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特開2024-32268シリカスケール問題を解決する水処理剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032268
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】シリカスケール問題を解決する水処理剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 5/08 20230101AFI20240305BHJP
   C02F 5/00 20230101ALI20240305BHJP
   F28G 9/00 20060101ALI20240305BHJP
   C01B 33/32 20060101ALI20240305BHJP
   C01B 33/26 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C02F5/08 B
C02F5/00 620C
F28G9/00 N
C01B33/32
C01B33/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135838
(22)【出願日】2022-08-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】390015897
【氏名又は名称】カルファケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591035472
【氏名又は名称】小池 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】小池 惠治
(72)【発明者】
【氏名】小池 博幸
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA04
4G073BA10
4G073BA56
4G073BD03
4G073BD26
4G073CB03
4G073CE07
4G073FB01
4G073FB02
4G073FB04
4G073FB05
4G073FB06
4G073FB11
4G073FB21
4G073FC02
4G073FC25
4G073FC27
4G073FD01
4G073UB47
4G073UB60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シリカスケールを解決する、水溶性アモルファスの塊状水処理剤の製造方法を提供する。
【解決手段】水処理剤の製造はa.~g.の工程からなる。a.金型の流水冷却。b.酸化ケイ素、酸化ナトリウムを主成分とし、必要に応じて酸化アルミニウム、酸化マグネシウム又は酸化ホウ素の一種又は複数種を混合し、これを1200℃~1300℃に加熱して溶融し、金型内に収容。c.金型に収容後10秒~20秒後に冷却水を浴びせ、材料を800℃近辺まで冷却・固化。d.金型を逆転して固化した材料を網の上に落とす。e.これに再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、500℃近辺まで冷却。f.これを別の網上に移し、再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、100℃近辺まで冷却。g.自然乾燥・自然冷却する。上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入った水溶性アモルファスの塊状の水処理剤を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のa.~g.の工程からなることを特徴とする水処理剤の製造方法。
a.金型を上部を残して流水中に配置することにより、金型を継続して流水冷却する。
b.酸化ケイ素(SiO)、酸化ナトリウム(NaO)を主成分とし、必要に応じて酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)又は酸化ホウ素(B)の一種又は複数種を混合し、これを1200℃~1300℃に加熱して溶融し、金型内に収容する。材料の注入にあたっては、金型におけるキャビティの上辺より少し下がった位置まで入れるようにする。
c.次に、金型に収容してから10秒~20秒経った後に、収容した材料の上方より均一になるように冷却水をシャワーのように浴びせ、材料の温度を800℃近辺まで冷却し、固化させる。
d.次に、金型を逆転して、固化した材料を網の上に落とす。
e.その後、これに再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、500℃近辺まで冷却する。
f.次いで、これを別の網上に移し、再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、100℃近辺まで冷却する。
g.その後、自然乾燥・自然冷却する。これにより、上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入った水溶性アモルファスの塊状の水処理剤が完成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカスケール問題を解決する水処理剤の製造方法に関し、更に詳細には、上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入った水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤の製造方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
空調設備や冷凍装置、熱交換器等に冷却水等を供給する水路系統においては、その使用に伴ってスケールが発生する。そして、これらが水路系統の内面に付着することによって、局部腐食や水路系統の詰まり、熱交換率の低下、圧力損失の増大等、様々な不具合が惹き起こされることになる。
【0003】
そこで、上記水路系統における不具合を防止するために、水路系統内の水を定期的に交換すると同時に水路系統内を洗浄し、さらに、水路系統内の水に薬剤を投入することが行われている。そしてまた、斯かる薬剤としては、そのほとんどが有機化合物よりなるものである。
【0004】
そこで、この水路系統を構成する配管内や熱交換器内のプレートの表面等への熱伝導阻害物質(スケール)、特にシリカスケールの付着を、装置の運転を停止することなく防止することが喫緊の課題となっている。
【0005】
また、スケール成分のうちシリカとカルシウムでは、熱伝導率の低下の面において、同じ厚みとしてシリカはカルシウムの2倍であり、従来は水路系統において、それを構成する配管等の内面へのスケールの付着の防止及び配管内に堆積したシリカスケールを効率よく除去することが喫緊の課題であった。
【0006】
従来における斯かるスケール対策としては、防止と除去の2つの方法があり、1つはスケール生成の防止で、もう1つは配管内や熱交換器内のプレート等に生成されたスケールの除去である。
【0007】
具体的手段として、スケール防止対策としては、カルシウムスケール等の場合には、スケールの元となる微細粒子に、ホスホン酸系やポリアクリル酸系又はポリマレイン酸系の高分子凝集剤等を使用して、これを水路系内に注入して、スケールの元となる、微小粒子を粗大フロック化させて排水と伴に冷却水系外に排出することが一般的である。また、一般的には、膜やストレーナー及び砂やアンスラサイト等を利用した濾過器が使用されることが多い。しかし、シリカスケールに対してはこれらの高分子凝集剤では充分な効果がないのが実情である。
【0008】
一方、配管内や熱交換器内のプレート等に生成されたスケールの除去の方法としては、システムの稼働を停止して熱交換器のプレート部分の循環水系に薬品(希塩酸、希硫酸等)を投入し、循環洗浄してカルシウムスケール等のスケールを除去する方法(無開放洗浄)が行われ、その廃液を薬品処理して廃棄している。
【0009】
しかし、シリカスケールの除去に対しては、無開放洗浄での薬品洗浄では充分な効果が得られず、稼働率の大幅な低下が大きな問題となっている。
【0010】
そのため、シリカスケールを除去するためには、一般的にはこの無開放洗浄を行わず、システムの稼働を停止して数Kgから数十Kgという重量の大きなプレートを分解して取り出し、これを一枚一枚危険性の高い薬品(2フッ化アンモニウム等)を使用して洗浄しなければならず、そのため熱交換器のプレートが腐食してしまう。
【0011】
そのため、所謂プレートローテーションシステムといわれる、別途用意しておいた新品又はブラシ洗浄など物理的洗浄等によって前もって洗浄された別のプレートと交換する方法がとられている。
【0012】
シリカスケールを除去する手段としては、カルシウムスケール除去と異なり、多大な手間とその経済的な負担は計り知れないものがあった。
【0013】
尚、熱交換器としてプレート式を中心に説明したが、一般的に多く使用されているシェルアンドチューブ式熱交換器においても同様の問題を抱えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の如く、従来にあっては、水路系統内でのスケールの発生と付着を防ぐことにより、水路系統における不具合を防止すべく、水路系統内の水を定期的に交換すると同時に水路系統内を洗浄し、さらに、水路系統内の水に薬剤を投入することが行われているが、水路系統の状態を常に良好に保つためには、この煩雑な水路系統のメンテナンスを頻繁に行わなければならず、さらに、上記作業の際に水路系統内の水に投入される有機化合物よりなる薬剤は危険性が高く、作業者や周辺環境に対して悪影響を及ぼす心配があると共に、その濃度を間違えると水路系統を損傷してしまう心配もあった。
【0015】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、水路系統における不具合を防止するために行われるメンテナンスが容易であり、しかも、その作業を安全に行うことができると共に、環境に悪影響を及ぼさず、且つまた水路系統を損傷する心配がなく、加えて、水路系統内の水の中において、短期間で溶解することなく、約3か月~4か月程度のある程度の期間消失しないようになした、水処理剤の製造方法を提供しようとするものである。
【0016】
本発明の製造方法によって製造される水処理剤は、喫緊の課題であったシリカスケールを溶解することを可能とすることにより、従来の凝集剤系の水処理剤ではなし得なかったシリカスケールを装置の稼働を停止することなく自動的に溶解除去することを可能にした、今までに無い水処理剤の製造方法を提供しようとするものである。
【0017】
本水処理剤は、従来の水処理剤で不可能であったシリカスケールの抑制、除去を可能にした水処理剤であるが、シリカスケール以外の例えばカルシウムスケール等に対しても充分な抑制効果を有している。
【課題を解決するための手段】
【0018】
而して、本発明の要旨とするところは、以下a.~g.の工程からなることを特徴とする水処理剤の製造方法にある。
a.金型を上部を残して流水中に配置することにより、金型を継続して流水冷却する。
b.酸化ケイ素(SiO)、酸化ナトリウム(NaO)を主成分とし、必要に応じて酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)又は酸化ホウ素(B)の一種又は複数種を混合し、これを1200℃~1300℃に加熱して溶融し、金型内に収容する。材料の注入にあたっては、金型におけるキャビティの上辺より少し下がった位置まで入れるようにする。
c.次に、金型に収容してから10秒~20秒経った後に、収容した材料の上方より均一になるように冷却水をシャワーのように浴びせ、材料の温度を800℃近辺まで冷却し、固化させる。
d.次に、金型を逆転して、固化した材料を網の上に落とす。
e.その後、これに再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、500℃近辺まで冷却する。
f.次いで、これを別の網上に移し、再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、100℃近辺まで冷却する。
g.その後、自然乾燥・自然冷却する。これにより、上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入った水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤が完成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法によれば、上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入った水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤を製造することができるものである。
【0020】
そして、本発明によって製造する水処理剤は、水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤であり、組成中に酸化ナトリウム(NaO)、酸化ケイ素(SiO)を主成分とし、これに必要に応じ、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ホウ素(B)等を含んでなるものである。そして、この水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤を水中に投入すると、これが徐々に溶解すると共に、ナトリウムイオン、ケイ素イオン、アルミニウムイオン、ホウ素イオン等が徐々に溶出する。そして、このうちのナトリウムイオンの働きによって、水路系統内でのスケールの発生が事前に防止されると同時に、既に水路系統内に付着しているスケールが軟化・剥離されるものである。
【0021】
次に、水路系統内の水に溶解した水処理剤による水路系統内でのナトリウムイオンによるスケールの除去のメカニズムについて説明する。
【0022】
熱交換器や配管に生成したスケールは、主にケイ素(Si)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)等の元素から成り立っている。他方、水溶性アモルファスの塊状の水処理剤が水路系統内の水に溶解することによって、水中に溶出したナトリウム(Na)が、水と反応して水酸化ナトリウム(2NaOH)になり、この水酸化ナトリウムは、スケール成分のケイ素(Si)を溶解させる。
【0023】
スケール成分のうちのバインダーであるケイ素(Si)が溶解して水に溶け出してしまうため、この他のスケール成分であるカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等も一緒に水の中に溶解する。このとき、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等は水酸化ナトリウムによって溶解しないが、細かい凝集物のまま脱落していく。したがって、水路系統(配管や熱交換器の内部のプレート)に生成したスケールが2μm~20μmのカルシウムやマグネシウムの凝集物となって徐々に除去されるものである。
【0024】
また、本発明によって製造する水処理剤は、水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤であり、組成中に酸化ケイ素(SiO)、酸化ナトリウム(NaO)を主成分とし、更に必要に応じて酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ホウ素(B)の一種又は複数種を含んでなるものである。そして、これらの材料は無機化合物よりなるものであるから、作業者や周辺環境に悪影響を及ぼす心配がなく、水路系統に対して損傷を与える心配もないものである。
【0025】
加えて、本発明によって製造する水処理剤は、水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤であり且つ上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入ったものであるから、水路系統内の水に投入したとき、短期間で溶出することなく、約3か月~4か月程度の期間消失しないで薬効を保持することができるようになるものである。
【0026】
即ち、水処理剤を水路系統内の水に投入したとき、該水処理剤の表面が完全な平面であるとすると、水との接触面積が少ないから溶解して消失するまでの期間は長くなるが、成分の水中への溶出量は少ない。したがって、充分な薬効が得られない。また、反対に、水処理剤の表面に深いクラックがあると、水との接触面積が増大することにより、成分の水中への溶出量も増えるが、クラックから崩壊して粉々になったり、溶解して消失するまでの期間もきわめて短くなる。即ち、寿命が短くなる。
【0027】
而して、本発明によって製造する水処理剤は、上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入ったものであるから、表面が平面であるものよりも水との接触面積が大きくなり、よって成分の水中への溶出量も増えると共に、崩壊することもないから深いクラックが入った場合に比して、溶解して消失するまでの期間を長くすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の製造方法において用いる金型を流水中に配置した状態の斜視図である。
図2】同部分拡大縦断面図である。
図3】本発明の製造方法の説明図であり、金型におけるキャビティに溶融した材料を注入した状態を示すものである。
図4】本発明の製造方法の説明図であり、冷却水を浴びせて材料を冷却し、固化させた後、金型を逆転して固化した材料を網の上に落とした状態を示すものである。
図5】全ての製造工程を経て完成した水処理剤の中央縦断面図である。
図6】本発明の製造方法によって製造した水処理剤を水中に投入する際に用いる通水性容器の斜視図である。
図7】本発明の製造方法によって製造した水処理剤の使用方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る水処理剤の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0030】
図中、1は本発明に係る水処理剤の製造方法において用いる金型である。尚、該金型1は、その材料として、鋳鉄又は1300℃の温度にも耐えられる金属を用いる。また、該金型1は、本実施形態においては、一度に多数の水処理剤を製造することができるように、多数のキャビティ2、2、2・・・を適宜の配列で設けている。また、各キャビティ2は、その底部2aが上に凸の曲面となっており(図2及び図3参照。)、これにより、周囲部2cも効率よく冷却することができる。また、底部2aから上辺までは斜面2bとなって拡径している。これにより、金型1を逆転して材料を取り出すときにスムーズにこれを行うことができる。尚、本発明のキャビティ2は、この形状に限定されるものではなく、材料が抜け出る形状であれば適宜の形状を採用することができるものである。また、図1に示す如く、金型1を上部を残して流水中に配置することにより、水処理剤の製造中金型1を継続して流水冷却するものである。
【0031】
また、3は本発明の製造方法によって製造した水処理剤を水中に投入する際に用いる通水性容器である(図6参照。)。また、該通水性容器3は、プラスチック製で、周面に無数の穴3a、3a、3a・・・が形成されている。また、4は金型から取り出した固化した材料を載せる網である。
【0032】
而して、本発明に係る水処理剤の製造方法は、前記金型1を用いて行うものであり、次の工程からなるものである。
【0033】
a.金型を上部を残して流水中に配置することにより、金型を継続して流水冷却する(図1参照。)。
b.酸化ケイ素(SiO)、酸化ナトリウム(NaO)を主成分とし、必要に応じて酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)又は酸化ホウ素(B)の一種又は複数種を混合し、これを1200℃~1300℃に加熱して溶融し、金型内に収容する。材料の注入にあたっては、金型におけるキャビティの上辺より少し下がった位置まで入れるようにする(図3参照。)。
c.次に、金型に収容してから10秒~20秒経った後に、収容した材料の上方より均一になるように冷却水をシャワーのように浴びせ、材料の温度を800℃近辺まで冷却し、固化させる。
d.次に、金型を逆転して、固化した材料を網の上に落とす(図4参照。)。
e.その後、これに再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、500℃近辺まで冷却する。
f.次いで、これを別の網上に移し、再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、100℃近辺まで冷却する。
g.その後、自然乾燥・自然冷却する。これにより、上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入った水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤が完成する(図5参照。)。
【0034】
5は前記本発明の製造方法によって製造した水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤であり台形をしている。尚、該水処理剤5の形状は図示したものに限定されるものではなく、金型の凹部の形状に変更を加えることにより他の形状となしてもよい。また、水処理剤の厚みも、図示したものよりも薄くなしてもよい。そして、図5に示す如く、その上下の面には、表面から1.0mm~1.5mmの深さ(D)のクラック6、6、6・・・が無数に入っている。
【0035】
尚、水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤5の上下の表面にクラック6、6、6・・・が入るのは、急激な温度差によるものであり、これを上記の通り行うことにより、表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラック6、6、6・・・を入れることができるのである。
【0036】
また、上記本発明の製造方法によって製造した水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤5は、空調設備や冷凍装置、熱交換器等に冷却水等を供給する水路系統(循環系・非循環系を問わない。)に用いられるものであり、本実施形態においてはクーリングタワーを用いた冷却装置を用いた場合を示す。
【0037】
図7に示す如く、クーリングタワーCと熱交換器Bとの間に配設された水路系統Lに投入されるものである。上記水路系統Lは、クーリングタワーC内上部の放水部C1と、その下方に位置する貯溜部C2との間を熱交換器Bを介して繋ぐものであり、ポンプPによって水路系統L内の水が循環するように構成されているものであり、本発明の製造方法によって製造した水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤5は、通水性容器3に入れて貯溜部C2に投入されるものである。尚、図中矢印Aは空気の流れ、矢印Wは水の流れを示すものである。
【0038】
以上の如く、水路系統内でのシリカスケールの発生と付着の抑制、及びそれらの除去が、本発明の製造方法によって製造した水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤5の投入期間中、常に継続して行われることになるので、水路系統のメンテナンスを容易にすることができると同時に、水路系統内へのスケールの付着が可及的に少なくなるので、水路系統の圧力損失が減少すると共に、熱の伝達効率を向上させることができ、経済的な運用が可能となるものである。
【0039】
更に、本発明の製造方法によって製造した水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤5は、その組成中に酸化ナトリウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素等を含んでなるものであり、そしてこれの材料は無機化合物よりなるものであるから、作業者や周辺環境に悪影響を及ぼす心配がなく、水路系統に対して損傷を与える虞もないものである。
【0040】
加えて、本発明によって製造する水処理剤5は、水溶性アモルファスの塊状又は粒状の水処理剤であり且つ上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入ったものであるから、水路系統内の水に投入したとき、短期間で溶解することなく、約3か月~4か月程度のある程度の期間消失しないで薬効を保持することができるようになるものである。
【0041】
即ち、本水処理剤を水路系統内の水に投入したとき、該水処理剤の表面が平面であるとすると、水との接触面積が少ないから、溶解して消失するまでの期間は長くなるが、成分の水中への溶出量は少ない。したがって、充分な薬効が得られない。また、反対に、水処理剤の表面に深いクラックがあると、水との接触面積が増大することにより、成分の水中への溶出量も増えるが、溶解して消失するまでの期間もきわめて短くなる。即ち、水処理剤の寿命も短くなる。また、場合によってはバラバラに分解してしまうこともある。
【0042】
而して、本発明によって製造する水処理剤5は、上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入ったものであるから、表面が平面であるものよりも水との接触面積が大きくなり、よって成分の水中への溶出量も増えると共に、深いクラックが入った場合に比して溶解して消失するまでの期間を長くすることができるものである。
【符号の説明】
【0043】
1 金型
2 キャビティ
3 通水性容器
4 網
5 水処理剤
6 クラック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
而して、本発明の要旨とするところは、以下a.~g.の工程からなることを特徴とするシリカスケールの抑制、除去を可能にした水処理剤の製造方法にある。
a.金型を上部を残して流水中に配置することにより、金型を継続して流水冷却する。
b.酸化ケイ素(SiO)、酸化ナトリウム(NaO)を主成分とし、必要に応じて酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)又は酸化ホウ素(B)の一種又は複数種を混合し、これを1200℃~1300℃に加熱して溶融し、金型内に収容する。材料の注入にあたっては、金型におけるキャビティの上辺より少し下がった位置まで入れるようにする。
c.次に、金型に収容してから10秒~20秒経った後に、収容した材料の上方より均一になるように冷却水をシャワーのように浴びせ、材料の温度を800℃近辺まで冷却し、固化させる。
d.次に、金型を逆転して、固化した材料を網の上に落とす。
e.その後、これに再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、500℃近辺まで冷却する。
f.次いで、これを別の網上に移し、再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、100℃近辺まで冷却する。
g.その後、自然乾燥・自然冷却する。これにより、上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入った水溶性アモルファスの塊状のシリカスケールの抑制、除去を可能にした水処理剤が完成する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のa.~g.の工程からなることを特徴とするシリカスケールの抑制、除去を可能にした水処理剤の製造方法。
a.金型を上部を残して流水中に配置することにより、金型を継続して流水冷却する。
b.酸化ケイ素(SiO)、酸化ナトリウム(NaO)を主成分とし、必要に応じて酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)又は酸化ホウ素(B)の一種又は複数種を混合し、これを1200℃~1300℃に加熱して溶融し、金型内に収容する。材料の注入にあたっては、金型におけるキャビティの上辺より少し下がった位置まで入れるようにする。
c.次に、金型に収容してから10秒~20秒経った後に、収容した材料の上方より均一になるように冷却水をシャワーのように浴びせ、材料の温度を800℃近辺まで冷却し、固化させる。
d.次に、金型を逆転して、固化した材料を網の上に落とす。
e.その後、これに再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、500℃近辺まで冷却する。
f.次いで、これを別の網上に移し、再度上方及び下方より冷却水を30秒~40秒間浴びせ、100℃近辺まで冷却する。
g.その後、自然乾燥・自然冷却する。これにより、上下の表面から1.0mm~1.5mmの深さのクラックが入った水溶性アモルファスの塊状のシリカスケールの抑制、除去を可能にした水処理剤が完成する。