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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032270
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】運搬車両
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/04 20060101AFI20240305BHJP
   F01P 7/02 20060101ALI20240305BHJP
   F01P 11/14 20060101ALI20240305BHJP
   F01P 5/04 20060101ALI20240305BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20240305BHJP
   B60P 1/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F01P7/04 B
F01P7/02 H
F01P7/02 K
F01P11/14 B
F01P5/04 C
F02D29/04 H
B60P1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135841
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】坂口 洋二
(72)【発明者】
【氏名】下村 寛和
【テーマコード(参考)】
3G093
【Fターム(参考)】
3G093AA10
3G093AB01
3G093DA05
3G093DB27
3G093EB06
3G093FB01
3G093FB02
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で対象の過冷却を防止する。
【解決手段】運搬車両は、油圧モータによって駆動される冷却ファンと、車体前部に配置される熱交換器と、油圧モータに供給される作動油の流れを制御するファン制御弁と、油圧シリンダに供給される作動油の流れを制御するシリンダ制御弁と、制御装置とを備える。ファン制御弁とシリンダ制御弁はセンタバイパスラインにタンデムに接続される。ファン制御弁は、油圧ポンプとシリンダ制御弁とを連通し、油圧モータの吸入口と吐出口と作動油タンクとを連通する中立位置と、油圧ポンプと油圧モータの吸入口とを連通し、油圧モータの吐出口と作動油タンクとを連通する回転位置とを有する。制御装置は、冷却対象の温度が第1閾値以上である場合にはファン制御弁を回転位置に切り換え、冷却対象の温度が第1閾値未満である場合にはファン制御弁を中立位置に切り換えるとともに油圧ポンプの吐出容量を最小容量に制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機によって駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される作動油によって駆動される油圧モータと、
前記油圧モータによって駆動される冷却ファンと、
車体の前部に配置され、前記冷却ファンにより生成される冷却風により、冷却対象を冷却する熱交換器と、
前記冷却対象の温度を検出する温度センサと、
前記油圧ポンプから供給される作動油によって駆動される油圧シリンダと、
前記油圧ポンプから前記油圧モータに供給される作動油の流れを制御するファン制御弁と、
前記油圧ポンプから前記油圧シリンダに供給される作動油の流れを制御するシリンダ制御弁と、
前記ファン制御弁及び前記油圧ポンプの吐出容量を制御する制御装置と、を備えた運搬車両において、
前記ファン制御弁と前記シリンダ制御弁は、前記油圧ポンプと作動油タンクとを接続する油路にタンデムに接続され、
前記ファン制御弁は、
前記シリンダ制御弁の上流側に配置され、
前記油圧ポンプと前記シリンダ制御弁とを連通し、前記油圧ポンプと前記油圧モータとの連通を遮断し、前記油圧モータの吸入口と吐出口と前記作動油タンクとを連通する中立位置と、
前記油圧ポンプと前記シリンダ制御弁との連通を遮断し、前記油圧ポンプと前記油圧モータの吸入口とを連通し、前記油圧モータの吐出口と前記作動油タンクとを連通する回転位置と、を有し、
前記制御装置は、
前記温度センサにより検出された前記冷却対象の温度が、第1閾値以上であるか否かを判定し、
前記冷却対象の温度が前記第1閾値以上である場合には、前記ファン制御弁を前記回転位置に切り換えるとともに、前記油圧ポンプの吐出容量を最小容量よりも大きい吐出容量に制御し、
前記冷却対象の温度が前記第1閾値未満である場合には、前記ファン制御弁を前記中立位置に切り換えるとともに、前記油圧ポンプの吐出容量を前記最小容量に制御する
ことを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
請求項1に記載の運搬車両において、
前記制御装置は、
前記冷却対象の温度が前記第1閾値以上かつ第2閾値未満である場合には、前記冷却対象の温度が高くなるほど前記油圧ポンプの吐出容量を増加させ、
前記冷却対象の温度が前記第2閾値以上である場合には、前記油圧ポンプの吐出容量を最大容量に制御する
ことを特徴とする運搬車両。
【請求項3】
請求項1に記載の運搬車両において、
前記ファン制御弁は、前記回転位置として、前記油圧モータを正転方向に回転させるための正転位置と、前記油圧モータを前記正転方向とは反対の逆転方向に回転させるための逆転位置と、を有している
ことを特徴とする運搬車両。
【請求項4】
請求項1に記載の運搬車両において、
前記ファン制御弁と前記油圧モータとを接続する一対のモータ油路と、
前記一対のモータ油路と前記作動油タンクとの間に設けられた一対のチェック弁と、を備え、
前記ファン制御弁が前記中立位置に切り換えられている状態において、前記冷却ファンが回転したときに、前記作動油タンクから前記チェック弁を通じて前記油圧モータの吸入口に作動油が補給されるとともに、前記作動油タンクから前記ファン制御弁を通じて前記油圧モータの吸入口に作動油が補給される
ことを特徴とする運搬車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ファンを備えたダンプトラック等の運搬車両に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却ファンを備えたダンプトラック等の運搬車両が知られている(特許文献1参照)。冷却ファンにより生成された冷却風は、エンジン冷却水などの冷却対象を冷却する。特許文献1には、冷却対象の温度が下限閾値温度よりも高い場合には、冷却対象の温度に応じて冷却ファンの回転数を設定する第一制御と、冷却対象の温度が下限閾値温度よりも低い場合には、冷却ファンの回転数を最小回転数に設定するとともに逆回転とする第二制御と、を行う制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-118902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダンプトラックなどの運搬車両は、ラジエータなどの熱交換器及び冷却ファンが車体の前部に配置されることがある。また、運搬車両は、積荷の有無や道路勾配などによって走行時の負荷が変化する。例えば、空荷走行、平地走行などは、積荷走行、登坂走行などに比べて負荷が低い走行状態である。負荷の低い走行状態で冷却ファンにより冷却風が生成され続けると、冷却風と走行風とによって冷却対象(エンジン冷却水等)が過冷却となってしまうおそれがある。ここで、過冷却を防止するために、冷却ファンを停止させることが考えられる。冷却ファンを停止させる方法としては、油圧ポンプ等の油圧源から冷却ファンを駆動する油圧モータへの作動油の供給を遮断する方法が考えられる。
【0005】
特許文献1に記載の車両では、ファンの回転方向を制御するファン制御弁の上流側に、油圧源からの作動油の供給先をファン制御弁または荷役装置に切り替える制御弁(切替バルブ)が設けられている。つまり、特許文献1に記載の車両では、荷役装置と冷却ファンの油圧モータの油圧源が共用されている。
【0006】
したがって、特許文献1に記載の構成では、例えば、負荷の低い走行状態において、油圧源からの作動油の供給先を荷役装置に切り替えることにより、冷却ファンを停止させることで過冷却を防止することができる。しかしながら、油圧回路には複数の制御弁が設けられ、油圧回路の構成が複雑になってしまっているという問題点がある。
【0007】
本発明は、簡素な構成で、冷却対象の過冷却を防止可能な運搬車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による運搬車両は、原動機によって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される作動油によって駆動される油圧モータと、前記油圧モータによって駆動される冷却ファンと、車体の前部に配置され、前記冷却ファンにより生成される冷却風により、冷却対象を冷却する熱交換器と、前記冷却対象の温度を検出する温度センサと、前記油圧ポンプから供給される作動油によって駆動される油圧シリンダと、前記油圧ポンプから前記油圧モータに供給される作動油の流れを制御するファン制御弁と、前記油圧ポンプから前記油圧シリンダに供給される作動油の流れを制御するシリンダ制御弁と、前記ファン制御弁及び前記油圧ポンプの吐出容量を制御する制御装置と、を備えた運搬車両において、前記ファン制御弁と前記シリンダ制御弁は、前記油圧ポンプと作動油タンクとを接続する油路にタンデムに接続され、前記ファン制御弁は、前記シリンダ制御弁の上流側に配置され、前記油圧ポンプと前記シリンダ制御弁とを連通し、前記油圧ポンプと前記油圧モータとの連通を遮断し、前記油圧モータの吸入口と吐出口と前記作動油タンクとを連通する中立位置と、前記油圧ポンプと前記シリンダ制御弁との連通を遮断し、前記油圧ポンプと前記油圧モータの吸入口とを連通し、前記油圧モータの吐出口と前記作動油タンクとを連通する回転位置と、を有し、前記制御装置は、前記温度センサにより検出された前記冷却対象の温度が、第1閾値以上であるか否かを判定し、前記冷却対象の温度が前記第1閾値以上である場合には、前記ファン制御弁を前記回転位置に切り換えるとともに、前記油圧ポンプの吐出容量を最小容量よりも大きい吐出容量に制御し、前記冷却対象の温度が前記第1閾値未満である場合には、前記ファン制御弁を前記中立位置に切り換えるとともに、前記油圧ポンプの吐出容量を前記最小容量に制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡素な構成で、冷却対象の過冷却を防止可能な運搬車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、ダンプトラックの外観を表す斜視図である。
図2図2は、ダンプトラックの構成を示す平面模式図である。
図3図3は、ダンプトラックの油圧システムを示す図。
図4図4は、制御装置の機能ブロック図である。
図5図5は、メインポンプの吐出容量q(傾転角)と吐出流量Qとの関係を示す図である。
図6図6は、冷却水温度Tcと吐出容量qとの関係を規定する容量制御テーブルを示す図である。
図7図7は、制御装置により実行されるファン制御の処理の流れの一例について示すフローチャートである。
図8図8は、冷却水温度Tcに応じたファン制御弁の切換位置及びメインポンプの吐出流量Qの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る運搬車両について説明する。図1は本発明の実施形態に係る運搬車両の一例であるダンプトラック100の外観を表す斜視図である。以下の説明において断り書きのない場合は運転席の前方(同図中においては左手前方向、矢印参照)を車体101の前方とする。
【0012】
図1に示したダンプトラック100は鉱山等で稼働する大型のものであり、車体101、キャブ103、荷台104、前輪105及び後輪106を備えている。キャブ103は支持ベース102により支持され、車体101上における前側でかつ左側に位置している。キャブ103は、ダンプトラック100のオペレータが乗降する運転室を形成し、その内部には運転席、アクセルペダル、ブレーキペダル、操舵用のハンドル(いずれも図示せず)、荷台用の操作装置91(図3参照)等が設けられている。
【0013】
荷台104は車体101の後部に起伏可能に搭載されている。荷台104は、車体101の後部側に連結ピンを介して回動可能に支持され、ホイストシリンダ10(図3参照)の伸縮動作によって連結ピンを支点として上下動する。前輪105は車体101の前部の左右、後輪106は車体101の後部の左右でそれぞれ車体101を走行可能に支持している。前輪105は、ダンプトラック100のオペレータによって操舵(ステアリング操作)される操舵輪を構成している。後輪106は、ダンプトラック100の駆動輪を構成し、走行駆動装置(不図示)により回転駆動される。
【0014】
車体101の前面には、フロントグリル107が設けられている。フロントグリル107には、外気を車体101の内部に取り入れる通気孔が複数設けられている。
【0015】
図2は、ダンプトラック100の構成を示す平面模式図である。図2に示すように、車体101の内部には、エンジン1、エンジン1に接続される発電機80、エンジン1に接続される複数の油圧ポンプ、冷却風を生成する冷却ファン9、及び冷却ファン9により生成される冷却風によりエンジン冷却水を冷却する熱交換器であるラジエータ23が搭載されている。エンジン冷却水は、エンジン1を冷却する冷媒であって、冷却ファン9により生成される冷却風により冷却される冷却対象である。なお、図2では、熱交換器としてラジエータ23のみが図示されているが、作動油を冷却するオイルクーラ等の熱交換器が搭載される場合もある。
【0016】
原動機としてのエンジン1は、例えば大型のディーゼルエンジン等により構成されている。冷却ファン9は、後述するファンモータ8(図3参照)によって駆動される。冷却ファン9は、車体101の前側からフロントグリル107を通じて外気を吸込み、車体101の前側から後側に向かって流れる冷却風を生成する(矢印F1参照)。フロントグリル107の後側には、ラジエータ23が配置されているため、ラジエータ23が冷却風により冷却される。
【0017】
ラジエータ23は、冷却ファン9により生成された冷却風(空気)との間で熱交換を行い、エンジン1によって熱せられたエンジン冷却水を冷却する。ラジエータ23により冷却されたエンジン冷却水は、エンジン1に戻り、エンジン1を冷却する。なお、ラジエータ23は、車体101の前部に配置されているため、走行風(矢印F2参照)を受ける。したがって、ラジエータ23内のエンジン冷却水は、冷却風だけでなく、走行風によっても冷却される。
【0018】
図3を参照して、ダンプトラック100の油圧システム110について説明する。図3に示すように、ダンプトラック100の油圧システム110は、エンジン1によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ(以下、メインポンプと記す)2及び固定容量型の油圧ポンプ(以下、パイロットポンプと記す)4と、メインポンプ2から供給される作動油によって駆動される一対のホイストシリンダ(図3では一つのみ図示)10と、メインポンプ2から供給される作動油によって駆動されるファンモータ8と、作動油が貯留される作動油タンク22と、メインポンプ2と作動油タンク22とを接続する油路であるセンタバイパスラインCL上に設けられるファン制御弁5及びシリンダ制御弁7と、ダンプトラック100の各部を制御する制御装置50と、を備えている。
【0019】
メインポンプ2は、エンジン1により駆動されることにより、作動油タンク22から作動油を吸い込み、高圧の作動油(圧油)を吐出する。メインポンプ2の吐出口は、センタバイパスラインCLを介して作動油タンク22に接続されている。ファン制御弁5及びシリンダ制御弁7は、センタバイパスラインCLに沿ってタンデムに接続されている。ファン制御弁5は、メインポンプ2からファンモータ8に供給される作動油の流れ、及び、ファンモータ8から作動油タンク22に排出される作動油の流れを制御する。シリンダ制御弁7は、メインポンプ2からホイストシリンダ10に供給される作動油の流れ、及び、ホイストシリンダ10から作動油タンク22に排出される作動油の流れを制御する。
【0020】
ファン制御弁5には、センタバイパスラインCLから分岐する供給油路61が接続される。シリンダ制御弁7は、センタバイパスラインCLにおけるファン制御弁5の下流側に設けられる。シリンダ制御弁7には、センタバイパスラインCLから分岐する供給油路62が接続される。ファンモータ8からの戻り油は、戻り油路68を通じて作動油タンク22に排出される。ホイストシリンダ10からの戻り油は、戻り油路69を通じて作動油タンク22に排出される。
【0021】
ファンモータ8は、冷却ファン9を回転駆動させる油圧モータである。ファンモータ8の出入口(吸入口及び吐出口)は、一対のモータ油路81,82によってファン制御弁5に接続されている。一対のモータ油路81,82は、ファン制御弁5を介してメインポンプ2及び作動油タンク22にそれぞれ接続される。
【0022】
モータ油路81には、モータ油路81の最高圧力を規定するリリーフ弁11が接続されている。モータ油路82には、モータ油路82の最高圧力を規定するリリーフ弁12が設けられている。一対のリリーフ弁11,12は、一対のモータ油路81,82内の圧力が所定値を超えると、作動油を作動油タンク22に逃がし、一対のモータ油路81,82を含むファン回路の油圧機器を保護する。
【0023】
一対のモータ油路81,82と戻り油路68との間にはメイクアップ用の一対のチェック弁13,14が設けられている。チェック弁13は、戻り油路68からモータ油路81への作動油の流れを許容し、モータ油路81から戻り油路68への作動油の流れを禁止する逆止弁である。チェック弁14は、戻り油路68からモータ油路82への作動油の流れを許容し、モータ油路82から戻り油路68への作動油の流れを禁止する逆止弁である。
【0024】
一対のチェック弁13,14は、ファンモータ8が慣性回転を行う場合、あるいはファンモータ8が走行風によって回転させられた場合において、モータ油路81またはモータ油路82内が負圧になると、作動油タンク22内の作動油を、戻り油路68を通じて負圧となったモータ油路81,82内に補給する。
【0025】
ホイストシリンダ10は、車体101(図1参照)と荷台104(図1参照)との間に設けられる。ホイストシリンダ10は、荷台104を起伏させる1段式または多段式の油圧シリンダである。なお、図3では、2段式のホイストシリンダ10を示している。図3に示すホイストシリンダ10は、外側の外筒部10aと、外筒部10a内に摺動可能に設けられ、外筒部10a内を上側のボトム側油室10dと下側のロッド側油室10eとに画成した内筒部10bと、内筒部10b内に伸縮可能に設けられたピストンロッド10cと、を有する。
【0026】
ホイストシリンダ10は、メインポンプ2から吐出された作動油(圧油)がボトム側油室10dに供給され、ロッド側油室10eから作動油(戻り油)が排出されることで、伸長する。ホイストシリンダ10が伸長することにより、連結ピンを支点として荷台104が上方に回動する。回動動作が完了すると、荷台104は、斜め後方へ下向きに傾斜した放土姿勢となる。ホイストシリンダ10は、メインポンプ2から吐出された作動油(圧油)がロッド側油室10eに供給され、ボトム側油室10d内から作動油(戻り油)が排出されることで、収縮する。ホイストシリンダ10が収縮することにより、連結ピンを支点として荷台104が下方に回動する。回動動作が完了すると、荷台104は倒伏した運搬姿勢となる。
【0027】
ホイストシリンダ10のボトム側油室10d及びロッド側油室10eは、一対のアクチュエータ油路71,72によってシリンダ制御弁7に接続されている。一対のアクチュエータ油路71,72は、シリンダ制御弁7を介してメインポンプ2及び作動油タンク22にそれぞれ接続されている。アクチュエータ油路71は、ホイストシリンダ10のボトム側油室10dに接続され、アクチュエータ油路72は、ホイストシリンダ10のロッド側油室10eに接続されている。
【0028】
ファン制御弁5は、例えば6ポート3位置の油圧パイロット式方向制御弁により構成されている。ファン制御弁5は、単一の方向制御弁を用いて構成され、左右両側に油圧パイロット部5a,5bを有している。
【0029】
ファン制御弁5は、スプール(弁体)を正転位置(5F)、逆転位置(5R)、及び中立位置(5N)に切り換え可能な切換弁である。ファン制御弁5は、通常時、油圧パイロット部5a,5bの双方が作動油タンク22に接続され、スプールがセンタリングスプリングにより中立位置(5N)に保持されている。
【0030】
ファン制御弁5のスプールが中立位置(5N)にある場合、センタバイパスラインCLのファン制御弁5の上流側と下流側とが連通するとともに、供給油路61とモータ油路81,82との連通が遮断される。つまり、中立位置(5N)では、メインポンプ2とシリンダ制御弁7とが連通し、メインポンプ2とファンモータ8との連通が遮断される。これにより、メインポンプ2から吐出された作動油は、ファン制御弁5を通じてシリンダ制御弁7に供給される。また、ファン制御弁5のスプールが中立位置(5N)にある場合、ファン制御弁5の連通路5cによって、一対のモータ油路81,82同士が接続されるとともに一対のモータ油路81,82が戻り油路68に接続される。中立位置(5N)では、ファンモータ8の吸入口と吐出口と作動油タンク22とが連通路5cを介して連通しているため、外力による冷却ファン9の回転が許容されている。
【0031】
ファン制御弁5のスプールが正転位置(5F)にある場合、供給油路61とモータ油路81とが連通するとともにモータ油路82と戻り油路68とが連通する。つまり、正転位置(5F)では、連通路5cを介したファンモータ8の吸入口と吐出口と作動油タンク22との連通が遮断され、ファンモータ8の吸入口とメインポンプ2とが連通するとともにファンモータ8の吐出口と作動油タンク22とが連通する。これにより、メインポンプ2から吐出された作動油は、供給油路61及びモータ油路81を通じてファンモータ8に供給され、ファンモータ8が正転方向に回転する。ファンモータ8から排出された作動油は、モータ油路82及び戻り油路68を通じて作動油タンク22に排出される。ファン制御弁5のスプールが逆転位置(5R)にある場合、供給油路61とモータ油路82とが連通するとともにモータ油路81と戻り油路68とが連通する。つまり、逆転位置(5R)では、連通路5cを介したファンモータ8の吸入口と吐出口と作動油タンク22との連通が遮断され、ファンモータ8の吸入口とメインポンプ2とが連通するとともにファンモータ8の吐出口と作動油タンク22とが連通する。これにより、メインポンプ2から吐出された作動油は、供給油路61及びモータ油路82を通じてファンモータ8に供給され、ファンモータ8が正転方向とは反対の方向である逆転方向に回転する。ファンモータ8から排出された作動油は、モータ油路81及び戻り油路68を通じて作動油タンク22に排出される。
【0032】
このように、正転位置(5F)及び逆転位置(5R)は、メインポンプ2とファンモータ8とを連通し、メインポンプ2から吐出される作動油によってファンモータ8を回転させる回転位置である。なお、ファン制御弁5のスプールが回転位置(5F),(5R)にある場合、センタバイパスラインCLを介したメインポンプ2とシリンダ制御弁7との連通が遮断される。
【0033】
シリンダ制御弁7は、例えば6ポート3位置の油圧パイロット式方向制御弁により構成されている。シリンダ制御弁7は、単一の方向制御弁を用いて構成され、左右両側に油圧パイロット部7a,7bを有している。
【0034】
シリンダ制御弁7は、スプール(弁体)を上げ位置(7R)、下げ位置(7L)、及び中立位置(7N)に切り換え可能な切換弁である。シリンダ制御弁7は、通常時、油圧パイロット部7a,7bの双方が作動油タンク22に接続され、スプールがセンタリングスプリングにより中立位置(7N)に保持されている。
【0035】
シリンダ制御弁7のスプールが中立位置(7N)にある場合、供給油路62及び戻り油路69とアクチュエータ油路71,72との連通が遮断される。これにより、ホイストシリンダ10への作動油の供給と、ホイストシリンダ10からの作動油の排出が停止するため、ホイストシリンダ10の動きが止まる。また、シリンダ制御弁7のスプールが中立位置(7N)にある場合、センタバイパスラインCLのシリンダ制御弁7の上流側と下流側とが連通する。
【0036】
シリンダ制御弁7のスプールが上げ位置(7R)にある場合、供給油路62とアクチュエータ油路71とが連通するとともにアクチュエータ油路72と戻り油路69とが連通する。なお、センタバイパスラインCLのシリンダ制御弁7の上流側と下流側との連通は遮断される。これにより、ファン制御弁5が中立位置(5N)にある場合には、メインポンプ2から吐出された作動油は、供給油路62及びアクチュエータ油路71を通じてホイストシリンダ10のボトム側油室10dに供給される。また、ロッド側油室10e内の作動油が、アクチュエータ油路72及び戻り油路69を通じて作動油タンク22に排出される。これにより、ホイストシリンダ10が伸長する方向、すなわち荷台104を持上げる方向に駆動される。
【0037】
シリンダ制御弁7のスプールが下げ位置(7L)にある場合、供給油路62とアクチュエータ油路72とが連通するとともにアクチュエータ油路71と戻り油路69とが連通する。なお、センタバイパスラインCLのシリンダ制御弁7の上流側と下流側との連通は遮断される。これにより、ファン制御弁5が中立位置(5N)にある場合には、メインポンプ2から吐出された作動油は、供給油路62及びアクチュエータ油路72を通じてホイストシリンダ10のロッド側油室10eに供給される。また、ボトム側油室10d内の作動油が、アクチュエータ油路71及び戻り油路69を通じて作動油タンク22に排出される。これにより、ホイストシリンダ10が収縮する方向、すなわち荷台104を下降させる方向に駆動される。
【0038】
パイロットポンプ4は、パイロット油路を介して複数の電磁弁16~19に接続されている。パイロットポンプ4と複数の電磁弁16~19との間のパイロット油路には、パイロット油路の圧力を規定するパイロットリリーフ弁15が設けられている。複数の電磁弁16~19は、制御装置50からの制御電流に応じて、パイロット油路の圧力(一次圧)を減圧して、減圧後の圧力(二次圧)をパイロット圧として出力する減圧弁である。電磁弁16~19は、オフ信号としての待機用の制御電流が入力されているときには、油圧パイロット部5a,5b,7a,7bと作動油タンク22とを連通する。電磁弁16~19は、オン信号としての駆動用の制御電流が入力されているときには、油圧パイロット部5a,5b,7a,7bに生成したパイロット圧を出力する。
【0039】
ファン制御弁5を駆動させるための電磁弁16,17は、エンジン冷却水の温度に応じて制御装置50から出力される制御指令(制御電流)に応じて、動作する。シリンダ制御弁7を駆動させるための電磁弁18,19は、荷台用の操作装置91の操作に応じて制御装置50から出力される制御指令(制御電流)に応じて、動作する。
【0040】
制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等の処理装置51、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ52、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ53、入出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。これらのハードウェアは、協働してソフトウェアを動作させ、複数の機能を実現する。なお、制御装置50は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0041】
不揮発性メモリ52には、各種演算が実行可能なプログラム、各種演算に用いられるデータ(データテーブル、閾値、数式等)が格納されている。すなわち、不揮発性メモリ52は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。揮発性メモリ53は、処理装置51による演算結果及び入出力インタフェースから入力された信号を一時的に記憶する記憶媒体(記憶装置)である。処理装置51は、不揮発性メモリ52に記憶されたプログラムを揮発性メモリ53に展開して演算実行する装置であって、プログラムに従って入出力インタフェース、不揮発性メモリ52及び揮発性メモリ53から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0042】
制御装置50の入出力インタフェースには、シリンダ制御弁7の切換操作を行う操作装置91が接続されている。操作装置91は、例えば電気レバー装置により構成され、キャブ103内のオペレータによって手動で傾転操作される操作レバー91aを有している。操作装置91は、シリンダ制御弁7の各切換位置、すなわち中立位置(7N)、上げ位置(7R)、及び下げ位置(7L)に対応する中立位置、上げ位置、及び下げ位置のいずれかに操作される。操作装置91は、操作位置に応じた操作信号を制御装置50に出力する。
【0043】
制御装置50の入出力インタフェースには、温度センサ25が接続されている。温度センサ25は、エンジン1の冷却水系統28を流れるエンジン冷却水の温度を検出し、その検出結果を表す信号を制御装置50に出力する。冷却水系統28は、エンジン冷却水を貯留する冷却水タンク27と、冷却水タンク27内のエンジン冷却水を吸い込んで吐出する冷却水循環ポンプ24と、冷却風によってエンジン冷却水を冷却するラジエータ23と、を含んで構成される。冷却水系統28は、冷却水循環ポンプ24によりエンジン冷却水を系統内で循環させることが可能な循環系統である。エンジン冷却水は、エンジン1等の冷却対象物26の熱を吸収することにより、冷却対象物26を冷却する。エンジン冷却水は、冷却対象物26から熱を受けることにより温度が上昇する。温度が上昇したエンジン冷却水は、ラジエータ23において冷却ファン9により生成された冷却風によって冷却される。温度センサ25は、例えば、冷却水タンク27または冷却水循環ポンプ24の吸入側の管路に設けられ、ラジエータ23に供給されるエンジン冷却水の温度を検出する。
【0044】
入出力インタフェースの入力部は、各種装置(操作装置91、温度センサ25等)から入力された信号を処理装置51で演算可能なデータに変換する。また、入出力インタフェースの出力部は、処理装置51での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各種装置(電磁弁16~19、レギュレータ2a等)に出力する。
【0045】
制御装置50は、メインポンプ2のレギュレータ2aに制御信号を出力する。レギュレータ2aは、メインポンプ2の押しのけ容積(1回転当たりの吐出容量)を可変制御する容量制御装置である。例えば、メインポンプ2が斜板式のピストンポンプである場合、レギュレータ2aはメインポンプ2の斜板の傾転角(押しのけ容積)を制御する傾転アクチュエータと、メインポンプ2の吐出圧を元圧として傾転アクチュエータの制御圧を生成する電磁比例弁とを有している。
【0046】
制御装置50は、操作装置91が中立位置に操作されている場合には、温度センサ25により検出されるエンジン冷却水の温度(以下、冷却水温度とも記す)Tcに基づいて、ファン制御弁5を制御する。ファン制御弁5の制御内容については後述する。
【0047】
制御装置50は、操作装置91が中立位置に操作されている場合には、シリンダ制御弁7を中立位置(7N)に保持させる。つまり、制御装置50は、電磁弁18,19の双方にオフ信号を出力する。
【0048】
制御装置50は、操作装置91が上げ位置に操作されている場合には、シリンダ制御弁7を上げ位置(7R)に切り換える制御を行う。つまり、制御装置50は、電磁弁18にオン信号を出力するとともに電磁弁19にオフ信号を出力する。これにより、電磁弁18により生成されたパイロット圧が油圧パイロット部7aに作用し、シリンダ制御弁7が上げ位置(7R)に切り換えられる。制御装置50は、操作装置91が下げ位置に操作されている場合には、シリンダ制御弁7を下げ位置(7L)に切り換える制御を行う。つまり、制御装置50は、電磁弁18にオフ信号を出力するとともに電磁弁19にオン信号を出力する。これにより、電磁弁19により生成されたパイロット圧が油圧パイロット部7bに作用し、シリンダ制御弁7が下げ位置(7L)に切り換えられる。
【0049】
制御装置50は、ファン制御弁5の切換位置を制御して、ファンモータ8の回転と停止及びファンモータ8の回転方向を制御する。また、制御装置50は、レギュレータ2aを介してメインポンプ2の吐出容量qを最小容量qminから最大容量qmaxまでの範囲で制御することにより、ファンモータ8の回転速度を制御する。図4を参照して、冷却ファン9及びメインポンプ2の制御に関する制御装置50の機能について説明する。図4は、制御装置50の機能ブロック図である。図4に示すように、制御装置50は、不揮発性メモリ52に記憶されているプログラムを実行することにより、判定部54、弁制御部55、及びポンプ制御部56として機能する。
【0050】
図4に示すように、判定部54は、温度センサ25により検出された冷却水温度Tcが第1閾値Tc1以上であるか否かを判定する。また、判定部54は、温度センサ25により検出された冷却水温度Tcが第2閾値Tc2以上であるか否かを判定する。第1閾値Tc1及び第2閾値Tc2は、予め不揮発性メモリ52に記憶されている。第1閾値Tc1及び第2閾値Tc2の大小関係は、Tc1<Tc2である。判定部54は、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満である場合、冷却ファン9の停止条件が成立したと判定する。したがって、第1閾値Tc1は、冷却ファン9の駆動を停止するか否かを判定するための閾値といえる。
【0051】
弁制御部55は、判定部54の判定結果に基づき、ファン制御弁5の切換位置を制御する。判定部54により、冷却ファン9の停止条件は成立していないと判定された場合、弁制御部55は、電磁弁16にオン信号を出力するとともに電磁弁17にオフ信号を出力して、ファン制御弁5を正転位置(5F)に切り換える。ファン制御弁5が正転位置(5F)に切り換えられると、供給油路61とモータ油路81とが連通し、モータ油路82と戻り油路68とが連通する。これにより、ファンモータ8がメインポンプ2から供給される作動油によって回転する。
【0052】
また、判定部54により、冷却ファン9の停止条件が成立したと判定された場合、弁制御部55は、電磁弁16,17にオフ信号を出力して、ファン制御弁5を中立位置(5N)に切り換える。ファン制御弁5が中立位置(5N)に切り換えられると、供給油路61とモータ油路81,82との連通が遮断される。また、モータ油路81とモータ油路82と作動油タンク22とがファン制御弁5の連通路5cを介して連通する。その結果、ファンモータ8は、時間の経過に従って減速し、停止する。ファンモータ8が、慣性により回転している間は、中立位置(5N)にあるファン制御弁5の連通路5cとチェック弁13あるいはチェック弁14を介して作動油タンク22から作動油が補給される。このため、ファンモータ8でのキャビテーションの発生を防止することができる。
【0053】
ポンプ制御部56は、温度センサ25により検出された冷却水温度Tcに基づき、メインポンプ2の吐出流量Qを制御する。なお、メインポンプ2の吐出流量Qは、エンジン1の回転速度と、メインポンプ2の吐出容量(容積)qによって決まる。本実施形態に係るポンプ制御部56は、メインポンプ2の吐出容量qを制御することにより、メインポンプ2の吐出流量Qを制御する。
【0054】
図5は、メインポンプ2の吐出容量q(斜板の傾転角に相当)と吐出流量Qとの関係を示す図である。図5に示すように、エンジン回転速度が一定である場合、メインポンプ2の吐出流量Qは、メインポンプ2の吐出容量qの増加に応じて比例的に増加する。吐出容量qが最小値(0%)である場合、吐出流量Qは最小流量Qminとなる。吐出容量qが最大値(100%)である場合、吐出流量Qは最大流量Qmaxとなる。
【0055】
ポンプ制御部56は、予め不揮発性メモリ52に記憶されている容量制御テーブル(図6参照)を用いて、メインポンプ2の吐出容量qを演算する。図6は、冷却水温度Tcと吐出容量qとの関係を規定する容量制御テーブルを示す図である。図6に示すように、容量制御テーブルにより規定される冷却水温度Tcと吐出容量qの関係は以下のとおりである。冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満では、吐出容量qは最小容量qminとなる。冷却水温度Tcが第1閾値Tc1以上第2閾値Tc2未満では、冷却水温度Tcの上昇に応じて吐出容量qが比例的に増加する。冷却水温度Tcが第2閾値Tc2以上では、吐出容量qは最大容量qmaxとなる。
【0056】
ポンプ制御部56は、容量制御テーブルを参照し、温度センサ25により検出された冷却水温度Tcに基づき、メインポンプ2の吐出容量qを演算する。したがって、ポンプ制御部56は、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満である場合には、メインポンプ2の吐出容量qを最小容量qminに制御する。また、ポンプ制御部56は、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1以上である場合には、メインポンプ2の吐出容量qを最小容量qminよりも大きい吐出容量qに制御する。具体的には、ポンプ制御部56は、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1以上かつ第2閾値Tc2未満である場合には、冷却水温度Tcが高くなるほどメインポンプ2の吐出容量qを増加させ、冷却水温度Tcが第2閾値Tc2以上である場合には、メインポンプ2の吐出容量qを最大容量qmaxに制御する。
【0057】
図7を参照して、制御装置50により実行されるファン制御の処理の流れの一例について説明する。図7のフローチャートに示す処理は、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされることにより開始され、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0058】
図7に示すように、ステップS110において、制御装置50は、温度センサ25から冷却水温度Tcを取得し、処理をステップS120に進める。ステップS120において、制御装置50は、ステップS110で取得した冷却水温度Tcが第1閾値Tc1以上であるか否かを判定する。ステップS120において、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1以上であると判定された場合には、処理がステップS130に進む。ステップS120において、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満であると判定された場合には、処理がステップS135に進む。
【0059】
ステップS130において、制御装置50は、電磁弁16にオン信号を出力するとともに、電磁弁17にオフ信号を出力する。電磁弁16にオン信号が入力されると、電磁弁16によってパイロット圧が生成され、生成されたパイロット圧がファン制御弁5の油圧パイロット部5aに入力される。これにより、ファン制御弁5が、正転位置(5F)に切り換えられ、メインポンプ2から吐出される作動油によって、ファンモータ8が正転方向に回転する。
【0060】
ステップS130の処理が終了すると、処理が次のステップS140に進む。ステップS140において、制御装置50は、ステップS110で取得した冷却水温度Tcが第2閾値Tc2以上であるか否かを判定する。ステップS140において、冷却水温度Tcが第2閾値Tc2以上であると判定された場合には、処理がステップS150に進む。ステップS140において、冷却水温度Tcが第2閾値Tc2未満であると判定された場合には、処理がステップS155に進む。
【0061】
ステップS150において、制御装置50は、メインポンプ2の吐出容量qを最大容量qmaxにするための制御信号をレギュレータ2aに出力して、本制御周期における図7のフローチャートに示す処理を終了する。ステップS155において、制御装置50は、容量制御テーブル(図6参照)とステップS110で取得した冷却水温度Tcに基づいて、メインポンプ2の吐出容量qの目標値を決定する。制御装置50は、メインポンプ2の吐出容量qを冷却水温度Tcに応じた目標値にするための制御信号をレギュレータ2aに出力して、本制御周期における図7のフローチャートに示す処理を終了する。
【0062】
上述したように、ステップS120において、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満であると判定された場合には、処理がステップS135に進む。ステップS135において、制御装置50は、電磁弁16,17にオフ信号を出力する。電磁弁16,17にオフ信号が入力されると、ファン制御弁5の油圧パイロット部5a,5bは作動油タンク22に接続される。これにより、ファン制御弁5は、センタリングスプリングの付勢力によって中立位置(5N)に切り換えられる。
【0063】
ステップS135の処理が終了すると、処理が次のステップS137に進む。ステップS137において、制御装置50は、メインポンプ2の吐出容量qを最小容量qminにするための制御信号をレギュレータ2aに出力して、本制御周期における図7のフローチャートに示す処理を終了する。
【0064】
なお、図示しないが、制御装置50は、操作装置91が中立位置に操作されているか否かを判定し、操作装置91が中立位置に操作されている場合に限って、図7のフローチャートに示す制御を実行する。つまり、制御装置50は、操作装置91が中立位置に操作されていない場合(すなわち、操作装置91が上げ位置及び下げ位置のいずれかに操作されている場合)には、冷却水温度Tcに関わらず、ファン制御弁5を中立位置(5N)に制御する。
【0065】
また、図7のフローチャートでは、ステップS120で否定判定された場合にステップS137の処理が実行され、ステップS140で肯定判定された場合にステップS150の処理が実行され、ステップS140で否定判定された場合にステップS155の処理が実行される例について説明した。しかしながら、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満であるとき、及び、冷却水温度Tcが第2閾値Tc2以上であるときにも、制御装置50が容量制御テーブル(図6参照)を用いて吐出容量qの目標値を演算してもよい。例えば、ステップS137,S140,S150,S155の処理を省略し、ステップS110とステップS120との間においてステップS155に相当する処理を実行してもよい。
【0066】
図8を参照して、本実施形態に係るダンプトラック100が走行しているときの油圧システム110の主な動作について説明する。なお、ダンプトラック100の走行中は、操作装置91が中立位置に操作されているため、シリンダ制御弁7は中立位置(7N)で保持されている。図8は、冷却水温度Tcに応じたファン制御弁5の切換位置及びメインポンプ2の吐出流量Qの関係を示す図である。ダンプトラック100の走行中、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1以上である場合、制御装置50は、ファン制御弁5を正転位置(5F)に切り換える制御を行う。つまり、制御装置50は、電磁弁16にオン信号を出力するとともに電磁弁17にオフ信号を出力する。これにより、ファン制御弁5が正転位置(5F)に切り換えられる。
【0067】
ここで、例えば、土砂等の運搬物の放土動作を行った後の空荷走行中において、冷却風及び走行風により、ラジエータ23内を流れるエンジン冷却水の冷却が継続されると、冷却水温度Tcが低下する。冷却水温度Tcが第1閾値Tc1以上第2閾値Tc2未満の範囲では、冷却水温度Tcに応じてメインポンプ2の吐出容量qが制御される。さらに冷却水温度Tcが低下して、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満になると、制御装置50は、電磁弁16及び電磁弁17のそれぞれにオフ信号を出力する。これにより、ファン制御弁5が中立位置(5N)に切り換えられる。したがって、冷却ファン9の回転が時間の経過に伴って減速し、停止する。冷却ファン9による冷却風の生成が停止するため、エンジン冷却水の過冷却を防止することができる。また、制御装置50は、メインポンプ2の吐出流量Qを最小流量Qminに制御する。これにより、メインポンプ2から吐出された作動油は、中立位置(5N)にあるファン制御弁5、及び中立位置(7N)にあるシリンダ制御弁7を通じて作動油タンク22に排出される。したがって、メインポンプ2と作動油タンク22とを接続するセンタバイパスラインCLでの圧力損失を低減し、メインポンプ2の吐出圧を低く抑えることができる。その結果、メインポンプ2の負荷が低減し、エンジン1の負荷が減少する。したがって、本実施形態によれば、メインポンプ2のエネルギー損失を低減し、燃料消費を抑えることができる。
【0068】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0069】
(1)ファン制御弁5とシリンダ制御弁7は、メインポンプ2と作動油タンク22とを接続するセンタバイパスライン(油路)CLにタンデムに接続され、ファン制御弁5は、シリンダ制御弁7の上流側に配置されている。ファン制御弁5は、メインポンプ(油圧ポンプ)2とシリンダ制御弁7とを連通し、メインポンプ2とファンモータ(油圧モータ)8との連通を遮断し、ファンモータ8の吸入口と吐出口と作動油タンク22とを連通路5cを介して連通する中立位置(5N)と、メインポンプ2とシリンダ制御弁7との連通を遮断し、メインポンプ2とファンモータ8の吸入口とを連通し、ファンモータ8の吐出口と作動油タンク22とを連通する回転位置としての正転位置(5F)及び逆転位置(5R)と、を有している。制御装置50は、温度センサ25により検出された冷却水温度(冷却対象の温度)Tcが、第1閾値Tc1以上であるか否かを判定する。制御装置50は、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1以上である場合には、ファン制御弁5を正転位置(5F)に切り換えるとともに、メインポンプ2の吐出容量qを最小容量qminよりも大きい吐出容量に制御する。制御装置50は、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満である場合には、ファン制御弁5を中立位置(5N)に切り換えるとともに、メインポンプ2の吐出容量qを最小容量qminに制御する。
【0070】
本実施形態に係るダンプトラック100は、ホイストシリンダ10の使用頻度が低いため、ホイストシリンダ10及びファンモータ8に作動油を供給する油圧ポンプ(メインポンプ2)が兼用されている。また、単一の制御弁であるファン制御弁5が、メインポンプ2から吐出される作動油の供給先をホイストシリンダ(油圧シリンダ)10またはファンモータ8に切り換える機能と、ファンモータ8の回転と停止を切り換える機能とを兼ね備えている。このため、それぞれの機能を実現するための制御弁を個別に設ける必要がないので、油圧回路の構成を簡素化できる。また、負荷の低い走行状態が継続され、冷却風と走行風とによって冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満になった場合には、ファン制御弁5が中立位置(5N)に切り換えられる。これにより、冷却ファン9による冷却風の生成が停止するため、エンジン冷却水の過冷却を防止することができる。つまり、本実施形態によれば、簡素な構成で、エンジン冷却水(冷却対象)の過冷却を防止可能なダンプトラック(運搬車両)100を提供することができる。なお、メインポンプ2の吐出容量qが最小容量qminに制御されることにより、エンジン1の負荷が低減するので、燃料消費を抑えることができる。
【0071】
(2)制御装置50は、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1以上かつ第2閾値Tc2未満である場合には、冷却水温度Tcが高くなるほどメインポンプ2の吐出容量qを増加させる。また、制御装置50は、冷却水温度Tcが第2閾値Tc2以上である場合には、メインポンプ2の吐出容量qを最大容量qmaxに制御する。
【0072】
この構成によれば、冷却水温度Tcが高くなるほど、冷却ファン9の回転速度を上昇させ、エンジン冷却水に対する冷却効果を高めることができる。冷却水温度Tcに応じて冷却ファン9の回転速度を制御することにより、エンジン冷却水が低くなりすぎたり高くなりすぎたりすることを抑制できる。
【0073】
(3)ファン制御弁5は、回転位置として、ファンモータ8を正転方向に回転させるための正転位置(5F)と、ファンモータ8を正転方向とは反対の逆転方向に回転させるための逆転位置(5R)と、を有している。ファン制御弁5が逆転位置(5R)に切り換えられると、冷却ファン9から前方に向かって流れる冷却風が生成され、フロントグリル107の通気孔のフィルタやラジエータ(熱交換器)23の隙間等に付着した塵芥が除去される。したがって、本実施形態によれば、塵芥によって低下したラジエータ23の冷却性能を容易に回復することができる。
【0074】
なお、制御装置50は、例えば、ダンプトラック100のメンテナンス時、あるいは定期的に、ファン制御弁5を一時的に逆転位置(5R)に切り換える構成とすることができる。メンテナンス時にサービスマンによって入力装置が操作され、入力装置から制御装置50に冷却ファン9の逆転指令が入力されると、制御装置50はファン制御弁5を所定時間だけ逆転位置(5R)に切り換える。また、制御装置50は、タイマ機能によりダンプトラック100の稼働時間を計測し、稼働時間が所定稼働時間を経過する度にファン制御弁5を所定時間だけ逆転位置(5R)に切り換える。なお、制御装置50は、エンジン1の始動時またはエンジン1の停止時に、ファン制御弁5を一時的に逆転位置(5R)に切り換えてもよい。
【0075】
(4)油圧システム110は、ファン制御弁5とファンモータ8とを接続する一対のモータ油路81,82と、一対のモータ油路81,82と作動油タンク22との間に設けられた一対のチェック弁13,14と、を備えている。この構成では、ファン制御弁5が中立位置(5N)に切り換えられている状態において、例えば、走行風によって冷却ファン9が回転したときに、作動油タンク22からチェック弁13,14を通じてファンモータ8の吸入口に作動油が補給されるとともに、作動油タンク22からファン制御弁5を通じてファンモータ8の吸入口に作動油が補給される。したがって、ファンモータ8の吸入口が負圧になることを抑制し、キャビテーションの発生を防止することができる。つまり、キャビテーションに起因したファンモータ8の損傷を防止することができる。チェック弁13,14だけでなく、ファン制御弁5を通じて作動油タンク22から作動油がファンモータ8の吸入口に補給されるため、チェック弁13,14のみを通じて作動油を補給する場合に比べて、キャビテーションの発生を効果的に防止することができる。なお、冷却ファン9が正回転あるいは逆回転しているときにファン制御弁5が中立位置(5N)に切り換えられ、冷却ファン9が慣性により回転し続けるような場合も同様である。すなわち、冷却ファン9が慣性により回転したときには、ファン制御弁5の連通路5c、及びチェック弁13あるいはチェック弁14を通じて作動油タンク22からファンモータ8の吸入口に作動油が補給されるため、ファンモータ8の吸入側が負圧になることを抑制できる。
【0076】
また、ファン制御弁5のスプールが中立位置(5N)にある状態では、モータ油路81とモータ油路82とが連通している。つまり、本実施形態に係るファン制御弁5は、いわゆる中立フリー式の方向切換弁である。このため、吐出側のモータ油路の作動油もファン制御弁5を通じて吸入側のモータ油路に供給される。したがって、本実施形態によれば、中立位置(5N)において一対のモータ油路81,82同士を連通させない場合(中立ブロック式の方向切換弁を備える場合)に比べて、効果的にキャビテーションの発生を防止することができる。
【0077】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0078】
<変形例1>
上記実施形態では、ポンプ制御部56が、冷却水温度Tcとメインポンプ2の吐出容量qとの関係を規定する容量制御テーブルに基づき、メインポンプ2の吐出容量qを制御する例について説明した。しかしながら、メインポンプ2の吐出容量qの制御方法は、上記実施形態で説明した方法に限定されない。例えば、ポンプ制御部56は、冷却水温度Tcとメインポンプ2の吐出容量qとの関係を規定する数式(関数)に基づき、メインポンプ2の吐出容量qを制御してもよい。
【0079】
また、ポンプ制御部56は、容量制御テーブル及び数式を用いずに、判定部54の判定結果に基づき、吐出容量qを制御してもよい。例えば、ポンプ制御部56は、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満であると判定された場合には、吐出容量qを最小容量qminに制御し、冷却水温度Tcが第2閾値Tc2以上であると判定された場合には、吐出容量qを最大容量qmaxに制御する。この場合、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満の状態から第2閾値Tc2まで上昇する過程では、吐出容量qが最小容量qminに制御され、冷却水温度Tcが第2閾値Tc2を超えると吐出容量qが最大容量qmaxに制御される。また、冷却水温度Tcが第2閾値Tc2以上の状態から第1閾値Tc1まで低下する過程では、吐出容量qが最大容量qmaxに制御され、冷却水温度Tcが第1閾値Tc1未満になると吐出容量qが最小容量qminに制御される。
【0080】
<変形例2>
上記実施形態では、メインポンプ2を駆動する原動機がエンジン1である例について説明したが、原動機は電動モータであってもよい。
【0081】
<変形例3>
上記実施形態では、冷却風による冷却対象がエンジン1を冷却するエンジン冷却水である例について説明したが、冷却風による冷却対象はこれに限定されない。例えば、冷却風による冷却対象は、ブレーキ装置を冷却する冷却油であってもよい。また、車体101を走行させる走行装置の駆動源として、走行用電動モータと、走行用電動モータを制御する走行用インバータを備えている場合には、走行用インバータを冷却する冷却水が冷却風による冷却対象であってもよい。
【0082】
さらに、冷却対象は作動油であってもよい。オイルクーラは、作動油と冷却風とを熱交換することにより、作動油を冷却する。この場合、冷却対象の循環系統は、作動油タンク22とメインポンプ2とを含む油圧回路によって構成される。作動油の粘度は、作動油の温度の低下に応じて増加する。このため、作動油が過冷却状態になると、高粘度の作動油がメインポンプ2から吐出されることになり、油路内での圧力損失が高くなる。その結果、メインポンプ2の負荷が大きくなり、燃料消費が悪化してしまう。しかしながら、本実施形態の変形例によれば、作動油の温度が第1閾値Tc1未満になると、冷却ファン9の回転が停止し、作動油の過冷却が防止されるため、メインポンプ2の負荷の増加を防ぐことができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0084】
1…エンジン、2…メインポンプ(油圧ポンプ)、2a…レギュレータ、4…パイロットポンプ、5…ファン制御弁、5a,5b…油圧パイロット部、5F…正転位置(回転位置)、5N…中立位置、5R…逆転位置(回転位置)、7…シリンダ制御弁、7a,7b…油圧パイロット部、7L…下げ位置、7N…中立位置、7R…上げ位置、8…ファンモータ(油圧モータ)、9…冷却ファン、10…ホイストシリンダ(油圧シリンダ)、10a…チューブ、10b…ピストン、10c…ピストンロッド、10d…ボトム側油室、10e…ロッド側油室、11,12…リリーフ弁、13,14…チェック弁、15…パイロットリリーフ弁、16~19…電磁弁、22…作動油タンク、23…ラジエータ(熱交換器)、24…冷却水循環ポンプ、25…温度センサ、26…冷却対象物、27…冷却水タンク、28…冷却水系統、50…制御装置、51…処理装置、52…不揮発性メモリ(記憶装置)、53…揮発性メモリ(記憶装置)、54…判定部、55…弁制御部、56…ポンプ制御部、61,62…供給油路、68,69…戻り油路、71,72…アクチュエータ油路、80…発電機、81,82…モータ油路、91…操作装置、91a…操作レバー、100…ダンプトラック(運搬車両)、101…車体、102…支持ベース、103…キャブ、104…荷台、105…前輪、106…後輪、107…フロントグリル、110…油圧システム、CL…センタバイパスライン(油路)、q…吐出容量(押しのけ容積)、Q…吐出流量、qmax…最大容量、Qmax…最大流量、qmin…最小容量、Qmin…最小流量、Tc…冷却水温度(冷却対象の温度)、Tc1…第1閾値、Tc2…第2閾値
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