(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032264
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】金属溶湯清浄度の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240305BHJP
B22D 46/00 20060101ALI20240305BHJP
G06T 7/00 20170101ALN20240305BHJP
G06V 10/764 20220101ALN20240305BHJP
【FI】
G01N21/88 J
B22D46/00
G06T7/00 610
G06T7/00 350B
G06V10/764
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135834
(22)【出願日】2022-08-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TENSORFLOW
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507073859
【氏名又は名称】日軽エムシーアルミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100182925
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 明弘
(72)【発明者】
【氏名】北口 智啓
(72)【発明者】
【氏名】白井 孝太
(72)【発明者】
【氏名】安部 綾二
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA37
2G051AB20
2G051BB01
2G051BB11
2G051CA03
2G051CA04
2G051EB05
5L096AA06
5L096BA03
5L096BA08
5L096CA04
5L096CA17
5L096DA01
5L096DA02
5L096EA07
5L096FA02
5L096FA52
5L096FA59
5L096FA64
5L096GA08
5L096GA34
5L096JA11
5L096JA16
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】破断面の全面に渡って介在物検出が可能であり、ひいては高い精度での溶湯清浄度検査を可能とする金属溶湯清浄度の検査方法を提供すること。
【解決手段】金属溶湯清浄度の検査方法は、金属溶湯清浄度の検査方法であって、
鋳型に金属溶湯を流し込み、鋳物を得る工程と、前記鋳物を破断手段により分割し、観察片を得る工程と、前記観察片の破断面を撮影手段により撮影し、破断面撮影画像を得る工程と、深層学習を用いて作成したモデルが、前記破断面撮影画像を評価することにより、前記破断面に存在する介在物を検出する工程と、前記破断面の面積と検出された前記介在物の数から溶湯清浄度を評価する工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯清浄度の検査方法であって、
鋳型に金属溶湯を流し込み、鋳物を得る工程と、
前記鋳物を破断手段により分割し、観察片を得る工程と、
前記観察片の破断面を撮影手段により撮影し、破断面撮影画像を得る工程と、
深層学習を用いて作成したモデルが、前記破断面撮影画像を評価することにより、前記破断面に存在する介在物を検出する工程と、
前記破断面の面積と検出された前記介在物の数から溶湯清浄度を評価する工程と、
を有する金属溶湯清浄度の検査方法。
【請求項2】
前記深層学習を用いて作成したモデルにおいて、
検出対象となる前記介在物は、その介在物の種類に応じて1または複数のカテゴリーに分類された上で検出対象として学習されている、
請求項1に記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【請求項3】
前記深層学習を用いて作成したモデルは、
前記の一つの観察片又は複数の観察片からなる一つの観察片群に対し、一枚又は複数枚の前記破断面撮影画像が対応するデータセットを用いて学習されている、
請求項1又は2に記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【請求項4】
前記破断面に存在する介在物を検出する工程において、
前記の一つの観察片又は複数の観察片からなる一つの観察片群に対し、一枚又は複数枚の前記破断面撮影画像が対応するデータセットを用いて、介在物の検出を行う、
請求項1又は2に記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【請求項5】
前記複数の破断面撮影画像は、
前記の一つの観察片又は複数の観察片からなる一つの観察片群に対し、それぞれ異なる入射方向で電磁波を照射した際の画像である、
請求項3に記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【請求項6】
前記複数の破断面撮影画像は、
同一位置の前記撮影手段から撮影されたものである、
請求項3に記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【請求項7】
前記データセットに対して、
前処理として複数の破断面撮影画像の差分をとること、及び複数画像の重ね合わせること、のうちの少なくとも一方を行う、
請求項3に記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶湯清浄度の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属溶湯清浄度の検査方法としてK-モールド法が知られている。K-モールド法では短冊形状の鋳型に溶湯を流し込み、得られた鋳物の長辺をハンマー等で5片から6片程度に破断させ、破断面に存在する介在物の量を計数することで溶湯の清浄度を評価する。ただし、観察片作製の鋳造工程において、溶湯の凝固収縮により介在物と誤認しやすい形状及び類似の色合いの鋳巣が生成される。鋳巣は溶湯清浄度と関係なく現れるため、これを介在物であると判定すると溶湯の清浄度を過小評価してしまう。作業熟練者の目視確認によればこれは判別可能であるが、作業者の教育コスト・作業コストが高くなる傾向があること、作業者間での判定基準の統一が難しいことから、上記手法以外によって正しく介在物と鋳巣を識別できるシステムが求められていた。
【0003】
例えばK-モールド法に関する検査システムとして、特許文献1に開示されるものがある。特許文献1では破断面のうち鋳巣が発生しにくい箇所についてのみ介在物計数の対象とすることで誤検出の問題を解決したが、この手法では介在物が局所的に分布している場合、溶湯清浄度を過小評価もしくは過大評価する恐れがある。また、K-モールド法は近年JIS規格が制定されたが、規格において破断面の全面で介在物を計数することになっている。従って破断面の一部を選択し介在物を計数したとしても規格に相当する清浄度検査を行ったことにはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、溶湯清浄度を過小評価又は過大評価する恐れが少なく、また、JIS規格に則した検査をすることが可能な金属溶湯清浄度の検査方法が求められている。
【0006】
本発明は、破断面の全面に渡って介在物検出が可能であり、ひいては高い精度での溶湯清浄度検査を可能とする金属溶湯清浄度の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の金属溶湯清浄度の検査方法は、金属溶湯清浄度の検査方法であって、
鋳型に金属溶湯を流し込み、鋳物を得る工程と、前記鋳物を破断手段により分割し、観察片を得る工程と、前記観察片の破断面を撮影手段により撮影し、破断面撮影画像を得る工程と、深層学習を用いて作成したモデルが、前記破断面撮影画像を評価することにより、前記破断面に存在する介在物を検出する工程と、前記破断面の面積と検出された前記介在物の数から溶湯清浄度を評価する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、破断面の全面に渡って介在物検出が可能であり、ひいては高い精度での溶湯清浄度検査を可能とする金属溶湯清浄度の検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の金属溶湯清浄度の検査方法で用いられる、金属溶湯清浄度の検査装置の概要を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明で用いられる撮影装置の概要を示す斜視図である。
【
図4】学習済みモデルの作成手順を示すフロー図である。
【
図5】光の入射方向と、撮影された画像との関係を示す図である。
【
図7】金属溶湯清浄度の検査の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の金属溶湯清浄度の検査方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の検査方法は、金属溶湯の清浄度を、観察片の破断面の画像に基づいて、学習済みモデルを用いて評価する方法である。
【0011】
<検査装置>
まず、本発明の金属溶湯清浄度の検査方法で用いられる金属溶湯清浄度の検査装置について、
図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の検査方法で用いる金属溶湯清浄度の検査装置1の概要を示す機能ブロック図である。
検査装置1は、情報処理部10及び画像撮影部50を備える。
画像撮影部50は、観察片の画像を撮影する部分である。
一方、情報処理部10は、画像撮影部50が撮影した画像に基づいて金属溶湯の清浄度を評価する部分である。情報処理部10は、画像撮影部50が撮影した画像を教師データとして、金属溶湯の清浄度を評価する際に用いる学習済みモデルを作成する。また、情報処理部10は、画像撮影部50が撮影した画像に基づいて、金属溶湯の清浄度を評価する。
なお、情報処理部10は、機能が分担された複数の装置によって構成されていてもよい。例えば、学習部28を担うコンピュータと、学習済みモデル適用部30及び溶湯清浄度評価部32を担うコンピュータとを、別のコンピュータとして構成することができる。又は、情報処理部10のすべての機能を担うコンピュータを準備し、1つのコンピュータで情報処理部10を構成することもできる。
【0012】
<撮影装置>
画像撮影部50として機能する撮影装置100について、
図2に基づいて説明する。
図2は、撮影装置100の概要を示す斜視図である。なお、
図2に示す撮影装置100は例示である。また、
図2では、要部を分かりやすくするために、撮影装置100を簡素化して描いている。撮影装置100の具体的な態様、及び具体的な撮影の態様は、
図2に示す例には限定されない。
撮影装置100は、観察片150の破断面160を撮影する装置である。
図2には、観察片150-1から観察片150-5の、5つの観察片150が示されている。なお、破断面160は、
図2には図示されておらず、
図3に図示されている。
【0013】
<観察片>
観察片150について説明する。
図3は、観察片150の斜視図である。
観察片150は、例えば、Kモールド試験法に則って作成される金属溶湯の清浄度評価用の金属片である。Kモールド試験法は、JIS規格にも制定されている試験法である。JIS規格におけるKモールド試験法の番号は、JIS H 0523:2020である。
【0014】
<破断面>
破断面160は、観察片150を作成する際に、鋳造試料を破断することで生じる面である。
破断面160は、観察片150の表面のなかで、そこに存在する介在物の個数が数えられる表面となる。そのため、画像撮影部50では破断面160が撮影される。介在物については後に説明する。
【0015】
<観察片と観察片群>
本実施形態においては、清浄度の評価は、5つの観察片150を用いて行われる。
図2には、観察片150として、観察片150-1から観察片150-5の5つの観察片150が示されている。
清浄度の評価の対象となる一群の観察片150を観察片群152とする。
図2に示す例では、5つの観察片150-1から観察片150-5が1つの観察片群152を構成する。
なお、清浄度の評価に用いる観察片150の数は5つに限定されない。任意の数の観察片を用いて、洗浄度の評価をすることができる。
【0016】
<反射ドーム>
撮影装置100は、テーブル102、反射ドーム110及び撮影器120を備える。
テーブル102は、観察片150が置かれる。
反射ドーム110は、半球型の形状を有する光反射用のドームである。反射ドーム110は、観察片150の上方に、観察片150を覆うように配置されている。なお、上方は、
図2に矢印Uで示す方向である。
反射ドーム110のドーム開口部112は、環状の照明装置130が配置されている。なお、照明装置130は、
図2には図示されておらず、
図4に図示されている。
照明装置130からの光は、反射ドーム110の内面で反射し、観察片150に照射される。
なお、前述のように、
図2に示す構成は例示である。例えば照明の態様も、いわゆるドーム照明に限定されるものではない。例えば、照明は、リング照明などとすることもできる。
【0017】
<撮影器>
反射ドーム110の上方Uには、撮影手段としての撮影器120が配置されている。反射ドーム110における撮影器120の下方に対応する位置には、撮影用開口部114が設けられている。なお、下方は、
図2に矢印Dで示す方向である。
撮影器120は、撮影用開口部114を介して、反射ドーム110の下方Dにある、観察片150の破断面160を撮影する。
【0018】
撮影器120の種類は特には限定されない。撮影器120は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラとすることができる。
【0019】
<情報処理部>
次に、情報処理部10について説明する。情報処理部10は、
図1に示すように、制御部20及び記憶部40を備える。
制御部20は、画像処理部22、介在物検出部24、ラベリング部26、学習部28、学習済みモデル適用部30、溶湯清浄度評価部32及び評価結果出力部34を備える。
記憶部40は、教師データ42及び学習済みモデル44を記憶する。
各機能部の機能などについては、学習済みモデル44の作成フロー、及び金属溶湯清浄度の検査フローとともに説明する。また、前述のように、情報処理部10は、複数の装置に分担させてもよく、又は、1つの装置がそのすべての機能を担っていてもよい。
【0020】
<学習済みモデル>
まず、学習済みモデル44の作成について、
図4に基づいて説明する。
図4は、学習済みモデル44の作成手順を示すフロー図である。図面及びその説明において、S1はステップを示し、S2以降も同様とする。
(S1)
S1において、学習済みモデル44の作成を開始する。
【0021】
(S2)
S2において、教師データ42の取得を開始する。
具体的には、画像撮影部50により、各観察片群152について一枚以上の画像を撮影する。
各観察片群152について一枚以上の画像を撮影するためには、例えば、撮影の際に、異なる入射方向から電磁波としての光を照射して観察片群152の撮影を行う。
これにより、破断面160の介在物や鋳巣をより正確に検出することができる。
図5に基づいて説明する。
【0022】
<光の入射方向>
図5は、光の入射方向と、撮影された画像との関係を示す図である。
光の入射方向には、例えば、全方向、上方向、下方向、左方向及び右方向の5つが考えられる。ここで、上下左右の方向は、例えば、
図2及び
図5に矢印で示す各方向に対応する。
【0023】
<照明装置の点灯>
光の入射方向の切り替えは、反射ドーム110のドーム開口部112に備えらえた環状の照明装置130の点灯位置を切り替えることで、行うことができる。
図5のL1は、照明装置130が全点灯している様子を示している。同様に、L2は上点灯、L3は下点灯、L4は左点灯、及びL5は右点灯している様子を示している。なお、L1からL5は、照明装置130を、
図2に示すテーブル102から上方Uに見た場合の照明装置130の点灯の様子を示している。
照明装置130をL1からL5のように点灯させることで、光の入射方向を、それぞれ、全方向、上方向、下方向、左方向及び右方向とすることができる。
【0024】
<撮影された画像>
照明装置130の点灯の仕方がL1からL5である場合に撮影された画像を、画像P1から画像P5に示す。画像P1から画像P5は、それぞれ、照明装置130の点灯の仕方がL1からL5である場合に撮影された画像である。
画像P2から画像P5では、画像P1に比べて破断面160の凹凸がより強調されて写し出されている。
例えば画像P2には、観察片150-3などにおいて破断面160の形態が画像P1よりも鮮明に写し出されている。同様に、例えば、画像P3では観察片150-2、画像P4では観察片150-1、及び画像P5では観察片150-5において、破断面160の形態が画像P1よりも鮮明に写し出されている。
【0025】
以上のように、異なる入射方向から光を照射して撮影することで、破断面160の形態をより正確に把握することができる。これにより、破断面160の介在物や鋳巣をより正確に検出することができる。
【0026】
また、画像P1から画像P5は、撮影器120を同一の位置に固定した状態で撮影することができる。
これにより、画像間の位置ずれが少なくなる。そのため、例えば、後に説明する画像の前処理において、より正確な前処理を行うことができる。
【0027】
また、撮影器120の解像度は、破断面160の形態や、破断面160の介在物や鋳巣の大きさなどに基づいて、任意の値に設定することができる。これにより、破断面160の介在物や鋳巣をより正確に検出することができる。
【0028】
なお、照明装置130の形状は環状には限定されない。例えば、反射ドーム110のドーム開口部112に複数の点光源を配置することもできる。
また、照明装置130の点灯のさせ方は、上下左右などに限定はされず、任意にその方向を設定することができる。
また、異なる入射方向から光を照射する際、照明装置130の点灯のさせ方を変化させるのではなく、遮光性の部材を用いて所定の方向からの光を遮ることで、入射方向を異ならせることもできる。
【0029】
(S3)
S2で取得した撮影画像について、必要に応じて前処理を行う。前処理を行うことで、教師データとして使用する画像をより鮮明にすること、及び画像の枚数を増やすことが可能になる。
前処理としては、例えば、複数の画像の差分をとること、及び複数の画像を重ね合わせることがあげられる。
【0030】
<画像の差分>
図5に基づいて前処理の例を説明する。
画像の差分をとる場合、例えば、画像が撮影された際の光の入射方向が対称な方向である2枚の画像において、それらの差分をとることが考えられる。
これにより、破断面160の形態が、コントラストがより高い状態で描写されるからである。
【0031】
具体的には、撮影の際の光の入射方向が上方向であった画像P2と、下方向であった画像P3との差分をとる。これらの差分をとった画像が画像P6である。
また、撮影の際の光の入射方向が左方向であった画像P4と、右方向であった画像P5との差分をとる。これらの差分をとった画像が画像P7である。
画像P6及び画像P7が示すように、複数の画像の差分をとることで、破断面160の形態がより鮮明に描写された画像を得ることができる。
【0032】
<画像の重ね合わせ>
次に、画像の重ね合わせについて説明する。
図5には、画像の重ね合わせの例として、撮影の際の光の入射方向が全方向であった画像P1、並びに、差分により得られた前述の画像P6及び画像P7の3枚の画像を重ね合わせることを示している。すなわち、光の入射方向が全方向であった画像と、光の入射方向が対称であった画像の差分をとった画像と、を重ね合わせている。
この重ね合わせで得られた画像が、画像P8である。
画像P8の丸囲みに示すように、複数の画像を重ね合わせることで、破断面160において、介在物であるとして検出され得る形状が、コントラストよく、またもれなく描写される。
なお、前述の差分をとる画像の組み合わせ、及び重ね合わせる画像の組み合わせは例示であり、他の画像の組み合わせとすることもできる。
前述の画像の差分ととること、及び画像を重ね合わせることは、制御部20の画像処理部22で行われる。
【0033】
(S4)
S4では、S2で取得した撮影画像、及びS3で前処理により得られた画像について、画像に含まれる介在物及び鋳巣の検出を行う。
この介在物及び鋳巣の検出は、目視によって行われる。
ただし、この検出は、装置を用いて行うこともできる。その場合には、この検出は、制御部20の介在物検出部24で行われる。
【0034】
(S5)
S5では、S4で検出された介在物をカテゴリーに分類し、各介在物に分類されたカテゴリーをラベリングする。
図6に基づいて説明する。
【0035】
<カテゴリーへの分類>
図6は、介在物のカテゴリーを示す図である。
図6に示す例では、介在物は、4つに分類されている。
4つの分類は、典型的介在物(kai)、コントラストの弱い介在物(kai-u)、皮膜状介在物(kai-h)及び粗大介在物(sodai)である。
粗大介在物(sodai)は、介在物の最大長さが2mm以上の介在物である。
典型的介在物(kai)は、介在物の最大長さが0.1mm以上2mm未満の介在物であって、かつ介在物の範囲内におけるコントラストが0.25以上の介在物である。
コントラストの弱い介在物(kai-u)は、介在物の最大長さが0.1mm以上1mm未満であって、かつ介在物の範囲内におけるコントラストが0.25未満の介在物である。
皮膜状介在物(kai-h)は、介在物の最大長さが1mm以上2mm未満、介在物の範囲内におけるコントラストが0.25未満の介在物である。
微小な介在物は製品の特性に大きな影響を及ぼさないため,検出対象の介在物は0.1mm以上とした。
なお、コントラストの定義は下記である。
コントラスト=(背景の輝度-介在物の輝度)/(背景の輝度+介在物の輝度)
また、これらの分類は、あくまで一例であり、介在物の実情に即して適宜設定することができる。
【0036】
深層学習を用いた介在物検出モデルを作成する過程において、介在物のカテゴリーとして、典型的介在物(kai)、コントラストの弱い介在物(kai-u)、皮膜状介在物(kai-h)、及び粗大介在物(sodai)をそれぞれ異なる検出対象として学習させることで、効率良く介在物検出モデルの学習を進めることができる。
【0037】
<ラベリング>
前述の4つのカテゴリーに鋳巣(tyusu)を加えて、画像に含まれる介在物及び鋳巣に、合計5種類のラベリングを行う。
【0038】
前述のカテゴリーへの分類、及びラベリングは、制御部20のラベリング部26で行われる。
なお、介在物のカテゴリーへの分類は、画像処理によって行うことも可能であるが、人手によって行うことも可能である。
また、前述の合計5種類のカテゴリーからなる分類は、便宜的に設定されたものであり、適宜これ以外の分類を用いることも可能である。
【0039】
(S6)
S5までで、介在物及び鋳巣がラベリングされた、観察片群152に対し一枚以上の破断面撮影画像が対応するデータセットを、教師データ42として取得することができた。S6では、取得された教師データ42が、記憶部40に記憶される。
【0040】
(S7)
S7では、S6で取得された教師データ42を用いて、深層学習により学習済みモデルを作成する。
なお、使用するライブラリなどは特に限定されない。使用するライブラリは、例えば、TensorFlow - Object detection APIとすることができる。また、使用する検出アルゴリズムは、例えば、faster rcnn(inception v2)とすることができる。
この深層学習は、制御部20の学習部28が、記憶部40から教師データ42を読み出し、その教師データ42を用いて実行する。
【0041】
(S8)
S8では、S7で作成された学習済みモデルを交差検証により検証し、学習を終了するか否かの判断を行う。
学習終了可との判断となった場合には、S9に進む。学習終了不可との判断となった場合には、必要に応じて、教師データの追加取得なども含め、さらに学習を進める。
S8の判断は、制御部20の学習部28が行う。
【0042】
(S9)
S8での学習終了可との判断により、学習を終了し、学習済みモデルを取得する。
取得された学習済みモデル44は、記憶部40に記憶される。
【0043】
(S10)
S10において、学習済みモデル44の作成を終了する。
【0044】
<金属溶湯清浄度の検査>
次に、学習済みモデル44を用いての、金属溶湯清浄度の検査の流れについて、
図7に基づいて説明する。
図7は、金属溶湯清浄度の検査の手順を示すフロー図である。
(S21)
S21において、金属溶湯清浄度の検査を開始する。
【0045】
(S22)
S22において、例えば前述のKモールド試験法に則った観察片150を得る作業を開始する。具体的には、S22において、破断前の鋳造試料を作成する。
【0046】
(S23)
S23において、S22で作成した鋳造試料を所定の位置で破断し、観察片150を得る。ここでは、観察片150-1から観察片150-5の5つの観察片150を得る。この5つの観察片150を、1つの観察片群152とする。
【0047】
(S24)
S24において、S23で作成した観察片群152について、一枚以上の撮影画像を得る。
この工程は、先に
図4に基づいて説明したS2及びS3と同様である。
画像撮影部50としての撮影装置100が画像を撮影する。そして、撮影した写真に対して画像処理部22が前処理を行う。
【0048】
(S25)
S25は、S24までで得られた、観察片群152に対し一枚以上の破断面の撮影画像が対応するデータセットに対して学習済みモデル44を適用し、介在物を検出する工程である。
具体的には、制御部20の学習済みモデル適用部30は、記憶部40から学習済みモデル44を読み出す。また、学習済みモデル適用部30には、画像処理部22から、前述のデータセットが入力される。
学習済みモデル適用部30は、入力されたデータセットを学習済みモデル44に入力し、その出力として、観察片群152からの介在物の検出結果を得る。
【0049】
(S26)
S26では、S25で得られた介在物の検出結果に基づいて、溶湯の清浄度を評価する。
評価は、破断面160の面積と検出された介在物の数とにより行うことができる。
または、評価は、前述のJISなどに規定された所定の基準に基づいて行われてもよい。
この評価は、制御部20の溶湯清浄度評価部32が行う。
【0050】
(S27)
S27では、S26で得られた溶湯の清浄度の評価を出力する。
この出力は、制御部20の評価結果出力部34が行う。
出力の形態は特には限定されない。例えば、単に清浄度の評価結果のみを出力してもよい。または、撮影画像に介在物及び鋳巣がマーキングされるようにしてもよい。その場合、各介在物に前述のカテゴリー分類が付記されるようにしてもよい。
あるいは、介在物の総数や、介在物のカテゴリー毎の個数が表示されるようにしてもよい。
【0051】
(S28)
S28において、金属溶湯清浄度の検査を終了する。
【0052】
本発明の金属溶湯清浄度の検査方法では、観察片150に存在する介在物について70%以上の正答率を得ることができた。
【0053】
<各機能部の構成>
図1に基づいて説明した各機能部について、情報処理部10は、サーバであってもよい。また、情報処理部10は、複数の機能部により構成されてもよいが、各機能部は必ずしも物理的に分かれている必要は無く、1つのCPUが、複数の機能部の機能を実現してもよい。また、情報処理部10は、制御対象部の配置等を考慮して、2つ以上の場所に分かれて配置されていてもよい。また、1つの機能部が2つ以上の場所に分かれて、分散制御されていてもよい。
また、記憶部40は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、または着脱可能なメモリカード等の記録媒体で構成される。記録媒体としては、一時的でない有形の媒体(non-transitory tangible media)が挙げられる。
なお、情報処理部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算プロセッサを含んで構成される。
情報処理部10の各種機能は、例えば記憶部に格納されたプログラム(アプリケーション)を実行することで実現される。プログラム(アプリケーション)は、ネットワークを介して提供されてもよいし、CD-ROM(Compact Disc Read only memory)またはDVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(computer readable storage medium)に記録されて提供されてもよい。
なお、情報処理部10の各機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0055】
本発明は、破断面160の全面に渡っての介在物の検出が可能であり、ひいては高い精度での溶湯清浄度検査を可能とする金属溶湯清浄度の検査方法を提供することができる。
【0056】
本願に開示する技術を用いれば深層学習を用いた介在物検出モデルを作成することで鋳巣と介在物の識別が可能となる。従って本願の溶湯清浄度評価システムは、破断面の全面に渡っての介在物検出が可能であり、ひいては高い精度での溶湯清浄度検査を可能とする溶湯清浄度評価システムである。
【0057】
また、本発明によれば、深層学習を用いた介在物検出モデルを作成する過程において、介在物のカテゴリーとして、例えば、典型的介在物、コントラストの弱い介在物、皮膜状介在物、粗大介在物、など、複数のカテゴリーを設定し、それぞれ異なる検出対象として学習させることで効率良く介在物検出モデルの学習を進めることができる。
【0058】
また、観察片群152の一つに対し光の照射方向がそれぞれ異なる複数画像を使用することで、光が一方向から照射された場合では識別できない介在物あるいは鋳巣を対象とした学習を行うことができる。
【0059】
更に、前記複数の画像は、光の照射方向がそれぞれ異なる一方で画像の撮影角度は固定されたものとすることができる。この場合には、より簡便かつ精度良く介在物を検出することが可能となる。
【0060】
また、本願に開示する技術を用いれば、鋳物の表面のような平坦な表面ではなく、表面の平滑性の低い破断面であっても適切に評価をすることできる。
【0061】
<1>
金属溶湯清浄度の検査方法であって、
鋳型に金属溶湯を流し込み、鋳物を得る工程と、
前記鋳物を破断手段により分割し、観察片を得る工程と、
前記観察片の破断面を撮影手段により撮影し、破断面撮影画像を得る工程と、
深層学習を用いて作成したモデルが、前記破断面撮影画像を評価することにより、前記破断面に存在する介在物を検出する工程と、
前記破断面の面積と検出された前記介在物の数から溶湯清浄度を評価する工程と、
を有する金属溶湯清浄度の検査方法。
【0062】
<2>
前記深層学習を用いて作成したモデルにおいて、
検出対象となる前記介在物は、その介在物の種類に応じて1または複数のカテゴリーに分類された上で検出対象として学習されている、
<1>に記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【0063】
<3>
前記深層学習を用いて作成したモデルが、
前記の一つの観察片又は複数の観察片からなる一つの観察片群に対し、一枚又は複数枚の前記破断面撮影画像が対応するデータセットを用いて学習されている、
<1>又は<2>に記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【0064】
<4>
前記破断面に存在する介在物を検出する工程において、
前記の一つの観察片又は複数の観察片からなる一つの観察片群に対し、一枚又は複数枚の前記破断面撮影画像が対応するデータセットを用いて、介在物の検出を行う、
<1>から<3>のいずれか1つに記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【0065】
<5>
前記複数の破断面撮影画像は、
前記の一つの観察片又は複数の観察片からなる一つの観察片群に対し、それぞれ異なる入射方向で電磁波を照射した際の画像である、
<3>又は<4>に記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【0066】
<6>
前記複数の破断面撮影画像は、
同一位置の前記撮影手段から撮影されたものである、
<3>又は<4>に記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【0067】
<7>
前記データセットに対して、
前処理として複数の破断面撮影画像の差分をとること、及び複数画像の重ね合わせること、のうちの少なくとも一方を行う、
<3>又は<4>に記載の金属溶湯清浄度の検査方法。
【符号の説明】
【0068】
100 撮影装置
102 テーブル
110 反射ドーム
112 ドーム開口部
114 撮影用開口部
120 撮影器
130 照明装置
150 観察片
152 観察片群
160 破断面
U 上方
D 下方