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特開2024-32164光学活性ハロアゾール誘導体およびその製造方法
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  • 特開-光学活性ハロアゾール誘導体およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032164
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】光学活性ハロアゾール誘導体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 257/04 20060101AFI20240305BHJP
   C07D 407/04 20060101ALI20240305BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
C07D257/04 E
C07D407/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135670
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】荒井 孝義
(72)【発明者】
【氏名】安間 恵未
【テーマコード(参考)】
4C063
4H039
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC73
4C063DD47
4C063EE05
4H039CA42
4H039CA61
4H039CF10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規な光学活性ハロアゾール誘導体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】特定のビナフトール骨格を有するビスアミノイミン配位子を、金属又は金属塩に配位させてなる触媒を用いて下記式(2)で示される光学活性ハロアゾール誘導体を製造する方法。(ここでAは、アルケン誘導体に由来しハロゲン原子を官能基として有するとともに、不斉構造を有する置換基である。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基(C=1~8)、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。)

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1-1~1-6)で示されるいずれかの配位子を金属又は金属塩に配位させてなる触媒を用いて下記式(2)で示される光学活性ハロアゾール誘導体を製造する方法。(ここでAは、アルケン誘導体に由来しハロゲン原子を官能基として有するとともに、不斉構造を有する置換基である。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基(C=1~8)、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。)
【請求項2】
下記式(2)で示される光学活性ハロアゾール誘導体。(ここでAは、アルケン誘導体に由来しハロゲン原子を官能基として有するとともに、不斉構造を有する置換基である。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基(C=1~8)、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。)
【請求項3】
前記Aにおけるハロゲン原子は、ヨウ素である請求項2に記載の光学活性ハロアゾール誘導体。
【請求項4】
前記Aは、環状エーテルである請求項2又は3に記載の光学活性ハロアゾール誘導体。
【請求項5】
下記式(3)で示される光学活性ハロアゾール誘導体。(ここで下記式(3)におけるRは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基(C=1~8)、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。Rは、アルキル基(C=1~8)、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。Rは、水素原子、又はアルキル基(C=1~8)のいずれかである。Rは、ハロゲン原子である。Rは、水素原子、又はアルキル基(C=1~8)、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。)
【請求項6】
前記Rは、ヨウ素である請求項5に記載の光学活性ハロアゾール誘導体。
【化1】
【化2】
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性ハロアゾール誘導体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然物や医薬品合成に用いられる化合物の中にはどちらか一方の光学異性体のみが活性を示す場合が多くある。光学異性体を作り分け、合成する方法は不斉合成法と呼ばれており、不斉合成法の中でも少量の不斉源から理論上無限の光学活性体を合成することが可能な触媒的不斉合成法は極めて重要なものとなっている。
【0003】
アルケンのハロアゾール化は、ハロゲン化とアゾール化を一挙に行え、さらに新規のsp不斉炭素を構築することのできる有用な反応である。また、アゾール化合物の中でも特にテトラゾールは、医薬品等によくみられる重要な骨格であり、炭素-ハロゲン結合をもつ化合物の変換反応は容易であることから、不斉点を有し複雑な骨格を持つ医薬品等の合成中間体として重要である。従来の技術として、アルケン、N-ブロモスクシンイミド、ニトリルおよびトリメチルシリルアジドの金属トリフラート触媒ワンポット反応によって1,5-置換テトラゾールを合成するアルケンの分子間ハロアゾール化反応の例が下記非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Saumen, H.; Debarshi, S.; Manishabrata, B. J. Org. Chem. 2007, 72, 1852.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1において、アルケンの分子間ハロアゾール化反応はラセミ体合成であり、テトラゾールを求核種とした分子間不斉ハロアゾール化反応の達成例はない。高収率かつ高立体選択性な分子間不斉ハロアゾール化反応の開発が望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、金属触媒を用いたアルケン誘導体とアゾール化合物の分子間不斉ハロアゾール化反応により得られる新規な光学活性ハロアゾール誘導体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を行なっていたところ、ビナフトール骨格を有するビスアミノイミン配位子を金属又は金属塩に配位させた触媒の存在下、極性溶媒中でアルケン誘導体とアゾール化合物をハロゲン化剤と反応させることで、光学活性ハロアゾール誘導体が得られる点を発見し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、光学活性ハロアゾール誘導体を製造する方法は、下記式(1-1~1-6)で示されるビナフトール骨格を有するいずれかのビスアミノイミン配位子に金属又は金属塩を作用させて得られる金属の二核錯体触媒の存在下で、アルケン誘導体とアゾール化合物をハロゲン化剤と反応させるものである。なお、ハロゲン化剤としては、N-ハロスクシンイミドが好ましい。
【0009】
【化1】
【0010】
なお、上記式(1-1~1-6)で示される配位子は、特開2015-38052号公報の技術によって合成できる。
【0011】
また、アゾール化合物は、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾールのいずれであってもよく、これらの中でも光学活性ハロアゾール誘導体を高い収率かつ高い立体選択性で得る観点からトリアゾール、テトラゾールであることが好ましく、特にテトラゾールであることが好ましい。さらに、テトラゾールとして、5-フェニルテトラゾールを用いることにより、光学活性ハロアゾール誘導体を高い収率かつ高い立体選択性で得ることができる。
【0012】
また、アルケン誘導体は、炭素数C=3~26のものが好ましく、後述する分子間不斉ハロアゾール化反応においてアルケン誘導体を安定してハロゲン化するために、二重結合を構成する炭素原子に置換基により置換されない水素原子を少なくとも1つ有していることが好ましい。
【0013】
さらに、アルケン誘導体は、光学活性ハロアゾール誘導体を高い収率かつ高い立体選択性で得る観点からエーテル結合を有するアルケニルエーテルまたは環状エーテルであることが好ましい。具体的には、アルケニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル等が好ましく、環状エーテルとしては、2,3-ジヒドロフラン、3,4-ジヒドロピラン、2,3-ジヒドロオキセピン等が好ましい。
【0014】
なお、アルケン誘導体は、ヘテロ原子を含むアルケン誘導体であってもよいし、ヘテロ原子を含まない単純なアルケン誘導体であってもよい。
【0015】
上記製造方法により、下記式(2)で示される光学活性ハロアゾール誘導体を得ることができる。なお、下記式(2)で示される光学活性ハロアゾール誘導体には、不斉炭素原子に基づく鏡像異性体が存在する。
【0016】
すなわち、上記製造方法により、アルケン誘導体のハロゲン化とアゾール化を一挙に行い、さらに新規のsp不斉炭素を構築する分子間不斉ハロアゾール化反応が起こり、光学活性を有するハロアゾール誘導体を得ることができる。また、上記製造方法における分子間不斉ハロアゾール化反応は、アゾール化合物を求核種としたものである。なお、上記製造方法により得られる光学活性ハロアゾール誘導体の立体配置は、X線結晶構造解析よって、2,5-置換テトラゾールであることが確認できる(例えば図1参照)。
【0017】
【化2】
【0018】
なお、上記式(2)中、アゾール環5位のフェニル基が有する置換基Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基(C=1~8)、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。
【0019】
また、上記式(2)中、アゾール環2位の置換基Aは、アルケン誘導体により与えられる不斉構造であり、ハロゲン化剤により与えられるハロゲン原子を官能基として有している。なお、置換基Aにおける官能基としてのハロゲン原子は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)のいずれであってもよく、特にヨウ素であることにより反応性が高く好ましい。
【0020】
また、上記製造方法により、好ましくは下記式(3)で示される光学活性ハロアゾール誘導体を得ることができる。また、下記式(3)で示される光学活性ハロアゾール誘導体におけるアゾール環2位には、置換基Rとエーテル結合するとともに、R,Rを置換基として有する炭素原子と置換基Rが結合した不斉炭素原子を有している。また、R,Rを置換基として有する炭素原子についても、Rが水素原子ではない場合、不斉炭素原子となる可能性がある。なお、下記式(3)で示される光学活性ハロアゾール誘導体には、不斉炭素原子に基づく鏡像異性体が存在する。
【0021】
【化3】
【0022】
なお、上記式(3)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基(C=1~8)、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。Rは、アルキル基(C=1~8)、又はアリール基(C=1~6)のいずれかである。Rは、水素原子、又はアルキル基(C=1~8)のいずれかである。Rは、ハロゲン原子である。Rは、水素原子、又はアルキル基(C=1~8)、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。
【0023】
また、上記式(3)中、Rのハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれであってもよく、特にヨウ素であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上、本発明により、新規な光学活性ハロアゾール誘導体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の光学活性ハロアゾール誘導体の立体配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は多くの異なる様態で実施することが可能であり、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0027】
本実施形態に係る光学活性ハロアゾール誘導体は、上記式(1-1~1-6)で示されるビナフトール骨格を有するいずれかのビスアミノイミン配位子と亜鉛塩からなる亜鉛二核錯体触媒の存在下で、アルケン誘導体であるアルケニルエーテルとアゾール化合物である5-フェニルテトラゾールをハロゲン化剤であるN-ハロスクシンイミドと反応させることによって製造できる。
【0028】
また、上記式(1-1~1-6)で示される配位子を配位させる金属としては、上記亜鉛に限らず、配位させることができる限りにおいてこれに限定されるわけではないが、例えばニッケル、銅、コバルト、ルテニウム、ロジウムまたは鉄を例示することができる。また、配位子を金属に配位させる方法としては、周知の方法を採用することができ、限定されるわけではないが、金属塩と配位子を混合することで配位させることができる。
【0029】
なお、金属塩としては、上記式(1-1~1-6)で示される配位子と二核錯体触媒を形成しやすいことから亜鉛塩が好ましく、限定されるわけではないが、Zn(OAc)、ZnCl、ZnEt、ZnMe等を用いることができる。
【0030】
本実施形態に係る触媒は、アルケン誘導体を基質として用いた分子間不斉ハロアゾール化反応を行うために用いることができる。具体的には、本実施形態に係る触媒の存在下で、下記式(4)で示される反応のように、アルケニルエーテルと5-フェニルテトラゾールをN-ハロスクシンイミドと反応させて光学活性ハロアゾール誘導体を合成することができる。
【0031】
【化4】
【0032】
なお、本実施形態に係る触媒を用いた分子間不斉ハロアゾール化反応は、極性溶媒中、特にトリフルオロトルエン(CHPh)中において行なうことが好ましい。
【0033】
また、本実施形態に係る触媒を用いた分子間不斉ハロアゾール化反応は、マイナス20度において行なうことが好ましい。
【0034】
ここにおいて限定されるわけではないが、上記式(4)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基(C=1~8)、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。Rは、アルキル基(C=1~8)、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。Rは、水素原子、又はアルキル基(C=1~8)のいずれかである。Rは、N-ハロスクシンイミドに由来するハロゲン原子である。Rは、水素原子、又はアルキル基(C=1~8)、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。
【0035】
また、R、R、Rがアルキル基あるいはR、Rがアリール基である場合には、当該アルキル基、アリール基は、1~5個の置換基(アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基またはニトロ基等)を有していてもよい。
【0036】
また、ここで、限定されるわけではないが、上記式(4)中の置換基について、アルコキシ基の例として、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が好ましく、アリール基の例として、フェニル基、4-ブロモフェニル基、4-メトキシフェニル基等が好ましく、アルキル基の例として、メチル基、エチル基、ブチル基等が好ましい。
【0037】
また、本実施形態に係る触媒を用いた分子間不斉ハロアゾール化反応において、用いる5-フェニルテトラゾールの量は、アルケニルエーテルを1モルとした場合、1.0モル以上1.2モル以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.0モル以上1.1モル以下の範囲内である。
【0038】
また、本実施形態に係る触媒を用いた分子間不斉ハロアゾール化反応において、用いるN-ハロスクシンイミドの量は、アルケニルエーテルを1モルとした場合、1.0モル以上1.2モル以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.0モル以上1.1モル以下の範囲内である。
【0039】
この結果、本実施形態に係る製造方法によると、上記式(2)で示す光学活性ハロアゾール誘導体、さらに好ましくは上記式(3)で示す光学活性ハロアゾール誘導体を高い収率、立体選択性で得ることができる。
【0040】
なお、本実施形態に係る製造方法において用いられるアルケン誘導体は、アルケニルエーテルに限らず、下記実施例2,3でも示すように環状エーテルであってもよく、エーテル結合を有さないものであってもよい。
【0041】
例えば、本実施形態に係る触媒の存在下で、下記式(5)で示される反応のように、エーテル結合を有さないアルケン誘導体と5-フェニルテトラゾールをN-ハロスクシンイミドと反応させて光学活性ハロアゾール誘導体を合成することができる。
【0042】
【化5】
【0043】
ここにおいて限定されるわけではないが、上記式(5)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基(C=1~8)、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。Rは、水素原子、又はアルキル基(C=1~8)のいずれかである。Rは、N-ハロスクシンイミドに由来するハロゲン原子である。Rは、水素原子、又はアルキル基(C=1~8)、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。
【0044】
また、上記式(5)中、置換基Bは、芳香族炭化水素、複素芳香族化合物またはこれらの誘導体のいずれかである。
【0045】
また、上記式(5)中、置換基Bが芳香族炭化水素誘導体または複素芳香族化合物誘導体である場合には、1~5個の置換基(アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基またはニトロ基等)を有していてもよい。また、Rがアルキル基、アリール基である場合には、当該アルキル基、アリール基は、1~5個の置換基(アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基またはニトロ基等)を有していてもよい。
【0046】
好ましくは、本実施形態に係る触媒の存在下で、下記式(6)で示される反応のように、エーテル結合を有さないアルケン誘導体と5-フェニルテトラゾールをN-ハロスクシンイミドと反応させて光学活性ハロアゾール誘導体を合成することができる。
【0047】
【化6】
【0048】
なお、上記式(6)中、Rは、水素元素、アルキル基(C=1~10)、またはアリール基(C=6~10)のいずれかである。Rは、水素原子、又はアルキル基(C=1~8)のいずれかである。Rは、N-ハロスクシンイミドに由来するハロゲン原子である。Rは、水素原子、又はアルキル基(C=1~8)、又はアリール基(C=6~10)のいずれかである。Rは、水素原子、アルキル基(C=1~6)、アルコキシ基(C=1~6)、またはアリール基(フェニル、ナフチル)のいずれかである。また、上記式(6)中、R、Rに置換するアルキル基、アリール基については、1~5個の置換基(アルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基またはニトロ基等)を有していてもよい。
【0049】
なお、上記式(5),(6)で示される反応で用いられるエーテル結合を有さないアルケン誘導体としては、具体的には、α-メチルスチレンやα-メチルスチレン誘導体等が考えられる。
【0050】
また、上記式(1-1~1-6)で示される配位子の中でも、特に上記式(1-2,1-6)で示される配位子を用いることにより、製造される光学活性ハロアゾール誘導体の収率(yield(%))とエナンチオマー過剰率(ee(%))を高めることができる。
【0051】
また、本発明の製造方法によって製造される光学活性ハロアゾール誘導体の収率とエナンチオマー過剰率は、好ましくは15%yield以上かつ15%ee以上であり、さらに好ましくは50%yield以上かつ30%ee以上であり、さらに好ましくは70%yield以上かつ50%ee以上である。
【0052】
以下、上記実施形態に係る触媒を用い、実際に光学活性ヨードアゾール誘導体を製造した。以下、具体的に説明する。
【実施例0053】
下記式(7)に示す本実施例1では、まず、上記式(1-2)で示される3,3’-アミノイミノビナフトール配位子0.005mmolと酢酸亜鉛0.010mmolの混合物を、4.0mlのトリフルオロトルエン中、室温で1時間撹拌した。次いで、得られた反応混合物に5-フェニルテトラゾール0.11mmolとt-ブチルビニルエーテル0.1mmolを加え、マイナス20度に冷却した後、同温度で0.5時間撹拌した。次いで、当該反応混合物にN-ヨードスクシンイミド(NIS)0.11mmolを添加し、16時間撹拌した後、反応混合物を飽和NaSO水溶液でクエンチし、生成物をCHClで抽出した。次いで、抽出した有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=20/1~8/1)で精製した。
【0054】
この結果、光学活性ヨードアゾール誘導体が収率82%yield(87%ee)で得られた。なお、光学活性ヨードアゾール誘導体のエナンチオマー過剰率は、キラル固定相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定した。
【0055】
【化7】
【0056】
なお、本実施例1において得られた光学活性ヨードアゾール誘導体について、プロトン核磁気共鳴、炭素13核磁気共鳴、比旋光度、エレクトロスプレーイオン化質量分析を行った結果を以下に示す。
【0057】
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.22-8.17(m,2H),7.51-7.45(m,3H),6.35(t,1H,J=6.7Hz),3.73-3.64(m,2H),1.20(s,9H)
【0058】
13C NMR(125MHz,CDCl)δ165.1,130.4,128.8,127.0,126.9,86.2,78.4,27.6,4.2
【0059】
[α] 25.1=-12.3(c=1.0,CHCl,87%ee)
【0060】
HRMS calcd for C1716BrINa(M+Na):395.0339,found:m/z395.0340
【0061】
また、エナンチオマー過剰率は、Chiralpack IC-3カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(95:5=hexane:2-propanol,0.5mL/min,254nm)で測定した結果、マイナーエナンチオマーtr=10.1min,メジャーエナンチオマー=11.6min;87%eeであった。
【実施例0062】
下記式(8)に示す本実施例2では、まず、上記式(1-2)で示される3,3’-アミノイミノビナフトール配位子0.005mmolと酢酸亜鉛0.010mmolの混合物を、4.0mlのトリフルオロトルエン中、室温で1時間撹拌した。次いで、得られた反応混合物に5-(p-ヒドロキシフェニル)テトラゾール0.11mmolと2,3-ジヒドロフラン0.1mmolを加え、マイナス20度に冷却した後、同温度で0.5時間撹拌した。次いで、当該反応混合物にN-ヨードスクシンイミド(NIS)0.11mmolを添加し、16時間撹拌した後、反応混合物を飽和NaSO水溶液でクエンチし、生成物をCHClで抽出した。次いで、抽出した有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=20/1~8/1)で精製した。
【0063】
この結果、光学活性ヨードアゾール誘導体が収率75%yield(53%ee)で得られた。なお、光学活性ヨードアゾール誘導体のエナンチオマー過剰率は、キラル固定相HPLCによって決定した。
【0064】
【化8】
【0065】
なお、本実施例2において得られた光学活性ヨードアゾール誘導体について、プロトン核磁気共鳴、炭素13核磁気共鳴、比旋光度分析を行った結果を以下に示す。
【0066】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.60-7.56(m,2H),7.06-7.02(m,2H),6.02(s,1H),4.43-4.41(m,1H),4.32-4.21(m,1H),4.20-4.13(m,1H),2.78-2.68(m,1H),2.35-2.29(m,1H)
【0067】
13C NMR(125MHz,CDCl)δ159.3,133.9,118.9,116.9,108.6,105.3,66.5,35.2,23.1
【0068】
[α] 25.7=+90.4(c=1.0,CHCl,53%ee)
【0069】
また、エナンチオマー過剰率は、Chiralcel OZ-3カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(90:10=hexane:2-propanol,1.0mL/min,254nm)で測定した結果、マイナーエナンチオマーtr=10.4min,メジャーエナンチオマー=11.6min;53%eeであった。
【実施例0070】
下記式(9)に示す本実施例3では、まず、上記式(1-2)で示される3,3’-アミノイミノビナフトール配位子0.005mmolと酢酸亜鉛0.010mmolの混合物を、4.0mlのトリフルオロトルエン中、室温で1時間撹拌した。次いで、得られた反応混合物に5-(p-ニトロフェニル)テトラゾール0.11mmolと2,3-ジヒドロフラン0.1mmolを加え、マイナス20度に冷却した後、同温度で0.5時間撹拌した。次いで、当該反応混合物にN-ヨードスクシンイミド(NIS)0.11mmolを添加し、16時間撹拌した後、反応混合物を飽和NaSO水溶液でクエンチし、生成物をCHClで抽出した。次いで、抽出した有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=20/1~8/1)で精製した。
【0071】
【化9】
【0072】
なお、本実施例3において得られた光学活性ヨードアゾール誘導体(収率68%、30%ee)について、X線結晶構造解析を行った結果、図1に示されるように、2,5-置換テトラゾールであることを確認した。
【0073】
以上の通り、本実施例によると、光学活性ヨードアゾール誘導体が高い収率かつ高い立体選択性で得られることを確認した。
【0074】
なお、触媒は、上記式(1-1~1-6)で示される配位子から一種類を選択して金属塩に配位させたものに限らず、上記式(1-1~1-6)で示される配位子から複数種類を選択して金属塩に配位させたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、過去に報告例のない新規な光学活性ハロアゾール誘導体を高い収率かつ高い立体選択性で供給できる。医薬・農薬の開発と生産に有用であり、産業上の利用可能性がある。例えば、この光学活性ハロアゾール誘導体は、不斉点を有し複雑な骨格を持つ医薬品等の合成中間体として利用できる。
図1