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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032175
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20240305BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240305BHJP
【FI】
B29C64/106
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135685
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 郷志
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL85
(57)【要約】
【課題】造形物の造形後にステージから造形物を分離させる際に、造形物が破損する可能性を低減可能な技術を提供する。
【解決手段】三次元造形物の製造方法は、第1造形材料を吐出して、ステージの上に剥離層を造形する第1工程と、第2造形材料を吐出して、剥離層の上に造形層を積層して造形物を造形する第2工程と、第3造形材料を吐出して、造形物の最下層の外殻の少なくとも一部に隣で接するブリム層を剥離層の上に造形する第3工程と、を備え、剥離層及びブリム層は、第2工程によって造形された造形物から分離される層である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1造形材料を吐出して、ステージの上に剥離層を造形する第1工程と、
第2造形材料を吐出して、前記剥離層の上に造形層を積層して造形物を造形する第2工程と、
第3造形材料を吐出して、前記造形物の最下層の外殻の少なくとも一部に隣で接するブリム層を前記剥離層の上に造形する第3工程と、を備え、
前記剥離層及び前記ブリム層は、前記第2工程によって造形された前記造形物から分離される層である、
三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1造形材料と前記第2造形材料とは異なる材料であり、前記第2造形材料と前記第3造形材料とは同じ材料である、三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第3工程において、前記外殻のうち、前記ステージの平面方向に沿って凸となる凸形状を有する部分に対して選択的に前記ブリム層を造形する、三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記外殻の形状を表すデータにおいて、前記外殻の輪郭線上で一定間隔離れた複数の座標からそれぞれ内向きに予め定められた長さの仮想法線を引き、各仮想法線が交わる交点の分布、又は、互いに交わる各仮想法線の分布に基づいて、前記凸形状を有する部分を特定する工程を有する、三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第2工程において造形する前記造形物の最下層が中空の形状を有する場合、前記第3工程において、前記外殻のうち、前記中空側の前記外殻に対しては前記ブリム層を造形しない、三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第2工程において長手方向の長さが第1長さの前記造形物を造形する場合、前記第3工程において前記ブリム層を第1サイズで造形し、又は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との接触強度が第1強度となるように前記ブリム層を造形し、
前記第2工程において長手方向の長さが前記第1長さより大きい第2長さの前記造形物を造形する場合、前記第3工程において前記ブリム層を前記第1サイズよりも大きい第2サイズで造形し、又は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との接触強度が前記第1強度よりも大きい第2強度となるように前記ブリム層を造形する、
三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第2工程において積層方向の厚みが第1厚みの前記造形物を造形する場合、前記第3工程において前記ブリム層を第1サイズで造形し、又は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との接触強度が第1強度となるように前記ブリム層を造形し、
前記第2工程において前記積層方向の厚みが前記第1厚みよりも大きい第2厚みの前記造形物を造形する場合、前記第3工程において前記ブリム層を前記第1サイズよりも大きい第2サイズで造形し、又は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との接触強度が前記第1強度よりも大きい第2強度となるように前記ブリム層を造形する、
三次元造形物の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記接触強度は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との接触面積、又は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との造形間隔によって調整される、
三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、三次元造形物の造形時に反りが発生することを抑制するために、造形対象層の外周のうち、反りが生じると予測される部位に接するように円形のブリムを造形することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-72943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献では、ブリムを造形することで造形物の反りを抑制可能である。しかし、ブリムを造形することでステージと造形物とが強固に密着するため、造形後にステージから造形物を分離させる際に、造形物が破損する可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、第1造形材料を吐出して、ステージの上に剥離層を造形する第1工程と、第2造形材料を吐出して、前記剥離層の上に造形層を積層して造形物を造形する第2工程と、第3造形材料を吐出して、前記造形物の最下層の外殻の少なくとも一部に隣で接するブリム層を前記剥離層の上に造形する第3工程と、を備え、前記剥離層及び前記ブリム層は、前記第2工程によって造形された前記造形物から分離される層である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図。
図2】フラットスクリューの概略構成を示す斜視図。
図3】バレルの概略平面図。
図4】造形物を造形する基本動作を模式的に示す説明図。
図5】三次元造形処理のフローチャート。
図6】ステージ上に剥離層が造形された様子を示す側面図。
図7】造形物の最下層が造形された様子を示す側面図。
図8】第1実施形態におけるブリム層の形状を示す平面図。
図9】造形物及びブリム層を模式的に示す斜視図。
図10】第2実施形態において造形されるブリム層の形状を示す平面図。
図11】部分的に円形の形状を有するブリム層の充填パターンの例を示す図。
図12】制御部が凸部を検出する方法を示す説明図。
図13】第2実施形態における造形物及びブリム層を模式的に示す斜視図。
図14】凸部同士の間隔が短い造形物の例を示す図。
図15】造形物の最下層が中空の形状を有する例を示す図。
図16】第3実施形態においてブリム層の大きさを可変させる方法を示す説明図。
図17】第4実施形態において接触強度を可変させる第1の方法を示す説明図。
図18】第4実施形態において接触強度を可変させる第2の方法を示す説明図。
図19】第5実施形態において接触強度を可変させる方法を示す説明図。
図20】第7実施形態における造形物の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向及びY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、鉛直上向きに沿った方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、方向の向きを特定する場合には、各図において矢印が指し示す方向を「+」、その反対の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。
【0008】
本実施形態の三次元造形装置100は、材料押出方式によって造形物を造形する装置である。三次元造形装置100は、造形材料を生成して吐出する造形部110と、造形物の基台となる造形用のステージ210と、造形材料の吐出位置を制御する移動機構230と、三次元造形装置100の各部を制御するための制御部300とを備える。図1には、造形部110が1つ示されているが、本実施形態では、異なる造形材料を生成して吐出する複数の造形部110が三次元造形装置100に備えられている。それぞれの造形部110の構成は同じである。
【0009】
造形部110は、制御部300の制御下において、固体状態の材料を可塑化させた造形材料をステージ210上に吐出する。造形部110は、造形材料に転化される前の原材料の供給源である材料供給部20と、原材料を造形材料へと転化させる可塑化部30と、造形材料を吐出する吐出部60とを備える。
【0010】
材料供給部20は、可塑化部30に、原材料MRを供給する。材料供給部20は、例えば、原材料MRを収容するホッパーによって構成される。材料供給部20は、連通路22を介して、可塑化部30に接続されている。原材料MRは、ペレットや粉末等の形態で材料供給部20に投入される。原材料としては、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂材料が用いられる。
【0011】
可塑化部30は、材料供給部20から供給された原材料MRを可塑化させて流動性を発現させたペースト状の造形材料を生成し、吐出部60へと導く。本実施形態において「可塑化」とは 、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0012】
可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50と、を有する。フラットスクリュー40は、ローターあるいはスクロールとも呼ばれる。バレル50は、スクリュー対面部とも呼ばれる。
【0013】
図2は、フラットスクリュー40の下面48側の概略構成を示す斜視図である。図2に示したフラットスクリュー40は、技術の理解を容易にするため、図2に示した上面47と下面48との位置関係を、鉛直方向において逆向きとした状態で示されている。図3は、バレル50の上面52側を示す概略平面図である。フラットスクリュー40は、その中心軸に沿った方向である軸線方向における長さが、軸線方向に垂直な方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。フラットスクリュー40は、その回転中心となる回転軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0014】
図1に示すように、フラットスクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。フラットスクリュー40の上面47は駆動モーター32に連結されており、フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。駆動モーター32は、制御部300の制御下において駆動する。なお、フラットスクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。
【0015】
図2に示すように、フラットスクリュー40の、回転軸RXと交差する面である下面48には、渦状の溝部42が形成されている。上述した材料供給部20の連通路22は、フラットスクリュー40の側面から、当該溝部42に連通する。本実施形態では、溝部42は、凸条部43によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部42の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本以上であってもよい。溝部42は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0016】
フラットスクリュー40の下面48は、バレル50の上面52に対面しており、フラットスクリュー40の下面48の溝部42と、バレル50の上面52との間には空間が形成される。フラットスクリュー40とバレル50との間のこの空間には、材料供給部20から図2に示した材料流入口44を通じて原材料MRが供給される。
【0017】
図1に示すように、バレル50には、回転しているフラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRを加熱するためのバレルヒーター58が埋め込まれている。バレル50の中心には連通孔56が設けられている。図3に示すように、バレル50の上面52には、連通孔56に接続され、連通孔56から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝54が形成されている。なお、案内溝54の一端は、連通孔56に接続されていなくてもよい。また、案内溝54は省略することも可能である。
【0018】
フラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRは、溝部42内において可塑化されながら、フラットスクリュー40の回転によって溝部42に沿って流動し、造形材料としてフラットスクリュー40の中央部46へと導かれる。中央部46に流入した流動性を発現しているペースト状の造形材料は、バレル50の中心に設けられた連通孔56を介して吐出部60に供給される。なお、造形材料では、造形材料を構成する全ての種類の物質が可塑化していなくてもよい。造形材料は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が可塑化することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0019】
図1の吐出部60は、造形材料を吐出するノズル61と、フラットスクリュー40とノズル開口62との間に設けられた造形材料の流路65と、造形材料の吐出を制御する吐出制御部77とを備える。
【0020】
ノズル61は、流路65を通じて、バレル50の連通孔56に接続されている。ノズル61は、可塑化部30において生成された造形材料を、先端のノズル開口62からステージ210に向かって吐出する。
【0021】
吐出制御部77は、流路65を開閉する吐出調整部70と、造形材料を吸引して一時的に貯留する吸引部75とを備える。
【0022】
吐出調整部70は、流路65内に設けられており、流路65内で回転することにより流路65の開度を変化させる。本実施形態において、吐出調整部70は、バタフライバルブによって構成されている。吐出調整部70は、制御部300による制御下において、第1駆動部74によって駆動される。第1駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。制御部300は、第1駆動部74を用いて、バタフライバルブの回転角度を制御することによって、可塑化部30からノズル61に流れる造形材料の流量、つまり、ノズル61から吐出される造形材料の吐出量を調整することができる。吐出調整部70は、造形材料の吐出量を調整可能であると共に、造形材料の流出のオン/オフを制御可能である。
【0023】
吸引部75は、流路65において吐出調整部70とノズル開口62との間に接続されている。吸引部75は、ノズル61からの造形材料の吐出停止時に、流路65中の造形材料を一時的に吸引することによって、造形材料がノズル開口62から糸を引くように垂れる尾引き現象を抑制する。本実施形態において、吸引部75は、プランジャーにより構成されている。吸引部75は、制御部300による制御下において、第2駆動部76によって駆動される。第2駆動部76は、例えば、ステッピングモーターや、ステッピングモーターの回転力をプランジャーの並進運動に変換するラックアンドピニオン機構等によって構成される。
【0024】
ステージ210は、ノズル61のノズル開口62に対向する位置に配置されている。第1実施形態では、ノズル61のノズル開口62に対向するステージ210の造形面211は、X,Y方向、すなわち水平方向に平行となるように配置される。ステージ210には、ステージ210上に吐出された造形材料が急激に冷却することを抑制するためのステージヒーターが備えられてもよい。
【0025】
移動機構230は、制御部300の制御下において、ステージ210とノズル61との相対位置を変化させる。本実施形態では、ノズル61の位置が固定されており、移動機構230は、ステージ210を移動させる。移動機構230は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ210をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。本明細書において、特に断らない限り、ノズル61の移動とは、ノズル61や吐出部60をステージ210に対して相対的に移動させることを意味する。
【0026】
なお、他の実施形態では、移動機構230によってステージ210を移動させる構成の代わりに、ステージ210の位置が固定された状態で、移動機構230がステージ210に対してノズル61を移動させる構成が採用されてもよい。また、移動機構230によってステージ210をZ方向に移動させ、ノズル61をX,Y方向に移動させる構成や、移動機構230によってステージ210をX,Y方向に移動させ、ノズル61をZ方向に移動させる構成が採用されてもよい。これらの構成であっても、ノズル61とステージ210との相対的な位置関係が変更可能である。
【0027】
制御部300は、1つ、又は、複数のプロセッサー310と、主記憶装置や補助記憶装置からなる記憶部320と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。プロセッサー310は、記憶部320に記憶されたプログラムを実行することによって、記憶部320に記憶された造形データに従い、造形部110及び移動機構230を制御して、ステージ210上にモデルの造形を行う。造形物を造形するための造形データは、造形物の形状を複数にスライスした層毎に、ノズル61の移動経路を表す経路情報と、各移動経路における造形材料の吐出量を表す吐出量情報と含む。ノズル61の移動経路とは、ノズル61が、造形材料を吐出しながら、ステージ210の造形面211に沿って相対的に移動する経路である。なお、制御部300は、コンピューターによって構成される代わりに、回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0028】
図4は、三次元造形装置100が造形物を造形する基本動作を模式的に示す説明図である。三次元造形装置100では、上述したように、固体状態の原材料MRが可塑化されて造形材料MMが生成される。制御部300は、ステージ210の造形面211とノズル61との距離を保持したまま、ステージ210の造形面211に沿った方向に、ステージ210に対するノズル61の位置を変えながら、ノズル61から造形材料MMを吐出させる。ノズル61から吐出された造形材料MMは、ノズル61の移動方向に連続して堆積されていく。
【0029】
制御部300は、ノズル61の移動を繰り返して造形層MLを形成する。制御部300は、1つの造形層MLを形成した後、ステージ210に対するノズル61の位置を、Z方向に相対移動させる。そして、これまでに形成された造形層MLの上に、更に造形層MLを積み重ねることによって造形物を造形していく。
【0030】
制御部300は、例えば、一層分の造形層MLを完了した場合のノズル61のZ方向への移動や、各造形層で独立する複数の造形領域がある場合には、ノズル61からの造形材料の吐出を一時的に中断させることがある。この場合、吐出調整部70によって流路65を閉塞させて、ノズル開口62からの造形材料MMの吐出を停止させ、吸引部75によって、ノズル61内の造形材料を一時的に吸引する。制御部300は、ノズル61の位置を変更した後、吸引部75内の造形材料を排出しつつ吐出調整部70によって流路65を開くことによって、変更後のノズル61の位置から造形材料MMの堆積を再開させる。
【0031】
図5は、制御部300によって実行される三次元造形処理のフローチャートである。この三次元造形処理が実行されることによって、三次元造形物の製造方法が実現される。
【0032】
ステップS10において、制御部300は、第1造形材料を吐出する造形部110と移動機構230とを制御して、ステージ210の造形面211上に剥離層を造形する。剥離層は、造形物をステージ210から容易に剥離可能とするための層である。剥離層のことを、「ラフト」ともいう。第1造形材料は、例えば、PPである。
【0033】
図6は、ステージ210上に剥離層PLが造形された様子を示す側面図である。剥離層PLを構成する層の数は、例えば、1~10層であり、ユーザーが任意に指定することができる。剥離層PLは、仮のステージとして利用される。
【0034】
図5に示すステップS20において、制御部300は、第2造形材料を吐出する造形部110と移動機構230とを制御して、造形データに従い、剥離層PLの上に、造形物の最下層を造形する。第2造形材料は、例えば、ABSである。本実施形態では、第2造形材料は、第1造形材料と異なる材料である。つまり、剥離層PLと造形物とは、それぞれ異なる造形材料によって造形される。
【0035】
図7は、造形物の最下層L1が造形された様子を示す側面図である。図7に示すように、造形物の最下層L1のステージ210に沿った大きさは、剥離層PLの大きさよりも小さい。
【0036】
図5に示すステップS30において、制御部300は、第3造形材料を吐出する造形部110と移動機構230とを制御して、ブリム層を造形する。ブリム層は、造形物が剥離層PLから剥がれることを抑制するための層である。本実施形態では、第3造形材料は第2造形材料と同じ材料である。そのため、第3造形材料を吐出する造形部110は、第2造形材料を吐出する造形部110と同じ造形部110である。本実施形態では、第3造形材料は第2造形材料と同じ材料であることから、ブリム層は、造形物と同じ造形材料によって造形される。なお、ステップS20とステップS30とは順番を入れ替えてもよい。つまり、造形物の最下層を造形する前に、ブリム層を造形してもよい。
【0037】
図8は、第1実施形態におけるブリム層BLの形状を示す平面図である。制御部300は、造形物の最下層L1の外殻に隣で接するブリム層BLを剥離層PLの上に造形する。「隣で接する」とは、造形物の最下層L1の外殻と、ブリム層BLとが、隣同士に配置され接触していることをいう。図8に示したブリム層BLは、造形物の最下層L1の外殻に沿って、一定の幅で最下層L1を囲うように造形されている。
【0038】
図5のステップS40において、制御部300は、第2造形材料を吐出する造形部110及び移動機構230を制御して、造形データに従い、造形物の残りの層、すなわち、最下層L1以外の層を造形する。図9は、剥離層PL上に造形された造形物MD及びブリム層BLを模式的に示す斜視図である。
【0039】
図5のステップS50において、剥離層PL及びブリム層BLは、ステップS20及びステップS40の工程によって造形された造形物MDから分離される。
【0040】
以上で説明した一連の工程によって三次元造形物が造形される。なお、上述したステップS10のことを、「第1工程」ともいう。ステップS20及びステップS40のことを、「第2工程」ともいう。ステップS30のことを、「第3工程」ともいう。
【0041】
以上で説明した第1実施形態によれば、ステージ210上に造形された剥離層PLの上に造形物MDを造形し、更に、造形物MDの最下層L1の外殻に隣で接するブリム層BLを、剥離層PL上に造形する。そのため、剥離層PL上に造形物MD及びブリム層BLを造形することで、造形物MDの反りを抑制しつつ、造形物MDの剥離性を向上させることができる。そのため、造形物MDをステージ210から分離させる際に、造形物MDが破損する可能性を低減することができる。
【0042】
また、本実施形態では、造形物MDとブリム層BLとは、同じ第2造形材料で造形され、剥離層PLは、造形物MD及びブリム層BLとは、異なる第1造形材料で造形される。そのため、造形物MDと剥離層PLとの収縮率の差によって造形物MDが剥離層PLから剥離するおそれがある場合でも、造形物MDとブリム層BLとが同じ造形材料で造形されているので、剥離層PLに対する接触面積が増え、造形物MDの剥離層PLへの密着度を高めることができる。また、造形物MDとブリム層BLとが同じ造形材料で造形されているので、ブリム層BLが造形物MDから分離してしまうことや、ブリム層BLと造形物MDとの境界部分に歪みが発生することを抑制できる。
【0043】
なお、第1実施形態では、第1造形材料と第2造形材料とは異なる材料であり、第2造形材料と第3造形材料とは同じ材料であるものとした。これに対して、例えば、第1造形材料と第2造形材料と第3造形材料とは、それぞれ同じ材料であってもよい。この場合、三次元造形装置100は、1つの造形部110を備えていればよい。また、第1造形材料と第2造形材料と第3造形材料とは、それぞれ異なる造形材料であってもよい。この場合、三次元造形装置100は、少なくとも3つの造形部110を備える。
【0044】
B.第2実施形態:
図10は、第2実施形態において造形されるブリム層BLの形状を示す平面図である。第2実施形態は、三次元造形装置100によって造形されるブリム層BLの形状が第1実施形態と異なる。三次元造形装置100の構成、及び、三次元造形処理の流れは第1実施形態と同じである。
【0045】
第2実施形態では、図5に示した三次元造形処理のステップS30において、制御部300は、造形物MDの最下層L1の外殻の一部に隣で接するブリム層BLを剥離層PLの上に造形する。より具体的には、制御部300は、造形物MDの最下層L1の外殻のうち、ステージ210の平面方向に沿って凸となる凸形状を有する部分に対して選択的にブリム層BLを形成する。造形物の最下層L1の外殻のうちの凸形状を有する部分のことを、以下では凸部ともいう。図10に示した例では、ブリム層BLは、部分的に円形の形状、具体的には、中心角が270度の扇形の形状を有している。扇形の中心角は、凸部の内角に応じて定まる。第2実施形態において、ブリム層BLの半径の大きさは、予め定められている。なお、ブリム層BLの半径の大きさは、ユーザーが任意に設定可能であってもよい。
【0046】
図11は、部分的に円形の形状を有するブリム層BLの充填パターンの例を示す図である。図11に示した例では、ブリム層BLの外殻が3本の経路によって形成され、外殻の内側の内部領域が、Y方向に沿って往復する一筆書きの経路によって埋められている。なお、ブリム層BLの形状は、部分的に円形の形状に限らず、例えば、部分的に長方形の形状でもよいし、多角形の形状であってもよい。
【0047】
図12は、制御部300が凸部を検出する方法を示す説明図である。第2実施形態において、制御部300は、図5に示した三次元造形処理のステップS30において、造形物MDの最下層L1の外殻に含まれる凸部を特定する。具体的には、制御部300は、造形物MDの最下層L1の外殻の形状を表す造形データにおいて、外殻の輪郭線OL上で一定間隔離れた複数の座標からそれぞれ内向きに予め定められた長さの仮想法線VNを引き、各仮想法線VNが交わる交点の分布に基づいて、凸部を特定する。
【0048】
図12に示した造形物Aでは、輪郭線OLの角部が直角であるため、予め定められた大きさの検出領域DA内において、仮想法線VNが複数の交点において交わっている。これに対して、造形物Bでは、輪郭線OLが曲線状であるため、検出領域DA内において、仮想法線VNの交点が造形物Aよりも少なく、図12に示した例ではゼロである。制御部300は、造形物MDの輪郭線OLに沿って検出領域DAを移動させていき、検出領域DA内における仮想法線VNの交点の数と、予め定められた閾値とを比較し、交点の数が閾値よりも多い場合に、その部分に凸部があると判断する。
【0049】
図5のステップS40において、制御部300は、造形部110及び移動機構230を制御して、造形データに従い、造形物の残りの層を造形する。図13は、第2実施形態において剥離層PL上に造形された造形物MD及びブリム層BLを模式的に示す斜視図である。
【0050】
以上で説明した第2実施形態では、造形物MDの最下層L1の外殻のうち、ステージ210の平面方向に沿って凸となる凸部に対して選択的にブリム層BLを造形する。そのため、造形物がその凸部から剥離することを抑制できる。また、ブリム層BLを造形するための造形材料を削減することができる。
【0051】
また、第2実施形態では、造形物の最下層の外殻の輪郭線OL上で一定間隔離れた複数の座標からそれぞれ内向きに所定長さの仮想法線VNを引き、各仮想法線VNが交わる交点の分布に基づいて、凸部を特定する、そのため、凸部を簡易な処理で特定できる。
【0052】
凸部の検出方法は、上述した方法に限られない。例えば、制御部300は、造形物MDの最下層L1の外殻の輪郭線OLを構成する直線同士の接続角度や、1つの角部を形成する直線の接続数などに応じて凸部を特定してもよい。
【0053】
その他、互いに交わる仮想法線の分布に基づいて凸部を特定してもよい。具体的には、検出領域DA内において互いに交わる仮想法線VNの数と、予め定められた閾値とを比較し、互いに交わる仮想法線VNの数が閾値よりも多い場合に、その部分に凸部があると判断してもよい。
【0054】
図14は、凸部同士の間隔が短い部分を有する造形物の例を示す図である。第2実施形態において、制御部300は、造形物の最下層L1の外殻の輪郭おいて、凸部同士の間隔Dが、予め定められた閾値よりも短い場合には、いずれか一方の凸部に対してブリム層BLを造形し、他方に対してブリム層BLを造形しなくてもよい。こうすることによって、ブリム層BLが過度に造形されることによって造形物の剥離性が低下することを抑制できる。なお、図14に示した例では、内側に凸となる部分Pは、へこみ部であり、凸部ではないため、その部分Pに対してブリム層BLは造形されていない。
【0055】
図15は、造形物の最下層L1が、中空の形状を有する例を示す図である。図15には、造形物の最下層L1を表す部分に対してハッチングを付している。第2実施形態において、制御部300は、造形物MDの最下層L1の形状が、中空の形状を有する場合、最下層L1の外殻の中空側に凸部CPが存在していたとしても、その凸部CPに対してはブリム層BLを造形しなくてもよい。中空側の凸部CPは造形中に剥離する可能性が低いためである。中空側の凸部CPに対してブリム層BLを造形しないことにより、ブリム層BLが過度に造形されることによって造形物の剥離性が低下することを抑制できる。
【0056】
C.第3実施形態:
図16は、第3実施形態においてブリム層BLの大きさを可変させる方法を示す説明図である。上記第2実施形態では、制御部300は、造形物の最下層L1の外殻の凸部に対して、予め定められた大きさのブリム層BLを造形する。これに対して、第3実施形態では、制御部300は、ブリム層BLの大きさを可変させる。三次元造形装置100の構成、及び、三次元造形処理の流れは第1実施形態と同じである。
【0057】
第3実施形態において、制御部300は、図5に示した三次元造形処理のステップS30において、造形物MDの最下層L1の外殻のうちの凸部に対して造形するブリム層BLの大きさを、造形物MDの長手方向の長さ、より詳しくは、造形物の最下層L1の長手方向の長さに応じて可変させる。具体的には、制御部300は、図16に示す造形物Cのように、最下層L1の長手方向の長さが、第1長さD1の造形物Cを造形する場合、ブリム層BLを第1サイズS1で造形し、造形物Dのように、最下層L1の長手方向の長さが第1長さD1より大きい第2長さD2の造形物を造形する場合、ブリム層BLを第1サイズS1よりも大きい第2サイズS2で造形する。つまり、本実施形態において制御部300は、造形物の長手方向の長さが長いほど、ブリム層BLの大きさを大きくする。なお、本実施形態では、造形物Eのように、最下層L1の長手方向の長さが、予め定められた長さよりも小さい場合、制御部300は、ステップS30においてブリム層BLの造形を行わない。
【0058】
以上で説明した第3実施形態によれば、造形物の長手方向の長さが長いほど、ブリム層BLの大きさを大きくするので、長さの長い造形物の反りを効果的に抑制できる。また、長手方向の長さが短い場合には、小さなブリム層BLが造形されるか、又は、ブリム層BLの造形が行われない。そのため、反る可能性の低い造形物については、造形物の剥離性を向上させることができる。
【0059】
D.第4実施形態:
図17及び図18は、第4実施形態において接触強度を可変させる方法を示す説明図である。第3実施形態では、制御部300は、造形物の長手方向の長さに応じてブリム層BLの大きさを可変させている。これに対して、第4実施形態では、制御部300は、造形物の長手方向の長さに応じて造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触強度を可変させる。三次元造形装置100の構成、及び、三次元造形処理の流れは第1実施形態と同じである。
【0060】
第4実施形態において、制御部300は、造形物の長手方向の長さが第1長さの造形物を造形する場合、造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触強度が第1強度となるようにブリム層BLを造形する。また、制御部300は、造形物の長手方向の長さが第1長さより大きい第2長さの造形物を造形する場合、造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触強度が第1強度よりも大きい第2強度となるようにブリム層BLを造形する。つまり、制御部300は、造形物の長手方向の長さが長いほど、ブリム層BLと、造形物の最下層L1の外殻との接触強度を大きくする。接触強度とは、造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触の度合いのことをいう。
【0061】
図17には、接触強度を可変させる第1の方法を示している。制御部300は、図17に示すように、造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとが接触する接触面積を小さくすることによって、接触強度を小さくすることができる。図17では、ブリム層BLの造形位置を造形物の最下層L1の外殻から遠ざけることで接触面積を小さくしている。接触面積は、ブリム層BLの造形位置を可変させるのではなく、ブリム層BLの大きさを図16のように変化させることでも調整可能である。
【0062】
図18には、接触強度を可変させる第2の方法を示している。制御部300は、図18に示すように、造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの造形間隔GPを大きくすることによっても、接触強度を小さくすることができる。なお、造形間隔GPとは、剥離層PL上に堆積された造形材料同士の間隔ではなく、ノズル61が移動する経路同士の間隔のことをいう。
【0063】
以上で説明した第4実施形態によれば、造形物の長手方向の長さに応じて造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触強度を可変させることで、長さの長い造形物の反りを効果的に抑制できる。
【0064】
E.第5実施形態:
図19は、第5実施形態において接触強度を可変させる方法を示す説明図である。第4実施形態では、制御部300は、造形物の長手方向の長さに応じて造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触強度を可変させている。これに対して、第5実施形態では、制御部300は、造形物のZ方向の大きさ、つまり、造形物の積層方向の厚みに応じて造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触強度を可変させる。三次元造形装置100の構成、及び、三次元造形処理の流れは第1実施形態と同じである。
【0065】
第5実施形態において、制御部300は、図19に示す造形物Fのように、造形物の積層方向の厚みが第1厚みT1の造形物を造形する場合、造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触強度が第1強度となるようにブリム層BLを造形する。また、制御部300は、図19に示す造形物Gのように、造形物の積層方向の厚みが第1厚みより大きい第2厚みT2の造形物を造形する場合、造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触強度が第1強度よりも大きい第2強度となるようにブリム層BLを造形する。図19では、ブリム層BLと造形物の最下層L1の外殻との接触面積を可変させることで接触強度を調整している。つまり、第5実施形態では、造形物の積層方向の厚みが大きいほど、造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触強度を大きくする。造形物の積層方向の厚みが大きければ、造形物の収縮応力の大きさも大きくなり、反りが発生する可能性が高くなるためである。接触強度の調整は、第4実施形態で説明したように、ブリム層BLと造形物の外殻との造形間隔を可変させることで行ってもよい。
【0066】
以上で説明した第5実施形態によれば、造形物の積層方向の厚みに応じて造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触強度を可変させることで、積層方向の厚みが大きい造形物に反りが生じることを効果的に抑制できる。
【0067】
F.第6実施形態:
第4実施形態及び第5実施形態では、制御部300は、造形物の長手方向の長さあるいは造形物の積層方向の厚みに応じて造形物の最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触強度を可変させている。これに対して、第6実施形態では、造形物の長手方向の長さあるいは造形物の積層方向の厚みに応じて、造形物とブリム層BLの接触強度ではなく、剥離層PLとブリム層BLとの接触強度を可変させる。三次元造形装置100の構成、及び、三次元造形処理の流れは第1実施形態と同じである。
【0068】
第6実施形態において、制御部300は、造形物の長手方向の長さが第1長さの造形物あるいは造形物の積層方向の厚みが第1厚みの造形物を造形する場合、剥離層PLとブリム層BLとの接触強度が第1強度となるようにブリム層BLを造形する。また、制御部300は、造形物の長手方向の長さが第1長さより大きい第2長さの造形物あるいは造形物の積層方向の厚みが第1厚みよりも大きい第2厚みの造形物を造形する場合、剥離層PLとブリム層BLとの接触強度が第1強度よりも大きい第2強度となるようにブリム層BLを造形する。つまり、造形物の長手方向の長さが長いほど、あるいは、造形物の積層方向の厚みが大きいほど、剥離層PLとブリム層BLとの接触強度を大きくする。
【0069】
以上で説明した第6実施形態によっても、剥離層PLとブリム層BLとの接触強度を調整することで、第4実施形態や第5実施形態と同様に、長手方向の長さが大きい造形物や積層方向の厚みが大きい造形物に反りが生じることを効果的に抑制できる。なお、剥離層PLとブリム層BLの接触強度は、剥離層PLとブリム層BLの接触面積や、剥離層PLとブリム層BLの造形間隔GPを調整することで調整可能である。剥離層PLとブリム層BLの造形間隔GPは、例えば、ブリム層BLを剥離層PL上に造形する際に、剥離層PLからのノズル61の高さを可変させることによって調整可能である。
【0070】
G.第7実施形態:
図20は、第7実施形態における造形物MDの斜視図である。上述した第1~6実施形態では、造形物MDの最下層L1の外殻の少なくとも一部に隣で接するブリム層BLを剥離層PLの上に造形している。これに対して、第7実施形態では、制御部300は、造形物MDのオーバーハングやブリッジを下方から支持するサポート部SBの最下層に対しても、造形物MDの最下層と同様に、ブリム層BLを造形する。つまり、サポート部SBも、造形物MDの一部として、ブリム層BLの造形対象とする。サポート部SBと造形物MDの造形材料が異なる場合、サポート部SBに対して造形するブリム層BLの造形材料は、サポート部SBを造形する造形材料と同一の造形材料であることが好ましい。
【0071】
以上で説明した第7実施形態によれば、造形物MDだけではなく、サポート部SBに反りが発生することを抑制できる。なお、図20に示した例では、制御部300は、造形物MDとサポート部SBとの境界には、ブリム層BLを造形していない。これに対して、制御部300は、造形物MDとサポート部SBの境界にブリム層BLを造形してもよい。こうすることによって、造形物MDとサポート部SBとの境界から、造形物MDあるいはサポート部SBが反ることを抑制できる。
【0072】
H.他の実施形態:
(H1)上記第4,5実施形態では、造形物MDの最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触面積や造形間隔を、造形物MDの長手方向の大きさや積層方向の厚みに応じて可変させている。これに対して、造形物MDの最下層L1の外殻とブリム層BLとの接触面積や造形間隔は、造形物MDの長手方向の大きさや積層方向の厚みにかかわらず、造形材料の種類や造形材料の線幅、造形物MDの形状などに応じて任意に指定可能であってもよい。こうすることによって、造形物の除去性を容易に調整できる。
【0073】
(H2)上記実施形態では、制御部300は、造形物の最下層L1に隣接するように、ブリム層BLを1層、造形している。これに対してブリム層BLの層数は、ユーザーが任意に指定可能であってもよい。例えば、造形物の2層目や3層目にも、それらの隣で接するようにブリム層BLを複数層、造形してもよい。
【0074】
(H3)第2実施形態における凸部の検出方法や、第3~7実施形態におけるブリム層BLの大きさや接触強度の調整は、三次元造形装置100に備えられた制御部300ではなく、造形データを生成する情報処理装置において実行されてもよい。つまり、造形データを生成する情報処理装置が、三次元CADデータなどの形状データから造形データを生成する際に、凸部の検出や、ブリム層BLの大きさや接触強度の調整を行い、造形物を造形するための造形データに、ブリム層を造形する造形データを含ませてもよい。また、情報処理装置は、造形物を造形するための造形データに、剥離層PLを造形するための造形データを含ませてもよい。
【0075】
(H4)上記第5,6実施形態では、図19に示したように、積層方向の厚みが均一な造形物を例として説明した。これに対して、図19に示した造形物F及び造形物Gは、それぞれ、1の造形物の中で積層方向の厚みが異なる部分を有していてもよい。この場合、造形物Fの中で最も厚い部分の厚みを第1厚みT1、造形物Gの中で最も厚い部分の厚みを第2厚みT2として、造形物F,Gのブリム層BLの大きさや接触強度の調整を行ってもよい。また、1の造形物の中で造形物の積層方向の厚みが異なる部分が存在する場合、1の造形物の中で、各部の厚みに応じたブリム層を造形してもよい。つまり、1の造形物の中で第1厚みT1を有する部分と、第2厚みT2を有する部分とで、ブリム層BLの大きさや接触強度の調整を行ってもよい。
【0076】
(H5)上記実施形態において、造形部110は、フラットスクリュー40によって材料を可塑化している。これに対して造形部110は、例えば、インラインスクリューを回転させることによって材料を可塑化するものであってもよい。また、造形部110は、フィラメント状の材料をヒーターで可塑化するものであってもよい。
【0077】
(H6)上記実施形態では、可塑化した材料を積層する材料押出方式を例として説明したが、本開示は、インクジェット方式や、DMD方式(Direct Metal Deposition)、バインダージェット方式等、種々の方式に適用できる。
【0078】
I.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0079】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、第1造形材料を吐出して、ステージの上に剥離層を造形する第1工程と、第2造形材料を吐出して、前記剥離層の上に造形層を積層して造形物を造形する第2工程と、第3造形材料を吐出して、前記造形物の最下層の外殻の少なくとも一部に隣で接するブリム層を前記剥離層の上に造形する第3工程と、を備え、前記剥離層及び前記ブリム層は、前記第2工程によって造形された前記造形物から分離される層である。
このような形態によれば、剥離層上に造形物及びブリム層を造形することで、造形物の反りを抑制しつつ造形物の剥離性を向上させることができる。
【0080】
(2)上記形態において、前記第1造形材料と前記第2造形材料とは異なる材料であり、前記第2造形材料と前記第3造形材料とは同じ材料であってもよい。このような形態であれば、剥離層と造形物とを異なる材料で造形することで、造形物の剥離性を向上させることができ、造形物とブリム層とを同じ材料で造形することで、造形物の反りをより効果的に抑制できる。
【0081】
(3)上記形態において、前記第3工程において、前記外殻のうち、前記ステージの平面方向に沿って凸となる凸形状を有する部分に対して選択的に前記ブリム層を造形してもよい。このような形態によれば、凸形状を有する部分から造形物が剥離することを抑制できる。
【0082】
(4)上記形態において、前記外殻の形状を表すデータにおいて、前記外殻の輪郭線上で一定間隔離れた複数の座標からそれぞれ内向きに予め定められた長さの仮想法線を引き、各仮想法線が交わる交点の分布、又は、互いに交わる各仮想法線の分布に基づいて、前記凸形状を有する部分を特定する工程を有してもよい。このような形態によれば、凸形状を有する部分を簡易な処理で特定できる。
【0083】
(5)上記形態において、前記第2工程において造形する前記造形物の最下層が中空の形状を有する場合、前記第3工程において、前記外殻のうち、前記中空側の前記外殻に対しては前記ブリム層を造形しなくてもよい。このような形態であれば、ブリム層が過度に造形されることによって剥離性が低下することを抑制できる。
【0084】
(6)上記形態において、前記第2工程において長手方向の長さが第1長さの前記造形物を造形する場合、前記第3工程において前記ブリム層を第1サイズで造形し、又は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との接触強度が第1強度となるように前記ブリム層を造形し、前記第2工程において長手方向の長さが前記第1長さより大きい第2長さの前記造形物を造形する場合、前記第3工程において前記ブリム層を前記第1サイズよりも大きい第2サイズで造形し、又は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との接触強度が前記第1強度よりも大きい第2強度となるように前記ブリム層を造形してもよい。このような形態によれば、長手方向の長さが長い造形物の反りを効果的に抑制できる。
【0085】
(7)上記形態において、前記第2工程において積層方向の厚みが第1厚みの前記造形物を造形する場合、前記第3工程において前記ブリム層を第1サイズで造形し、又は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との接触強度が第1強度となるように前記ブリム層を造形し、前記第2工程において前記積層方向の厚みが前記第1厚みよりも大きい第2厚みの前記造形物を造形する場合、前記第3工程において前記ブリム層を前記第1サイズよりも大きい第2サイズで造形し、又は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との接触強度が前記第1強度よりも大きい第2強度となるように前記ブリム層を造形してもよい。このような形態によれば、積層方向の厚みが厚い造形物の反りを効果的に抑制できる。
【0086】
(8)上記形態において、前記接触強度は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との接触面積、又は、前記外殻又は前記剥離層と前記ブリム層との造形間隔によって調整されてもよい。このような形態であれば、造形物の外殻又は剥離層とブリム層との接触強度を容易に調整できる。
【0087】
本開示は、上述した三次元造形物の製造方法に限らず、三次元造形システムや、三次元造形装置、コンピュータープログラム、コンピュータープログラムをコンピューターが読み取り可能に記録した一時的でない有形な記録媒体など、種々の態様によって実現することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
20…材料供給部、22…連通路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、42…溝部、43…凸条部、44…材料流入口、46…中央部、47…上面、48…下面、50…バレル、52…上面、54…案内溝、56…連通孔、58…バレルヒーター、60…吐出部、61…ノズル、62…ノズル開口、65…流路、70…吐出調整部、74…第1駆動部、75…吸引部、76…第2駆動部、77…吐出制御部、100…三次元造形装置、110…造形部、210…ステージ、211…造形面、230…移動機構、300…制御部、310…プロセッサー、320…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20