(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032223
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】積層フィルタ
(51)【国際特許分類】
H03H 7/09 20060101AFI20240305BHJP
H03H 7/42 20060101ALI20240305BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240305BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240305BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20240305BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H03H7/09 Z
H03H7/42
H01F17/00 D
H01F27/00 S
H01G4/40 321A
H01G4/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135775
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】立松 雅大
(72)【発明者】
【氏名】芦田 裕太
(72)【発明者】
【氏名】澤口 修平
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 敬悟
(72)【発明者】
【氏名】照井 智理
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲三
【テーマコード(参考)】
5E070
5E082
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB07
5E070CB13
5E070DB08
5E082AA01
5E082AB03
5E082BB01
5E082CC03
5E082DD08
5E082FF05
5E082FG25
5E082FG26
5E082FG27
5J024AA01
5J024CA02
5J024CA04
5J024CA06
5J024CA10
5J024DA04
5J024DA29
5J024DA33
5J024DA34
5J024DA35
5J024EA03
5J024KA02
5J024KA03
(57)【要約】
【課題】高域のスプリアスが低減され得る積層フィルタを提供する。
【解決手段】積層フィルタにおいて、導体部は、入出力部と、第1及び第2共振回路とを含んでいる。第1及び第2共振回路は、積層体の積層方向と交差する方向に配列されている。入出力部は、不平衡ポートと一対の平衡ポートとからなる入出力ポート群、又は、二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでいる。第2共振回路は、インダクタ導体と、第1キャパシタ導体と、第2キャパシタ導体とを含んでいる。インダクタ導体は、第1及び第2端部を有している。第1キャパシタ導体は、第1端部に接続されている。第2キャパシタ導体は、第2端部に接続されている。第2誘電体層は、第1誘電体層の誘電率よりも低い誘電率を有している。第1及び第2キャパシタ導体は、第1誘電体層に設けられている。インダクタ導体の少なくとも一部は、第2誘電体層に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層されている積層体と、
前記積層体の内部に設けられている導体部と、を備え、
前記導体部は、入出力部と、前記積層体の積層方向と交差する方向に配列されていると共に前記入出力部に接続されている第1及び第2共振回路とを含んでおり、
前記入出力部は、不平衡ポートと一対の平衡ポートとからなる入出力ポート群、又は、二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでおり、
前記第2共振回路は、第1及び第2端部を有しているインダクタ導体と、前記第1端部に接続されている第1キャパシタ導体と、前記第2端部に接続されている第2キャパシタ導体と、を含んでおり、
前記複数の誘電体層は、第1誘電体層と、前記第1誘電体層の誘電率よりも低い誘電率を有している第2誘電体層と、を含んでおり、
前記第1及び第2キャパシタ導体は、前記第1誘電体層に設けられており、
前記インダクタ導体の少なくとも一部は、前記第2誘電体層に設けられている、積層フィルタ。
【請求項2】
前記第1共振回路は、第3及び第4端部を有しているインダクタ導体と、前記第3端部に接続されている第3キャパシタ導体とを含んでおり、
前記第4端部は、グランドに接続されている、請求項1に記載の積層フィルタ。
【請求項3】
前記第3キャパシタ導体は、前記第1誘電体層に設けられている、請求項2に記載の積層フィルタ。
【請求項4】
前記第1共振回路は、第3及び第4端部を有しているインダクタ導体と、前記第3端部に接続されている第3キャパシタ導体と、前記第4端部に接続されている第4キャパシタ導体と、を含んでいる、請求項1に記載の積層フィルタ。
【請求項5】
前記第3キャパシタ導体及び前記第4キャパシタ導体は、前記第1誘電体層に設けられている、請求項4に記載の積層フィルタ。
【請求項6】
前記第1共振回路と前記第2共振回路とは、互いに鏡像対称な構成を有している、請求項4又は5に記載の積層フィルタ。
【請求項7】
前記インダクタ導体は、前記積層方向と交差する方向の延在している導体層と、前記導体層に電気的に接続されていると共に前記積層方向に配列されている複数のビアと、を含んでいる、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層フィルタ。
【請求項8】
前記導体層は、前記第2誘電体層内に含まれている、請求項7に記載の積層フィルタ。
【請求項9】
前記複数のビアの半分以上は、前記第2誘電体層内に含まれている、請求項7に記載の積層フィルタ。
【請求項10】
前記複数の誘電体層は、複数の前記第2誘電体層を含んでおり、
前記第1誘電体層は、前記複数の第2誘電体層に挟まれ、
前記積層体は、実装面と、前記複数の誘電体層の積層方向において前記実装面と対向している対向面とを有しており、
前記第1誘電体層は、前記対向面よりも前記実装面に近い、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
積層体と導体部とを備えた積層フィルタが知られている(例えば、特許文献1)。積層体は、複数の誘電体層が積層されている。導体部は、積層体の内部に設けられている。導体部は、入出力部と一対の共振回路とを含んでいる。入出力部は、複数のポートからなる入出力ポート群を含んでいる。特許文献1に示されている例において、入出力部は、不平衡ポートと平衡ポートとを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バランス型の積層フィルタは、例えば、平衡信号を処理する場合に用いられる。バランス型の積層フィルタは、上述した積層フィルタのようなアンバランス-バランスフィルタの他、バランス-バランスフィルタを含んでいる。バランス型の積層フィルタにおいて、所望の周波数域のスプリアスを低減することが求められている。
【0005】
本発明の一つの態様は、所望の周波数域のスプリアスが低減され得る積層フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様における積層フィルタにおいて、積層体と、導体部とを備えている。積層体は、複数の誘電体層が積層されている。導体部は、積層体の内部に設けられている。導体部は、入出力部と、第1及び第2共振回路とを含んでいる。第1及び第2共振回路は、積層体の積層方向と交差する方向に配列されている。第1及び第2共振回路は、入出力部に接続されている。入出力部は、不平衡ポートと一対の平衡ポートとからなる入出力ポート群、又は、二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでいる。第2共振回路は、インダクタ導体と、第1キャパシタ導体と、第2キャパシタ導体とを含んでいる。インダクタ導体は、第1及び第2端部を有している。第1キャパシタ導体は、第1端部に接続されている。第2キャパシタ導体は、第2端部に接続されている。複数の誘電体層は、第1誘電体層と、第2誘電体層とを含んでいる。第2誘電体層は、第1誘電体層の誘電率よりも低い誘電率を有している。第1及び第2キャパシタ導体は、第1誘電体層に設けられている。インダクタ導体の少なくとも一部は、第2誘電体層に設けられている。
【0007】
この積層フィルタにおいて、入出力部は、不平衡ポートと一対の平衡ポートとからなる入出力ポート群、又は、二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでいる。複数の誘電体層は、第1誘電体層と、第2誘電体層とを含んでいる。第2誘電体層は、第1誘電体層の誘電率よりも低い誘電率を有している。第1及び第2キャパシタ導体は、第1誘電体層に設けられている。インダクタ導体の少なくとも一部は、第2誘電体層に設けられている。この構成によれば、スプリアスが生じる周波数域が調整され、所望の周波数域におけるスプリアスが低減され得る。キャパシタ導体が第1誘電体層に設けられているため、全てのキャパシタ導体が第2誘電体層に設けられた場合に比べて、キャパシタのサイズが縮小され得る。したがって、積層フィルタのサイズアップが抑制されながら、所望の周波数域におけるスプリアスが低減され得る。
【0008】
上記一つの態様において、第1共振回路は、インダクタ導体と第3キャパシタ導体とを含んでいてもよい。第1共振回路のインダクタ導体は、第3及び第4端部を有している。第3キャパシタ導体は、第3端部に接続されていてもよい。第4端部は、グランドに接続されていてもよい。この場合、アンバランス-バランス特性を有する積層フィルタにおいて、高域のスプリアスが低減され得る。
【0009】
上記一つの態様において、第3キャパシタ導体は、第1誘電体層に設けられていてもよい。この場合、所望のスプリアスがさらに容易に調整され得る。
【0010】
上記一つの態様において、第1共振回路は、インダクタ導体と、第3キャパシタ導体と、第4キャパシタ導体と、を含んでいてもよい。インダクタ導体は、第3及び第4端部を有していてもよい。第3キャパシタ導体は、第3端部に接続されていてもよい。第4キャパシタ導体は、第4端部に接続されていてもよい。この場合、バランス-バランス特性を有する積層フィルタにおいて、高域のスプリアスが低減され得る。
【0011】
上記一つの態様において、第3キャパシタ導体及び第4キャパシタ導体は、第1誘電体層に設けられていてもよい。この場合、所望のスプリアスがさらに容易に調整され得る。
【0012】
上記一つの態様において、第1共振回路と第2共振回路とは、互いに鏡像対称な構成を有していてもよい。この場合、バラツキが抑制されると共に、所望のインピーダンスが確保された積層フィルタが実現され得る。
【0013】
上記一つの態様において、インダクタ導体は、導体層と、複数のビアとを含んでいてもよい。導体層は、積層方向と交差する方向に延在していてもよい。複数のビアは、導体層に電気的に接続されていてもよい。複数のビアは、積層方向に配列されていてもよい。この構成によれば、コンパクトな積層フィルタにおいて、インダクタ導体における導電経路の長さが確保され得る。
【0014】
上記一つの態様において、導体層は、第2誘電体層内に含まれていてもよい。この場合、所望のスプリアスがさらに容易に調整され得る。
【0015】
上記一つの態様において、複数のビアの半分以上は、第2誘電体層内に含まれていてもよい。この場合、所望のスプリアスがさらに容易に調整され得る。
【0016】
上記一つの態様において、複数の誘電体層は、複数の第2誘電体層を含んでいてもよい。第1誘電体層は、複数の第2誘電体層に挟まれていてもよい。積層体は、実装面と、対向面とを有していてもよい。対向面は、複数の誘電体層の積層方向において実装面と対向している。第1誘電体層は、対向面よりも実装面に近くてもよい。この場合、積層フィルタが実装された状態において、浮遊容量が低減され得る。インダクタ導体は、グランドから比較的離れた位置に配置される。この結果、Q値が確保され得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一つの態様は、高域のスプリアスが低減され得る積層フィルタを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態における積層フィルタの斜視図である。
【
図4】本実施形態の変形例における積層フィルタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0020】
まず、
図1から
図3を参照して、本実施形態における積層フィルタを説明する。
図1は、本実施形態における積層フィルタの斜視図である。
図2は、積層フィルタの部分斜視図である。X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに交差する方向である。本実施形態において、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに直交している。
図3は、積層フィルタの回路図である。本明細書において、「直交」は、製造公差の範囲でズレた構成を含んでいる。
【0021】
積層フィルタ1は、バランス型のフィルタである。積層フィルタ1は、複数のLC共振回路を含んでいる。積層フィルタ1は、たとえば、バランス-バランス特性を有するバンドパスフィルタを含んでいる。積層フィルタ1は、たとえば、平衡信号を処理する。信号伝送方式において平衡信号が用いられる場合、平衡信号が用いられない場合に比べてノイズが低減される。積層フィルタ1は、たとえば、電子機器にはんだ実装される。電子機器は、たとえば、回路基板又は電子部品を含んでいる。積層フィルタ1は、積層体3と、導体部5,6とを備えている。
【0022】
積層体3は、たとえば、絶縁性を有する。積層体3は、たとえば磁性材料により構成されている。磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、及び、Ni-Cu系フェライト材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。積層体3を構成する磁性材料には、Fe合金等が含まれていてもよい。積層体3は、非磁性材料から構成されていてもよい。非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料、及び、誘電体材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。
【0023】
積層体3は、たとえば、直方体形状を呈している。直方体形状は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含んでいる。積層体3の形状は、直方体形状に限定されない。本実施形態において、Z軸方向は積層体3の高さ方向に相当し、X軸方向及びY軸方向は積層体3の短手方向及び長手方向に相当する。たとえば、積層体3の高さ方向の長さは、積層体3の短手方向の長さよりも短い。
【0024】
積層体3は、その外表面として、一対の主面2a,2bと、一対の端面2c,2dと、一対の側面2e,2fとを有している。一対の主面2a,2bは、Z軸方向において互いに対向している。一対の端面2c,2dは、Y軸方向において互いに対向している。一対の側面2e,2fは、X軸方向において互いに対向している。一対の主面2a,2b、一対の端面2c,2d、及び、一対の側面2e,2fは、たとえば、それぞれ平面である。一対の主面2aは、たとえば、X軸方向及びY軸方向に沿っている。一対の端面2c,2dは、たとえば、X軸方向及びZ軸方向に沿っている。一対の側面2e,2fは、たとえば、Y軸方向及びZ軸方向に沿っている。
【0025】
主面2bは、たとえば他の電子機器に実装する際、他の電子機器と対向する実装面として規定される。主面2aは、Z軸方向において、Z軸方向において主面2bと対向している対向面に相当する。
【0026】
積層体3は、複数の誘電体層7を含んでいる。積層体3において、複数の誘電体層7はZ軸方向に積層されている。換言すれば、Z軸方向は、複数の誘電体層7の積層方向に相当する。各誘電体層7は、絶縁体層に相当する。各誘電体層7は、たとえば、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。誘電体材料は、たとえば、BaTiO3系材料、Ba(Ti,Zr)O3系材料、(Ba,Ca)TiO3系材料、ガラス材料、又はアルミナ材料から選択された少なくとも1つを含んでいる。
【0027】
本実施形態に示す例において、X軸方向における積層体3の長さは、1.25mmである。Y軸方向における積層体3の長さは、2.00mmである。Z軸方向における積層体3の長さは、0.95mmである。
【0028】
導体部5は、積層体3の外表面に設けられている。導体部5は、既知の手法によって形成される。導体部5は、たとえば、金属材料から構成されている。金属材料は、たとえば、銅、銀、金、ニッケル、又はクロムである。導体部5は、たとえば、電極層にめっき処理が施されることによって形成されている。電極層は、たとえば、導電性ペーストからなる。導電性ペーストは、たとえば、印刷法、又は転写法によって付与されている。めっき処理は、たとえば、電解めっき又は無電解めっきである。このめっき処理によって、導電性ペーストの外表面にめっき層が形成される。
【0029】
導体部5は、互いに離間している三対の外部電極5a,5b,5cを含んでいる。三対の外部電極5a,5b,5cは、それぞれ、導体部6に連結されている。本明細書において、「連結」とは、直接的に接した状態において接続されていることを意味する。「直接的に接する」とは、本明細書において示した他の部材を介することなく、互いに接続されることを意味する。「直接的に接する」は、本明細書に明示されていない部材を介して接続されることを除外しない。
【0030】
一対の外部電極5a,5b,5cの一方は、それぞれ、側面2e、及び、主面2a,2bに設けられており、Y軸方向に配列されている。一対の外部電極5a,5b,5cの一方は、それぞれ、主面2aと主面2bとの間を、Z軸方向に延在している。一対の外部電極5a,5b,5cの他方は、それぞれ、側面2f、及び、主面2a,2bに設けられており、X軸方向に配列されている。一対の外部電極5a,5b,5cの他方は、それぞれ、主面2aと主面2bとの間を、Z軸方向に延在している。
【0031】
導体部6は、積層体3の内部に設けられている。導体部6は、入出力部10と、複数の電気回路20を含んでいる。複数の電気回路20は、積層体3の内部において互いに電磁的に接続され、1つのフィルタ回路を構成している。本明細書において、「電磁的な接続」とは、電気的な接続、及び、磁気的な接続を含んでいる。「電気的な接続」とは、直流成分が伝達されるような接続、及び、直流成分を伝達せずに交流成分のみが伝達される接続を含んでいる。本明細書において、電気的な接続を、単に「接続」ともいう。
【0032】
入出力部10は、入力された信号を複数の電気回路20を伝達し、複数の電気回路20から伝達された信号を出力する。入出力部10は、例えば、積層フィルタ1の外部から信号が入力され、積層フィルタ1の外部へ信号を出力する。入出力部10は、二対の平衡ポート11,12,13,14からなる入出力ポート群を含んでいる。二対の平衡ポート11,12,13,14は、平衡信号を入出力する。換言すれば、平衡ポート11に入出力される信号と平衡ポート12に入出力される信号とは、互いに極性が逆である。平衡ポート13に入出力される信号と平衡ポート14に入出力される信号とは、互いに極性が逆である。
【0033】
複数の電気回路20は、入出力部10に電気的に接続されている。複数の電気回路20は、互いに電磁的に接続されている。複数の電気回路20は、複数の共振回路を含んでいる。複数の電気回路20は、Y軸方向において、鏡像対称な構造を有している。複数の電気回路20は、電気回路21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32を含んでいる。電気回路21,22,23,24は、共振回路に相当する。電気回路21,22,23,24は、たとえば、LC共振回路である。各電気回路21,22,23,24は、インダクタとキャパシタとを形成している。複数の電気回路21,22,23,24は、積層体3の積層方向と交差する方向に配列されている。複数の電気回路21,22,23,24は、Y軸方向に配列されている。複数の電気回路21,22,23,24は、互いに電磁的に接続されている。
【0034】
電気回路21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32は、互いに離隔している。本明細書において、電気回路に関して「離隔」を用いる場合には、「離隔」は、導体によって物理的に接続されておらず、直流成分が伝達されない状態をいう。電気回路21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32は、互いに電気的に接続されている。
【0035】
各電気回路20は、複数の導体によって構成されている。各電気回路20を構成する導体は、たとえば、Ag及びPdから選択された少なくとも1つを含んでいる。各端子電極の表面にはめっき層が形成されている。めっき層は、たとえば電気めっきにより形成される。めっき層は、Cuめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層からなる層構造、又は、Niめっき層及びSnめっき層からなる層構造などを有する。
【0036】
図3に示されているように、電気回路21は、インダクタを形成するインダクタ導体41と、キャパシタを形成するキャパシタ導体51a,51b,51c,51d,51e,51fとを含んでいる。インダクタ導体41は、コイルに相当する。インダクタ導体41は、一対の端部41a,41bを含んでいる。電気回路21において、端部41aとキャパシタ導体51a,51c,51eとは、互いに電気的に接続されている。平衡ポート12と端部41aとは、互いに電気的に接続されている。電気回路21において、端部41bとキャパシタ導体51b,51d,51fとは、互いに電気的に接続されている。平衡ポート11と端部41bとは、互いに電気的に接続されている。
【0037】
積層フィルタ1において、電気回路21が第1共振回路の少なくとも一部に相当する。積層フィルタ1において、キャパシタ導体51a,51c,51eが第3キャパシタを形成するキャパシタ導体に相当し、キャパシタ導体51b,51d,51fが第4キャパシタを形成するキャパシタ導体に相当する。端部41aが第3端部に相当し、端部41bが第4端部に相当する。
【0038】
電気回路22は、インダクタを形成するインダクタ導体42と、キャパシタを形成するキャパシタ導体52a,52b,52c,52d,52e,52fとを含んでいる。電気回路21と電気回路22とは、互いにAC結合によって接続されている。インダクタ導体42は、コイルに相当する。キャパシタ導体51aとキャパシタ導体52aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体51bとキャパシタ導体52bとによって、キャパシタが形成されている。インダクタ導体42は、一対の端部42a,42bを含んでいる。電気回路22において、端部42aとキャパシタ導体52a,52c,52eとは、互いに電気的に接続されている。電気回路22において、42bとキャパシタ導体52b,52d,52eとは、互いに電気的に接続されている。
【0039】
電気回路23は、インダクタを形成するインダクタ導体43と、キャパシタを形成するキャパシタ導体53a,53b,53c,53d,53e,53fとを含んでいる。インダクタ導体43は、コイルに相当する。インダクタ導体42とインダクタ導体43とは、互いに磁気結合するように構成されている。インダクタ導体43は、一対の端部43a,43bを含んでいる。電気回路23において、端部43aとキャパシタ導体53a,53c,53eとは、互いに電気的に接続されている。電気回路23において、端部43bとキャパシタ導体53b、53d,53fとは、互いに電気的に接続されている。電気回路23は、電気回路24と鏡像対称な構成を有している。
【0040】
電気回路24は、インダクタを形成するインダクタ導体44と、キャパシタを形成するキャパシタ導体54a,54b,54c,54d,54e,54fとを含んでいる。インダクタ導体44は、コイルに相当する。キャパシタ導体53aとキャパシタ導体54aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体53bとキャパシタ導体54bとによって、キャパシタが形成されている。インダクタ導体44は、一対の端部44a,44bを含んでいる。電気回路24において、端部44aとキャパシタ導体54a,54c,54eとは、互いに電気的に接続されている。平衡ポート13と端部44bとは、互いに電気的に接続されている。電気回路24において、端部44bとキャパシタ導体54b,54d,54fとは、互いに電気的に接続されている。平衡ポート14と端部44aとは、互いに電気的に接続されている。電気回路24は、電気回路21と鏡像対称な構成を有している。
【0041】
積層フィルタ1において、電気回路24が第2共振回路の少なくとも一部に相当する。積層フィルタ1において、キャパシタ導体54a,54c,54eが第1キャパシタを形成するキャパシタ導体に相当し、キャパシタ導体54b,54d,54fが第4キャパシタを形成するキャパシタ導体に相当する。端部44aが第1端部に相当し、端部44bが第2端部に相当する。
【0042】
電気回路25は、キャパシタを形成するキャパシタ導体55a,55bを含んでいる。電気回路21と電気回路25とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体51cとキャパシタ導体55aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体51dとキャパシタ導体55bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路25において、キャパシタ導体55aとキャパシタ導体55bとは、互いに電気的に接続されている。
【0043】
電気回路26は、キャパシタを形成するキャパシタ導体56a,56bを含んでいる。電気回路22と電気回路26とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体52eとキャパシタ導体56aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体52fとキャパシタ導体56bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路26において、キャパシタ導体56aとキャパシタ導体56bとは、互いに電気的に接続されている。
【0044】
電気回路27は、キャパシタを形成するキャパシタ導体57a,57bを含んでいる。電気回路23と電気回路27とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体53eとキャパシタ導体57aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体53fとキャパシタ導体57bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路27において、キャパシタ導体57aとキャパシタ導体57bとは、互いに電気的に接続されている。
【0045】
電気回路28は、キャパシタを形成するキャパシタ導体58a,58bを含んでいる。電気回路24と電気回路28とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体54cとキャパシタ導体58aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体54dとキャパシタ導体58bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路28において、キャパシタ導体58aとキャパシタ導体58bとは、互いに電気的に接続されている。
【0046】
電気回路29は、キャパシタを形成するキャパシタ導体59a,59bを含んでいる。
電気回路21と電気回路29とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路24と電気回路29とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体51eとキャパシタ導体59aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体54eとキャパシタ導体59bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路29において、キャパシタ導体59aとキャパシタ導体59bとは、互いに電気的に接続されている。
【0047】
電気回路30は、キャパシタを形成するキャパシタ導体60a,60bを含んでいる。電気回路21と電気回路30とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路24と電気回路30とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体51fとキャパシタ導体60aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体54fとキャパシタ導体60bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路30において、キャパシタ導体60aとキャパシタ導体60bとは、互いに電気的に接続されている。
【0048】
電気回路31は、キャパシタを形成するキャパシタ導体61a,61bを含んでいる。電気回路22と電気回路31とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路23と電気回路31とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路31において、キャパシタ導体61a,61bは、グランドに接続されている。キャパシタ導体52cとキャパシタ導体61aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体53cとキャパシタ導体61bとによって、キャパシタが形成されている。
【0049】
電気回路32は、キャパシタを形成するキャパシタ導体62a,62bを含んでいる。電気回路22と電気回路32とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路23と電気回路32とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路32において、キャパシタ導体62a,62bは、グランドに接続されている。キャパシタ導体52dとキャパシタ導体62aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体53dとキャパシタ導体62bとによって、キャパシタが形成されている。
【0050】
図2に示されているように、インダクタ導体41,42,43,44は、積層体3の内部に配置されている。インダクタ導体42,43は、コイル軸AX1を形成している。コイル軸AX1は、積層方向と直交する方向に沿っている。インダクタ導体41は、コイル軸AX2を形成している。インダクタ導体42は、コイル軸AX3を形成している。コイル軸AX2,AX3は、積層方向に沿っている。本実施形態において、コイル軸AX1は、Y軸方向に沿っている。コイル軸AX2,AX3は、Z軸方向に沿っている。
【0051】
本実施形態において、インダクタ導体41,44は、二回巻のコイルである。インダクタ導体42,43は、一回巻のコイルである。インダクタ導体41は、たとえば、少なくとも1つの導体層71と複数の接続導体72とを含んでいる。インダクタ導体42は、たとえば、少なくとも1つの導体層73と複数の接続導体74とを含んでいる。インダクタ導体43は、たとえば、少なくとも1つの導体層75と複数の接続導体76とを含んでいる。インダクタ導体44は、たとえば、少なくとも1つの導体層77と複数の接続導体78とを含んでいる。
【0052】
導体層71,73,75,77は、誘電体層7に沿って延在している。導体層71,73,75,77は、一対の誘電体層7に挟まれている。導体層71,73,75,77は、互いに反対側に位置する一対の端部71a,71b,73a,73b,75a,75b,77a,77bを含んでいる。
【0053】
複数の接続導体72の各々は、導体層71に連結されている。複数の接続導体74の各々は、導体層73に連結されている。複数の接続導体76の各々は、導体層75に連結されている。複数の接続導体78の各々は、導体層77に連結されている。各接続導体72,74,76,78は、Z軸方向に延在している。各接続導体72,74,76,78は、誘電体層7を貫通する複数のビア79によって形成されている。換言すれば、インダクタ導体41,42,43,44は、それぞれ、導体層71,73,75,77と、複数のビア79とを含んでいる。複数のビア79は、複数の導体層71,73,75,77のうち対応する導体層に電気的に接続されている。複数のビア79は、積層方向に配列されている。
【0054】
複数の接続導体72は、端部71aに連結されている接続導体72と、端部71bに連結されている接続導体72とを含んでいる。複数の接続導体74は、端部73aに連結されている接続導体74と、端部73bに連結されている接続導体74とを含んでいる。複数の接続導体76は、端部75aに連結されている接続導体76と、端部75bに連結されている接続導体76とを含んでいる。複数の接続導体78は、端部77aに連結されている接続導体78と、端部77bに連結されている接続導体78とを含んでいる。
【0055】
たとえば、一対の外部電極5aの一方は、端部71aに連結されている接続導体72に連結されており、平衡ポート11に連結されている。一対の外部電極5aの他方は、端部71aに連結されている接続導体72に連結されており、平衡ポート12に連結されている。一対の外部電極5aの他方は、端部71bに連結されている接続導体72に連結されており、平衡ポート12に連結されている。一対の外部電極5bは、電気回路31,32に連結されている。一対の外部電極5cの一方は、端部77aに連結されている接続導体78に連結されており、平衡ポート13に連結されている。一対の外部電極5cの他方は、端部77bに連結されている接続導体68に連結されており、平衡ポート14に連結されている。
【0056】
複数の誘電体層7は、誘電体層7aと、誘電体層7bと、誘電体層7cとを含んでいる。例えば、誘電体層7bは、誘電体層7aと誘電体層7cとに挟まれている。誘電体層7aから誘電体層7cは、Z軸方向において、主面2aの側から主面2bの側に向かって配列されている。誘電体層7aは、主面2aを形成している。誘電体層7cは、主面2bを形成している。Z軸方向において、誘電体層7aの厚さは、誘電体層7cの厚さよりも大きい。誘電体層7bは、主面2aよりも主面2bに近い。換言すれば、誘電体層7bは、対向面よりも実装面に近い。
【0057】
誘電体層7aと誘電体層7cとは、誘電体層7bの誘電率よりも低い誘電率を有している。誘電体層7aと誘電体層7cとを構成する材料の誘電率は、誘電体層7bを構成する材料の誘電率よりも低い。誘電体層7aと誘電体層7cとはそれぞれ第2誘電体層に相当しており、誘電体層7bは第1誘電体層に相当している。
【0058】
各電気回路20のキャパシタ導体の全ては、誘電体層7bに設けられている。各電気回路20に含まれている全てのキャパシタにおいて、各キャパシタを形成するキャパシタ導体の間には誘電体層7bが満たされている。各電気回路20のキャパシタ導体の全てが、誘電体層7b内に含まれていてもよい。
【0059】
インダクタ導体41,42,43,44の少なくとも一部は、誘電体層7aに設けられている。たとえば、インダクタ導体41,42,43,44の少なくとも一部は、誘電体層7a内に含まれている。導体層71,73,75,77は、誘電体層7a内に含まれている。複数のビア79の半分以上は、誘電体層7a内に含まれている。換言すれば、各接続導体72,74,76,78の体積の半分以上は、誘電体層7a内に含まれている。
【0060】
次に、
図4から
図7を参照して、本実施形態の変形例における積層フィルタについて説明する。
図4は、本実施形態の変形例における積層フィルタの斜視図である。
図5は、積層フィルタの部分斜視図である。
図6は、積層フィルタの回路図である。本変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。本変形例は、積層フィルタがアンバランス-バランス特性を有するバンドパスフィルタを含んでいる点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0061】
本変形例において、積層フィルタ1Aは、アンバランス-バランス特性を有するバンドパスフィルタを含んでいる。積層フィルタ1Aは、導体部5,6の代わりに、導体部5A,6Aを備えている。導体部5Aは、互いに離間している四対の外部電極85a,85b,85c,85dを含んでいる。四対の外部電極85a,85b,85c,85dは、それぞれ、導体部6Aに連結されている。
【0062】
一対の外部電極85a,85b,85cの一方は、それぞれ、側面2e、及び、主面2a,2bに設けられており、Y軸方向に配列されている。一対の外部電極85a,85b,85cの一方は、それぞれ、主面2aと主面2bとの間を、Z軸方向に延在している。一対の外部電極85a,85b,85cの他方は、それぞれ、側面2f、及び、主面2a,2bに設けられており、Y軸方向に配列されている。一対の外部電極85a,85b,85cの他方は、それぞれ、主面2aと主面2bとの間を、Z軸方向に延在している。
【0063】
一対の外部電極85dの一方は、それぞれ、端面2c、及び、主面2a,2bに設けられている。一対の外部電極85dの一方は、それぞれ、主面2aと主面2bとの間を、Z軸方向に延在している。一対の外部電極85dの他方は、それぞれ、端面2d、及び、主面2a,2bに設けられている。一対の外部電極85dの他方は、それぞれ、主面2aと主面2bとの間を、Z軸方向に延在している。
【0064】
導体部6Aは、入出力部10Aと、複数の電気回路20Aを含んでいる。複数の電気回路20Aは、積層体3の内部において互いに電磁的に接続され、1つのフィルタ回路を構成している。
【0065】
入出力部10Aは、入力された信号を複数の電気回路20Aを伝達し、複数の電気回路20Aから伝達された信号を出力する。入出力部10Aは、例えば、積層フィルタ1Aの外部から信号が入力され、積層フィルタ1Aの外部へ信号を出力する。入出力部10Aは、不平衡ポート11Aと、一対の平衡ポート13A,14Aからなる入出力ポート群を含んでいる。一対の平衡ポート13A,14Aは、平衡信号を入出力する。換言すれば、平衡ポート13Aに入出力される信号と平衡ポート14Aに入出力される信号とは、互いに極性が逆である。
【0066】
複数の電気回路20Aは、入出力部10Aに接続されている。複数の電気回路20Aは、互いに電磁的に接続されている。複数の電気回路20Aは、複数の共振回路を含んでいる。複数の電気回路20Aは、電気回路21A,22A,23A,24A,25A,26A,27A,28A,29A,30A,31A,32Aを含んでいる。電気回路21A,22A,23A,24Aは、共振回路に相当する。電気回路21A,22A,23A,24Aは、たとえば、LC共振回路である。各電気回路21A,22A,23A,24Aは、インダクタとキャパシタとを形成している。複数の電気回路21A,22A,23A,24Aは、積層体3の積層方向と交差する方向に配列されている。複数の電気回路21A,22A,23A,24Aは、Y軸方向に配列されている。複数の電気回路21A,22A,23A,24Aは、互いに電磁的に接続されている。
【0067】
電気回路21A,22A,23A,24A,25A,26A,27A,28A,29A,30A,31A,32Aは、互いに離隔している。電気回路21A,22A,23A,24A,25A,26A,27A,28A,29A,30A,31A,32Aは、互いに電気的に接続されている。
【0068】
各電気回路20Aは、複数の導体によって構成されている。各電気回路20Aを構成する導体は、たとえば、Ag及びPdから選択された少なくとも1つを含んでいる。各端子電極の表面にはめっき層が形成されている。めっき層は、たとえば電気めっきにより形成される。めっき層は、Cuめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層からなる層構造、又は、Niめっき層及びSnめっき層からなる層構造などを有する。
【0069】
図6に示されているように、電気回路21Aは、インダクタを形成するインダクタ導体41と、キャパシタを形成するキャパシタ導体91a,91b,91cとを含んでいる。電気回路21Aにおいて、端部41aとキャパシタ導体91a,91b,91cとは、互いに電気的に接続されている。端部41bは、グランドに接続されている。本変形例において、電気回路21Aが第1共振回路の少なくとも一部に相当し、キャパシタ導体91a,91b,91cが第3キャパシタを形成するキャパシタ導体に相当する。端部41aが第3端部に相当し、端部41bが第4端部に相当する。
【0070】
電気回路22Aは、インダクタを形成するインダクタ導体42と、キャパシタを形成するキャパシタ導体92a,92b,92c,92d,92e,92f,92gとを含んでいる。電気回路21Aと電気回路22Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体91aとキャパシタ導体92aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路22Aにおいて、端部42aとキャパシタ導体92a,92b,92c,92dとは、互いに電気的に接続されている。電気回路22Aにおいて、端部42bとキャパシタ導体92e,92f,92gとは、互いに電気的に接続されている。
【0071】
電気回路23Aは、インダクタを形成するインダクタ導体43と、キャパシタを形成するキャパシタ導体93a,93b,93c,93d,93e,93f,93g,93hとを含んでいる。電気回路23Aにおいて、端部43bとキャパシタ導体93a,93b,93c,93dとは、互いに電気的に接続されている。電気回路23Aにおいて、端部43aとキャパシタ導体93e,93f,93g,93hとは、互いに電気的に接続されている。
【0072】
電気回路24Aは、インダクタを形成するインダクタ導体44と、キャパシタを形成するキャパシタ導体94a,94b,94c,94d,94e,94fとを含んでいる。電気回路23Aと電気回路24Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体93aとキャパシタ導体94aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体93bとキャパシタ導体94bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路24Aにおいて、端部44bとキャパシタ導体94a,94c,94dとは、互いに電気的に接続されている。平衡ポート13Aと端部44aとは、互いに電気的に接続されている。電気回路24Aにおいて、端部44aとキャパシタ導体94b,94e,94fとは、互いに電気的に接続されている。平衡ポート14Aと端部44bとは、互いに電気的に接続されている。
【0073】
本変形例において、電気回路24Aが第2共振回路の少なくとも一部に相当する。キャパシタ導体94a,94c,94dが第1キャパシタを形成するキャパシタ導体に相当し、キャパシタ導体94b,94e,94fが第4キャパシタを形成するキャパシタ導体に相当する。端部44aが第1端部に相当し、端部44bが第2端部に相当する。
【0074】
電気回路25Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体95aを含んでいる。電気回路21Aと電気回路25Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体91bとキャパシタ導体95aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路25Aにおいて、不平衡ポート11Aとキャパシタ導体95aとが連結されている。
【0075】
電気回路26Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体96a,96bを含んでいる。電気回路22Aと電気回路26Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体92dとキャパシタ導体96aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体92gとキャパシタ導体96bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路26Aにおいて、キャパシタ導体96aとキャパシタ導体96bとは、互いに電気的に接続されている。
【0076】
電気回路27Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体97a,97bを含んでいる。電気回路23Aと電気回路27Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体93dとキャパシタ導体97aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体93hとキャパシタ導体97bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路27Aにおいて、キャパシタ導体97aとキャパシタ導体97bとは、互いに電気的に接続されている。
【0077】
電気回路28Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体98a,98bを含んでいる。
電気回路24Aと電気回路28Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体94dとキャパシタ導体98aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体94fとキャパシタ導体98bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路28Aにおいて、キャパシタ導体98aとキャパシタ導体98bとは、互いに電気的に接続されている。
【0078】
電気回路29Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体99a,99bを含んでいる。電気回路22Aと電気回路29Aとは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路23Aと電気回路29Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体92bとキャパシタ導体99aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体93bとキャパシタ導体99bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路29Aにおいて、キャパシタ導体99aとキャパシタ導体99bとは、互いに電気的に接続されている。
【0079】
電気回路30Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体100a,100bを含んでいる。電気回路22Aと電気回路30Aとは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路23Aと電気回路30Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体92eとキャパシタ導体100aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体93fとキャパシタ導体100bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路30Aにおいて、キャパシタ導体100aとキャパシタ導体100bとは、互いに電気的に接続されている。
【0080】
電気回路31Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体101a,101b,101c,101dを含んでいる。電気回路21Aと電気回路31Aとは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路22Aと電気回路31Aとは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路23Aと電気回路31Aとは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路24Aと電気回路31Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体101a,101b,101c,101dは、グランドに接続されている。キャパシタ導体91cとキャパシタ導体101aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体92cとキャパシタ導体101bとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体93cとキャパシタ導体101cとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体94cとキャパシタ導体101dとによって、キャパシタが形成されている。
【0081】
電気回路32Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体102a,102b,102cを含んでいる。電気回路22Aと電気回路32Aとは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路23Aと電気回路32Aとは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路24Aと電気回路32Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体102a,102b,102cは、グランドに接続されている。キャパシタ導体92fとキャパシタ導体102aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体93gとキャパシタ導体102bとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体94eとキャパシタ導体102cとによって、キャパシタが形成されている。
【0082】
たとえば、一対の外部電極85aの少なくとも一方は、電気回路31A,32Aに連結されている。一対の外部電極85bの少なくとも一方は、電気回路31A,32Aに連結されている。一対の外部電極85cの一方は、端部77aに連結されてる接続導体78に連結されており、平衡ポート13Aに連結されている。一対の外部電極85cの他方は、端部77bに連結されてる接続導体78に連結されており、平衡ポート14Aに連結されている。一対の外部電極85dの一方は、不平衡ポート11Aに連結されている。
【0083】
各電気回路20Aのキャパシタ導体の全ては、誘電体層7bに設けられている。各電気回路20Aに含まれている全てのキャパシタにおいて、各キャパシタを形成するキャパシタ導体の間には誘電体層7bが満たされている。各電気回路20Aのキャパシタ導体の全てが、誘電体層7b内に含まれていてもよい。
【0084】
次に、本実施形態及び変形例における積層フィルタ1,1Aの作用効果について説明する。積層フィルタ1において、入出力部10は、二対の平衡ポート11,12,13,14からなる入出力ポート群を含んでいる。積層フィルタ1Aにおいて、入出力部10Aは、不平衡ポート11Aと一対の平衡ポート13A,14Aとからなる入出力ポート群を含んでいる。積層フィルタ1,1Aにおいて、複数の誘電体層7は、誘電体層7bと、誘電体層7a,7cとを含んでいる。誘電体層7a,7cは、誘電体層7bの誘電率よりも低い誘電率を有している。積層フィルタ1において、たとえば、電気回路24のキャパシタ導体54a~54fは、誘電体層7bに設けられている。電気回路21,22,23,24は、共振回路に相当する。積層フィルタ1Aにおいて、たとえば、電気回路24Aのキャパシタ導体94a~94fは、誘電体層7bに設けられている。インダクタ導体44の少なくとも一部は、誘電体層7aに設けられている。
【0085】
積層フィルタ1,1Aの共振回路において、インダクタ導体が比較的低い誘電率を有する誘電体層7に含まれている場合、共振回路の自己共振周波数が高周波化する。上記構成によれば、スプリアスが生じる周波数域が調整され、所望の周波数域におけるスプリアスが低減され得る。キャパシタ導体が誘電体層7bに設けられているため、全てのキャパシタ導体が誘電体層7aに設けられた場合に比べて、キャパシタのサイズが縮小され得る。したがって、積層フィルタ1,1Aのサイズアップが抑制されながら、所望の周波数域におけるスプリアスが低減され得る。
【0086】
図7は、バランス-バランス特性を有している積層フィルタの特性を示している。
図7において、データD1は、積層フィルタ1の特性を示している。データD2は、バランス-バランス特性を有している従来の積層フィルタの特性を示している。
図7に示されているように、データD1では、データD2に比べて、7000~10000MHzにおけるスプリアスが抑制されている。
【0087】
図8は、アンバランス-バランス特性を有している積層フィルタの特性を示している。
図8において、データD3は、積層フィルタ1Aの特性を示している。データD4は、アンバランス-バランス特性を有している従来の積層フィルタの特性を示している。
図8に示されているように、データD3では、データD4に比べて、8000~10000MHzにおけるスプリアスが抑制されている。
【0088】
積層フィルタ1において、インダクタ導体44は、導体層77と、複数のビア79とを含んでいる。導体層77は、積層方向と交差する方向に延在している。複数のビア79は、導体層77に電気的に接続されている。複数のビア79は、積層方向に配列されている。この構成によれば、コンパクトな積層フィルタにおいて、インダクタ導体44における導電経路の長さが確保され得る。積層フィルタ1Aも同様の構成を有している。
【0089】
積層フィルタ1において、導体層77は、誘電体層7a内に含まれている。この場合、所望のスプリアスがさらに容易に調整され得る。積層フィルタ1Aも同様の構成を有している。
【0090】
積層フィルタ1において、複数のビア79の半分以上は、誘電体層7a内に含まれている。この場合、所望のスプリアスがさらに容易に調整され得る。積層フィルタ1Aも同様の構成を有している。
【0091】
積層フィルタ1Aにおいて、電気回路21Aは、インダクタ導体41とキャパシタ導体91a~91cとを含んでいる。電気回路21Aのインダクタ導体41は、端部41a,41bを有している。キャパシタ導体91a~91cは、端部41aに接続されている。端部41bは、グランドに接続されていてもよい。この場合、アンバランス-バランス特性を有する積層フィルタ1Aにおいて、高域のスプリアスが低減され得る。
【0092】
積層フィルタ1Aにおいて、キャパシタ導体91a~91cは、誘電体層7b内に含まれていてもよい。この場合、所望のスプリアスがさらに容易に調整され得る。
【0093】
積層フィルタ1において、電気回路21は、インダクタ導体41とキャパシタ導体51a,51c,51eとキャパシタ導体51b,51d,51fと、を含んでいる。インダクタ導体41は、端部41a,41bを有している。キャパシタ導体51a,51c,51eは、端部41aに接続されている。キャパシタ導体51b,51d,51fは、端部41bに接続されている。この場合、バランス-バランス特性を有する積層フィルタ1において、高域のスプリアスが低減され得る。
【0094】
積層フィルタ1において、キャパシタ導体51a,51c,51eとキャパシタ導体51b,51d,51fは、誘電体層7bに含まれている。この場合、所望のスプリアスがさらに容易に調整され得る。
【0095】
積層フィルタ1において、電気回路21と電気回路24とは、互いに鏡像対称な構成を有している。この場合、バラツキが抑制されると共に、所望のインピーダンスが確保された積層フィルタが実現され得る。
【0096】
積層フィルタ1において、複数の誘電体層7は、複数の誘電体層7a,7cを含んでいる。誘電体層7bは、複数の誘電体層7a,7cに挟まれている。積層体3は、実装面としての主面2bと、対向面としての主面2aとを有している。主面2aは、複数の誘電体層7の積層方向において主面2bと対向している。誘電体層7bは、主面2aよりも主面2bに近い。この場合、積層フィルタ1が実装された状態において、浮遊容量が低減され得る。インダクタ導体41~44は、グランドから比較的離れた位置に配置される。この結果、Q値が確保され得る。
【0097】
インダクタ導体41及びインダクタ導体44のコイル軸AX2,AX3と、インダクタ導体42及びインダクタ導体43のコイル軸AX1とは、互いに交差している。この場合、インダクタ導体41,42と、インダクタ導体43,44との磁気結合が抑制される。
【0098】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0099】
たとえば、上述した実施形態及び変形例において、電気回路21,24は、コイル軸AX2,AX3を中心に1又は3回以上巻かれたコイルであってもよい。電気回路22,23は、コイル軸AX1を中心に複数回以上巻かれたコイルであってもよい。
【0100】
上述した実施形態の記載から把握されるとおり、本明細書は、以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
複数の誘電体層が積層されている積層体と、
前記積層体の内部に設けられている導体部と、を備え、
前記導体部は、入出力部と、前記積層体の積層方向と交差する方向に配列されていると共に前記入出力部に接続されている第1及び第2共振回路とを含んでおり、
前記入出力部は、不平衡ポートと一対の平衡ポートとからなる入出力ポート群、又は、二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでおり、
前記第2共振回路は、第1及び第2端部を有しているインダクタ導体と、前記第1端部に接続されている第1キャパシタ導体と、前記第2端部に接続されている第2キャパシタ導体と、を含んでおり、
前記複数の誘電体層は、第1誘電体層と、前記第1誘電体層の誘電率よりも低い誘電率を有している第2誘電体層と、を含んでおり、
前記第1及び第2キャパシタ導体は、前記第1誘電体層に設けられており、
前記インダクタ導体の少なくとも一部は、前記第2誘電体層に設けられている、積層フィルタ。
(付記2)
前記第1共振回路は、第3及び第4端部を有しているインダクタ導体と、前記第3端部に接続されている第3キャパシタ導体が含まれており、
前記第4端部は、グランドに接続されている、付記1に記載の積層フィルタ。
(付記3)
前記第3キャパシタ導体は、前記第1誘電体層に設けられている、付記2に記載の積層フィルタ。
(付記4)
前記第1共振回路は、第3及び第4端部を有しているインダクタ導体と、前記第3端部に接続されている第3キャパシタ導体と、前記第4端部に接続されている第4キャパシタ導体と、を含んでいる、付記1に記載の積層フィルタ。
(付記5)
前記第3キャパシタ導体及び前記第4キャパシタ導体は、前記第1誘電体層に設けられている、付記4に記載の積層フィルタ。
(付記6)
前記第1共振回路と前記第2共振回路とは、互いに鏡像対称な構成を有している、付記4又は付記5のいずれか一項に記載の積層フィルタ。
(付記7)
前記インダクタ導体は、前記積層方向と交差する方向の延在している導体層と、前記導体層に電気的に接続されていると共に前記積層方向に配列されている複数のビアと、を含んでいる、付記1から付記6のいずれか一項に記載の積層フィルタ。
(付記8)
前記導体層は、前記第2誘電体層内に含まれている、付記7に記載の積層フィルタ。
(付記9)
前記複数のビアの半分以上は、前記第2誘電体層内に含まれている、付記7又は付記8に記載の積層フィルタ。
(付記10)
前記複数の誘電体層は、複数の前記第2誘電体層を含んでおり、
前記第1誘電体層は、前記複数の第2誘電体層に挟まれ、
前記積層体は、実装面と、前記複数の誘電体層の積層方向において前記実装面と対向している対向面とを有しており、
前記第1誘電体層は、前記対向面よりも前記実装面に近い、付記1から付記9のいずれか一項に記載の積層フィルタ。
【符号の説明】
【0101】
1,1A…積層フィルタ、3…積層体、6,6A…導体部、7,7a,7b…誘電体層、10,10A…入出力部、11,12,13,13A,14,14A…平衡ポート、11A…不平衡ポート、41,42,43,44…インダクタ導体、71,73,75,77…導体層、79…ビア。