(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032244
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】分光検出器、レーザ走査型顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G01J 3/12 20060101AFI20240305BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G01J3/12
G02B21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135803
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】玉野 真悟
(72)【発明者】
【氏名】小林 大
【テーマコード(参考)】
2G020
2H052
【Fターム(参考)】
2G020AA03
2G020AA04
2G020CB23
2G020CB43
2G020CC02
2G020CC13
2G020CC26
2G020CC47
2G020CD03
2G020CD06
2G020CD14
2G020CD36
2H052AA07
2H052AA09
2H052AC04
2H052AC14
2H052AC15
2H052AC34
2H052AF07
(57)【要約】
【課題】波長分散素子と光学系の配置の自由度を確保しながら、高性能な分光検出器を実現する。
【解決手段】分光検出器30は、検出光を波長で分散させる波長分散素子31と、検出光を検出する光検出器38と、光検出器38で検出する検出対象波長を選択する波長選択機構34と、波長分散素子31で生じた波長毎の光束を波長選択機構34が置かれた面に集光させる集光光学系33と、調整光学系35を備える。調整光学系35は、波長選択機構34と光検出器38との間に配置され、波長選択機構34を通過した検出光の発散を抑制する。また、調整光学系35は、波長選択機構34を通過した検出光のうち調整光学系35が配置されていないときに光検出器38の有効開口外に入射する逸脱光を有効開口内へ入射させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出光を波長で分散させる波長分散素子と、
前記検出光を検出する光検出器と、
前記光検出器で検出する検出対象波長を選択する波長選択機構と、
前記波長分散素子で生じた波長毎の光束を前記波長選択機構が置かれた面に集光させる集光光学系と、
前記波長選択機構と前記光検出器との間に配置され、前記波長選択機構を通過した前記検出光の発散を抑制する調整光学系であって、前記波長選択機構を通過した前記検出光のうち前記調整光学系が配置されていないときに前記光検出器の有効開口外に入射する逸脱光を前記有効開口内へ入射させる前記調整光学系と、を備える
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の分光検出器において、
前記調整光学系は、
前記波長選択機構を通過した前記検出光の発散を抑制するコリメータと、
前記コリメータと前記光検出器との間に配置された、前記逸脱光を前記有効開口内に導く偏向素子と、を備える
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項3】
請求項2に記載の分光検出器において、
前記偏向素子の断面の輪郭線は、前記逸脱光を前記有効開口内にシフトさせる面に対応する前記コリメータの光軸に対して対称な2直線を含み、
前記断面は、前記コリメータの光軸方向と、前記検出光の波長分散方向とで定義される
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項4】
請求項3に記載の分光検出器において、
前記輪郭線は、さらに、前記2直線を接続し前記光軸上を横断する前記光軸に直交する直線を含む
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項5】
請求項3に記載の分光検出器において、
前記輪郭線は、さらに、前記2直線を接続し前記光軸上を横断する曲線を含み、
前記曲線に対応する前記偏向素子の曲面は、前記有効開口より小さい
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項6】
請求項3に記載の分光検出器において、
前記2直線に対応する面は、前記偏向素子の前記光検出器側に設けられる
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項7】
請求項6に記載の分光検出器において、
前記偏向素子は、前記コリメータに向けられた、前記光軸と直交する平面を有する
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項8】
請求項2に記載の分光検出器において、
前記偏向素子は、上面を前記光検出器に向けた錐台形状を有する
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項9】
請求項8に記載の分光検出器において、
前記偏向素子は、上面を前記光検出器に向けた円錐台形状を有する
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項10】
請求項8に記載の分光検出器において、
前記偏向素子は、上面を前記光検出器に向けた四角錐台形状を有する
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項11】
請求項2に記載の分光検出器において、
前記偏向素子は、ルーフを前記光検出器に向けたパウエルレンズである
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項12】
請求項2に記載の分光検出器において、
前記偏向素子は、前記光検出器の有効開口よりも大きい
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項13】
請求項1に記載の分光検出器において、
前記調整光学系の断面の輪郭線は、前記逸脱光を前記有効開口内にシフトさせる面に対応する前記調整光学系の光軸に対して対称な2直線を含み、
前記断面は、前記調整光学系の光軸方向と、前記調整光学系へ入射時点における前記検出光の波長分散方向とで定義される
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項14】
請求項13に記載の分光検出器において、
前記輪郭線は、さらに、前記2直線を接続し前記光軸上を横断する前記光軸に直交する直線を含む
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項15】
請求項13に記載の分光検出器において、
前記輪郭線は、さらに、前記2直線を接続し前記光軸上を横断する曲線を含み、
前記曲線に対応する前記調整光学系の曲面は、前記有効開口より小さい
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項16】
請求項13に記載の分光検出器において、
前記2直線に対応する面は、前記調整光学系の前記光検出器側に設けられる
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項17】
請求項1に記載の分光検出器において、さらに、
前記波長分散素子と前記集光光学系の間に配置された搖動ミラーを備える
ことを特徴とする分光検出器。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれか1項に記載の分光検出器を備える
ことを特徴とするレーザ走査型顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、分光検出器、レーザ走査型顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
分光検出器に用いられる分光手段は、主に、プリズムや回折格子などの波長分散素子と、ダイクロイックフィルタ(ダイクロイックミラー)やバリアフィルタなどのフィルタ素子と、に大別される。
【0003】
波長分散素子を用いる分光検出器(以降、波長分散素子方式の分光検出器と記す)は、例えば、特許文献1の
図1に記載されるように、典型的には、ピンホールと、コリメータと、波長分散素子と、集光レンズと、波長選択機構と、光検出器を備えている。この構成では、コリメータが検出光を平行光束に変換して波長分散素子に入射させる。そして、波長分散素子で波長毎に分かれた光束のうち検出対象の波長域の光束のみを、その後段の波長選択機構で選択的に透過させる。このとき、波長分散素子と波長選択機構との間に集光レンズを配置し、各波長の光束を収斂した状態で波長選択機構へ入射させることで、波長選択機構での波長選択精度を向上させることができる。
【0004】
上記の構成では、集光レンズの前側焦点位置に波長分散素子を配置して集光レンズをテレセントリック光学系として構成することが望ましく、さらに、集光レンズの後側焦点位置に波長選択機構を配置することが望ましい。これにより、波長分散素子によって検出波長毎に光線角度が異なったとしても、検出波長域の検出光の波長選択機構への入射角度は波長によらず一定に維持される。従って、検出波長域の変更によって検出波長域の検出光が光検出器の有効開口から逸れてしまうといった事態を避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、装置内のスペース不足やレイアウト上の制約など様々な要因により、必ずしも集光レンズの前側焦点位置に波長分散素子を配置できるとは限らない。波長分散素子の位置が集光レンズの前側焦点位置からずれると、波長選択機構への主光線の入射角度が波長により異なり、波長によっては光検出器に入射する光束が光検出器の有効開口を外れるおそれがある。結果として、検出する波長によっては正確な分光検出が困難となる。
【0007】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、波長分散素子と光学系の配置の自由度を確保しながら、高性能な分光検出器を実現する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る分光検出器は、検出光を波長で分散させる波長分散素子と、前記検出光を検出する光検出器と、前記光検出器で検出する検出対象波長を選択する波長選択機構と、前記波長分散素子で生じた波長毎の光束を前記波長選択機構が置かれた面に集光させる集光光学系と、前記波長選択機構と前記光検出器との間に配置され、前記波長選択機構を通過した前記検出光の発散を抑制する調整光学系であって、前記波長選択機構を通過した前記検出光のうち前記調整光学系が配置されていないときに前記光検出器の有効開口外に入射する逸脱光を前記有効開口内へ入射させる調整光学系と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係るレーザ走査型顕微鏡は、上記の態様の分光検出器を備える。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、波長分散素子と光学系の配置の自由度を確保しながら、高性能な分光検出器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係るレーザ走査型顕微鏡の構成を例示する図である。
【
図2】第1の実施形態に係る分光検出器の構成を例示する図である。
【
図3】第1の実施形態に係る分光検出器内を通る検出光の光線図を比較した図であり、検出波長域の異なる複数の設定の各々における光線図を示している。
【
図4】検出波長域の異なる複数の設定において第1の実施形態に係る分光検出器で得られるスポットダイアグラムを比較した図である。
【
図5】偏向素子を有しない分光検出器内を通る検出光の光線図を比較した図であり、検出波長域の異なる複数の設定の各々における光線図を示している。
【
図6】検出波長域の異なる複数の設定において偏向素子を有しない分光検出器で得られるスポットダイアグラムを比較した図である。
【
図7】第2の実施形態に係る分光検出器の構成を例示する図である。
【
図8】第2の実施形態に係る分光検出器内を通る検出光の光線図を比較した図であり、検出波長域の異なる複数の設定の各々における光線図を示している。
【
図9】検出波長域の異なる複数の設定において第2の実施形態に係る分光検出器で得られるスポットダイアグラムを比較した図である。
【
図10】第3の実施形態に係る分光検出器の構成を例示する図である。
【
図11】第3の実施形態に係る分光検出器内を通る検出光の光線図を比較した図であり、検出波長域の異なる複数の設定の各々における光線図を示している。
【
図12】偏向素子の断面形状の一例を示す図である。
【
図13】偏向素子の断面形状の別の例を示す図である。
【
図14】偏向素子の断面形状の更に別の例を示す図である。
【
図15】偏向素子の断面形状の更に別の例を示す図である。
【
図16】偏向素子の断面形状の更に別の例を示す図である。
【
図17】偏向素子の断面形状の更に別の例を示す図である。
【
図18】偏向素子の断面形状の更に別の例を示す図である。
【
図19】偏向素子の断面形状の更に別の例を示す図である。
【
図20】調整光学系の断面形状の一例を示す図である。
【
図21】調整光学系の断面形状の別の例を示す図である。
【
図22】調整光学系の断面形状の更に別の例を示す図である。
【
図23】調整光学系の断面形状の更に別の例を示す図である。
【
図24】調整光学系の断面形状の更に別の例を示す図である。
【
図25】調整光学系の断面形状の更に別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るレーザ走査型顕微鏡の構成を例示する図である。レーザ走査型顕微鏡100は、
図1に例示したように、レーザ光で試料Aを2次元的に走査するスキャンユニット1と、レーザ光が照射されることにより試料Aにおいて発生してスキャンユニット1を介して入射する蛍光を検出する複数の分光検出装置2と、を備えている。なお、以降では、蛍光を検出する場合を例に説明するが、蛍光は検出光の一例であり、検出光は蛍光に限らない。
【0013】
スキャンユニット1は、レーザ光を出射するレーザ光源11と、レーザ光源11からのレーザ光を試料Aに導く照明光学系12とを備えている。レーザ光源11は、例えば405nm、488nm、543nmといった発振波長の異なるものが複数種備えられ、それぞれの発振波長のレーザ光を出射制御可能なAOTF(Acousto―Optics Tunable Filter)を備えている。照明光学系12は、レーザ光源11からのレーザ光を導光する光ファイバ13と、コリメートレンズ14とを備えている。
【0014】
また、スキャンユニット1は、試料Aからの蛍光を集光する対物レンズ15と、対物レンズ15により集光された蛍光を結像させる結像レンズ16と、結像レンズ16により結像された蛍光を略平行光にする瞳投影レンズ17と、レーザ光で試料Aを走査するスキャナ18と、略平行光にされた蛍光をレーザ光の光路から分岐する励起ダイクロイックミラー19と、分岐された蛍光を集光する共焦点レンズ20と、集光された蛍光のうち、対物レンズ15の焦点位置から発生した蛍光のみを通過させる共焦点ピンホール21と、コリメートレンズ23を備えている。
【0015】
スキャナ18は、例えば、互いに直交する方向に試料Aを走査する2つのガルバノミラーを含んでいる。なお、スキャナは、ガルバノミラーの代わりに又は加えて、レゾナントミラーなどの他のスキャンデバイスを含んでもよい。
【0016】
励起ダイクロイックミラー19は、回転可能な励起ターレット22に分光透過率又は反射率の異なるものが複数固定されている。励起ターレット22の回転により、光路に挿入する励起ダイクロイックミラー19は変更可能である。
【0017】
分光検出装置2の各々は、複数の波長域の蛍光を同時に検出可能なマルチチャンネル分光検出装置であり、この例では、2つの分光検出器30を備えている。具体的には、分光検出装置2は、スキャンユニット1から入射する蛍光を波長域に応じて2つの光路に分解(分光)する2つの測光ダイクロイックミラー(測光ダイクロイックミラー24、測光ダイクロイックミラー26)と、2つの分光検出器30を備えている。
【0018】
測光ダイクロイックミラー24、測光ダイクロイックミラー26は、それぞれ回転可能な測光ターレット(測光ターレット25、測光ターレット27)に分光透過率又は反射率の異なるものが複数固定されている。測光ターレットの回転により、光路に挿入する測光ダイクロイックミラーは変更可能である。分光検出器30の構成の詳細について後述する。
【0019】
レーザ走査型顕微鏡100は、さらに、入力装置4、表示装置5、及び制御装置6を備えている。入力装置4は、ユーザの入力操作に応じて、例えば、観察対象とする蛍光色素又は波長範囲の入力、画像取得に使用する光検出器38(
図2参照)の設定の入力、スキャン設定の入力など、レーザ走査型顕微鏡100の各種設定の入力を行う。入力装置4は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルである。
【0020】
表示装置5は、レーザ走査型顕微鏡100の設定の入力を可能にする設定入力画面の表示や、画像の表示など、各種の表示を行う。表示装置5は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)である。
【0021】
制御装置6は、レーザ走査型顕微鏡100の各部を制御する。例えば、制御装置6は、レーザ走査型顕微鏡100の設定に応じて、スキャナ18がレーザ光で試料Aを走査し、且つ、試料Aからの蛍光を検出する、ようにレーザ走査型顕微鏡100を制御する。さらに、制御装置6は、光検出器38(
図2参照)から出力された信号に基づいて試料Aの走査画像を生成する。より詳細には、走査画像は、光検出器38から出力された蛍光強度に関する信号とスキャナ18の走査位置に関する信号に基づいて、構築される。
【0022】
制御装置6は、例えば、PC(Personal Computer)であり、プロセッサ6a及びメモリ6bを含む。制御装置6が行う各種制御は、例えば、プロセッサ6aがメモリ6bに記憶されたプログラムを実行すること(所謂ソフトウェア処理)により実現されてもよいし、ハードウェア処理により実現されてもよいし、ソフトウェア処理及びハードウェア処理の組み合わせにより実現されてもよい。プロセッサ6aは、例えば、1つ又は複数の集積回路を含む。集積回路は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などであってもよい。
【0023】
メモリ6bは、プロセッサ6aが実行するプログラムを記憶する。メモリ6bは、プロセッサ6aが実行するプログラムを格納した非一時的なコンピュータ可読媒体を含んでいる。メモリ6bは、例えば、1つ又は複数の任意の半導体メモリ、1つ又は複数のその他の記憶装置、を含むことができる。半導体メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)、プログラマブルROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含んでいる。RAMには、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが含まれてもよい。その他の記憶装置には、例えば、コンピュータ可読媒体として例えば磁気ディスクを含む磁気記憶装置、コンピュータ可読媒体として例えば光ディスクを含む光学記憶装置などが含まれてもよい。
【0024】
図2は、本実施形態に係る分光検出器の構成を例示する図である。
図2では、分光検出器30に入射した蛍光のうちの特定の波長(例えば、400nm)を有する光束のみを図示している。
【0025】
分光検出器30は、
図2に示すように、波長分散素子31と、搖動ミラー32と、集光光学系33と、波長選択機構34と、調整光学系35と、光検出器38を備えている。これらの構成要素は、蛍光が入射する側からこの順番に配置されている。これらの構成要素により、分光検出器30は、分光検出器30に入射した蛍光のうち所定の波長域の蛍光のみを検出することができる。以降では、分光検出器30で検出対象とする波長域を、単に、検出波長域と記す。
【0026】
波長分散素子31は、蛍光を波長で分散させる素子である。波長分散素子31は、例えば、回折格子(例えば、VPH(Volume Phase Holographic) Grating)やプリズムである。搖動ミラー32は、波長分散素子31と集光光学系33の間に配置されたミラーである。搖動ミラー32は、反射面の向きを変更するように搖動可能である。より具体的には、搖動ミラー32は、例えば、波長分散素子31の波長分散方向と波長分散素子31へ入射する蛍光の進行方向の両方に直交する回転軸周りに回転することで反射面の向きを調整することができる。
【0027】
集光光学系33は、波長分散素子31で生じた波長毎の光束を波長選択機構34が置かれた面上に集光させる光学系である。波長選択機構34は、光検出器38で検出する検出対象波長を選択する機構である。波長選択機構34は、例えば、開口が形成されたスリット板である。波長選択機構34は、集光光学系33の後側焦点位置に置かれている。
【0028】
調整光学系35は、波長選択機構34と光検出器38との間に配置された光学系である。調整光学系35は、波長選択機構34を通過した蛍光の発散を抑制し、波長選択機構34を通過した蛍光のうち、調整光学系35が配置されていない場合には光検出器38の有効開口外に入射することになる光(以降、逸脱光と記す。)を、光検出器38の有効開口内へ導く。
【0029】
調整光学系35は、コリメータ36と、偏向素子37を含んでいる。コリメータ36は、波長選択機構34を通過した蛍光の発散を抑制する光学系である。コリメータ36は、正のパワーを有し、蛍光を略平行光束に変換する。偏向素子37は、波長選択機構34を通過した蛍光のうち逸脱光を光検出器38の有効開口内へ導く素子である。偏向素子37は、コリメータ36と光検出器38の間に配置されている。
【0030】
光検出器38は、蛍光を検出する検出器である。光検出器38は、例えば、光電子増倍管(PMT)であり、シリコン光電子増倍管(SiPM)であってもよい。
【0031】
以上のように構成された分光検出器30では、コリメートレンズ23により平行光束に変換された蛍光が波長分散素子31へ入射する。波長分散素子31は、入射した蛍光を
図2の紙面と平行な方向に波長分散させ、波長毎に一定の方向へ出射する。波長分散素子31から出射した蛍光は、波長毎に異なる方向に進行するが、各波長の蛍光の光束は引き続き平行光束である。
【0032】
波長分散素子31から出射した蛍光は、波長毎に異なる角度で搖動ミラー32に入射し、さらに、搖動ミラー32を反射した蛍光は、集光光学系33へ入射する。集光光学系33へ入射する蛍光は、平行光束であるので、
図2に示すように、集光光学系33の後側焦点位置に配置されている、波長選択機構34が置かれた面上に集光する。
【0033】
また、集光光学系33へ入射する蛍光は、波長毎に異なる角度で集光光学系33へ入射するので、波長選択機構34が置かれた面上において、波長毎に集光光学系33の光軸と直交する方向の異なる位置に集光することになる。
【0034】
このため、分光検出器30では、波長選択機構34の開口内に集光する所定の波長域の蛍光のみが波長選択機構34を通過する。従って、分光検出器30は、波長分散素子31に入射した蛍光のうち波長選択機構34を通過した所定の波長域の蛍光のみを検出することができる。
【0035】
波長選択機構34の開口内に集光する蛍光の波長域、つまり、検出波長域は、搖動ミラー32で調整可能である。波長分散素子31から出射される蛍光の波長と方向の関係は一定であるが、搖動ミラー32の反射面の向きを調整することで、集光光学系33へ入射する蛍光の波長と入射角の関係を調整することができる。波長選択機構34が置かれた面(集光光学系33の後側焦点位置)における集光位置は、集光光学系33への入射角に依存するので、入射角を調整することで開口内に集光する蛍光の波長域(検出波長域)を調整することができる。
【0036】
波長選択機構34は、開口幅が一定のスリット板であってもよく、開口幅を変更可能なスリット板であってもよい。開口幅を変更可能なスリット板を波長選択機構34として採用することで、分光検出器30では、検出波長域の幅を調整することが可能となる。
【0037】
波長選択機構34は、開口の一端が固定されていて他端が移動自在な構成により開口幅を変更してもよく、開口の両端が移動自在な構成により開口幅を変更してもよい。開口の両端が移動自在な構成の場合には、開口幅と開口位置を同時に調整することができるため、検出波長域の幅を調整する役割と同時に、搖動ミラー32と同様に検出波長域をシフトさせる役割を担うこともできる。
【0038】
図3は、本実施形態に係る分光検出器30内を通る検出光の光線図を比較した図であり、検出波長域の異なる複数の設定の各々における光線図を示している。
図4は、検出波長域の異なる複数の設定において本実施形態に係る分光検出器30で得られるスポットダイアグラムを比較した図である。
図5は、偏向素子37を有しない分光検出器90内を通る検出光の光線図を比較した図であり、検出波長域の異なる複数の設定の各々における光線図を示している。
図6は、検出波長域の異なる複数の設定において偏向素子37を有しない分光検出器90で得られるスポットダイアグラムを比較した図である。以下、
図3から
図6を参照しながら、調整光学系35の作用についてさらに詳細に説明する。
【0039】
波長分散素子方式の分光検出器では、上述したように、集光光学系の前側焦点位置に波長分散素子を配置し、集光光学系の後側焦点位置に波長選択機構(又は光検出器)を配置することが望ましいが、このような配置は様々な理由から採用できない場合がある。分光検出器30でも、波長分散素子31は集光光学系33の前側焦点位置とは異なる位置に配置されている。
【0040】
集光光学系33の前側焦点位置に波長分散素子31が配置されていれば、波長分散素子31から出射した光線は、波長分散素子31からの射出角によらず波長選択機構34へ光軸と平行に入射することになる。このため、波長選択機構34を通過した蛍光は、検出波長域によらず波長選択機構34の後段に配置された光検出器38の一定の領域内へ入射する。従って、検出波長域の変更することでケラレが生じるといったことは起こり得ない。
【0041】
しかしながら、分光検出器30の様に、集光光学系33の前側焦点位置に波長分散素子31が配置されていない場合には、例えば、
図3に示すように、波長選択機構34へ入射する主光線角度が波長毎に異なり、多くの波長において光軸に対して傾斜してしまう。
【0042】
図3では、波長選択機構34の開口幅を検出波長幅100nm分に対応する幅に設定しながら搖動ミラー32で検出波長域を100nmずつ変化させた様子が示されている。
図3(a)は、検出波長域を400nmから500nmに設定したときの開始波長(400nm)の光線図である。
図3(b)は、検出波長域を500nmから600nmに設定したときの開始波長(500nm)の光線図である。
図3(c)は、検出波長域を600nmから700nmに設定したときの開始波長(600nm)の光線図である。
図3(d)は、検出波長域を700nmから800nmに設定したときの開始波長(700nm)の光線図である。
図3(e)は、検出波長域を800nmから900nmに設定したときの開始波長(800nm)の光線図である。
図3には、600nmの蛍光の主光線はおよそ光軸と平行に波長選択機構34へ入射するが、600nmから離れるほど大きな入射角で主光線が波長選択機構34へ入射する様子が示されている。
【0043】
波長選択機構34の後段に調整光学系35を設けることなく光検出器38を配置した場合、蛍光が光検出器38へ入射する位置は、入射角の大きさに比例して変化するため、検出波長域に依存して変化することになる。従って、波長選択機構34を通過した蛍光であっても、検出波長域の設定によっては光検出器38の有効開口から逸れてしまい、検出できないという事態が起こり得る。
【0044】
調整光学系35は、このような波長選択機構34を通過した蛍光のケラレを抑制するものである。分光検出器30は、波長選択機構34と光検出器38の間に調整光学系35を設けることで、集光光学系33の前側焦点位置に波長分散素子31が配置されていない場合であっても、
図4に示すように、検出波長域によらず蛍光を光検出器38の有効開口内に導いて検出することができる。
【0045】
図4では、
図3と同様に、波長選択機構34の開口幅を検出波長幅100nm分に対応する幅に設定しながら搖動ミラー32で検出波長域を100nmずつ変化させた様子が示されている。
図4(a)は、検出波長域を400nmから500nmに設定したときに、検出波長域の両端(400m、500nm)と中心波長(450nm)の蛍光が光検出器38上に形成する光強度分布を示した図である。
図4(b)は、検出波長域を500nmから600nmに設定したときに、検出波長域の両端(500m、600nm)と中心波長(550nm)の蛍光が光検出器38上に形成する光強度分布を示した図である。
図4(c)は、検出波長域を600nmから700nmに設定したときに、検出波長域の両端(600m、700nm)と中心波長(650nm)の蛍光が光検出器38上に形成する光強度分布を示した図である。
図4(b)は、検出波長域を700nmから800nmに設定したときに、検出波長域の両端(700m、800nm)と中心波長(750nm)の蛍光が光検出器38上に形成する光強度分布を示した図である。
図4(e)は、検出波長域を800nmから900nmに設定したときに、検出波長域の両端(800m、900nm)と中心波長(850nm)の蛍光が光検出器38上に形成する光強度分布を示した図である。
図4に示すように、分光検出器30は、調整光学系35を用いることで、400nmから900nmまでの全波長域で蛍光を有効開口内に収めることが可能である。
【0046】
コリメータ36は、波長選択機構34を通過した発散光束を略平行光束に変換する。なお、コリメータ36は、発散状態を抑制できればよく、発散光束を発散角度がより小さい発散光束に変換してもよい。また、コリメータ36は、発散光束を収斂角度が比較的小さい収斂光束に変換してもよい。これにより、光束が光軸から離れすぎないように光軸から離れる方向に進行する光束の向きを調整しつつ、光検出器38上における各波長の光束径が大きくなりすぎることを防止することができる。
【0047】
図5及び
図6に示すように、コリメータ36で光束径の拡大を抑制しても、波長選択機構34への入射角が大きすぎると、光検出器38の有効開口から逸れてしまう。具体的には、
図6(a)に示す検出波長域を400nmから500nmに設定したときと、
図6(e)に示す検出波長域を800nmから900nmに設定したときに、検出波長域の蛍光が光検出器38の有効開口から逸れる様子が示されている。
【0048】
偏向素子37は、コリメータ36で光束径が調整された光束を有効開口内にシフトさせるものであり、少なくとも、有効開口から逸れてしまう逸脱光を光軸に近づけるように作用する。従って、偏向素子37は、光検出器38の有効開口よりも大きいことが望ましい。偏向素子37は、具体的には、
図2及び
図3に示すように、例えば、三角柱形状を有するプリズムである。偏向素子37は、光検出器38に向けた頂角を光軸上に有し、光軸に対して対称に配置される。より詳細には、偏向素子37を三角柱の二等辺三角形形状の底面を光軸で2等分するように配置すればよい。
【0049】
これにより、光軸に対称なプリズムの2つの側面が光軸から離れた位置に入射した光束を内側(光軸に近づく方向)にシフト(平行移動)させるように作用するため、有効開口外へ向かう逸脱光を有効開口内に導くことが可能となる。また、コリメータ36とは異なり、偏向素子37には光束を収斂する作用はない。このため、偏向素子37は、コリメータ36で略平行光束に変換された蛍光をそのままの光束状態で光検出器38に導くことが可能であり、光検出器38上で蛍光が過度に集光されることを避けることができる。光検出器38に入射する光の単位面積当たりの強度が強くなり過ぎると、光検出器の劣化や、検出強度の線形性が劣化することがあるが、本実施形態では、光検出器38に蛍光が過度に集光することがない。従って、光検出器38の劣化や光電変換の線形性の劣化も避けることができる。
【0050】
以上の様に、分光検出器30によれば、波長分散素子と光学系の配置の自由度を確保しながら、高性能を実現することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
図7は、本実施形態に係る分光検出器40の構成を例示する図である。
図8、本実施形態に係る分光検出器40内を通る検出光の光線図を比較した図であり、検出波長域の異なる複数の設定の各々における光線図を示している。
図9は、検出波長域の異なる複数の設定において第2の実施形態に係る分光検出器40で得られるスポットダイアグラムを比較した図である。なお、
図7では、分光検出器40に入射した蛍光のうちの特定の波長(例えば、400nm)を有する光束のみを図示している。
【0052】
本実施形態に係るレーザ走査型顕微鏡は、分光検出器30の代わりに
図7に示す分光検出器40を備える点が、
図1に示すレーザ走査型顕微鏡100とは異なっている。その他の点は、レーザ走査型顕微鏡100と同様である。分光検出器40は、調整光学系35の代わりに調整光学系45を備える点が、分光検出器30とは異なっている。調整光学系45は、波長選択機構34を通過した蛍光のケラレを抑制するものであり、コリメータ36と、偏向素子47を備えている。調整光学系45は、偏向素子37の代わりに偏向素子47を備える点が、調整光学系35とは異なっている。
【0053】
偏向素子47は、波長選択機構34を通過した蛍光のうち逸脱光を光検出器38の有効開口内へ導く素子である。偏向素子47も、偏向素子37と同様に、コリメータ36で光束径が調整された光束を有効開口内にシフトさせるものであり、少なくとも、有効開口から逸れてしまう逸脱光を光軸に近づけるように作用する。偏向素子47は、具体的には、
図7に示すように、例えば、曲面からなるルーフを光検出器38に向けたパウエルレンズであり、曲面が光軸上に位置するように配置される。
【0054】
分光検出器40でも、波長選択機構34と光検出器38の間に調整光学系45を設けることで、集光光学系33の前側焦点位置に波長分散素子が配置されていない場合であっても、
図8及び
図9に示すように、検出波長域によらず蛍光を光検出器38の有効開口内に導いて検出することができる。なお、
図8及び
図9は、
図3及び
図4と同様に、波長選択機構34の開口幅を検出波長幅100nm分に対応する幅に設定しながら搖動ミラー32で検出波長域を100nmずつ変化させた様子が示されている。
【0055】
パウエルレンズとして構成された偏向素子47では、光軸に近い位置から偏向素子47に入射した蛍光は、光軸上に配置された曲面のルーフから出射する。この曲面は、光軸付近の光束に対してのみ強い正のパワーを持つ。これにより、光軸付近の光束はシフトを伴わず集光したのち発散されるため、偏向素子47と光検出器38との距離を適切に設定することで光検出器38上で蛍光が過度に集光されることを避けることができる。さらに、光軸に近い位置を通って曲面に入射した蛍光が、偏向素子47で大きく屈折して光検出器38の有効開口外へ逸れてしまうことも回避することができる。従って、光軸に近い位置から入射した蛍光が有効開口外へ逸れることを回避しながら、光軸から離れた位置から入射した蛍光を偏向素子37と同様に光軸に近づけることで光検出器38の有効開口内へ導くことができる。また、偏向素子47では、ルーフを構成する曲面と曲面に接続される光軸に対して対称な2平面とは滑らかなにつながっていて、偏向素子37にある頂角の様にとがった部分がない。このため、偏向素子37において頂角に入射した光束が分割されてしまうような事態は、偏向素子47では生じない。このため、
図4(c)と
図9(c)を比較すると明らかなように、偏向素子37の光軸付近に入射する蛍光も確実に光検出器38の有効開口内に導くことができる。
【0056】
以上の様に、分光検出器40でも、分光検出器30と同様に、波長分散素子と光学系の配置の自由度を確保しながら、高性能を実現することができる。さらに、分光検出器40によれば、光軸から距離に応じて蛍光に対する作用が異なる偏向素子47を用いることで、光検出器38の有効開口内へ光を導く効果を分光検出器30よりも改善することができる。
【0057】
(第3の実施形態)
図10は、本実施形態に係る分光検出器50の構成を例示する図である。
図11は、本実施形態に係る分光検出器50内を通る検出光の光線図を比較した図であり、検出波長域の異なる複数の設定の各々における光線図を示している。なお、
図10では、分光検出器50に入射した蛍光のうちの特定の波長(例えば、400nm)を有する光束のみを図示している。
【0058】
本実施形態に係るレーザ走査型顕微鏡は、分光検出器30の代わりに
図10に示す分光検出器50を備える点が、
図1に示すレーザ走査型顕微鏡100とは異なっている。その他の点は、レーザ走査型顕微鏡100と同様である。分光検出器50は、調整光学系35の代わりに調整光学系55を備える点が、分光検出器30とは異なっている。調整光学系55は、波長選択機構34を通過した蛍光のケラレを抑制するものであり、コリメータ36と、偏向素子57を備えている。調整光学系55は、偏向素子37の代わりに偏向素子57を備える点が、調整光学系35とは異なっている。
【0059】
偏向素子57は、波長選択機構34を通過した蛍光のうち逸脱光を光検出器38の有効開口内へ導く素子である。偏向素子57も、偏向素子37と同様に、コリメータ36で光束径が調整された光束を有効開口内にシフトさせるものであり、少なくとも、有効開口から逸れてしまう逸脱光を光軸に近づけるように作用する。偏向素子57は、具体的には、
図10に示すように、例えば、上面を光検出器38に向けた四角錐台形状を有し、上面が光軸と直交するように配置される。なお、偏向素子57は、蛍光が波長分散する方向に四角錐台の4つ側面のうち2つの側面が向けられていることが望ましい。
【0060】
分光検出器50でも、波長選択機構34と光検出器38の間に調整光学系55を設けることで、集光光学系33の前側焦点位置に波長分散素子31が配置されていない場合であっても、
図11に示すように、検出波長域によらず蛍光を光検出器38の有効開口内に導いて検出することができる。なお、
図11は、
図3と同様に、波長選択機構34の開口幅を検出波長幅100nm分に対応する幅に設定しながら搖動ミラー32で検出波長域を100nmずつ変化させた様子が示されている。
【0061】
偏向素子57でも、光軸に近い位置から偏向素子57に入射した蛍光は、光軸と直交した上面に入射するため、偏向素子57で大きく屈折して光検出器38の有効開口外へ逸れてしまうことを回避することができる。従って、偏向素子47と同様に、光軸に近い位置から入射した蛍光が有効開口外へ逸れることを回避しながら、光軸から離れた位置から入射した蛍光を偏向素子47と同様に光軸に近づけることで光検出器38の有効開口内へ導くことができる。
【0062】
以上の様に、分光検出器50でも、分光検出器30と同様に、波長分散素子と光学系の配置の自由度を確保しながら、高性能を実現することができる。さらに、分光検出器50によれば、分光検出器40と同様に、光軸から距離に応じて蛍光に対する作用が異なる偏向素子57を用いることで、光検出器38の有効開口内へ光を導く効果を分光検出器30よりも改善することができる。
【0063】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。さらに、各実施形態に示す処理手順は、矛盾しない限り順序を入れ替えて行われてもよい。即ち、本発明の分光検出器及びレーザ走査型顕微鏡は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0064】
上述した実施形態では、偏向素子として、三角柱形状のプリズム、パウエルレンズ、四角錐台形状のプリズムを例示したが、偏向素子の形状はこれらに限らない。
図12から
図19は、それぞれ偏向素子の断面形状を例示した図である。偏向素子は、光軸から離れた位置から入射する逸脱光を光検出器38の有効開口内へ導くことができればよく、
図12から
図19に示すような断面形状を有してもよい。なお、断面は、コリメータ36の光軸方向と偏向素子へ入射時点における蛍光の波長分散方向とで定義される面である。
【0065】
偏向素子の断面の輪郭線は、
図12から
図17に示すように、光軸AXに対して対称な2直線(直線SL1、直線SL2)を含むことが望ましい。この2直線は、逸脱光を有効開口内にシフトさせる面に対応する。この2直線に対応する面は、
図12、
図14、
図16に示す偏向素子67、偏向素子87、偏向素子107のように、光検出器38側に設けられることが望ましく、コリメータ36側には、光軸AXと直交する平面Fを有することが望ましい。これにより、光軸に近いほど直線と光検出器38が近くなるため、光軸付近の光束のシフト量を小さくし、且つ、光軸から離れた光束のシフト量を大きくすることができる。ただし、2直線に対応する面は、
図13、
図15、
図16に示す偏向素子77、偏向素子97、偏向素子117のように、コリメータ36側に設けられてもよい。
【0066】
図12及び
図13に示す偏向素子67及び偏向素子77に示すように、2直線は直接つながっていてもよい。
図14及び
図15に示す偏向素子87及び偏向素子97に示すように、2直線は光軸AXを横断する曲線C1で接続されてもよい。光軸AXを横断する曲線C1に対応する曲面は、光束を大きく曲げないことを意図したものであるので、光検出器38の有効開口よりも小さいことが望ましい。
図16及び
図17に示す偏向素子107及び偏向素子117に示すように、2直線は光軸AXを横断する光軸AXに直交する直線SL3で接続されてもよい。即ち、偏向素子は、錐台形状を有してもよく、より望ましくは、上面を光検出器38側に向けた錐台形状を有してもよい。錐台形状は、上述した四錐台形状のような角錐台形状に限らず、円錐台形状であってもよい。
【0067】
また、偏向素子が有する逸脱光を光検出器38の有効開口内へ導く作用は、光束の過度な収斂が生じない限り、コリメータ36のような曲面により実現されてもよく、偏向素子は、例えば、
図18及び
図19に示す偏向素子127及び偏向素子137のような曲面C2を有する平凸レンズであってもよい。
【0068】
上述した実施形態では、調整光学系がコリメータ36と偏向素子からなる構成を例示したが、調整光学系は、コリメート機能と逸脱光を有効開口内へ導く機能を有していればよく、
図20から
図25に示すように、単一の素子で構成されてもよい。
図20から
図25は、調整光学系の断面形状を例示した図である。なお、断面は、調整光学系の光軸方向と偏向素子へ入射時点における蛍光の波長分散方向とで定義される面である。
【0069】
調整光学系の断面の輪郭線も、
図20から
図25に示すように、光軸AXに対して対称な2直線(直線SL1、直線SL2)を含むことが望ましい。この2直線は、逸脱光を有効開口内にシフトさせる面に対応する。2直線に対応する面は、光検出器38側に設けられることが望ましく、
図20及び
図21に示す調整光学系65及び調整光学系75に示すように、2直線は直接つながっていてもよい。
図22及び
図23に示す調整光学系85及び調整光学系95に示すように、2直線は光軸AXを横断する曲線C1で接続されてもよい。光軸AXを横断する曲線C1に対応する曲面は、光束を大きく曲げないことを意図したものであるので、光検出器38の有効開口よりも小さいことが望ましい。
図24及び
図25に示す調整光学系105及び調整光学系115に示すように、2直線は光軸AXを横断する光軸AXに直交する直線SL3で接続されてもよい。調整光学系は、2直線と反対側に、光束をコリメートするための曲面を有することが望ましい。
【符号の説明】
【0070】
1:スキャンユニット、2:分光検出装置、6:制御装置、11:レーザ光源、17:スキャナ、21:共焦点ピンホール、30、40、50、90:分光検出器、31:波長分散素子、32:搖動ミラー、33:集光光学系、34:波長選択機構、35、45、55、65、75、85、95、105、115:調整光学系、36:コリメータ、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137:偏向素子、38:光検出器、100:レーザ走査型顕微鏡、A:試料、AX:光軸