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特開2024-32160防音シートの製造方法、および防音シート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032160
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】防音シートの製造方法、および防音シート
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/162 20060101AFI20240305BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20240305BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240305BHJP
   D06M 17/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G10K11/162
G10K11/168
B32B5/26
D06M17/00 B
D06M17/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135664
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】矢島 英明
(72)【発明者】
【氏名】大川 裕太
【テーマコード(参考)】
4F100
4L032
5D061
【Fターム(参考)】
4F100AJ01A
4F100AJ01B
4F100AJ04A
4F100AJ04B
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100BA02
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG17A
4F100DG17B
4F100EC03
4F100EJ42A
4F100EJ42B
4F100EJ50
4F100JA04
4F100JH01
4F100YY00A
4F100YY00B
4L032AA03
4L032AA05
4L032AA07
4L032AB04
4L032AC01
4L032BD01
4L032BD03
4L032DA00
4L032EA00
5D061AA02
5D061AA07
5D061AA22
5D061BB21
5D061DD11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内部構造を簡便に制御する防音シートの製造方法および該製造方法による防音シートを提供する。
【解決手段】防音シートの製造方法は、天然繊維である複数の第1繊維と、第1芯部および第1芯部を被覆し、第1の融点を有する第1被覆層を含む複数の第2繊維と、が混合されたウェブを作製する第1堆積工程S12と、ウェブを加熱して、第1被覆層を溶融させる加熱工程S13と、第1被覆層が溶融した状態にてウェブに所定の圧縮力を印加する加圧工程S15と、所定の圧縮力を印加したまま、ウェブを冷やして第1被覆層を固化させる加圧冷却工程S16と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維である複数の第1繊維と、第1芯部および前記第1芯部を被覆し、第1の融点を有する第1被覆層を含む複数の第2繊維と、が混合された第1堆積繊維体を作製する第1堆積工程と、
前記第1堆積繊維体を加熱して、前記第1被覆層を溶融させる加熱工程と、
前記第1被覆層が溶融した状態にて前記第1堆積繊維体に所定の圧縮力を印加する加圧工程と、
前記所定の圧縮力を印加したまま、前記第1堆積繊維体を冷やして前記第1被覆層を固化させる加圧冷却工程と、を有することを特徴とする防音シートの製造方法。
【請求項2】
天然繊維である複数の第1繊維と、第1芯部および前記第1芯部を被覆し、第1の融点を有する第1被覆層を含む複数の第2繊維と、が混合された第1堆積繊維体を作製する第1堆積工程と、
複数の前記第1繊維と、第2芯部および前記第2芯部を被覆し、前記第1の融点より高い第2の融点を有する第2被覆層を含む複数の第3繊維と、が混合された第2堆積繊維体を作製する第2堆積工程と、
前記第1堆積繊維体と前記第2堆積繊維体とを重ねて加熱して、前記第1被覆層および前記第2被覆層を溶融させる加熱工程と、
重ねられた前記第1堆積繊維体と前記第2堆積繊維体とを、前記第1の融点以上前記第2の融点未満の温度に冷却して、前記第1被覆層を固化させずに前記第2被覆層を固化させる冷却工程と、
重ねられた前記第1堆積繊維体と前記第2被覆層が固化した前記第2堆積繊維体とに所定の圧縮力を印加する加圧工程と、
前記所定の圧縮力を印加したまま、前記第1堆積繊維体と前記第2堆積繊維体とを、前記第1の融点未満の温度に冷やして、前記第1被覆層および前記第2被覆層が固化した状態とする加圧冷却工程と、を有することを特徴とする防音シートの製造方法。
【請求項3】
前記第1繊維は、セルロース繊維であり、
前記第1繊維の平均繊維長は、10μm以上50mm以下であり、
前記第2繊維において、前記第1芯部はポリエチレンテレフタレートであり、前記第1被覆層はポリエチレンであり、
前記第2繊維の平均繊維長は、100μm以上5mm以下である、請求項1に記載の防音シートの製造方法。
【請求項4】
前記第1堆積繊維体において、前記第1繊維の含有量に対する前記第2繊維の含有量は、12.0質量%以上40.0質量%以下である、請求項3に記載の防音シートの製造方法。
【請求項5】
前記第1繊維は、セルロース繊維であり、
前記第1繊維の平均繊維長は、10μm以上50mm以下であり、
前記第2繊維において、前記第1芯部はポリエチレンテレフタレートであり、前記第1被覆層はポリエチレンであり、
前記第3繊維において、前記第2芯部はポリエチレンテレフタレートであり、前記第2被覆層はポリエチレンであり、
前記第2繊維および前記第3繊維の平均繊維長は、100μm以上5mm以下である、請求項2に記載の防音シートの製造方法。
【請求項6】
前記第1の融点と前記第2の融点との差は、3℃以上である、請求項5に記載の防音シートの製造方法。
【請求項7】
前記第1堆積繊維体において、前記第1繊維の含有量に対する前記第2繊維の含有量は、12.0質量%以上40.0質量%以下であり、
前記第2堆積繊維体において、前記第1繊維の含有量に対する前記第3繊維の含有量は、12.0質量%以上40.0質量%以下である、請求項6に記載の防音シートの製造方法。
【請求項8】
前記加圧工程において、前記所定の圧縮力による圧縮率は10%以上である、請求項1または請求項2に記載の防音シートの製造方法。
【請求項9】
前記加圧工程は、加圧部を用いて行われ、
前記加圧部は、第1加圧部と第2加圧部とを有し、
前記第1加圧部と前記第2加圧部との間で前記圧縮力が印加され、
前記加圧冷却工程は、加圧冷却部を用いて行われ、
前記加圧冷却部は、第1加圧冷却部と第2加圧冷却部とを有し、
前記第1加圧冷却部と前記第2加圧冷却部との間で、前記圧縮力の印加と冷却とが行われる請求項8に記載の防音シートの製造方法。
【請求項10】
前記第1加圧部は、第1制御部を有し、
前記第2加圧部は、第2制御部を有し、
前記第1加圧冷却部は、第3制御部を有し、
前記第2加圧冷却部は、第4制御部を有し、
前記第1制御部、前記第2制御部、前記第3制御部、および前記第4制御部は、第5制御部によって制御される、請求項9に記載の防音シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の防音シートの製造方法にて製造されることを特徴とする防音シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音シートの製造方法、および防音シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロース繊維などの天然繊維と樹脂とを含む防音シートが知られていた。例えば、特許文献1には、天然繊維および合成樹脂などを含み、厚さ方向において各材料の含有量が変化する板状の繊維基材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-48475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の繊維基材では、内部構造を簡便に制御することが難しいという課題があった。詳しくは、各材料の含有量の比が変化する構造を形成するために、含有量の比が徐々に変わるように各材料を堆積させて繊維集積物を作製している。この方法は、タクトタイムの増加や製造工程の複雑化に繋がり易く、製造コストに影響を及ぼす場合があった。すなわち、内部構造を簡便に制御する防音シートの製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
防音シートの製造方法は、天然繊維である複数の第1繊維と、第1芯部および前記第1芯部を被覆し、第1の融点を有する第1被覆層を含む複数の第2繊維と、が混合された第1堆積繊維体を作製する第1堆積工程と、前記第1堆積繊維体を加熱して、前記第1被覆層を溶融させる加熱工程と、前記第1被覆層が溶融した状態にて前記第1堆積繊維体に所定の圧縮力を印加する加圧工程と、前記所定の圧縮力を印加したまま、前記第1堆積繊維体を冷やして前記第1被覆層を固化させる加圧冷却工程と、を有することを特徴とする。
【0006】
防音シートの製造方法は、天然繊維である複数の第1繊維と、第1芯部および前記第1芯部を被覆し、第1の融点を有する第1被覆層を含む複数の第2繊維と、が混合された第1堆積繊維体を作製する第1堆積工程と、複数の前記第1繊維と、第2芯部および前記第2芯部を被覆し、前記第1の融点より高い第2の融点を有する第2被覆層を含む複数の第3繊維と、が混合された第2堆積繊維体を作製する第2堆積工程と、前記第1堆積繊維体と前記第2堆積繊維体とを重ねて加熱して、前記第1被覆層および前記第2被覆層を溶融させる加熱工程と、重ねられた前記第1堆積繊維体と前記第2堆積繊維体とを、前記第1の融点以上前記第2の融点未満の温度に冷却して、前記第1被覆層を固化させずに前記第2被覆層を固化させる冷却工程と、重ねられた前記第1堆積繊維体と前記第2被覆層が固化した前記第2堆積繊維体とに所定の圧縮力を印加する加圧工程と、前記所定の圧縮力を印加したまま、前記第1堆積繊維体と前記第2堆積繊維体とを、前記第1の融点未満の温度に冷やして、前記第1被覆層および前記第2被覆層が固化した状態とする加圧冷却工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
防音シートは、上記防音シートの製造方法にて製造されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る防音シートの模式拡大図。
図2図1における線分A-Aの断面図。
図3図1における線分B-Bの断面図。
図4】防音シートの製造方法を示すフロー図。
図5】防音シートの製造装置の構成を示す模式図。
図6】防音シートの製造方法を示す模式図。
図7】加圧部および加圧冷却部などの構成を示すブロック図。
図8】防音シートの製造方法を示す模式図。
図9】防音シートの製造方法を示す模式図。
図10】防音シートの製造方法を示す模式図。
図11】防音シートの密度による遮音特性を示すグラフ。
図12】第2実施形態に係る防音シートの低密度な領域の模式拡大図。
図13図12における線分C-Cの断面図。
図14】防音シートの製造方法を示すフロー図。
図15】防音シートの製造方法を示す模式図。
図16】防音シートの製造方法を示す模式図。
図17】防音シートの製造方法を示す模式図。
図18】防音シートの製造方法を示す模式図。
図19】防音シートの内部構造による吸音特性を示すグラフ。
図20】第3実施形態に係る防音シートの製造方法を示す模式図。
図21】防音シートの製造方法を示す模式図。
図22】防音シートの製造方法を示す模式図。
図23】防音シートの製造方法を示す模式図。
図24】第4実施形態に係る防音シートの製造方法を示す模式図。
図25】防音シートの製造方法を示す模式図。
図26】防音シートの製造方法を示す模式図。
図27】防音シートの製造方法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に述べる実施の形態では、天然繊維などを含む防音シートSおよびその製造方法を例示し、図面を参照して説明する。以下の各図においては、必要に応じて座標軸であるXYZ軸を付し、矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。+Z方向を上方、-Z方向を下方ということもある。なお、図5において-Z方向は鉛直方向と一致する。また、図示の便宜上、各部材の大きさを実際とは異ならせている。防音シートSの製造装置10において、第1堆積繊維体であるウェブW1や防音シートSなどの搬送方向の先を下流、搬送方向を遡る側を上流ということもある。ウェブW1などや防音シートSにおいて、厚さとはZ軸に沿う距離であり、厚さ方向とはZ軸に沿う方向である。
【0010】
1.第1実施形態
本実施形態に係る防音シートSは、後述する防音シートSの製造方法にて製造される。図1に示すように、防音シートSは、原料として複数の第1繊維23Aと複数の第2繊維23Bとを含む。複数の第1繊維23Aと複数の第2繊維23Bとは、特定の方向に配向せず、互いに絡み合っている。第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点、および第2繊維23B同士の接点は、第2繊維23Bの後述する第1被覆層232によって結着されている。
【0011】
第1繊維23Aにおいて、第2繊維23Bとの接点は概ね1個以上である。第2繊維23Bにおいて、第1繊維23Aまたは他の第2繊維23Bとの接点も概ね1個以上である。第1繊維23A同士の接点は結着されないが、該接点も概ね1個以上である。このように、防音シートSでは、複数の第1繊維23Aと複数の第2繊維23Bとが互いに接し合っている。
【0012】
防音シートSは、上記の形態に由来する柔軟性および強度を備える。防音シートSの用途としては、住宅、オフィス、店舗、工場、および音楽スタジオの防音材、自動車、船舶、および飛行機などの乗り物の遮音材などが挙げられる。
【0013】
第1繊維23Aは天然繊維である。本実施形態では、第1繊維23Aとしてセルロース繊維を適用する。セルロース繊維は、植物由来であって、比較的に豊富な天然素材であり、比較的に安価かつ容易に入手することができる。
【0014】
セルロース繊維は、紙、段ボール、パルプ、パルプシート、大鋸屑、鉋屑、および木材などの原料に解繊処理を施すことによって得られる。セルロース繊維は、主としてセルロースで形成されたものであるが、セルロース以外の成分を含んでもよい。セルロース以外の成分としては、例えば、ヘミセルロース、リグニンなどが挙げられる。
【0015】
第1繊維23Aの平均繊維長は、10μm以上50mm以下であることが好ましく、20μm以上5mm以下であることがより好ましい。これによれば、複数の第1繊維23Aおよび複数の第2繊維23Bが絡まり易くなり、防音シートSの強度などの機械的特性を向上させることができる。第1繊維23Aおよび第2繊維23Bの平均繊維長は、ステープルダイヤグラム法により測定される。
【0016】
図2に示すように、第2繊維23Bは、第1芯部231および第1芯部231を被覆する第1被覆層232を含む。第1被覆層232は、熱可塑性を備え、第1の融点を有する。第1被覆層232は、後述する防音シートSの製造工程の加熱によって溶融する。図2では、第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点が、溶融して固化した第1被覆層232によって結着された状態を示している。
【0017】
第1芯部231は有機繊維である。有機繊維としては、例えば、上述したセルロース繊維などの天然繊維、およびポリエステル、レーヨンなどの合成繊維が挙げられる。本実施形態では、第1芯部231としてポリエチレンテレフタレートを適用する。ポリエチレンテレフタレートは、結晶性に由来して比較的に耐熱性が高く、ペットボトルから再利用し易いなどの利点を備える。
【0018】
第1被覆層232は熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポチエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリル樹脂、およびポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。本実施形態では、第1被覆層232としてポリエチレンを適用する。ポリエチレンは、製造段階で平均分子量を容易に変えることが可能であり、融点を比較的自由に設定できる。
【0019】
第1被覆層232の第1の融点は、第1芯部231の融点より約20℃低いことが好ましい。これにより、防音シートSの製造時に、第1芯部231を溶融させずに、第1被覆層232を溶融させることが容易になる。第1被覆層232の融点は、100℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上150以下であることがより好ましい。第1被覆層232および後述する第2被覆層234の融点は、JIS K 0064:1992(化学製品の融点及び溶融範囲測定方法)により測定される。
【0020】
第2繊維23Bの平均繊維長、すなわち第1芯部231の平均繊維長は、100μm以上5mm以下であることが好ましく、特に1mm程度であることがより好ましい。これによれば、複数の第1繊維23Aに複数の第2繊維23Bが絡まり易くなり、防音シートSの強度などの機械的特性を向上させることができる。
【0021】
第1芯部231の直径D1と第1被覆層232の厚さE1との比は、例えば、0.2以上2.0以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることがより好ましい。これにより、防音シートSの製造時の加熱工程において、第1芯部231の変形を抑えて第1被覆層232を溶融、固化させることができる。
【0022】
図3に示すように、第1被覆層232は、第2繊維23B同士の接点も結着させる。第2繊維23B同士の接点は、製造工程の加熱により、溶融して固化した互いの第1被覆層232によって結着される。上述した第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点、および第2繊維23B同士の接点は、第1被覆層232によって結着されるため、防音シートSの形状が維持され易くなる。また、防音シートSの防音特性や強度が向上する。
【0023】
図4に示すように、本実施形態に係る防音シートSの製造方法は、第1混合工程S11、第1堆積工程S12、加熱工程S13、冷却工程S14、加圧工程S15、加圧冷却工程S16、および裁断工程S17を有する。防音シートSの製造方法では、上流の第1混合工程S11から下流の裁断工程S17まで、上記の順に各工程を経て防音シートSが製造される。なお、本発明の防音シートの製造方法は、第1堆積工程S12、加熱工程S13、加圧工程S15、および加圧冷却工程S16を含み、その他の工程は上記に限定されるものではない。また、本発明の防音シートは、加圧冷却工程S16が完了し、裁断工程S17が未了の状態でロール状に巻き取られて保管、販売されてもよい。
【0024】
防音シートSの製造方法の具体例について防音シートSの製造装置10と共に説明する。本実施形態に係る防音シートSの製造装置10は一例であり、これに限定されない。
【0025】
図5に示すように、製造装置10には、上流から下流に向かって、混合部11、堆積部100、ウェブ搬送部120、加湿部130、加熱部140、加圧冷却部160、裁断部170、および保管部であるトレイ180が備わる。図示を省略するが、製造装置10には、上記各構成の稼働を統合的に制御する装置制御部も備わる。なお、詳細は後述するが、製造装置10において、冷却工程S14および加圧工程S15を行う加圧部は、加圧冷却工程S16を行う加圧冷却部160が兼ねている。
【0026】
混合部11では第1混合工程S11が行われる。混合部11は、第1繊維23Aおよび第2繊維23Bなどを空気中で混合して第1混合物を生成する。混合部11は、管状の本体部60、本体部60に接続されるホッパー13,14、供給管61,62、バルブ65,66を含む。
【0027】
ホッパー13は、供給管61を介して本体部60の内部に連通する。供給管61において、バルブ65はホッパー13と本体部60との間に設けられる。ホッパー13は第1繊維23Aを本体部60内へ供給する。バルブ65は、ホッパー13から本体部60に供給される第1繊維23Aの質量を調整する。
【0028】
ホッパー14は、供給管62を介して本体部60の内部に連通する。供給管62において、バルブ66はホッパー14と本体部60との間に設けられる。ホッパー14は、第2繊維23Bを本体部60内へ供給する。バルブ66は、ホッパー14から本体部60に供給される第2繊維23Bの質量を調整する。バルブ65,66により、第1繊維23Aと第2繊維23Bの混合比が調整される。
【0029】
詳しくは、第1繊維23Aと第2繊維23Bとを含む第1混合物は、後述する堆積部100において第1堆積繊維体であるウェブW1と成る。ウェブW1において、第1繊維23Aの含有量に対する第2繊維23Bの含有量は、12.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましく、14.0質量%以上25.0質量%以下であることがより好ましい。これにより、第2繊維23Bの第1被覆層232の含有量を抑えながら、防音シートSの強度などの機械的特性を向上させることができる。
【0030】
ここで、第2繊維23Bは、別途公知の装置によって作製されたものがホッパー14へ供給される。また、ホッパー14の上流に加熱混錬機などを配置して、加熱混錬機にて作製される第2繊維23Bがホッパー14に供給されてもよい。加熱混錬機では、第1芯部231に第1被覆層232が形成される。
【0031】
なお、第1繊維23Aや第2繊維23Bの第1芯部231として、古紙や古布などに解繊処理を施して作製した繊維を用いてもよい。また、ホッパー13,14の何れかから添加剤も供給して、ウェブW1に含有させてもよい。添加剤としては、例えば、着色剤、難燃剤、防虫剤、防カビ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集抑制剤、および離型剤などが挙げられる。
【0032】
第1繊維23Aおよび第2繊維23Bなどは、本体部60内を堆積部100に搬送されながら混合されて第1混合物と成る。本体部60における第1混合物の生成の促進、および第1混合物の搬送性向上のために、本体部60に気流を発生させるブロアーなどを配置してもよい。第1混合物は本体部60を介して堆積部100へ搬送される。そして第1堆積工程S12へ進む。
【0033】
堆積部100では第1堆積工程S12が行われる。堆積部100は、第1混合物を空気中で堆積させて、複数の第1繊維23Aと複数の第2繊維23Bとが混合されたウェブW1を作製する。堆積部100はドラム部101を含む。堆積部100は、下方が開放された略箱状であって、内部の上方にドラム部101が配置される。堆積部100は、第1混合物を本体部60からドラム部101の内部に取り込み、乾式にてメッシュベルト122に堆積させる。
【0034】
堆積部100の下方には、メッシュベルト122およびサクション機構110を含むウェブ搬送部120が配置される。サクション機構110は、Z軸に沿う方向において、メッシュベルト122を挟んでドラム部101と対向する。
【0035】
ドラム部101は、図示しないモーターによって回転駆動される円柱状の篩である。円柱状のドラム部101の側面には、篩の機能を有する網が設けられる。ドラム部101は、篩の網の目開きの大きさより小さい繊維や第1混合物などの粒子を、内部から外側に通過させる。第1混合物は、ドラム部101によって絡み合った繊維がほぐされて、堆積部100内の空気中に分散される。
【0036】
第1繊維23Aおよび第2繊維23Bなどが堆積部100内の空気中に分散されて、メッシュベルト122上にランダムに堆積する。そのため、ウェブW1では第1繊維23Aや第2繊維23Bが特定の方向に配向し難くなる。
【0037】
ドラム部101の篩は、第1混合物中の大きな繊維などを選別する機能を備えなくてもよい。すなわち、ドラム部101は、第1混合物の繊維をほぐして、第1混合物の全てを堆積部100の内部に放出してもよい。堆積部100内の空気中に分散された第1混合物は、重力とサクション機構110の吸引によって、メッシュベルト122の上方に堆積する。
【0038】
ウェブ搬送部120は、メッシュベルト122およびサクション機構110を備える。ウェブ搬送部120は、サクション機構110によって、第1混合物のメッシュベルト122への堆積を促進させる。また、ウェブ搬送部120は、第1混合物から形成されるウェブW1を、メッシュベルト122の回動により下流へ搬送する。
【0039】
サクション機構110はドラム部101の下方に配置される。サクション機構110は、メッシュベルト122が有する複数の穴を介して、堆積部100内の空気を吸引する。これにより、ドラム部101の外側に放出された第1混合物は、空気と共に下方に吸引されてメッシュベルト122の上方の面に堆積する。サクション機構110には、ブロアーなどの公知の吸引装置が採用される。
【0040】
メッシュベルト122の複数の穴は、空気を通し、第1混合物に含まれる第1繊維23Aや第2繊維23Bなどを通し難い。メッシュベルト122は、無端ベルトであって、3つの張架ローラー121によって張り架けられる。
【0041】
メッシュベルト122は、張架ローラー121の自転によって、上方が下流に向かって移動する。換言すれば、メッシュベルト122は、図5において時計回りに回動する。メッシュベルト122が張架ローラー121によって回動されることにより、連続的に第1混合物が堆積してウェブW1が形成される。ウェブW1は、空気を比較的に多く含み、柔らかく膨らんでいる。ウェブW1は、メッシュベルト122の移動に伴って下流へ搬送される。
【0042】
3つの張架ローラー121のうち、最も+X方向に配置される張架ローラー121の下方には、スクレイパー123が付設される。スクレイパー123は、ウェブW1を搬送し終えたメッシュベルト122の表面に接触する。メッシュベルト122は回動しながらスクレイパー123と接触することにより、表面に残留する第1混合物が除去される。
【0043】
堆積部100の下流には加湿部130が配置される。加湿部130は、メッシュベルト122上のウェブW1に水を噴霧して加湿する。これにより、ウェブW1に含まれる第1繊維23Aや第2繊維23Bなどの飛散や発塵が抑えられる。また、加湿に用いる水に水溶性の添加剤などを含ませて、加湿と並行して添加剤をウェブW1に含侵させてもよい。
【0044】
ウェブW1はメッシュベルト122によって下流へ搬送され、メッシュベルト122から剥離される。そして、加熱部140の搬送ローラー147によって加熱部140の熱放射部143の内部に引き込まれる。そして加熱工程S13へ進む。
【0045】
第1堆積工程S12にて作製されたウェブW1に対して、以下に述べる加熱工程S13から加圧冷却工程S16までを連続的に実施することが好ましい。加熱工程S13は加熱部140を用いて行われる。加熱部140は、内部に引き込んだウェブW1を第2繊維23Bの第1被覆層232の第1の融点以上に加熱して、第1被覆層232を溶融させる。これにより、ウェブW1は溶融繊維体となる。加熱部140は、熱源部141、熱放射部143、および送風部145を有する。
【0046】
熱放射部143は、略箱状であって、内部の上方に熱源部141および送風部145を格納する。熱放射部143の下方では、-X方向から+X方向へウェブW1が搬送される。
【0047】
熱源部141は、熱放射部143の上方に配置され、送風部145を挟んでウェブW1と対向する。熱源部141は熱放射部143内にて下方へ向かって熱を放射する。熱源部141は、例えば、赤外線ヒーターなどの加熱装置である。なお、加熱部140は、ホットプレートなどのようにウェブW1と接触して加熱する構成や、熱風循環式の恒温槽であってもよい。
【0048】
送風部145は、熱源部141が発生させる熱を、熱放射部143内の下方を移動するウェブW1まで送風によって搬送する。ウェブW1は、熱放射部143内を搬送されながら非接触で加熱される。そのため、ウェブW1において、温度の偏りが発生し難くなり、加熱不足や熱の偏在による劣化などを抑えることができる。なお、ウェブW1は、搬送ローラー147に代えて、無端ベルトなどによって熱放射部143内を搬送されてもよい。
【0049】
上記の構成により、図6に示すように、熱放射部143内は加熱温度T1まで昇温される。加熱工程S13におけるウェブW1の加熱温度T1は、第1繊維23Aの融点と、第2繊維23Bの第1芯部231の融点、および第1被覆層232の第1の融点によって適宜設定される。すなわち、加熱部140にて、ウェブW1の加熱温度T1は、第1被覆層232の第1の融点以上、第1繊維23Aの融点未満、かつ第1芯部231の融点未満とする。例えば、第1芯部231の融点が260℃、および第1被覆層232の融点が125℃である場合に、加熱温度T1を190℃とする。
【0050】
ここで、ウェブW1は、第1繊維23Aおよび第2繊維23Bなどが混合および堆積されて成る。そのため、加熱部140に到達するウェブW1は、加圧されておらず、比較的に空気を多く含み密度が低い状態にある。密度が比較的に低い状態でウェブW1を加熱することにより、加熱の効率が向上して加熱に要するエネルギーを削減することができる。そして冷却工程S14へ進む。
【0051】
図5に戻り、冷却工程S14は加圧冷却部160を用いて行われる。加圧冷却部160は、第1加圧冷却部161と第2加圧冷却部162とを有する。加圧冷却部160は、ウェブW1を第1加圧冷却部161と第2加圧冷却部162との間に挟んで冷却および加圧を行う機能を有する。加圧冷却部160は、例えば、ウェブW1を冷却しながら加圧することが可能なプレス装置である。
【0052】
第1加圧冷却部161と第2加圧冷却部162とは、上下方向に対向して配置される。第1加圧冷却部161の下方を向く面、すなわち下面と、第2加圧冷却部162の上方を向く面、すなわち上面とは、略平面に形成され、図示しない冷却機構によって雰囲気温度よりも低い温度に冷却される。ウェブW1は、第1加圧冷却部161の下面、および第2加圧冷却部162の上面に接触することによって冷却される。
【0053】
ここで、図7に示すように、製造装置10は加圧部150と加圧冷却部160とを備えてもよい。すなわち、加圧部150にて冷却工程S14および加圧工程S15を行い、加圧部150とは異なる別体の加圧冷却部160にて加圧冷却工程S16を行ってもよい。
【0054】
上記の場合には、加圧部150は、第1加圧部151と第2加圧部152とを有する。加圧部150は、加圧冷却部160と同様に、ウェブW1を冷却しながら加圧することが可能なプレス装置である。
【0055】
第1加圧部151と第2加圧部152とは、加圧冷却部160と同様に、上下方向に対向して配置される。第1加圧部151の下方を向く面と、第2加圧部152の上方を向く面とは、略平面に形成され、図示しない冷却機構によって雰囲気温度よりも低い温度に冷却される。ウェブW1は、第1加圧部151の下面、および第2加圧部152の上面に接触することによって冷却される。
【0056】
第1加圧部151は第1制御部153を有し、第2加圧部152は第2制御部154を有する。第1加圧冷却部161は第3制御部163を有し、第2加圧冷却部162は第4制御部164を有する。図示を省略するが、第1制御部153、第2制御部154、第3制御部163,および第4制御部164は、各々、CPU(Central Processing Unit)、システムバス、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含む。
【0057】
図示を省略するが、第1制御部153、第2制御部154、第3制御部163,および第4制御部164は、各々、冷却機構を備える。冷却機構には、公知の冷却装置が適用される。本実施形態では、冷却機構としてペルチェ素子を適用する。公知の冷却装置は冷風装置であってもよい。
【0058】
第1制御部153、第2制御部154、第3制御部163,および第4制御部164は、第5制御部210と電気的に接続され、第5制御部210によって統合的に制御される。第5制御部210は、製造装置10に対する外部機器200に備わる。すなわち、加圧部150のプレス装置および冷却機構と、加圧冷却部160のプレス装置および冷却機構とは、外部機器200の第5制御部210によって制御される。外部機器200は、例えば、パーソナルコンピューターなどの情報端末機器である。
【0059】
これによれば、第5制御部210によって、第1加圧部151、第2加圧部152、第1加圧冷却部161、および第2加圧冷却部162が個別に制御されるため、プレス圧や後述する冷却温度T2,T3を精密かつ統合的に制御することができる。
【0060】
なお、第1制御部153、第2制御部154、第3制御部163,および第4制御部164は、温度測定機能を有してもよい。これによれば、ウェブW1の温度や各々の表面温度を第5制御部210に送信して、より精密にウェブW1の冷却温度T2,T3を制御することができる。
【0061】
また、第1制御部153、第2制御部154、第3制御部163、および第4制御部164は、加圧装置と冷却装置とを別体で備えていてもよい。その場合には、プレス装置と冷風装置などとを併用してもよい。また、加圧部150、または加圧冷却部160は、冷却機構を備えた一対の加圧ローラーであってもよい。
【0062】
以上に述べたように、製造装置10は加圧部150と加圧冷却部160とを備えてもよい。本実施形態では、上述したように加圧冷却部160に加圧部150を統合して、加圧部150の機能を加圧冷却部160に担わせている。
【0063】
より具体的には、図8に示すように、第1加圧冷却部161と第2加圧冷却部162との間にウェブW1を挟む。このとき、第1加圧冷却部161の下面とウェブW1の上方の面とを接触させ、第2加圧冷却部162の上面とウェブW1の下方の面とを接触させる。第1加圧冷却部161および第2加圧冷却部162とウェブW1とは触れるだけに留め、ウェブW1に圧縮力は印加しない。ウェブW1の熱が第1加圧冷却部161および第2加圧冷却部162に伝播して、ウェブW1が冷却される。
【0064】
冷却工程S14において、ウェブW1が冷却される温度、すなわち冷却温度T2は、第1被覆層232の第1の融点を超える温度を下限とする。すなわち、第1被覆層232が溶融したまま、次工程の加圧工程S15へ移行させる。詳しくは後述するが、防音シートSの内部構造を比較的に高密度とする場合には、冷却工程S14を省いてもよい。そして加圧工程S15へ進む。
【0065】
加圧工程S15も加圧冷却部160を用いて行われる。加圧工程S15では、第2繊維23Bの第1被覆層232が溶融した状態にてウェブW1に所定の圧縮力を印加する。詳しくは、図9に示すように、第1加圧冷却部161と第2加圧冷却部162とのZ軸に沿う距離を縮めて、第1加圧冷却部161と第2加圧冷却部162との間でウェブW1に圧縮力を印加する。
【0066】
このとき、第1加圧冷却部161および第2加圧冷却部162がウェブW1と接する各表面は、冷却温度T2に保たれている。そのため、ウェブW1では第2繊維23Bの第1被覆層232の溶融が維持される。
【0067】
これにより、上述した第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点、および第2繊維23B同士の接点の結着は進行し難い。そのため、ウェブW1の機械的強度は低く、印加される圧縮力によって上下方向に圧縮され易く、比較的に高密度な内部構造と成る。
【0068】
上記所定の圧縮力によるウェブW1の上下方向の厚さの圧縮率は、10%以上であることが好ましい。これによれば、防音シートSの密度が増大するため、防音特性のうちの遮音特性を向上させることができる。また、上記圧縮率を調整することによって、防音シートSの密度を変えることができる。すなわち、圧縮率を増大させると防音シートSの密度が大きくなり、圧縮率を減少させると密度が小さくなる。防音シートSの密度と遮音特性との関係については後述する。そして加圧冷却工程S16へ進む。
【0069】
加圧冷却工程S16も加圧冷却部160を用いて行われる。図10に示すように、加圧冷却工程S16では、加圧工程S15の所定の圧縮力を印加したまま、ウェブW1を冷却温度T3まで冷やす。すなわち、第1加圧冷却部161と第2加圧冷却部162との間で、圧縮力の印加と冷却とが行われる。加圧冷却工程S16におけるウェブW1の冷却温度T3は、第1被覆層232の第1の融点未満の温度とする。これにより、第1被覆層232が固化して、第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点、および第2繊維23B同士の接点が、固化した第1被覆層232によって結着されて、結着繊維体である防音シートSと成る。加圧冷却工程S16を経た防音シートSは連続帳票状である。そして裁断工程S17へ進む。
【0070】
図5に戻り、裁断工程S17は裁断部170を用いて行われる。裁断部170は、連続帳票状の防音シートSを所望の形状に裁断する。図示を省略するが、裁断部170は縦刃と横刃とを含む。
【0071】
縦刃は、例えば、連続帳票状の防音シートSをX軸に沿って切断する。横刃は、例えば、連続帳票状の防音シートSをY軸に沿って切断する。これにより、略矩形の板状の防音シートSが製造されてトレイ180に収容される。
【0072】
なお、上述した冷却工程S14にて、ウェブW1の冷却温度T2を、第1被覆層232の第1の融点未満として、比較的に低密度なシートSを製造してもよい。詳しくは、ウェブW1の温度が、第1の融点未満となるまで冷却工程S14を継続して行って、第1被覆層232を固化させる。これにより、ウェブW1において第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点、および第2繊維23B同士の接点が第1被覆層232によって結着される。
【0073】
そのため、冷却工程S14に続く加圧工程S15および加圧冷却工程S16において、ウェブW1は印加される圧縮力に抗して圧縮され難くなる。そのため加圧工程S15などにおいてウェブW1の上下方向の厚さの圧縮率は比較的に低くなり、比較的に低密度な防音シートSを製造することが可能となる。すなわち、冷却工程S14におけるウェブW1の冷却温度T2を調整することによっても、防音シートSの密度を容易に調整することができる。
【0074】
ここで、防音シートSの密度と防音特性のうちの遮音特性との関係について説明する。図11は、防音シートSの密度および厚さを変えた試料に対して、周波数を変化させながら音波を当てた際の、透過損失の変化を示している。図11では、横軸が音波の周波数[Hz]であり、縦軸が透過損失[dB]である。透過損失は遮音特性の1つの指標であって、値が大きい程に音波が透過し難く、遮音特性に優れる。
【0075】
図11において、水準a,dは密度を0.05g/cm3とした試料であり、水準b,eは密度を0.10g/cm3とした試料であり、水準c,fは密度を0.15g/cm3とした試料である。水準a,b,cの厚さは20mmとし、水準d,e,fの厚さは40mmとした。
【0076】
理論値1は1000g/m2条件にて算出された線分であり、理論値2は2000g/m2条件にて算出された線分であり、理論値3は4000g/m2条件にて算出された線分であり、理論値4は6000g/m2条件にて算出された線分である。
【0077】
図11に示すように、およそ300Hzから2000Hzの間において、各水準に遮音特性の差が表れている。総じて密度が高く、厚さが厚い方が遮音特性に優れることが分かる。
【0078】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0079】
防音シートSにおいて、内部構造を簡便に制御することができる。詳しくは、ウェブW1の冷却温度T2を調節することによって、ウェブW1の圧縮率を変えて、防音シートSの厚さおよび密度を容易に変えることが可能となる。すなわち、内部構造を簡便に制御する防音シートSの製造方法、および該製造方法にて製造される防音シートSを提供することができる。
【0080】
2.第2実施形態
本実施形態に係る防音シートSは、後述する本実施形態の防音シートSの製造方法にて製造される。本実施形態の防音シートSは、第1実施形態の防音シートSに対して、第1堆積繊維体であるウェブW1と第2堆積繊維体であるウェブW2とから成る点が異なる。以下、第1実施形態と重複する構成については説明を省略する。なお、本実施形態の防音シートSの製造方法においても、上述した製造装置10を用いる。以下の説明では第1実施形態の図5も参照することとする。
【0081】
本実施形態の防音シートSは、後述するウェブW1に由来する高密度な領域L2と、ウェブW2に由来する低密度な領域L1を有する。高密度な領域L2は、第1実施形態の防音シートSにおける比較的に高密度な内部構造と同様な形態を有する。
【0082】
図12に示すように、本実施形態の防音シートSが有する低密度な領域L1は、原料として複数の第1繊維23Aと複数の第3繊維23Cとを含む。複数の第1繊維23Aと複数の第3繊維23Cとは、特定の方向に配向せず、互いに絡み合っている。第1繊維23Aと第3繊維23Cとの接点、および第3繊維23C同士の接点は、第3繊維23Cの後述する第2被覆層234によって結着されている。
【0083】
第1繊維23Aにおいて、第3繊維23Cとの接点は概ね1個以上である。第3繊維23Cにおいて、第1繊維23Aまたは他の第3繊維23Cとの接点も概ね1個以上である。第1繊維23A同士の接点は結着されないが、該接点は概ね1個以上である。以上のように、低密度な領域L1でも、複数の第1繊維23Aと複数の第3繊維23Cとが互いに接し合っている。
【0084】
図13に示すように、第3繊維23Cは、第2芯部233および第2芯部233を被覆する第2被覆層234を含む。第2被覆層234は、熱可塑性を備え、第2の融点を有する。第2被覆層234は、後述する本実施形態の防音シートSの製造工程の加熱によって溶融する。図13では、第1繊維23Aと第3繊維23Cとの接点が、溶融して固化した第2被覆層234によって結着された状態を示している。なお、図示を省略するが、第3繊維23C同士の接点は、第2被覆層234によって結着されている。
【0085】
第2芯部233は有機繊維である。有機繊維としては、例えば、上述した第1芯部231と同様なものが挙げられる。本実施形態では、第2芯部233としてポリエチレンテレフタレートを適用する。
【0086】
第2被覆層234は熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、上述した第1被覆層232と同様なものが挙げられる。本実施形態では、第2被覆層234としてポリエチレンを適用する。
【0087】
第2被覆層234の第2の融点は、第1被覆層232の第1の融点より高い。第2の融点と第1の融点との差は3℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましい。これにより、後述する防音シートSの製造時の冷却工程において、第1被覆層232を溶融させたまま、第2被覆層234を容易に固化させることができる。
【0088】
また、第2の融点は、第2芯部233の融点より約20℃低いことが好ましい。これにより、防音シートSの製造時に、第2芯部233を溶融させずに、第2被覆層234を溶融させることが容易になる。第2被覆層234の融点は、110℃以上210℃以下であることが好ましく、110℃以上160℃以下であることがより好ましい。
【0089】
第3繊維23Cの平均繊維長、すなわち第2芯部233の平均繊維長は、100μm以上5mm以下であることが好ましく、特に1mm程度であることがより好ましい。これによれば、複数の第1繊維23Aに複数の第3繊維23Cが絡まり易くなり、防音シートSの強度などの機械的特性を向上させることができる。
【0090】
第2芯部233の直径D2と第2被覆層234の厚さE2との比は、例えば、0.2以上2.0以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることがより好ましい。これにより、防音シートSの製造時の加熱工程において、第2芯部233の変形を抑えて第2被覆層234を溶融、固化させることができる。
【0091】
図14に示すように、本実施形態に係る防音シートSの製造方法は、ウェブW1を作製する第1混合工程S11および第1堆積工程S12と、ウェブW2を作製する第2混合工程S21および第2堆積工程S22とを含む。また、防音シートSの製造方法は、ウェブW1およびウェブW2を作製した後の後工程として、加熱工程S23、冷却工程S24、加圧工程S25、加圧冷却工程S26、および裁断工程S27を有する。なお、防音シートSの製造方法は、上記の構成に限定されない。
【0092】
第1混合工程S11および第1堆積工程S12は、第1実施形態と同様に行う。本実施形態では、上述した第1混合工程S11と後工程の第1堆積工程S12とを実施してウェブW1を作製し、これらと並行して或いはこれらの後に、第2混合工程S21と後工程の第2堆積工程S22とを実施してウェブW2を作製する。
【0093】
ウェブW1は、上述した製造装置10において、加熱部140の手前にてロール状に巻き取られてもよく、加熱部140および加圧冷却部160をスキップして裁断部170にて単票状のウェブW1に加工されてもよい。
【0094】
第2混合工程S21は、混合部11にて行われる。第2混合工程S21は、第1混合工程S11の第2繊維23Bを第3繊維23Cに代えた他は、第1混合工程S11と同様にして行う。第2混合工程S21により、複数の第1繊維23Aと複数の第3繊維23Cとが混合された第2混合物が作製される。
【0095】
第2混合物は、堆積部100において第2堆積繊維体であるウェブW2と成る。ウェブW2において、第1繊維23Aの含有量に対する第3繊維23Cの含有量は、12.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましく、14.0質量%以上25.0質量%以下であることがより好ましい。これにより、第3繊維23Cの第2被覆層234の含有量を抑えながら、防音シートSの強度などの機械的特性を向上させることができる。
【0096】
ここで、第3繊維23Cは、別途公知の装置によって作製されたものがホッパー14へ供給される。また、ホッパー14の上流に加熱混錬機などを配置して、加熱混錬機にて作製される第3繊維23Cがホッパー14に供給されてもよい。加熱混錬機では、第2芯部233に第2被覆層234が形成される。
【0097】
なお、第3繊維23Cの第2芯部233として、古紙や古布などに解繊処理を施して作製した繊維を用いてもよい。また、ホッパー13,14の何れかから添加剤も供給して、ウェブW2に含有させてもよい。添加剤としては、例えば、着色剤、難燃剤、防虫剤、防カビ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集抑制剤、および離型剤などが挙げられる。
【0098】
第1繊維23Aおよび第3繊維23Cなどは、本体部60内を堆積部100に搬送されながら混合されて第2混合物と成る。第2混合物は、ブロアーなどによって本体部60を介して堆積部100へ搬送される。そして第2堆積工程S22へ進む。
【0099】
第2堆積工程S22は堆積部100にて行われる。堆積部100は、第2混合物を空気中で堆積させて、複数の第1繊維23Aと複数の第3繊維23Cとが混合されたウェブW2を作製する。堆積部100は、第2混合物を本体部60からドラム部101の内部に取り込み、乾式にてメッシュベルト122に堆積させる。第2堆積工程S22は、第2混合物からウェブW2を作製する他は、第1堆積工程S12と同様に行う。
【0100】
作製されたウェブW2は、ウェブW1と同様に、連続帳票状のままロール状に巻き取ってもよく、裁断部170などにて単票状としてもよい。ウェブW2とウェブW1とは、互いの主面同士が合わされて重ねられる。なお、ウェブW2をメッシュベルト122上で作製せずに、ウェブW1の上方の面上に作製して、双方を重ねる手間を省いてもよい。この場合には、ウェブ搬送部120の上流側に、メッシュベルト122上へ連続帳票状のウェブW1を繰り出す機構を配置してもよい。そして加熱工程S23へ進む。
【0101】
加熱工程S23は加熱部140を用いて行われる。図15に示すように、加熱工程S23では、熱放射部143内にてウェブW1とウェブW2とを重ねて加熱して、第1被覆層232および第2被覆層234を溶融させる。ウェブW1およびウェブW2の加熱温度T1は、第2被覆層234の第2の融点以上とする。これら以外は、第1実施形態の加熱工程S13と同様にして行う。そして冷却工程S24へ進む。
【0102】
冷却工程S24は加圧冷却部160を用いて行われる。図16に示すように、重ねられたウェブW1とウェブW2とを、第1の融点以上第2の融点未満の温度である冷却温度T2に冷却する。これにより、第1被覆層232は固化せず、第2被覆層234は固化する。
【0103】
詳しくは、第1加圧冷却部161と第2加圧冷却部162との間にウェブW1およびウェブW2を挟む。このとき、第1加圧冷却部161の下面とウェブW2の上方の面とを接触させ、第2加圧冷却部162の上面とウェブW1の下方の面とを接触させる。第1加圧冷却部161とウェブW2と、および第2加圧冷却部162とウェブW1とは触れるだけに留め、圧縮力は印加しない。ウェブW2の熱が第1加圧冷却部161に伝播し、ウェブW1の熱が第2加圧冷却部162に伝播して、ウェブW1およびウェブW2が冷却される。
【0104】
ウェブW1およびウェブW2を冷却温度T2に冷却して、第1被覆層232が溶融したまま、第2被覆層234を固化させて、次工程の加圧工程S25へ移行させる。これによって、上述した第1繊維23Aと第3繊維23Cとの接点、および第3繊維23C同士の接点の結着が進行する。なお、冷却工程S24では、第1被覆層232の溶融状態を維持させるため、第2加圧冷却部162の冷却装置は作動させなくてもよい。そして加圧工程S25へ進む。
【0105】
加圧工程S25も加圧冷却部160を用いて行われる。図17に示すように、重ねられて、第1被覆層232が溶融したままのウェブW1と、第2被覆層234が固化したウェブW2とに、所定の圧縮力を印加する。詳しくは、第1加圧冷却部161と第2加圧冷却部162とのZ軸に沿う距離を縮めて、ウェブW1およびウェブW2を圧縮する。
【0106】
このとき、第1被覆層232が溶融した状態であるため、第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点、および第2繊維23B同士の接点の結着は進行し難い。したがって、ウェブW1の機械的強度は低く、印加される圧縮力によって上下方向に圧縮されて、比較的に高密度な内部構造と成る。
【0107】
これに対して、第2被覆層234は固化が進行しているため、第1繊維23Aと第3繊維23Cとの接点、および第3繊維23C同士の接点は結着されている。したがって、ウェブW2の機械的強度は高く、印加される圧縮力によって上下方向に圧縮され難く、比較的に低密度な内部構造と成る。
【0108】
上記所定の圧縮力によるウェブW1およびウェブW2の上下方向の厚さの圧縮率は、合算にて10%以上であることが好ましい。これによれば、ウェブW1の密度が増大するため、防音性を向上させることができる。そして加圧冷却工程S26へ進む。
【0109】
加圧冷却工程S26も加圧冷却部160を用いて行われる。図18に示すように、加圧冷却工程S26では、加圧工程S25の所定の圧縮力を印加したまま、ウェブW1とウェブW2とを冷却温度T3まで冷やす。すなわち、第1加圧冷却部161と第2加圧冷却部162との間で、圧縮力の印加と冷却とが行われる。加圧冷却工程S26におけるウェブW1およびウェブW2の冷却温度T3は、第1被覆層232の第1の融点未満の温度とする。
【0110】
これによって、第2被覆層234に加えて第1被覆層232も固化した状態となり、第1繊維23Aと第2繊維23Bとの接点、および第2繊維23B同士の接点が、固化した第1被覆層232によって結着される。そして、ウェブW1に由来する比較的に高密度な領域L2と、ウェブW1に由来する比較的に低密度な領域L1とを含む防音シートSと成る。そして裁断工程S27へ進む。
【0111】
裁断工程S27は裁断部170を用いて行われる。防音シートSは、裁断工程S27を行わずに連続帳票状のまま巻き取られてもよい。以上により本実施形態の防音シートSが製造される。
【0112】
ここで、内部構造に低密度な領域L1、高密度な領域L2、および中間的な密度を有する領域を含む防音シートSにおいて、防音特性のうちの吸音特性について説明する。図19は、防音シートSにおいて、上記3つの領域の配置を変えた試料に対して、周波数[Hz]を変化させながら音波を一方の主面に垂直に入射させた際の、吸音率の変化を示している。図19では、横軸が音波の周波数[Hz]であり、縦軸が入射させた音波の吸音率、すなわち垂直入射吸音率である。吸音率は吸音特性の1つの指標であって、値が大きい程、吸音特性に優れる。
【0113】
なお、上記中間的な密度を有する領域は、冷却工程S24を行う時間を短縮して、第2被覆層234の固化を完了させずに加圧工程S25へ移行させる手段、印加する圧縮力を減じる手段などによって形成することが可能である。
【0114】
各試料では、密度が異なる3つの防音シートSを1つずつ、3つ重ねている。高密度な領域L2として密度が0.15g/cm3のシートHを用い、低密度な領域L1として密度が0.05g/cm3のシートLを用い、中間的な密度を有する領域として密度が0.10g/cm3のシートMを用いた。シートH,L,Mの各々の厚さは20mmである。
【0115】
水準g1,g2は、音が入射する表面にシートLを配置し、シートLの後方にシートH,Mを配置した試料である。水準h1,h2は、音が入射する表面にシートMを配置し、シートMの後方にシートL,Hを配置した試料である。水準f1,f2は、音が入射する表面にシートHを配置し、シートHの後方にシートL,Mを配置した試料である。
【0116】
図19に示すように、およそ500Hzから4000Hzの範囲において、各水準に吸音特性の差が表れている。上記範囲において、水準f1,f2に対して、水準h1,h2では吸音特性が向上し、水準g1,g2ではさらに吸音特性が優れている。すなわち、総じて、音波が入射する表面の密度が低い程、吸音特性が向上することが分かった。したがって、上述した密度と遮音特性との関係も考慮すると、音波の入射側に低密度な領域L1を配置し、音波の出射側に高密度な領域L2を配置すれば、吸音特性および遮音特性を向上させることが可能となる。
【0117】
したがって、例えば住宅などの外壁に用いる場合に、室内側に低密度な領域L1を配置することにより、室内で発生する音を吸音することができる。また、屋外側に高密度な領域L2を配置することにより、屋外の騒音などを遮音することができる。
【0118】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0119】
防音シートSにおいて、内部構造を簡便に制御することができる。詳しくは、第1被覆層232が溶融し、第2被覆層234が固化した状態で加圧工程S25を実施することによって、ウェブW1では加圧による圧縮が進行し易く、内部構造は比較的に高い密度となる。これに対して、ウェブW2では加圧による圧縮が進行し難く、内部構造は比較的に低い密度となる。これにより、防音シートSにおいて、簡便に高密度な領域L2と低密度な領域L1とを形成することができる。すなわち、内部構造を簡便に制御する防音シートSの製造方法、および該製造方法にて製造される防音シートSを提供することができる。
【0120】
3.第3実施形態
本実施形態に係る防音シートSは、後述する本実施形態の防音シートSの製造方法にて製造される。本実施形態の防音シートSは、ウェブW2に由来する比較的に低密度な領域L1を、ウェブW1に由来する比較的に高密度な領域L2で挟んだ内部構造を有する。すなわち、本実施形態の防音シートSは、第2実施形態の防音シートSに対して、2枚のウェブW1と、1枚のウェブW2とから防音シートSを製造する点が異なる。
【0121】
以下、上記実施形態と重複する構成については説明を省略する。なお、本実施形態の防音シートSの製造方法においても、上述した製造装置10を用いる。以下の説明では第1実施形態の図5、および第2実施形態の図14も参照することとする。
【0122】
ウェブW1およびウェブW2は上記実施形態と同様にして作製し、加熱工程S23へ進む。加熱工程S23では、図20に示すように、熱放射部143内にウェブW1、ウェブW2、およびウェブW1をこの順に上下方向に重ねて加熱して、第1被覆層232および第2被覆層234を溶融させる。ウェブW1およびウェブW2の加熱温度T1は、第2被覆層234の第2の融点以上とする。これら以外は、第1実施形態の加熱工程S13と同様にして行う。そして冷却工程S24へ進む。
【0123】
冷却工程S24では、図21に示すように、重ねられた2枚のウェブW1と1枚のウェブW2とを、第1の融点以上第2の融点未満の温度である冷却温度T2に冷却する。これにより、第1被覆層232は固化せず、第2被覆層234は固化する。そして加圧工程S25へ進む。
【0124】
加圧工程S25では、図22に示すように、第1被覆層232が溶融したままの2枚のウェブW1と、第2被覆層234が固化した1枚のウェブW2とに、所定の圧縮力を印加する。これにより、ウェブW1は比較的に高密度な内部構造と成り、ウェブW2は比較的に低密度な内部構造と成る。そして加圧冷却工程S26へ進む。
【0125】
加圧冷却工程S26では、図23に示すように、加圧工程S25の所定の圧縮力を印加したまま、2枚のウェブW1と1枚のウェブW2とを冷却温度T3まで冷やす。加圧冷却工程S26における冷却温度T3は、第1被覆層232の第1の融点未満の温度とする。
【0126】
これによって、第2被覆層234に加えて第1被覆層232も固化した状態となる。そして、ウェブW1に由来する比較的に高密度な領域L2と、ウェブW2に由来する比較的に低密度な領域L1とを含む防音シートSが形成される。防音シートSには、裁断工程S27により適宜裁断加工を施してもよい。
【0127】
本実施形態によれば上記実施形態の効果に加えて、3層構造を容易に形成することができる。
【0128】
4.第4実施形態
本実施形態に係る防音シートSは、後述する本実施形態の防音シートSの製造方法にて製造される。本実施形態の防音シートSは、第1実施形態の防音シートSに対して、1枚のウェブW1から、比較的に低密度な領域L1および比較的に高密度な領域L2を含む内部構造を形成する点が異なる。以下、上記実施形態と重複する構成については説明を省略する。なお、本実施形態の防音シートSの製造方法においても、上述した製造装置10を用いる。以下の説明では第1実施形態の図4図5も参照することとする。
【0129】
ウェブW1は第1実施形態と同様にして作製して、加熱工程S13へ進む。加熱工程S13では、図24に示すように、熱放射部143内にてウェブW1を加熱して、第1被覆層232を溶融させる。ウェブW1の加熱温度T1は、第1被覆層232の第1の融点以上とする。そして冷却工程S14へ進む。
【0130】
冷却工程S14では、図25に示すように、ウェブW1を第1の融点未満の温度である冷却温度T2に冷却する。このとき、ウェブW1に、第1の融点未満の領域と第1の融点以上の領域とが残存する状態とする。つまり、第1加圧冷却部161および第2加圧冷却部162に対して、比較的に近く第1被覆層232が固化した領域と、比較的に遠く第1被覆層232が溶融した領域とを混在させる。そのため、ウェブW1の内部温度が、一様に冷却温度T2まで下がりきる前に加圧工程S15へ進む。
【0131】
加圧工程S15では、図26に示すように、ウェブW1に所定の圧縮力を印加する。これにより、ウェブW1の内部には密度が異なる領域が形成される。そして加圧冷却工程S16へ進む。
【0132】
加圧冷却工程S16では、図27に示すように、加圧工程S15の所定の圧縮力を印加したまま、ウェブW1を冷却温度T3まで冷やす。加圧冷却工程S16におけるウェブW1の冷却温度T3は、第1被覆層232の第1の融点未満の温度とする。
【0133】
これによって、防音シートSでは、上記第1の融点未満の領域が比較的に低密度な領域L1となり、第1の融点以上の領域が比較的に高密度な領域L2となる。
【0134】
本実施形態によれば第1実施形態の効果に加えて、1枚のウェブW1において密度傾斜を有する内部構造を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0135】
10…製造装置、23A…第1繊維、23B…第2繊維、23C…第3繊維、150…加圧部、151…第1加圧部、152…第2加圧部、153…第1制御部、154…第2制御部、160…加圧冷却部、161…第1加圧冷却部、162…第2加圧冷却部、163…第3制御部、164…第4制御部、210…第5制御部、231…第1芯部、232…第1被覆層、233…第2芯部、234…第2被覆層、S…防音シート、S12…第1堆積工程、S13,S23…加熱工程、S16,S26…加圧冷却工程、S22…第2堆積工程、S24…冷却工程、S25…加圧工程、W1…第1堆積繊維体としてのウェブ、W2…第2堆積繊維体としてのウェブ。
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