(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032241
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ガラスブロック構造体
(51)【国際特許分類】
E04C 2/54 20060101AFI20240305BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20240305BHJP
E04C 1/42 20060101ALI20240305BHJP
E02D 29/045 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
E04C2/54 A
E04B9/00 U
E04C1/42
E02D29/045 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135798
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岡 一郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 勇二
(72)【発明者】
【氏名】馬場 亮
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 元
【テーマコード(参考)】
2D147
2E162
【Fターム(参考)】
2D147CA02
2D147NA00
2E162BA02
2E162BB04
2E162CA24
2E162CB07
2E162DA01
2E162DA10
(57)【要約】
【課題】建築物の天井や遊歩道の床面等に設けられた場合であっても、設置されてから想定外の短期間のうちに、雨水等が侵入して採光用ブロック構築体の下面側から漏水することもなく、防水性及び止水性に優れたガラスブロック構造体を提供する。
【解決手段】複数のガラスブロック10と、複数のガラスブロック10を支持する支持フレーム20と、ガラスブロック10と支持フレーム20との間及び隣接するガラスブロック10・10間の隙間に位置する、シール部材30を含む目地部2と、を備え、支持フレーム20は、複数のガラスブロック10によって閉塞される採光用孔部21aが設けられ、複数のガラスブロック10を支持する支持板21を有し、シール部材30は、30度以上のデューロメータA硬度を有する弾性樹脂部材からなる第1シール部材31を有し、第1シール部材31は、外部に露出するように、目地部2の表面近傍に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整列配置された複数のガラスブロックと、
前記複数のガラスブロックを支持する支持フレームと、
前記ガラスブロックと前記支持フレームとの間及び隣接する前記ガラスブロック間の隙間に位置する、シール部材を含む目地部と、を備え、
前記支持フレームは、
前記複数のガラスブロックによって閉塞される複数の採光用孔部が設けられ、当該複数のガラスブロックを厚み方向に載置させた状態で支持する支持板を有し、
前記シール部材は、30度以上のデューロメータA硬度を有する弾性樹脂部材からなる第1シール部材を有し、
前記第1シール部材は、
外部に露出するように、前記目地部の表面近傍に配置される、
ことを特徴とするガラスブロック構造体。
【請求項2】
前記シール部材は、
30度未満のデューロメータA硬度を有する弾性樹脂部材からなる、第2シール部材を有し、
前記第1シール部材及び前記第2シール部材は、前記ガラスブロックの厚み方向に互いに積層され、
前記第2シール部材は、前記第1シール部材に対して、前記支持板側に配置される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のガラスブロック構造体。
【請求項3】
前記シール部材は、
前記第1シール部材の外表面が、前記支持板側に対向する前記ガラスブロックの透光面よりも、0mm~2.5mm支持板側に配置される、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガラスブロック構造体。
【請求項4】
前記第1シール部材は、
幅寸法が、8mm以上17mm以下に設定され、且つ
厚み寸法が、前記幅寸法に対して0.7倍以上1.2倍以下に設定される、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガラスブロック構造体。
【請求項5】
前記目地部は、前記ガラスブロックと、前記支持板に直交し、前記複数のガラスブロックの外周を囲繞する枠壁との間、及び隣接する前記ガラスブロック間の隙間に位置し、
前記目地部は、前記支持フレームの前記支持板と、前記シール部材との間に充填されるモルタルを備え、
前記モルタルが、軽量モルタルである、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガラスブロック構造体。
【請求項6】
前記ガラスブロックの側面と、前記モルタルとの間に介装される緩衝部材をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項5に記載のガラスブロック構造体。
【請求項7】
前記採光用孔部に嵌合し、
前記ガラスブロックを保持する保持部材を備える、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガラスブロック構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に利用される、採光を目的としたガラスブロック構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有底無蓋の箱型形状をなした底部が透光面となる一対のガラス成形体を、互いの開放端縁で溶着一体化されてなるガラスブロックが知られている。
このような構成からなる複数のガラスブロックを、縦横方向に整列配置して一体化してなるガラスブロック構造体は、透光性・断熱性・剛性等に優れているため、採光・装飾等を目的として、近年、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に幅広く利用されている。
【0003】
例えばその一例として、特許文献1においては、複数の透光性ブロック(ガラスブロック)と、複数の透光部(採光用孔部)が形成された部位に、透光性ブロックを各々整列配置して支持する支持枠(支持フレーム)と、これら複数の透光性ブロックの相互間、及び透光性ブロックと支持枠との間に位置する目地部とを備えた採光用ブロック構築体(ガラスブロック構造体)が開示されている。
なお、上記目地部には、採光用ブロック構築体の気密性等を高めるために、所定のシーリング材(シール部材)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した採光用ブロック構築体は、主に複数の透光性ブロックの採光面を上側に向けた状態で、例えば、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に設けられる。
ここで、このような天井や床面等に設置された採光用ブロック構築体は、上面側において、常に、飛来する小石や靴底の踵等の鋭利な異物による衝撃に晒される。
その結果、目地部に設けられるシーリング材は、半永久的な部材ではないが、通常は、数年、或いは数十年に一度は打ち替えが必要である。
【0006】
しかし、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に設けられた場合は、採光用ブロック構築体が設置されてから想定外の短期間のうちに、シーリング材に亀裂が生じ、目地部から雨水や泥水等が侵入して、採光用ブロック構築体の下面側から漏水することがあった。
【0007】
本発明は、以上に示した現状の問題点に鑑みてなされたものであり、例えば、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に設けられた場合であっても、このような天井や床面等に設置されてから想定外の短期間のうちに、雨水や泥水等が侵入して、採光用ブロック構築体(ガラスブロック構造体)の下面側から漏水することもなく、防水性及び止水性に優れたガラスブロック構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、本発明に係るガラスブロック構造体は、整列配置された複数のガラスブロックと、前記複数のガラスブロックを支持する支持フレームと、前記ガラスブロックと前記支持フレームとの間及び隣接する前記ガラスブロック間の隙間に位置する、シール部材を含む目地部と、を備え、前記支持フレームは、前記複数のガラスブロックによって閉塞される複数の採光用孔部が設けられ、当該複数のガラスブロックを厚み方向に載置させた状態で支持する支持板を有し、前記シール部材は、30度以上のデューロメータA硬度を有する弾性樹脂部材からなる第1シール部材を有し、前記第1シール部材は、外部に露出するように、前記目地部の表面近傍に配置されることを特徴とする。
このような構成を有することにより、鋭利な異物に対する、外部に露出したシール部材の剛性を高めることができ、複数のガラスブロックと支持フレームの枠壁との間、及び互いに隣接する前記ガラスブロック間、即ち目地部の剛性を高めることができる。
従って、例えば、複数のガラスブロックを上側に向けた状態で、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に設けられた場合であっても、飛来する小石や靴底の踵などによって、外部に露出したシール部材に亀裂が生じ、目地部から雨水や泥水等が侵入して、ガラスブロック構造体の下面側から漏水するのを効果的に抑制することができる。
【0010】
また、本発明に係るガラスブロック構造体において、前記シール部材は、30度未満のデューロメータA硬度を有する弾性樹脂部材からなる、第2シール部材を有し、前記第1シール部材及び前記第2シール部材は、前記ガラスブロックの厚み方向に互いに積層され、前記第2シール部材は、前記第1シール部材に対して、前記支持板側に配置されることが好ましい。
このような構成を有することにより、30度以上のデューロメータA硬度を有する弾性樹脂部材からなる第1シール部材によって、複数のガラスブロックと支持フレームの枠壁との間、及び互いに隣接する前記ガラスブロック間、即ち目地部において、鋭利な異物に対する目地部の剛性を高めると同時に、30度未満のデューロメータA硬度を有する弾性樹脂部材からなる第2シール部材によって、目地部の密封性及び緩衝性を高めて、ガラスブロック構造体における防水性及び止水性を向上させることができる。
従って、例えば、複数のガラスブロックを上側に向けた状態で、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に設けられた場合であっても、飛来する小石や靴底の踵などによって、外部に露出したシール部材に亀裂が生じ、目地部から雨水や泥水等が侵入して、ガラスブロック構造体の下面側から漏水するのを効果的に抑制することができる。
また、例えば、施工後の温度変化や地震等による、前記支持フレームを介して加えられる応力を十分に緩衝できるため、目地部に亀裂が生じ、目地部から雨水や泥水等が侵入して、ガラスブロック構造体の下面側から漏水するのを、効果的に抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係るガラスブロック構造体において、前記シール部材は、前記第1シール部材の外表面が、前記支持板側に対向する前記ガラスブロックの透光面よりも、0mm~2.5mm支持板側に配置されることが好ましい。
このような構成を有することにより、目地部において、第1シール部材による窪みが生じることもなく、例えば、複数のガラスブロックを上側に向けた状態で、建築物や地下道の天井、あるいは、遊歩道の床面等に設けられた場合であっても、当該目地部に雨水や泥水等が溜まるのを防止することができる。
その結果、目地部から雨水や泥水等が侵入するのをより効果的に抑制し、ガラスブロック構造体の防水性及び止水性の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明に係るガラスブロック構造体において、前記第1シール部材は、幅寸法が、8mm以上17mm以下に設定され、且つ厚み寸法が、前記幅寸法に対して0.7倍以上1.2倍以下に設定されることが好ましい。
このような構成を有することにより、ガラスブロック構造体の防水性及び止水性をより一層高めることができる。
【0013】
また、本発明に係るガラスブロック構造体において、前記目地部は、前記ガラスブロックと、前記支持板に直交し、前記複数のガラスブロックの外周を囲繞する枠壁との間、及び隣接する前記ガラスブロック間の隙間に位置し、前記目地部は、前記支持フレームの前記支持板と、前記シール部材との間に充填されるモルタルを備え、前記モルタルが、軽量モルタルであることが好ましい。
このような構成を有することにより、複数のガラスブロックが強固に固定されるため、ガラスブロック構造体全体としての強度を確実に維持することができる。
また、ガラスブロック構造体全体の重量を小さくできるため、当該ガラスブロック構造の取り付け工事をする際に、作業効率良く安全に取り扱いやすくなる。
【0014】
また、本発明に係るガラスブロック構造体においては、前記ガラスブロックの側面と、前記モルタルとの間に介装される緩衝部材をさらに備えることが好ましい。
このような構成を有することにより、例えば、複数のガラスブロックを上側に向けた状態で、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に設けられた場合において、周囲の熱による影響等によって支持フレームが変形し、枠壁の内側に向かってモルタルが押し込まれたとしても、当該モルタルを介してガラスブロックに加えられる押圧力を、緩衝部材によって、より効果的に低減することができる。
従って、上記押圧力によってガラスブロックに亀裂が生じ、当該亀裂を通じて雨水や泥水等が侵入するのを効果的に抑制し、より確実に防水性及び止水性の向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明に係るガラスブロック構造体においては、前記採光用孔部に嵌合し、前記ガラスブロックを保持する保持部材を備えることが好ましい。
このような構成を有することにより、ガラスブロック構造体の製造工程において、支持フレームにおける所定の位置に、保持部材を用いて、複数のガラスブロックを容易に配置することができ、製造コストの低減化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係るガラスブロック構造体によれば、例えば、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に設けられた場合であっても、このような天井や床面等に設置されてから想定外の短期間のうちに、雨水や泥水等が侵入して、ガラスブロック構造体の下面側から漏水することもなく、防水性及び止水性に優れたガラスブロック構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガラスブロック構造体の全体的な構成を示した平面図である。
【
図2】ガラスブロック構造体の構成を示した図であって、
図1中の矢視Xの方向に見た拡大断面側面図である。
【
図3】支持フレームの構成を示した図であって、(a)はその平面図であり、(b)は
図3(a)中の矢視Yの方向に見た断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
[ガラスブロック構造体1の全体構成]
先ず、本実施形態におけるガラスブロック構造体1の全体構成について、
図1乃至
図3を用いて説明する。
【0020】
ガラスブロック構造体1は、複数のガラスブロック10・10・・・を、縦横方向に整列配置して一体化してなる構造体であって、例えば、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に設けられるものである。
ガラスブロック構造体1は、
図1に示すように、主に、複数(例えば本実施形態においては9個)のガラスブロック10・10・・・と、これら複数のガラスブロック10・10・・・を支持する支持フレーム20と、複数のガラスブロック10・10・・・と支持フレーム20との間に形成された目地部2に配置されるシール部材30とを備える。
また、複数のガラスブロック10・10・・・と支持フレーム20との間には、シール部材30及びモルタル40からなる目地部2と、緩衝部材50(
図2を参照)と、保持部材60とが配設されている。
【0021】
ガラスブロック10は、光を透過させる採光機能をガラスブロック構造体1に付与するものである。
ガラスブロック10は、例えば底面が矩形状の透光面11である有底無蓋の箱型形状をなした一対のガラス成形体10A・10Aを、互いの開放端縁10A1・10A1で溶着一体化されてなる。
【0022】
各ガラス成形体10Aは、例えば190mm×190mm×50mm、開放端縁10A1の肉厚5mmの大きさに形成され、この場合、ガラスブロック10は、190mm×190mm×100mmの寸法を有する。
また、各ガラス成形体10Aは、側面視にて開放側(開放端縁10A1側)を狭めた台形状をなしており、これにより、ガラスブロック10の側面12は、厚み方向の中央部(開放端縁10A1)に向かって凹んだ形状をなしている。
【0023】
なお、ガラスブロック10の構成については、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、透光面11を構成する各ガラス成形体10Aの底面が、円形状、或いは矩形状以外の多角形状に形成されていてもよい。
また、上記のガラスブロック10の外形寸法は一例であって、他の外形寸法を有していてもよい。
【0024】
次に、支持フレーム20について説明する。
支持フレーム20は、
図3(a)に示すように、ステンレス製の部材からなる支持板21、枠壁22、補強材23、第1周縁板24、及び第2周縁板25等を有し、これらの各部材が溶接等によって一体的に接合された構成からなる。
【0025】
支持板21は、複数のガラスブロック10・10・・・(
図1を参照)を厚み方向に載置させた状態で支持する部位である。
支持板21は、矩形状の平板部材からなり、その平面には、複数のガラスブロック10・10・・・と同等数(例えば本実施形態においては9個)の採光用孔部21a・21a・・・が、縦横方向に整列して形成されている。
【0026】
ここで、各採光用孔部21aは、ガラスブロック10の透光面11と相似形状(例えば、本実施形態においては矩形状)からなるとともに、当該透光面11の外形寸法に比べて、やや小さな開口寸法を有するように形成されている。
例えば本実施形態においては、190mm×190mmの外形寸法を有するガラスブロック10の透光面11に対して、各採光用孔部21aは、165mm×165mmの開口寸法からなる矩形状に形成されている。
【0027】
そして、各採光用孔部21aは、後述する保持部材60(
図2を参照)を介して、ガラスブロック10によって閉塞される。
これにより、複数のガラスブロック10・10・・・は、支持フレーム20の支持板21上において、縦横方向に整列配置されるとともに、複数の採光用孔部21a・21a・・・を介して、光を透過させる採光機能をガラスブロック構造体1に付与する。
【0028】
枠壁22は、支持フレーム20の周壁部を構成する部位である。
枠壁22は、支持板21に直交し、且つ、当該支持板21の周端部に沿って設けられた複数の平板部材からなる。
従って、枠壁22は、支持板21上に配置された複数のガラスブロック10・10・・・に対して、これら複数のガラスブロック10・10・・・の外周を、囲繞するように設けられる。
【0029】
補強材23は、支持フレーム20の剛性を高めるための部位である。
補強材23は、帯板状の平板部材からなり、支持板21の一方側(ガラスブロック10が載置される側であって、本実施形態においては、上面側)の平面21bに、立設している。
具体的には、補強材23は、互いに隣接する採光用孔部21a・21aの間において、ガラスブロック10が載置される側に延出するようにして、支持板21に立設している。
当該補強材23の長手方向の両端部は、枠壁22の内側面22aと接続している。
【0030】
なお、
図3(b)に示すように、補強材23の幅寸法aは、支持板21における上記一方側の平面21bと、枠壁22の内側面22aとによって囲まれた空間部Qの深さ寸法bよりも、小さい(a<b)。
幅寸法aは、空間部の深さ寸法bの1/2未満であることが好ましい。
【0031】
第1周縁板24は、例えば、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等にガラスブロック構造体1を設置する場合に、当該ガラスブロック構造体1を所定位置にて固定するためのものである。
第1周縁板24は、矩形枠状に形成された板状部材からなり、枠壁22の外周面22bに直交し、当該外周面22bに沿って鍔状に設けられている。
【0032】
そして、
図3(a)に示すように、第1周縁板24には、複数の貫通孔24a・24a・・・が設けられており、これらの貫通孔24a・24a・・・を介して、ガラスブロック構造体1は、アンカーボルト等を用いて、所定位置に固定される。
【0033】
第2周縁板25は、例えば、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等にガラスブロック構造体1を設置する場合に、ガラスブロック構造体1と、当該ガラスブロック構造体1が設置される固定物Z(
図2を参照)との間の隙間を埋めるシーリング材Z1を、保持するものである。
第2周縁板25は、矩形枠状に形成された板状部材からなり、第1周縁板24の上方側において、枠壁22の外周面22bに直交し、当該外周面22bに沿って鍔状に設けられている。
【0034】
なお、第2周縁板25の幅寸法cは、第1周縁板24の幅寸法dよりも小さく(c<d)、平面視において、第1周縁板24の貫通孔24aが、第2周縁板25によって塞がれないように設定されている。
【0035】
次に、モルタル40について説明する。
図2において、モルタル40は、支持板21上に配置された複数のガラスブロック10・10・・・を固定するとともに、ガラスブロック構造体1の剛性を高めるためのものである。
【0036】
モルタル40については、流動性の高い軽量モルタルを用いることが好ましい。
軽量モルタルを用いることにより、ガラスブロック構造体1全体の重量を小さくできるため、当該ガラスブロック構造体1の取り付け工事をする際に、作業効率良く安全に取り扱いやすくなる。
また、流動性の高いモルタルは、充填が容易であり、かつ、目地部2に空隙が生じにくいため止水性が向上しやすい。
【0037】
上記の軽量モルタルは、例えば、普通ポルトランドセメント350質量部と、珪砂55質量部と、フライアッシュ100質量部からなる。
【0038】
そして、モルタル40は、支持フレーム20によって支持された複数のガラスブロック10・10・・・と当該支持フレーム20の枠壁22との間、及び互いに隣接するガラスブロック10・10間の隙間において、支持フレーム20の支持板21と、シール部材30との間に充填されている。
【0039】
このような構成を有することにより、モルタル40によって、支持板21上に配置された複数のガラスブロック10・10・・・を固定するとともに、ガラスブロック構造体1の剛性を高めることができ、複数のガラスブロック10・10・・・が強固に固定され、ガラスブロック構造体1全体としての強度を確実に維持することができる。
【0040】
次に、緩衝部材50について説明する。
緩衝部材50は、モルタル40を介して不意に外部から加えられる押圧力に対して、複数のガラスブロック10・10・・・を防護するものである。
緩衝部材50は、緩衝性の高い材料であればよく、例えば本実施形態においては、厚み寸法が5mm、幅寸法が75mmである、ポリエチレンフォーム製の長尺帯状部材からなり、支持フレーム20によって支持された複数のガラスブロック10・10・・・に対して、これら複数のガラスブロック10・10・・・の側面12に沿って巻き付けられ、両面粘着テープ等によって、当該側面12に貼着される。
なお、緩衝部材50はゴム材等であってもよい。
【0041】
そして、緩衝部材50は、支持フレーム20の枠壁22と隣接して配置されるガラスブロック10において、当該ガラスブロック10の側面12と、モルタル40との間に介装された状態で配置される。
【0042】
このような構成を有することにより、例えば、複数のガラスブロック10・10・・・を上側に向けた状態で、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に設けられた場合において、周囲の熱による影響等によって支持フレーム20が変形し、枠壁22の内側に向かってモルタル40が押し込まれたとしても、当該モルタル40を介してガラスブロック10に加えられる押圧力を、緩衝部材50によって、より効果的に低減することができる。
従って、上記押圧力によってガラスブロック10に亀裂が生じ、当該亀裂を通じて雨水や泥水等が侵入するのを効果的に抑制し、より確実にガラスブロック構造体1における防水性及び止水性の向上を図ることができる。
【0043】
次に、保持部材60について説明する。
保持部材60は、支持フレーム20の採光用孔部21aに対して、ガラスブロック10を所定位置に配置するためのものである。
保持部材60は、採光用孔部21aの形状に沿った枠状(例えば、本実施形態においては矩形枠状)の平面部61と、平面部61の内側端部より直交方向に突出する内側突出部62と、平面部61の外側端部より、当該内側突出部62の突出方向との反対側に向って、直交方向に突出する外側突出部63とを有する。
【0044】
内側突出部62の外側面62aは、採光用孔部21aの内側端面の形状に沿った形状に形成されている。
また、外側突出部63の内側面63aは、ガラスブロック10の側面12の形状に沿った形状に形成されている。
【0045】
保持部材60の材質としては、ガラスブロック10の重量に耐え得る材料であれば、特に限定されず、本実施形態においては、プラスチック製である。
【0046】
そして、保持部材60・60・・・は、全ての採光用孔部21a・21a・・・に設けられ、支持フレーム20上において、採光用孔部内側突出部62が、支持板21の各々の採光用孔部21aに嵌合した状態で配置される。
また、各保持部材60は、支持板21の採光用孔部21aに配置された状態において、各々のガラスブロック10を、外側突出部63に嵌合させた状態で保持する。
【0047】
このような構成を有することにより、ガラスブロック構造体1の構築工程において、支持フレーム20における所定の位置に、保持部材60を用いて、複数のガラスブロック10を容易に配置することができ、製造コストの低減化を図ることができる。
【0048】
次に、シール部材30について、
図1及び
図2を用いて説明する。
シール部材30は、ガラスブロック構造体1の気密性を高めるとともに、優れた防水性及び止水性を当該ガラスブロック構造体1に付与するものである。
【0049】
シール部材30は、
図1に示すように、ガラスブロック構造体1の目地部2、より具体的には、複数のガラスブロック10.・10・・・と支持フレーム20の枠壁22との間、及び互いに隣接するガラスブロック10・10間の隙間に配置される。
また、シール部材30は、
図2に示すように、モルタル40や緩衝部材50の上部に配置される。
【0050】
シール部材30は、目地部2に充填されたモルタル40の表面(支持板21側との反対側の面)において、ガラスブロック10の厚み方向に積層配置される第1シール部材31及び第2シール部材32と、これら第1シール部材31及び第2シール部材32の間に介装されるボンドブレーカ33とを有する。
【0051】
第1シール部材31は、例えばシリコーン等の弾性樹脂部材であって、JISA5756「建築用ガスケット」の硬さ試験に準拠して測定されるデューロメータA硬度が30度以上の部材によって形成されており、デューロメータA硬度が40度以上の部材によって形成されていることが好ましく、45度以上であることがより好ましい。
第1シール部材31のデューロメータA硬度が低すぎると、目地部2の剛性を高め難く、その結果、ガラスブロック構造体1の防水性及び止水性を向上させにくくなる。
第1シール部材としては、例えば、信越化学工業株式会社製のシーラント40Sを用いることができる。
【0052】
そして、第1シール部材31は、外部に露出するようにして、支持フレーム20に支持された複数のガラスブロック10・10・・・に対して、各ガラスブロック10における支持板21側との対向側の透光面11(
図2中の透光面11A)の近傍に配置される。
具体的には、第1シール部材31は、前記第1シール部材31の外表面が、支持板21側に対向する各ガラスブロック10透光面11Aよりも、0mm~2.5mm支持板21側に配置される。
【0053】
このような構成を有することにより、目地部2において、第1シール部材31による不当な窪みが生じることもなく、例えば、複数のガラスブロック10・10・・・を上側に向けた状態で、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等にガラスブロック構造体1が設けられた場合であっても、当該目地部2に雨水や泥水等が溜まるのを防止することができる。
その結果、目地部2から雨水や泥水等が侵入して、ガラスブロック構造体1の下面側から漏水するのをより効果的に抑制し、ガラスブロック構造体1の防水性及び止水性の向上を図ることができる。
【0054】
一方、第2シール部材32は、第1シール部材31と同じく、例えばシリコーン等の弾性樹脂部材であって、JISA5756「建築用ガスケット」の硬さ試験に準拠して測定されるデューロメータA硬度が30度未満の部材によって形成されており、デューロメータA硬度が20度未満の部材によって形成されていることが好ましく、15度未満であることがより好ましい。
第2シール部材32のデューロメータA硬度が高すぎると、目地部2の密封性及び緩衝性を高め難く、その結果、当該ガラスブロック構造体1の防水性及び止水性を向上させにくくなる。
第2シール部材としては、例えば、信越化学工業株式会社製のシーラント701を用いることができる。
【0055】
そして、第2シール部材32は、第1シール部材31に対して、支持フレーム20の支持板21側、即ち、第1シール部材31とモルタル40との間に積層配置される。
【0056】
このような構成を有することにより、30度以上のデューロメータA硬度を有する第1シール部材31によって、鋭利な異物に対する目地部2の剛性を高めると同時に、30度未満のデューロメータA硬度を有する第2シール部材32によって、目地部2の密封性及び緩衝性を高めて、当該ガラスブロック構造体1の防水性及び止水性を向上させることができる。
【0057】
従って、例えば、複数のガラスブロック10・10・・・を上側に向けた状態で、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等にガラスブロック構造体1が設けられた場合であっても、飛来する小石や靴底の踵などによってシール部材30に亀裂が生じ、目地部2から雨水や泥水等が侵入して、ガラスブロック構造体1の下面側から漏水するのを効果的に抑制することができる。
また、例えば、施工後の温度変化や地震等による、支持フレーム20を介して加えられる応力を十分に緩衝できるため、目地部2に亀裂が生じ、目地部2から雨水や泥水等が侵入して、ガラスブロック構造体1の下面側から漏水するのを、効果的に抑制することができる。
【0058】
ここで、第1シール部材31の幅寸法w1は、8mm以上17mm以下に設定され(8mm≦w1≦17mm)、且つ厚み寸法h1は、当該幅寸法w1に対して0.7倍以上1.2倍以下に設定されている(0.7×w1≦h1≦1.2×w1)。
幅寸法w1は、好ましくは10mm~14mmであり、厚み寸法h1は、好ましくは、当該幅寸法w1に対して、0.9~1.1倍である。
【0059】
また、第2シール部材32も第1シール部材31と同様に、幅寸法w2は、8mm以上17mm以下に設定され(8mm≦w2≦17mm)、且つ厚み寸法h2は、当該幅寸法w2に対して0.7倍以上1.2倍以下に設定されている(0.7×w2≦h2≦1.2×w2)。
幅寸法w2は、好ましくは10mm~14mmであり、厚み寸法h2は、好ましくは、当該幅寸法w2に対して、0.9~1.1倍である。
【0060】
そして、これらの第1シール部材31及び第2シール部材32は、互いに略同等の幅寸法及び厚み寸法となるように設定されている(w1=w2、h1=h2)。
【0061】
このような構成を有することにより、ガラスブロック構造体1の防水性及び止水性をより一層高めることができる。
【0062】
[ガラスブロック構造体1の構築方法]
以上のような構成からなるガラスブロック構造体1は、製造工場等において、例えば以下に示す手順に従い予め構築された後、施工現場に搬入され、所定の設置個所(例えば建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等)に設置される。
【0063】
先ず始めに、支持フレーム20の支持板21上において、複数の採光用孔部21a・21a・・・に、複数の保持部材60・60・・・をそれぞれ配置する。
この際、各保持部材60は、内側突出部62を採光用孔部21aに嵌合させた状態で配置される。
これにより、各保持部材60は、内側突出部62を介して、採光用孔部21aによって位置決めされた状態で、支持板21上の所定位置に整列配置される。
【0064】
次に、支持板21上に配置された複数の保持部材60・60・・・において、各平面部61の上面に、複数のガラスブロック10・10・・・を、一方の透光面11を下方に向けた状態でそれぞれ載置する。
この際、各ガラスブロック10は、各保持部材60の外側突出部63によって、当該保持部材60に対する載置位置を規制されることとなる。
従って、これら複数の保持部材60によって、支持板21上の所定位置に、複数のガラスブロック10・10・・・を容易に整列配置することができる。
【0065】
支持フレーム20の支持板21上に、複数のガラスブロック10・10・・・を整列配置させた後、これら複数のガラスブロック10・10・・・の側面側の周囲に沿って、緩衝部材50を貼着する。
その後、例えば、普通ポルトランドセメント350質量部と、珪砂55質量部と、フライアッシュ100質量部と、水210質量部からなる所定量のモルタル40をガラスブロック10・10・・・と支持フレームの隙間に充填し、当該モルタル40が硬化するまでの所定期間養生する。
【0066】
上記所定期間を終え、モルタル40が十分に硬化した後、目地部2における当該モルタル40の上面に、シール部材30を形成する。
具体的には、コーキングガンやヘラ等を用いて、未硬化の第2シール部材32をモルタル40の上面に充填した後、所定時間放置して十分に硬化させ、続いて、テープ状のボンドブレーカ33を第2シール部材32の上面に貼着した後、未硬化の第1シール部材31を充填し、再び所定時間放置して十分に硬化させる。
こうして、ガラスブロック構造体1は、製造工場等において、予め構築される。
【0067】
このように、本実施形態におけるガラスブロック構造体1は、整列配置された複数のガラスブロック10・10・・・と、複数のガラスブロック10・10・・・を支持する支持フレーム20とを備えるガラスブロック構造体である。
また、支持フレーム20は、複数のガラスブロック10・10・・・によって閉塞される複数の採光用孔部21a・21a・・・が設けられ、複数のガラスブロック10・10・・・を厚み方向に載置させた状態で支持する支持板21と、支持板21に立設し、複数のガラスブロック10・10・・・の外周を囲繞する枠壁22とを有している。
【0068】
ここで、ガラスブロック構造体1は、複数のガラスブロック10・10・・・と枠壁22との間、及び互いに隣接するガラスブロック10・10間の隙間に配置されるシール部材30をさらに備えている。
【0069】
そして、シール部材30は、30度以上のデューロメータA硬度を有する弾性樹脂部材からなる第1シール部材31を有し、当該第1シール部材31は、外部に露出するように、ガラスブロック10における支持板21側との対向側の表面近傍に配置される構成となっている。
【0070】
このような構成からなる、本実施形態におけるガラスブロック構造体1によれば、鋭利な異物に対するシール部材30の剛性を高めることができ、複数のガラスブロック10・10・・・と支持フレーム20の枠壁22との間、及び互いに隣接するガラスブロック10・10間、即ち目地部2の剛性を高めることができる。
従って、例えば、複数のガラスブロック10・10・・・を上側に向けた状態で、建築物や地下道の天井、或いは遊歩道の床面等に、ガラスブロック構造体1が設けられた場合であっても、飛来する小石や靴底の踵などによってシール部材30に亀裂が生じ、目地部2から雨水や泥水等が侵入して、ガラスブロック構造体1の下面側から漏水するのを効果的に抑制することができる。
【0071】
以上、本発明を具現化する一実施形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内の全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0072】
1 ガラスブロック構造体
2 目地部
10 ガラスブロック
11 透光面(表面)
11A 透光面(平面)
20 支持フレーム
21 支持板
21a 採光用孔部
22 枠壁
30 シール部材
31 第1シール部材
32 第2シール部材
40 モルタル
50 緩衝部材
60 保持部材
h1 第1シール部材の厚み寸法
h2 第2シール部材の厚み寸法
w1 第1シール部材の幅寸法
w2 第2シール部材の幅寸法