(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032222
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】生地及びシート、並びに断熱構造体
(51)【国際特許分類】
D06M 15/19 20060101AFI20240305BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20240305BHJP
D03D 15/52 20210101ALI20240305BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20240305BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20240305BHJP
D06M 15/277 20060101ALI20240305BHJP
D06M 15/59 20060101ALI20240305BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
D06M15/19
A01G9/14 S
D03D15/52
D06M15/643
D06M15/263
D06M15/277
D06M15/59
B32B5/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135774
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良介
【テーマコード(参考)】
2B029
4F100
4L033
4L048
【Fターム(参考)】
2B029EB03
2B029EC01
2B029EC06
2B029EC18
4F100AG00B
4F100AK01B
4F100AK17B
4F100AK25B
4F100AK48B
4F100AK52B
4F100BA02
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA08B
4F100CA30B
4F100DE01B
4F100DG12A
4F100EH46B
4F100EH61B
4F100GB01
4F100GB07
4F100JJ02A
4F100JJ02C
4L033AB05
4L033AC15
4L033CA18
4L033CA22
4L033CA55
4L033CA59
4L048CA10
4L048DA27
4L048DA30
(57)【要約】
【課題】潜熱蓄熱機能を有する生地及びシートであって、耐久性が向上しており且つ潜熱蓄熱機能以外の機能も付与され得る生地及びシートを提供する。
【解決手段】本開示に係る生地は、潜熱蓄熱性を有する織布と、織布の表面の少なくとも一部を覆うように形成されており、バインダー樹脂を含有する保護層とを備え、バインダー樹脂が織布に染み込んでいる。本開示に係るシートは、潜熱蓄熱性を有するシートによって構成されている基材と、基材の表面の少なくとも一部を覆うように形成されており、バインダー樹脂を含有する保護層とを備え、保護層の厚さが1~120μmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱蓄熱性を有する織布と、
前記織布の表面の少なくとも一部を覆うように形成されており、バインダー樹脂を含有する保護層と、
を備え、
前記バインダー樹脂が前記織布に染み込んでいる、生地。
【請求項2】
前記織布が潜熱蓄熱性を有する縦糸と潜熱蓄熱性を有する横糸によって構成されており、
隣り合う二本の前記縦糸と隣り合う二本の前記横糸とによって画成される空隙を埋めるように前記保護層が形成されている、請求項1に記載の生地。
【請求項3】
前記バインダー樹脂がフッ素系樹脂である、請求項1に記載の生地。
【請求項4】
前記バインダー樹脂がアクリル系樹脂及びシリコーン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の生地。
【請求項5】
前記保護層が耐候剤を更に含有する、請求項1に記載の生地。
【請求項6】
テント用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の生地。
【請求項7】
潜熱蓄熱性を有するシートによって構成されている基材と、
前記基材の表面の少なくとも一部を覆うように形成されており、バインダー樹脂を含有する保護層と、
を備え、
前記保護層の厚さが1~120μmである、シート。
【請求項8】
前記バインダー樹脂がアクリル系樹脂及びシリコーン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項7に記載のシート。
【請求項9】
前記保護層が粒子を更に含有する、請求項8に記載のシート。
【請求項10】
前記バインダー樹脂がナイロン系樹脂である、請求項8に記載のシート。
【請求項11】
床材用である、請求項7~10のいずれか一項に記載のシート。
【請求項12】
一対の断熱部材と、
前記一対の断熱部材の間に配置された中間層と、
を備え、
前記中間層が請求項7~10のいずれか一項に記載のシートで構成されている、断熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は潜熱蓄熱機能を有する生地及びシート、並びに当該シートを中間層として備える断熱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
潜熱蓄熱材は、一般に、加熱によって固体から液体へ変化する際に熱を蓄え、他方、冷却によって液体から固体へ変化する際に熱を放出する。相変化を伴わない潜熱蓄熱材も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者の検討によると、潜熱蓄熱機能を有する従来の生地及びシートは耐久性が不十分であり、この点において改善の余地がある。また、かかる生地及びシートは用途又は使用環境によっては、潜熱蓄熱機能以外の機能も有することが望ましい。
【0005】
本開示は、潜熱蓄熱機能を有する生地及びシートであって、耐久性が向上しており且つ潜熱蓄熱機能以外の機能も付与され得る生地及びシートを提供する。また、本開示は当該シートを中間層として備える断熱構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の発明に関する。
[1]潜熱蓄熱性を有する織布と、
前記織布の表面の少なくとも一部を覆うように形成されており、バインダー樹脂を含有する保護層と、
を備え、
前記バインダー樹脂が前記織布に染み込んでいる、生地。
[2]前記織布が潜熱蓄熱性を有する縦糸と潜熱蓄熱性を有する横糸によって構成されており、
隣り合う二本の前記縦糸と隣り合う二本の前記横糸とによって画成される空隙を埋めるように前記保護層が形成されている、[1]に記載の生地。
[3]前記バインダー樹脂がフッ素系樹脂である、[1]又は[2]に記載の生地。
[4]前記バインダー樹脂がアクリル系樹脂及びシリコーン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である、[1]又は[2]に記載の生地。
[5]前記保護層が耐候剤を更に含有する、[1]~[4]のいずれか一つに記載の生地。
[6]テント用である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の生地。
[7]潜熱蓄熱性を有するシートによって構成されている基材と、
前記基材の表面の少なくとも一部を覆うように形成されており、バインダー樹脂を含有する保護層と、
を備え、
前記保護層の厚さが1~120μmである、シート。
[8]前記バインダー樹脂がアクリル系樹脂及びシリコーン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である、[7]に記載のシート。
[9]前記保護層が粒子を更に含有する、[8]に記載のシート。
[10]前記バインダー樹脂がナイロン系樹脂である、[7]又は[9]に記載のシート。
[11]床材用である、[7]~[10]のいずれか一つに記載のシート。
[12]一対の断熱部材と、
前記一対の断熱部材の間に配置された中間層と、
を備え、
前記中間層が[7]~[10]のいずれか一つに記載のシートで構成されている、断熱構造体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、潜熱蓄熱機能を有する生地及びシートであって、耐久性が向上しており且つ潜熱蓄熱機能以外の機能も付与され得る生地及びシートが提供される。また、本開示によれば当該シートを中間層として備える断熱構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本開示に係る生地の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は本開示に係るシートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は本開示に係る断熱構造体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
<生地>
図1は本実施形態に係る生地を模式的に示す断面図である。この図に示す生地10は、潜熱蓄熱性を有する織布1と、織布1を覆うように形成されている保護層5とを備える。織布1は、潜熱蓄熱性を有する縦糸と潜熱蓄熱性を有する横糸によって構成されている。保護層5は、バインダー樹脂を含む塗液を織布1の表面に塗工することによって形成されたものである。縦糸及び横糸の内部にはバインダー樹脂が染み込んでいる。バインダー樹脂が縦糸及び横糸の内部に染み込んでいることで、織布1の耐久性を向上させることができ、その結果、耐久性に優れる生地10を得ることができる。
【0011】
縦糸及び横糸は、潜熱蓄熱性を有する繊維で構成されている。潜熱蓄熱機能を有する繊維として、例えば、住友化学株式会社製のコンフォーマ(登録商標、繊維用グレード)が挙げられる。
【0012】
生地10は、例えば、テント用生地として使用することができる。テントを構成する生地が潜熱蓄熱性を有することで、テント内が快適な温度となりやすいという効果が奏される。すなわち、テント内を夏は涼しく、冬は温かい環境としやすい。生地10の防水性の観点から、保護層5は、隣り合う二本の縦糸と、隣り合う二本の横糸とによって画成される空隙を埋めるように形成されていることが好ましい。保護層5が空隙3を埋めていることで、生地10に防水性を付与することができる。保護層5による防水性向上の観点から、バインダー樹脂として撥水性に優れる樹脂(例えば、フッ素系樹脂)を使用することが好ましい。
【0013】
保護層5は、織布1に対して防水性以外の機能を付与するものであってもよい。例えば、生地10がアウトドア用品(例えば、テント)に使用されることを想定すると、保護層5は耐候剤を含有することが好ましい。耐候剤の具体例として、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等の紫外線吸収剤;NH系、Nメチル系、NOアルキル系等のヒンダードアミン系光安定剤(HALS);ホスファイト系、フェノール系、フェノール系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒドラジド系、アミド系等の金属不活性化剤などが挙げられる。なお、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)として、例えば、アデカスタブLAシリーズ(株式会社ADEKA製)を使用することができる。
【0014】
生地10は、保護層5が形成される前の織布1と同程度の柔軟性を維持していることが好ましい。生地10が柔軟性を有していることで、生地10を折りたたんだ状態で生地10を保存したり運搬したりすることができる。保護層5を形成しても柔軟性が維持される観点から、バインダー樹脂として成型加工性に優れる樹脂(例えば、アクリル系樹脂又はシリコーン系樹脂)を使用することが好ましい。
【0015】
生地10の厚さは、例えば、0.15mm以上である。生地10の厚さが0.15mm以上であることで、潜熱蓄熱性が十分に発現されやすい傾向にある。生地10の厚さは、例えば、5.0mm以下であり、好ましくは1.0mm以下である。生地10の厚さが1.0mm以下であることで、生地10の柔軟性が維持されやすい傾向にある。ここでいう生地の厚さはノギスを使用して測定された値を意味する。
【0016】
生地10における織布1の質量比率は、例えば、30~100質量%であり、80~100質量%又は30~50質量%であってもよい。この値が80質量%以上であることで、潜熱蓄熱性が十分に発現されやすい傾向にあり、他方、50質量%以下であることで、生地10の柔軟性が維持されやすい傾向にある。
【0017】
保護層5は、以下に例示するコーティング方法によって形成することができる。コーティング方法として、刷毛塗り、ローラーブラシ塗装、へら塗り、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、浸漬塗装、静電気塗装、電着塗装、粉体塗装、カーテンフローコーター塗装、ローラーコーター塗装が挙げられる。
【0018】
上記実施形態においては、保護層5が耐候剤を含有する場合を例示したが、保護層5は他の添加剤を含んでもよい。他の添加剤として、フタル酸系、ポリエステル系、エポキシ系等の可塑剤;イントメッセント系、リン酸エステル系、ハロゲン系、無機系等の難燃剤;リン酸エステル金属塩系、ソルビトール系等の核剤;タルク、炭酸カルシウム等の充填剤;相溶化剤;透明化剤;帯電防止剤;滑剤などが挙げられる。
【0019】
<シート>
図2は本実施形態に係るシートを模式的に示す断面図である。この図に示すシート20は、潜熱蓄熱性を有するシートによって構成されている基材12と、基材12を覆うように形成されている保護層15とを備える。保護層15は、バインダー樹脂を含む塗液を基材12の表面に塗工することによって形成されたものである。
【0020】
基材12は潜熱蓄熱性を有するシート状部材で構成されている。潜熱蓄熱機能を有するシート状部材として、例えば、住友化学株式会社製のヒートレージ(登録商標、シート用グレード)及び株式会社カネカ製のパッサーモ(登録商標)が挙げられる。基材12の厚さは、例えば、0.5~3mmであり、0.7~2.5mm又は0.9~1.8mmであってもよい。
図2に示すように、基材12は、一方の表面12aから他方の表面12bにかけて貫通する複数の孔13が設けられたものであってもよい。基材12に複数の孔13を設けることで、基材12に通気性が付与される。
【0021】
シート20は、例えば、床材用シートとして使用することができる。床材用シートが潜熱蓄熱性を有することで、室内が快適な温度となりやすいという効果が奏される。すなわち、室内を夏は涼しく、冬は温かい環境としやすい。保護層15の厚さは、例えば、1μm以上であり、好ましくは10μm以上である。保護層15の厚さが10μm以上であることで、基材12の耐久性を十分に向上できる傾向にある。他方、保護層15の厚さは、好ましくは120μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。保護層15の厚さが120μm以下であることで、保護層15の厚さを十分に均一にしやすく、また孔13が閉塞されることを防止できる傾向にある。この場合、保護層15には複数の孔15aが形成され、孔15aはそれぞれ基材12の複数の孔13に連通している(
図2参照)。
【0022】
シート20における基材12の質量比率は、例えば、30~98質量%である。この値が30質量%以上であることで、潜熱蓄熱性が十分に発現されやすい傾向にあり、他方、98質量%以下であることで、シート20が過度に厚くなることを抑制できる傾向にある。
【0023】
保護層15は、基材12に対して耐傷性を付与するものであることが好ましい。上記のように、シート20が床材に使用されることを想定すると、保護層15を構成するバインダー樹脂として、可とう性が高い樹脂(例えば、アクリル系樹脂又はシリコーン系樹脂)を使用し、これに耐傷性を高くするために粒子15p(例えば、ガラスビーズ)が添加されていることが好ましい(
図2参照)。可とう性が高い樹脂を使用することで、シート20を巻いた状態で保管したり運搬したりしても保護層15にクラックが生じにくいという利点がある。
【0024】
粒子15pの粒径は、例えば、1~12μmである。粒子15pの粒径が1μm以上であることで、保護層15に十分な耐傷性を付与できる傾向にあり、他方、12μm以下であることで、保護層15から粒子15pが過度に突出することを抑制できる傾向にある。保護層15における粒子15pの質量比率は、例えば、1~10質量%である。なお、保護層15は、上述の保護層5と同様、耐候剤やその他の添加剤を含んでもよい。
【0025】
<断熱構造体>
図3は本実施形態に係る断熱構造体を模式的に示す断面図である。この図に示す断熱構造体50は、一対の断熱部材22,23と、これらの間に配置されたシート30(中間層)とを備える。シート30は、基材12と、基材12の両面を覆うように形成された保護層15,15とによって構成されている。断熱部材22,23の材質は、例えば、発泡プラスチック材料、グラスウール、ロックウール、木質繊維である。断熱部材22,23を構成する断熱材は湿気に弱いものが多いため、シート30が除湿機能を有していることが好ましい。すなわち、保護層15が吸水性を有していることが好ましい。バインダー樹脂として、吸水性に優れるナイロン系樹脂を使用することが好ましい。
【0026】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、植物等を栽培するための温室(ビニールハウス)用の生地又はシートとして本開示に係る生地又はシートを使用してもよい。温室用の生地及びシートは、光を遮らないように透明性を有することが好ましい。バインダー樹脂として、透明性が高く、耐候性も高いシリコーン系樹脂を使用することが好ましい。温室用の生地及びシートが潜熱蓄熱性を有していることで、温室内の温度変化を小さくすることができ、温度調整のための燃料や電気の使用量を削減できる。
【0027】
保護層は、織布1又は基材12に意匠性を付与するものであってもよい。すなわち、グラビア印刷、インクジェット印刷及びスクリーン印刷などの印刷技術によって保護層を形成することによって織布1又は基材12に絵柄を付与し、意匠性を向上させてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…織布、5…保護層、10…生地、12…基材、12a…一方の面、12b…他方の面、13…孔、15…保護層、15a…孔、15p…粒子、20…シート、22,23…断熱部材、30…シート、50…断熱構造体。