像IM1に含まれる線等のエッジがぼかし画像生成処理により弱くなるので、入力画像IM1の種類によってはS110とS112の間でエッジを強調するシャープネス処理をホスト装置100が行ってもよい。S110のぼかし画像生成処理が行われなかった場合、ホスト装置100は、S112において、S106で算出された変換倍率(R1,R2)となるように解像度が変換された変換後画像IM2を入力画像IM1から生成する解像度変換処理を行う。ホスト装置100は、基準点を基準として最大4×4個の画素PX1を参照するバイキュービック法による補間演算等により、ぼかし画像IM11又は入力画像IM1から変換後画像IM2を生成することができる。
【0078】
変換後画像IM2の生成後、ホスト装置100は、変換後画像IM2を、C、M、Y、及び、Kの例えば28階調の整数値を有するインク量データに変換する色変換処理を行う(S114)。S114の色変換処理は、例えば、R、G、及び、Bの各階調値とC、M、Y、及び、Kの各階調値との対応関係が規定された色変換ルックアップを参照しながら各第二画素PX2のR値、G値、及び、B値をインク量データに変換する処理とすることができる。
【0079】
次いで、ホスト装置100は、インク量データを構成する各画素の階調値に対して所定のハーフトーン処理を行うことにより前記階調値の階調数を減らし、ハーフトーンデータを生成する(S116)。ハーフトーン処理には、ディザ法によるハーフトーン処理、誤差拡散法によるハーフトーン処理、濃度パターン法によるハーフトーン処理、等を用いることができる。ハーフトーンデータは、画素の単位でドットの形成状態を表し、ドットの形成有無を表す2値データでもよいし、小中大の各ドットといった異なるサイズのドットに対応可能な3階調以上の多値データでもよい。
【0080】
その後、ホスト装置100は、ハーフトーンデータをプリンター200に送信することにより、変換後画像IM2に基づいた印刷画像IM3をプリンター200に形成させ(S118)、印刷制御処理を終了させる。ハーフトーンデータを受信したプリンター200は、ハーフトーンデータに基づいて印刷画像IM3が媒体ME0に形成されるように印刷ヘッド220からインク滴を吐出させる。
以上のようにして、色変換部U3とハーフトーン処理部U4を含む制御部U10は、変換後画像IM2に基づいた印刷画像IM3が媒体ME0に形成されるように印刷ヘッド220からのインクの吐出を制御する。
【0081】
尚、プリンター200がハーフトーン処理を実行可能である場合、ホスト装置100はインク量データをプリンター200に送信し、インク量データを受信したプリンター200がハーフトーン処理を行ってもよい。プリンター200が色変換処理も実行可能である場合、ホスト装置100は変換後画像IM2をプリンター200に送信し、変換後画像IM2を受信したプリンター200が色変換処理を行ってもよい。
【0082】
上述した印刷制御処理が行われると、X方向とY方向とで解像度の変換倍率(R1,R2)が異なる場合に細線が適切に繋がった変換後画像IM2に基づいた印刷画像IM3が形成される。また、設定された印刷条件C0において出力解像度REが変わっても適度なぼかし効果を得ながら印刷画像IM3の線の幅を揃えることができる。
【0083】
図2に示すように変換倍率がR2>R1である場合にフィルターサイズがS1>S2であるガウシアンフィルターF0が入力画像IM1に適用されると、以下の効果が得られる。
X方向のぼかし範囲がY方向のぼかし範囲よりも広いため、Y方向よりもX方向に近い向きの細線L0の繋がりが確保される。また、Y方向のぼかし範囲がX方向のぼかし範囲よりも狭いため、Y方向においてぼけ過ぎない。さらに、ガウシアンフィルターF0においてY方向の標準偏差σ2がX方向の標準偏差σ1と一致しているので、X方向とY方向におけるぼかし効果が適度であるうえ、X方向とY方向との間の斜め方向におけるぼかし効果も適度である。設定された印刷条件C0においてY方向における解像度が変わらない場合にX方向における解像度が変わる場合、X方向の解像度によらずY方向のぼかし範囲は一定であるため、X方向に沿った細線L2の太さが確保される。
【0084】
図3に示すように変換倍率がR1>R2である場合にフィルターサイズがS2>S1であるガウシアンフィルターF0が入力画像IM1に適用されると、以下の効果が得られる。
Y方向のぼかし範囲がX方向のぼかし範囲よりも広いため、図6に示すように、X方向よりもY方向に近い向きの細線の繋がりが確保される。また、X方向のぼかし範囲がY方向のぼかし範囲よりも狭いため、X方向においてぼけ過ぎない。さらに、ガウシアンフィルターF0においてX方向の標準偏差σ1がY方向の標準偏差σ2と一致しているので、Y方向とX方向におけるぼかし効果が適度であるうえ、Y方向とX方向との間の斜め方向におけるぼかし効果も適度である。設定された印刷条件C0においてX方向における解像度が変わらない場合にY方向における解像度が変わる場合、X方向のぼかし範囲がY方向のぼかし範囲よりも狭いため、図7に示すように、Y方向に沿った細線L2が太くなり過ぎず、X方向においてぼけ過ぎない。これにより、Y方向に沿った細線L2が薄くなり過ぎない。
設定された印刷条件C0においてY方向における解像度が変わらない場合にX方向における解像度が変わる場合も、類似する効果が得られる。
【0085】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、ぼかし処理部U1及び解像度変換部U2は、プリンター200に設けられてもよい。従って、図9に示す印刷制御処理は、プリンター200が行ってもよい。
印刷制御処理を行う主体は、CPUに限定されず、ASIC等といったCPU以外の電子部品でもよい。ここで、ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。むろん、複数のCPUが協働して印刷制御処理を行ってもよいし、CPUと他の電子部品(例えばASIC)とが協働して印刷制御処理を行ってもよい。
【0086】
入力画像IM1の表色系は、RGBに限定されず、CMY、CMYK、等でもよい。ぼかし画像IM11及び変換後画像IM2の表色系は、入力画像IM1の表色系に合わせられる。
【0087】
上述した処理は、順番を入れ替える等、適宜、変更可能である。例えば、図9に示す印刷制御処理からS108の判断処理を無くし、R1≧1且つR2≧1であってもS110のぼかし画像生成処理を画像処理装置U0が行ってもよい。
ガウシアンフィルターF0のフィルターサイズ(S1,S2)は、図11のS202に示される算出値に限定されない。例えば、X方向の第一フィルターサイズS1は、第一変換倍率の逆数1/R1よりも大きい最小の奇数に2を加えた数等、第一変換倍率の逆数1/R1よりも大きい最小の奇数よりも大きい数でもよい。Y方向の第二フィルターサイズS2は、第二変換倍率の逆数1/R2よりも大きい最小の奇数に2を加えた数等、第二変換倍率の逆数1/R2よりも大きい最小の奇数よりも大きい数でもよい。
【0088】
図10に示すUI画面500において、推奨標準偏差表示欄503、標準偏差調整領域504、及び、標準偏差入力欄505の少なくとも一部は、無くてもよい。設定された印刷条件C0に紐付けられた標準偏差σiが標準偏差σ1,σ2としてガウシアンフィルターF0に適用されることにより、印刷条件C0に応じた高画質の印刷画像を得る効果が得られる。
【0089】
尚、X方向とY方向とでフィルターサイズ(S1,S2)が異なる場合にガウシアンフィルターF0の標準偏差(σ1,σ2)がX方向とY方向とで同じであれば、解像度の変換倍率が向きに応じて異なる場合に細線が適切に繋がった変換後画像を取得可能であるという基本的な効果が得られる。この基本的な効果は、出力解像度に応じて異なる標準偏差σがガウシアンフィルターに適用される場合でも得られる。
【0090】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、解像度の変換倍率が向きに応じて異なる場合に細線が適切に繋がった変換後画像を取得可能な技術等を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0091】
100…ホスト装置、200…プリンター、220…印刷ヘッド、500…UI画面、C0…印刷条件、C11…第一の画像候補、C12…第二の画像候補、CM1…第一の媒体候補、CM2…第二の媒体候補、D1…第一方向、D2…第二方向、F0…ガウシアンフィルター、KE…フィルター係数、L0,L1,L2…線、IM1…入力画像、IM2…変換後画像、IM3…印刷画像、IM11…ぼかし画像、ME0…媒体、ME1…第一媒体、ME2…第二媒体、PR0…画像処理プログラム、PR1…印刷制御プログラム、PX1…画素、PX1t…注目画素、PX2…第二画素、R1…第一変換倍率、R2…第二変換倍率、RE…出力解像度、RE1…第一出力解像度、RE2…第二出力解像度、S1…第一フィルターサイズ、S2…第二フィルターサイズ、ST1…ぼかし処理工程、ST2…解像度変換工程、ST3…色変換工程、ST4…ハーフトーン処理工程、ST11…印刷条件受付工程、ST12…解像度受付工程、SY1…印刷システム、U0…画像処理装置、U1…ぼかし処理部、U2…解像度変換部、U3…色変換部、U4…ハーフトーン処理部、U10…制御部、U11…印刷条件受付部、U12…解像度受付部、σ,σ1,σ2…標準偏差。
図1
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