(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032209
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】減速機
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135745
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】王 陽昆
(72)【発明者】
【氏名】鎌形 州一
(72)【発明者】
【氏名】四十 薫
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA21
3J027FA24
3J027FB31
3J027FB32
3J027GC03
3J027GC24
3J027GC26
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
(57)【要約】
【課題】貫通孔の機能を損なうことなく、シール装着部を回転中心軸線寄りに小径に配置することができる減速機を提供する。
【解決手段】減速機は、ケース、キャリア、クランクシャフト、揺動歯車を備える。ケースは内周面に複数の内歯ピンを保持する。キャリアは、ケースに相対回転可能に組付けられ、回転中心軸線を中心とした同心円上に複数のクランク支持孔を有する。クランクシャフトはクランク支持孔に支持される。揺動歯車は外歯を有し、クランクシャフトの偏心部とともに揺動回転する。キャリアの少なくとも一方の軸方向の端面には、複数の貫通孔とシール装着部が設けられている。貫通孔は、各クランク支持孔に少なくとも一部が連通し、かつ、キャリアの回転中心軸線を中心とした径方向に関してクランク支持孔の径方向外側端より径方向内側に配置される。シール装着部は、複数の貫通孔の外側を取り囲む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複数の内歯ピンを保持するケースと、
前記ケースに相対回転可能に組付けられるとともに、回転中心軸線を中心とした同心円上に複数のクランク支持孔を有するキャリアと、
前記キャリアの各前記クランク支持孔に回転可能に支持されるクランクシャフトと、
外周面に前記内歯ピンよりも歯数が少なく前記内歯ピンと噛み合う外歯を有し、前記クランクシャフトの偏心部とともに揺動回転する揺動歯車と、を備え、
前記キャリアの少なくとも一方の軸方向の端面には、
各前記クランク支持孔に少なくとも一部が連通し、かつ、前記キャリアの前記回転中心軸線を中心とした径方向に関して前記クランク支持孔の径方向外側端より径方向内側に配置される複数の貫通孔と、
複数の前記貫通孔の外側を取り囲むシール装着部と、
が設けられている減速機。
【請求項2】
前記貫通孔は、連通する前記クランク支持孔の軸方向の投影領域の内側となる位置に配置されている請求項1に記載の減速機。
【請求項3】
前記貫通孔の径方向中心は、前記クランク支持孔の径方向中心からの離間距離が、前記クランク支持孔の半径の2分の1以下の距離となる位置に配置されている、請求項2に記載の減速機。
【請求項4】
前記貫通孔の径方向中心は、前記キャリアの前記端面のうちの、前記回転中心軸線と前記クランク支持孔の径方向中心を通る直線上に配置されている、請求項3に記載の減速機。
【請求項5】
前記貫通孔の半径は、前記クランク支持孔の半径の0.39倍以上の半径に設定されている請求項4に記載の減速機。
【請求項6】
前記回転中心軸線を中心とした径方向に関し、前記貫通孔の径方向内側端は、前記クランク支持孔の径方向内側端から前記クランク支持孔の半径の0.3倍未満の距離の範囲に配置されている請求項4または5に記載の減速機。
【請求項7】
前記回転中心軸線を中心とした径方向に関し、前記貫通孔の径方向外側端は、前記クランク支持孔の径方向中心から前記クランク支持孔の半径の0.45倍以下の距離だけ径方向外側に離れて配置されている請求項4に記載の減速機。
【請求項8】
前記回転中心軸線を中心とした径方向に関し、前記貫通孔の径方向外側端は、前記クランク支持孔の径方向中心から前記クランク支持孔の半径の0.08倍以上の距離だけ径方向外側に離れて配置されている請求項7に記載の減速機。
【請求項9】
前記貫通孔の半径は、前記クランク支持孔の半径の0.39倍以上、かつ、0.725倍未満であり、
前記貫通孔の半径をRb、前記回転中心軸線から前記貫通孔の径方向中心までの距離をRB、前記クランク支持孔の半径をRa、前記回転中心軸線から前記クランク支持孔の径方向中心までの距離をRAとしたときに、前記回転中心軸線から前記貫通孔の径方向中心までの距離RBは、以下の式(a),(b),(c),(d)を満たす請求項1または2に記載の減速機。
RB-Rb>RA-Ra …(a)
RB-Rb≦RA-0.7Ra …(b)
RB+Rb≦RA+0.45Ra …(c)
RB+Rb≧RA+0.08Ra …(d)
【請求項10】
前記キャリアは、機械構造用炭素鋼材から成る請求項1または2に記載の減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットや工作機械等で用いられる回転機器では、モータ等の回転駆動源の回転を減速するために減速機が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の減速機は、円筒状のケースと、ケースに相対回転可能に組付けられるキャリアと、キャリアに回転可能に支持される複数のクランクシャフトと、ケース内において、クランクシャフトの偏心部とともに揺動回転する揺動歯車と、を備えている。ケースの内周面には、軸方向に沿う複数のピン溝が形成され、その各ピン溝に、円柱状の内歯ピンが回転可能に保持されている。
【0004】
キャリアには、当該キャリアの回転中心軸線を中心とした同心円上に複数のクランク支持孔が形成され、各クランク支持孔に、クランクシャフトのジャーナル部が回転可能に支持されている。複数のクランクシャフトには、共通の入力歯車を通して回転駆動源の動力が伝達される。また、キャリアの軸方向の一方の端面には、動力伝達対象である出力回転体が連結されている。
【0005】
揺動歯車の外周面には、ケース側の内歯ピンよりも歯数が僅かに(例えば、一つ)少ない外歯が形成されている。揺動歯車は、外周の外歯がケース側の内歯ピンと滑り接触しつつ噛み合い、クランクシャフトの偏心部とともに一揺動回転する間に内歯ピンから回転方向の反力を受け、回転中心軸線回りに所定ピッチで自転する。揺動歯車の自転成分はクランクシャフトを通してキャリアに伝達され、さらにキャリアから出力回転体へと伝達される。この結果、クランクシャフトに入力された回転は、減速機において所定の減速比に減速されて出力回転体を回転させる。
【0006】
また、キャリアに形成される複数のクランク支持孔は、キャリアの軸方向の一端側にほぼ一定内径のまま開口している。正確には、クランクシャフトを支持するクランク支持孔は、同内径の貫通孔を通してキャリアの軸方向の一端側に連通している。
キャリアの軸方向の一端側に形成される貫通孔は、キャリアの概略形状を鍛造や鋳造によって造形した後に、キャリアにクランク支持孔を切削によって造形する際に、切削屑をキャリアの外部に排出するための排出孔として機能し、かつ、クランク支持孔に軸受やクランクシャフトを組み付ける際に組付け作業孔としても機能する。貫通孔は、クランク支持孔に軸受やクランクシャフトを組み付けた後に、別体の蓋部材によって閉塞される。これにより、キャリアの軸方向の一端面に出力回転体が結合された後に、減速機内部の潤滑液が貫通孔を通して外部に漏れ出るのを防止することができる。
【0007】
なお、引用文献1に記載の減速機では、貫通孔に蓋部材を取り付けることによってキャリアの軸方向の一端部側からの潤滑液の漏出を防止しているが、潤滑液の漏出防止手段としては、以下のものも採用されている。
(a)キャリアの一方の軸方向の端面に、複数の貫通孔の外側を取り囲むようにシール剤を塗布し、キャリアと出力回転体の端面間を塗布したシール剤によって封止する。
(b)キャリアの一方の軸方向の端面に、複数の貫通孔の外側を取り囲むように環状のシール溝(シール装着部)を形成し、そのシール溝にOリング等のシール部材を取り付けて、キャリアと出力回転体の端面間をシール部材によって封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載された減速機は、キャリアの端面の貫通孔が別体の蓋部材によって封止される構造を採用しているため、キャリアの端面を出力回転体に連結した後に蓋部材が貫通孔から脱落する可能性が考えられる。
【0010】
また、キャリアの端面の複数の貫通孔の周域部分にシール剤を塗布する場合には、シール剤の塗布むらやシール剤の厚みのバラつきが生じ易く、シール剤の塗布むらやシール剤の厚みのバラつきがあると、潤滑液の充分な漏れ防止機能を得られなくなる。
さらに、シール剤の塗布むらやシール剤の厚みのバラつきがあると、シール剤が貫通孔に浸入し、シール剤がケーシング内の潤滑液と混ざって潤滑液の潤滑性能を低下させるリスクがある。
【0011】
また、キャリアの端面の複数の貫通孔の周域部分をOリング等のシール部材によって封止する場合には、キャリアの端面の周域が、複数のクランク支持孔の径方向外側端を連結する仮想円よりも大径のシール溝やシール部材によって大きく占有されることになる。このため、減速機の外径の小型化を図るうえで望ましくなく、この点の改善が望まれている。
【0012】
本発明は、貫通孔の機能を損なうことなく、シール装着部を回転中心軸線寄りに小径に配置することができる減速機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る減速機は、内周面に複数の内歯ピンを保持するケースと、前記ケースに相対回転可能に組付けられるとともに、回転中心軸線を中心とした同心円上に複数のクランク支持孔を有するキャリアと、前記キャリアの各前記クランク支持孔に回転可能に支持されるクランクシャフトと、外周面に前記内歯ピンよりも歯数が少なく前記内歯ピンと噛み合う外歯を有し、前記クランクシャフトの偏心部とともに揺動回転する揺動歯車と、を備え、前記キャリアの少なくとも一方の軸方向の端面には、各前記クランク支持孔に少なくとも一部が連通し、かつ、前記キャリアの前記回転中心軸線を中心とした径方向に関して前記クランク支持孔の径方向外側端より径方向内側に配置される複数の貫通孔と、複数の前記貫通孔の外側を取り囲むシール装着部と、
が設けられている。
【0014】
この場合、切削屑の排出機能やクランク支持孔に対する部品の組付け容易化機能等の貫通孔の機能を損なうことなく、シール装着部をクランク支持孔の径方向外側端よりも小径にすることができる。
【0015】
前記貫通孔は、連通する前記クランク支持孔の軸方向の投影領域の内側となる位置に配置することが望ましい。
【0016】
この場合、キャリアのクランク支持孔を切削によって形成するときに、クランク支持孔部分から出た切削屑を貫通孔を通して良好に外部に排出することが可能になる。また、この場合、貫通孔の開口が必要以上に大きくなることによるキャリアの剛性低下を抑制することができる。
【0017】
前記貫通孔の径方向中心は、前記クランク支持孔の径方向中心からの離間距離が、前記クランク支持孔の半径の2分の1以下の距離となる位置に配置されるようにしても良い。
【0018】
この場合、貫通孔の一部が、キャリアの軸方向視でクランク支持孔の径方向中心と重なることになる。このため、クランクシャフトやクランク軸受等のクランク支持孔の内側に配置される部品を、貫通孔を用いてキャリアに容易に組み付けることが可能になる。
【0019】
前記貫通孔の径方向中心は、前記キャリアの前記端面のうちの、前記回転中心軸線と前記クランク支持孔の径方向中心を通る直線上に配置されることが望ましい。
【0020】
この場合、キャリアの軸方向視で貫通孔とクランク支持孔の径方向中心領域との重なりを大きくし、かつ、貫通孔を回転中心軸線に近接させた状態でクランク支持孔の内周面にも充分に近接させることができる。したがって、本構成を採用した場合には、クランクシャフトや軸受等の部品を貫通孔を用いてより容易に組み付けることが可能になるとともに、クランク支持孔の切削時における切削屑の排出性を良好にすることが可能になる。
【0021】
前記貫通孔の半径は、前記クランク支持孔の半径の0.39倍以上の半径に設定されるようにしても良い。
【0022】
この場合、クランク支持孔の切削時に切削屑が連続して出る場合であっても、貫通孔を通して切削屑を効率良く外部に排出することが可能になる。このため、本構成を採用した場合には、クランク支持孔の切削時に切削作業を中断して切削屑を排出する作業の頻度を少なくし、クランク支持孔の切削作業効率を高めることができる。
【0023】
前記回転中心軸線を中心とした径方向に関し、前記貫通孔の径方向内側端は、前記クランク支持孔の径方向内側端から前記クランク支持孔の半径の0.3倍未満の距離の範囲に配置されるようにしても良い。
【0024】
この場合、貫通孔の径方向内側端がクランク支持孔の径方向内側端に充分に近接するため、クランク支持孔の切削時における切削屑の排出性を良好にすることができる。
【0025】
前記回転中心軸線を中心とした径方向に関し、前記貫通孔の径方向外側端は、前記クランク支持孔の径方向中心から前記クランク支持孔の半径の0.45倍以下の距離だけ径方向外側に離れて配置されるようにしても良い。
【0026】
この場合、貫通孔が少なくともクランク支持孔の径方向外側端から、クランク支持孔の半径の0.55倍よりも径方向内側に離間することになる。このため、シール装着部を回転中心軸線寄りに充分に小径に配置することができる。
【0027】
前記回転中心軸線を中心とした径方向に関し、前記貫通孔の径方向外側端は、前記クランク支持孔の径方向中心から前記クランク支持孔の半径の0.08倍以上の距離だけ径方向外側に離れて配置されるようにしても良い。
【0028】
この場合、貫通孔がクランク支持孔の径方向中心に対して、少なくともクランク支持孔の半径の0.08倍以上の距離だけ径方向にラップすることになる。このため、クランクシャフトの組付け時に、組付工具を貫通孔とクランク支持孔に跨って通すことが可能になる。したがって、本構成を採用した場合には、クランクシャフトやクランク軸受の組付け作業性が向上する。
【0029】
前記貫通孔の半径は、前記クランク支持孔の半径の0.39倍以上、かつ、0.725倍未満であり、前記貫通孔の半径をRb、前記回転中心軸線から前記貫通孔の径方向中心までの距離をRB、前記クランク支持孔の半径をRa、前記回転中心軸線から前記クランク支持孔の径方向中心までの距離をRAとしたときに、前記回転中心軸線から前記貫通孔の径方向中心までの距離RBは、以下の式(a),(b),(c),(d)を満たす請求項1または2に記載の減速機。
RB-Rb>RA-Ra …(a)
RB-Rb≦RA-0.7Ra …(b)
RB+Rb≦RA+0.45Ra …(c)
RB+Rb≧RA+0.08Ra …(d)
【0030】
この場合、クランク支持孔の切削加工時における切削屑の排出機能や、クランクシャフトの組付時における組付けの容易化機能等の貫通孔の機能を損なうことなく、シール装着部を回転中心軸線寄りに小径に配置することができる。したがって、本構成を採用した場合には、減速機の小型化と、キャリアの軸方向の端面の密閉性の向上を両立させることができる。
【0031】
前記キャリアは、機械構造用炭素鋼材から構成されるようにしても良い。
【0032】
キャリアが機械構造用炭素鋼材から成る場合、キャリアのクランク支持孔を切削加工によって形成すると、切削屑が連続して生じる。このとき、貫通孔が、回転中心軸線を中心とした径方向に関し、クランク支持孔の径方向外側端より径方向内側に配置されていれば、シール装着部の大径化を抑制しつつ、クランク支持孔の切削加工時に貫通孔を通して切削屑を円滑に外部に排出することができる。
【発明の効果】
【0033】
上述の減速機は、キャリアの軸方向の端面に開口する貫通孔が、回転中心軸線を中心とした径方向に関し、クランク支持孔の径方向外側端よりも径方向内側に配置されているため、貫通孔の機能を損なうことなく、シール装着部を回転中心軸線寄りに小径に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態の減速機の
図2のI-I断面に対応する断面図である。
【
図2】本発明の実施形態の減速機の一部の正面図である。
【
図3】
図2の一部を拡大した実施形態の減速機の正面図である。
【
図4】変形例の減速機の
図1と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
図1は、実施形態の減速機10の縦断面図であり、
図2は、減速機10の一部(第1キャリアブロック13A)の正面図である。なお、
図1は、
図2のI-I線に沿う断面に対応している。
減速機10は、略円筒状のケース11と、ケース11の内周側に相対回転可能に組付けられる第1キャリアブロック13A、及び、第2キャリアブロック13Bと、第1キャリアブロック13A、及び、第2キャリアブロック13Bに回転可能に支持された複数(例えば、三つ)のクランクシャフト14と、各クランクシャフト14の二つの偏心部14bとともに揺動回転する第1揺動歯車15A、及び、第2揺動歯車15Bと、を備えている。
本実施形態では、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bがキャリアを構成している。また、第1揺動歯車15A、及び、第2揺動歯車15Bは、本実施形態における揺動歯車を構成している。なお、本実施形態では、揺動歯車が第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bによって構成されているが、揺動歯車の設置数は、一つでも三つ以上であっても良い。
【0037】
第1キャリアブロック13Aは、孔空き円板状の基板部13Aaと、当該基板部13Aaの端面から第2キャリアブロック13Bの方向に向かって延びる複数(例えば、三つ)の支柱部13Abと、を有する。第2キャリアブロック13Bは、孔空き円板状に形成されている。第1キャリアブロック13Aは、支柱部13Abの端面が第2キャリアブロック13Bの端面に突き合わせられ、各支柱部13Abが第2キャリアブロック13Bにボルト16によって締結固定されている。
【0038】
第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaと第2キャリアブロック13Bとの間には、軸方向の隙間が確保されている。この隙間には、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bが配置されている。
なお、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bには、第1キャリアブロック13Aの各支柱部13Abが貫通する逃げ孔19が形成されている。逃げ孔19は、各支柱部13Abが第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの揺動回転(旋回)を妨げないように、支柱部13Abの外面形状よりも充分に大きく形成されている。
【0039】
ケース11は、第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaの外周面と、第2キャリアブロック13Bの外周面とに跨って配置されている。ケース11の軸方向の両側端縁には、第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaと、第2キャリアブロック13Bとが主軸受12を介して回転可能に支持されている。また、ケース11の軸方向の中央領域(第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの外周面に対向する領域)の内周面には、第1,第2キャリアブロック13A,13Bの回転中心軸線c1と平行に延びる複数のピン溝18が形成されている。
【0040】
ケース11の内周の各ピン溝18には、略円柱状の内歯ピン20が回転可能に収容されている。ケース11のピン溝18に収容された複数の内歯ピン20は、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの外周面に対向している。
【0041】
第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bは、ケース11の内径よりも若干小さい外径に形成されている。第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外周面には、ケース11の内周部(ピン溝18)に配置された複数の内歯ピン20に噛み合い状態で滑り接触する外歯15Aa,15Baが形成されている。第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外周面に形成された外歯15Aa,15Baの歯数は、内歯ピン20の数(ピン溝18の数)よりも僅かに少なく(例えば、一つ少なく)設定されている。
【0042】
複数のクランクシャフト14は、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bの回転中心軸線c1を中心とした同一円周上に配置されている。各クランクシャフト14は、クランク軸受21を介して第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bとに回転自在に支持されている。各クランクシャフト14は、軸方向に離間した一対のジャーナル部14aを有し、一対のジャーナル部14aの間に二つの偏心部14bが配置されている。
【0043】
第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaには、クランクシャフト14の軸方向の一端側をクランク軸受21を介して支持するための複数のクランク支持孔22Aが形成されている。クランク支持孔22Aは、クランク軸受21よりも僅かに大きい内径に形成されている。複数のクランク支持孔22Aは、第1キャリアブロック13Aの回転中心軸線c1を中心とした同心円上に等間隔に配置されている。また、第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaには、各クランク支持孔22Aに連通する複数の貫通孔23が形成されている。貫通孔23は、クランク支持孔22Aよりも小径に形成されている。貫通孔23については、後に詳述する。
【0044】
第2キャリアブロック13Bには、クランクシャフト14の軸方向の他端側をクランク軸受21を介して支持するための複数のクランク支持孔22Bが形成されている。各クランクシャフト14の軸方向の他端部は、クランク支持孔22Bを通して第2キャリアブロック13Bの軸方向の他端側に突出している。各クランクシャフト14の軸方向の他端部には、歯車取付部14cが形成されている。各クランクシャフト14の歯車取付部14cには、クランク歯車24が取り付けられている。各クランク歯車24は、図示しない共通の入力歯車に噛み合っている。入力歯車は、電動モータ等の回転駆動源の出力軸に連結されている。
【0045】
クランクシャフト14の二つの偏心部14bは、これらの各中心軸線c3がジャーナル部14aの中心軸線c2に対して偏心している。また、二つの偏心部14bは、ジャーナル部14aの中心軸線c2周りに位相が180°ずれるように偏心している。なお、クランク支持孔22Aの径方向中心hは、クランクシャフト14(ジャーナル部14a)の中心軸線c2と合致している。
【0046】
また、クランクシャフト14の各偏心部14bは、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bを夫々貫通している。各偏心部14bは、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bに夫々形成された支持孔25に偏心部軸受26(円筒ころ軸受)を介して回転自在に組付けられている。
なお、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bは、回転中心軸線c1周りに配置された複数のクランクシャフト14を介して、第1揺動歯車15A、及び、第2揺動歯車15Bと相対回転不能に連結されている。このため、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bが一方向に自転すると、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bは、これらの自転に同期して回転する。
【0047】
本実施形態の減速機10は、複数のクランクシャフト14が回転駆動源の動力を受けて一方向に回転すると、クランクシャフト14の各偏心部14bが所定の半径で同方向に揺動回転(旋回)し、それに伴って第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bが同じ半径で同方向に揺動回転(旋回)する。このとき、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外歯15Aa,15Baは、ケース11の内周に保持された複数の内歯ピン20と噛み合うように滑り接触する。
【0048】
減速機10は、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外歯15Aa,15Baの歯数が、ケース11側の内歯ピン20の数よりも僅かに少なく設定されている。このため、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bが一揺動回転する間に、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bがケース11側の内歯ピン20から回転方向の反力を受ける。これにより、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bは、揺動回転方向(旋回方向)と逆向きに所定のピッチ分だけ自転する。第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bにクランクシャフト14を介して組付けらた第1,第2キャリアブロック13A,13Bは、第1,第2揺動歯車15A,15Bとともに同方向に同ピッチで回転する。
本実施形態では、ケース11が回転駆動源とともに図示しない支持構造体に固定され、第1キャリアブロック13Aが回転対象物27に連結されている。このため、回転駆動源の回転動力は、減速機10で所定の減速比に減速された後に、第1キャリアブロック13Aを介して回転対象物27を回転させる。
ただし、第1キャリアブロック13Aを支持構造体に固定し、ケース11を回転対象物に連結して用いることも可能である。
【0049】
第1キャリアブロック13Aの軸方向外側の端面には、当該端面に回転対象物27をボルト締結するための複数の締結穴28が形成されている。締結穴28は、第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaの外周縁部に周方向に沿って複数形成されている。締結穴28は、基板部13Aaの外周縁部に、径方向に二段になって配置されている。
【0050】
また、基板部13Aaの軸方向外側の端面のうちの、複数の締結穴28よりも径方向内側で、かつ、複数の貫通孔23よりも径方向外側位置には、シール装着部である環状のシール溝29が形成されている。シール溝29は、第1キャリアブロック13Aの回転中心軸線c1を中心とした円形形状に形成されている。シール溝29は、複数の貫通孔23の外側を取り囲むように形成されている。
シール溝29の内部には、図示しないOリング等のシール部材が収容される。シール部材は、シール溝29に収容され、その状態で回転対象物27が第1キャリアブロック13Aの軸方向外側の端面にボルト締結されると、第1キャリアブロック13Aと回転対象物27の端面に夫々密接する。これにより、減速機10の内部の潤滑液が第1キャリアブロック13Aと回転対象物27の突合せ部の隙間から外部に漏出するのを防止される。
【0051】
図3は、
図2の一部を拡大した第1キャリアブロック13Aの正面図である。
第1キャリアブロック13Aの軸方向外側に開口する貫通孔23は、第1キャリアブロック13Aの回転中心軸線c1を中心とした径方向に関し、連通するクランク支持孔22Aの径方向外側端jよりも径方向内側に配置されている。
さらに、各貫通孔23は、クランク支持孔22Aよりも小径の円形形状に形成されるとともに、連通するクランク支持孔22Aの軸方向の投影領域(
図2,
図3中の点線22A参照。)の内側となる位置に配置されている。また、貫通孔23は、その径方向中心gが、回転中心軸線c1とクランク支持孔22Aの径方向中心hを通る直線L1上に位置されるように、第1キャリアブロック13Aに配置されている。
【0052】
さらに、各貫通孔23は、以下の式(1)~(6)を満たすように各部の寸法が設定されている。
<回転中心軸線c1から貫通孔23の径方向中心gまでの離間距離>
RA>RB>RA-Ra/2 …(1)
RA:回転中心軸線c1からクランク支持孔22Aの径方向中心hまでの離間距離。
RB:回転中心軸線c1から貫通孔23の径方向中心gまでの離間距離。
Ra:クランク支持孔22Aの半径
【0053】
<貫通孔23の半径>
Rb≧0.30Ra …(2)
望ましくは、Rb≧0.45Ra
Rb:貫通孔23の半径
【0054】
<回転中心軸線c1から貫通孔23の径方向内側端(最内側端)までの距離>
RBin>RAin
ゆえに、RB-Rb>RA-Ra …(3)
RBin:回転中心軸線c1から貫通孔23の径方向内側端までの距離
RAin:回転中心軸線c1からクランク支持孔22Aの径方向内側端までの距離
【0055】
<回転中心軸線c1から貫通孔23の径方向内側端(最内側端)までの距離>
RBin≦RA-0.7Ra
ゆえに、RB-Rb≦RA-0.7Ra …(4)
【0056】
<回転中心軸線c1から貫通孔23の径方向外側端(最外側端)までの距離>
RBex≦RA+0.45Ra
ゆえに、RB+Rb≦RA+0.45Ra …(5)
RBex:回転中心軸線c1から貫通孔23の径方向外側端(最外側端)までの距離
【0057】
<回転中心軸線c1から貫通孔23の径方向外側端(最外側端)までの距離>
RBex≧RA+0.08Ra
ゆえに、RB+Rb≧RA+0.08Ra …(6)
【0058】
また、上記の各式より以下の条件を求めることができる。
式(3),(6)より、
RB>RA-0.46Ra …(7)
式(3),(5)より、
Rb<0.725Ra …(8)
式(4),(6)より、
Rb≧0.39Ra …(9)
式(4),(5)より、
RB≦RA-0.125Ra …(10)
【0059】
これらより、RbとRBの夫々の範囲は以下のようになる。
0.39Ra≦Rb<0.725Ra …(11)
RA-0.46Ra<RB≦RA-0.125Ra…(12)
【0060】
また、本実施形態では、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bは、機械構造用炭素鋼材から成り、鍛造によって概略形状が形成されている。
そして、第1キャリアブロック13Aは、鍛造によって各貫通孔23とクランク支持孔22Aの概略形状が造形された後に、クランク支持孔22Aが切削工具によって精度良く切削加工される。このとき、各クランク支持孔22Aの切削に際して発生する切削屑は、クランク支持孔22Aに連通する貫通孔23を通して外部に排出される。なお、第2キャリアブロック13Bも同様に鍛造によってクランク支持孔22Bの概略形状を造形した後に、クランク支持孔22Bが切削工具によって精度良く切削加工される。
また、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bにクランク支持孔22A,22Bを切削工具によって加工した後、これらのクランク支持孔22A,22Bには、クランク軸受21とクランクシャフト14が組付けられる。このとき、第1キャリアブロック13A側のクランク支持孔22Aには、貫通孔23を用いてクランク軸受21やクランクシャフト14の組付けが行われる。
【0061】
以上のように、本実施形態の減速機10は、第1キャリアブロック13A(キャリア)の軸方向の端面に開口する貫通孔23が、回転中心軸線c1を中心とした径方向に関し、クランク支持孔22Aの径方向外側端jよりも径方向内側に配置されている。このため、本実施形態の減速機10では、貫通孔23の機能を損なうことなく、シール溝29(シール装着部)を回転中心軸線c1寄りに小径に配置することができる。
したがって、本実施形態の減速機10を採用した場合には、貫通孔23の基本機能を損なうことなく、第1キャリアブロック13Aの外径の小型化と潤滑液の漏出防止機能の向上を図ることができる。
【0062】
また、本実施形態の減速機10は、第1キャリアブロック13A(キャリア)の貫通孔23が、連通するクランク支持孔22Aの軸方向の投影領域の内側となる位置に配置されている。このため、第1キャリアブロック13Aのクランク支持孔22Aを切削によって形成するときに、クランク支持孔22A部分から出た切削屑を貫通孔23を通して良好に外部に排出することができる。また、この場合、貫通孔23の開口が必要以上に大きくなることによる第1キャリアブロック13Aの剛性低下を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態の減速機10では、貫通孔23の径方向中心gが、クランク支持孔22Aの径方向中心hからクランク支持孔22Aの半径の2分の1以下の距離となる位置に配置されている(式(1)参照)。このため、貫通孔23の一部が、第1キャリアブロック13Aの軸方向視でクランク支持孔22Aの径方向中心hと重なることになる。したがって、本構成を採用した場合には、クランクシャフト14やクランク軸受21等のクランク支持孔22Aの内側に配置される部品を、貫通孔23を用いて第1キャリアブロック13Aに容易に組み付けることができる。
【0064】
さらに、本実施形態の減速機10では、貫通孔23の径方向中心gが、第1キャリアブロック13Aの端面のうちの、回転中心軸線c1とクランク支持孔22Aの径方向中心hを通る直線L1上に配置されている。このため、第1キャリアブロック13Aの軸方向視で、貫通孔23とクランク支持孔22Aの径方向中心hの近傍領域との重なりを大きくし、かつ、貫通孔23を回転中心軸線c1に近接させた状態でクランク支持孔22Aの内周面にも充分に近接させることができる。
したがって、本構成を採用した場合には、クランクシャフト14やクランク軸受21等の部品を貫通孔23を用いてより容易に組み付けることができるとともに、クランク支持孔22Aの切削時における切削屑の排出性を良好にすることができる。
【0065】
また、本実施形態の減速機10は、貫通孔23の半径が、クランク支持孔22Aの半径の0.39倍以上の半径に設定されている(式(11)参照)。このため、クランク支持孔22Aの切削加工時に切削屑が連続して出る場合であっても、貫通孔23を通して切削屑を効率良く外部に排出することができる。
したがって、本構成を採用した場合には、クランク支持孔22Aの切削時に切削作業を中断して切削屑を排出する作業の頻度を少なくし、クランク支持孔22Aの切削作業効率を高めることができる。
【0066】
また、本実施形態の減速機10では、回転中心軸線c1を中心とした径方向に関し、貫通孔23の径方向内側端fは、クランク支持孔22Aの径方向内側端eからクランク支持孔22Aの半径の0.3倍未満の距離の範囲に配置されている(式(4)参照)。
したがって、本構成を採用した場合には、貫通孔23の径方向内側端fがクランク支持孔22Aの径方向内側端eに充分に近接することになり、クランク支持孔22Aの切削時における切削屑の排出性が良好になる。
【0067】
また、本実施形態の減速機10は、回転中心軸線c1を中心とした径方向に関し、貫通孔23の径方向外側端iが、クランク支持孔22Aの径方向中心hからクランク支持孔22Aの半径の0.45倍以下の距離だけ径方向外側に離れて配置されている(式(5)参照)。このため、貫通孔23が少なくともクランク支持孔22Aの径方向外側端jから、クランク支持孔22Aの半径の0.55倍よりも径方向内側に離間することになる。
したがって、本構成を採用した場合には、シール溝29(シール装着部)を回転中心軸線c1寄りに充分に小径に配置し、第1キャリアブロック13Aのさらなる小径化を図ることができる。
【0068】
さらに、本実施形態の減速機10は、回転中心軸線c1を中心とした径方向に関し、貫通孔23の径方向外側端iが、クランク支持孔22Aの径方向中心hからクランク支持孔22Aの半径の0.08倍以上の距離だけ径方向外側に離れて配置されている(式(6)参照)。このため、貫通孔23がクランク支持孔22Aの径方向中心hの近傍のおいて、少なくともクランク支持孔22Aの半径の0.08倍以上の距離だけ径方向にラップすることになる。
したがって、本構成を採用した場合には、クランクシャフト14の組付け時に、組付工具を貫通孔23とクランク支持孔22Aに跨って通すことが可能になり、クランクシャフト14の組付け作業効率が高まる。
【0069】
また、本実施形態の減速機10は、貫通孔23の半径が、クランク支持孔22Aの半径の0.39倍以上、かつ、0.725倍未満で、回転中心軸線c1から貫通孔23の径方向中心gまでの距離RBが、上記の式(3),(4),(5),(6)を満たすように設定されている。このため、クランク支持孔22Aの切削加工時における切削屑の排出機能や、クランクシャフト14の組付時における組付けの容易化機能等の貫通孔23の基本機能を損なうことなく、シール溝29(シール装着部)を回転中心軸線c1寄りに小径に配置することができる。
したがって、本構成を採用した場合には、減速機10の剛性強化と、第1キャリアブロック13Aの軸方向の端面の密閉性の向上を両立させることができる。
【0070】
また、本実施形態の減速機10は、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bが機械構造用炭素鋼材から構成されている。このため、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bの強度と靭性を高めることができる。一方、第1キャリアブロック13Aを機械構造用炭素鋼材から構成すると、クランク支持孔22Aの切削加工時に切削屑が連続して生じるが、本実施形態の減速機10を採用した場合には、クランク支持孔22Aの切削加工時に貫通孔23を通して切削屑を円滑に外部に排出することができる。
【0071】
<変形例>
図4は、変形例の減速機110の
図1と同様の断面図である。
本変形例の減速機110は、基本構成は上記の実施形態とほぼ同様であるが、第1キャリアブロック13Aの軸方向外側の端面に段差状に円形凹部40が形成されている点が上記の実施形態と異なっている。本変形例の場合、回転対象物27側の端面の図示しない円形凸部を、第1キャリアブロック13Aの円形凹部40に嵌合することにより、第1キャリアブロック13Aに対する回転対象物27の結合を安定化させることができる。
第1キャリアブロック13Aの貫通孔23は、円形凹部40の内側(底面)に開口している。貫通孔23の配置は上記の実施形態と同様とされている。また、シール溝29は、円形凹部40の径方向外側に配置されている。
【0072】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、貫通孔23の径方向中心gが第1キャリアブロック13Aの軸方向の端面のうちの、回転中心軸線c1とクランク支持孔22Aの径方向中心hを通る直線L1上に配置されているが、貫通孔23の配置はこれに限定されない。貫通孔23は、クランク支持孔22Aの径方向外側端jより径方向内側であれば、径方向中心gが直線L1から外れる位置に配置しても良い。
【0073】
また、上記の実施形態では、貫通孔23がクランク支持孔22Aの軸方向の投影領域の内側となる位置に配置されているが、貫通孔23の配置はこれに限定されない。貫通孔23は、クランク支持孔22Aの径方向外側端jより径方向内側であれば、一部がクランク支持孔22Aの軸方向の投影領域の外側にずれるように配置しても良い。
【0074】
また、上記の実施形態では、第1キャリアブロック13Aの端面に配置されるシール装着部としてシール溝29が設けられているが、シール装着部はこれに限定されない。シール装着部は、例えば、回転対象物27側に保持されたシール部材の当接するシール当接面であっても良い。
【0075】
さらに、上記の実施形態では、第1キャリアブロック13A側の軸方向外側の端面に貫通孔23とシール溝29(シール装着部)が設けられているが、貫通孔23とシール溝29(シール装着部)は、第2キャリアブロック13B側の軸方向外側の端面に設けるようにしても良い。
また、クランクシャフト14に動力を入力する部分がクランクシャフト14の軸方向の端部以外が配置される場合には、貫通孔23とシール溝29(シール装着部)は、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bの両方の端面に配置することも可能である。
【0076】
また、本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていれば良い。
【符号の説明】
【0077】
10…減速機、11…ケース、13A…第1キャリアブロック(キャリア)、13B…第2キャリアブロック(キャリア)、14…クランクシャフト、14b…偏心部、15A…第1揺動歯車(揺動歯車)、15B…第2揺動歯車(揺動歯車)、15Aa,15Ba…外歯、20…内歯ピン、22A…クランク支持孔、23…貫通孔、29…シール溝(シール装着部)、c1…回転中心軸線、L1…直線