(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032170
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置、及び液体噴射ヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135679
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲濱▼ 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 研治
(72)【発明者】
【氏名】川上 達大
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 拓馬
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA28
2C056EC07
2C056EC29
2C056FA10
2C056HA15
2C056KD10
(57)【要約】
【課題】冷却効率を向上させる。
【解決手段】インクジェットヘッド5は、インクを噴射するヘッド本体30と、インクに対する耐食性を有し、駆動回路35を冷却するためのインクが通過する冷却配管41と、冷却配管41よりも高い熱伝導率を有し、冷却配管41の少なくとも一部が埋め込まれ、冷却配管41を囲む部分の少なくとも一部に凹部53A,53Bを有する冷却部材50と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する噴射部と、
前記液体に対する耐食性を有し、熱源を冷却するための冷媒が通過する冷却配管と、
前記冷却配管よりも高い熱伝導率を有し、前記冷却配管の少なくとも一部が埋め込まれ、前記冷却配管を囲む部分の少なくとも一部に凹部を有する冷却部材と、を備える、
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記冷却配管は、前記冷却部材に対してインサート成型されている、
請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記凹部は、前記冷却配管の中心軸に対して交差する4つの方向に開口している、
請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記冷却部材は、前記4つの方向に開口する前記凹部を仕切る仕切り部を有する、
請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記凹部は、前記冷却配管に向かって湾曲する湾曲部を有する、
請求項1から4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記冷却部材は、前記熱源が配置される熱源配置面を有し、
前記熱源配置面は、前記冷却部材において前記凹部以外の部分に設けられる、
請求項1から4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記熱源配置面は、平面である、
請求項6に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記冷却部材は、前記冷却配管を挟んで互いに反対側に配置される第1面及び第2面を有し、
前記熱源配置面は、前記第1面及び前記第2面のそれぞれに設けられる、
請求項6に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記冷却配管の端部は、前記冷却部材の外形の外側に配置される、
請求項1から4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記冷却配管は、直管形状を有する、
請求項1から4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
前記冷却配管は、ステンレス鋼で形成され、
前記冷却部材は、アルミニウムの単体又はアルミニウム合金で形成される、
請求項1から4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
前記冷却配管は、前記液体が通過する液体流路から分岐し、前記冷媒として前記液体が通過する冷却流路を有する、
請求項1から4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項13】
液体を噴射する噴射部と、
前記液体に対する耐食性を有し、熱源を冷却するための冷媒が通過する冷却配管と、
前記冷却配管よりも高い熱伝導率を有し、前記冷却配管の少なくとも一部がインサート成型された冷却部材と、を備える、
液体噴射ヘッド。
【請求項14】
請求項1から4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが取り付けられるキャリッジと、を備える、
液体噴射記録装置。
【請求項15】
液体を噴射する噴射部と、
前記液体に対する耐食性を有し、熱源を冷却するための冷媒が通過する冷却配管と、
前記冷却配管よりも高い熱伝導率を有する冷却部材と、を備える液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記冷却部材を製造する工程では、前記冷却配管を支持した状態で鋳造する、
液体噴射ヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置、及び液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体を噴射する液体噴射ヘッドチップと、冷媒が通過する冷媒流路を含む冷却部と、を備えた液体噴射ヘッドが開示されている。冷却部は、冷媒流路を形成する冷却配管と、冷却配管の外面と当接する冷却板と、を有する。冷却配管は、一対の冷却板で挟まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、冷却配管を一対の冷却板で挟む構成の場合は、冷却配管と冷却板との間に空隙が生じる可能性が高い。冷却配管と冷却板との間に空隙が生じた場合、冷却配管から冷却板へ熱が伝わりにくくなり、冷却効率が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、冷却効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一態様に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する噴射部と、前記液体に対する耐食性を有し、熱源を冷却するための冷媒が通過する冷却配管と、前記冷却配管よりも高い熱伝導率を有し、前記冷却配管の少なくとも一部が埋め込まれ、前記冷却配管を囲む部分の少なくとも一部に凹部を有する冷却部材と、を備える。
【0007】
本態様に係る液体噴射ヘッドによれば、冷却配管の少なくとも一部が埋め込まれた冷却部材を備えることで、冷却配管と冷却部材との間には空隙が生じにくいため、冷却配管から冷却部材へ熱が伝わりやすくなる。したがって、冷却効率を向上させることができる。
加えて、鋳造時の鋳型の配管支持部(冷却配管を支持するための部分)に相当する部分が冷却部材の凹部となって表れる。したがって、鋳造時の位置ずれや変形を抑制することができる。
【0008】
(2)(1)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、前記冷却配管は、前記冷却部材に対してインサート成型されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、インサート成型により冷却配管と冷却部材との間には空隙が生じにくいため、冷却配管から冷却部材へ熱が伝わりやすくなる。したがって、冷却効率を向上させることができる。
【0010】
(3)(2)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、前記凹部は、前記冷却配管の中心軸に対して交差する4つの方向に開口していてもよい。
【0011】
この構成によれば、鋳造時の鋳型の配管支持部に相当する部分が冷却部材において4つの方向に開口する凹部となって表れる。したがって、鋳造時の位置ずれや変形をより効果的に抑制することができる。
【0012】
(4)(3)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、前記冷却部材は、前記4つの方向に開口する前記凹部を仕切る仕切り部を有してもよい。
【0013】
この構成によれば、冷却部材が4つの方向に開口する凹部を有する場合でも、仕切り部において伝熱経路を確保することができるため、冷却効率をより効果的に向上させることができる。
【0014】
(5)(1)から(4)の何れかの態様の液体噴射ヘッドにおいて、前記凹部は、前記冷却配管に向かって湾曲する湾曲部を有してもよい。
【0015】
例えば、鋳造時の鋳型の配管支持部と冷却配管との間に空隙があると、空隙に溶けた金属が流れることによってバリが発生する可能性がある。この場合、凹部が冷却配管に沿って湾曲する湾曲部を有すると、鋳造時の鋳型の配管支持部と冷却配管との間の接触部分が多くなり(面接触となり)易いため、バリが発生する可能性が高い。これに対し本構成によれば、凹部が冷却配管に向かって湾曲する湾曲部を有することで、鋳造時の鋳型の配管支持部と冷却配管との間の接触部分を少なくする(線接触又は点接触とする)ことができる。したがって、バリの発生を抑制することができる。
【0016】
(6)(1)から(5)の何れかの態様の液体噴射ヘッドにおいて、前記冷却部材は、前記熱源が配置される熱源配置面を有し、前記熱源配置面は、前記冷却部材において前記凹部以外の部分に設けられてもよい。
【0017】
この構成によれば、冷却部材の熱源配置面に熱源を接触させることができるため、冷却効率をより効果的に向上させることができる。
【0018】
(7)(6)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、前記熱源配置面は、平面であってもよい。
【0019】
この構成によれば、熱源の外面に平面がある場合、熱源と熱源配置面との接触面積を広くできるため、冷却効率をより効果的に向上させることができる。
【0020】
(8)(6)又は(7)の態様の液体噴射ヘッドにおいて、前記冷却部材は、前記冷却配管を挟んで互いに反対側に配置される第1面及び第2面を有し、前記熱源配置面は、前記第1面及び前記第2面のそれぞれに設けられてもよい。
【0021】
この構成によれば、複数の熱源を設ける場合、冷却部材の第1面及び第2面のそれぞれに熱源を接触させることができるため、冷却効率をより効果的に向上させることができる。
【0022】
(9)(1)から(8)の何れかの態様の液体噴射ヘッドにおいて、前記冷却配管の端部は、前記冷却部材の外形の外側に配置されてもよい。
【0023】
この構成によれば、鋳造時、冷却配管の端部を押さえることができるため、位置ずれや変形を抑制することができる。
【0024】
(10)(1)から(9)の何れかの態様の液体噴射ヘッドにおいて、前記冷却配管は、直管形状を有してもよい。
【0025】
この構成によれば、冷却配管が湾曲形状を有する場合と比較して、冷却配管の寸法精度を確保しやすく、製造コストの低減を図ることができる。
【0026】
(11)(1)から(10)の何れかの態様の液体噴射ヘッドにおいて、前記冷却配管は、ステンレス鋼で形成され、前記冷却部材は、アルミニウムの単体又はアルミニウム合金で形成されてもよい。
【0027】
この構成によれば、液体が冷却配管を通過する場合、液体による腐食を回避しつつ、高い冷却効率が得られる。
【0028】
(12)(1)から(11)の何れかの態様の液体噴射ヘッドにおいて、前記冷却配管は、前記液体が通過する液体流路から分岐し、前記冷媒として前記液体が通過する冷却流路を有してもよい。
【0029】
この構成によれば、液体を液体流路に供給するとともに、液体を冷媒として冷却流路に供給することができる。
【0030】
(13)本開示の一態様に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する噴射部と、前記液体に対する耐食性を有し、熱源を冷却するための冷媒が通過する冷却配管と、前記冷却配管よりも高い熱伝導率を有し、前記冷却配管の少なくとも一部がインサート成型された冷却部材と、を備える。
【0031】
本態様に係る液体噴射ヘッドによれば、インサート成型により冷却配管と冷却部材との間には空隙が生じにくいため、冷却配管から冷却部材へ熱が伝わりやすくなる。したがって、冷却効率を向上させることができる。
【0032】
(14)本開示の一態様に係る液体噴射記録装置は、(1)から(13)の何れかの態様の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドが取り付けられるキャリッジと、を備える。
【0033】
本態様に係る液体噴射記録装置によれば、液体噴射ヘッドの冷却効率を向上できる液体噴射記録装置が得られる。
【0034】
(15)本開示の一態様に係る液体噴射ヘッドの製造方法は、液体を噴射する噴射部と、前記液体に対する耐食性を有し、熱源を冷却するための冷媒が通過する冷却配管と、前記冷却配管よりも高い熱伝導率を有する冷却部材と、を備える液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記冷却部材を製造する工程では、前記冷却配管を支持した状態で鋳造する。
【0035】
本態様に係る液体噴射ヘッドの製造方法によれば、冷却配管を支持した状態で鋳造することで、冷却配管と冷却部材との間には空隙が生じにくいため、冷却配管から冷却部材へ熱が伝わりやすくなる。したがって、冷却効率を向上させることができる。
加えて、鋳造時の位置ずれや変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】一実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
【
図2】一実施形態に係るインクジェットヘッド及びインク循環機構の概略構成図である。
【
図3】一実施形態に係るインクジェットヘッドの正面図である。
【
図4】一実施形態に係るインクの流れを説明する断面図である。
【
図6】一実施形態に係る冷却ユニットの斜視図である。
【
図7】
図6に示す矢視VII-VII断面斜視図である。
【
図8】一実施形態に係る冷却部材の凹部を説明する断面図である。
【
図9】一実施形態に係る冷却ユニット製造工程を示す説明図である。
【
図10】一実施形態に係るインク及び冷媒の流れの変形例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。
【0038】
以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0039】
[プリンタ1]
図1は、一実施形態に係るプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1(液体噴射記録装置)は、一対の搬送機構2,3と、インクタンク4と、インクジェットヘッド5(液体噴射ヘッド)と、インク循環機構6と、走査機構7と、を備えている。
【0040】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。X方向は、被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)である。Y方向は、走査機構7の走査方向(主走査方向)である。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)である。
【0041】
また、以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。本実施形態において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
【0042】
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X側に搬送する。搬送機構2,3は、例えばY方向に延びる一対のローラ11,12をそれぞれ含んでいる。インクタンク4は、複数設けられ、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。
【0043】
インクジェットヘッド5は、複数設けられ、接続されたインクタンク4に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。
【0044】
図2は、一実施形態に係るインクジェットヘッド5及びインク循環機構6の概略構成図である。
図1、
図2に示すように、インク循環機構6は、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させる。具体的に、インク循環機構6は、インク供給管21及びインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。
【0045】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を通してインクジェットヘッド5にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧になる。
【0046】
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インク排出管22内を通してインクジェットヘッド5からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧になる。インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を通して循環している。
【0047】
図1に示すように、走査機構7は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。走査機構7は、Y方向に延びるガイドレール28と、ガイドレール28に移動可能に支持されたキャリッジ29と、キャリッジ29を移動させる駆動装置と、を備えている。駆動装置は、例えば、モータ、プーリー、ベルト等から構成されている。
【0048】
<インクジェットヘッド5>
インクジェットヘッド5は、キャリッジ29に搭載されている。本実施形態のインクジェットヘッド5は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電素子から形成されたアクチュエータプレートを含むヘッドチップからインクを吐出する電気機械変換式のインクジェットヘッドである。
【0049】
このインクジェットヘッド5において、インクを吐出させるには、アクチュエータプレートに形成された吐出チャネルの駆動壁の電極間に電圧を印加して、駆動壁を厚み滑り変形させる。これにより、吐出チャネル内の容積が変化することで、吐出チャネル内のインクがノズル孔を通じて吐出される。なお、液体の吐出方式としては、上記の電気機械変換式に限らず、帯電制御方式、加圧振動方式、電気熱変換方式、静電吸引方式などであっても構わない。
【0050】
帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。
【0051】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用できる。
【0052】
図3は、一実施形態に係るインクジェットヘッド5の正面図である。
図4は、一実施形態に係るインクの流れを説明する断面図である。
図5は、
図3に示す矢視V-V断面斜視図である。
これらの図に示すように、インクジェットヘッド5は、インクを噴射するヘッド本体30(噴射部)と、駆動回路35(熱源)を冷却するためのインク(冷媒)が通過する冷却配管41と、冷却配管41の少なくとも一部が埋め込まれた冷却部材50と、を備える。
【0053】
[ヘッド本体30]
ヘッド本体30は、矩形の箱形状を有する。ヘッド本体30の下面には、インクを噴射する不図示のノズル列が設けられている。ヘッド本体30は、キャリッジ29に設置されるベース部材31に支持されている。ベース部材31は、X方向においてヘッド本体30よりも長く形成されている。ベース部材31の下面には、ヘッド本体30のノズル列を露出させる図示しない長孔が形成されている。
【0054】
[駆動回路35]
駆動回路35は、例えばヘッド本体30の動作や循環機構の動作などを制御するドライバICである。駆動回路35は、冷却部材50と熱的に接触している。図の例では、駆動回路35は、絶縁部材36を介して冷却部材50と間接的に接触している。絶縁部材36は、例えばシリコン等の絶縁材料で形成されたシート状の部材である。なお、熱源は、ドライバIC等の駆動回路35であることに限らない。熱源は、駆動により発熱するものであればよく、他の電子部品であってもよい。
【0055】
[基板部60]
インクジェットヘッド5は、駆動回路35が実装された基板部60を備える。基板部60は、複数の電気回路が実装された基板本体61と、基板本体61と上述したアクチュエータプレートの各駆動電極(駆動壁の電極)との間を電気的に接続するフレキシブル基板62と、を備える。
【0056】
基板本体61は、例えばリジット基板である。基板本体61は、不図示の連結部材を介して冷却部材50等に連結されている。基板本体61の上部には、コネクタ65が設けられている。基板本体61は、コネクタ65を介して、外部のメインコントローラーや電源等と電気的に接続されている。
【0057】
なお、基板本体61は、フレキシブル基板であっても構わない。この場合、基板本体61には、コネクタ65を設けずに、基板本体61の一部をインクジェットヘッド5の外側に延ばして、プリンタ1と直接接続してもよい。
【0058】
フレキシブル基板62は、基板本体61からY方向に離間するように斜め下方に延びている。フレキシブル基板62において斜め下方に延びた部分は、上述したアクチュエータプレートの各駆動電極に接続されている。
【0059】
フレキシブル基板62には、X方向に間隔をあけて一直線状に複数の駆動回路35が実装されている。駆動回路35は、ドライバICであり、発熱量が多い。このため、各駆動回路35から熱を受ける支持部材70が設けられている。
図3では、支持部材70を二点鎖線で示している。
【0060】
[支持部材70]
支持部材70は、例えばアルミニウム等の熱伝導性、放熱性に優れた材料で形成されている。支持部材70は、冷却部材50等を介して、Y方向に一対設けられている。支持部材70は、X方向に延びる本体部71と、本体部71のX方向の両端部に設けられた端側固定部72と、本体部71のX方向の中央部下側に設けられた中央下側固定部73と、を備える。
【0061】
本体部71は、平板状に形成されている。本体部71は、フレキシブル基板62を介して、各駆動回路35とY方向で対向している。本体部71は、各駆動回路35と熱的に接触している。
【0062】
端側固定部72は、本体部71の両端部からZ方向両側に延びている。一対の支持部材70は、冷却部材50の各貫通孔57を介して、それぞれの端側固定部72においてネジ止めされている。
【0063】
中央下側固定部73は、本体部71のX方向の中央部下側から-Z側に延びている。一対の支持部材70は、冷却部材50の中央下側凹部58を介して、それぞれの中央下側固定部73においてネジ止めされている。
【0064】
[流路部材80,90]
インクジェットヘッド5は、入口側流路部材80及び出口側流路部材90を備える。各流路部材は、例えばポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂材料から形成されている。各流路部材80,90は、L字状に形成されている。
【0065】
入口側流路部材80は、インクジェットヘッド5のX方向の一方側(+X側)に設けられている。入口側流路部材80には、上述したインク供給管21が接続される入口ポート81が設けられている。入口側流路部材80は、ボルト等の締結部材を介して、ヘッド本体30のX方向の一方側(+X側)に取り付けられている。
【0066】
入口側流路部材80は、入口ポート81からインクが流入する流入通路から分岐する第1流入分岐路82及び第2流入分岐路83を有する。第1流入分岐路82は、入口ポート81の流入通路からのインクをヘッド本体30内に導く通路である。第2流入分岐路83は、入口ポート81の流入通路からのインクを冷却配管41内に導く通路である。
【0067】
出口側流路部材90は、インクジェットヘッド5のX方向の他方側(-X側)に設けられている。出口側流路部材90には、上述したインク排出管22が接続される出口ポート91が設けられている。出口側流路部材90は、ボルト等の締結部材を介して、ヘッド本体30のX方向の他方側(-X側)に取り付けられている。
【0068】
出口側流路部材90は、出口ポート91へインクが流出する流出通路から分岐する第1流出分岐路92及び第2流出分岐路93を有する。第1流出分岐路92は、ヘッド本体30内からのインクを出口ポート91の流出通路に導く通路である。第2流出分岐路93は、冷却配管41内からのインクを出口ポート91の流出通路に導く通路である。
【0069】
[冷却配管41]
冷却配管41は、インクに対する耐食性を有する。ここで、耐食性は、インクに含浸した場合に、腐食が進行する速度を意味する。冷却配管41は、冷却部材50と比較して耐食性が高い。ここで、耐食性が高いとは、インクに対する腐食の進行が遅いことを意味する。冷却配管41は、例えばステンレス鋼で形成されている。
【0070】
なお、冷却配管41は、銅合金、チタン合金、ニッケル合金、クロム合金等で形成されていてもよい。冷却配管41は、冷却部材50と比較して、インクに対する耐食性が高い材料で形成されているとよい。例えば、冷却配管41の形成材料は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0071】
冷却配管41は、インクが通過する入口ポート81の流路(液体流路)から分岐している。冷却配管41は、冷媒としてインクが通過する冷却流路42を有する。冷却流路42は、入口側流路部材80の第2流入分岐路83と出口側流路部材90の第2流出分岐路93とに通じている。
【0072】
例えば、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を稼働すると、インクタンク4内のインクは、入口側流路部材80の入口ポート81と、第1流入分岐路82及び第2流入分岐路83とを順に経由してヘッド本体30及び冷却配管41へ送られる。その後、インクは、出口側流路部材90の第1流出分岐路92及び第2流出分岐路93と、出口ポート91とを順に経由してインクタンク4内へ戻される。
【0073】
冷却配管41は、冷却部材50に対してインサート成型されている。ここで、インサート成型は、鋳型内に入れた部品の周りに材料を入れて1つの部品として成型することを意味する。本実施形態の冷却配管41は、鋳型100内に入れた冷却配管41の周りに冷却部材50の材料を入れて1つの部品として成型されている。以下、冷却配管41と冷却部材50とを一体化した部品を「冷却ユニット40」という。
【0074】
図6は、一実施形態に係る冷却ユニット40の斜視図である。
図7は、
図6に示す矢視VII-VII断面斜視図である。
図8は、一実施形態に係る冷却部材50の凹部53A,53B,53C,53Dを説明する断面図である。
これらの図に示すように、冷却配管41は、直管形状を有する。冷却配管41は、X方向に沿って直線状に延びている。冷却配管41は、X方向に沿って延びる円筒形状を有する。
【0075】
冷却配管41の端部は、冷却部材50の外形の外側に配置されている。冷却配管41の一端部(+X側端部)は、冷却部材50の一側面(+X側面)の外側(+X側)に配置されている。冷却配管41の他端部(-X側端部)は、冷却部材50の他側面(-X側面)の外側(-X側)に配置されている。冷却部材50においてX方向両端部以外の部分(X方向中央側の部分)は、冷却部材50に埋め込まれている。
【0076】
図の例では、1本の冷却配管41が設けられているが、これに限らない。例えば、複数本の冷却配管41が設けられていてもよい。例えば、冷却配管41の設置本数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0077】
図の例では、冷却配管41の断面形状(YZ面で切断した形状)は円環形状であるが、これに限らない。例えば、冷却配管41の断面形状は、矩形枠状であってもよい。例えば、冷却配管41の断面形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0078】
[冷却部材50]
冷却部材50は、冷却配管41よりも高い熱伝導率を有する。冷却部材50は、X方向に長手を有する直方体形状に形成されている。冷却部材50は、例えばアルミニウムの単体又はアルミニウム合金で形成されている。
【0079】
なお、冷却部材50は、亜鉛合金で形成されていてもよい。冷却部材50は、冷却配管41と比較して、高い熱伝導率を有する材料で形成されているとよい。例えば、冷却部材50の形成材料は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0080】
冷却部材50は、冷却配管41を挟んで互いに反対側に配置される第1面51(-Y側面)及び第2面52(+Y側面)を有する。第1面51は、冷却配管41よりも-Y側において、XZ平面に沿う面である。第2面52は、冷却配管41よりも+Y側において、XZ平面に沿う面である。
【0081】
冷却部材50は、冷却配管41を囲む部分の少なくとも一部に凹部53A,53B,53C,53Dを有する。凹部53A,53B,53C,53Dは、冷却配管41の中心軸に対して交差する4つの方向に開口している。4つの方向は、X方向から見て、冷却配管41の中心軸に対して、+Z側かつ-Y側の方向、-Z側かつ-Y側の方向、+Z側かつ+Y側の方向、-Z側かつ+Y側の方向である。
【0082】
4つの方向に開口する凹部53A,53B,53C,53Dは、冷却部材50の第1面51の上側(+Z側)に形成された第1上側凹部53Aと、冷却部材50の第1面51の下側(-Z側)に形成された第1下側凹部53Bと、冷却部材50の第2面52の上側に形成された第2上側凹部53Cと、冷却部材50の第2面52の下側に形成された第2下側凹部53Dと、である。
【0083】
第1上側凹部53Aは、X方向から見て、冷却配管41の中心軸に対して+Z側かつ-Y側の方向に開口している。
第1下側凹部53Bは、X方向から見て、冷却配管41の中心軸に対して-Z側かつ-Y側の方向に開口している。
第2上側凹部53Cは、X方向から見て、冷却配管41の中心軸に対して+Z側かつ+Y側の方向に開口している。
第2下側凹部53Dは、X方向から見て、冷却配管41の中心軸に対して-Z側かつ+Y側の方向に開口している。
【0084】
冷却部材50は、4つの方向に開口する凹部53A,53B,53C,53Dを仕切る仕切り部54を有する。仕切り部54は、X方向から見て、冷却配管41の中心軸に対して交差するX字状を有する。仕切り部54は、X方向から見て、冷却配管41から上側(+Z側)へ延びる上側延在部54Aと、冷却配管41から下側(-Z側)へ延びる下側延在部54Bと、冷却配管41から第1面51側(-Y側)へ延びる第1面側延在部54Cと、冷却配管41から第2面52側(+Y側)へ延びる第2面側延在部54Dと、を有する。
【0085】
上側延在部54Aは、X方向から見て、第1上側凹部53Aと第2上側凹部53Cとを仕切るようにZ方向に延びている。
下側延在部54Bは、X方向から見て、第1下側凹部53Bと第2下側凹部53Dとを仕切るようにZ方向に延びている。
第1面側延在部54Cは、X方向から見て、第1上側凹部53Aと第1下側凹部53Bとを仕切るようにY方向に延びている。
第2面側延在部54Dは、X方向から見て、第2上側凹部53Cと第2下側凹部53Dとを仕切るようにY方向に延びている。
【0086】
凹部53A,53B,53C,53Dは、冷却配管41に向かって湾曲する湾曲部55A,55B,55C,55Dを有する。湾曲部55A,55B,55C,55Dは、X方向から見て冷却配管41の外周面に向かって弧状に湾曲している。
【0087】
第1上側凹部53Aは、X方向から見て、冷却配管41に向かって+Y側かつ-Z側に湾曲する第1上側曲部55Aを有する。第1上側曲部55Aは、上側延在部54Aの-Y側面と第1面側延在部54Cの+Z側面とを滑らかに繋いでいる。
第1下側凹部53Bは、X方向から見て、冷却配管41に向かって+Y側かつ+Z側に湾曲する第1下側曲部55Bを有する。第1下側曲部55Bは、下側延在部54Bの-Y側面と第1面側延在部54Cの-Z側面とを滑らかに繋いでいる。
第2上側凹部53Cは、X方向から見て、冷却配管41に向かって-Y側かつ-Z側に湾曲する第2上側曲部55Cを有する。第2上側曲部55Cは、上側延在部54Aの+Y側面と第2面側延在部54Dの+Z側面とを滑らかに繋いでいる。
第2下側凹部53Dは、X方向から見て、冷却配管41に向かって-Y側かつ+Z側に湾曲する第2下側曲部55Dを有する。第2下側曲部55Dは、下側延在部54Bの+Y側面と第2面側延在部54Dの-Z側面とを滑らかに繋いでいる。
【0088】
冷却部材50は、駆動回路35が配置される熱源配置面56を有する。図の例では、熱源配置面56を一点鎖線で示している。熱源配置面56は、冷却部材50において凹部53A,53B,53C,53D以外の部分に設けられている。
【0089】
図の例では、凹部53A,53B,53C,53Dは、Y方向から見て、角丸を有する矩形状に形成されている。図の例では、Z方向に並ぶ一対の凹部53A,53B,53C,53D(第1上側凹部53A及び第1下側凹部53B)が、X方向に間隔をあけて6組配置されている。X方向において、凹部53A,53B,53C,53D及び熱源配置面56は交互に設けられている。なお、凹部53A,53B,53C,53Dの形状、設置数、配置場所などは、これに限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0090】
熱源配置面56は、平面である。熱源配置面56は、XZ平面に沿って設けられている。熱源配置面56は、Y方向から見て、冷却配管41と重なる。例えば、熱源配置面56は、Y方向から見て、駆動回路35の外形よりも大きい外形を有しているとよい。例えば、Y方向から見て、駆動回路35が矩形形状を有する場合、熱源配置面56は駆動回路35の外形よりも大きい矩形形状を有しているとよい。図の例では、熱源配置面56は、冷却部材50においてZ方向に並ぶ一対の凹部53A,53B,53C,53D以外の部分に、X方向に間隔をあけて5箇所配置されている。
【0091】
熱源配置面56は、冷却部材50の第1面51及び第2面52のそれぞれに設けられている。例えば、熱源配置面56は、冷却部材50の第1面51及び第2面52のそれぞれにおいてZ方向に並ぶ一対の凹部53A,53B,53C,53D以外の部分に、X方向に間隔をあけて5箇所(第1面51及び第2面52を合わせて合計10箇所)配置されている。なお、熱源配置面56の形状、設置数、配置場所などは、これに限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0092】
冷却部材50のX方向端部側には、Y方向に開口する上下一対の貫通孔57が形成されている。冷却部材50のX方向中央下側には、冷却部材50の下面から+Z側に窪む中央下側凹部58が形成されている。各貫通孔57及び中央下側凹部58は、一対の支持部材70を固定するためのネジが通る部分である。図の例では、冷却部材50は、X方向両端側の上下2箇所とX方向中央下側の1箇所との合計5箇所で、ネジを介して一対の支持部材70に固定されている。
【0093】
[インクジェットヘッド5の製造方法]
本実施形態のインクジェットヘッド5の製造方法は、インクを噴射するヘッド本体30と、インクに対する耐食性を有し、駆動回路35を冷却するためのインクが通過する冷却配管41と、冷却配管41よりも高い熱伝導率を有する冷却部材50と、を備えるインクジェットヘッド5の製造方法であって、冷却部材50を製造する工程では、冷却配管41を支持した状態で鋳造する。
【0094】
インクジェットヘッドの製造方法は、ヘッド本体30を準備するヘッド本体準備工程と、冷却ユニット40を製造する冷却ユニット製造工程(冷却部材50を製造する工程)と、ヘッド本体30と冷却ユニット40とを連結するユニット連結工程と、を含む。
【0095】
ヘッド本体準備工程では、上述したアクチュエータプレート及びノズルプレート等を含むヘッド本体30を準備する。ヘッド本体準備工程の後、冷却ユニット製造工程に移行する。
【0096】
図9は、一実施形態に係る冷却ユニット製造工程を示す説明図である。
冷却ユニット製造工程では、冷却ユニット40を製造するための鋳型100を構成する一対の金型110,120と、冷却ユニット40を構成する冷却配管41と、を準備する。図の例では、一対の金型110,120は、冷却ユニット40の-Y側部に対応する第1金型110と、冷却ユニット40の+Y側部に対応する第2金型120と、である。
【0097】
第1金型110は、冷却部材50の-Y側部の外形に沿うように窪む第1本体凹部111と、冷却配管41の-Y側部のX方向外側部の外形に沿うように窪む第1端側凹部112と、を有する。第1本体凹部111及び第1端側凹部112は、第1金型110の+Y側面(第2金型120との合わせ面)から-Y側に窪んでいる。第1端側凹部112は、第1本体凹部111のX方向の両側面からX方向外側に延びている。
【0098】
第1金型110は、冷却部材50の第1上側凹部53A及び第1下側凹部53Bの外形に沿うように突出する第1上側凸部113及び第1下側凸部114と、冷却部材50のX方向両端側の一対の貫通孔57の-Y側部の外形に沿うように突出する一対の第1端側凸部115と、冷却部材50の中央下側凹部58の-Y側部の外形に沿うように突出する第1中央下側凸部116と、を有する。
【0099】
第1上側凸部113、第1下側凸部114、第1端側凸部115及び第1中央下側凸部116は、第1本体凹部111の-Y側面(底面)から+Y側に突出している。第1上側凸部113及び第1下側凸部114は、それぞれ第1上側凹部53A及び第1下側凹部53Bの湾曲部55A,55Bの外形に沿うように湾曲する第1湾曲部117を有する。第1中央下側凸部116は、第1本体凹部111の-Z側面から+Z側に突出している。
【0100】
第2金型120は、冷却部材50の+Y側部の外形に沿うように窪む第2本体凹部121と、冷却配管41の+Y側部のX方向外側部の外形に沿うように窪む第2端側凹部122と、を有する。第2本体凹部121及び第2端側凹部122は、第2金型120の-Y側面(第1金型110との合わせ面)から+Y側に窪んでいる。第2端側凹部122は、第2本体凹部121のX方向の両側面からX方向外側に延びている。
【0101】
第2金型120は、冷却部材50の第2上側凹部53C及び第2下側凹部53Dの外形に沿うように突出する第2上側凸部123及び第2下側凸部124と、冷却部材50のX方向両端側の一対の貫通孔57の+Y側部の外形に沿うように突出する一対の第2端側凸部125と、冷却部材50の中央下側凹部58の+Y側部の外形に沿うように突出する第2中央下側凸部126と、を有する。
【0102】
第2上側凸部123、第2下側凸部124、第2端側凸部125及び第2中央下側凸部126は、第2本体凹部121の+Y側面(底面)から-Y側に突出している。第2上側凸部123及び第2下側凸部124は、それぞれ第2上側凹部53C及び第2下側凹部53Dの湾曲部55C,55Dの外形に沿うように湾曲する第2湾曲部127を有する。第2中央下側凸部126は、第2本体凹部121の-Z側面から+Z側に突出している。
【0103】
次に、冷却配管41を一対の金型の一方(図の例では第2金型120)に支持させる)。図の例では、冷却配管41のX方向両側部を第2金型120の第2端側凹部122に入れる。これにより、冷却配管41のX方向中央側部は、第2上側凸部123及び第2下側凸部124で支持される。このとき、冷却配管41のX方向中央側部は、第2上側凸部123及び第2下側凸部124の第2湾曲部127に接触(線接触又は点接触)する。
【0104】
次に、第1金型110と第2金型120とを合わせる。例えば、第1金型110の合わせ面と第2金型120の合わせ面とを接触させる。これにより、冷却配管41のX方向中央側部は、第1上側凸部113及び第1下側凸部114でも支持される。このとき、冷却配管41のX方向中央側部は、第1上側凸部113及び第1下側凸部114の第1湾曲部117にも接触(線接触又は点接触)する。このため、冷却配管41のX方向中央側部は、第1上側凸部113、第1下側凸部114、第2上側凸部123及び第2下側凸部124で支持される。第1上側凸部113、第1下側凸部114、第2上側凸部123及び第2下側凸部124は、鋳造時の配管支持部(冷却配管41を支持するための部分)となる。鋳造時において、冷却配管41のX方向中央側部は、第1湾曲部117及び第2湾曲部127に接触(線接触又は点接触)する。
【0105】
次に、アルミニウムの溶湯(680℃程度)を鋳型100に入れる。例えば、第1金型110及び第2金型120を合わせた状態で、不図示の孔を通じて内部空間(冷却配管41の周囲)に上述の溶湯を入れる。冷却ユニット製造工程では、冷却配管41を支持した状態で鋳造する。鋳造後、鋳型100を分離する。これにより、冷却配管41と冷却部材50とが一体化した冷却ユニット40が得られる。冷却ユニット製造工程の後、ユニット連結工程に移行する。
【0106】
ユニット連結工程では、上述した基板部60、支持部材70及び流路部材80,90等を、不図示の連結部材及び締結部材等により、ヘッド本体30及び冷却ユニット40と連結する。以上の工程により、インクジェットヘッド5が得られる。
【0107】
[作用効果]
本実施形態のインクジェットヘッド5は、インクを噴射するヘッド本体30と、インクに対する耐食性を有し、駆動回路35を冷却するためのインクが通過する冷却配管41と、冷却配管41よりも高い熱伝導率を有し、冷却配管41の少なくとも一部が埋め込まれ、冷却配管41を囲む部分の少なくとも一部に凹部53A,53B,53C,53Dを有する冷却部材50と、を備える。
【0108】
この構成によれば、冷却配管41の少なくとも一部が埋め込まれた冷却部材50を備えることで、冷却配管41と冷却部材50との間には空隙が生じにくいため、冷却配管41から冷却部材50へ熱が伝わりやすくなる。したがって、冷却効率を向上させることができる。
加えて、鋳造時の鋳型100の配管支持部(冷却配管41を支持するための部分)に相当する部分が冷却部材50の凹部53A,53B,53C,53Dとなって表れる。したがって、鋳造時の位置ずれや変形を抑制することができる。
【0109】
本実施形態のインクジェットヘッド5において、冷却配管41は、冷却部材50に対してインサート成型されている。
この構成によれば、インサート成型により冷却配管41と冷却部材50との間には空隙が生じにくいため、冷却配管41から冷却部材50へ熱が伝わりやすくなる。したがって、冷却効率を向上させることができる。
【0110】
本実施形態のインクジェットヘッド5において、凹部53A,53B,53C,53Dは、冷却配管41の中心軸に対して交差する4つの方向に開口している。
この構成によれば、鋳造時の鋳型100の配管支持部に相当する部分が冷却部材50において4つの方向に開口する凹部53A,53B,53C,53Dとなって表れる。したがって、鋳造時の位置ずれや変形をより効果的に抑制することができる。
【0111】
本実施形態のインクジェットヘッド5において、冷却部材50は、4つの方向に開口する凹部53A,53B,53C,53Dを仕切る仕切り部54を有している。
この構成によれば、冷却部材50が4つの方向に開口する凹部53A,53B,53C,53Dを有する場合でも、仕切り部54において伝熱経路を確保することができるため、冷却効率をより効果的に向上させることができる。
【0112】
本実施形態のインクジェットヘッド5において、凹部53A,53B,53C,53Dは、冷却配管41に向かって湾曲する湾曲部55A,55B,55C,55Dを有している。
例えば、鋳造時の鋳型100の配管支持部と冷却配管41との間に空隙があると、空隙に溶けた金属が流れることによってバリが発生する可能性がある。この場合、凹部が冷却配管41に沿って湾曲する湾曲部を有すると、鋳造時の鋳型100の配管支持部と冷却配管41との間の接触部分が多くなり(面接触となり)易いため、バリが発生する可能性が高い。これに対し本構成によれば、凹部53A,53B,53C,53Dが冷却配管41に向かって湾曲する湾曲部55A,55B,55C,55Dを有することで、鋳造時の鋳型100の配管支持部と冷却配管41との間の接触部分を少なくする(線接触又は点接触とする)ことができる。したがって、バリの発生を抑制することができる。
【0113】
本実施形態のインクジェットヘッド5において、冷却部材50は、駆動回路35が配置される熱源配置面56を有し、熱源配置面56は、冷却部材50において凹部53A,53B,53C,53D以外の部分に設けられている。
この構成によれば、冷却部材50の熱源配置面56に駆動回路35を接触させることができるため、冷却効率をより効果的に向上させることができる。
【0114】
本実施形態のインクジェットヘッド5において、熱源配置面56は、平面である。
この構成によれば、駆動回路35の外面に平面がある場合、駆動回路35と熱源配置面56との接触面積を広くできるため、冷却効率をより効果的に向上させることができる。
【0115】
本実施形態のインクジェットヘッド5において、冷却部材50は、冷却配管41を挟んで互いに反対側に配置される第1面51及び第2面52を有し、熱源配置面56は、第1面51及び第2面52のそれぞれに設けられている。
【0116】
この構成によれば、複数の駆動回路35を設ける場合、冷却部材50の第1面51及び第2面52のそれぞれに駆動回路35を接触させることができるため、冷却効率をより効果的に向上させることができる。
【0117】
本実施形態のインクジェットヘッド5において、冷却配管41の端部は、冷却部材50の外形の外側に配置されている。
この構成によれば、鋳造時、冷却配管41の端部を押さえることができるため、位置ずれや変形を抑制することができる。
【0118】
本実施形態のインクジェットヘッド5において、冷却配管41は、直管形状を有している。
この構成によれば、冷却配管41が湾曲形状を有する場合と比較して、冷却配管41の寸法精度を確保しやすく、製造コストの低減を図ることができる。
【0119】
本実施形態のインクジェットヘッド5において、冷却配管41は、ステンレス鋼で形成され、冷却部材50は、アルミニウムの単体又はアルミニウム合金で形成されている。
この構成によれば、インクが冷却配管41を通過する場合、インクによる腐食を回避しつつ、高い冷却効率が得られる。
【0120】
本実施形態のインクジェットヘッド5において、冷却配管41は、インクが通過するインク流路から分岐し、冷媒としてインクが通過する冷却流路42を有している。
この構成によれば、インクをインク流路に供給するとともに、インクを冷媒として冷却流路42に供給することができる。
【0121】
本実施形態のインクジェットヘッド5は、インクを噴射するヘッド本体30と、インクに対する耐食性を有し、駆動回路35を冷却するためのインクが通過する冷却配管41と、冷却配管41よりも高い熱伝導率を有し、冷却配管41の少なくとも一部がインサート成型された冷却部材50と、を備える。
この構成によれば、インサート成型により冷却配管41と冷却部材50との間には空隙が生じにくいため、冷却配管41から冷却部材50へ熱が伝わりやすくなる。したがって、冷却効率を向上させることができる。
【0122】
本実施形態のプリンタ1は、上述したインクジェットヘッド5と、インクジェットヘッド5が取り付けられるキャリッジ29と、を備える。
この構成によれば、インクジェットヘッド5の冷却効率を向上できるプリンタ1が得られる。
【0123】
本実施形態のインクジェットヘッド5の製造方法は、インクを噴射するヘッド本体30と、インクに対する耐食性を有し、駆動回路35を冷却するためのインクが通過する冷却配管41と、冷却配管41よりも高い熱伝導率を有する冷却部材50と、を備えるインクジェットヘッド5の製造方法であって、冷却部材50を製造する工程では、冷却配管41を支持した状態で鋳造する。
この製造方法によれば、冷却配管41を支持した状態で鋳造することで、冷却配管41と冷却部材50との間には空隙が生じにくいため、冷却配管41から冷却部材50へ熱が伝わりやすくなる。したがって、冷却効率を向上させることができる。
加えて、鋳造時の位置ずれや変形を抑制することができる。
【0124】
以上、本開示の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本開示の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、及びその他の変更は、本開示の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本開示は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0125】
[変形例]
例えば、上述した実施形態では、凹部は、冷却配管の中心軸に対して交差する4つの方向に開口している構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、凹部は、冷却配管の中心軸に対して交差する3つ以下又は5つ以上の方向に開口していてもよい。例えば、凹部が開口する方向は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0126】
例えば、上述した実施形態では、冷却部材は、4つの方向に開口する凹部を仕切る仕切り部を有している構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、冷却部材は、3つ以下又は5つ以上の方向に開口する凹部を仕切る仕切り部を有していてもよい。例えば、冷却部材は、仕切り部を有していなくてもよい。例えば、仕切り部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0127】
例えば、上述した実施形態では、凹部は、冷却配管に向かって湾曲する湾曲部を有している構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、凹部は、冷却配管に沿って湾曲する湾曲部を有していてもよい。例えば、凹部は、冷却配管とは反対側に向かって湾曲する湾曲部を有していてもよい。例えば、凹部は、冷却配管に向かって突出する角部を有していてもよい。例えば、凹部は、湾曲部を有していなくてもよい。例えば、凹部の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0128】
例えば、上述した実施形態では、冷却部材は、駆動回路が配置される熱源配置面を有し、熱源配置面は、冷却部材において凹部以外の部分に設けられている構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、熱源配置面は、冷却部材の凹部に設けられていてもよい。例えば、熱源配置面の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0129】
例えば、上述した実施形態では、熱源配置面は、平面である構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、熱源配置面は、曲面を含んでいてもよい。例えば、熱源配置面は、駆動回路の一面に沿う形状であってもよい。例えば、熱源配置面の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0130】
例えば、上述した実施形態では、冷却部材は、冷却配管を挟んで互いに反対側に配置される第1面及び第2面を有し、熱源配置面は、第1面及び第2面のそれぞれに設けられている構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、熱源配置面は、第1面又は第2面のいずれか一方(片面)に設けられていてもよい。例えば、熱源配置面の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0131】
例えば、上述した実施形態では、冷却配管の端部は、冷却部材の外形の外側に配置されている構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、冷却配管の端部は、冷却部材の外形の内側又は同一面上に配置されていてもよい。例えば、冷却配管の端部の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0132】
例えば、上述した実施形態では、冷却配管は、直管形状を有している構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、冷却配管は、湾曲形状を有していてもよい。例えば、冷却配管は、直線部分及び湾曲部分を含んでいてもよい。例えば、冷却配管の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0133】
例えば、上述した実施形態では、冷却配管は、ステンレス鋼で形成され、冷却部材は、アルミニウムの単体又はアルミニウム合金で形成されている構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、冷却配管は、銅合金、チタン合金、ニッケル合金、クロム合金等で形成され、冷却部材は、亜鉛合金等で形成されていてもよい。例えば、冷却配管及び冷却部材の形成材料は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0134】
例えば、上述した実施形態では、冷却部材は、冷却配管を囲む部分の少なくとも一部に凹部を有する構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、冷却部材は、凹部を有していなくてもよい。例えば、冷却部材には、インサート成型等で冷却配管の少なくとも一部が埋め込まれていればよい。例えば、凹部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0135】
例えば、上述した実施形態では、冷却配管は、インクが通過するインク流路から分岐し、冷媒としてインクが通過する冷却流路を有している構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば、冷却流路にはインクが通過しなくてもよい。例えば、インクをインク流路に供給するとともに、インクとは別の冷媒を冷却流路に供給する構成であってもよい。例えば、
図10に示すように、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を稼働することにより、インクタンク4内のインクがインク供給管21を経由してインクジェットヘッド5へ送られ、さらにインク排出管22を経由してインクがインクタンク4内へ戻される構成であり、かつ、加圧ポンプ224及び吸引ポンプ225を稼働することにより、冷媒タンク204内の冷媒が冷媒供給管221を経由して冷却ユニット40内へ送られ、さらに冷媒排出管222を経由して冷媒が冷媒タンク204内へ戻される構成であってもよい。このように、インクの循環流路23とは別に、冷媒の循環流路223が形成されていてもよい。例えば、インク及び冷媒の流路の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0136】
また、例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置の一例として、インクジェットプリンタを例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
上述した実施形態では、印刷時にインクジェットヘッドが被記録媒体に対して移動する構成(いわゆる、シャトル機)を例にして説明をしたが、この構成に限られない。本開示に係る構成は、インクジェットヘッドを固定した状態で、インクジェットヘッドに対して被記録媒体を移動させる構成(いわゆる、固定ヘッド機)に採用してもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 … プリンタ(液体噴射記録装置)
5 … インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
29 … キャリッジ
30 … ヘッド本体(噴射部)
35 … 駆動回路(熱源)
41 … 冷却配管
42 … 冷却流路
50 … 冷却部材
51 … 第1面
52 … 第2面
53A,53B,53C,54D … 凹部
54 … 仕切り部
55A.55B,55C,55D … 湾曲部
56 … 熱源配置面