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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032271
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/667 20060101AFI20240305BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20240305BHJP
   C21D 1/10 20060101ALI20240305BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C21D1/667
C21D9/00 A
C21D1/10 J
C21D1/00 123Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135842
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 祥
【テーマコード(参考)】
4K034
4K042
【Fターム(参考)】
4K034AA10
4K034AA17
4K034AA19
4K034BA06
4K034BA10
4K034DA04
4K034DA06
4K034DB02
4K034DB03
4K034DB04
4K034FA04
4K034FA05
4K034FB03
4K034FB07
4K034FB09
4K042AA23
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA13
4K042CA15
4K042DA01
4K042DB01
4K042DD02
4K042DD04
4K042DE02
4K042DF01
4K042DF02
4K042EA01
(57)【要約】
【課題】装置の煩雑化を抑制しつつ、大きさが異なるワークを冷却することができる冷却装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る冷却装置は、ワークWに冷却液Cを噴射する複数の噴射体10を備え、複数の噴射体10のそれぞれは、複数の噴射孔110が形成された噴射面111を有し、複数の噴射体10は、それぞれの噴射面111によってワークWを囲繞し得るように、且つ、互いに隙間Gを空けて配置され、それぞれの噴射面111は、ワークを囲繞する方向に複数の噴射孔110が並ぶ噴射孔群H1を有し、噴射孔群H1における複数の噴射孔110から噴射する冷却液Cが、互いに隣り合う噴射体10から噴射する冷却液Cと交差しないように、かつ、それぞれの噴射面111において互いに隣り合う噴射孔110から噴射する冷却液C同士の間隔が、噴射面111から離れるにつれて小さくなるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに冷却液を噴射する複数の噴射体を備え、
前記複数の噴射体のそれぞれは、複数の噴射孔が形成された噴射面を有し、
前記複数の噴射体は、それぞれの噴射面によって前記ワークを囲繞し得るように、且つ、互いに隙間を空けて配置され、
前記それぞれの噴射面は、前記ワークを囲繞する方向に前記複数の噴射孔が並ぶ噴射孔群を有し、
前記噴射孔群における前記複数の噴射孔から噴射する冷却液が、互いに隣り合う前記噴射体から噴射する冷却液と交差しないように、かつ、前記それぞれの噴射面において互いに隣り合う前記噴射孔から噴射する冷却液同士の間隔が、前記噴射面から離れるにつれて小さくなるように構成されている、冷却装置。
【請求項2】
前記噴射孔群は前記ワークを囲繞する方向と直交する高さ方向に複数列配置されている請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
高周波誘導加熱におけるワークの移動焼入れによる冷却に用いられる請求項1又は2に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、より具体的には、金属製ワーク(以下、単に「ワーク」という)の熱処理に用いられる冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製ワークの焼入れ等の熱処理では、高周波誘導などでワークを加熱した後、該ワークを冷却液によって冷却することが行われている。かかる熱処理では、ワークに冷却液を噴射する冷却装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ワークの周囲に配置される三以上の複数の中空のブロック体(噴射体)を有し、各ブロック体は、内部の冷却液を噴射する噴射孔が設けられた噴射部を有し、各ブロック体の噴射部から噴射される冷却液の噴射範囲が、互いに重なることなくワークの外周面の全周囲をカバーしており、ワークの大きさに応じて、各ブロック体の噴射部から噴射される冷却液の噴射範囲を変更することができる高周波焼入装置の冷却
ジャケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-90081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却ジャケットは、ワークの大きさに応じて、各ブロック体の噴射部から噴射される冷却液の噴射範囲を変更できる装置構造にする必要があるため、装置が煩雑化する恐れがある。
上記事情に鑑み、本発明は、装置の煩雑化を抑制しつつ、大きさが異なるワークを冷却することができる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る冷却装置は、
ワークに冷却液を噴射する複数の噴射体を備え、
前記複数の噴射体のそれぞれは、複数の噴射孔が形成された噴射面を有し、
前記複数の噴射体は、それぞれの噴射面によって前記ワークを囲繞し得るように、且つ、互いに隙間を空けて配置され、
前記それぞれの噴射面は、前記ワークを囲繞する方向に前記複数の噴射孔が並ぶ噴射孔群を有し、
前記噴射孔群における前記複数の噴射孔から噴射する冷却液が、互いに隣り合う前記噴射体から噴射する冷却液と交差しないように、かつ、前記それぞれの噴射面において互いに隣り合う前記噴射孔から噴射する冷却液同士の間隔が、前記噴射面から離れるにつれて小さくなるように構成されている。
【0007】
斯かる構成によれば、それぞれの噴射面において互いに隣り合う前記噴射孔から噴射する冷却液同士の間隔が、前記噴射面から離れるにつれて小さくなるように構成されている。
そのため、大きさが異なるワークであっても(例えば、ワークの外径が大きいものから小さいものに変更する場合であっても)、冷却液の噴射範囲を変更する等の装置構造にすることなく、それぞれのワークの冷却おいて、互いに隣り合う噴射体から噴射する冷却液同士のワーク表面の外側(ワークに到達する前)での衝突が抑制される。
従って、本発明に係る冷却装置は、装置の煩雑化を抑制しつつ、大きさが異なるワークを冷却することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、装置の煩雑化を抑制しつつ、大きさが異なるワークを冷却することができる冷却装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る冷却装置の概略的な上面図であり、大径ワークを冷却する冷却装置を示す。
図2】小径ワークを冷却する図1の冷却装置を示す。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5図1の冷却装置の各噴射体をワーク側から見た正面図である。
図6図1の冷却装置の各噴射体のより具体的な上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る冷却装置について説明する。
まず、本実施形態の冷却装置1が冷却するワークW(大径ワークWa及び小径ワークWb、以下同じ)について説明する。
図1図4に示すように、本実施形態の冷却装置1は、大きさ(外径)の異なる2種以上のワークWをそれぞれ冷却するものである。より具体的には、冷却装置1は、大径ワークWa及び小径ワークWbを冷却するものである。大径ワークWa及び小径ワークWbのそれぞれは、例えば、円筒状の側面w1を有する。大径ワークWaと小径ワークWbとは、側面w1における外径が異なっている。また、各ワークWは、軸w4を有する。
【0011】
各ワークWは、鋼材から製造されたものである。該鋼材としては、例えば、JIS 4051:2016に規定される機械構造用炭素鋼が挙げられる。
【0012】
図1図4に示すように、本実施形態の冷却装置1は、高周波誘導などで加熱されたワークWの側面w1を冷却液Cによって冷却するように構成されている。
本実施形態の冷却装置1は、軸w4が第1の方向に沿うように図示しない支持手段によりワークWを支持し、且つ、図示しない回転手段によりワークWを軸w4周りに回転させた状態でワークWの側面w1に冷却液Cを供給するように構成されている。なお、以下では、軸w4が延びる第1の方向を高さ方向と称し、第1の方向に直交する第2の方向を水平方向と称する。
【0013】
本実施形態の冷却装置1は、ワークWの側面w1に冷却液Cを噴射する複数の噴射体10を備えている。
各噴射体10は、箱型に形成されている。具体的には、各噴射体10は、高さ方向に延在しワークWの側面w1に表面が対向し得る正面部11と、正面部11に対向する背面部12と、正面部11及び背面部12に接続し且つ水平方向に延在する上面部13(図1図2及び図6では透明化)及び下面部14と、正面部11及び背面部12に接続し且つ高さ方向に延在する一対の側面部15(図3及び図4では透明化)とを有する。上面部13及び下面部14は対向しており、一対の側面部15は対向している。正面部11、背面部12、上面部13、下面部14、及び一対の側面部15は、冷却液Cを一時的に貯留する貯留空間Vを形成している。
【0014】
また、各噴射体10には、貯留空間Vに冷却液Cを供給するための図示しない冷却液供給口が設けられている。
【0015】
図3図6に示すように、複数の噴射体10のそれぞれの正面部11には、冷却液Cを噴射する複数の噴射孔110が形成されている。これによって、正面部11の表面は、複数の噴射孔110が形成された噴射面111をなしている。
【0016】
本実施形態の噴射面111は、ワークWの側面w1に対向し得るように形成されている。噴射面111は、高さ方向に延びる一対の側端縁部111aを有し、各側端縁部111aと平行に高さ方向に且つ各側端縁部111aの表面と同一平面上に延びる中央線111bに向かって当該中央線111bを軸としてワークWから遠ざかる方向に凹入する曲面状に形成されている。言い換えれば、本実施形態の噴射面111は、正面視において高さ方向に延びる一対の側端縁部111aと、平面視において背面部12に向かって凹入する円弧状の上端縁部111c及び円弧状の下端縁部111dとを有する。これによって、噴射面111は、ワークWの側面w1に並行し得る。そして、複数の噴射体10は、隣り合う噴射体10のそれぞれの噴射面111によってワークWの側面w1を囲繞し得るように構成されている。
【0017】
より具体的には、複数の噴射体10は、それぞれの下面部14の下側表面14aが同一平面上に沿うように配置されている。また、複数の噴射体10は、図1及び図2に示すごとく高さ方向の一方側から見たときに、それぞれの噴射面111が同心円上に並ぶように配置されている。言い換えれば、図3及び図4に示すように、複数の噴射体10は、ワークWの軸w4が重なり得る仮想直線VLをそれぞれの噴射面111が囲繞するように配置されている。各噴射体10は、冷却装置1が設置される図示しない固定手段により固定されている。
【0018】
また、図1及び図2に示すように、隣り合う噴射体10は、水平方向に隙間Gを空けて配置されている。隙間Gの間隔は、例えば、10mmである。
【0019】
図5に示すように、それぞれの噴射面111において、複数の噴射孔110は、水平方向及び高さ方向に沿って複数の列をなしている。すなわち、複数の噴射体10のそれぞれの噴射面111は、ワークWの側面w1を囲繞する方向に沿って複数の噴射孔110が並ぶ噴射孔群H1を有している。更に、噴射孔群H1は、ワークWの側面w1を囲繞する方向と直交する高さ方向に複数列配置されている。
【0020】
複数の噴射孔群H1は、奇数列の噴射孔群H1と偶数列の噴射孔群H1とを含む。奇数列の噴射孔群H1の複数の噴射孔110は、碁盤目状に配列されている。また、偶数列の噴射孔群H1の複数の噴射孔110は、碁盤目状に配列されている。
そして、奇数列の噴射孔群の複数の噴射孔110と、偶数列の噴射孔群の複数の噴射孔110とは、水平方向に位置ずれするように形成されている。
すなわち、本実施形態の噴射面111には、千鳥配列となるように複数の噴射孔110が形成されている。
【0021】
図6に示すように、各噴射孔110は、正面部11においてワークWから遠ざかる方向に水平方向に沿って延びるように形成されており、それによって、水平方向に沿って進行する冷却液Cを噴射する。本実施形態の各噴射孔110は、例えば、冷却液Cが通過する円柱状の通路をなしている。
そして、図6に示すように、噴射孔群H1の複数の噴射孔110は、中央に位置する噴射孔110bから両端に位置する噴射孔110aに向かうにつれて、当該中央に位置する噴射孔110bを通る中心線CLに向かってそれぞれが冷却液Cを噴射するように、中心線CL方向に向かって、傾斜して形成されている。これによって、図1及び図2に示すように、複数の噴射体10のそれぞれの噴射面111において互いに隣り合う噴射孔110から噴射する冷却液C同士の間隔が、前記噴射面111から離れるにつれて小さくなるように構成されている。
また、全ての複数の噴射孔群H1(全ての奇数列の噴射孔群H1及び偶数列の噴射孔群H1)も同様の構成を有している。
【0022】
また、図6に示すように、本実施形態では、複数の噴射孔群H1における各噴射孔110は、噴射面111の内面が描く円弧の中心(仮想直線VL)に向かって冷却液Cを噴出させる。これによって、複数の噴射孔群H1における各噴射孔110は、ワークWの軸w4に向かって冷却液Cを噴射させ得る。
【0023】
次に、本実施形態に係る冷却装置1において、大きさが異なるワークWのそれぞれを、噴射孔群H1における複数の噴射孔110から噴射する冷却液Cが、互いに隣り合う噴射体10から噴射する冷却液Cと交差しないように、かつ、それぞれの噴射面111において互いに隣り合う噴射孔110から噴射する冷却液C同士の間隔が、噴射面111から離れるにつれて小さくなるように構成する方法について説明する。
最初に、図2に示すような冷却装置1で冷却を予定しているワークWのうち、側面w1の外径が最も小さいもの(例えば側面w1の外径が10mmであるワークWb)の冷却を想定する。また、仮想直線VLから水平方向にワークWbの側面w1まで半径分離れた領域を中央領域Aとし、中央領域Aの外縁(ワークWbの側面w1)から噴射面111までの領域を側方領域Bとする。
【0024】
次に、ワークWbに対して、上述したように、前記側方領域Bにおいて、噴射面111において互いに隣り合う噴射孔110から噴射する冷却液C同士の間隔が、噴射面111から離れるにつれて小さくなるように構成する。
このようなワークWbに対しての構成は、下記のように行う。
ワークWから遠ざかる方向に水平方向に沿って延びるように形成された複数の噴射孔110がワークを囲繞する方向に均等間隔で形成された噴射孔群H1を有する(好ましくは、更に、当該噴射孔群H1がワークWを囲繞する方向と直交する高さ方向に互いに均等間隔で複数列配置されている)正面部11を、各側端縁部111aと平行に高さ方向に延びる中央線111bに向かって当該中央線111bを軸としてワークWから遠ざかる方向に凹入する量(すなわち、曲面状にしたときの噴射面111の曲率半径の量)を調整しつつ凹入させて、正面部11の噴射面111を曲面状に形成する。
この際、噴射孔群H1は、中央領域Aにおいては、互いに隣り合う噴射孔110から噴射する冷却液C同士が交差するように前記凹入する量を調整してもよい。
【0025】
そして、このように正面部11を凹入させた複数の噴射体10を用いて、ワークWbに加え、冷却装置1で冷却を予定しているワークWのうち、側面w1の外径が最も大きいもの(例えば側面w1の外径が20mmであるワークWa)も冷却できるように、かつ、ワークWb、Waの両方が側方領域B、B’において、噴射孔群H1における複数の噴射孔110から噴射する冷却液Cが、互いに隣り合う噴射体10から噴射する冷却液Cと交差しないように、当該複数の噴射体10を、それぞれの噴射面111によってワークWbを囲繞するように、且つ、互いに隙間Gを空けて配置する。
【0026】
このように、冷却装置1による冷却に想定されるワークWのうち、側面w1の外径が最も小さいもので設計し、かつ、外径が最も大きいものも冷却できるように冷却装置1を構成することで、外径が大きいものも必然的に側方領域B’で、噴射孔群H1における複数の噴射孔110から噴射する冷却液Cが、互いに隣り合う噴射体10から噴射する冷却液Cと交差しないように、かつ、それぞれの噴射面111において互いに隣り合う噴射孔110から噴射する冷却液C同士の間隔が、噴射面111から離れるにつれて小さくなるように構成することができる。
【0027】
本実施形態の冷却装置1は、大きさが異なる各ワークWの軸w4が、各噴射面111の円弧の中心に重なる状態で各ワークWを支持し、各ワークWの側面w1に向かって冷却液Cを噴射させる。そして、図1及び図2に示すように、本実施形態の冷却装置1は、上記のように構成された噴射孔110を有することによって、大径ワークWa及び小径ワークWbそれぞれの側面w1に直接冷却液Cを供給し得る。
【0028】
なお、上述したように、本実施形態の冷却装置1によれば、それぞれの噴射面111において互いに隣り合う噴射孔110から噴射する冷却液C同士の間隔が、噴射面111から離れるにつれて小さくなるように構成されている。
従って、大きさが異なるワークであっても(例えば、ワークの外径が大きいものから小さいものに変更する場合であっても)、冷却液の噴射範囲を変更する等の装置構造にすることなく、それぞれのワークの冷却において、互いに隣り合う噴射体から噴射する冷却液同士のワーク表面の外側(ワークに到達する前)での衝突が抑制される。
従って、本発明に係る冷却装置は、装置の煩雑化を抑制しつつ、大きさが異なるワークを冷却することができる。
【0029】
なお、本実施形態の冷却装置1では、噴射孔群H1は、ワークWの側面w1を囲繞する方向と直交する高さ方向に複数列配置されている点で説明したが、噴射孔群H1が一列のみである場合も同様な効果を得ることができる。ただし、ワークWの冷却速度向上の観点から、前記噴射孔群H1は、ワークWの側面w1を囲繞する方向と直交する高さ方向に複数列配置されていることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態の冷却装置1は、高周波誘導加熱におけるワークWの移動焼入れによる冷却に用いられることがより好ましい。
移動焼入れとしては、例えば、図3及び図4の高さ方向上部に図示しない高周波誘導加熱を行う加熱部が配置されており、本実施形態の冷却装置1は当該加熱部の高さ方向下部に配置されており、図示しない移動手段により上部の加熱部で加熱されたワークWが高さ方向下部に移動し、複数の噴射体10から冷却液Cが常に噴射された状態で、高さ方向下方にワークWが移動して冷却する。
このような高周波誘導加熱におけるワークWの移動焼入れによる冷却に用いられることで、大きさが異なる各ワークWの側面w1の冷却速度の向上及び均一化を図ることができるためより好ましい。
【0031】
本実施形態の冷却液Cは、水であるが、本発明はこれに限定されず、冷却液Cは、ポリマー系の冷却液であってもよい。
【0032】
また、例示として一実施形態を示したが、本発明に係る冷却装置は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る冷却装置は、上記した作用効果により限定されるものでもない。本発明に係る冷却装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0033】
例えば、上記実施形態では、軸w4が垂直方向に沿うようにしてワークWを支持するが、本発明はこれに限定されず、ワークWは、軸w4が水平方向に沿うように支持されてもよい。すなわち上記実施形態は、高さ方向を水平方向に、水平方向を高さ方向に、それぞれ入れ替えて構成してもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、噴射体10の噴射面111が曲面状の態様を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、噴射面111が一平面に沿う矩形状に形成されてもよい。この場合、正面部11の噴射孔群H1の複数の噴射孔110を噴射面111において互いに隣り合う噴射孔110から噴射する冷却液C同士の間隔が、噴射面111から離れるにつれて小さくなるように、当該複数の噴射孔110を正面部11の厚み方向に対して適宜傾斜させて形成することによって、各噴射孔110からの冷却液Cの噴射方向を調節すればよい。
【符号の説明】
【0035】
1:冷却装置、10:噴射体、11:正面部、110:噴射孔、111:噴射面、111a:側端縁部、111b:中央線、111c:上端縁部、111d:下端縁部、H1:噴射孔群、12:背面部、13:上面部、14:下面部、15:側面部、C:冷却液、V:貯留空間、G:隙間、VL:仮想直線、A:中央領域、B:側方領域、W:ワーク、Wa:大径ワーク、Wb:小径ワーク、w1:側面、CL:中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6